説明

ヒト腫瘍壊死因子に特異的なモノクローナルなキメラ抗体

【課題】マウス抗体免疫発現に関する諸問題を克服し、免疫発現の低い、そして中和活性
の高い新規なTNF抗体を提供すること。
【解決手段】ヒト腫瘍壊死因子−α(TNFα)に特異的であり、かつTNFに仲介され
る種々の疾患や症状のin vivoでの診断および治療に有用な抗TNF抗体、そのフ
ラグメントおよび領域部分、並びに、マウスとのキメラ抗体をコードするポリヌクレオチ
ド、前記抗体の製造方法、並びに前記抗TNF抗体、そのフラグメント、領域およびそれ
らの誘導体の免疫学的分析や免疫学的治療への応用に関する種々のアプローチを提供する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は1991年3月18日に出願された米国特許出願07/670,827号の継続
出願であり、同出願の内容は参照によってすべて本願に取り込まれている。
免疫学と医学の分野に属する本発明はヒトの腫瘍壊死因子−アルファ(hTNFα);
そのフラグメント、領域部分(原文:regions)および誘導体;その薬用組成物お
よび診断用組成物、ならびにその産生、それによる診断および治療法に関する。本発明は
、またそのような抗体、フラグメント、領域部分をコードするヌクレオチド配列、ならび
にそのような配列を含むベクターおよび宿主と、さらにその製法とに関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍壊死因子−アルファ(TNFα;カケクチンとも称せられる)として知られるサイ
トカイン(cytokine)は、主として単球およびマクロファージによって内毒素な
いし他の刺激に反応して分泌される、17kDの蛋白質サブユニットの可溶性ホモトリマ
ーとしての、蛋白質である(Smith,R.A.et al.,J. Biol.Che
m.262:6951−6954(1987))。TNF由来の、膜に結合した26kD
の前駆体形もまた、記載されている(Kriegler,M.et al.,Cell
345−53(1988))。TNFについての総説は、Beutler,B.et a
Nature 320:584(1986):Old,L.J.,Science
30:630(1986):およびLe,J.et al.,Lab Invest.56
:2334(1987)を参照されたい。TNFは、もともと細菌ワクチン(bacil
lus Calmette−Guerin,BCG)または内毒素(Cariwell,
E.A.et alProc.Natl.Acad.Sci.USA 72:3666(
1975))の連続注射を受けた動物の血清中に見出された。
【0003】
TNFαをコードする遺伝子の発現は、単球/マクロファージ族の細胞に限定されるも
のではない。数種のヒトの非単球腫瘍細胞系列がTNFαを産生することが、報告されて
いる(Rubbin,B.Y.et al.,J.Exp.Med.164:1350(
1986);Spriggs,D.et al.Proc.Natl.Acad.Sc
i.USA84:6563(1987))。TNFはまた、CD4+およびCD8+末梢
血管血液Tリンパ球、または種々の培養されたTおよびB細胞系列によって産生される(
Cuturi,M.C.et alJ.Exp.Med165:1581(1987
);Sung,.−S.J.et al.,J.Exp.Med.168:1539(
1988))。
【0004】
蓄積されつつある証拠は、TNFが多面発現性生物学的活性を有する調節サイトカイン
であることを示す。これらの活性は、リポ蛋白質リパーゼ合成の阻害(カケクチン(ca
chectin)活性)(Beutler,B.et al.,Nature 316:5
52(1985))、多形核白血球の活性化(Klebanoff,S.J.et al
.,J.Immunol.136:4220(1986);Perussia,B.,
t al.,J,Immunol.138:765(1987))、細胞成育の阻害もし
くは刺激(Vilcek,J.et al.,J.Exp.Med.163:632(1
986);Sugarman,B.J.et al.,Science 230:943(
1985);Lachman,L.B.et al.,J.Immunol138:2
913(1987))、ある種の形質転換細胞タイプに対する細胞毒活性(Lachma
n,L.B.et al.,上掲文献;Darzynkiewicz,Z.et al.,
Canc.Res44:83(1984))、抗ウィルス活性(Kohase,M.
t al.,Cell 45:659(1986); Wong,G.H.W.et al
Nature 323:819(1986))、骨再吸収の刺激(Bertolini
,D.R.et al.,Nature 319:516(1986);Saklatov
ala,J.,Nature 322:547(1986))、コラゲナーゼとプロスタ
グランジE2産生の刺激(Dayer,J.−M.et al.,J.Exp.Med
162:2163(1985));そしてT細胞の活性化を含む免疫調節作用(Yoko
ta,S.et al.,J.Immunol140:531(1988))、B細胞
の活性化(Kehrl,J.H.et al.,J.Exp.Med166:786(
1987)、単球の活性化(Philip,R.et al.,Nature 323:8
6(1986))、胸腺リンパ球の活性化(Ranges,G.E.et al.,J.
Exp.Med167:1472(1988))、主要組織適合性遺伝子複合体(MH
C)クラスIおよびIIの細胞表面への出現の刺激(Collins,T.et al
Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:466(1986);Puj
ol−Borrell.R.et al.,Nature 326:304(1987))
も報告されている。
【0005】
TNFは、脈管内皮細胞に対する凝集誘導作用のような組織破壊に到る炎症支援作用(
Pober,J.S.et al.,J.Immunol136:1680(1986
))、好中球およびリンパ球付着増進作用(Pober,J.S.et al.,J.I
mmunol138:3319(1987))、マクロファージ、好中球および脈管内
皮細胞から血少板活性化因子を解放する刺激(Cammussi,G.et al.,
.Exp.Med.166:1390(1987))によっても知られている。
【0006】
最近の証拠によると、TNFが、多くの感染において(Cerani,A.et al
.,Immunol.Today :28(1988))、免疫不全、悪性形質変換性
疾患、例えばある種の悪性腫瘍に伴う悪液質において(Oliff,A.et al.,
Cell 50:555(1987))、自己免疫性疾患および移植片体宿主疾患(原文
:graft versus host pathology)において(Piguet,
P.−F.et al.,J.Exp.Med166:1280(1987))、発病
因に関係するようである。TNFと癌および感染疾患の病理の関連性は、しばしば宿主の
異化作用(物質分解代謝)に関係がある。癌患者における主要問題は、通常食欲不振に由
来する体重減少である。全体的消耗が、通常「悪液質」として知られる結果を惹起する(
Kern, K.A.et al.,J.Parent,Enter.Nutr12:2
86−298(1988))。悪液質は、進行性体重減少、食欲不振、腫瘍の成長に伴う
執ような身体のびらんを含む。基本的な生理上の障害は、エネルギー消費に対する食物摂
取の減退である。悪液質状態はかくして重要な疾病状態に関係し、癌死亡率の重要な要因
である。多数の研究が、TNFが癌と感染性疾患の病理と他の異化作用による悪液質の仲
介者となっていることを、示唆する。
【0007】
TNFはグラム陰性菌による敗血症と内毒素ショックとの病理生理学的帰趨において中
心的役割を演ずると考えられており(Michie,H.R.et al.,Br.J.
Surg.76:670−671(1989);Debets,J.M.H.et al
.,Second ViennaChock Forum,p.463−466(1989
);Simpson,S.Q.et al.,Crit.Care Clin.5:27−
47(1989))、その範囲は発熱、倦怠感、食欲不振、悪液質を含む。内毒素は、T
NFとその他のサイトカインの産生と分泌とを刺激する潜在的単球/マクロファージ活性
化剤である(Kornbluth,.K.et al.,J.Immunol137
:2585−2591(1986)およびその他)。TNFは、内毒素の生理的効果を模
倣するから、内毒素に関連する疾患の臨床的所見に対して責任ある中心的仲介者であると
結論付けられる。TNFおよび他の単球から誘導されるサイトカインは、内毒素に対する
代謝的ならびに神経ホルモン的反応を仲介する(Michie,H.R.et al.,
N.Eng.J.Med.318:1481−1486(1988))。ヒトの有志被検
者に対する投与は、発熱、頻脈、代謝の増大、ストレスによるホルモン分泌を含むインフ
ルエンザ様症状を伴う急性疾患を惹起する(Revhaug,A.et al.,Arc
h.Surg.123:162−170(1988))。グラム陰性菌による敗血症の患
者では、高レベルのTNFの循環が見られる(Waage,A.,et al.,Lan
cet1:355−357(1987);Hammerle,A.F.et al.,
econd Vienna Shock Forum p.715−718(1989);D
ebets,J.M.H.et al.,Crit.Care Med.17:489−4
97(1989);Calandra,T.et al.,J.Infec.Dis.1
61:982−987(1990))。
その殺腫瘍活性の故になされるTNFによる癌患者の治療は、545μg/m2/24
hrより多い投与で、健康人に対する内毒素4ng/kgの注射によって惹起されるのに
似た変化を惹き起こすことがわかり(Michie,H.R.et al.,Surge
ry 104:280−286(1988))、敗血症と内毒素に対する反応の主たる宿
主の仲介者としてのTNFの役割を支持している。ヒトまたはラットへの長期間にわたる
静脈内注入は食欲不振、体液うっ滞、急性反応、負の窒素バランス(すなわち、古典的異
化効果)に関係し、重篤な疾患において見られる多くの変化に対する原因であるという結
論に導かれる((Michie,H.R.et al.,Ann.Surg.209:1
9−24(1989))。
【0008】
上に論じたように、中和作用を有するTNFに向けられた受動的免疫療法はこの様な病
理状態で、増大したTNF産生と高められたTNFレベルに基づいて、グラム陰性菌敗血
症と内毒素症に有利な効果を有するであろう。
【0009】
後にTNFと同一物であることが見出されたカケクチンとして特徴付けられる変調因子
物質に対する抗体は、Ceramiet al.によって開示されている(ヨーロッパ特
許公報No.0212489,987年3月4日)。そのような抗体は、診断用免疫学
的検定と細菌感染におけるショックの治療とに有用であると言われていた。Rubin
t al.は、ヒトのTNFに対する単クローン抗体、そのような抗体を分泌するハイブ
リドーマ、そのような抗体を産生する方法、TNFの免疫学的検定におけるそのような抗
体の使用を開示した(ヨーロッパ特許公報No.0218868)。Yoneet al
.は、mAbを含む抗TNF抗体類と、それの、諸疾患、特に川崎病と細菌感染の免疫学
的診断における有用性とを開示した(ヨーロッパ特許公報No.0288088)。川崎
病(小児急性有熱性粘膜皮膚リンパ結節症侯群、Kawasaki,T..Allerg
16:178(1967); Kawasaki,T.,Shonika(Pedia
tirics)26:935(1985))の患者の体液は高レベルのTNFを含み、病
変の進展に関係があると言われていた((Yoneet al.,上記文献)。
【0010】
他の研究者等は、試験管内で中和作用を有する組換えヒトTNFに特異的であるmAb
を記載した(Liang,C−M.et al.,Biochem.Biophys.R
es.Comm.137:847−854(1986);Meager,A.et al
.,Hybridoma 6:305−311(1987);Fendlyet al.,
Hybridoma 6:359−369;Bringman,T.S.et al.,
ybridoma 6:489−507(1987);Hirai M.et al.,
.Immunol.Meth.96:57−62(1987);Moller,A.et
al.,(Cytokine 2:162−169(1990))。これらのmAbのあ
るものは、ヒトのTNFのマッピングと酵素の免疫学的検定の開発に使用され(Fend
lyet al.,上掲文献;Hiraiet al.,上掲文献;Molleret a
.,上掲文献)、また組換えTNFの生成の助剤とされた(Bringmanet a
.,上掲文献)。しかしながら、これらの研究は、ヒトにおける生体内診断または治療
に使用できるTNF中和抗体産生の基礎を提供するものではない。
【0011】
抗TNF免疫療法の採用に対する最も直接的な支持が、ヒト以外の動物の生体内保護の
研究から得られる。TNFに対する中和作用を有する抗血清またはmAbが、ヒト以外の
哺乳類について、実験的に惹起された内毒素血症と菌血症における致死的挑戦の後に不利
な生理的変化を停止し死を阻止することが示された。この効果は、例えば、げっ歯類致死
率検定と霊長類病理モデル系において実証された(Mathison,J.C.,et
al.,J.Clin,Invest.81:1925−l937(1988);Beu
tler,B.et al.,Science 229:869−871(1965);T
racey,K.J.et al.,Nature 330:662−664(1987)
himamoto,Y.et al.,Immuol.Lett.17:311−3
18(1988);Silva,A.T.et al.,J.Infect.Dis.1
62:421−427(1990),Opal,S.M.et al.,J.Infec
t.Dis.161:1148−1152(1990);Hinshaw,L.B.et
al.,Circ.Shock 30:279−292(1990))。例えば、抗TN
FmAbを中和するF(ab')フラグメントは、ヒヒにおけるE.coli生菌によっ
て惹起された敗血症によるショックを阻止することができた(Tracey,K.J.
t al.,上掲文献)。
【0012】
hTNFαの推定されるレセプター結合位置がEckとSprangとによって示され
た(J.Biol.Chem.264(29),17595−17605(1989))
。彼等は、TNFαのリセプター結合位置をアミノ酸11−13、37−42、49−5
7および155−157と同定した。国際特許出願WO91/02078(優先権主張日
;1989年8月7日)は、次の様なエピトープ、すなわち1−20、56−77および
108−127の少なくとも一つ、1−20、56−77、108−127および138
−149の少なくとも二つ、1−18、58−65、115−125および138−14
9のすべて、1−18、および108−128のすべて、56−79,110−127お
よび135−または136−155のすべて、1−30、117−128および141−
153のすべて、1−26,117−128および141−153のすべて、22−40
、49−96または−97、110−127および136−153のすべて、12−22
、36−45、96−105および132−157のすべて、1−20と76−90の両
者のすべて、22−40、69−97,105−128および135−155のすべて、
22−31および146−157のすべて、22−40および49−98のすべて、22
−40、49−98および69−97の少なくとも一つ、そして22−40と70−87
の両者を有するモノクローナル抗体に結合することのできるTNFリガンドを、開示して
いる。
【0013】
今日までのところ、ヒトにおける抗TNFmAb療法についての実験は限られている。
一つのフェイズI研究では、14人の重篤な敗血症ショックの患者が、中和作用を有する
マウスの抗TNFmAbを0.4−10mg/kgの投与を1回受けた(Exley,A
.R.,Lancet 335:1275−1277(1990))。しかしながら、1
4人中7人の患者がこの治療に対してヒトの抗マウス抗体反応を起こし、マウス抗体の重
鎖(原文;heavy chain)および軽鎖(原文;light chain)部分に
よる免疫発現による既知の諸問題をこうむった。そのような免疫発現は、続く投与の有効
性を減じ、マウス抗TNF抗体の診断的または治療的投与を受けた患者に、免疫拒絶反応
の故に、治療効果を無効にすることがある。
【0014】
重篤な移植片体宿主疾患(原文;graft vs host pathology)を
患う患者に対するマウスTNFmAbの投与についてもまた報告されている(Herve
,P.et al.,Lymphoma Res:591(1990))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、マウス抗体免疫発現に関する諸問題を克服し、免疫発現の低い、そして中
和活性の高い新規なTNF抗体の提供が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的は、従来技術の欠陥を克服することである。
【0017】
本発明の他の目的は、マウス抗組織壊死因子(TNF)抗体とキメラ抗体とそれらのフ
ラグメントおよび領域部分であって、生体内でTNFの生物学的活性を阻害ないし中和し
、ヒト腫瘍壊死因子−アルファ(hTNFα)に特異的であるものを提供することである
。一つの好適実施態様において、本発明の抗TNF抗体はA2抗体のTNFへの結合を完
全に阻害する。
【0018】
他の好適実施態様においては、本発明の抗TNF抗体は、(SEQ ID NO:1にお
ける)hTNFαの残基87−108または残基59−80および87−108の両者の
少なくとも5個のアミノ酸のエピトープと結合するが、(SEQ ID NO:1における
)アミノ酸配列1−20、11−13、37−42、49−57または155−157の
ようなTNFの既知あるいは推定されている結合部位には結合しない。
【0019】
本発明のそのような抗TNF抗体、そのフラグメント、領域部分は、マウス/マウスハ
イブリドーマのようなハイブリドーマと、マウス/ヒトキメラ抗体のような少なくとも可
変領域をコードする異種(非対応)核酸を発現する組換え細胞の両方から産生されるもの
を含む。すなわち、TNF特異性抗体およびそのフラグメントと領域部分である。
【0020】
ハイブリドーマと遺伝子工学技術を用いて抗TNF抗体、そのフラグメントおよび領域
部分を提供する本発明の他の目的は、上述の様なTNFに関連するヒトの疾病の生体内診
断および治療に有用な製品を提供することである。
【0021】
本発明の他の目的は、TNFαの部分に相当するhTNFαの抗体ポリペプチドを提供
することであり、これらのポリペプチドのエピトープがTNF特異性抗体に結合するとき
、生体内においてTNFαの生物学的活性を中和または阻害する。本発明のさらに他の目
的は、図15に示されるようなhTNFα(SEQ ID NO:1における)残基87−
108または59−80および87−108から選ばれる少なくとも5個のアミノ酸に相
当するポリペプチドの特定エピトープに結合するハイブリドーマまたは組換え宿主から産
生される抗体を提供することである。
【0022】
本発明のさらに他の目的は、生体内においてTNFαを阻害および/または中和する活
性を有し、悪液質を含むTNFαに関連する疾患、細菌性疾患、ウィルス性疾患、真菌性
疾患を含む急性慢性の感染性および寄生虫性疾患、または自己免疫疾患、アルコール誘発
性肝炎、悪性形質転換疾患等を含む急性および慢性の炎症性および免疫性疾患の診断およ
び治療のための、薬用および診断用の組成物として提供され得る抗TNFαおよび/また
はそのフラグメント、領域部分を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、生体内において、TNFα阻害ないし中和作用を有し、悪
液質を含むTNFαに関連する疾患、細菌性疾患、ウィルス性疾患、および真菌性疾患の
ような急性および慢性の感染性および寄生虫性疾患、自己免疫疾患、アルコール誘発性肝
炎、悪性形質転換疾患等を含む急性および慢性の炎症性および免疫性疾患の診断および治
療のための、薬用および診断用の組成物として提供することのできる抗TNFαおよび/
またはそのフラグメント、領域部分を提供することである。治療用に好適なのは、高親和
性抗TNFα抗体で、モノクローナルキメラ抗体であって、組換えによりまたはハイブリ
ドーマによって産生されるものを含み、それは少なくとも約1μg/ml、より好ましく
は、少なくとも約100ng/ml、もっとも好ましくは約15ng/mlの阻害投与量
50(ID50)で生体内でヒトのTNFαを阻害ないし中和する。
【0023】
本発明の他の様相によれば、抗TNFαmAbまたはキメラmAbまたはそのTNFα
結合性フラグメントは、TNFαの産生に関連する症状を病むと疑われる患者の体内でヒ
トTNFαを検出するための診断法において特に有用であり、本発明の高親和性マウス抗
TNFα抗体またはキメラ抗TNFα抗体が、患者または、検出された抗原抗体反応から
得られる生物学的物質と接触させられる方法を含む。本発明はまた、本発明の高親和性マ
ウス抗TNFα抗体および/またはキメラ抗TNFα抗体を、好ましくは、検出できるよ
うにラベルされた形で含む、生物学的流体(体液)中のTNFαを検出するためのキット
をも含む。
【0024】
本発明のキメラ抗体はmAbの有利な特徴の組合せを具体化するものである。本発明の
キメラ抗体は、マウスmAbと同様に、ヒトのTNFを認識し、これと結合する。しかし
、マウスmAbとは異なり、このキメラ抗体の「ヒトに特異的な」性質が、抗体に対する
免疫応答の可能性を低下させ、そして浄化値(原文;clearance)の低下により
血液循環中で長く維持される。さらに、本発明によって開示された方法を採用することに
より、どのような所望のヒト免疫グロブリンのイソタイプでもその一定領域において所望
の抗原結合部位と結合できる。
【0025】
本発明の一つの実施態様は、ヒトTNFαに特異的であるA2と名付けられる高親和性
のマウスmAbに関する。この抗体は、検出可能にラベルされた形で使用される。別の実
施態様では、hTNFαのポリププチド部分であって、そのペプチド部分に含まれるエピ
トープに特異的な抗体またはそのフラグメントによって無傷のTNFα分子の一部として
結合するときに、生体内においてTNFα活性を阻害または中和するものが提供される。
【0026】
本発明のさらに別の目的は、HまたはLのキメラ免疫グロブリン鎖であって、可変また
は不変(恒常)領域を有し、TNFの一以上のエピトープに対する特異性を有する、好ま
しくは、(SEQ ID NO:1における)hTNFαの、残基59−80および87−
108の両者の組合せまたは残基87−107の少なくとも5個のアミノ酸のエピトープ
、に対する特異性を有するものを提供することである。好適実施態様において、エピトー
プアミノ酸は、(SEQ ID NO:1における)hTNFαの11−13、37−42
、49−57または155−157の少なくとも一つの残基からのアミノ酸を含まない。
ヒト/マウス−キメラ免疫グロブリン鎖は、天然のヒト免疫グロブリン中に存在するもの
に実質的に類似の不変(C)領域と、好ましくはTNFエピトープに対する高親和性と所
望の特異性を有する可変(V)領域を含む。本発明はまた、分子全体が所望の抗原認識作
用および結合作用を示すように会合させられたキメラHおよびL鎖を有する抗原、そのフ
ラグメント、領域部分を提供する。
【0027】
具体的には、本発明は二つの軽鎖と二つの重鎖を有し、そのおのおのがヒトの不変領域
の少なくとも一部と非ヒト起源のhTNFαに対する特異性を有する(V)可変領域の少
なくとも一部とを有し、hTNFαの阻害性および/または中和性エピトープに対して高
親和結合性を有するキメラ抗体に関する。本発明はまたそのような抗体のフラグメントま
たは誘導体を含む。好ましくは、V領域は、非ヒト起源のものであり、もっとも好ましく
はマウス起源のものである。好適実施態様において、V領域は、A2 mAbのエピトー
プから誘導されるか、それに結合する。別の好適実施態様においては、キメラA2(cA
2)と名付けられるキメラ抗体か、cA2とTNFαの結合を競合的に阻害するヒト/マ
ウス−キメラ抗TNFmAbのエピトープと結合する抗体を提供する。
【0028】
好ましくは、このキメラ抗体は、生体内で、少なくとも約1μg/ml、より好ましく
は少なくとも約100ng/ml、最も好ましくは、少なくとも約15、30、50もし
くは80ng/mlのID50の投与で、hTNFαを阻害または中和する。
【発明の効果】
【0029】
予想外のこととして、本発明のmAbsは、EckおよびSprang(J.Biol
.Chem.,264(29),17595−17605(1989)によって、(SE
Q ID NO:1における)hTNFαの11−13、37−42、49−57および1
55−157である複数のアミノ酸であるとして示されたように、推定されたレセプター
結合位置に結合することなく、TNF−αの活動を遮断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明は、マウス抗組織壊死因子(TNF)抗体とネズミ/ヒトキメラ抗体とそれらの
フラグメントおよび領域部分であって、生体内(原文;in vivo)でTNF生物学
的活性を阻害ないし中和し、そして、ヒト腫瘍壊死因子−アルファ(hTNFα)に対し
て特異的であるもの、かつ、診断上および治療上の目的のために、通常の健康な被検体に
存在するよりも過剰の量で存在する抗TNF抗体特にgTNFαと反応活性である物質の
存在に付随した状態または病理学的状態にある被検体に、使用されるものを、提供する。
本発明の、抗体、ならびにそれらのフラグメント、領域部分および誘導体は、生体内で(
原文;in vivo)生物学的活性を阻害ないし中和するTNFのエピトープを認識す
るところの、V領域部分を少なくとも好ましく含有する。
【0031】
予想外のこととして、本発明のmAbsは、EckおよびSprang(J.Biol
.Chem.,264(29),17595−17605(1989)によって、(SE
Q ID NO:1における)hTNFαの11−13、37−42、49−57および1
55−157である複数のアミノ酸であるとして示されたように、推定されたレセプター
結合位置に結合することなく、TNF−αの活動を遮断することができる。
【0032】
本発明の好ましい抗体は、ネズミ抗体または高親和性ヒト/ネズミキメラ抗TNFα抗
体、ならびにそれらのフラグメントもしくは領域部分であり、それらは生体内で(原文;
in vivo)ヒトTNFαに対して効力のある阻害活性および/または中和活性を有
する。そのような抗体およびキメラ抗体は、精製された組み換えhTNFα(SEQ I
D NO:1)またはそれらのペプチドフラグメントを使用する免疫感作によって生じた
ものを含む。そのようなフラグメントは、(SEQ ID NO:1の複数のアミノ酸に相
当する)hTNFαの残基59−80および残基87−107の両方の組み合わせまたは
残基87−107の内の少なくとも5分子のアミノ酸のエピトープを含む。さらに、本発
明の好ましい抗体、抗TNF抗体のフラグメントおよび抗TNF抗体の領域部分は、(S
EQ ID NO:1の)hTNFαにおける複数のアミノ酸11−13、37−42、4
9−57または155−157の少なくともひとつから由来する複数のアミノ酸(原文;
amino acids)を認識しない。
【0033】
TNFの循環濃度は非敗血症個体中で約10pg/mlの程度で非常に低く、一方、敗
血症患者では約50pg/mlに達し(Hammerle,A.F.et al.,19
89,上掲書)、あるいは、病理学的にTNFでメディエートされたサイトで検出され得
るだけであるから、病理学的にTNFでメディエートされた免疫検定および療法の両方の
ために、生体内で(原文;in vivo)TNF阻害および/または中和する高親和性
および/または効力のある抗体、そのフラグメント、またはその領域部分を使用するのが
好ましい。そのような抗体、フラグメントおよび領域部分は、Kaとして発現された、た
とえば5×108-1、8×108-1、2×109-1、4×109-1、6×109-1
、8×109-1のような少なくとも108-1、より好ましくは少なくとも109-1
hTNFαに対する親和性を好適に有している。
【0034】
ヒトに対する治療学的使用に対して好適であるのは、TNF誘導IL−6分泌を遮断す
るところの、生体内で(原文;in vivo)TNFα阻害活性および/またはTNF
α中和活性を有する、本発明の高アフィニティを有するネズミとのキメラ抗体ならびにそ
れらのフラグメント、領域部分および誘導体である。ヒトに対する治療学的使用に対して
また好適であるのは、生体内外およびその位置において(原文;in vivo, in
situ, and in vitro)、ELAM−1およびICAM−1のような細胞
接着分子のTNF誘導発現を遮断すること、および、TNFマイトジエン活性を遮断する
ことを含めて、TNF誘導プロ凝固活性(原文;procoagulant activ
ity)を遮断するところの、高親和性を有するネズミとのキメラ抗TNFα抗体、なら
びにそれらのフラグメント、領域部分および誘導体である。
【0035】
好ましい抗TNF mAbsは、ネズミの抗TNFα mAb A2、キメラmAb cA
2 または、前記フラグメントおよび領域部分と同様に特別の結合特性を実質的に備えた
抗体のヒトTNFαへの結合を競合的に生体内で(原文;in vivo)阻害すること
のできるものである。本発明の好ましい抗体はA2およびcA2により認識されたエピト
ープを結合したものであり、そのエピトープは、(SEQ ID NO:1の相当するアミ
ノ酸として)hTNFαにおける59−80および/または87−108の複数のアミノ
酸中に含まれ、ヒトhTNFαの上記部分から由米する少なくとも1分子のアミノ酸を有
する少なくとも5分子のアミノ酸からなる。競合的阻害によるmAbの特異性および親和
性を決定する好適な方法は、Muller,Meth.Enzymol.92:589−
601(1983)により見出されることができ、その内容は参照によってこの明細書の
内容として完全に組み込まれる。
【0036】
本発明における抗体の例として、本発明のネズミmAb A2が、c134Aとして指
定される細胞系により産生される。キメラ抗体cA2が、c168Aとして指定される細
胞系により産生される。細胞糸c134Aは、セントコア セル バイオロジー サービス
デポジトリ(原文;Centocor Cell Biology Services De
pository)にあるリサーチセルバンク(原文;reserch cell ban
k)に預託され、また、細胞系c168A(RCB)は、セントコア コーポレート セル
カルチャー リサーチ アンド デベロップメント デポジトリ(原文;Centocor
Corporate Cell Culture Reserch and Develop
ment Depository)に預託されている。なお、両者とも、セントコア, 2
00グレート バレイ パークウェイ,マルバーン,ペンシルベニア州,19355に位置
している。そのc168A細胞系は、また、オランダ国ライデンのセントコアBVに預託
されている。
【0037】
さらに、c168Aは、本願の出願日に、培地安全預託(原文:Culture Sa
fe Deposit)として、メリーランド州のロックビルにあるアメリカン タイプ
カルチャー コレクション(原文;American Type Culture Coll
ection)に、預託された。
【0038】
用語の「エピトープ」は、抗体により認識されることができ、かつ抗体に結合されるこ
とのできるその部位を指すものとして、意味される。エピトープは、通常、複数のアミノ
酸または複数の糖側鎖のような、化学的に活性な複数の分子の集合表面からなり、特異的
な電荷特性のみならず特異的な三次元構造特性を有している。「阻害し、および/または
中和するエピトープ」とは、TNFリセプターへのTNFの結合を含めて、生体内外およ
びその位置において(原文;in vivo, in vitro and in situ)
、より好ましくは生体内で(原文;in vivo)、抗体が結合するとエピトープを含
有する分子または組織の生物学的活性を喪失するエピトープを意図する。本発明の好まし
い抗体、抗TNF抗体のフラグメントおよびその領域部分は、(SEQ ID NO:1に
おける)hTNFαの残基87−108のアミノ酸からの、または残基59−80および
87−108の両方のアミノ酸からの少なくとも1分子のアミノ酸を有する5分子のアミ
ノ酸を含むエピトープを認識する。本発明の好ましい抗体、抗TNF抗体のフラグメント
およびその領域部分は、(SEQ ID NO:1における)hTNFαの11−13、3
7−42、49−57または155−157のアミノ酸の少なくともひとつから由来する
エピトープを認識しない。好ましい態様においては、(SEQ ID NO:1における)
hTNFαの残基87−108または残基59−80および87−108の両方からの少
なくとも2分子のアミノ酸を含有する。他の好ましい態様においては、エピトープは、(
SEQ ID NO:1における)hTNFαの残基59−80および残基87−108か
らの少なくとも3分子のアミノ酸を含有する。その他の好ましい態様においては、エピト
ープは、(SEQ ID NO:1における)hTNFαの残基87−108または残基5
9−80および87−108の両方からの少なくとも4分子のアミノ酸を含有する。その
他の好ましい態様においては、エピトープは、(SEQ ID NO:1における)hTN
Fαの残基87−108または残基59−80および87−108の両方からの少なくと
も5分子のアミノ酸を含有する。その他の好ましい態様においては、エピトープは、(S
EQ ID NO:1における)hTNFαの残基87−108または残基59−80およ
び87−108の両方からの少なくとも6分子のアミノ酸を含有する。その他の好ましい
態様においては、エピトープは、(SEQ ID NO:1における)hTNFαの残基8
7−108または残基59−80および87−108の両方からの少なくとも7分子のア
ミノ酸を含有する。
【0039】
「抗原」は、その抗原のエピトープに結合することのできる抗体を産生するために動物
を誘導することのできる抗体によって結合されることのできる分子であるか、または分子
の一部である。一つの抗原は、一以上のエピトープを含有していても良い。上記の特異的
な反応は、抗原が高度に選択的な挙動で、その対応する抗体と反応することができるが、
他の抗原により引き起こされる多数の他の抗体とは反応することがないということを示す
ものとして、意味される。抗体、本発明の抗TNFαのフラグメントおよび領域部分を結
合する好ましい抗原は、(SEQ ID NO:1における)hTNFαの残基87−10
8または残基59−80および87−108の両方からのアミノ酸の少なくとも一つを含
有する少なくとも5分子のアミノ酸を含む。抗体、本発明の抗TNFαのフラグメントお
よび領域部分を結合する好ましい抗原は、(SEQ ID NO:1における)hTNFα
のアミノ酸11−13、37−42、49−57または155−157からのアミノ酸を
含まない。
【0040】
用語の「抗体」は、TNFによるTNFリセプターへの結合を阻害するTNFの部分を
結合することのできる、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体、ならびにそのフ
ラグメントおよび領域部分を、それらの誘導体と同様に、含んで意味される。フラグメン
トは、たとえば、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFvを含む。これらのフラグ
メントは、抗体そのもののFcフラグメントを欠き、循環からより迅速に清透になり(原
文;clear more rapidly from the circulation)
、そして抗体そのものよりも非特異的でない組織結合を有している(原文;may ha
ve less non−specific tissue binding than an
intact antibody)(Wahlet al.,J. Nucl.Med.2
4:316−325(1983))。これらのフラグメントは、この技術分野に良く知ら
れた方法、たとえば(Fabフラグメントを得るには)パパインのような酵素、あるいは
(F(ab')2を得るには)ペプシンのような酵素を使用するタンパク質分解により、抗
体そのものから得られる。本発明の抗TNF抗体の領域は、重鎖定常領域(Hc)、重鎖
可変領域(Hv)、軽鎖可変領域(Lv)および軽鎖定常領域(Lc)の少なくとも一つを
含み、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、それらのフラグメントおよび領域部分
が、TNFの一部を結合し、かつTNF生物学的活性を阻害するところの、少なくとも一
つの重鎖可変領域(Hv)または軽鎖可変領域(Lv)を含む。
【0041】
好適な態様においては、抗体は、ハイブリドーマまたは組み換え宿主により産生される
ところの、その抗体がA2、rA2、またはcA2と指定されるTNFのエピトープのア
ミノ酸を結合する、モノクローナル抗体である。他の好適な態様では、抗体は、A2によ
り認識されたエピトープを認識するところの、キメラ抗体である。更に好適な態様におい
ては、抗体は、キメラA2(cA2)と指定されるキメラ抗体である。
本発明におけるマウスとのキメラ抗体、フラグメントおよび領域部分は、個々の重(H
)鎖免疫グロブリン鎖および軽(L)鎖免疫グロブリン鎖からなる。キメラH鎖は、ヒト
H鎖C領域の少なくとも一部に結合された、TNFに対して特異的な非ヒト抗体のH鎖か
ら誘導された抗原結合領域を有する。
【0042】
本発明のキメラL鎖は、ヒトL鎖C領域(CL)の少なくとも一部に結合された、TN
Fに対して特異的な非ヒト抗体のL鎖から誘導された抗原結合領域からなる。
【0043】
ここで使用されているように、用語の「抗原結合領域」は、抗原と相互作用をし、抗原
に対するその特異性および親和性を抗体に付与するところのアミノ酸残基を含有する抗体
分子のその部位を示すものとされる。抗体領域は、抗原結合残基の適当な構造を維持する
ために必要な「読み取り枠」アミノ酸残基を含む。
【0044】
この明細書で使用されるものとして、用語の「キメラ抗体」は、一価、二価または多価
の免疫グロブリンを含む。一価のキメラ抗体は、キメラL鎖とジスルフィド架橋で結合さ
れたキメラH鎖により形成された二量体(HL)である。二価のキメラ抗体は、少なくと
も一つのジスルフィド架橋で結合された二つのHL二量体から形成された四量体(H22
)である。多価キメラ抗体は、たとえば、凝集するCH領域(たとえばIgMのH鎖また
はμ鎖から)を用いることによって得ることができる。
【0045】
本発明はまた、ネズミのまたはキメラ抗体、そのフラグメント、その領域部分、または
それらの誘導体について「誘導体」を規定し、その用語は、免疫グロブリンと機能的に類
似する分子種を生成する、切り縮められ、または修飾された遺伝子によりコードされたそ
れらのタンパクを含む。その修飾は、植物毒および細菌毒のような細胞毒タンパクをコー
ドする遺伝子配列の付加を含むが、それらに限定はされない。そのフラグメントおよび誘
導体は、この発明のいかなる宿主からも産生されることができる。また、抗TNF抗体、
フラグメントおよび領域部分は、細胞毒タンパクまたは化合物に生体外で(原文;in
vitro)結合されて、TNFリセプターを有する細胞を選択的に殺す細胞毒の抗TN
F抗体を産生する。
【0046】
同一または相違するV領域を特異的に結合するキメラH鎖およびキメラL鎖を有する抗
体、フラグメント、または誘導体は、たとえばSearset al.,Proc.Na
tl.Acad.Sci.USA 72:353−357(1975)により教示された
ように、個々のポリペプチド鎖の適当な会合により得られることができる。そのやり方の
場合、キメラH鎖(またはそれらの誘導体)を発現する宿主がキメラL鎖(またはそれら
の誘導体)を発現する宿主とは別々にして培養され、そして免疫グロブリンが別々に回収
されて会合される。また別に、複数の宿主が同時培養されることができ、複数の鎖が培地
中で自発的に会合させられ、会合した免疫グロブリン、フラグメンまたは誘導体が回収さ
れる。
【0047】
本発明のキメラ抗体の抗原結合領域は、ヒトTNFに対して特異的な非ヒト抗体から好
適に得られる。そのような非ヒト抗体をコードする好ましいDNA源は、抗体を産生する
細胞系、好ましくはハイブリドーマとして普通に知られている雑種細胞系を含む。好まし
いハイボリドーマはA2ハイブリドーマ細胞系である。
雑種細胞は、非ヒト抗hTNFα抗体産生細胞、典型的には天然のもしくは組み換えヒ
トTNFまたはヒトTNFαタンパク配列のペプチドフラグメントに対して免疫された動
物の脾臓細胞の融合によって形成される。また、非ヒト抗TNF抗体産生細胞は、血液、
脾臓、リンパ節またはTNFで免疫された動物の他の組織から得られたBリンパ球であっ
ても良い。
【0048】
本発明におけるキメラ抗体の抗原結合領域をコードするヌクレオチド配列に寄与する抗
体産生細胞は、霊長類のような非ヒト細胞またはヒト細胞の形質転換により産生される。
たとえば、抗TNF抗体を産生するBリンパ球は、エプスタイン−バールウィルス(原文
;Epstein−Barr virus)のようなウィルスで感染され、形質転換され
て、不滅の抗TNF抗体産生細胞を生成する(Kozboret al.,Immuno
l.Today :72−79(1983))。また、そのBリンパ球は、この技術分
野で良く知られているように、形質転換遺伝子または形質転換遺伝子産生物を与えること
により、形質転換されても良い。
【0049】
好ましくは、抗原結合領域部分は、ネズミ起源である。他の態様においては、抗原結合
領域部分は、他の動物種、特にウサギ、ラットまたはハムスターのような囓歯類から得ら
れる。
【0050】
永続的機能を与える第2の融合相手は、リンパ球様細胞またはそれ自身抗体産生細胞で
はないが悪性である形質細胞腫もしくはミエローマの細胞であっても良い。好ましい融合
相手細胞は、SP2/0(ATCC CRL1581)と略されるハイブリドーマSP2
/0−Ag14、およびミエローマP3X63Ag8(ATCC TIB9)もしくはそ
の誘導体(参照:Hartlow,E.et al.,Antibodies:A Lab
oratory Manual,Cold Spring Harbor Laborato
ry Press,Cold Spring Harbor,NY,(1988))を含む

【0051】
ヒトTNFαに特異的なmAbを産生するネズミハイブリドーマは、マウス融合相手細
胞たとえばSP2/0と、精製されたhTNFα、組み換えhTNFα、(SEQ ID
NO:1における)TNFの残基59−80および87−108から選択される5以上の
アミノ酸を含む、天然もしくは人工のTNFペプチドで免疫されたマウスの脾臓細胞との
融合によって形成される。マウスを免疫するために、従来の種々の異なる実験記録が参照
される。
【0052】
(SEQ ID NO:1における)TNFにおけるTNF残基87−108もしくは残
基59−80および87−108の両方、フラグメント、またはそれらの中に含まれるペ
プチドの組み合わせが、本来のTNF分子の脈絡(原文;context)中に存在する
ペプチド配列を認識する抗体を形成するために、免疫源として有効である。
【0053】
本発明における、抗体によって認識されるエピトープ、ならびにそのフラグメントおよ
び領域部分は、高TNF活性を有し、本発明の抗体、フラグメント、それらの可変領域部
分によって認識されるTNFの局所的エピトープを提供する、以下に示されるTNFのア
ミノ酸配列の各々もしくは両方の少なくとも一つのアミノ酸を含有する5分子以上のアミ
ノ酸を含む。
【0054】
59−80:Tyr−Ser−Gln−Val−Leu−Phe−Lys−Gly−Gl
i−Gly−Cys−Pro−Ser−Thr−His−Val−Leu−Leu−Th
r−His−Thr−Ile(SEQ ID NO:1のAA 59−80)および
87−108:Tyr−Gly−Thr−Lys−Val−Asn−Leu−Leu−S
er−Ala−Ile−Lys−Ser−Pro−Cys−Gln−Arg−Glu−T
hr−Pro−Glu−Gly(SEQ ID NO:1のAA 87−108)
【0055】
本発明の抗体を発生させるのに使用されることのできる特別のペプチドが、残基87−
108または残基59−80および87−108の両方の少なくともいずれかから選択さ
れるところの、抗TNF抗体、フラグメントおよびそれらの領域部分により結合されたT
NFエピトープを形成するために結合された、そして、その結合が抗TN生物学的活性を
発生させるアミノ酸の組み合わせを含む。そのようなエピトープは、TNFの他のアミノ
酸との結合により長さとして少なくとも5分子のアミノ酸のエピトープを生成するところ
の、残基87−108または残基59−80および87−108の各々から選択される少
なくとも1〜5分子のアミノ酸および22未満のアミノ酸を含む。
【0056】
本発明の抗体を、遊離のもしくは接合した形でまたは大きなペプチドの脈絡における本
来の配列として存在する時にそれらの配列を認識し、かつ結合する小さなペプチド配列に
する技術は、この技術分野において良く知られている。それらの抗体は、この技術分野で
知られたハイブリドーマまたは組み換え技術によって産生されたところの、Eネズミ抗体
、ネズミ/ヒト抗体およびヒト/ヒト抗体を含む。
【0057】
本発明のmAbsによって認識されたこれらのペプチド配列の同定は、結合特性を有す
る付加的なモノクローナル抗体を発生させるに必要な情報およびこの好適な適用に匹敵す
る治療学上の有用性を提供する。
【0058】
好適な態様において、エピトープのアミノ酸は、(SEQ ID NO:1における)h
TNFαのアミノ酸11−13、37−42、49−57および155−157に関連し
ない。
【0059】
細胞融合は、免疫学の分野における当業者に良く知られた標準的な手法によって達成さ
れる(Kohler and Milstein,Nature 256:495−497
(1975)およびU.S.特許第4,376,110号;Hartlow,E.et
al.,上掲書;Campbell,A.,"Monoclonal Antiodiy
Technology,"In:Laboratory Techniques in Bi
ochemistry and Molecular Biology,Volume 13
(Burdon,r.,et al.,eds.),Elsevier,Amsterd
om(1984);Kennettet al.,Monoclonal Antibod
ies(Kenettet al.eds.pp.365−367,Plenum Pre
ss,NY,1980);de St.Groth,S.F.,et alJ.Immu
nol.Meth35:1−21(1980);Galfre,G.et al,,
ethods Enzymol73:3−46(1981);Goding,J.W.
1987.Monoclonal AntibodiesPrinciples and
Practice.2nd ed.Academic Press,London,19
87);
【0060】
融合相手細胞系と、ハイブリドーマを選択しかつ融合し、およびmAbsをスクリーニ
ングするための方法とは、この技術分野において良く知られている(Hartlow,E
et al.,上掲書;Kawamoto,T.et al,,Meth.Enzymo
121:266−277(1986);Kearney,J.F.et al.,J.
Immunol123:1548−1550(1979):Kilmartin,J.
V.et al,,J.Cell Bol93:576−582(1982):Kohl
er,G.et al.Eur.J.Immunol:292−295(1976
);Lane,D.P.et al.,J.Immunol.Mueller,U.W.
et al.,J.Immunol.Meth87:193−196(1986);P
ontecorvo,D.,Somatic Cell Genet.1:397−400
(1975);Sharo,J.,et al.,Proc.Natl,Acad.Sc
i.USA 76:1420−1424(1979);Shulman,M.et al
Nature 276:269−270(1978);Springer,T.A.(
ed),Hybridoma Technology in the Bioscience
s and Medicine,Plenum Press,New York,1985;
and Taggart,R.T.et al,,Science 219:1228−1
230(1982))。
【0061】
本発明の、hTNFαに特異的なネズミmAbまたはヒトmAbは、抗体を分泌するハ
イブリドーマまたはトランスフェクトーマ細胞をネズミの腹腔内に注射するか、適当な時
間の経過後に高力価のmAbに達している腹水症液を収集し、それからmAbを単離する
かによって、大量に生産されることができる。そのような、非ネズミハイブリドーマ(た
とえばラットまたはヒト)によるmABの生体内で(原文;in vivo)の産生のた
めに、ハイブリドーマ細胞が、照射されたマウスまたは胸腺欠損マウス中で好適に成長さ
れる。
【0062】
また、抗体は、ハイブリドーマまたはトランスフェクトーマ細胞を生体外で(原文;i
n vitro)培養し、そして選択されたmAbをその細胞培地から単離することによ
って産生されることもできる。
【0063】
本発明のモノクローナル抗体は、(SEQ ID NO:1における)TNFの残基87
−108または残基59−80と87−108との両方の非隣接配列内に位置された非隣
接残基を含むエピトープを認識する。好適な抗TNFmAbは、これらの一以上のペプチ
ド配列に結合する能力によってヒトTNFαのそのリセプターへの結合を阻害するもので
ある。これらの抗体は、(SEQ ID NO:1における)TNFの87−108および
/または110−128を含む配列のエピトープに結合することによって、TNFの活性
を遮断する。そのような結合は、ここに述べられたように、TNF活性を阻害するために
例証される。
【0064】
本発明の抗体をスクリーニングするために使用されることのできる特別なペプチドは、
少なくとも残基87−108または残基59−80と87−108との両方のいずれかか
ら選択されたところのアミノ酸の組み合わせを含み、それらのアミノ酸は、本発明の抗T
NF抗体、そのフラグメントおよびその領域部分により結合されたTNFのエピトープを
提供するために結合され、その結合は抗TNF生物学的活性を提供する。そのようなエピ
トープは、少なくとも1〜5分子のアミノ酸および22未満のアミノ酸を含むか、または
残基59−80および87−108の各々のアミノ酸を含み、それらは少なくとも5分子
長のアミノ酸のエピトープを形成する。
【0065】
抗TNF活性抗体の組み換え体の発現
アミノ酸配列中に(SEQ ID NO:1における)hTNFαの残基87−108ま
たは残基59−80と87−108との両方のいずれかが含まれたエピトープを結合しか
つTNFを阻害するところの、組み換え体であるネズミ抗体、またはネズミ/ヒトキメラ
抗体もしくはヒト/ヒトキメラ抗体は、ここに提供された教示に基づく既知の手法を使用
する本発明に従って提供される。
【0066】
本発明の抗TNF抗体をコードするDNAは、重鎖定常領域(Hc)、重鎖可変領域(
v)、軽鎖定常領域(Lc)および軽鎖可変領域(Lv)の内の少なくとも一種をコード
するところの、ゲノムDNAまたはcDNAであっても良い。ネズミのV領域における抗
原結合セグメントをコードするDNA源としての染色体遺伝子フラグメントを使用するこ
との外に取り得ることは、キメラ免疫グロブリン遺伝子の構成のためのcDNAを使用す
ることであり、このことはLiuet al.,(Proc.Natl.Acad.Sc
i.,USA 84:3439(1987)およびJ.Immunology 139:3
521(1987)により報告されており、その内容は参照することによってここに完全
に組み込まれる。cDNAを使用するには、所望のタンパクを合成するために宿主細胞に
好適な遺伝子発現要素が遺伝子と結合されることを、要する。cDNA配列の使用には、
適当なRNAスプライシング系を欠いている細菌または他の宿主中でcDNA配列が発現
されることができるという点で、(イントロンを含む)ゲノム配列を使用する以上に利点
がある。
【0067】
本発明におけるネズミのキメラ抗体、フラグメントおよびそれらの領域部分の定常(C
)領域をコードするヒト遺伝子は、ヒト胎生肝の遺伝子ライブラリーから、既知の方法に
より得られることができる。C領域をコードするヒト遺伝子は、ヒト免疫グロブリンを発
現し産生するものを初めとするヒト細胞から得られることができる。ヒトCH領域は、既
知のクラス、またはガンマ、μ、α、δまたはεを初めとするヒトH鎖のイソタイプおよ
びG1、G2、G3およびG4のようなヒトH鎖のサブタイプのいずれからも得られるこ
とができる。H鎖のイソタイプは抗体の種々のエフェクター機能に対して応答するので、
H領域の選択が、所望のエフェクター機能、たとえば補体結合または抗体依存性細胞障
害(ADCC)における活性によって案内される。好ましくは、CH領域は、ガンマ1(
IgG4)、ガンマ3(IgG3)、ガンマ4(IgG4)またはμ(IgM)から得ら
れる。
【0068】
ヒトCL領域はヒトL鎖イソタイプ、カッパまたはガンマから得られる。
【0069】
ヒト免疫グロブリンのC領域をコードする遺伝子は、標準的なクローニング技術によっ
てヒト細胞から得られることができる(Sambrook,J.et al.,(Mol
ecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Esi
tion,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring
Harbor,NY(1989) and Ausbel et al,eds.Curre
nt Protocols in Molecular Biology(1987−199
1))。ヒトC領域遺伝子は、L鎖の二つのクラス、H鎖の五つのクラスおよびそれらの
サブクラスを表す既知のクローンから入手される。キメラ抗体フラグメントたとえばF(
ab')2およびFabは、適当に切り縮められたキメラH鎖遺伝子を設計することにより
得られることができる。たとえば、F(ab')フラグメントのH鎖部分をコードするキ
メラ遺伝子は、CH1ドメインおよびH鎖のヒンジ部分をコードし、切り縮められた分子
を生成するための翻訳停止コドンを有するDNA配列を含む。
【0070】
一般的には、本発明の、ネズミのまたはヒト/ネズミのキメラ抗体、フラグメントおよ
びその領域部分は、ネズミのまたはヒト/ネズミのキメラ免疫グロブリンをコードする遺
伝子を産生するために、TNFに特異的な抗体のH鎖およびL鎖における抗原結合領域を
コードするDNAをクローニングすること、およびこれらのDNAセグメントをCH領域
およびCL領域をそれぞれコードするDNAに結合することによって産生される。
【0071】
このように、好適な態様においては、結合(J)セグメントを備えた機能的に再編成さ
れたV領域のような非ヒト起源の抗原結合領域を少なくともコードし、かつ、ヒトC領域
の少なくとも一部をコードする第2DNAに結合された第1のDNAセグメントからなる
融合キメラ遺伝子が創生される。
【0072】
それ故に、抗体におけるV領域およびC領域をコードするcDNAならびに本発明にお
けるキメラ抗体を産生する方法は、以下の段階を含み、その概要が以下に説明される。
1. 抗TNF抗体を産生する細胞系から、および重鎖定常領域と軽鎖定常領域とを与え
る任意選択の付加的な抗体から、メッセンジャーRNA(mRNA)を単離し、クローニ
ングし、cDNAを産生すること。
2. L鎖遺伝子およびH鎖遺伝子における適当なV領域遺伝子および/またはC領域遺
伝子が、(i)適当なプローブで同定され、(ii)順序良く配列され(原文:sequ
enced)、および(iii)キメラ抗体のためにその他の抗体からC遺伝子セグメン
トまたはV遺伝子セグメントと一致させられる、そのような精製したmRNAから全長の
cDNAライブラリーを合成すること。
3. 上述されたように、クローニングされた特定のV領域遺伝子セグメントを、クロー
ニングされたC領域遺伝子を結合することによって、完全なH鎖またはC鎖をコードする
遺伝子が形成されること。
4. ネズミ/ネズミ、ヒト/ネズミ、ヒト/ヒトまたはヒト/ネズミ抗体を産生するた
めの原核細胞および真核細胞を含む、選択された宿主中でL鎖およびH鎖の発現と産生と
が行われること。
【0073】
全ての免疫グロブリンにおけるH鎖およびL鎖の遺伝子、およびそれらがコードするm
RNAにおける共通の特徴は、J領域である。H鎖およびL鎖におけるJ領域は異なる配
列を有するが、高度の配列相同性が(80%以上の割合で)各グループの間に、特にC領
域の近傍に、存在する。この相同性はこの方法で開発され、そして、H鎖およびL鎖にお
けるJ領域の一致した配列が、V領域セグメントをヒトC領域セグメントにその後に結合
するためのJ領域に有益な制限サイトを導入するためのプライマーとして使用するための
、オリゴヌクレヲチドを設計するのに使用される。
【0074】
ヒト細胞から調製されたC領域のcDNAベクターが、サイトの指定された突然変異誘
発によって修飾されて、ヒト配列中の類似の位置に制限サイトを配置することができる。
たとえば、完全なヒトカッパ鎖C(Ck)領域および完全なヒトガンマー1C領域(Cgam
ma-1)がクローニングされることができる。この場合、C領域ベクター源としてのゲノム
C領域クローンを基礎にした別の方法では、介在配列を除去するのに必要な酵素が存在し
ないような細菌系でこれらの遺伝子が発現されられない。クローン化されたV領域セグメ
ントが切り出され、そして、LまたはH鎖C領域ベクターに連結される。また別に、ヒト
gamma-1領域が、Fab分子H鎖部分をコードする遺伝子配列をそれによって発生する
停止コドンを導入することにより修飾される。結合されたV領域およびC領域を有するコ
ード配列が、原核または真核の適当な宿主中での発現のために、適当な発現ビークル中に
転移される。
【0075】
もしもトリプレット読み枠の改変または中断なしに結合が翻訳可能な配列となっている
ならば、二種のコードDNA配列が「操作的に結合された」(原文:operably
linked)と称される。もしも結合が、コード配列が発現するようにその遺伝子発現
要素の適当な機能を有するならば、DNAコード配列が、遺伝子発現要素に、操作的に結
合される。
【0076】
発現ビークルは、プラスミドまたは他のベクターを含む。これらの中でも好ましいのは
、適当な付着末端を有するいかなるVHまたはVL鎖配列もその中に挿入されることができ
るように設計された適当な制限サイトを有する機能的に完全なヒトCHまたはCL鎖配列を
運ぶビークルである。ヒトCHまたはCL鎖配列含有ビークルは、どのような適当な宿主中
でどのような所望の完全なHまたはL鎖の発現のための中間としても、働く。
【0077】
キメラ抗体、たとえばネズミ/ヒトまたはヒト/ヒトキメラ抗体が、典型的には、形成
のために使用されたネズミのHおよびL鎖V領域に備わっている染色体遺伝子プロモータ
により駆動される遺伝子から合成されることができ、その場合通常、スプライシングが、
ネズミのJ領域中のスプライス供与サイトとヒトC領域に先立つスプライス受容サイトと
の間であり、ヒトCH領域内で発生するスプライス領域で、発生し、ポリアデニル化およ
び転写停止がヒトコード領域の下流側にある生来の染色体サイトで起こる。
【0078】
cDNA遺伝子の発現のために有益である遺伝子発現要素は、(a)ウィルス性転写プ
ロモータおよびそれらのエンハンサー要素、たとえばSV40初期プロモータ(Okay
ama,H.et al.,Mol.Cell.Biol:280(1983))、
ラウス肉腫ウィルスLTR(Gorman,C.et al.,Proc.Natl.A
cad.,USA 79:6777(1982)、およびモロニーネズミ白血病ウィルス
LTR(原文:Moloney murine leukemia virus LTR)(
Grosschedl,R.et al.,Cell 41:885(1985))、(b
)スプライス領域およびポリアデニル化サイト、たとえばSV40後期領域から得られた
もの(Okayamaet al.,上掲書)および(c)ポリアデニル化サイト、たと
えばSV40中のそれ(Okayamaet al.,上掲書)を含む。
【0079】
免疫グロブリンcDNA遺伝子は、Liuet al.,上掲書およびWeidle
t al.,Gene 51:21(1987)に記載されたように、発現要素として、S
V40初期プロモーターおよびそのエンハンサー、ネズミ免疫グロブリンH鎖プロモータ
エンハンサー、SV40後期領域mRNAスプライシング(原文:SV40 late r
egion mRNA splicing)、ウサギβグロブリン介在配列、免疫グロブリ
ンおよびウサギβグロブリンポリアデニル化サイト、ならびにSV40ポリアデニル化要
素を使用して、発現されることができる。部分cDNA、部分ゲノムcDNA(Whit
tleet al.,Protein Engineering :499(1987)
)を有する免疫グロブリン遺伝子のために、転写プロモータはヒトサイトメガロウィルス
であり、プロモータエンハンサーはサイトメガロウィルスおよびネズミ/ヒト免疫グロブ
リンであり、また、mRNAスプライシングおよびポリアデニル化サイトは将来の染色体
免疫グロブリン配列由来である。
【0080】
一つの態様において、囓歯類細胞中のcDNA遺伝子の発現のために、転写プロモータ
はウィルス性LTR配列であり、転写プロモータエンハンサーはマウス免疫グロブリン重
鎖エンハンサーおよびウィルス性LTRエンハンサーのいずれかまたは両方であり、スプ
ライス領域は31bp以上のイントロンを含有し、ならびに、ポリアデニル化領域および
転写終結領域は、合成される免疫グロブリン鎖に相当する生来の染色体配列に由来される
。他の態様においては、他のタンパクをコードするcDNA配列は、哺乳類細胞中でタン
パクの発現を達成するために、上に引用された発現要素に結合される。
【0081】
各融合遺伝子が発現ベクター中で組み立てられ、あるいはそれに挿入される。キメラ免
疫グロブリン鎖遺伝子産生物を発現することのできる宿主細胞が、キメラHまたはL鎖コ
ード遺伝子で形質移入(トランスフェクション)され、あるいは、キメラH鎖遺伝子およ
びキメラL鎖遺伝子で同時形質移入される。トランスフェクトされた宿主細胞が、組み込
まれた遺伝子が発現するような条件下に培養され、発現した免疫グロブリン鎖または無傷
の抗体またはフラグメントが培地から回収される。
【0082】
一つの態様において、キメラH鎖またはキメラL鎖をコードする、またはそれらのタン
パクをコードする融合遺伝子が、宿主細胞を同時形質移入するために使用される分離した
発現ベクター中で組み立てられる。
【0083】
各ベクターは二種の選択可能な遺伝子を含有していても良く、第1の選択可能な遺伝子
は細菌系内での選択のために設計され、第2の選択可能な遺伝子は真核生物系内での選択
のために設計され、いずれのベクターも相違する一対の遺伝子を有する。この方法は、細
菌系内で融合遺伝子を産生し、それを増殖させるベクター内で行われる。細菌宿主内でそ
のように産生し増殖された遺伝子は、真核細胞を同時トランスフェクトし、所望のトラン
スフェクトされた遺伝子を有する同時トランスフェクトされた細胞の選択をするために引
き続き使用される。
【0084】
細菌系内での使用のための選択可能な遺伝子の例として、アンピシリンに対する耐久性
を付与する遺伝子、およびクロラムフェニコールに対する耐久性を付与する遺伝子がある
。真核生物系形質移入体(原文:eukaryotic transfectant)中
での使用のための好適な選択可能な遺伝子は、キサンチングアニンホスホリボシルトラン
スフェラーゼ遺伝子(省略名はgpt)およびTn5由来のトランスフェラーゼ遺伝子(
省略名はneo)を含む。gptを発現する細胞の選択は、この遺伝子によってコードさ
れた酵素はプリンヌクレオチド合成のための基質としてキサンチンを使用するが類似の内
生の酵素はそうではないという事実に基づく。(1)イノシン酸(原文:inosine
monophosphate)をキサンチン酸(原文:xanthine monoph
osphate)に変換するのを遮断するマイコフェノール酸(原文:mycophen
olic acid)、および(2)キサンチンを含有する培地中で、gpt遺伝子を発
現する細胞のみが生き残る。neoの産生物は、構成物質G418およびネオマイシンク
ラスの他の構成物質により、タンパク合成の阻害を遮断する。
【0085】
二種の選択手法が、二種の相違するDNAベクターで真核生物細胞中に導入された免疫
グロブリン鎖遺伝子の発現を選択するために、同時にまたは連続的に使用されることがで
きる。真核生物細胞のために、相違する選択可能なマーカーを含むことは必要ではなく、
それぞれが選択可能なベクターを含有しているH鎖ベクターおよびL鎖ベクターが、同時
トランスフェクトされる。適正な耐久性を有する細胞を選択した後に、大多数のクローン
が、H鎖ベクターおよびL鎖ベクターの両方が一体となった複製を含んでいる。
【0086】
また、キメラHおよびL鎖をコードする融合遺伝子は、同じ発現ベクターで組み立てら
れることができる。
【0087】
発現ベクターおよびキメラ抗体の産生のために、好適な宿主細胞系はミエローマ細胞で
ある。ミエローマ細胞は、トランスフェクトされた免疫グロブリン遺伝子によりコードさ
れた免疫グロブリンを合成し、組み立て、そして分泌することができ、免疫グロブリンの
グリコシル化のための機作を有する。特に好適な宿主細胞は、Ig非産生ミエローマ細胞
SP2/0(ATCC#CRL8287)である。SP2/0細胞は、トランスフェクト
された遺伝子によりコードされた免疫グロブリンのみを産生する。ミエローマ細胞は、培
地中またはマウスの腹腔中で成長することができ、そのような培地または腹腔中で、分泌
された免疫グロブリンが腹水液から得られることができる。他の適当な宿主細胞は、リン
パ球細胞たとえばヒトまたは非ヒト起源のBリンパ球、ヒトまたは非ヒト起源のハイブリ
ドーマ細胞、または種間ヘテロハイブリドーマ細胞を含む。
【0088】
本発明のキメラ抗体の構造を運ぶ発現ベクターは、トランスフォーメーション、トラン
スフェクション、接合、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈澱法、およびジエチル
アミノエチル(DEAE)デキストランなどのポリカチオンの投与のような生物化学的手
段、ならびにエレクトロポレーション、ダイレクトマイクロインジェクションおよびマイ
クロプロジェクティルボンバードメント(原文;microprojectile bo
mbardment)(Johnsonet al.,Science 240:1538
(1988))のような機械的手段等の種々の好適な方法によって、適当なホスト細胞に
導入される。リンパ系細胞にはエレクトロポレーションによってDNAを導入するのが好
ましい(Potteret al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA
:7161(1984);Yoshikawa,K.et al.,Jpn.J.Ca
ncer Res77:1122−1133)。この方法においては、組み込むDNA
の存在下に受容体細胞を電気パルスにさらす。一般的には、トランスフェクションの後に
、細胞を完全培地中で約24時間回復させる。次いで、選択培地の存在下に96穴カルチ
ャープレートに植え付ける。G418セレクションは、約0.4から0.8mg/mlの
G418を用いて行われる。ミコフェノール酸セレクション(原文;mycopheno
lic acid selection)は6μg/mlのミコフェノール酸と約0.25
mg/mlのキサンチンとを使用する。エレクトロポレーション技術は、Sp2/0細胞
に対して約10-5から約10-4の割合でトランスフェクション頻度をもたらすと期待され
る。プロトプラスト融合法では、リゾチームは、キメラ抗体遺伝子を有する組み換えプラ
スミドを包含しているカタルから、細胞壁を除去する。結果として得られるスフェロプラ
ストは、ポリエチレングリコールでミエローマ細胞と融合される。
【0089】
本発明の免疫グロブリン遺伝子は、哺乳動物の非リンパ系細胞中、酵母のような他の真
核細胞中、原核細胞中または特定のバクテリア中で、発現し得る。
【0090】
免疫グロブリンのH鎖およびL鎖を製造するという点で、酵母はバクテリアよりかなり
有用である。酵母は、糖鎖形成を含む翻訳後のペプチド修飾を行う。今日では、強力なプ
ロモーター配列と、酵母中で所望の蛋白を生産するために用いることのできる高複製数の
プラスミドとを使用するDNA組換え方法が多数存在している。酵母は哺乳動物のクロー
ン遺伝子生産物のリーダー配列を認識し、リーダー配列を生じさせるペプチド(即ち、プ
レペプチド)を分泌する(Hitzman,et al.,11th Internati
onal Conference on Yeast, Genetics and Mole
cular Biology, Montpellier, France, Septem
ber 13−17,1982)。
【0091】
酵母の遺伝子発現システムを用いると、キメラH鎖およびL鎖蛋白、ならびに組み込ま
れたマウスとのキメラ抗体、フラグメントおよび領域の製造、分泌および安定性の程度を
評価することができる。酵母がグルコースに富んだ培地で培養されたときに大量に生産さ
れる解糖酵素をコードする活性発現遺伝子から、プロモーターと終結要素とを組み込むと
いう遺伝子発現システムの酵母であれば、いかなるシリーズのものも使用することができ
る。公知の解糖遺伝子も非常に効率的な転写調節信号を与えることができる。例えば、ホ
スホグリセレートキナーゼ(PGK)遺伝子のプロモーターおよびターミネーター信号を
利用することができる。酵母中でクローン免疫グロブリンcDNAを発現するのに最適な
発現プラスミドを評価するにあたっては数多くの取り組みがなされている(Glover
, D.M., ed.,DNA Cloning, Vol. II, pp45−66,
IRL Press, 1985を見よ)。
【0092】
細菌株も、本発明で記述する抗体分子または抗体フラグメントの製造のホストとして使
用することができる。E.coli W3110(ATCC 27325)のようなE.c
oli K12株、サルモネラ ティフィ厶リウム(原文;Salmonella typ
himurium)もしくはセラティア マルセシェンス(原文;Serratia ma
rcescens)のような他のエンテロバクテリア、および様々なシュードモナス(原
文;Pseudomonas)種を用いることができる。
【0093】
宿主細胞と適合性のある種から得られるレプリコンおよびコントロール配列を有するプ
ラスミドベクターは、これらの細菌性宿主と関連して使用することができる。該ベクター
は、トランスフォームされた細胞中で表現型の選択を提供することのできる特定の遺伝子
は勿論のこと、複製部位も運ぶことができる。マウスとのキメラ抗体、フラグメントおよ
び領域の産生、または細菌中でクローンされた免疫グロブリンcDNAによってコードさ
れた抗体鎖の産生に関して、発現プラスミドを評価する数多くの試みがなされている(G
lover, D.M., ed.,DNA Cloning, Vol. I, IRL P
ress, 1985を見よ)。
【0094】
好ましい宿主は、生体内で(原文;in vitro)もしくは生体外で(原文;in
vivo)で成長した哺乳動物の細胞である。哺乳動物の細胞は、免疫グロブリン蛋白分
子に対して、翻訳後に、リーダーペプチドの除去、H鎖およびL鎖の折り畳みと組立、抗
体分子の糖鎖形成および機能性抗体蛋白の分泌等の修飾を行う。
【0095】
上記のリンパ球系起源の細胞に加えて、抗体蛋白を製造するための宿主として有用な哺
乳動物の細胞は、ベロ(原文;Vero)(ATCC CRL 81)またはCHO−K1
(ATCC CRL 61)のような繊維芽細胞起源の細胞を含む。
【0096】
哺乳動物の細胞では、クローンされたHおよびL鎖の発現に多くのベクター系を使用す
ることができる(Glover, D.M., ed.,DNA Cloning, Vol
. II, pp143−238, IRL Press, 1985を見よ)。引き続いて
異なる方法を行うことにより、完全なH22抗体を得ることができる。上で議論したよう
に、同じ細胞内で、H鎖とL鎖とを共発現させて、H鎖とL鎖との細胞内会合および結合
から完全な四量体のH22抗体を達成することができる。該共発現は、同じ宿主内で、同
じもしくは異なるプラスミドを使用することによって起こすことができる。H鎖とL鎖と
の両方の遺伝子は同じプラスミドに入れることができ、次いで該プラスミドを細胞にトラ
ンスフェクトし、それによって、両鎖を発現する細胞を直接的に選択する。他の方法とし
ては、片方の鎖、例えばL鎖をコードしたプラスミドで細胞を最初にトランスフェクトし
、次いで、得られた細胞系を第2の選択可能なマーカーを有するH鎖プラスミドでトラン
スフェクトする。いずれかの方法によってH22分子を製造する細胞系は、さらに他の選
択マーカーと接続したH鎖、L鎖およびHプラスL鎖の複製をコードするプラスミドでト
ランスフェクトされて、組み立てられたH22抗体分子の生産が高度化する、もしくはト
ランスフェクトされた細胞系の安定性が増すなどの、優れた特性を有する細胞系を産生す
る。
【0097】
モノクローナルまたはキメラ抗TNF抗体に加えて、本発明は、本願の抗TNF抗体に
特異的な抗イディオタイプ(以下、「抗Id」と略すことがある)抗体にも関するもので
ある。一般に、抗Id抗体は、他の抗体の抗原結合領域に関連する特有の決定基を認識す
る抗体である。TNFに特有の抗体が、イディオタイプあるいはId抗体と名付けられる
。抗Idは、同種および遺伝子型が同じである(例えば、マウス菌株)動物をId抗体源
とし、該動物をId抗体もしくはその抗原結合領域で免疫感作することによって調製する
ことができる。免疫感作された動物は、その動物を免疫感作した抗体のイディオタイプ決
定基を認識して反応し、抗Id抗体を製造する。該抗Id抗体はさらに他の動物に免疫反
応を起こさせ、抗−抗Id抗体を製造させる「免疫原」としても用いることができる。抗
−抗Idは、その抗原決定基が前記抗Idを誘起した元々の抗体と全く同じである可能性
がある。このようにmAbのイディオタイプ決定基への抗体を用いることによって、特異
性が全く同じである抗体を発現する他のクローンを同定することが可能である。
【0098】
したがって、本発明のTNFに抗して生成したmAbsは、BALB/cマウスのよう
な適切な動物内において、抗Id抗体を誘起するのに用いることができる。免疫感作され
たBALB/c等のマウスから取り出した脾臟細胞は、抗IdmAbを分泌する抗Idハ
イブリドーマを製造するのに使用することができる。さらに、得られた抗IdmAbをキ
ーホールリンペットヘモシアニン(KLH)のようなキャリアと結び付けることもできる
し、さらに他のBALB/cマウスを免疫感作するのに用いることもできる。これらのマ
ウスから取り出した血清は、あるTNFエピトープに特異的な元のmAbの結合特性を有
する抗−抗Id抗体を含んでいるであろう。
【0099】
本発明の抗体、フラグメントおよび誘導体は、抗TNF抗体、特にTNFと反応する物
質が正常で健康な人に存するレベルを越える量で存在することに関連する疾患あるいは状
態を有する患者の治療に有益である。上記の疾患としては、悪液質、循環虚脱および急性
あるいは慢性の細菌感染に起因するショックを含む敗血症候群;細菌性、ヴィールス性お
よび菌性の急性および慢性の寄生虫もしくは感染性の経過(原文;processes)
;全身系の紅斑性狼そうおよびリウマチ様関節炎のような急性および慢性の免疫および自
己免疫疾患;アルコール誘導肝炎;サイコイドーシスおよびクローン病のような慢性炎症
性疾患;播種性血管内凝固症のよな血管炎症性疾患;移植片対宿主病;川崎病;およびT
NF−分泌性腫瘍に関わる悪性病等を挙げることができるが、これらには限定されない。
【0100】
前記治療は、抗体、フラグメントおよび誘導体の一回分または複数回分を非経口的に投
与することからなる。人体用の薬剤に使用するものとして好適であるものは、本発明の、
高度の親和性があるhTNFα−阻害型および/または中和型のマウスとのキメラの抗体
、フラグメントおよび領域である。
【0101】
モノクローナル抗体は、哺乳動物の体内の薬剤が作用すべき位置に効力のある薬剤が届
くような方法であれば、いかなる方法で投与されてもよい。本発明の抗体の場合は、モノ
サイトとマクロファージとから放出されるTNFに到達して該TNFと結合することがで
きるということが重要である。蛋白は、経口で投与されると消化されやすいので、静脈注
射、皮下注射および筋肉注射などの非経口投与が、通常、吸収を最大限にするために用い
られる。
【0102】
モノクローナル抗体は個別の治療薬剤として投与されてもよいし、他の薬剤と組み合わ
せて投与されてもよい。モノクローナル抗体は単独で投与することもできるが、通常は、
投与のルートと標準的な薬剤投与のプラクティスとに基づいて選択された薬学的キャリア
と共に投与される。
【0103】
言うまでもなく、投与量は、この薬剤の薬力学的性質、投与の型およびルート;患者の
年齢、健康状態および体重;ならびに、症状の性質と程度、同時に行う処置の種類、処置
の頻度および望まれる効果などの公知の因子に応じて変化することになる。一般的には、
有効成分の一日の投与量は、体重1キログラ厶当たり約0.1から100ミリグラムであ
る。一日に体重1キログラムに対して、通常、0.5から50ミリグラム、好ましくは1
から10ミリグラムを、1回から6回に分け、あるいは持続的放出の形態で投与すると、
望ましい結果を得るのに効果的である。
【0104】
体内投与に適した投薬剤(投与組成物)は、一般的に、単位当たり約1ミリグラムから
約500ミリグラムの有効成分を含有するものである。これら薬剤組成物においては、有
効成分は、通常、組成物の全重量に対して0.5〜95重量%の量で存在することになる

【0105】
非経口投与用に、前記抗体は、薬剤として適用し得る非経口ビヒクルと共に、溶液、懸
濁液、エマルジョンあるいは凍結乾燥粉末として製剤することができる。前記ビヒクルの
例としては、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストローゼ溶液および5%のヒトの血清
アルブミンを挙げることができる。リポソームや固定オイルのような非水性ビヒクルも使
用することができる。ビヒクルあるいは凍結乾燥粉末は等張性(例えば、塩化ナトリウム
、マンニトール)および化学的安定性(例えば、緩衝液および防腐剤)を維持するための
添加剤を含んでもよい。得られた製剤を通常使用されている方法によって滅菌する。
【0106】
好適な薬剤キャリアは、この分野において標準的な参照文献であるA. Osol著の
「レミントンズ ファーマスーティカル サイエンス(原文;Remington's Ph
armaceutical Sciences, A.Osol)」の最新版に記載されて
いる。
【0107】
例えば、注射による投与に好適なある非経口組成物は、0.9%の塩化ナトリウム溶液
に1.5重量%の有効成分を溶解して調製する。
【0108】
本発明の抗体は、表面にTNFが結合した細胞に対する抗体依存性細胞障害作用(AD
CC)および/または補体依存性細胞障害作用(CDC)を媒介する(mediate)
作用を有するので、効力ある治療薬として好適である。上記作用には、エフェクター細胞
の内性源(原文;endogenous source)または外性源(原文;exog
enous source)のいずれか(ADCCに対する)、あるいは、補体成分(C
DCに対して)を利用することができる。本発明のマウスとのキメラ抗体、フラグメント
および領域、それらのフラグメントおよび誘導体は、免疫接合体として治療に用いること
ができる(Dilman, R.O.,Ann. Int. Med111:592−6
03(1989)を参照)。本発明のマウスとのキメラ抗体、フラグメントおよび領域、
それらのフラグメントおよび誘導体は、リチン−A、シュードモナストキシン、ジフテリ
アトキシンおよびTNF等の(限定はされない)細胞毒蛋白と結び付けることができる。
抗体または他の配位子に接合した毒は、この分野では公知である(例えば、Olsnes
, S.et al.,Immunol. Today 10:291−295(1989)
を参照)。植物および細菌の毒は、一般に、蛋白合成機構を破壊するものである。
【0109】
本発明の抗体は、放射性核種、細胞毒性剤および薬剤を含む(限定はされない)その他
の型の治療薬と接合させることができる。抗体と結合することができ、生体外での抗原の
位置に送ることのできる放射性核種の例としては、212Bi、131I、186Reおよび90
を挙げることができるが、これらは完全に研究されたものではない。放射線治療の技術分
野で知られていることであるが、放射性核種は細胞に局部的に細胞毒の照射を行い様々な
細胞内外傷をもたらすことによって、細胞毒性効果を作用させる。
【0110】
抗体と接合して、次いで生体外でで治療に用いることのできる薬剤としては、ダウノル
ビシン(原文;daunorubicin)、ドクソルビシン(原文;doxorubi
cin)、メトトレキセート(原文;methotrexate)およびマイトマイシン
C(原文;Mitomycin C)を挙げることができるが、これらに限定されるもの
ではない。細胞毒性薬剤は、DNA、RNAおよび蛋白の合成を含む細胞の重要なプロセ
スを阻害する。この分野で知られているこのクラスの薬剤のより完全な説明と作用のメカ
ニズムとに関しては、Goodman, A.G.,et al.,Goodman an
d Gilman's THE PHARMACOLOGINAL BASIS OF THE
RAPEUTICS, 7th Ed., Macmillan Publishing C
o., 1985を参照。
【0111】
本発明の抗体は、他のモノクローナルまたはマウスとのキメラ抗体、フラグメントおよ
び領域、または、リンフォカインまたは造血成長因子などと結び付けると、効果的に使用
することができる。このように結び付けることにより、抗体と相互作用するエフェクター
細胞の活性または数を増加させることができる。
【0112】
本発明の抗体、フラグメントまたは誘導体は、TNFの好ましくない副作用を妨げるた
めに、TNFによる治療と組み合わせて使用してもよい。癌治療の最近のアプローチは、
癌患者へのTNFの直接投与、または癌患者へのリンフォカイン活性化キラー細胞(LA
K)(Rosenberget al.,New Eng.J.Med313:1485
−1492(1985))もしくは腫瘍浸潤リンフォサイト(TIL)(Kurnick
et al.(Clin. Immunol. Immunopath38:367−3
80(1986); Kradinet al.,Cancer Immunol. Imm
unother24:76−85(1987); Kradinet al.,Tran
splant. Proc20:336−338(1988))による免疫治療等であ
る。現在、修飾されたLAK細胞もしくはTNF遺伝子でトランスフェクトされて多量の
TNFを産するようになったTILを使用した実験が進行中である。このような治療法は
、TNFの上記の多面的な作用によって引き起こされる数多くの望ましくない副作用を伴
いがちである。本発明によると、TNFを受容するものあるいは多量のTILを製造する
細胞を、本発明の抗体、フラグメントもしくは誘導体で同時に処理することにより、この
ような副作用を低下させることができる。効果的な投与量は上で述べた通りである。TN
Fの主要な抗腫瘍効果を損ねることなく副作用をブロックするためには、投与されるTN
FやTNFを産する細胞の投与量に応じて投与量レベルを調整する必要がある。当業者で
あれば不要な実験をすることなく、そのような投与量を決定する方法を知っている。
【0113】
固体の担体に付着した本発明のマウスとのキメラ抗体、フラグメントおよび領域、また
はそれらのフラグメントまたは誘導体は、液体または組織抽出物もしくは細胞抽出物から
TNFを取り除くのに用いることができる。好ましい態様では、上記のものは血液あるい
は血漿生成物からTNFを除去するのに用いられる。他の好ましい態様では、マウスとの
キメラ抗体、フラグメントおよび領域は、体外の免疫吸着装置で有効に利用される。この
ことは当該技術分野では知られていることである(例えば、Seminars in He
matology, Vol. 26(2 Suppl. 1)(1989)を参照)。患者
の血液あるいは他の被験者の液体を抗体の付着した担体に曝すと、循環するTNF(遊離
であるかもしくは免疫複合体中にある)は部分的あるいは完全に除去され、次いで、TN
Fを除去された液体は体内に戻される。この免疫吸収は、細胞の遠心分離ステップを伴っ
てあるいは伴わないで、持続流方式で実施することができる。例えば、Terman,
D.S.et al.,J. Immunol117:1971−1975(1976)
を参照。
【0114】
本発明は、以下に述べるように、検出用に標識された上記抗体、フラグメントおよび誘
導体をも提供する。これらはTNFαが介在する病気であることがわかっている、あるい
は、疑われている患者のTNFαを検出する診断方法に使用することができる。
【0115】
本発明の抗体は、試料中のTNFもしくは抗TNF抗体を検出あるいは定量する免疫検
定に有効である。TNFの免疫検定は、一般に、選択的にTNFに結合することのできる
検出用に標識された本発明の高親和性抗体の存在下で生物試料を保温し、試料に結びつい
た標識された抗体を検出することからなる。様々な臨床的免疫検定の手続はImmuno
assays for the 80' s, A. Voller et al., eds.,
UniversityPark, 1981に記載されている。
【0116】
したがって、本発明のこの面においては、細胞、細胞粒子または可溶蛋白を固定し得る
ニトロセルロースまたは他の固体担体に、抗体もしくは生物試料を添加する。該担体は適
当な緩衝液で洗浄され、次いで、検出用に標識されたTNFに特異的な抗体で処理される
。結合していない抗体を除去するために、固相担体は緩衝液で二度目の洗浄を受ける。前
記固体担体に結合した標識の量は従来の手段で検出される。
【0117】
「固相担体」あるいは「キャリア」という言葉は、抗原あるいは抗体を結合し得るあら
ゆる担体を示すものである。よく知られている担体は、ガラス、ポリスチレン、ポリプロ
ピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および変性セルロー
ス、ポリアクリルアミド、アガロースおよび磁鉄鉱を含む。本発明の目的を考慮すると、
キャリアの性質はある程度可溶か不溶性のものである。結合した分子がTNFあるいは抗
TNF抗体に結合し得る限り、担体材料は実質的にあらゆる実在する構造的形状を有する
ものであってよい。したがって、担体の形状は、ビーズのような球形、試験管の内面ある
いは棒の外面のような円筒状のものであってもよい。あるいは、その表面がシートやテス
トストリップ等のような平面状でもよい。好ましい担体はポリスチレンビーズを含む。当
業者であれば、抗体もしくは抗原を結合させるのに適当な他の多くのキャリアを知ってい
るか、または、ルーチン試験によって抗体もしくは抗原を結合させるのに適当な他の多く
のキャリアを確認することができる。
【0118】
抗TNF抗体の任意のロットの結合活性は、公知の方法に従って決定することができる
。当業者はルーチン試験によって有効で最適な分析条件を各分析について決定することが
できる。
【0119】
TNF特異性抗体を検出用に標識することのできる方法の1つは、該抗体を酵素に結合
させることによるものであり、酵素免疫分析(EIA)もしくは酵素結合免疫吸収分析(
ELISA)で用いられているものである。引き続いて該酵素をその基質に曝すと、該酵
素は基質と反応して、例えば、分光光度分析的手段、蛍光光度分析的手段もしくは視覚的
手段によって検出することのできる化学的部分を発生する。本発明のTNFに特異的な抗
体を検出用に標識するのに使用することのできる酵素は、リンゴ酸脱水素酵素、ブドウ球
菌ヌクレアーゼ、δ−5−ステロイド異性化酵素、アルコール酵母脱水素酵素、a−グリ
セリンリン酸脱水素酵素、リン酸トリオース異性化酵素、ホースラディッシュペルオキシ
ダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−
ガラクトシダーゼ、RNA分解酵素、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース6−ホスファ
ーゼ脱水素酵素、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼ等であるが、これ
らに限定されない。
【0120】
TNF特異性抗体を放射能を用いて標識することにより、放射性同位元素標識免疫測定
(RIA)の使用を通じてTNFを検出することができる(例えば、Work, T.S
.,et al.,Laboratory Techniques and Biochem
istry in Molecular Biology, North Holland P
ublishing Company, N.Y.(1978)を参照)。放射性同位体は
、ガンマカウンターもしくはシンチレーション計数計を使用する手段によって、またはオ
ートラジオグラフ法によって検出することができる。本願の目的に特に有用なアイソトー
プは3H、125I、131I、35Sおよび14Cであり、好ましくは125Iである。
【0121】
蛍光化合物でTNF特異性抗体に標識を付けることも可能である。蛍光性の標識が付い
た抗体が適当な波長の光に曝されると、その存在を蛍光によって検出することができる。
最も一般的に使用される蛍光性ラベリング化合物には、フルオレセインイソチオシアネー
ト、ローダミン、藻紅素、藻青紫、アロフィコシアニン(原文;allophycocy
anin)、o−フタルデヒド(原文;o−phthaldehyde)およびフルオレ
スカミン(原文;fluorescamine)がある。
【0122】
前記TNF特異性抗体は、152Euや他のランタニド元素のような蛍光発光金属を用い
て検出可能に標識を付けることもできる。これらの金属はジエチレントリアミンペンタ酢
酸(DPTA)もしくはエチレンジアミン−テトラ酢酸(EDTA)などの金属をキレー
ト化する化合物を用いてTNF特異性抗体に付着させることができる。
【0123】
TNF特異性抗体は、化学発光をする化合物に結合させることによって、検出可能に標
識することもできる。化学発光によって標識された抗体の存在は、化学反応の間に生じる
発光の存在を検出することにより決定される。特に有用な化学発光ラベリング化合物の例
は、ルミノール、イソルミノール、テロマティックアクリディニウムエステル(原文;t
heromatic acridinium ester)、イミダゾール、アクリディニ
ウム塩およびオキサレートエステルである。
【0124】
同様に、生物発光化合物も本発明のTNF特異性抗体、フラグメントおよび誘導体に標
識を付けるのに使用することができる。生物発光は、触媒蛋白が化学発光反応の効率を増
加させる生物系で発見された化学発光の一種である。生物発光蛋白の存在は発光の存在を
検出することによって決定される。標識を付けるという目的に対して重要な生物発光化合
物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンである。
【0125】
TNF特異性抗体、フラグメントまたは誘導体の検出は、例えば検出可能な標識がγ線
放射体である場合はシンチレーション計数計が、例えば標識が蛍光性のものである場合は
蛍光光度計が必要である。酵素標識の場合は、検出には、該酵素用の基質を使用する比色
法が必要である。比色法による検出では、同様に調製された基準と比較して基質の酵素反
応の程度を視覚的に比較ことも必要である。
【0126】
本発明の目的に対しては、上記分析で検出されたTNFが生物試料中に存在しても良い
。試料としては、TNFを含有するあらゆるものを使用することができる。好ましくは、
試料は、例えば血液、血清、リンパ、尿、炎症性滲出液、髄液、羊水、組織の抽出物もし
くはホモジェネートなどの生物液体である。しかしながら、本発明はこれらの試料のみを
使用した分析に限定されない。当業者には他の試料を使用するのに適した条件を定めるこ
とができる。
【0127】
生体内原位置の検査は、患者から組織標本を切除し、その標本に本発明の標識の付いた
抗体を結合させることによってなされる。本発明においては、標識の付いた抗体(もしく
はフラグメント)を生物試料に塗布またはかぶせるのが好ましい。そのようにすることで
、TNFの存在だけではなく、被検組織中のTNFの分布も決定することができる。本発
明を利用して、多岐に渡る組織学的方法(染色法などの)のいかなるものも上記生体内原
位置の検査を行うのに適宜変更し得ることを、当業者は理解するであろう。
【0128】
本発明の抗体、フラグメントもしくは誘導体は、「ツーサイト(原文;two−sit
e)」または「サンドウイッチ(原文;sandwich)」分析としても知られている
免疫測定分析において利用することができる。典型的な免疫測定分析においては、多量の
標識されていない抗体(あるいは抗体のフラグメント)は被検液体に不溶の固体担体に結
合しており、検出用に標識されている一定量の可溶抗体が固相の抗体、抗原および標識さ
れた抗体で形成された三元複合体の検出および/または定量をすべく添加される。
【0129】
一般的で好ましい免疫測定分析の1つとして、固相と抗体TNFとの二元複合体の形成
による試料からTNFを抽出するために、前記固相に結合している抗体を最初に被検試料
に接触させる「フォワード(原文;forward)」分析を挙げることができる。該分
析においては、適当な時間保温した後に、固体担体は、もし存在すれば未反応TNFを含
有する液体試料の残さを除去するために洗浄され、次いで、公知の量の標識された抗体(
「レポーター分子」として機能する)を含有する溶液と接触させられる。標識されていな
い抗体を通して固体担体に結合しているTNFと標識された抗体との複合体を形成するた
めの2度目の保温を経て、未反応の標識された抗体を除去するために、固体担体は2度目
の洗浄を受ける。このタイプの「フォワードサンドウイッチ(原文;forward s
andwich)」は、TNFが存在するかどうかを決定する単純な「イエス/ノー」分
析か、予めわかっている量のTNFを含有している標準試料について得られた測定値と標
識された抗体の測定値とを比較することによって定量的になされるものである。このよう
な「ツーサイト(原文;two−site)」または「サンドウイッチ(原文;sand
wich)」分析については、Wideが論文を書いている(Radioimmune
Assay Method, Kirkham, ed., E. & S. Livings
tone, Edinburgh, 1970, pp. 199−206)。
【0130】
他のタイプの「サンドウイッチ(原文;sandwich)」分析であって、やはりT
NFに関して有用であるものは、いわゆる「同時(原文;simultaneous)」
分析と「リバース(原文;reverse)」分析である。同時分析は保温ステップが1
段であり、そのステップでは、固体担体に結合した抗体と標識が付いた抗体との両方を同
時に被検試料に添加する。保温が終了すると、固体担体は液体試料の残渣と複合体を形成
していない標識の付いた抗体とを除去するために洗浄される。固体担体と結合した標識の
付いた抗体の存在は、従来の「フォワード」サンドウイッチ(原文;"forward"
sandwich)分析と同様にして決定される。
【0131】
「リバース(原文:reverse)」分析においては、最初に標識の付いた抗体の溶
液を流体試料に段階的に添加し、次いで、適当な保温時間を経た後に、固体担体に結合し
た標識の付いていない抗体を添加する、という方法が使用される。2度目の保温の後に、
被検試料の残渣と未反応の標識が付いた溶液とを除去するために従来法で固相を洗浄する
。固体担体に結合した標識の付いた抗体の測定は「同時(原文;simultaneou
s)」分析および[フォワード(原文;forward)」分析と同様に行う。一態様と
して、個々のエピトープに特異的な本発明の抗体を組み合わせによって、感度の良い3サ
イト(原文;three−site)免疫放射測定分析を構成することができる。
【0132】
今まで一般的に発明を記述してきたが、説明の為のみに本願に含まれ、そうでない旨の
記載がない限り本発明を限定することのない具体的な実施例を参照することによって、本
発明はさらに理解されるであろう。
【実施例】
【0133】
実施例I
マウス抗ヒトTNFモノクローナル抗体の生産
TNFモノクローナル抗体の臨床研究を容易にするために、A2と呼ばれる、阻害およ
び/または中和能のある高親和性のマウス抗ヒトTNF免疫グロブリンG1モノクローナ
ル抗体が生産された。10週齢のBALB/c雌マウスは、ジャクソン・ラボラトリー社
(バー・ハーバー)から得られた。0.4ml中に完全フロイント・アジュバント(ディ
フコ・ラボラトリーズ社から得られた)の40μgと共に乳剤化される、精製された
Coli由来組換えヒトTNFの40μgが、マウスの皮下および腹腔(以下、i.p.
と称することがある。)に注射された。一週間後、アジュバントを含まないTNFの10
μgが連続4回腹腔に注射された後、不完全フロイント・アジュバント中に含まれるrh
TNFの5μgが腹腔に注射された。最後の注射から8週間後、マウスは、TNFの10
μgで腹腔に追加免疫された。
【0134】
4日後、マウスは犠牲にされ、その脾臓が得られ、脾細胞の懸濁液が調製された。脾細
胞は、30%ポリエチレングリコール、PEG1450の0.3ml中で、非分泌性ハイ
ブリドーマの細胞であるSp2/0(ATCC CRL1581)と、脾細胞とSp2/
0との比が4:1で融合された。37℃で6時間の培養後、融合細胞は、2×104個の
Sp2/0細胞/ウエルの濃度で、96穴プレート中に0.2mlのアリクオットに配分
された。5×104個の正常BALB/c脾細胞が、各ウエルに添加された。
【0135】
使用される増殖培地は、熱不活性化された10%の子ウシ血清(ヒクローン(Hycl
one)社)、0.1mMのMEM非必須アミノ酸、1mMのピルビン酸ナトリウム、2
mMのL−グルタミン、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマ
イシン(ギブコ・ラボラトリーズ社)、および選択のためのヒポキサンチン−アミノプテ
リン−チミジン(以下、HATと称することがある。)(ベーリンガー・マンハイム社)
を含有するRPM1−1640培地からなる。
【0136】
固相ラジオイムノアッセイ(以下、RIAと称することがある。)は、rhTNFαに
特異的なモノクローナル抗体の存在する上清をスクリーニングするのに用いられた。この
アッセイについては、以下の実験2において詳述される。このアッセイにおける結合のバ
ックグラウンドは、約500cpmであった。上清は、2000cpm以上の結合を生じ
たならば陽性とみなされた。
【0137】
スクリーンされた322の上清の内の25が、RIAにより陽性を示した。これら25
の内、結合の値が最高(4800cpm)であった1つは、A2と名付けられた。陽性を
示すウエルは、添加されたマウス細胞に限界希釈された状態でサブクローンされた。中和
アッセイにおける前記上清の更なる分析に関して、A2は、阻害および/または中和活性
を示す唯一の陽性クローンとして発見された。このように、ハイブリドーマ系A2が選択
された。この系は、10%の子ウシ血清(ギブコ・ラボラトリーズ社)、0.1mMの非
必須アミノ酸、1mMのピルビン酸ナトリウム、2mMのL−グルタミン、100U/m
lのペニシリン、および100μg/mlのストレプトマイシンを含有するRPM1−1
640培地中に保存された。
【0138】
TNFの生物活性を阻害する抗TNF抗体は、上述したように、rTNFタンパクの代
わりに用いられる、TNF(SEQ ID No.1の)の87〜108のアミノ酸残基あ
るいは59〜80および87〜108の両アミノ酸残基、あるいはその中に含まれるペプ
チド結合の組合せにおける、少なくとも5つのアミノ酸を含むペプチドへの結合によって
、選択的にスクリーニングされ得る。
【0139】
実施例II
この発明における抗TNF抗体の特長
A.ラジオイムノアッセイ
coli由来のrhTNFは、pH9.6のBCB緩衝液中に1μg/mlの濃度
に希釈され、この溶液の0.1mlが各アッセイウエルに添加された。4℃で一昼夜培養
した後、各ウエルは、BCBで簡単に洗浄され、それから37℃で1時間、BCB中の1
%ウシ血清アルブミン(以下、BSAと称することがある。)でシールされた。各ウエル
は、それから0.05%ツイーン−20を含有するPBS(以下、PBS−Tweenと
称することがある。)で3回洗浄され、希釈されたA2腹水の70μlが、各ウエルに添
加された。各ウエルは、37℃で2時間培養され、PBS−Tweenで3回洗浄された
。その後、1%BSAを含有するPBS−Tweenの50μl中に含まれる、125Iで
標識された、ヒツジ抗マウスIg抗体のF(ab')2フラグメントのおよそ50,00
0cpmが、各ウエルに添加され、各ウエルは、更に37℃で2時間培養された。各ウエ
ルは、各々PBS−Tweenで4回洗浄され、切り離され、計数された。2つの測定の
結果が図1に示されている。
【0140】
PBSに含まれる5μg/mlのrhTNFは、60℃で加熱された。種々の時点にお
ける加熱処理されたTNF試料のアリクオットが、迅速に4℃に冷却され、BCB中で5
倍に希釈され、RIAマイクロプレートウエルをコートするのに使用された。RIAは、
上述した通りに行われた。2つの測定の結果が図2に示されている。60℃での培養は、
hTNFαの生物活性を実質上低下させたので、この実験は、A2モノクローナル抗体は
熱不活性化ヒトTNFαには結合できないことを示している。
【0141】
B.中和アッセイ
A2およびcA2の試料は、プロテインA・アフィニティー・クロマトグラフィーによ
り、C134A、C168A(上述)とそれぞれ呼ばれる細胞系のハイブリドーマ組織培
養上清から精製され、pH7.2のリン酸緩衝生理食塩水(以下、PBSと称することが
ある。)でダイアフィルトレーションされた。
【0142】
一定の腫瘍細胞系におけるTNFの細胞障害作用は、実験試料および生体液中における
invitroでのTNFレベルと適合する。TNF感受性標的細胞A637(ヒト横紋
筋腫細胞系)を用いる、Immunol143:3517−3523(1989)
に記載のAderkaet al.により改良された、Immunol138:6
35−640(1987)に記載のFeinmanet al.のアッセイ法は、TNF
の細胞障害作用を阻害あるいは中和するA2の能力を研究するのに用いられた。
【0143】
培養されたヒトA673/6細胞は、39℃で一昼夜、20μg/mlのシクロヘキシ
ミドの存在下、種々の濃度のモノクローナル抗体A2と、ナチュラル(原文;natur
al)のヒトTNFα(ジェンザイム社、ボストン、MA)あるいは組換えヒトTNFα
(サントリー(株)、大阪、日本)の40pg/mlと共に培養された。対照には、各ウ
エルにおいて、培地のみ、あるいは培地とTNFとを含有するものを用いた。細胞の死は
、ナフトール・ブルー・ブラックで染色することにより測定され、その結果が、630n
mの波長で光学的に測定された。この波長での吸光度は、現存する生細胞数と相関する。
【0144】
線量依存法において、A2は、天然および組換えヒトTNFの両方の細胞障害作用を阻
害あるいは中和したことがわかった(図3)。
【0145】
他の実験において、この阻害および/または中和活性の特異性が試験された。A673
/6細胞は、TNFのバイオアッセイの前に、3×104細胞/ウエルの割合で20時間
種培養された。rhTNF、coli由来組換えヒトリンホトキシン(TNFβ)、
およびcoli由来組換えネズミTNFの2倍系列希釈液が、調製された。A2ハイ
ブリドーマ上清は、希釈されたTNF試料液に等量添加され、その混合物は室温で30分
間インキュベートされた。0.1mlのアリクオットは、A673/6細胞を含むウエル
に移され、シクロヘキシミドの20μg/mlが添加され、細胞は39℃で一昼夜培養さ
れた。細胞は、それから固定され、細胞障害作用の評価のために染色された。結果は、A
2モノクローナル抗体は、ヒトリンホトキシン(TNFβ)(図4)あるいはネズミTN
F(図5)に作用しないが、rhTNFの細胞障害作用を特異的に阻害あるいは中和した
ことを示している。
【0146】
次に、A2モノクローナル抗体の非ヒト霊長類由来のTNFとの交叉反応性を分析する
ため、実験が行われた。
B514(ヒヒ)、J91(カニクイザル)、およびRH383(アカゲザル)の血液
からフィコール比重差遠心により分離された単球は、TNF生産を誘導するため、37℃
で3時間あるいは16時間、5%FBSおよび2μg/mlのcoliLPSを含む
RPMl 1640培地中で、1×105細胞/ウエルの割合で培養された。同じウエルか
らの各上清は、上述のA673/6細胞を用いるTNFのバイオアッセイが行われるまで
、4℃で20時間未満、貯蔵された。培養上清の2倍希釈液は、1μg/mlの最終濃度
で、培地あるいは精製されたA2モノクローナル抗体のいずれかと共に混合され、室温で
30分間インキュベートされ、そして、アリクオットは、指示細胞に移された。結果とし
ては、A2モノクローナル抗体は、ヒヒ、カニクイザルおよびアカゲザルの単球により生
産されるTNFの細胞障害作用を阻害あるいは中和していなかった。
【0147】
更なる実験は、チンパンジーTNFを用いて行われた。CH563(チンパンジー)の
血液から分離された単球は、上述のように、TNFを含有する上清を生成するために培養
された。これらの上清の生物活性を阻害あるいは中和するA2モノクローナル抗体の10
μg/mlの能力は、上記のようにアッセイされた。ヒトTNFは、ポジティブ・コント
ロールとして使用された。図6に示されるように、結果としては、A2モノクローナル抗
体は、ヒトTNFに対する活性能(図7)に類似した、チンパンジーTNFに対する阻害
および/または中和活性能を有していた。
【0148】
A2モノクローナル抗体の阻害および/または中和活性は、TNF−1、TNF−2お
よびTNF−3と名付けられたヒトTNFに特異的な他の3つのネズミモノクローナル抗
体、およびコントロール用モノクローナル抗体と比較された。精製されたモノクローナル
抗体の2倍系列希釈液は、rhTNF(40pg/ml)と共に混合され、室温で30分
間インキュベートされ、そして、アリクオットは、上述のようにTNF生物活性について
試験された。TNF−1、TNF−2、およびTNF−3の各モノクローナル抗体は、類
似した適度の阻害および/または中和活性を有していたことがわかった。対照的に、A2
モノクローナル抗体は、より高い阻害および/または中和活性能を有していた。
【0149】
実施例III
抗体のVおよびC遺伝子をクローニングするための一般的な方法
上述の抗TNF抗体を分泌するA2ハイブリドーマからのH鎖およびL鎖遺伝子につい
てのV領域をクローニングするための方法は、機能的に再編成される(および発現される
)Ig遺伝子についての、V領域および対応するJ領域間のゲノムにおける連結に基づい
て行われた。J(結合)領域のDNAブローブは、J領域にリンクされるDNAを分離す
るため、ゲノム・ライブラリーをスクリーンするのに用いられた。生殖細胞系の配列にお
ける(すなわち、未再編成された)DNAは、Jプローブにハイブリッド化するにもかか
わらず、このDNAは、IgのV領域のシークエンスにリンクせず、分離されたクローン
の制限酵素分析により同定され得る。
【0150】
ここで用いられるクローニング法は、JHおよびJκプローブを用いて、再編成された
H鎖およびL鎖遺伝子由来のV領域を分離する方法である。これらのクローンは、ノーザ
ンブロッティングによりA2ハイブリドーマ中にこれらのシークエンスが発現されるかど
うかを観察するために試験された。発現されたシークエンスを含むこれらのクローンは、
ヒトC領域を含む発現ベクター中にクローンされ、抗体が生産されるかどうかを測定する
ため、マウス骨髄腫細胞にトランスフェクトされた。細胞が生産した抗体は、その後、結
合の特異性について試験され、ネズミA2抗体と機能的に比較された。
【0151】
実施例IV
L鎖ゲノム・ライブラリーの構築
A2ハイブリドーマからのL鎖のV領域遺伝子を分離するため、大きさの選択されたゲ
ノム・ライブラリーは、λファージベクターシャロン(原文;Charon)27を用い
て構築された。高分子量DNAが、A2ハイブリドーマ細胞から分離され、制限エンドヌ
クレアーゼHindIIIで完全に切断された。DNAは、それから0.8%アガロース
ゲル上で分画され、およそ3kb、4kbおよび6kbという3つの異なる大きさのDN
Aフラグメントが、電気溶出によりゲルから分離された。ライブラリー構築についての大
きさの範囲は、サザーンブロッティングにおいてJκプローブとハイブリッド化したHi
ndIIIフラグメントの大きさに基づいて選択された。フェノール/クロロホルム溶出
およびエタノール沈澱の後、同じ大きさのクラスからのDNAフラグメントは、λシャロ
ン(原文;Charon)27のアームと結合され、ストラタジーン社からの得たギガパ
ック・ゴールドを用いてinvitroでファージ粒子中にパッケージされた。
【0152】
これらのライブラリーは、32P標識されたJκプローブを用いて、およそ20,000
プラーク/150mmペトリ皿の密度で直接的にスクリーンされた。マウスのL鎖のJκ
プローブは、全5つのJκセグメントを含む2.7kbのHindIIIフラグメントで
あった。そのプローブは、ベーリンガー・マンハイム社から得られたキットを用いて、ラ
ンダム・プライミング(random priming)により32Pで標識された。フリ
ーなヌクレオチドは、セファロースG−50カラムを通じて遠心分離により除去された。
そのプローブの特異的な活性は、およそ109cpm/μgであった。
【0153】
プラーク・ハイブリダイゼーションは、5倍濃度のSSC、50%ホルムアミド、2倍
濃度のデンハルト(Denhardt)溶液、および42℃で18〜20時間変性された
200μg/mlのサケ精子DNAの系において行われた。最終の洗浄は、65℃で0.
5倍濃度のSSCおよび0.1%のSDSを用いて行われた。ポジティブクローンは、オ
ートラジオグラフィーの後に同定された。
【0154】
実施例V
H鎖ゲノム・ライブラリーの構築
A2のH鎖についてのV領域遺伝子を分離するため、ゲノム・ライブラリーが、λgt
10ベクター系において構築された。高分子量のDNAは、制限エンドヌクレアーゼEc
oRIで完全に切断され、およそ7.5kbのフラグメントが、アガロースゲル電気泳動
後に分離された。これらのフラグメントは、λgt10アームと共に結合され、ギガパッ
ク・ゴールドを用いてinvitroでファージ粒子中にパッケージされた。
【0155】
このライブラリーは、JHプローブを用いて、20,000プラーク/150mmプレ
ートの密度でスクリーンされた。JHプローブは、J3およびJ4セグメントを含む、2
kbのBamHI/EcoRIフラグメントであった。
そのプローブは、実験3のように標識され、同様の比放射活性を有していた。ハイブリ
ダイゼーションおよび洗浄の条件は、実験3において用いた条件と同様とした。
【0156】
実施例VI
TNFに特異的なV遺伝子領域のクローニング
幾つかのポジティブ・クローンが、JHおよびJκプローブをそれぞれ用いて、各ライ
ブラリーからおよそ106個のプラークをスクリーニングした後に、HおよびL鎖ライブ
ラリーから分離された。プラーク精製に続いて、バクテリオファージDNAが、各ポジテ
ィブ・クローンのために分離され、EcoRI(H鎖クローン)あるいはHindIII
(L鎖クローン)で切断され、1%アガロースゲルにおいて分画された。DNAは、ニト
ロセルロースに移され、ブロットはJHあるいはJκプローブでハイブリッド化された。
【0157】
Hプローブにハイブリッド化した7.5kbのEcoRI・DNAフラグメントを含
んだ幾つかのH鎖クローンが得られた。L鎖ライブラリーについては、Jκプローブにハ
イブリッド化するHindIIIフラグメントを含む、大きさの選択された3つの各ライ
ブラリーから幾つかのクローンが、分離された。L鎖については、2kbライブラリーか
ら独自に得られた、幾つかの2.9kbのHindIIIフラグメントは、SP2/0m
RNAでなく、A2からの1250bpのmRNAと共にハイブリッド化した(実施例V
II参照)。加えて、4kbのライブラリー由来の幾つかのHindIIIフラグメント
は、A2mRNAおよび融合相手のmRNAにハイブリッド化した。6kbのライブラリ
ー由来の5.7kbのHindIIIフラグメントは、両方のRNAのいずれにもハイブ
リッド化しなかった。
【0158】
ハイブリッド化するA2mRNAの観察された長さは、H鎖およびL鎖mRNAの正確
な大きさに相当した。RNA発現は、A2ハイブリドーマに制限されたので、7.5kb
のH鎖フラグメントおよび2.9kbのL鎖フラグメントは、A2由来の正しいV領域シ
ークエンスを含むと仮定された。各型についてのある実験が、更なる研究のために選択さ
れた。重要な機能の試験は、これらのV領域シークエンスが、適当なC領域シークエンス
と結合したとき、ネズミA2抗体と同様の特異性および親和性を有する抗体の合成を指示
し得ることの証明である。
【0159】
7.5kbのH鎖フラグメントおよび2.9kbのL鎖フラグメントは、ネズミ骨髄腫
細胞中のマウス/ヒト・キメラタンパクの発現を許容するプラスミド・ベクターにサブク
ローンされた(実施例VIIIおよび実施例IX参照)。完全な抗体分子が分泌されるか
どうか、もしそうであるならば、これらの抗体分子が適当な特異性および親和性を有する
ものであるかどうかを確かめるため、これらのプラスミドは、SP2/0細胞中にトラン
スフェクトされた。対照のトランスフェクションは、推測上の抗TNFH鎖と、無関係な
、しかし発現されるL鎖とを組合せることにより、また、推測上の抗TNFL鎖と、無関
係な、しかし発現されるH鎖とを組合せることにより行われた。結果は、7.5kbのH
鎖フラグメントは発現され得るが、2.9kbのL鎖フラグメントは発現され得ないこと
を示した。このことは、他の公知のL鎖アミノ酸シークエンスと比較したときに、コード
領域の部分が、適当なアミノ酸読み枠(リーディング・フレーム)中に存在しないことを
示した、DNAシークエンス分析によって確認された。
【0160】
2.9kbのHindIIIフラグメントは、機能できるV遺伝子を含んでいないよう
であったので、L鎖ライブラリーから分離された4.0kbおよび5.7kbのHind
IIIフラグメントが、発現ベクター中にクローンされ、7.5kbのH鎖とのトランス
フェクションの後、キメラ抗体の発現について試験された。5.7kbのHindIII
フラグメントは抗体発現を支持し得るが、4.0kbHindIIIフラグメントは抗体
発現を強く支持した。7.5kbの推測上のH鎖V領域および4.0kbのL鎖V領域の
トランスフェクションから生じた抗体は、精製され、固相TNF結合アッセイにおいて試
験され、そして不活性であることがわかった。4.0kbのHindIIIフラグメント
に含まれるV領域は、正しい抗TNFのV領域ではなく、融合相手によってハイブリドー
マに付与されたものであったと結論された。このことは、A2ハイブリドーマおよび融合
相手に由来するcDNAのシークエンス分析によって、その後確認された。
【0161】
A2mRNAとハイブリッド化した2.9kbのHindIIIフラグメントを含む、
独自に得られた他のL鎖クローンが、より詳細に特徴づけられた。制限地図は類似してい
たにもかかわらず、クローンは、AccI酵素部位の存在あるいは欠損に関し、二つのク
ラスに分かれた。オリジナル(機能のない)の2.9kbフラグメント(クローン8.3
と呼ばれる)には、幾つかの他のクローン(クローン4.3に代表される)中におけるA
ccI部位が欠損していた。クローン4.3のDNAシークエンスは、クローン8.3に
極めて類似していたが、クローン8.3と異なる、公知のL鎖に近い相同性を有する一つ
のアミノ酸リーディング・フレームを含んでいた。クローン4.3からの2.9kbのH
indIIIフラグメントは、L鎖発現ベクター中にサブクローンされ、SP2/0細胞
中に推測上の抗TNFH鎖と共にトランスフェクトされた。抗体は合成され、精製され、
固相TNF結合アッセイにより試験された。この抗体は、TNFに結合した。したがって
、クローン4.3のL鎖V領域が、正しい抗TNFのV領域であると仮定された。
【0162】
A2ネズミハイブリドーマは、再編成された少なくとも4つのL鎖V領域遺伝子を含む
ことが示された。これらの内の少なくとも2つ、即ちクローン4.3(正しい抗TNFの
L鎖遺伝子)、および4.0kbのHindIIIフラグメント(融合相手によって与え
られた)中に含まれる遺伝子は、タンパクとして発現される。2つのL鎖の発現は、ネズ
ミ・ハイブリドーマから分泌された抗体は、実際には、正しいL鎖を用いた抗体、正しく
ないL鎖を用いた抗体、およびこれらを各一つずつ用いた抗体の混合物であることを意味
する。ネズミA2抗体における2つの異なるL鎖の存在は、SDSゲルおよび精製された
抗体のN末端タンパクシークエンス分析によって確認された。A2キメラ抗体の構築は、
個々のHおよびL鎖遺伝子のクローニング、および非生産性細胞系でのそれらの発現を含
んでいるので、生じた抗体は、正しいL鎖のみを有し、したがって、より能力の高い抗体
である(実施例X、XIおよびXII参照)。
【0163】
実施例VII
クローンされたDNAのノーザン分析
A2ハイブリドーマからの標準のH鎖およびL鎖V領域に相当する、クローンされたD
NAは、A2mRNAにハイブリッド化することが予想される。H鎖あるいはL鎖の遺伝
的な位置での機能をもたないDNAの再編成は、当然発現されない。
【0164】
全細胞質RNAの10μgは、1%アガロース/ホルムアルデヒド・ゲル(Sambr
ooket al.)において電気泳動され、ニトロセルロースに移された。ブロットは
、50%ホルムアミド、2倍濃度のデンハルト(原文;Denhardt)溶液、5倍濃
度のSSC、および42℃で10時間変性された200μg/mlのサケ精子DNAの系
において、ランダム・プライム(原文;rondom primed)されたDNAプロ
ーブと共にハイブリッド化された。最終の洗浄条件は、65℃で0.5倍濃度のSSCお
よび0.1%のSDSを用いる条件であった。
【0165】
サブクローンされたDNAフラグメントは、ランダム・プライムによって32Pで標識さ
れ、A2細胞、あるいはA2の融合相手であるSP2/0細胞に由来の全RNAを含むノ
ーザン・ブロットにハイブリッド化された。7.5kbのEcoRI・H鎖フラグメント
は、SP2/0mRNAとではなく、A2からの2kbのmRNAとハイブリッド化した
。同様に2.9kbのL鎖HindIIIフラグメント(クローン4.3)は、SP2/
0mRNAとではなく、A2からの1250bpのmRNAとハイブリッド化した。ハイ
ブリッド化するA2mRNAの観察された長さは、H鎖およびL鎖mRNAそれぞれにつ
いての正しいサイズであった。このことは、これらのDNAフラグメントにおけるV領域
配列が、A2ハイブリドーマ細胞中で発現されることを確証している。
【0166】
実施例VIII
発現ベクターの構築
上述の推測上のL鎖(クローン4.3)およびH鎖V遺伝子は、発現ベクター中におい
てヒトκ(原文;human kappa)およびγ1定常領域遺伝子(原文;gamm
al constant region)に連結された。A2からの推測上のVH領域遺伝
子に相当する7.5kbのEcoRIフラグメントは、pA2HGlapgptと呼ばれ
るプラスミドを生ずる、ヒトCγ1遺伝子(原文;human Cgammal gene)およ
びEcogpt遺伝子を含む発現ベクター中にクローンされた(図8参照)。
【0167】
クローン4.3からの2.9kbの推測上のVLフラグメントは、動物細胞における分
泌を許容する、ヒトκCκ遺伝子(原文;human kappa Cκ)およびEcog
pt遺伝子を含むベクター中にクローンされた。生じたプラスミドは、pA2HuKap
gptと指定された。(図8参照)。
【0168】
実施例IX
キメラ抗体遺伝子の発現
キメラH鎖およびL鎖遺伝子を発現させるため、発現プラスミドは、非生産性マウスミ
エローマ(骨髄腫)細胞系であるSP2/0中にトランスフェクトされた。トランスフェ
クトされるプラスミドDNAは、エチジウムブロマイド/セシウムクロライド・グラジュ
エント中での2回の平衡遠心によって精製された。プラスミドDNA(10〜50μg)
が、ハンク塩(原文;Hank's salts)を含有する培地中の107個のSP2/
0細胞に添加され、この混合物は、バイオラッド社製のエレクトロポレーション装置中に
配置された。96穴マイクロプレート中に細胞がプレートされた後、エレクトロポレーシ
ョンが20Vで行われた。
【0169】
24時間後にマイコフェノール酸(原文;Mycophenolic acis)選択
が行われ、薬剤耐性細胞のコロニーは、1〜2週間後に同定された。耐性細胞のコロニー
は、安定した細胞系に発展させられ、これらの細胞系からの組織培養上清が、ヤギ抗ヒト
IgG・FC抗体およびアルカリホスファターゼで結合されたヤギ抗ヒトH+L(ジャク
ソン・ラボラトリーズ社から得られた)を用いるELISAアッセイにより、抗体につい
て試験された。
【0170】
キメラA2抗体は、プロテインA−セファロース・クロマトグラフィーにより組織培養
上清から精製された。上清は、0.1Mトリス、0.002MのEDTAを用いてpH8
.0に調整され、同じバッファー中で平衡されたプロテインA−セファロース・カラムに
充填された。IgGは、pH3.5の0.1Mクエン酸塩で溶出され、1Mトリスで阻害
あるいは中和され、そして、リン酸緩衝生理食塩水(以下、PBSと称することがある。
)中に透析された。
【0171】
精製されたキメラ抗体は、その結合、ならびに阻害および/または中和活性について評
価された。
【0172】
実施例X
抗TNFキメラ抗体の特異性
cA2のドメインと結合する抗体はネズミA2に由来するので、これらのモノクローナ
ル抗体は、TNFにおける同じ結合部位に拮抗(競合)することが予想される。rhTN
F(大日本、大阪、日本)で被覆された96穴マイクロプレート中で、固定された濃度の
キメラA2およびネズミmAb A2が、増加する濃度のネズミキメラA2の拮抗(競合
)体で、それぞれインキュベートされた。抗ヒト免疫グロブリンと結合したアルカリ・ホ
スホターゼおよび抗マウス免疫グロブリン第ニ抗体が、それぞれ、ネズミキメラA2の結
合のレベルを検出するのに用いられた。TNF抗原に対する交叉競合が、この固層ELI
SAフォーマットにおいて観察された(図9)。この発見は、cA2およびネズミA2の
予想される同一のエピトープ特異性と矛盾していない。
【0173】
マウスA2およびcA2モノクローナル抗体のrhTNFαへの結合についての親和定
数は、スカッチャード分析(Scatchard,G.,Ann.N.Y.Acad.S
ci.51:660(1949))により決定された。この結果が、図10に示されてい
る。この分析は、96穴プレート中に固定されたrhTNFαへの、125I標識されたc
A2の直接の結合を測定することを意味する。抗体は、ヨードゲン(原文;iodoge
n)法により約9.7μCi/μgの比活性(原文;Specific activit
y)に各々標識された。マウスA2モノクローナル抗体については、0.5×109l/
モルの親和定数(Ka)が算出された。予想しないことに、キメラA2抗体は、Kaが1
.8×109l/モルという高い親和性を有していた。このように、この発明のキメラ抗
TNFα抗体は、親株のネズミA2モノクローナル抗体のヒトTNFαへの結合の親和性
よりも、高く重要なヒトTNFαへの結合の親和性を示すことが、証明された。ネズミと
のキメラ抗体、フラグメントおよび領域は、親株のモノクローナル抗体の親和性と等しい
かあるいは低い親和性を有することが予想されるので、この発見は驚くべきことであった

【0174】
TNFαへの結合の親和性が、Kaで表すと少なくとも1×108-1、好ましくは1
×109-1である、このような高親和性抗TNF抗体は、生体液中の極微量レベルのT
NFを検出するイムノアッセイに好適である。加えて、このような高親和性を有する抗T
NF抗体は、TNFαに介在される健康状態あるいは病状の診断に好適である。
【0175】
TNFに対するcA2の特異性は、ヒト・リンホトキシン(TNF−β)の交叉中和反
応について試験することにより確認された。リンホトキシンは、幾つかの配列の相同性、
および、例えばTNFによる腫瘍細胞の細胞障害作用などの一定の生物活性を共有してい
る(Pennica,D.et al.,Nature 312:724−729(198
4))。培養されたヒトA673細胞は、39℃で一昼夜、20μg/mlのシクロヘキ
シミドの存在下で、4μg/mlのキメラA2を含むあるいは含まない、増加する(異な
る)濃度のヒトリンホトキシン(ジェネンテック社)と共にインキュベートされた。細胞
の死は、上述のナフトール・ブルー・ブラックでの致命的な染色を行うことにより測定さ
れた。結果は、cA2はヒト・リンホトキシンの阻害および/または中和性に影響しなか
ったことを示した。これは、キメラ抗体のTNFα特異性を確証している。
【0176】
異なる動物種由来のTNFと反応する、A2あるいはcA2の能力がまた評価された。
最初に言及したように、阻害および/または中和性のモノクローナル抗体が結合するヒト
TNFに多重エピトープが存在する(Moller,A.et al.)。ヒトTNFは
、ホスト動物種の広い範囲において生物活性を有する。しかしながら、ヒトTNFにおけ
る一定の阻害および/または中和性のエピトープは、異なる動物種間で維持されるにもか
かわらず、その外は、ヒトおよびチンパンジーに限定された。
【0177】
中和反応実施例は、TNF源として新たに分離したヒト、チンパンジー、アカゲザル、
カニクイザル、ヒヒ、ブタ、イヌ、ウサギ、あるいはラットの単球からの、細胞障害活性
化された細胞上清を用いた。上述したように、ネズミA2モノクローナル抗体は、ヒトあ
るいはチンパンジーTNFのみの活性を阻害あるいは中和し、その他の霊長類あるいは低
級動物に由来するTNFに対する効能を有していなかった。A2は、また、組換えマウス
TNFの細胞障害作用を阻害あるいは中和しなかった。
【0178】
このように、A2により認識されるエピトープは、ヒトおよびチンパンジーTNFαに
より共有されるエピトープである。また、キメラA2は、この方法でラット、ウサギ、イ
ヌおよびブタからの単球由来のTNFとの交叉反応性についても、精製された組換えマウ
スTNFαおよび天然あるいは組換えヒトTNFαとの交叉反応性についても試験された
。キメラA2は、天然あるいは組換えTNFαのみを阻害あるいは中和した。したがって
、cA2は、ネズミA2との種特異性を共有するようである。
【0179】
実施例XI
キメラ抗TNF抗体の生体外(原文;in vitro)活性と中和能力
ネズミキメラ抗TNF−α抗体すなわちA2およびcA2の両抗体が、有効なTNF阻
害および/または中和活性を有することが示された。前述の細胞障害性分析において、ネ
ズミ A2は、約125ng/mlの濃度で、40pg/ml濃度のrhTNFαの生物
学的活性を完全に阻害または中和した。二つの独立した系で阻害および/または中和能を
調べた結果、50%阻害投与量(ID50)は、15.9±1.01および17.9±1
.6ng/ml(平均値±標準誤差)と測定された。よって、mAb A2は約17ng
/mlのID50値を有する。
【0180】
同一の実験系による、TNFに対して同程度の結合親和性を有する他の3つのネズミ抗
TNF−α抗体(TNF−1、TNF−2、TNF−3と定義する。)の試験の結果、こ
れらは1〜2オーダー大きいID値を有すること、つまりA2と比較すると明らかに小さ
い中和活性しか有さないことが判明した。
【0181】
cA2の生体外での(原文;in vitro)ヒトTNF−αの生物学的活性に対す
る阻害および/または中和活性能の評価は、上述したバイオアッセイ系を用いて行われた
。培養A673細胞が、40pg/mlのノーマルTNF(ゲンザイム(Genzyme
)社製、ボストン、MA)または組換えヒトTNF(サントリー社製、大阪、日本)と共
に、抗体の存在下または抗体非存在下に上述の方法で培養された。そして、生体染色によ
って細胞の生死が測定された。A2ネズミmAbの前記結果に基づいた予想通り、細胞障
害性アッセイにおいて、cA2も同様にノーマルヒトTNFおよび組換えヒトTNFの活
性の投与量に応じて阻害または中和した(図11)。この実験系において、cA2は12
5ng/ml程度の濃度で完全にTNFの細胞障害作用を消失させた。実験を繰り返した
結果、前記cA2は元のネズミA2mAbよりも強いTNF阻害および/または中和活性
を示すことが判明した。このような抗体濃度1μg/ml以下での阻害および/または中
和活性は、抗体を投与した患者の血液中において容易に達成することができる。従って、
このような強力な阻害および/または中和活性(特にキメラ抗体の活性)は、TNFによ
り介される病気や健康状態の治療上好ましい。
【0182】
前述の通り、TNFは細胞のIL−6の分泌を誘起させる。更に、その症候群における
詳細な役割は不明であるが、IL−6は敗血症の病理学的状態に関与していることが明ら
かにされている(Fong,Y.et al.J Exp Med 170:1627〜1
633(1989);Starnes Jr.,H.F.et al.J Immuno
145:4185〜4191(1990))。TNFにより誘起されるIL−6の分
泌に対する、cA2の阻害または中和活性が、培養ヒト二倍体FS−4繊維芽細胞を用い
て調べられた。
表1に示す結果は、cA2がTNF添加で一晩培養された細胞のIL−6の分泌を阻害
するのに有効であることを示している。TNFに誘導されるIL−6の分泌は、mabの
非存在下または他の抗原に特異的なコントロールmAbの存在下においては、阻害を受け
なかった。
【表1】

【0183】
TNFの有する内皮細胞(EC)のプロ凝固活性上昇や接着分子作用を誘導する機能は
、病理学の病理生理学において重要な内容である。特に、血管の損傷、播種性血管内凝固
、および敗血症の症状と関連する重厚な高血圧とも関連する。そのため、cA2が、TN
Fに誘導される、培養ヒトさい帯の、動脈内皮細胞(HUVEC)の活性を阻害するか否
かが評価された。未変性(原文;intact)のHUVEC細胞を、抗体の存在下およ
び非存在下においてTNFに4時間接触させた後、細胞溶解産物(原文;lysate)
をヒト結漿(原文;plasma)凝固分析(原文;clotting assay)す
ることにより、TNFのプロ凝固活性への刺激性が調べられた。表2に示された結果は、
予想されたTNFのHUVECのプロ凝固活性に対する正の制御(upregulati
on)を示している(凝固時間の減少に反映される。)。キメラ抗体cA2は、TNFの
活性を投与量に応じて、効果的に阻害または中和した。
【表2】

【0184】
プロ凝固活性を上昇させる作用に加えて、TNFは内皮細胞にELAM−1やICAM
の等の接着分子(原文;adhesion molecules)の産生を誘導する機能
を有する。このTNFの活性を阻害または中和活性をELAM−1を検出する放射免疫定
量法によって調べた。培養したHUVECに、抗体添加、または無添加で250ng/m
l rhTNF(大日本製薬製、大阪府、日本)による刺激が与えられ、37℃において
一晩96穴プレート上に培養された。ネズミ抗ヒトELAM−1 mABおよび125Iで標
識したウサギ抗ネズミ免疫グロブリンを4℃において、この順に直接培養プレートに添加
することによりELAM−1の細胞表面への発現が、評価された。
【0185】
図12に示すように、TNFは培養HUVECの表面へのELAM−1の発現を誘導し
た。また、cA2の添加量に相関し、このTNFの活性が効果的に阻害される。
【0186】
最後に、TNFは培養繊維牙細胞に対して分裂促進(マイトジェン)活性を有すること
が知られている。キメラA2本発明はTNFに誘導されるヒト二倍体FS−4培養繊維牙
細胞の有糸分裂(原文;mitogenesis)を阻害および/または中和する作用を
有する、これによりA2がin vitroにおいて、更にTNFの幅広い生物学的活性
に渡って阻害および/または中和活性を有することが確信される。
【0187】
実施例XII
cA2抗体の生体内(原文;in vivo)活性と機能
cA2の種交叉反応性が高度に制限的であるので、人間やチンパンジー以外の動物の生
体内での(原文;in vivo)この抗体の機能を調べるための試験は厳しい制約を受
ける。それでもなお、cA2の生体外での(原文;in vitro)強い阻害および/
または中和作用が生体内(原文;in vivo)においても発現されるという証明が望
まれていた。過去の動物実験は、実験動物へのTNFの投与は、グラム陰性細菌の感染ま
たはエンドトキシンの直接的投与により呈される病理学的状態に類似することを示した(
Tracey,K.J.et al.,1986.前出;Tracey,K.J.et a
.,1987,前出;Lehmann,V.et al.,前出)。
【0188】
ガラクトサミン感作のネズミにヒトTNFの致死量を投与する生体内での(原文;in
vivo)実験系(Lehmann,V.et al.,前出)を、cA2の生体内での
(原文;in vivo)のTNF阻害または中和作用の評価をする実験に採用した。r
hTNFを5μg(0.25mg/kg)腹腔投与した結果、cA2未処理のコントロー
ル用動物および投与後15〜30分後に生理食塩水または2mg/kgのコントロール用
抗体(キメラIgGl;ネズミ7E3抗血小板(原文;platelet)mAB由来)
を静脈注射(i.v.)により投与した場合には80〜90%の致死率であった。
これに対し、cA2による処理は、致死率を0.4mg/kgの抗体を投与した場合に
は0〜30%に、20mg/kgsの場合に0〜10%に低下させた。これらの結果を表
3にまとめて記載したが、この結果は、in vitroと同様に生体内での(原文;i
n vivo)においても、cA2がTNFの生物学的活性を阻害および/または中和す
る作用を有することが示された。
【表3】

【0189】
実施例XIII
cA2により認識されるヒトTNF−αのアミノ酸配列(抗原決定基)の決定
試 薬 下記の市販の試薬は容易に入手可能である。FMOC−L−Ala−OPfp、
FMOC−L−Cys(Trt)−OPfp、FMOC−L−Asp(OtBu)−OP
fp、FMOC−L−Glu(OtBu)−OPfp、FMOC−L−Phe−OPfp
、FMOC−Gly−OPfp、FMOC−L−His(Boc)−OPfp、FMOC
−L−Ile−OPfp、FMOC−L−Lys(Boc)−OPfp、FMOC−L−
Leu−OPfp、FMOC−L−Asn−OPfp、FMOC−L−Pro−OPfp
、FMOC−L−Gln−OPfp、FMOC−L−Arg(Mtr)−OPfp、FM
OC−L−Ser(tBu)−ODhbt、FMOC−L−Thr(tBu)−ODhb
t、FMOC−L−Val−OPfp、FMOC−L−Trp−OPfp、FMOC−L
−Try(tBu)−OPfp、および1−ヒドロキシベノトリアゾール(HOBT)を
ケンブリッジ リサーチ バイオケミカルズより入手した。ビペリジン(原文;piper
idine)はアプライド バイオシステム社より入手した。1−メチル−2−ピロリジ
ノン(NMP)をEM サイエンスより入手した。以下、メタノールをJT ベーカーより
、無水酢酸をアプライド バイオシステムズ社より、トリフルオロ酢酸(TFA)をアプ
ライド バイオシステムズ社より、ジイソプロピルアミン(DIEA)、トリエチルアミ
ン、ジチオスレイトール(DTT)およびアニソールをアルドリッチ社より、塩酸(HC
l)をJT ベーカー社よりそれぞれ入手した。
【0190】
略 号 FMOCは9−フルオレニルメトキシカルボニルを、tBuはt−ブチルエーテ
ルを、OtBはt−ブチルエステルを、Bocはt−ブチルオキシカルボニルを、Mtr
は4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニルを、Trtはトリチルを、
OPfpはペンタフルオロェニルエステルを、ODhbtはオキソーベンゾトリアゾンエ
ステルを示す。
【0191】
本発明のキメラ抗体(cA2と表示される抗体)が、TNFアミノ酸配列の内のどの部
分が抗体による阻害的結合に関与しているかをエピトープマッピングにより調べるために
、用いられた。これによって、cA2によって認識されるTNF−αのアミノ酸配列が決
定された。
【0192】
ヒトTNFαの完全な一次構造(Pennica et al,Nature 312:
724−729(1984)による)を図13に示した。
ヒトTNFαの全アミノ酸配列に渡る、二つ毎のアミノ酸より開始し、オーバーラップ
する、デカペプチドがポリエチレン ピン上にGysenの方法を用いて合成された(G
ysen et al.,Peptides:Chemistry and biologi
cal, アメリカン ペプチド シンポジウム文書,p.519〜523,Ed、G.R
.Marshall,Escom,Leidn,1988)。アセチル化N−末端を有す
るペプチドのピン群と、遊離のN−末端を有するペプチドのピン群がそれぞれ調製された
。以下に示すように、ヒトTNF−αのエピトープを構成するアミノ酸配列を決定するた
め、これらペプチドピンの両群が、抗TNF mAB cA2含有溶液中にインキュベート
された。
図14Aに、それら全部でヒトTNF−αの全配列を網羅する、オーバーラップしてい
るデカペプチドのそれぞれについて、結合試験の結果を示した。O.D.は直接cA2の
結合の増加と相関する。図14Bは、TNF−αの存在下における同一のペプチドピン群
に対するcA2の結合を調べた結果である。この競合的結合試験により、cA2に対し非
特異的に結合するペプチドが示された。
【0193】
cA2に認識される互いに隣接しないTNF−αペプチド配列は、少なくても二以上あ
る。N末端アミノ酸を1とする通常の蛋白質の順番付与方法を用いると、cA2 mAB
は、少なくともSEQ ID NO:1により示されるTNFの87−108番の残基中、
または59−80番の残基および87−108番の残基の両残基中に存在するアミノ酸部
分に形成されるエピトープを認識する。
図15は、TNF中に存在するこれらの非隣接の配列を示したものである。これらの配
列の空間配置図を図16Bに示し、同時にTNF単量体の空間配置図を16Aに示した。
【0194】
予想に反し、mAB cA2は、TNF−αのリセプターの結合位置と推定される位置
(例えばSEQ ID NO:1のhTNFαにおける11−13、3742、49−57
、155−157)に結合することなく、TNF−αの活性を阻害する。好ましい抗TN
FmABとしては、これらのペプチド配列の一つ若しくはいくつかに結合することによっ
て、ヒトTNF−αの対応するレセプターへの結合を阻害するものである。この様な抗体
はcA2エピトープに結合することによってTNFの活性を阻害することができる。この
結合がTNFの活性を阻害することは証明されている。
cA2によって認識されるこれらのペプチド配列を同定によって、本発明の態様に類似
する結合特性および治療上の利用性を有する他のモノクローナル抗体の調製に必要な情報
が得られた。
【0195】
ペプチドピンの合成 ケンブリッジ リサーチ バイオケミカルズ社(CRB)より購入
したエピトープ マッピング キットを用いて、ヒトTNF−αの全配列に対応するドデカ
ペプチドをポリエチレンセイ製のピン上に合成した。
【0196】
合成スケジュールが、CRBエピトープ マッピング ソフトウェアを用いて作成された
。最初のアミノ酸をカップリングする前に、予め20%ピペリジンのNMP溶液中での、
室温下、30分処理することにより、脱保護された。脱保護されたピンは室温下において
NMPで5回洗浄され、さらにメタノールで3回洗浄された。洗浄後、最低10分間以上
空気中で乾燥した。
【0197】
各カップリングサイクル毎に以下の操作が行なわれた。
1)前記アミノ酸誘導体および前記HOBTの前記合成スケジュールにおける必要量が秤
量された。
2)前記HOBTの前記合成スケジュールによる適当量がNMPに溶解された。
3)前記アミノ酸誘導体が適量のHOBT溶液に溶解され、次いでピペットによりその1
50μlが合成スケジュールのウェル位置表(原文;Sheet)の示す適切なウェルに
注入された。
4)ピンを有するブロックが前記ウェル中に入れられ、この「サンドイッチ」ユニットは
プラスチック製容器中で、18時間30℃の湯浴中に保持された。
5)ピンがウェルより取り出され、NMPにより1回(5分間)、メタノールにより3回
(2分間)洗浄された後、10分間空気中で乾燥された。
6)ピンが前記と同様に脱保護され、さらに、この操作が繰り返された。
【0198】
一つのブロックのピン上のペプチドをアセチル化するためには、前記ペプチドピンは洗
浄され、脱保護され、NMP;無水酢酸:トリエチルアミン(5:2:1)を含有する溶
液の150μlで30℃において90分間処理され、次いで前に概説した洗浄方法により
洗浄された。他のペプチドピンの群は、Z末端フリーアミノ酸残基を得るために、アセチ
ル化されず、脱保護された。
【0199】
側鎖保護基を除去するための最後の脱保護は、TFA:アニソール:ジチオスレイトー
ルの混合溶液、95:2.5:2.5(V:V:W)を用いて、4時間、周囲の温度で処
理することにより行われた。脱保護の後、10分間空気乾燥され、次いで1%塩酸のメタ
ノール−蒸留水の1:1混合溶液中で超音波処理(原文;sonication)が行わ
れた。一晩乾燥され、試験に供するピンが得られた。
【0200】
cA2のTNF−αペプチドへの結合を調べるためのELISA分析
試 薬:ディスラプション バッファー:リン酸二水素ナトリウム(31.2g,シグマ
社(原文;Sigma)cat#S−0751または同等物)およびドデシル硫酸ナトリ
ウム(20.0g,シグマ社 cat#L−3771または同等物)を2.0LのミリQ
(原文;milliQ)水に溶解した。次いで、50% w/w 水酸化ナトリウム(VW
R社 cat # VW6730−3または同等物)によりpHを7.2±0.1に調整し
た。
【0201】
ブロッキング バッファー:リン酸二水素ナトリウム(0.39g,シグマ社 cat#
S−0751または同等物)、リン酸水素二ナトリウム(1.07g,ベーカー社(原文
;Baker)cat#3828−1または同等物)および塩化ナトリウム(8.50g
,ベーカー社 cat#3624−5または同等物)をミリQ水1.0Lに溶解した。5
0% w/w 水酸化ナトリウム(原文;VWR社 cat # VW6730−3または同
等物)によりpHを7.2±0.1に調整した。
鶏卵アルブミン(10.0g,シグマ社 cat#A−5503または同等物)および
牛血清アルブミン(10.0g,シグマ社 cat#L−3294または同等物)を室温
下で緩やかに撹拌しながら溶解した。この溶液を濾過し、濾過液に、ツウィーン(原文;
Tween)20(2.0ml シグマ社 cat#13.79または同等物)を添加した
。さらに40分間室温にて緩やかに撹拌し、濾過した後、40℃に保存した。
【0202】
PBS/ツウィーン(原文;Tween)20:リン酸二水素ナトリウム(3.90g
,シグマ社 cat#S−0751または同等物)、リン酸水素二ナトリウム(10.7
0g,ベーカー社 cat#3828−1または同等物)および塩化ナトリウム(85.
0g,ベーカー社 cat#3624−5または同等物)をミリQ水1.0Lに溶解する
ことによって、濃度10溶液を調製した。次いで、50% w/w 水酸化ナトリウム(V
WR社 cat # VW6730−3または同等物)によりpHを7.2±0.1に調整
した。この溶液に対しツウィーン(原文;Tween)20(5.0ml シグマ社 ca
t#P−1379または同等物)を添加し、この混合液を緩やかに撹拌した。使用する直
前に、この溶液100mlをミリQ水で1.0Lに希釈した。
【0203】
基質溶液:クエン酸(4.20g,Malinckrodt cat#S−0627ま
たは同等物)およびリン酸二ナトリウム(7.10g,ベーカー社 cat#3828−
1または同等物)をミリQ水1.0Lに溶解し基質用バッファーを調製した。次いで、5
0% w/w 水酸化ナトリウム(VWR社 cat# VW6730−3または同等物)に
よりpHを5.00に調整した。使用直前にOPD基質錠(30mg,シグマ社 cat
#P−8412または同等物)および30% v/v 過酸化水素(40μl,シグマ社
cat#P−1379または同等物)を基質バッファーに添加した。この溶液はアルミホ
イルで包んで充分に撹拌した。
【0204】
4N硫酸:硫酸(53ml,イーエム サイエンス社(EM Science)cat#
SX1244−5または同等物)をミリQ水(447mL)に徐々に添加し、使用前に室
温迄に冷却した。
【0205】
装 置:モレキュラーデバイシス モデルnu−maxプレートリーダーまたは同等物.
サイエンティフィックプロダクツ モデルR4140卓上振盪機または同等物.ブランソ
ン モデル5200超音波バスまたは同等物.フィンピペット モデル4172317マル
チチャンネル ピペッターまたは同等物.コーニング(原文;corning)モデル2
5801 96ウェル ディスポーザブル ポリスチレン Elisa プレート
【0206】
使用前にまたは下記に示す使用の後に、ペプチドピンは以下に示す手順で洗浄された。
ディプラプチョン バッファーは60℃に加熱され、ヒューム(原文;fume)フード
中の超音波バスに注入された。このディスラプション バッファーにジチオスレイトール
(2.5g,シグマ社 cat#D−0632または同等物)が添加された。ペプチドピ
ンが溶液中で30分間超音波処理され、処理後ミリQ水で完全に洗浄された。次いで沸騰
エタノール中に2分浸漬され、その後空気乾燥された。
【0207】
ディスポーザブル ポリスチレン Elisa プレートの96のウェル中に、ブロッキ
ング バッファー(200μl)が、分注され、これらのウェル中にペプチドピンが保持
された。このペプチドピンおよびプレートは室温下、卓上振盪機上で2時間インキュベー
トされた。次いで、このプレートおよびペプチドピンはPBS/ツウィーン(原文;Tw
een)20で洗浄された(4回)。個々のウェルにそれぞれ20μg/ml濃度のcA
2抗体を注入された(ブロッキング バッファーにより希釈した。175μL/ウェル)
。TNF競合の方は、TNF−α(40μg/ml)およびcA2(20μg/ml)を
含有するBSA/卵アルブミン/BBS中に室温下、3時間インキュベートすることによ
って行われた。ペプチドピンはプレート中に保持され、4℃で一晩インキュベートされた
。一晩インキュベート後に、このペプチドピンおよびプレートはPBS/ツウィーン(原
文;Tween)20で洗浄された(4回)。各ウェルに、西洋ワサビペルオキシダーゼ
標識の抗ヒトの山羊の抗体(ブロッキング バッファーで2000倍に希釈、175μL
/ウェル,ジャクソン イムノ リサーチ ラボラトリーズ(原文;Jackson Imm
uno Research Labs))が添加された。このプレート中にペプチドピンが
保持され、室温下で卓上振盪機上で1時間インキュベートされた。インキュベート後、プ
レートおよびペプチドピンはPBS/ツウィーン(原文;Tween)20で洗浄された
(4回)。各ウェル中に調製直後の基質溶液が分注され(150μl/ウェル)、室温下
において1時間、卓上振盪機上のこのプレート中でペプチドピンがインキュベートされた
。インキュベート後、ペプチドピンは取り外され、各ウェル中に4N硫酸(50μL)が
添加された。このプレートをモレキュラー デバイシス プレートリーダーにより読み取ら
せ(490nmの値,ブランク値として650nmの値を減ずる)、この結果が、前記の
通り、図14Aおよび図14Bに示した。
【0208】
実施例XIV
TNFペプチドフラグメントを使用したネズミの抗ヒトTNFモノクローナル抗体の作製
TNF(SEQ ID NO:1により示される)における上述の非隣接の配列59−8
0、87−108中、または両配列59−80、87−108中に存在する少なくとも5
アミノ酸残基である抗TNFエピトープを含有するcoli由来組換えヒトTNF(
rhTNF)フラグメントの精製品40μgを、等量の完全フロイント・アジュバンド(
ディフコ・ラボラトリーズ社から入手)により乳化し、0.4mlとしたものが、実施例
Iにおけるのと同様に、BALB/c雌ネズミの皮下および腹腔に注射された。一週間後
、不完全フロイント・アジュバンド中の前記rhTNFフラグメント5μgが腹腔に追加
免疫として注射され、次いで、TNF(SEQ ID NO:1により示される)における
配列59−80、87−108中、または両配列59−80、87−108中にのアミノ
酸残基を有する抗TNFエピトープを含有するTNFフラグメントが、アジュバントなし
で、4回連続して腹腔注射された。最後の注射から8週間後に、ネズミはTNF10μg
により追加免疫された。
【0209】
4日後、ネズミは犠牲にされた。その脾臓を得、脾臓細胞の懸濁液が調製された。脾臓
細胞は、30%ポリエチレングリコール、PEG1450の0.3ml中で、非分泌性ハ
イブリドーマ細胞であるSp2/0(ATCC CRL1581)と、4:1の比で融合
された。37℃で6時間インキュベートした後、融合細胞は、Sp2/0細胞濃度が1ウ
エル当たり2×104個になるように、96穴プレート中に0.2mlづつ配分された。
5×104個の正常BALB/c脾臓細胞が、各ウエルに添加された。
【0210】
使用された増殖培地は、RPM1−1640培地、熱で不活性化された10%の子ウシ
血清(HBS)(ヒクローン(原文;Hyclone)社製)、0.1mMのMEM非必
須アミノ酸、1mMのピルビン酸ナトリウム、2mMのL−グルタミン、100U/ml
のペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン(ギブコ・ラボラトリーズ社製)
、および選択のためのヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(HAT)(ベーリン
ガー・マンハイム社製)よりなる。
【0211】
固相放射性免疫アッセイ(RIA)が、配列59−80、87−108、または両配列
59−80、87−108中に存在するアミノ酸残基を含有するrhTNFαフラグメン
トに特異的なモノクローナル抗体が存在する上清を選択するために、採用された。このア
ッセイについては、前記実験2において詳述した。このアッセイにおける結合のバックグ
ランドは、約500cpmである。上清は、2000cpmまたはそれ以上結合している
ならば陽性とみなした。
【0212】
選択された上清の内の一つまたはいくつかの上清が通常のRIAにより同定された。こ
れら陽性の上清の内で、最も高い結合性を有する(よりcpm値を示すことで判定される
。)ものが、ネズミのフィーダー細胞添加の限定希釈法によりサブクローニングされた。
中和アッセイにおける前記上清の更なる分析において、一つまたはいくつかの抗体が、阻
害および/または中和作用を有することを確認した。そして、これらの陽性であり、阻害
および/または中和作用を有するハイブリドーマ系列が選択され、10%FBS(ギブコ
社製)、0.1mMのMEM非必須アミノ酸、1mMのピルビン酸ナトリウム、2mMの
L−グルタミン、100U/mlのペニシリン、および100μg/mlのストレプトマ
イシンを含有するRPM1−1640培地に保存(maintain)された。
【0213】
実施例XV
TNFペプチドを用いたネズミとのキメラ抗体、そのフラグメントおよび領域の作製
ネズミとのキメラ抗体、そのフラグメントおよび領域が、実施例XIVで得られたネズ
ミ抗体の可変領域とヒト定常領域とのキメラ発現媒体を構築することによって、前記実施
例4〜9に示した方法によって作製された。
【0214】
キメラA2抗体は、タンパク Aセファロース クロマトグラフィーによって組織培養上
清より精製され得られた。上清は0.002M EDTA加0.1M トリスによってpH
8.0に調整され、同バッファーにより平衡化されたタンパク Aセファロースカラムに
アプライされた。pH3.5のクエン酸バッファーによりIgGが溶出され、1Mトリス
で中和された後に、リン酸バッファーによる緩衝能を有する生理食塩水中で透析された。
【0215】
こうして得られたネズミとのキメラ抗体、そのフラグメントおよび領域について、その
結合能、阻害および/または中和活性が評価された。
【0216】
実施例XVI
キメラ抗TNF抗体のin vitroの活性と中和活性
例えば、阻害作用が50%阻害投与量として表わされるTNF細胞障害作用のアッセイ
において、実施例XIVと実施例XVにおいて得られたネズミ抗体およびキメラ抗TNF
抗体のいづれも、阻害および/または中和活性を有することが確認された。
【0217】
同一の実験系による評価試験により、同程度の結合親和性を有する他の3つのネズミ抗
TNF−α抗体(TNF−1、TNF−2、TNF−3と定義する。)を評価したところ
、ID値が1〜2オーダー大きいこと、つまり本発明のネズミ抗体およびキメラ抗TNF
抗体と比較すると、明らかに小さい中和活性しか有さないことが判明した。
【0218】
実施例XIVと実施例XVにおいて得られたネズミ抗体およびキメラ抗TNF抗体の両
抗体の生体外での(原文;in vitro)ヒトTNF−αに対する阻害および/また
は中和活性能の評価は、上述したバイオアッセイ系を用いて行われた。実施例XIVと実
施例XVにおいて得られたネズミ抗体またはキメラ抗TNF抗体を産生する培養細胞が、
40pg/mlのノーマルTNF(ゲンザイム(原文;Genzyme)社製、ボストン
、MA)または組換えヒトTNF(サントリー社製、大阪、日本)と、抗体の存在下また
は抗体非存在下に上述の方法で培養された。そして、生体染色によって細胞の生死が測定
された。
TNFの細胞障害アッセイにおいて、予想通り、実施例XIVと実施例XVにおいて得
られた本発明のネズミ抗体およびキメラ抗TNF抗体は、共に投与量に応じた、ノーマル
およびrhTNFの活性の阻害または中和活性を示した。このような、抗体濃度1μg/
ml以下での阻害および/または中和能は抗体を投与された患者の血液中でも容易に達成
することができる。従って、このような抗TNF抗体、特にキメラ抗体は、その高い阻害
および/または中和能によって、TNFによってもたらされる病気や病理学的状態の治療
に好適である。
培養ヒト二倍体FS−4繊維牙細胞を用いて、cA2のTNFによるIL−6の分泌の
阻害または中和能を評価した。望ましい結果は、実施例XIVと実施例XVにおいて得ら
れたネズミ抗体およびキメラ抗TNF抗体が共に、TNFの存在下に一晩培養した細胞に
おいてIL−6の産生の阻害活性を示すという結果である。TNFによって誘導されるI
L−6の産生は、mABの非存在下または他の抗原に対するコントロールmABの存在下
においては阻害されなかった。
【0219】
TNFの有する内皮細胞(EC)のプロ凝固活性上昇や接着分子作用を誘導する機能は
、病理学の病理生理学において重要な内容である。特に、血管の損傷、播種性血管内凝固
、および敗血症の症状と関連する重厚な高血圧とも関連する。
そのため、実施例XIVと実施例XVにおいて得られたネズミ抗体およびキメラ抗TN
F抗体について、TNFに誘導される、培養ヒトさい帯の、動脈内皮細胞(HUVEC)
の活性を阻害するか否かが評価された。未処理のHUVEC細胞を、抗体の存在下および
非存在下においてTNFに4時間接触させた後、細胞溶解産物(原文;lysate)を
ヒト結漿(原文;plasma)凝固分析(原文;clotting assey)する
ことにより、TNFのプロ凝固活性への刺激性が調べられた。予想される結果は、TNF
がHUVECのプロ凝固活性に対しの正の制御を示すことである。本発明の実施例XIV
と実施例XVにおいて得られたネズミ抗体およびキメラ抗TNF抗体は、TNFの活性を
投与量に応じて阻害または中和することが予想される。
【0220】
プロ凝固活性を上昇させる作用に加えて、TNFは内皮細胞にELAM−1やICAM
の等の接着分子(原文;adhesion molecules)の産生を誘導する機能
を有する。本発明の実施例XIVと実施例XVにおいて得られたネズミ抗体およびキメラ
抗TNF抗体の両抗体は、このTNFの活性を阻害または中和することが予想されるが、
これについてELAM−1を検出する放射免疫定量法によって調べた。培養したHUVE
Cに抗体添加、または無添加で250ng/ml rhTNF(大日本、大阪、日本)に
よる刺激が与えられ、37℃において一晩96穴プレート上に培養された。ネズミ抗ヒト
ELAM−1 mABおよび125Iで標識したウサギ抗ネズミ免疫グロブリンを4℃におい
て、この順に直接培養プレートに添加することによりELAM−1の細胞表面への発現が
、評価された。
【0221】
TNFは、ELAM−1の培養HUVEC細胞表面の発現を誘導することが予想され、
さらに本発明の実施例XIVと実施例XVにおいて得られたネズミ抗体およびキメラ抗T
NF抗体のいづれによっても添加量に応じて、このTNFの活性が阻害されることが予想
される。
【0222】
最後に、TNFは培養繊維牙細胞において分裂促進(マイトジェン)活性を有すること
が知られている。本発明の実施例XIVと実施例XVにおいて得られたネズミ抗体および
キメラ抗TNF抗体の両抗体とも、TNFに誘導されるヒト二倍体FS−4培養繊維牙細
胞の有糸分裂(原文;mitogenesis)を阻害および/または中和することが期
待され、本発明の実施例XIVと実施例XVにおいて得られたネズミ抗体およびキメラ抗
TNF抗体の両抗体が、in vitroにおいてTNFの生物学的活性を幅広く阻害お
よび/または中和することが確信される。
【0223】
実施例XVII
生体内での(原文;in vivo)におけるcA2抗体の活性および効力
実施例XIVと実施例XVにおいて得た本発明のネズミ抗体またはキメラ抗TNF抗体
が生体内での(原文;in vivo)においてTNFの阻害または中和作用を有するか
否かを調べるために、ガラクトサミンで感作したネズミに致死量のヒトTNFを投与する
生体内での(原文;in vivo)実験系が採用された。
5μg(0.25mg/kg)のrhTNFを腹腔投与された結果、未処理のコントロ
ール用動物および投与後15〜30分後に生理食塩水または2mg/kgのコントロール
用抗体(キメラIgG1;ネズミ7E3抗血小板(原文;p1atelet)mAB由来
)が静脈注射(i.v.)により投与された場合には80〜90%の致死率であった。
これに対し、実施例XIVと実施例XVにおいて得た本発明のネズミ抗体およびキメラ
抗TNF抗体で処理されたものは、致死率が、0.4mg/kgの抗体を投与した群は0
〜30%に、20mg/kgsの群は0〜10%に低下することが予想される。この予想
の結果によって、実施例XIVと実施例XVにおいて得られた本発明のネズミ抗体および
キメラ抗TNFα抗体が生体外(原文;in vitro)のみならず生体内(原文;i
n vivo)においてもTNFの生物学的活性を阻害および/または中和する効力を有
することを示されることになる。
【0224】
実施例XVIII
cA2抗体の臨床的活性および効力
抗ヒトTNFのキメラIgG1モノクローナル抗体cA2が健康な男性ボランティアに
投与された。NIH標準エンドトキシン4ng/kgの投与の一時間後に、ボランティア
に、コントロールとしての生理食塩水または0.01,0.10または10mg/kgの
cA2が製剤の形態で投与された。血清中のTNF値が経時的に追跡された結果、TNF
値の最高値はcA2の投与に応じた減少することが示され、cA2を10mg/kg投与
したボランティアについてはTNFは検出されなかった。したがって、本発明の抗TNF
抗体による処置は、人体中のTNFによってもたらされる作用を阻害することが予想され
る。
【0225】
エンドトキシンを受けた(原文;receiving)患者は、白血球の辺縁趨向が原
因と考られる白血球減少を示す。白血球が活性化されるにことによって、内皮に結合可能
となりその結果として内皮の損傷を生じる。1.0〜10.0mg/kgの投与により、
この白血球減少は認められなくなる、これに対し、0.01〜0.1mg/kgの投与で
は白血球数の減少が観察された。この減少は特に多形核の細胞系列において顕著であった
。その後、全ての患者において白血球は増加した。この過程はcA2によって何ら影響を
受けなかった。この白血球の辺縁趨向の防止効果はTNFによる内皮細胞の損傷を防止で
きることを意味すると考えられる。この分野において、このTNFによる内皮の損傷は敗
血症による症状や死において重要な役割を果たしていると考えられている。従って、本発
明の抗TNF抗体は、ここに示されたように、このような損傷効果に対する予防効果を有
することが予想される。
【0226】
前記各引用文献の内容は、特に組込むことの明記がなくても、ここに言及することによ
り全て本発明の内容に含めるものとする。
【0227】
以上、本発明について充分に開示したのであるから、この分野における通常の知識を有
するものが、本発明の精神と目的の範囲内において、また不適当な(原文;undue)
実験でない限りにおいて、幅広い範囲について数値、濃度、条件を適当に変更して本発明
を実施することができる。
【0228】
本願は本発明の特定の一態様について記載したのであるが、他にも様々な態様が可能で
ある。本出願は、本発明の原理に一般的に従い、この発明が属する技術の分野における公
知のあるいは慣習的なプラクティスの範囲内に入るような変更であって、かつ、以下に示
されたクレームの範囲内から外れることなく、本発明の本質的特長に適合するような変更
を含む、本発明の全ての態様、使用、または応用をも包含することを意図している。
本願における用語の選択および用語の定義は記述上の便宜のためのものでありこれらに
制限されるものではない。
【0229】
本発明の実施態様ならびに目的生成物を挙げれば以下のとおりである。
1. ヒトの腫瘍壊死因子α(TNFα)に対する高親和性マウスモノクローナル抗体で
あって、(a)抗体A2のTNFとの結合を競合的に阻害し、(b)ヒトTNFαの中和
性エピトープに結合する抗体。
2. 請求項1に記載のマウスモノクローナル抗体であって、検出可能にラベルされてい
るもの。
3. ヒトの免疫グロブリンの不変領域の少なくとも一部と、ヒトのTNFαに特異性を
有するヒト以外の免疫グロブリンの可変部分の少なくとも一部を含むキメラ免疫グロブリ
ン鎖。
4. 請求項3に記載のキメラ免疫グロブリン鎖であって、H鎖とL鎖を有するもの。
5. 請求項3に記載のキメラ免疫グロブリン鎖であって、不変領域がヒト起源のもので
あるもの。
6. 2個のL鎖と2個のH鎖を有し、そのおのおのが不変領域の少なくとも一部と可変
領域の少なくとも一部からなり、可変領域がヒトTNFαに対して特異性を有し、生体内
で、ヒトTNFαの中和作用を有するエピトームに高い親和性をもって結合するキメラ抗
体分子。
7. 請求項6に記載のキメラ抗体であって、TNFβに結合しないもの。
8. 請求項6に記載のキメラ抗体であって、可変領域および不変領域がマウス起源であ
るもの。
9. 請求項6に記載のキメラ抗体であって、その可変領域がヒトTNFαの中和作用を
有するエピトープに結合する高親和性マウスモノクローナル抗体から誘導されるもの。
10. 請求項9に記載のキメラ抗体であって、該マウスモノクローナル抗体がA2また
はcA2のTNFαに対する結合を競合的に阻害するするもの。
11. 請求項9に記載のキメラ抗体であって、該マウスモノクローナル抗体がA2であ
るもの。
12. 請求項6に記載のキメラ抗体であって、会合定数(Ka)で示される親和性が少
なくとも1x108l/molであるもの。
13. 請求項6に記載のキメラ抗体であって、会合定数(Ka)で示される親和性が少
なくとも1x109l/molであるもの。
14. 請求項6に記載のキメラ抗体であって、少なくとも1μg/mlで、ID50で
ヒトTNFαを中和するもの。
15. 請求項6に記載のキメラ抗体であって、少なくとも100ng/mlで、ID5
0でヒトTNFαを中和するもの。
16. 請求項6に記載のキメラ抗体であって、少なくとも15ng/mlで、ID50
でヒトTNFαを中和するもの。
17. 請求項6に記載のキメラ抗体であって、検出可能にラベルされているもの。
18. 請求項1に記載のモノクローナル抗体であって、ハイブリドーマにより、または
組換えにより産生される検出可能にラベルされたもの。
19. 請求項1に記載のモノクローナル抗体であって、hTNFαの残基87−108
、または59−80および87−108の両者と結合する抗原結合領域を有するもの。
20. 請求項1に記載のモノクローナル抗体であって、それ自身、そのフラグメント、
または領域がSEQ ID NO:1のhTNFαのアミノ酸11−13、37−42、4
9−57または155−157に含まれる1個以上のエピトープに結合しないもの。
21. (a)モノクローナル抗体A2のマウスモノクローナル抗体、または
(b)モノクローナル抗体cA2のマウス/ヒトーキメラモノクローナル抗体に相当する
抗TNF結合領域またはそのフラグメントを有する抗TNF抗体。
22. SEQ ID NO:1のアミノ酸残基87−108または59−80および87
−108の両者からなる群から選ばれる少なくとも5個のアミノ酸からなるTNFペプチ
ドであって、TNFのTNFレセプターへの結合を実質的に阻害するように、レセプター
結合配列と結合することによる抗TNF生物学的活性を有する抗TNF抗体のエピトープ
を有するTNFポリペプチド。
23. 請求項22に記載のTNFポリペプチドであって、実質的に、
SED ID NO:1のアミノ酸59−80 としてのTyr−Ser−Gln−Val
−Leu−Phe−Lys−Gly−Gln−Gly−Cys−Pro−Ser−Thr
−His−Val−Leu−Leu−Thr−His−Thr−Ire; および
SED ID NO:1のアミノ酸87−108としてTyr−Gln−Thr−Lys−
Val−Asn−Leu−Leu−Ser−Ala−Ile−Lys−Ser−Pro−
Cys−Gln−Arg−Glu−Thr−Pro−Glu−Glyの少なくとも一つの
配列の3ないし22個のアミノ酸からなるTNFポリペプチド。
24. 請求項1に記載の抗体もしくはそのフラグメント、領域部分、またはその薬学的
に許容されエステル、エーテル、硫酸塩、炭酸塩、グルクロン化物もしくはその塩、およ
び薬学的に許容される担体からなる薬学的組成物。
25. 単離TNFポリヌクレオチドであって、請求項6に記載の抗体をコードするヌク
レオチド配列からなり、該ヌクレオチド配列が、少なくとも一つの不変領域との作動連関
(連鎖)において少なくとも一つの不変領域をコードするヌクレオチド配列からなるポリ
ヌクレオチド。
26. 請求項25に記載のポリヌクレオチドであって、ゲノムDNA配列またはcDN
A配列から選ばれるヌクレオチド配列を有するもの。
27. 請求項25に記載のポリヌクレオチドであって、それ自身が発現担体であるもの

28. 請求項25に記載のポリヌクレオチドで転換され、またはトランスフェクトされ
た宿主。
29. 請求項28に記載の宿主であって、真核細胞または細菌細胞であるもの。
30. 請求項29に記載の宿主であって、哺乳類の細胞であるもの。
31. 請求項6に記載の抗体またはそのフラグメント、領域部分の製法であって、
(a)請求項28に記載の宿主を抗体が回収可能の量で発現するように培養し、
(b)該抗体、またはそのフラグメント、領域部分を宿主または培養物から回収すること
からなる製法。
32. TNFαによって仲介される疾患を有する患者の治療法であって、患者に請求項
24に記載の薬学的組成物の治療量を投与することからなる治療法。
33. TNFαによって仲介される疾患を有する患者の治療法であって、患者に請求項
42に記載の薬学的組成物の治療量を投与することからなる治療法。
34. 試料からTNFαもしくはそのフラグメントまたは該TNFαを含む免疫複合体
から該TNFαを除去するための、
(a)該試料を、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメント、領域部分であって、該
TNFα、その部分または免疫複合体が固定された抗体、フラグメント、または領域部分
が可逆的に結合して、結合したTNFα、その部分または免疫複合体を生成するように支
持体に結合されたもの、を含む手段と接触させ、
(b)該結合抗体、フラグメント、または領域部分から、結合したTNFα、その部分、
または免疫複合体を回収することからなる方法。
35. 試料からTNFαもしくはそのフラグメントまたは該TNFαを含む免疫複合体
から該TNFαを除去するための、
(a)該試料を、請求項6に記載の抗体またはそのフラグメント、領域部分であって、該
TNFα、その部分または免疫複合体が固定された抗体、フラグメント、または領域部分
に可逆的に結合して、結合したTNFα、その部分または免疫複合体を生成するように支
持体に結合されたもの、を含む装置と接触させ、
(b)該結合抗体、フラグメント、または領域部分から、結合したTNFα、その部分、
または免疫複合体を回収することからなる方法。
36. 体液中の高レベルのTNFαに関係する疾患または症状を有することを疑われて
いる患者を治療するための、
(a)請求項34に記載の方法によって、該体液から該TNFαを除去し、
(b)該体液を患者に戻すことからなる方法。
37. 体液中の高レベルのTNFαに関係する疾患または症状を有することを疑われて
いる患者を治療するための、
(a)請求項35に記載の方法によって、該体液から該TNFαを除去し、
(b)該体液を患者に戻すことからなる方法。
38. 試料中のヒトのTNFα検出する免疫検定方法であって、
(a)該試料を請求項1に記載の抗体、またはそのフラグメント、領域部分と接触させ、
(b)抗体と該TNFαの結合を検出することからなる方法。
39. 試料中のヒトのTNFα検出する免疫検定方法であって、
(a)該試料を請求項6に記載の抗体、またはそのフラグメント、領域部分と接触させ、
(b)抗体と該TNFαの結合を検出することからなる方法。
40. 請求項32に記載の患者の治療方法であって、該疾患が敗血症症侯群、悪液質、
循環虚脱、急性および慢性の細菌感染、ウィルス感染、真菌感染によるショック、紅斑性
狼蒼、リウマチ性関節炎、アルコール誘発性肝炎、慢性炎症性疾患、脈管炎症性疾患、G
VH疾患、カイサキ病、および悪性疾患の一つである方法。
41. 請求項33に記載の患者の治療方法であって、該疾患が敗血症症侯群、悪液質、
循環虚脱、急性および慢性の細菌感染、ウィルス感染、真菌感染によるショック、紅斑性
狼蒼、リウマチ性関節炎、アルコール誘発性肝炎、慢性炎症性疾患、脈管炎症性疾患、G
VH疾患、カイサキ病、および悪性疾患の一つである方法。
42. 請求項6に記載の抗体、もしくはそのフラグメント、領域部分、またはその薬学
的に許容されるエステル、エーテル、硫酸塩、炭酸塩、グルコン化物もしくはその塩と、
薬学的に許容できる担体からなる薬学的組成物。
【産業上の利用可能性】
【0230】
予想外のこととして、本発明のmAbsは、EckおよびSprang(J.Bio1
.Chem.,264(29),17595−17605(1989)によって、(SE
Q ID NO:1における)hTNFαの11−13、37−42、49−57および1
55−157である複数のアミノ酸であるとして示されたように、推定されたレセプター
結合位置に結合することなく、TNF−αの活動を遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0231】
【図1】図1は、ヒトTNFαに対する、マウスmAb A2の結合に依存する用量(原文;dose)を示すグラフである。
【図2】図2は、mAb A2による、熱で不活性化されたヒトTNFαの認識の欠如を示すグラフである。
【図3】図3は、ネズミのA2による生体内でのTNF細胞毒作用の中和を示すグラフである。対照:天然のヒトTNFを有する、ネズミのIgG1抗脂質A mAb(8A1)。対照に対する平均吸光度値は次のとおりである:TNFなし=1.08;天然TNF、抗体なし=0.290;組み替えTNF、抗体なし=0.500。
【図4】図4は、mAb A2およびキメラA2がヒトリンホトキシン(TNFβ)を阻害または中和しないことを示すグラフである。
【図5】図5は、mAbネズミA2およびキメラCA2がネズミTNFαを阻害または中和しないことを示すグラフである。
【図6】図6は、mAb A2が、チンパンジー単球およびrhTNFαによって産生されたTNFを阻害または中和することを示すグラフである。
【図7】図7は、mAb A2が、チンパンジー単球およびrhTNFαによって産生されたTNFを阻害または中和することを示すグラフである。
【図8】図8は、キメラA2抗体のキメラH鎖(pA2HG1apgpt)およびキメラL鎖(pA2HuKapgpt)の発現のために使用されたプラスミドを示す模式図である。
【図9】図9は、ネズミのA2(mA2)およびキメラ抗体(cA2)で競合的にエピトープ ELISAを交差ブロック(原文;cross−blocking)した結果を示すグラフである。
【図10】図10は、マイクロタイタープレート(原文;microtiter)上に固定された組み換えヒトTNFαに結合する、125IでラベルされたmAb A2(mA2)およびキメラA2(cA2)に関するスキャチャード分析のグラフである。各Ka値は、二つの独立した測定値の平均から計算された。
【図11】図11は、キメラA2によるTNF細胞毒作用の中和を示すグラフである。対照は、天然のヒトTNFと反応するキメラマウス/ヒトIgG1抗血小板mAb(7E3)である。対照に対する平均吸光度値は、TNFなし=1.08;天然TNF、Abなし=0.290;組み換えTNF、Abなし=0.500である。
【図12】図12は、キメラA2による、TNF導入ELAM−1発現の生体外(原文;in vitro)での中和を示すグラフである。対照は、キメラマウス/ヒトIgG抗CD4抗体である。
【図13】図13は、SEQ ID NO:1としての、ヒトTNFのアミノ酸の配列を示す。
【図14A】図14Aは、ヒトTNFペプチドピンヘのcA2の相対的な結合を示すキメラmAb cA2のエピトープ地図を示すグラフ表示である。
【図14B】図14Bは、ヒトTNFの存在下におけるヒトTNFペプチドピンヘのcA2の相対的な結合を示すキメラmAb cA2のエピトープ地図を示すグラフ表示である。
【図15】図15は、cA2により認識されたエピトープの部分を有する配列を示している、ヒトTNFのアミノ酸配列を表す。
【図16】図16は、ヒトTNFモノマーのモデルを示す三次元画像およびcA2により認識されたヒトTNFの非隣接ペプチド配列のモデルを示す三次元画像である。
【0232】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部および非ヒト免疫グロブリンの可変領域を含むキメラ抗腫瘍壊死因子α(TNFα)モノクローナル抗体であって、
親和定数(Ka)として測定される少なくとも1.8×109L/molの親和性でTNFαに結合し;
かつ、オーバーラップする複数のTNFフラグメントのペプチドピンを合成することを含むエピトープマッピング法により決定されるSEQ ID NO: 1の59−80位および87−108位のアミノ酸残基内のヒトTNFαのエピトープでTNFαに結合する、前記キメラ抗TNFαモノクローナル抗体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−87144(P2012−87144A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−4156(P2012−4156)
【出願日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【分割の表示】特願2011−117072(P2011−117072)の分割
【原出願日】平成4年3月18日(1992.3.18)
【出願人】(594032322)ニューヨーク・ユニバーシティ (34)
【氏名又は名称原語表記】New York University
【出願人】(509087759)ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド (77)
【Fターム(参考)】