説明

ヒト胚盤胞由来の幹細胞および前駆体細胞に基づく新規な毒性アッセイ

本発明は、ヒトにおける毒性の検出のためのヒト胚盤胞由来の幹細胞に基づくインビトロ毒性アッセイに関し、これはある物質についてのインビトロヒト毒性の新規な検出を可能にし、および/または非ヒトアッセイに比較してより効果的にヒト毒性を検出する。本発明はさらに、種間の差異を示すことが知られており、およびマウスにおける毒物学的実験により毒性効果が検出可能でなかった物質についての毒性の検出を、可能にし得る。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ヒト胚盤胞由来の幹(hBS)細胞は、3つ全ての胚葉の派生物に分化する独特の能力を有する。この特徴は、それらが機能的な細胞についての「細胞工場」として作用し得るので、それらを毒物学の分野における優れた道具にする(Moon SYら、Mol Ther 13(1):5‐14、2006)。さらに、hBS細胞分化のプロセスの間に相互作用する化合物の効果が検出され得、これはそれらを、発生毒物学の分野において特に価値あるものにする。
【0002】
新規な欧州化学物質政策(European Chemicals Policy)(REACH)は、2007年に効力を生じるので、年間1トンを超える容量で製造または輸入される30,000個を超える化学物質について、毒物学的な情報が必要とされる(Anon、2007)。従って、約390万のさらなる試験動物が潜在的に使用され、そして産業に対する費用は約15億Euroであると見積もられ、その32%は、発生毒性研究に単独に起因する(RPA、2002)。それゆえ、インビトロ発生毒性試験が、緊急に必要とされる。さらに、新規な薬物候補についての信頼できる毒物学的データが開発段階においてできるだけ早期に作製されなくてはならないので、医薬産業は、インビトロ毒性試験におけるハイスループットの必要性に直面する。インビトロ毒性スクリーニングにおける初期の取り込みに起因する高い損耗率の減少は、関連されるコストを大いに減少する。さらに、多くの物質が、例えば、重篤な座瘡の処置において使用される13‐シスレチノイン酸(イソトレチノイン(Isotretinoin)(Accutane、Roche)ならびに鎮静剤および抗炎症剤薬物のサリドマイド(Contergan)が、有意な種間差異を示すことが知られており、ヒトにおいて重篤な奇形を生じるが、マウスまたはラットにおいては明らかにそうではない(Gilbert、2003)。従って、ヒト関連の発生毒性試験が必要とされる。
【0003】
今日最も見込みのあるインビトロ胚毒性試験の1つは、有効な胚性幹細胞試験(EST)であり、これは化学物質の胚毒性の可能性を評価するためにマウス胚性幹(mES)細胞を用いる。ESTは、胚毒性物質に対するmES細胞およびマウス線維芽細胞の異なる感受性を考慮にいれる。さらに、mES細胞の、機能的な心筋細胞への分化は、毒物学的な評価項目として作用する(Genschow,2004)。しかし、ESTは未だ、動物系においてヒト毒性を予測することを目的とする。
【0004】
発生毒性試験におけるヒト胚性幹細胞の使用は、薬物および化学物質の安全性評価についての既存の毒性試験に対して価値を付加する信頼できる、ヒト関連のデータを提供し得る。しかし、毒性試験におけるhBS細胞の適用は、これらの細胞が複雑な操作技術を必要とするので困難である。例えば、hBS細胞は、それらの増殖を確実にするために、そして高い分散を生じる表面への可変的な付着特性を示すために、単一の細胞のかわりに細胞凝集物中に播種されることを必要とする。さらに、hBS細胞の集団2倍化時間は、36時間であり、mES細胞の2倍化時間の12時間よりも有意に長い。マウスBS細胞とヒトBS細胞との間の別の重要な差異は、それらの培養要件である。未分化の状態にmES細胞を維持するためには、培養培地への白血病抑制因子(LIF)の添加で十分であるが、hBSC系統は、マウスまたはヒトの支持細胞層上で培養され、これは、未分化の状態に細胞を安定に維持するための最も信頼できる方法であるようである。多くの研究が支持体非含有培養系を見出すために行われているが、これらは開発の初期段階にある(Staceyら、2006)。
【0005】
本発明は、発生毒性および細胞毒性のような、ヒト毒性の予測のためのhBS細胞に基づく毒性アッセイを表す。本発明は、mES細胞よりも優れた有利さを示し、例えば13‐シスレチノイン酸のような、そのいくつかが種間差異を示すことが知られるヒト催奇形物質を同定することを補助するヒト関連のデータを与えることを、可能にする。
【発明の概要】
【0006】
定義および略語
「アッセイ(単数形)」または「アッセイ(複数形)」は、例えば、遺伝子レベル、タンパク質レベル、または機能性レベルにおいて、細胞毒性および/または発生毒性を測定するために行われるインビトロ試験を記載することが意図される。
【0007】
本明細書中で使用される、用語「胚盤胞由来の幹細胞」は、BS細胞を示し、そしてヒト形態は「hBS細胞」または「hBSC」と呼ばれる。
【0008】
本明細書中で使用される用語「前駆体」または「前駆体細胞型」は、未分化のhBS細胞と十分に分化された細胞との間の分化の任意の段階での、hBS細胞に由来する任意の細胞である。
【0009】
用語「支持細胞」または「支持体」は、別のタイプの細胞と同時培養されるある細胞タイプの細胞を意味することが意図され、第2のタイプの細胞が増殖し得る環境を提供する。支持細胞は、必要に応じて、それらが支持する細胞とは異なる種に由来し得る。支持細胞は典型的に、それらが支持する細胞よりも増殖することからそれらを防ぐために、照射またはマイトマイシンcのような抗分裂剤での処理により、他の細胞と同時培養される場合、不活化され得る。前述を制限しないが、1つの特定のこのような支持細胞層は、本明細書中でhFFとして示される、ヒト皮膚線維芽細胞のような、ヒト支持体であり得る。本発明の情況において、hFFはまた、成熟細胞型を例示する。別の支持細胞型は、マウス胚性線維芽細胞(mEF)であり得る。
【0010】
用語「物質」の解釈は、治療剤(または潜在的な治療剤)、または神経毒、肝臓毒、造血細胞の毒、筋毒、発癌物質、催奇形物質、または1つ以上の生殖器官に対する毒性のような、実証された毒性効果を伴う薬剤に制限されることを意図しない。用語、物質はさらに、農薬、例えば、殺虫剤、抗菌剤、肥料のような化学組成物であり得るか、または同様に化粧品において使用される成分であり得る。
【0011】
用語「IC50」値は、本発明の情況において、インビトロで試験した細胞の約50%の死を導く試験物質の濃度を表す。
【0012】
「効率」または「効果」は、そうでないと規定されない限り、本発明におけるアッセイの情況において、当該アッセイがヒトにおいて毒性である物質をより検出するようであること、および/または毒性濃度、例えば、対応する分析されたIC50値が、マウス胚性幹細胞もしくはマウス癌腫細胞に基づくアッセイのような先行技術において記載される方法もしくはアッセイに比較して、利用可能な場合はいつでも、公知のヒトインビボデータに、より近似することを意味することが意図される。
【0013】
本発明の簡単な説明
本発明は、ヒトにおける毒性の検出および/または予測のためのヒト胚盤胞由来の幹細胞に基づくインビトロ毒性アッセイに関し、ここでアッセイは、ある物質の毒性の新規な検出を可能にし、および/または非ヒトアッセイもしくは成熟ヒト細胞型に基づくアッセイに比較してより効果的に毒性を検出する。
【0014】
本発明はまた、ヒトにおける毒性の検出および/または予測のための胚盤胞由来の幹細胞に由来するヒト前駆体細胞に基づくインビトロ毒性アッセイに関し、ここでアッセイは、ある物質についての毒性の新規な検出を可能にし、および/または非ヒトアッセイもしくは成熟ヒト細胞型に基づくアッセイに比較してより効果的に毒性を検出する。
【0015】
本発明の1つのさらなる局面は、インビトロ毒性アッセイであり、ヒトにおける毒性の検出および/または予測のためのヒト胚盤胞由来の幹細胞、ヒト前駆体細胞、およびヒト成熟様細胞からなる群より選択される、少なくとも2つのヒト細胞型、例えば、少なくとも3つの、例えば少なくとも4つの、少なくとも5つのヒト細胞型を含み、ここでアッセイは、ある物質についての毒性の新規な検出を可能にし、および/または非ヒトアッセイもしくは成熟ヒト細胞型に基づくアッセイに比較してより効果的に毒性を検出する。具体的には、本発明のアッセイは、特異的な毒性:例えば、成熟細胞に対するよりも胚細胞に対する高い程度の毒性、を予測し得る。
【0016】
本発明のなお1つのさらなる局面は、ヒトにおける毒性の検出のためのヒト胚盤胞幹細胞に基づくインビトロ毒性アッセイであり、非ヒトアッセイに比較して13‐シスレチノイン酸(13CRA)の胚毒性のような、これはヒト毒性をより効果的に予測する。
【0017】
本発明のなお1つのさらなる局面は、ヒトにおける毒性の検出のための、ヒト胚盤胞由来の幹細胞に由来する間葉前駆体(hBS‐MP)のような、ヒト胚盤胞由来の幹細胞に由来するヒト前駆体に基づくインビトロ毒性アッセイであり、これはhFFのような成熟ヒト細胞に比較して、全てのトランスレチノイン酸(ATRA)のヒト毒性をより効果的に予測する。
【0018】
本発明はまた、ヒト胚盤胞由来の幹細胞の1つ以上の集団をある物質に曝露することにより、当該物質についてのヒトにおけるインビトロ毒性を検出および/または予測する方法/アッセイに関し、方法は、以下の工程
(i)マルチウェルフォーマットプレート中に細胞を播種する工程
(ii)1つ以上の物質の1つ以上の濃度に播種された細胞を曝露する工程
(iii)細胞毒性および/または胚毒性の評価項目を分析する工程
(iv)必要に応じて、公知のインビボ毒性データに相関する工程、を包含する。
【0019】
本発明はまた、ヒト前駆体細胞の1つ以上の集団をある物質に曝露することにより、当該物質についてのヒトにおけるインビトロ毒性を検出および/または予測するさらなる方法に関し、方法は、以下の工程
(i)マルチウェルフォーマットプレート中に細胞を播種する工程
(ii)1つ以上の物質の1つ以上の濃度に播種された細胞を曝露する工程
(iii)細胞毒性および/または胚毒性の評価項目を分析する工程
(iv)必要に応じて、公知のインビボ毒性データに相関する工程、を包含する。
【0020】
本発明はまた、ヒト胚盤胞由来の幹細胞の1つ以上の集団をある物質に曝露することにより、当該物質についてのヒトにおけるインビトロ毒性を検出および/または予測するための方法/アッセイに関し、
(i)1つ以上のマルチウェルプレートの1つ以上のウェルに播種された、ヒト胚盤胞由来の幹細胞
(ii)(i)におけるマルチウェルプレートの別個のウェルに、または1つ以上の別個のプレートの1つ以上のウェルに播種された、成熟ヒト細胞型
(iii)必要に応じて、それぞれ、(i)および/もしくは(ii)におけるマルチウェルの別個のウェルに、または1つ以上の別個のマルチウェルプレートの1つ以上のウェルに播種された、ヒト胚盤胞由来の幹細胞に由来する1つ以上の前駆体集団、を含み、
但し、細胞に曝露されている1つ以上の物質の1つ以上の効果の測定を行う時点まで、播種する密度は、細胞が実質的にその増殖能力を維持することを許容する。
【0021】
本発明はまた、ヒト胚盤胞由来の幹細胞の1つ以上の集団をある物質に曝露することにより、当該物質についてのヒトにおけるインビトロ毒性を検出および/または予測する方法/アッセイに関し、方法は以下の工程
(i)1つ以上のマルチウェルプレートにそれぞれ播種されたヒト胚盤胞由来の幹細胞に由来する1つ以上の前駆体集団、
(ii)(i)におけるマルチウェルプレートの別個のウェルに播種されたか、または1つ以上の別個のプレートに播種された、成熟ヒト細胞型、を含み、
但し、細胞に曝露されている1つ以上の物質の1つ以上の効果の測定を行う時点まで、播種する密度は、細胞が実質的にその増殖能力を維持することを許容する。
【0022】
本発明はまた、ヒト胚盤胞由来の幹細胞の1つ以上の集団をある物質に曝露することにより、当該物質についてのヒトにおけるインビトロ毒性を検出および/または予測する方法/アッセイに関し、方法は以下の工程
(i)1つ以上のマルチウェルプレートの1つ以上のウェルに播種されたヒト胚盤胞由来の幹細胞
(ii)それぞれ(i)における1つ以上のマルチウェルプレートに播種されたか、または1つ以上の別個のプレートに播種された、ヒト胚盤胞由来の幹細胞に由来する1つ以上の前駆体集団、を含み、但し、細胞に曝露されている1つ以上の物質の1つ以上の効果の測定を行う時点まで、播種する密度は、細胞が実質的にその増殖能力を維持することを許容する。
【0023】
発明の詳細な説明
ヒト胚盤胞幹細胞は、発生毒性試験のための独特な道具を提供し、それゆえ、本発明者らは、本発明に従って、発生毒性アッセイおよび細胞毒性アッセイのような、hBS細胞ベースの発生毒性試験を開発した。概念実証として、評価項目の生存度を備える毒性アッセイを、3つの異なる程度の発生的成熟を表す、多能性hBS細胞、hBS細胞由来の間葉前駆体(hBS MP)、およびヒト包皮線維芽細胞(hFF)を用いて開発した。周知のインビボデータを伴う発生毒性物質のセット、すなわち、全トランスレチノイン酸(ATRA)および13‐シスレチノイン酸(13CRA)を、2つの異なる生存度アッセイ、すなわち、ATP含量およびレサズリン(RES)還元を用いて試験した。さらに、5‐フルオロウラシル(5‐FU)を、ポジティブコントロールとして、およびサッカリン(Saccharin)をネガティブコントロールとして使用した。
【0024】
レチノイド様ATRAおよび13CRAは主に、癌、および座瘡または乾癬のような皮膚疾患の処置において使用される。レチノイド誘導性の奇形の特徴的なパターンは、中枢神経系を含む頭蓋顔面構造、手足、胸線、および軸骨格の欠失を含む(Rossら、2000)。ATRAおよび13CRAはともに、ヒトにおいて重篤な催奇形物質であるが、マウス系においてそれらの催奇形性は異なる(Nauら、2001)。13CRAは、ATRAよりも、インビボでマウスにおいて非常に低い催奇形性を示し、およびインビトロでマウス奇形腫(P19)細胞において低い分化誘導能を示す(Adlerら、2005;SopranoおよびSoprano 1995)。それゆえ、これらの構造的に関連される物質が、本発明者らの試験系を試みるために選択された。抗癌薬物の5‐FUは、インビボおよびインビトロの両方での発生毒物であり(Jacobら、1986)、そして個別の報告が、ヒトにおける5‐FU関連性の出生異常に対して存在する(Stephensら、1980)。
【0025】
本発明の1つの実施態様は、異なる分化レベルからの細胞を表す、hBS細胞、hBS細胞由来の前駆体細胞、および/またはヒト包皮線維芽細胞、またはそれらの組み合わせに基づく細胞毒性試験に関する。評価項目として細胞毒性に基づくこの試験は、全トランスレチノイン酸(ATRA)および13‐シスレチノイン酸(13CRA)を含むいくつかのヒト発生毒物の検出に効果的である。これらの物質は、未分化の胚盤胞由来の幹細胞および前駆体細胞においてより低いIC50値を、成熟ヒト細胞におけるより高い値に比較して、示した。
【0026】
本発明はまた、ヒトにおける毒性の検出および/または予測のための、ヒト胚盤胞由来の幹細胞に基づくインビトロ毒性アッセイに関する。アッセイは、ある物質についての、毒性、詳細には胚細胞または発生中の細胞に対する毒性の新規な検出を可能にし、および/または非ヒトアッセイもしくは成熟ヒト細胞型に基づくアッセイに比較して、ヒトにおいてより効果的に毒性を検出および/または予測する。
【0027】
本発明はさらに、ヒトにおける毒性の検出および/または予測のための、ヒト胚盤胞由来の幹細胞に由来するヒト前駆体細胞に基づくインビトロ毒性アッセイに関し、ここでアッセイは、ある物質についての毒性の新規な検出を可能にし、および/または非ヒトアッセイもしくは成熟ヒト細胞型に基づくアッセイに比較してより効果的にヒトにおける毒性を検出および/または予測する。本発明に従う前駆体細胞は、hBS細胞と十分に分化した細胞との間の任意の前駆体細胞であり得る。本発明における適切な前駆体細胞は、中胚葉、内胚葉、または外胚葉の細胞型であり得る。前駆体細胞はさらに、間葉前駆体細胞、線維芽様前駆体細胞、心臓前駆体細胞、肝臓前駆体細胞、膵臓前駆体細胞、または神経前駆体であり得る。
【0028】
本発明の特定の実施態様において、前駆体細胞はヒト胚盤胞幹細胞由来の間葉前駆体(hBS‐MP)である。
【0029】
IC50値の比較は、hBS細胞およびhBS由来の前駆体細胞が、5‐FU、ATRA、および13CRAのような毒性物質に対して、hFF細胞のような成熟細胞型よりも、感受性であることを示す(図3および4を参照のこと)。前駆体細胞は、毒性物質に対してなおより高い感受性を維持しながら、酵素的な継代による大きな規模の培養を可能にする、容易に培養されるhBS由来の細胞型を表す。
【0030】
本発明はさらに、少なくとも2つのヒト細胞型、例えば、少なくとも3つの、少なくとも4つの、少なくとも5つのヒト細胞型を含む。これらのヒト細胞型は、hBS細胞、前駆体細胞、および成熟様細胞を含む群から選択され得る。成熟様細胞は、皮膚および筋肉のような異なるヒト組織に由来し得る。成熟様細胞はまた、新生児または成人のような異なる発生の段階に由来し得る。本発明の特定の実施態様において、使用される成熟様細胞は、新生児男子からのヒト包皮線維芽細胞である。
【0031】
本発明はさらに、インビトロ毒性アッセイに関し、ここで非ヒトのアッセイは、マウス、ラット、またはブタのような任意の非ヒト哺乳動物起源であり得る。次いで、マウスアッセイが、マウス胚性幹細胞に基づくアッセイまたはマウス奇形腫細胞由来のアッセイにより例示され得る。
【0032】
非ヒトアッセイは、本出願に対する参照系として言及され、これはまた、インビボアッセイであり得る。このようなインビボアッセイは、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、またはイヌの動物モデルであり得る。
【0033】
より詳細には、本発明は、ヒトにおける毒性の検出および/または予測のための、ヒト胚盤胞由来の幹細胞に基づくインビトロ毒性アッセイに関し、ここでアッセイは、ある物質についての毒性の新規な検出を可能にし、および/または非ヒトアッセイに比較してより効果的に、例えば、少なくとも50%より多く、少なくとも75%より多く、または少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも30倍、少なくとも50倍、少なくとも75倍、少なくとも100倍より効果的に、毒性を検出する。
【0034】
本発明の特定の実施態様において、インビトロ毒性アッセイは、マウス奇形腫細胞に基づく非ヒトアッセイに比較して、毒性を少なくとも123倍、より効果的に検出する。
【0035】
同等に、本発明は、ヒトにおける毒性の検出および/または予測のための、ヒト胚盤胞由来の幹細胞に基づくインビトロ毒性アッセイに関し、ここでアッセイは、ある物質についての毒性の新規な検出を可能にし、ならびに/またはより効果的に、例えば、hBS細胞と前駆体細胞とを比較する場合、少なくとも1.5倍、少なくとも4倍、少なくとも10倍より効果的に、毒性、胚細胞に対する特異的な毒性を検出し、そしてhBS細胞と成熟様線維芽細胞とを比較する場合、少なくとも2倍、例えば少なくとも4倍、少なくとも10倍より効果的に、毒性を検出し、そして前駆体細胞と成熟様細胞とを比較する場合、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍より効果的に、毒性を検出する。
【0036】
さらに、本発明のアッセイは、生存度の測定のような、細胞毒性の評価項目に基づき得る。このような評価項目についての適切な検出技術は、ATP含量分析、MTT塩分析、およびレサズリン変換を含む代謝活性を測定する群から選択され得る。
【0037】
本発明のさらなる適切な評価項目は、胚毒性の評価項目の群から選択され得る。RNA、酵素、および抗体レベルのゲノミクスおよびプロテオミクス測定のような、遺伝子レベルまたはタンパク質レベルのいずれかにおける生体分子の発現レベルが分析され得る。マイクロRNAレベルがさらに、分析され得る。細胞毒性および胚毒性の両方を測定するための適切な手段は、比色法(可視色における定量可能な変化)または蛍光光度法(蛍光における定量可能な変化)であり得る。測定は、マルチ‐ウェルプレートリーダーにおいて行われ得、ここではいくつかのウェルの内容物が、同時に分析される。試験は、培地についてハイスループット適用に拡張することを許容するように設計される。毒性効果の検出および定量化測定のための1つの他の適切な設定は、ハイコンテントリーダー(High Content Reader)において行われ得る。
【0038】
本発明の1つの実施態様において、強力なスクリーニング技術、ハイコンテントスクリーニング(HCS)が使用される。HCSは、物質の迅速なスクリーニングを許容する様式において、多くの細胞事象に対する化合物の影響を同定および定量する能力を拡張する。HCSは、単一のスクリーニング基盤内で同時に複数の測定を許容する。これは、マルチ‐ウェルサンプル調製の処理とともに、顕微鏡研究様データ捕獲と関連されるタスク、および特定の細胞事象を定量する能力を備える分析を合わせて自動化することを可能にする。
【0039】
発生毒性試験において、本発明によれば、HSCは、関連の生物学的系における1つのおよび同じ試験プレートにおける細胞毒性と並行して、3つ全ての胚葉への分化に対する影響を検出することを可能にする。生存細胞に対する物質の時間依存性の効果が、トキシコキネティクスおよび影響される経路を研究するための価値ある道具を提供するHCSを用いて、同様に試験される。
【0040】
本発明の1つの実施態様において、毒物学試験においてhBSCを用いる場合、細胞は、増殖段階に維持されるために、小さな凝集物中に播種される必要性があり得る。このことは一般に、一方のウェルから他方のウェルへの細胞数の高い分散が生じ得るので、毒性試験において支障を引き起こす。HCSの技術を用いて、測定されるシグナルを、試験ウェル当たりの細胞の数に正規化することが可能である。
【0041】
本発明の特定の実施態様において、細胞毒性はレサズリン変換により測定される。
【0042】
本発明の別の実施態様において、細胞毒性は、ATP含量分析により測定される。
【0043】
本発明のなお別の特定の実施態様は、ヒトにおける毒性の検出のための、ヒト胚盤胞由来の幹細胞に基づくインビトロ毒性アッセイに関し、これは非ヒトアッセイに比較して13CRAのヒト毒性をより効果的に検出する。
【0044】
本発明のなお別の実施態様において、未分化のhBS細胞株、hBS由来の前駆体細胞型、または体細胞様hBS細胞由来の型のような、遺伝子操作された細胞株が使用され得る。このように操作された細胞株は、発生的に関連するプロモーターの制御下で蛍光または他のマーカーを発現するレポーター細胞株であり得る。
【0045】
さらに、本発明は、ヒト胚盤胞由来の幹細胞の1つ以上の集団をある物質に曝露することにより、当該物質についてのヒトにおけるインビトロ毒性を検出および/または予測する方法に関し、方法は、以下の工程
(i)マルチウェルフォーマットプレート中に細胞を播種する工程
(ii)1つ以上の物質の1つ以上の濃度に播種された細胞を曝露する工程
(iii)細胞毒性および/または胚毒性の評価項目を分析する工程
(iv)必要に応じて、公知のインビボ毒性データに相関する工程、を包含する。
【0046】
本発明はまた、ヒト胚盤胞由来の幹細胞の1つ以上の集団をある物質に曝露することにより、当該物質についてのヒトにおけるインビトロ毒性を検出および/または予測する方法/アッセイに関し、方法は、以下の工程
(i)1つ以上のマルチウェルプレートの1つ以上のウェルに播種された、ヒト胚盤胞由来の幹細胞
(ii)(i)におけるマルチウェルプレートの別個のウェル、または1つ以上の別個のプレートの1つ以上のウェルに播種された、成熟ヒト細胞型
(iii)必要に応じて、それぞれ、(i)および/もしくは(ii)におけるマルチウェルの別個のウェルに、または1つ以上の別個のマルチウェルプレートの1つ以上のウェルに播種された、ヒト胚盤胞由来の幹細胞に由来する1つ以上の前駆体集団、を含み、
但し、細胞に曝露されている1つ以上の物質の1つ以上の効果の測定を行う時点まで、播種する密度は、細胞が実質的にその増殖能力を維持することを許容する。
【0047】
さらに、本発明は、ヒト胚盤胞由来の幹細胞の1つ以上の集団をある物質に曝露することにより、当該物質についてのヒトにおけるインビトロ毒性を検出および/または予測する方法に関し、方法は、以下の工程(i)1つ以上のマルチウェルプレートにそれぞれ播種されたヒト胚盤胞由来の幹細胞に由来する1つ以上の前駆体集団、
(ii)(i)におけるマルチウェルプレートの別個のウェルに播種されたか、または1つ以上の別個のプレートに播種された、成熟ヒト細胞型、を含み、
但し、細胞に曝露されている1つ以上の物質の1つ以上の効果の測定を行う時点まで、播種する密度は、細胞が実質的にその増殖能力を維持することを許容する。
【0048】
さらに本発明は、ヒト胚盤胞由来の幹細胞の1つ以上の集団をある物質に曝露することにより、当該物質についてのヒトにおけるインビトロ毒性を検出および/または予測する方法に関し、方法は、以下の工程、(i)1つ以上のマルチウェルプレートの1つ以上のウェルに播種されたヒト胚盤胞由来の幹細胞、
(ii)それぞれ、(i)における1つ以上のマルチウェルプレートに播種されたか、または1つ以上の別個のプレートに播種された、ヒト胚盤胞由来の幹細胞に由来する1つ以上の前駆体集団、を含み、但し、細胞に曝露されている1つ以上の物質の1つ以上の効果の測定を行う時点まで、播種する密度は、細胞が実質的にその増殖能力を維持することを許容する。
【0049】
この時間の間、播種されたhBS由来の細胞の、例えば、全ての胚葉から、心臓前駆体、肝細胞様前駆体、および神経前駆体のような前駆体タイプへの分化が観察され得る。
【0050】
本発明の1つの他の実施態様はまた、ヒト前駆体細胞の1つ以上の集団をある物質に曝露することにより、当該物質についてのヒトにおけるインビトロ毒性を検出および/または予測する方法に関し、方法は、以下の工程
(i)マルチウェルフォーマットプレート中に細胞を播種する工程
(ii)1つ以上の物質の1つ以上の濃度に播種された細胞を曝露する工程
(iii)細胞毒性および/または胚毒性の評価項目を分析する工程
(iv)必要に応じて、公知のインビボ毒性データに相関する工程、を包含する。
【0051】
アッセイは、マルチウェルフォーマット1536、384、96、48、24、12、または6ウェルにおいて行われ得る。96ウェルプレートの場合において、工程(i)において播種される細胞の数は、ウェル当たり、1個の細胞〜1M個の細胞、好ましくは1,000個〜100,000個、およびより好ましくは10,000個〜30,000個である。任意の工程(i)において、プレートのウェルはさらに、タンパク質、ペプチド、または細胞外マトリクス成分で、予め/または後にコートされ得る。
【0052】
工程(ii)における細胞の曝露は、1分間から60日間、好ましくは5分間から30日間、1日から20日間、およびより好ましくは5〜15日間の期間、行われ得る。
【0053】
工程(iii)の毒性分析は、本明細書で記載される任意の適切な評価項目により行われ得る。
【0054】
得られたインビトロデータはさらに、工程(iv)において、数学的予測モデルまたはそれゆえアルゴリズムにより、インビボデータに比較され得る。
【0055】
本発明の1つの特定の実施態様は、ヒト胚盤胞由来の幹細胞の1つ以上の集団をある物質に曝露することにより、当該物質についてのヒトにおけるインビトロ毒性を検出および/または予測する方法に関し、方法は、以下の工程
(i)未コートのまたはコート化マルチウェルフォーマット組織培養プレート中に細胞を播種する工程
(ii)10日間、ある物質のいくつかの濃度に播種された細胞を曝露する工程
(iii)ATP含量またはレサズリン変換を測定することにより分析する工程、を包含する。
【0056】
別の局面において、本発明は、薬物発見における、および/または安全性評価研究のための、本明細書におけるようなアッセイの使用に関する。
【0057】
なおさらなる局面において、本発明は、胚毒性、催奇形性研究のための、および/または欧州REACH法により特定される物質の評価のための、本明細書中に記載されるようなアッセイの使用に関する。
【0058】
本発明はまた、本明細書中に記載されるようなヒトにおける毒性を検出するための、または本明細書中にまた記載されるような方法の使用のための、キットに関し、当該キットは、
(i)ヒト胚盤胞由来の幹細胞
(ii)(必要に応じて)ポジティブコントロール物質およびネガティブコントロール物質
(iii)使用者マニュアル、を含む。
【0059】
本発明のキットはさらに、前駆体細胞および成熟様線維芽細胞からなる群より選択される、少なくとも1つのさらなるヒト細胞型を含み得る。
【0060】
本発明はまた、上記されるようなヒトにおける毒性を検出するための、またはまた上記されるような方法における使用のための、キットに関し、当該キットは、
(i)ヒト胚盤胞由来の幹細胞に由来する前駆体細胞
(ii)(必要に応じて)ポジティブコントロール物質およびネガティブコントロール物質
(iii)使用者マニュアル、を含む。
【0061】
本発明の1つの実施態様は、hBS、またはhBS細胞由来の細胞型を含むキットであり、これは必要に応じて遺伝子操作されるか、または必要に応じて胚葉特異的抗体と組み合わされ、一般的な細胞毒性についての評価項目と組み合わせて発生毒性関連の評価項目のパネルを定量的に検出するためのハイコンテントスクリーニングアルゴリズムのようなアルゴリズムを合わせて備える。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】10日間での生存細胞の株に正比例する、細胞内ATP含量に対する測定により決定されたhBS細胞(A)、hBS MP(B)、およびhFF細胞(C)についての増殖曲線。増殖試験は、hFFおよびhBS MPについて4回の独立した試行において(n=4)、ならびにhBS細胞について2回の独立した試行において(n=2)、行われた。エラーバーは平均の標準誤差を記載する。
【図2】(a)1日目、(b)4日目、(c)7日目、および(d)10日目でモニターされた96ウェルプレートにおけるhBS細胞の増殖および分化の位相差顕微鏡写真。0日目での播種密度60.000細胞/ウェル。
【図3】3つの細胞型、hFF、hBS MP、およびhBS細胞を用いたネガティブコントロール物質のサッカリン(Saccharin)(A、B)およびポジティブコントロール物質の5‐FU(C、D)についての濃度応答曲線。データは、ウェル当たりのRES還元(A、C)、および細胞内ATP含量(B、D)を測定することにより得られ、そして未処理/溶媒コントロールに対して正規化された。全ての実験は、3回の独立した試行において行われた(n=3)。エラーバーは、平均の標準誤差を記載する。エラーバーは平均の標準誤差を記載する。すべての実験は、3回の独立した試行において行われた。
【図4】3つの細胞型、hFF、hBS MP、hBS細胞を用いる、物質ATRA(A、B)および13‐CRA(C、D)についての濃度応答曲線。データは、ウェル当たりのRES還元(A、C)および細胞内ATP含量(B、D)を測定することにより得られ、そして未処理/溶媒コントロールに対して正規化された。全ての実験は、少なくとも3回の独立した試行において行われた(n×3)。エラーバーは、平均の標準誤差を記載する。ATRAおよび13‐CRAについて、hBS細胞および前駆体細胞は、毒性物質に対して、hFFよりも高い感受性を示す。hBSと前駆体細胞との間のIC50比は、10 000:1(ATRA)および4000:1(13‐CRA)である。hBS細胞とhFFとの間で、IC50値は、1:4(ATRA)よりも多く、および1:6(13‐CRA)よりも多かった。
【図5】a)は、ATPアッセイを使用した、10日間の曝露後の未分化のhBS細胞におけるATRAおよび13CRAについての濃度応答曲線を示す。ATRAおよび13CRAについてのIC50値は、それぞれ、30.38μMおよび15.85μMである。b)は、ATPアッセイを使用した、10日間の曝露後のhFFにおけるATRAおよび13CRA(13‐シスレチノイン酸)についての用量応答性曲線を示す。ATRAおよび13CRAについてのIC50値は、それぞれ、244.3μMおよび301.6μMである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0063】
hBS細胞、前駆体細胞、およびhFF細胞の培養
hBS細胞株SA002およびSA002.5を、以前に記載されるように確立し、そして特徴付けし(Heinsら、2004、国際公開第03/055992号パンフレット)、そしてNIH(http://stemcells.nih.gov/research/registry/cellartis.asp)およびUK幹細胞バンク(UK Stem Cell Bank)(http://www.mrc.ac.uk/Utilities/Documentrecord/index.htm?d=MRC003259)に登録した。細胞株を、4ng/mlヒト組換え塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)(Invitrogen、Carlsbad、California)を補充したVitroHES(商標)培地(Vitrolife、Kungsbacka、Sweden)中のマイトマイシン‐C不活化マウス胎児線維芽細胞(mEF)上に維持した。未分化のhBS細胞を、Swemed Stem Cell Tool(Swemed Lab International AB、Billdal、Sweden)を使用する機械的分離により、4〜5日毎に継代した。
【0064】
線維芽細胞様前駆体細胞を、hBS細胞コロニーの切片を200×200μmの切片に切断し、そして切片を凝集のために、ペトリ皿に、KO‐DMEM、20% FCS、1% Glutamax、1% NEAA、1% PEST、および0.1mM β‐メルカプトエタノール(全てGibco Initrogenから)に基づく培地中に置くことにより、作製した。浮遊する凝集物を、4日間に亘って形成し、その後、ウェル当たり約10凝集物の高密度にて、ゼラチンでコートされた組織培養皿中に播種した。増殖物が観察され、そして細胞をさらに5〜14日にて分離し、そして最初の継代にて1:1の分割にて継代した。培養物がコンフルエンスに達した場合、分割比を、通常、1:2に設定した。凝集物を播種した後、継代培養のために使用した培地は、natriumpyruvat+glutamax、10% FCS、4ng/ml bFBF、1% PEST非含有のDMEM高グルコースからなった。
【0065】
ヒト胚盤胞幹細胞由来の間葉前駆体(hBS‐MP)を、hBS細胞株 SA002.5からの派生物を介して、以下の工程を包含する方法により得た:
i)未分化のhBS細胞を表面上に播種する工程;
ii)2〜21日間、例えば、3〜10日間、好ましくは7日間、インキュベーションして、分化を許容する工程;
iii)新規な表面に酵素的に継代する工程;
iv)均一な間葉形態が得られるまで、工程(iii)を反復する工程;
v)得られたhBS‐MP細胞を培養する工程。
【0066】
hBS‐MPを、毒性試験の前に、10% FCS(ともにGibco Invitrogen Corporation、Paisley、Scotlandから)および4ng/ml bFGFを補充したDulbecco改変Eagle培地中に培養し、そして分割比1:10において4日毎に継代培養した。継代について、トリプシン(invitrogen)を使用する組織培養T‐25フラスコにおける培養。
【0067】
詳細には、拡張可能なhBS MPは、hBS細胞株SA002.5に由来した。それゆえ、hBSを、Tryple SelectTMで酵素的に分離し、そして1cm当たり1.5×105細胞にて、0.1%ゼラチンコート化細胞培養皿(BD Falcon/BD Biosciences、Bedford、MA、USA)上に播種した。分化の7日後、hBS細胞を単一細胞として、新しいゼラチンコート化培養皿に酵素的に継代した。この手順を、細胞集団が形態において均一になるまで、7日毎に反復した。この細胞集団の十分な特徴付けを、別の研究の一部として行い、hBS MPは、形態およびマーカー発現に関して胎児間葉の細胞に類似することを示す(原稿が提出される)。hBS MPを、未コートの組織培養フラスコ(BD Falcon(商標)、BD Biosciences)において、10% FBS、50U/ml ペニシリン/ストレプトマイシン、および4ng/ml bFGF(全てInvitrogen)を補充したDMEM培地中で培養し、そして1:10の分割比にて、4日毎に継代した。
【0068】
ヒト包皮線維芽細胞(hFF)を、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(CRL‐2429 ATCC、Manassas、VA)から得、そして10% FBSを補充したDulbecco改変Eagle培地中で培養し、1:5の分割比において4日毎に継代した。継代について、トリプシン(invitrogen)を使用する組織培養T‐25フラスコにおける培養。
【実施例2】
【0069】
増殖
10日間の毒性試験においてウェル当たりに播種される最適な細胞数を決定するために、一連の増殖試験を行った。播種のための最適な細胞数は、細胞の播種される数が、試験の測定日にシグナルに比例する範囲になければならない。hFF、hBS MP、およびhBS細胞を、ゼラチン(Sigma)コート化96‐ウェルプレートにおいて、10% FBSおよび50U/ml ペニシリン/ストレプトマイシン(全てInvitrogen)を補充したDMEM中、二倍希釈系列において、三連で播種し、最も高い細胞密度は、単一の細胞懸濁物として播種したhFFおよびhBS MPについて、16.000細胞/ウェル、および50〜100細胞の凝集物中に播種したhBS細胞について、60.000細胞/ウェルであった。hBSCを伴うプレートを、hBS細胞凝集物の再現可能な付着を支持するために、細胞播種の直後に、5分間、400gにて遠心分離した。培養培地を4日目および7日目に新しくした。10日目に、個々のウェルにおける細胞内ATP含量を、製造業者の指示に従って、CellTiterGloキット(Promega)を使用して測定した。試験を、hFFおよびhBS MPについて4回の独立した試行において、ならびにhBS細胞について2回の独立した試行において行った。さらに、hBS細胞増殖を、倒立顕微鏡(Nikon、Duesseldorf、Germany)を使用して10日目まで、毎日モニターした。次いで、写真を、デジタルカメラ(Nikon)を使用して、1、4、7、および10日目に撮影した。
【0070】
hBS細胞についての増殖試験(図1A)は、10日目でのウェル当たりの細胞の量は、0日目で播種した細胞の数に、15.000 hBS細胞/ウェルの播種密度まで正比例した。最も高い播種密度で、曲線が平らになる。hBS MPについての増殖試験の結果(図1B)は、10日目でのウェル当たりの細胞数と、播種された細胞数との間に、500 hBS MP/ウェルの播種密度まで、正比例を示唆する。より高い播種密度にて、曲線は平らになり、そしてさらに4000細胞/ウェル以降の播種密度から下降する。また、hFFについての曲線(図1C)は、10日目での細胞数と、播種された細胞数との間に、500 hFF/ウェルの播種密度まで正比例を示し、より高い播種密度にて平らになる。しかし、曲線は、4000細胞/ウェル以降の播種密度から水平状態のままである。これらの結果の比較後、本発明者らは、毒性試験におけるその後の使用のために、グラフの対数期から適切な播種する細胞数、すなわち、hFFについて500細胞/ウェル、hBS MPについて500細胞/ウェル、およびhBS細胞について5000細胞/ウェル、を選択する。さらに、hBS細胞増殖を、位相差顕微鏡を使用して10日間モニターした(図2)。写真は、10日間の間に、播種されたhBS細胞が増殖し、そして種々の組織様構造に分化することを実証する。
【実施例3】
【0071】
細胞毒性試験
hBS細胞コロニーを、約50〜100細胞の小さな凝集物に分離し、そしてゼラチンコート化96‐ウェルプレート(Nunc、Kamstrupvej、Denmark)において、20% FBS、1% ペニシリン‐ストレプトマイシン、1% Glutamax、0.5mmol/l N‐メルカプトエタノール、および1% 非必須アミノ酸(全てInvitrogenから)を補充した、Knock Out DMEMを含有する100Ml試験培地中に、5000細胞/ウェルの密度で播種した。hBS MPおよびhFF細胞を単一の細胞に分離し、そしてゼラチンコート化96‐ウェルプレート(Nunc)において、100Ml試験培地中に、500細胞/ウェルの密度で播種した。hBSCを伴うプレートを、播種後、5分間、400gにて直接的に遠心分離した。
【0072】
前駆体細胞およびhFF細胞を、単一の細胞に分離し、そして96‐ウェルプレートにおいて、100μl試験培地中に播種した。
【0073】
24時間後、細胞毒性試験を、100μlの毒性溶液を試験ウェルに添加することにより開始し、これは必要とされる末端濃度の2倍の濃度を有した(0日目)。毒性培地を、アッセイの4日目、7日目に交換し、そして10日目に、プレートを、細胞毒性についての異なる検出法を測定して、すなわち、製造業者の指示に従ってPromegaのCellTiterGloキット(Promega、Mannheim、Germany)を使用してATP含量を測定して、および以前に記載されるように(Evansら、2001)、蛍光物質レゾフリンへのレサズリン(Sigma、Stockholm、Sweden、CAS 62758‐13‐8)の還元を測定して、分析した。両方の評価項目を、マルチ検出リーダー(Fluostar Optima、BMG Labtech、Offenburg、Germany)を使用して、CellTiter Gloキットについては、発光を測定して、およびレサズリンアッセイについては、波長530nm(励起)および590nm(発光)での蛍光を測定して、分析した。
【実施例4】
【0074】
化学物質の試験および統計学的分析
以下の物質を試験した:ポジティブコントロールとして5‐FU(Invivogen、Toulouse、France、CAS 51‐21‐8)、ネガティブコントロールとしてサッカリンナトリウム(Sigma、CAS 128‐44‐9)、ATRA(Sigma、CAS 302‐79‐4)、13CRA(Sigma、CAS 4759‐48‐2)。サッカリンを、PBS中に、1g/mlの濃度に希釈し、そして4℃にてアリコート中に保存した。ATRAおよび13CRAをDMSO中に、0.1Mの濃度に溶解し、そして−20℃にてアリコート中に保存した。5‐FU溶液(Invivogen)およびDMSOを、試験培地中に直接的に希釈した。全ての化学物質を3倍希釈系列において試験し、最も高い濃度は:5‐FUについて27MM、サッカリンについて1mg/ml、ATRAおよび13CRAについて100MMであった。ATRAおよび13CRAについて、希釈系列はDMSO中で行い、次いで希釈物を試験培地に添加して、最終試験濃度を得た。このことは、全ての試験したATRAおよび13CRA試験試行において0.1%の等価なDMSO濃度を維持するためにおこなった。全ての実験を、少なくとも3回の独立した試行において行った。
【0075】
IC50値を、4パラメータのヒル関数をデータに近似することにより得た。全ての細胞型は5‐FUに対して毒性反応を示し、そしてサッカリンに対しては毒性を何ら示さなかった(図3を参照のこと)。IC50値の比較は、hBS細胞および前駆体細胞が、物質5‐FU、ATRA、および13CRAに対して、hFF細胞よりも非常に感受性であることを示した。前駆体細胞は、容易に培養されるhBS細胞型を表し、毒性物質に対するより高い感受性を維持しながら、酵素的継代を用いた大きな規模の培養を可能にする。
【0076】
さらに重要なことに、未分化のhBS細胞に対するATRAについてのIC50値は、13CRAの値よりも高く、ATPアッセイにおいて、それぞれ、25.76μMおよび15.85μM(図4を参照のこと)、ならびにレサズリンアッセイにおいて、それぞれ、17.31μMおよび14.51μMであった。同じ結果が、前駆体細胞について見出され、ここではIC50値は、hFFおよびhBS細胞に比較して劇的に減少され、ATRAについて0.0027μM、および13CRAについて0.0004μM、ならびにレサズリンアッセイにおいて、それぞれ、0.0009μMおよび0.00002μMであった。
【0077】
多能性奇形腫P19細胞に基づくマウス系において以前に報告された対応するIC50値(Adlerら、2005、遺伝子操作された奇形腫細胞において緑色蛍光タンパク質発現を使用することによる、分化誘導性の化学物質の検出、Altern Lab Anim.2005 Apr;33(2):91‐103;Adler論文(http://w3.ub.unikonstanz.de/v13/volltexte /2005/1619//pdf/Adler.pdf)は、それぞれ、0.005μMおよび0.38μMであり、すなわちマウス系は123倍で13CRAを検出できない[(IC50マウス(13CRA)/(IC50マウス(ATRA))は、76に等しく、すなわち0.38/0.005であり、一方(IC50ヒト(13CRA)/(IC50ヒト(ATRA))は0.62に等しくすなわち、15.85/25.76である)。ヒトおよびマウスの比をそれぞれ比較すると、0.62:76は123倍に等しい。
【0078】
表1:ヒト胚性幹(hBS)細胞、hBS MP、およびヒト包皮線維芽細胞(hFF)についての評価項目として生存度を用いて得られた、試験した化学物質についての平均IC50値。測定したパラメータは、ATP含量およびレゾフリンへのレサズリンの還元であった。全ての実験を少なくとも3回の独立した試行において行った(n≧3)
【0079】
【表1】

【0080】
2つの試験した細胞タイプ(hBS細胞およびhFF)のIC50値の比較は、hBS細胞が、物質5‐FU、ATRA、および13CRAに対して、hFF細胞よりも非常に感受性であることを示した(ATRAおよび13CRAについて、図4〜5を参照のこと)。多能性hBS細胞が、ATRAおよび13CRAに対してhFFよりもはるかに感受性であった。これらの知見は、生存度を測定した、公知の催奇形物質に対するマウス多能性細胞の、線維芽細胞培養物よりも高い感受性を実証する以前の結果(Laschinskiら、1991)と一致する。さらに、13‐CRAのIC50値は、本発明者らの試験系において、全ての試験した細胞型について、ATRAの値よりも一貫して低かった。多能性マウス細胞に基づいた以前のインビトロ催奇形性試験アッセイにおいて、13‐CRAは、ATRAよりも明らかに低い細胞毒性および催奇形性能を示した(Adlerら、2005)。13CRAは、マウス系において催奇形物質として分類されていないが、これはヒトにおいて強力な催奇形物質である。従って、本発明者らの結果は、ヒト発生毒物を検出するための、動物細胞に基づくアッセイを上回る、ヒト細胞ベースの試験系の利点を示す。
【0081】
2つの細胞型hBSおよびhFFについての、ATP測定におけるATRAと13CRAとの間の比較について、図4をまた参照のこと。表2および表3は、それぞれ、ATPアッセイおよびレザスリンアッセイを用いて測定した、IC50値間の比を示す。
【0082】
【表2】

【0083】
【表3】

【0084】
評価項目の生存度についての、2つの異なる検出方法、ATPアッセイおよびレサズリンアッセイ、の統計学的比較が、表4において示される。
【0085】
表4:評価項目の生存度についての2つの異なる検出方法の統計学的比較。測定したパラメータは、ヒト包皮線維芽細胞(hFF)、hBS、MP、およびヒト胚性幹(hBS)細胞における化学物質での処理後のウェル当たりの細胞内ATP含量およびレサズリン還元であった。濃度応答性曲線間の差異を、二方向ANOVA検定を使用して統計学的に比較した(***p<0.001;**p<0.01;p<0.05)。実験を、少なくとも3回の独立した試行において行った(n23)。
【0086】
【表4】

【0087】
hBS細胞における、両方の検出法で得られた結果の類似性は、hFFおよびhBS MPに比較して、それらのより低い増殖速度に起因し得る。さらに、他の細胞型に比較して、未分化のhBS細胞はより少ないミトコンドリアを含み、一方ミトコンドリアの数はそれらの分化の間に増加する(Choら、2006)。従って、より低い増殖速度、ならびにより低い数のミトコンドリアは、hBS細胞におけるATPアッセイとRESアッセイとの間の顕著でない差異についての説明を提供し、この差異は、非常に増殖性の、およびより多くのミトコンドリアを含むhFFおよびhBS MPにおいて増幅される。しかし、両方の検出技術は、IC50値を同じ濃度範囲に与え、従って両方ともが、生存度を測定するのに適切である。
【実施例5】
【0088】
胚毒性を決定するための物質のセットのスクリーニング
選択された多くの試験化合物を、マルチ‐ウェルフォーマット系において、hBS細胞もしくは前駆体細胞、またはその組み合わせを使用して試験する。参照系として、異なる胚潜在性を伴う物質のセット、例えば、6〜10個の物質を選択し、そして分析する。このセットは、非胚毒性、中程度の胚毒性から強力な胚毒性に及ぶ化学物質を含む。さらに、1つのネガティブなコントロール化合物(例えば、サッカリン)および1つのポジティブなコントロール化合物(例えば、5‐フルオロウラシル)を選択する。
【0089】
参照物質および試験物質を、初期の分化、および中胚葉、内胚葉、および外胚葉への分化に関与されるタンパク質に対して指向される抗体、または遺伝子操作されたhBSCにおける胚葉特異的プロモータにより駆動される蛍光タンパク質の発現を含む試験プロトコルを使用して分析する。分析のための適切な時期が重要であり、それゆえ選択された発生毒性の評価項目の時間依存性の発現が確立される。試験プレートにおける蛍光シグナルを定量するために、ハイコンテントリーダーを用いる。
【0090】
細胞毒性の評価項目について、IC50値を評価し、これは細胞の50%死滅を生じる化合物の濃度を記載する。発生毒性の評価項目から、ID50値を算出し、これは選択したマーカーの50%ダウンレギュレーションを導く物質の濃度を与える。これらの値を比較し、そして評価する。化学物質のインビトロ胚毒性を、各物質についてのIC50とID50値との間の差異を評価することにより算定する。胚毒性物質について、IC50値は明らかにID50値よりも高い。これらの結果を用いて、参照物質および試験物質の順位付けは、公知のインビボデータに対する比較を可能にする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0091】
【非特許文献1】Adler S、Paparella M、Pellizzer Cら、遺伝子操作された奇形腫細胞における緑色蛍光タンパク質発現を用いることによる、分化誘導性の化学物質の検出。実験動物に対する代替:ATLA、2005;33(2):91‐103。
【非特許文献2】欧州議会および諮問委員会のAnon.Regulation(EC)第1907/2006号。欧州委員会。http://eurlex.europa.eu/LexUriServ/site/en/oj/2006/l_396/l_39620061230en00010849.pdfにて利用可能.2007年8月7日に評価
【非特許文献3】Cho YM、Kwon S、Pak YKら。ミトコンドリア生合成における動的変化およびヒト胚性幹細胞の自発的分化の間の抗酸化酵素。Biochemical and biophysical research communications、2006;348(4):1472‐8。
【非特許文献4】De Sesso JM、Scialli AR、Goeringer GL。ニュージーランドホワイトウサギにおける5‐フルオロウラシル発生毒性の異常組織発生およびTTI、一炭素代謝の機能的なアナログ、によるその緩和における観察。Teratology、1995;51、172。
【非特許文献5】Evans SM、Casartelli A、Herreros Eら、非常に急性のインビボ毒性潜在性を予測するハイスループットインビトロ毒性スクリーニングの開発。Toxicology in vitro。2001;15(4‐5):579‐84。
【非特許文献6】Genschow E、Spielmann H、Scholz Gら、3つのインビトロ胚毒性試験における国際ECVAM検証における胚性幹細胞試験の検証。実験動物に対する代替:ATLA、2004:32(3):209‐44。
【非特許文献7】Gilbert SF。Developmental Biology。Sinauer Associates、Inc.Sunderland、Massachusetts、2003:750頁。
【非特許文献8】Genschow E、Spielmann H、Scholz Gら、3つのインビトロ胚毒性試験における国際ECVAM検証研究における胚性幹細胞試験の検証。実験動物に対する代替:ATLA、2004;32(3):209‐44。
【非特許文献9】Heins N、Englund MC、Sjoeblom C、Dahl U、Tonning A、Bergh C、Lindahl A、Hanson C、Semb H。「ヒト胚性幹細胞の誘導、特徴付け、および分化」。Stem Cells 2004;22:367‐376。
【非特許文献10】Laschinski G、Vogel R、Spielmann H。胚盤胞由来の正倍数性胚性幹細胞を使用する細胞毒性試験:インビトロ催奇形性スクリーニングに対する新規なアプローチ。Reproductive toxicology(Elmsford、N.Y.)、1991;5(1):57‐64。
【非特許文献11】Ross SA、McCaffery PJ、Drager UCら、胚発生におけるレチノイド。生理学的概説、2000、80(3):1021‐54。
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【非特許文献15】Stephens JD、Golbus MS、Miller TRら、妊娠初期の間5‐フルオロウラシルに曝露された胎児における複数の先天性奇形。American journal of obstetrics and gynecology、1980;15;137(6):747‐9。
【特許文献】
【0092】
【特許文献1】国際公開第03/055992号パンフレット、多能性ヒト胚盤胞由来の幹細胞株を確立する方法、Cellartis AB。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトにおける毒性の検出および/または予測のためのヒト胚盤胞由来の幹細胞に基づくインビトロ毒性アッセイであって、ここでアッセイは、ある物質についての毒性の新規な検出を可能にし、および/または非ヒトアッセイもしくは成熟ヒト細胞型に基づくアッセイに比較してより効果的に毒性を検出する、アッセイ。
【請求項2】
ヒトにおける毒性の検出および/または予測のための胚盤胞由来の幹細胞に由来するヒト前駆体細胞に基づくインビトロ毒性アッセイであって、ここでアッセイは、ある物質についての毒性の新規な検出を可能にし、および/または非ヒトアッセイもしくは成熟ヒト細胞型に基づくアッセイに比較してより効果的に毒性を検出する、アッセイ。
【請求項3】
インビトロ毒性アッセイであって、
(i)1つ以上のマルチウェルプレートの1つ以上のウェルに播種された、ヒト胚盤胞由来の幹細胞
(ii)(i)におけるマルチウェルプレートの別個のウェル、または1つ以上の別個のプレートの1つ以上のウェルに播種された、成熟ヒト細胞型
(iii)必要に応じて、それぞれ、(i)および/もしくは(ii)におけるマルチウェルの別個のウェルに、または1つ以上の別個のマルチウェルプレートの1つ以上のウェルに播種された、ヒト胚盤胞由来の幹細胞に由来する1つ以上の前駆体集団、を含み、
但し、細胞に曝露されている1つ以上の物質の1つ以上の効果の測定を行う時点まで、播種する密度は、細胞が実質的にその増殖能力を維持することを許容する、アッセイ。
【請求項4】
インビトロ毒性アッセイであって、
(i)1つ以上のマルチウェルプレートにそれぞれ播種されたヒト胚盤胞由来の幹細胞に由来する1つ以上の前駆体集団、
(ii)(i)におけるマルチウェルプレートの別個のウェルに播種されたか、または1つ以上の別個のプレートに播種された、成熟ヒト細胞型、を含み、
但し、細胞に曝露されている1つ以上の物質の1つ以上の効果の測定を行う時点まで、播種する密度は、細胞が実質的にその増殖能力を維持することを許容する、アッセイ。
【請求項5】
インビトロ毒性アッセイであって、
(i)1つ以上のマルチウェルプレートの1つ以上のウェルに播種されたヒト胚盤胞由来の幹細胞、
(ii)それぞれ、(i)における1つ以上のマルチウェルプレートのウェルに播種されたか、または1つ以上の別個のプレートにそれぞれ播種された、ヒト胚盤胞由来の幹細胞に由来する1つ以上の前駆体集団、を含み、但し、細胞に曝露されている1つ以上の物質の1つ以上の効果の測定を行う時点まで、播種する密度は、細胞が実質的にその増殖能力を維持することを許容する、アッセイ。
【請求項6】
インビトロ毒性アッセイであって、
(i)マルチウェルフォーマットにおいてウェル当たり3,000‐20,000個の細胞、より好ましくはウェル当たり10,000‐15,000細胞の、ヒト胚盤胞由来の幹細胞と、別個のウェル当たり100‐500個の細胞、より好ましくは別個のウェル当たり約250個の細胞の胚盤胞由来の幹細胞に由来するヒト前駆体細胞、
(ii)細胞は、1つ以上の物質の1つ以上の濃度に曝露され、
(iii)効果が、細胞毒性および/または胚毒性の評価項目から分析される、アッセイ。
【請求項7】
中胚葉、内胚葉、または外胚葉の細胞型、例えば、線維芽細胞、心筋細胞様前駆体細胞、肝臓および膵臓の前駆体細胞、ならびに神経前駆体のような、胚盤胞由来の幹細胞に由来するヒト前駆体細胞に基づく、請求項2〜6に記載のインビトロ毒性アッセイ。
【請求項8】
毒性がヒト胚毒性のようなヒト分化毒性(発生中のヒト細胞に対して測定される)である、請求項2〜7に記載のインビトロ毒性アッセイ。
【請求項9】
インビトロ毒性アッセイであって、ヒトにおける毒性の検出および/または予測のためのヒト胚盤胞由来の幹細胞、ヒト前駆体細胞、およびヒト成熟様細胞からなる群より選択される、少なくとも2つのヒト細胞型、例えば、少なくとも3つの、例えば少なくとも4つの、例えば少なくとも5つのヒト細胞型を含み、ここでアッセイは、ある物質についての毒性の新規な検出を可能にし、および/または非ヒトアッセイもしくは成熟ヒト細胞型に基づくアッセイに比較してより効果的に毒性を検出する、アッセイ。
【請求項10】
ヒト前駆体細胞がhBS‐MPである、請求項3〜9に記載のインビトロ毒性アッセイ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のインビトロ毒性アッセイであって、ここで使用される細胞は、1539、384、96、48、24、12、または6ウェルフォーマットにおいてウェル当たり、1個の細胞〜1M個の細胞、好ましくは1,000個〜100,000個、好ましくは10,000個〜30,000個、およびより好ましくは10,000個〜20,000個の範囲にある、インビトロ毒性アッセイ。
【請求項12】
細胞が、1分間〜60日間、好ましくは1分間〜30日間、およびより好ましくは5〜15日間の期間、物質とともにインキュベートされる、請求項1〜11のいずれかに記載のインビトロ毒性アッセイ。
【請求項13】
細胞が、10日間の期間、物質とともにインキュベートされる、請求項1〜12のいずれかに記載のインビトロ毒性アッセイ。
【請求項14】
非ヒトアッセイが、マウス胚性幹細胞およびマウス奇形腫細胞を含む群から選択されるマウス細胞ベースのアッセイのような、インビトロアッセイである、請求項1〜13のいずれかに記載のインビトロ毒性アッセイ。
【請求項15】
非ヒトアッセイが、マウス、ラット、またはブタのようなインビボアッセイである、請求項1に記載のインビトロ毒性アッセイ。
【請求項16】
非ヒトアッセイに比較して、ヒト胚毒性の毒性を少なくとも2倍、より効果的に検出する、請求項1〜15のいずれかに記載のインビトロ毒性アッセイ。
【請求項17】
非ヒトアッセイに比較して、ヒト胚毒性を少なくとも100倍、より効果的に検出する、請求項1〜16のいずれかに記載のインビトロ毒性アッセイ。
【請求項18】
非ヒトアッセイに比較して、ヒト胚毒性を少なくとも123倍、より効果的に検出する、請求項1〜17のいずれかに記載のインビトロ毒性アッセイ。
【請求項19】
ヒト成熟様アッセイに比較して、ヒト毒性を少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも7倍、少なくとも10倍、より効果的に検出する、請求項1〜18のいずれかに記載のインビトロ毒性アッセイ。
【請求項20】
評価項目が細胞毒性である、請求項1〜19のいずれかに記載のインビトロ毒性アッセイ。
【請求項21】
評価項目が遺伝子および/またはタンパク質発現の分析のような、胚毒性特異的である、請求項1〜20に記載のインビトロ毒性アッセイ。
【請求項22】
評価項目が比色法または蛍光光度法により測定される、請求項1〜21のいずれかに記載のインビトロ毒性アッセイ。
【請求項23】
レサズリン変換により毒性が可視化される、請求項1〜22のいずれかに記載のインビトロ毒性アッセイ。
【請求項24】
毒性がATP含量分析により可視化される、請求項1〜23のいずれかに記載のインビトロ毒性アッセイ。
【請求項25】
ヒトにおける毒性の検出のための、ヒト胚盤胞由来の幹細胞に基づくインビトロ毒性アッセイであって、非ヒトアッセイに比較して13CRAのヒト毒性をより効果的に検出する、アッセイ。
【請求項26】
ヒト胚盤胞由来の幹細胞の1つ以上の集団をある物質に曝露することにより、該物質についてのヒトにおけるインビトロ毒性を検出および/または予測する方法であって、方法は、以下の工程
(i)マルチウェルフォーマットプレート中に細胞を播種する工程
(ii)ある物質の1つ以上の濃度に播種された細胞を曝露する工程
(iii)細胞毒性および/または胚毒性の評価項目を分析する工程
(iv)必要に応じて、公知のインビボ毒性データに相関する工程、
を包含する、方法。
【請求項27】
胚盤胞由来の幹細胞に由来するヒト前駆体細胞の1つ以上の集団をある物質に曝露することにより、該物質についてのヒトにおけるインビトロ毒性を検出および/または予測する方法であって、方法は、以下の工程
(i)マルチウェルフォーマットプレート中に細胞を播種する工程
(ii)ある物質の1つ以上の濃度に播種された細胞を曝露する工程
(iii)細胞毒性および/または胚毒性の評価項目を分析する工程
(iv)必要に応じて、公知のインビボ毒性データに相関する工程、
を包含する、方法。
【請求項28】
ヒト胚盤胞由来の幹細胞の1つ以上の集団をある物質に曝露することにより、該物質についてのヒトにおけるインビトロ毒性を検出および/または予測する方法であって、方法は、以下の工程
(i)マルチウェルフォーマットプレート中に細胞を播種する工程
(ii)ある物質のいくつかの濃度に播種された細胞を曝露する工程
(iii)ATP含量またはレサズリン変換を測定することにより分析する工程
を包含する、方法。
【請求項29】
ある物質をスクリーニングする方法であって、以下
(a)(i)1つ以上のマルチウェルプレートの1つ以上のウェルに播種されたヒト胚盤胞由来の幹細胞、および(ii)(i)におけるマルチプレートの別個のウェルに、または1つ以上の別個のプレートの1つ以上のウェルに播種された成熟ヒト細胞型、および必要に応じて(iii)(i)および/もしくは(ii)のマルチウェルプレートの別個のウェルに、または1つ以上の別個のマルチウェルプレートの1つ以上のウェルに播種されたヒト胚盤胞由来の幹細胞に由来する前駆体集団の組成物を得る工程;ならびに
(b)必要に応じて、細胞を分化させるか、または細胞が分化することを許容する、工程;
(c)次いで、細胞と、1つ以上の物質とを合わせる工程;ならびに
(d)必要に応じて、細胞を分化させるか、または細胞が分化することを許容する、工程;
(e)細胞に対する物質の任意の効果を決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項30】
物質をスクリーニングする方法であって、以下:i)ヒト胚盤胞由来の幹細胞のウェル当たり3,000個〜20,000個の細胞、およびより好ましくはウェル当たり10,000個〜15,000個の細胞からなる組成物を得る工程;ii)必要に応じて、細胞を分化させるか、または細胞が分化することを許容する、工程;次いで、iii)細胞と物質とを合わせる工程;ならびにiv)細胞に対する物質の任意の効果を決定する工程、を包含する、方法。
【請求項31】
物質をスクリーニングする方法であって、以下:a)ヒト胚盤胞由来の幹細胞に由来する前駆体細胞のウェル当たり100個〜5,000個の細胞、およびより好ましくはウェル当たり100個〜500個の細胞の組成物を得る工程;b)必要に応じて、細胞を分化させるか、または細胞が分化することを許容する、工程;次いで、c)細胞と物質とを合わせる工程;ならびにd)細胞に対する物質の任意の効果を決定する工程、を包含する、方法。
【請求項32】
薬物発見および/または安全性評価試験における、請求項1〜25に記載されるようなアッセイの使用。
【請求項33】
胚毒性および/または催奇形性の研究のための、請求項1〜25に記載されるようなアッセイの使用。
【請求項34】
欧州REACH法により特定される物質の評価のための、請求項1〜25に記載されるようなアッセイの使用。
【請求項35】
請求項26〜31に記載されるような方法における使用のための、請求項1〜25に記載のヒト毒性を検出するためのキットであって、該キットは、
(i)ヒト胚盤胞由来の幹細胞
(ii)(必要に応じて)ポジティブコントロール物質およびネガティブコントロール物質
(iii)使用者マニュアル
(iv)(必要に応じて)媒体
を含む、キット。
【請求項36】
請求項35に記載のキットであって、該キットはさらに、前駆体細胞および成熟様細胞からなる群より選択される少なくとも1つのさらなるヒト細胞型を含む、キット。
【請求項37】
請求項22〜26に記載されるような方法における使用のための、請求項1〜25に記載のヒトにおける毒性を検出するためのキットであって、該キットは、
(i)ヒト胚盤胞由来の幹細胞に由来する前駆体細胞
(ii)(必要に応じて)ポジティブコントロール物質およびネガティブコントロール物質
(iii)使用者マニュアル
(iv)(必要に応じて)媒体
を含む、キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−505399(P2010−505399A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530797(P2009−530797)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008576
【国際公開番号】WO2008/040532
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(503071598)セルアーティス アーベー (10)
【Fターム(参考)】