説明

ヒト血清中のCD28に対する抗体の同定による、アレルギー性疾患、アトピー性疾患および/または自己免疫疾患の診断

本発明は、患者由来のサンプルが、このサンプルをCD28と接触させることにより抗CD28自己抗体の存在について分析されることに従って、アレルギー性疾患、アトピー性疾患および/または自己免疫疾患を診断するための方法に関する。自己抗体がCD28二結合する場合、このことは、アレルギー性疾患、アトピー性疾患および/または自己免疫疾患の存在を示す。本発明はまた、これらの疾患を診断するためのCD28の使用、ならびに、CD28および標識化免疫グロブリン抗体を含むこの目的のために設計されたキットにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギー性疾患、アトピー性疾患および/または自己免疫疾患の診断のための方法に関し、この方法において、患者由来のサンプルは、このサンプルをCD28と接触させることによって、抗CD28自己抗体の存在について分析され、ここで、自己抗体のCD28に対する結合は、アレルギー性疾患、アトピー性疾患および/または自己免疫疾患の存在を示す。本発明は、上記疾患の診断のためのCD28の使用、ならびにCD28および標識化抗免疫グロブリン抗体を含むこの目的のために設計されたキットにさらに関する。
【背景技術】
【0002】
適応免疫応答は、感染に対する防御のための、したがって、健康の維持のために不可欠である、身体系の重要な構成要素である。
【0003】
しかし、適応免疫応答はまた、時々、感染性生物と関係のない抗原によって引き起こされる。このような不適当な免疫応答は、深刻な疾患をもたらし得、これらの疾患としては、アレルギー、アトピー性疾患もしくは自己免疫が挙げられる。
【0004】
自己免疫疾患は、内因性抗原に対する特異的適応免疫応答である。本発明者らは、何が自己免疫応答を引き起こすのかを知らないが、環境要因および遺伝的要因の両方が役割を果たしている可能性が非常に高い。自己免疫疾患は、通常、免疫系によって認識される自己抗原を発現する細胞が破壊される際に、長期間の組織損傷をもたらす。これは、おそらく、主に細胞傷害性T細胞およびマクロファージの過剰な活性化に関係する。有害な抗体応答もまた、役割を果たし得る。
【0005】
アレルギーは、通常無害である外来性物質に対する免疫系媒介型応答である。アレルギー性応答は、アレルゲンと接触した最も最初の時には起こらない。第1の適応免疫応答は、時間がかかり、そして一般に気付かれない。しかし、抗原に対して指向される抗体もしくはT細胞が誘導されるとすぐに、この抗原との新しい接触の各々は、症状をもたらす。
【0006】
免疫応答によって引き起こされる種々の型の組織障害が、存在する。アレルギーの場合、IgE抗体によって媒介される急速なアレルギー反応である、いわゆる即時型過敏症、アトピー性アレルギーもしくはアトピーが、決定的な役割を果たす。遅延型過敏症の場合、T細胞応答が原因であり、そしてこれらは、1日もしくは2日後まで最大に達しない。
【0007】
アレルギー性疾患およびアトピー性疾患の有病率は、ここ10年間の間に非常に上昇している。20%を超える人口が、即時型のアレルギーに罹患している。
【0008】
例えばアトピー性皮膚炎における上昇について可能な説明は、いわゆる衛生説(アトピー性疾患が、幼少期の感染によって予防され得ると考える)である。この理論は、アトピー性疾患の発症についての公知の危険要因(たとえば、小家族もしくは集団の中心での生活)によって支持される。免疫学的同定もまた、衛生説を支持する。
【0009】
アトピーの現在の病理学的概念は、特定のサイトカイン(主にインターロイキン(IL)−4、IL−5、IL−10、IL−13および顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF))を分泌するTh2型のアレルゲン特異的Tリンパ球が免疫応答を支配し、一方で、例えばインターロイキン−γを産生するTh1リンパ球は、活性が低い(非特許文献1)。サイトカイン(例えば、IL−4、IL−5およびIL−13)は、主に、アトピー性障害を有する患者における好酸球増加症およびIgEイソ型の抗体の産生の増大を担う(非特許文献2)。したがって、アトピー性障害を有する患者において、Th1応答からTh2応答への免疫系の平衡の一般的なシフトが、見出される。一般的に、Th1応答は、感染(例えば、細菌感染)によってより誘導されやすく、一方で、Th2応答は、例えば、(例えば寄生虫による)攻撃に対する反応として、引き起こされる。
【0010】
多くのアレルギー性疾患において、原因となるアレルゲンは、公知であるか、またはアレルギー試験によって決定され得る。このために、特に即時型アレルギーの場合に、いわゆる皮膚プリック試験(skin prick test)が、主に使用される(非特許文献3)。これらの試験により、例えば、枯草熱の原因物質について、短時間で非常な正確性で決定することが可能である。この場合、アレルゲンの同定は、しばしば、アレルゲンへの曝露を避けるかまたは低減することを可能にし、そして時々免疫治療もまた可能であり、患者の脱感作をもたらし得る。
【0011】
このことは、特異的IgEの濃度の低下および特異的IgG4の濃度の上昇を伴い(非特許文献4)、そして肥満細胞および好酸球の数の減少およびメディエータの分泌の低減を伴う(非特許文献5)。T細胞のアネルギーの誘導およびサイトカインスペクトルのIL−10産生およびTh1−サイトカイン産生へのシフトもまた、役割を果たすと考えられる(非特許文献6および非特許文献7)。
【0012】
しかし、多くの疾患について、アレルギー分類において原因物質を確立することは容易ではない。例えば、アトピー性皮膚炎もしくは喘息において、診断は、一般に、主に症状に基づき、個々の原因物質を同定することは困難である。処置はまた、一般に、症状の緩和にも向けられる。
【0013】
しかし、初期治療は、長期にわたる状態の増悪に対して反作用するために決定的である。例えば、アトピー性皮膚炎に感作した小児における現代の抗ヒスタミンの投与は、増悪を予防し得るか、またはステロイド吸入による初期抗炎症治療は、気管支喘息を有する小児の生活の質を大いに改善し得る。
【0014】
アトピーはまた、以下のアトピー性疾患の1つ以上に罹患する遺伝的傾向を示す:アトピー性気管支喘息、アレルギー性鼻結膜炎(枯草熱)またはアトピー性皮膚炎(アトピー性湿疹)。アトピーの診断について、一つの臨床的徴候もしくは特定の実験室診断結果は存在しない。診断は、一般に、臨床特徴と患者の記録および家族医学歴の組み合わせに基づく。
【0015】
医学歴を考慮する場合、湿疹、アレルギー性喘息およびアレルギー性鼻結膜炎に対して、そして例えば新生児頭部皮膚炎、発汗によって強められる掻痒、金属不適合性もしくは光恐怖症の以前の発症に対して、特定の注意が払われる。例えば、膝もしくは肘の屈曲部における、または顔領域の特定の部位における乾燥皮膚、炎症のような臨床的徴候は、アトピーの重要な指標である。
【0016】
特定の挑戦は、(例えば、乳児気管支喘息の場合の)診断の困難さである。多くの場合、臨床的状態は、非常に長い間の再発性閉塞性気管支炎として分類され、そして気管支喘息の診断が確立されるのは遅すぎる。医学歴および初期感作の検出ならびに/もしくは継続的なアトピー性皮膚炎に加えて、近年、好酸球カチオン性蛋白(ECP)が、乳児気管支喘息の危険性のある児童(ECP>16μg/l)を同定するために使用されている。
【0017】
さらに、ECPの確定はまた、抗炎症処置の有効性をモニタリングするためにも役立つ。ECPの確定とは別に、メタコリン刺激による乳児の肺機能の測定は、非常に小さな子供においてすら、疑わしい症例における気管支喘息の診断を確認するためのよい手段である。ECPと気管支過剰反応性との間に相関性はないので、これらの2つの方法は、気管支喘息の異なる病理学的機構を検出する。慢性気管支喘息の発症を避けるために、閉塞性症状(ぜん鳴)を有する全ての小さな子供について、初期に明確な診断が得られるべきである。
【0018】
実験室試験に関して、アトピー性分類の全ての疾患について、血液中の総IgE抗体濃度が測定される。濃度の上昇は、アトピーもしくはアレルギーの指標である。
【0019】
実験室において、種々の免疫学的方法が、総IgEを測定するために使用される。この結果は、IU/ml(国際単位)もしくはKU/lで表される。
【0020】
総IgEの濃度は、例えば、多くの場合ELISA(酵素結合イムノソルベント検定法)によって測定される。このために、例えば、いわゆるサンドイッチELISAにおいて、支持体は、ポリクローナル起源の抗ヒトIgE抗体でコーティングされ、そして非特異的結合部位は、例えばBSA(ウシ血清アルブミン)によってブロックされる。患者の血清(例えば、1:10希釈である)は、この支持体に接触され、洗浄され、そして結合したIgEは二次抗体、すなわち(ヒト患者の場合)抗ヒトIgE抗体で検出される。これらの抗体は、一般に、例えば酵素(例えばアルカリペルオキシダーゼもしくは西洋ワサビペルオキシダーゼ)で標識され、この酵素は、検出および定量が容易な呈色反応を触媒する。総IgE濃度はまた、ブロッティング(ウェスタンブロットもしくはドットブロット)、RIA(ラジオイムノソルベントアッセイ)もしくは支持体としての磁気ビーズ手段および蛍光標識二次抗体によっても測定され得る。
【0021】
アレルギー患者において、総IgEは、多くの場合、非アレルギー性被験体と比較して高いが、IgEの分布における重複が存在する。指針としては、以下である:
・20IU/ml(もしくはKU/l)未満の値を有する場合、アレルギーである可能性は低い。
・100IU/mlを超える値を有する場合、アレルギーである可能性が高い。
・20〜100IU/mlの値を有する場合、総IgE値に基づいて明確な決定を行うことはできない。
【0022】
これらの限界の点において、この試験は、上記の指針のように考慮される。
【0023】
しかし、100IU/mlを超える値は、例えば医学歴が不確定である場合、患者の病訴はおそらくアレルギーもしくはアトピーに起因し得る。
【非特許文献1】Jujoら,J Allergy Clin Immunol,1992年,第90巻,p.323−331
【非特許文献2】Punnonenら,Proc Natl Acad Sci,USA,1993年,第90巻,p.3730−3734
【非特許文献3】Dreborg,J Am Acad Dermatol.1989年,第21巻,p.820−821
【非特許文献4】Reidら,J.Allergy Clin.Immunol.,1986年,78巻,p.590−600
【非特許文献5】Varneyら,J.Clin.Invest.,1993年,第92巻,p.644−651
【非特許文献6】AkdisおよびBlaser,Allergy,2000年,第55巻,p.522−530
【非特許文献7】Akdisら,J.Clin.Invest.,1998年,第102巻,p.98−106
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
この背景に対し、したがって、当業者は、アトピー性疾患およびアレルギー性疾患の診断ならびに自己免疫疾患の診断のための補助的方法であって、診断の信頼性を高めるか、または診断を行うことすら可能にする方法を発明する課題に直面している。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この課題は、特許請求の範囲の内容によって、特に、アレルギー性疾患、アトピー性疾患および/または自己免疫疾患の診断のためのCD28の使用によって、解決される。CD28は、患者由来のサンプルを、このサンプルとCD28とを接触されることによって、抗CD28自己抗体の存在を試験するために使用され得、ここで、自己抗体のCD28への結合は、アレルギー性疾患、アトピー性疾患および/または自己免疫疾患の存在を示す。
【0026】
この文脈において、本発明はまた、アレルギー性疾患、アトピー性疾患および/または自己免疫疾患の診断のための方法を提供し、ここで、患者由来のサンプルが、このサンプルをCD28と接触させることにより、抗CD28自己抗体の存在について試験され、ここで、CD28に対する自己抗体の結合は、アレルギー性疾患、アトピー性疾患および/または自己免疫疾患の存在を示す。
【0027】
CD28は、休止T細胞および活性型T細胞によって、44kDA膜タンパク質として発現される。CD28は、T細胞媒介型免疫応答の誘導において、不可欠な役割を果たす。ナイーブなT細胞の活性化は、少なくとも2つのレセプター媒介型シグナルを必要とし、これらのシグナルは、抗原提示細胞(APC)によって媒介される。
【0028】
第1のシグナルは、抗原特異的であり、かつ主要組織適合遺伝子複合体(MHC)とT細胞レセプター(TCR)との間の相互作用によって媒介される。しかし、このシグナルは、ナイーブなT細胞をそれ自身の活性化のためには不十分である。さらに、Tリンパ球上のCD28とAPC上の対応するリガンド(すなわち、CD80(B7−1)もしくはCD86(B7−2))との間の結合が存在しなければならない(Applemanら,Immunol Rev2003,192:161−180;Sharpeら,Nature Rev 2002,2:116−126)。次いで、この細胞は、増殖を開始し、そしてエフェクター細胞への分化を開始する。分子CTLA−4もまた、Tリンパ球上で発現され、そしてCD80およびCD86に対して結合し得る。CD28とは対照的に、CTLA−4は、活性型Tリンパ球のエフェクター応答を阻害する。例えば、T細胞の調節が、CD28およびCTLA−4によって妨害される場合、自己反応性T細胞が刺激され得、そしてとりわけ自己免疫疾患において中心的な病理生理学的役割を果たす。
【0029】
Tリンパ球の表面分子に対する自己抗体は、種々の自己免疫疾患および感染において、ならびに輸血の間に見出されている(Osmanら,Clin Rheumatol 1994,13:21−27;Swaak,Lymphocytotoxic Antibodies.,PeterJ.B.,Shoenfeld Y編,Autoantibodies.Amsterdam:Elsevier Science,1996:478)。これらの抗体の出現は、いくつかの疾患において、疾患の活性(Winfieldら,Clin Immunol 1992;63:13−16)および白血球の機能妨害(Winfieldら,Arthritis Rheumatol 1975,18:587−594;Morimotoら,J Clin Invest 1987,79:762−768;Tanakaら,Arthritis Rheum,1989,32:398−405;Sakaneら,J Clin Invest 1979,63:954−965;Wernetら,J Exp Med 1973,138:1021−1026;Takeuchiら,Scand J Immunol 1982,16:369−377)と相関している。
【0030】
現在、ヒトにおいて、CD45,β−ミクログロブリンおよびandtoHLA−I型分子に対する自己抗体(Mimuraら,J Exp Med 1990,172:653−656;CzyzykらArthritis Rheum 1996,39:592−599;Revillardら,J Immunol 1979,122:614−618;Properら,Clin Sci(Lond)1991,80:87−93)が、そして動物においてCTLA−4に対する自己抗体(Khatlaniら,J Immunother 2003,26:12−20)が見出されている。現在、CD28に対する自己抗体は、記載されていない(Khatlaniら;Matsuiら,JImmunol 1999,162:4328−4335)。
【0031】
本発明の範囲において、驚くべきことに、CD28の出現は、アレルギー性疾患、アトピー性疾患および自己免疫疾患(例えば、アトピー性皮膚炎(オッズ比25.31[95% CI(信頼区間)、5.52−116.11];(p<0.0001)、アレルギー性喘息およびアレルギー性鼻結膜炎(オッズ比10.78[95% CI、5.39−21.55];p<0.0001)ならびに強皮症のような自己免疫疾患)と有意に関連していることが見出された。血清が分析された患者において診断された全ての他の疾患は、CD28自己抗体の出現と相関していなかった(図4、表2)。
【0032】
基本的に、CD28自己抗体の存在は、より若年の者および女性と相関している傾向があることが見出された。他の影響(例えば、血清IgE)を除外するため、さらに、多変ロジスティック回帰分析を行った。この方法において、年齢、性別もしくは血清IgEの影響の可能性は、余因子として統計的に除外された。
【0033】
本発明の範囲内で、全長CD28分子もしくは抗CD28自己抗体によって認識され得るそのフラグメントは、CD28と呼ばれる。好ましくは、細胞外フラグメントである。特に、CD28の細胞外フラグメントは、細胞内部分および膜貫通領域を除き、全長CD28中に出現するアミノ酸を含む。好ましくは、細胞外フラグメントは、配列番号2の配列を有する。配列番号2は、ヒト細胞外フラグメントの配列を示す。
【0034】
全長ヒトCD28の配列は、配列番号1において示される。しかし、ヒトCD28分子もしくはそのフラグメントに加えて、他の種(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ウマもしくはウシ)由来のCD28タンパク質もしくはそのフラグメントもまた、本発明の範囲内にある。
【0035】
上記の全長CD28分子もしくはその細胞外フラグメントは、融合タンパク質の一部分であり得る。このましくは、この融合タンパク質は、さらに、グルタチオン−S−トランスフェラーゼもしくはヒスチジンタグ(これは、組換えタンパク質の精製のために特に有用である)を含む。基本的に、CD28は、細胞から精製され得るか、または組換え技術によって産生され得る。この融合タンパク質は、Ig(免疫グロブリン)部分を含み得るが、免疫グロブリンが融合タンパク質中に含まれないことが、患者の血清中に存在するIg部分に対する自己抗体の交差反応の可能性による困難を避けるために好ましい。しかし、CD28は、CD28−Ig融合分子から、例えばトリプシンによって切断され得る。
【0036】
患者のサンプルは、好ましくは血液サンプルもしくは血清サンプルである。本発明に従う方法は、一般に、インビトロで実施される。
【0037】
CD28は、支持体に結合されることが好ましい。この固体支持体は、例えば、ELISAプレート、磁気ビーズもしくはブロットフィルム(例えば、ニトロセルロースフィルム)であり得る。本発明の範囲内において、支持体はまた、天然にまたは組換え技術によって、CD28をその表面上に発現する細胞である。CD28は、支持体に直接的に結合され得るか、または、抗体(特に、CD28に連結したタグに対する抗体、例えばグルタチオン−S−トランスフェラーゼ)を介して支持体に結合され得る。これらの抗体は、二次抗体との交差反応を避けるため、ヒト抗体ではない。
【0038】
本発明の好ましい実施形態において、抗CD28自己抗体のCD28への結合は、上記支持体を、患者の属する種の抗体に対する標識化抗免疫グロブリン抗体と接触させ、そして標識化抗体を検出することによって検査される。この患者は、例えば、ヒトであり得る。この場合、好ましくは、ヒトCD28が使用され、そして抗免疫グロブリン抗体は、抗ヒト免疫グロブリン抗体である。
【0039】
好ましくは、この抗免疫グロブリン抗体は、IgGイソ型の抗体に特異的であるが、これらはまた、IgGならびにIgMおよび/またはIgEと反応性であり得る。
【0040】
好ましくは、抗免疫グロブリン抗体は、酵素(例えば、アルカリホスファターゼもしくは西洋ワサビペルオキシダーゼ)、ビオチン、放射性同位体もしくは蛍光色素(フルオレセインイソチオシアネート(FITC)もしくはフィコエリトリン(PE))で標識されている。
【0041】
検査は、ブロット(例えば、ドットブロットもしくはウェスタンブロット)、ELISA(酵素結合イムノソルベント検定法)、RIA(ラジオイムノアッセイ)、FACS(蛍光活性型細胞選別)分析または液相検出系において実施され得る。この支持体が細胞である場合、後の結合の検査は、好ましくは、FACSもしくは蛍光顕微鏡分析によって実施される。
【0042】
特に、本発明に従う方法もしくは本発明に従うCD28の使用は、アレルギー性鼻結膜炎(枯草熱)もしくはアレルギー性気管支喘息の診断のために使用され得る。CD28自己抗体と疾患との間の非常に高い相関性はまた、アトピー性皮膚炎においても見出される。自己免疫疾患の分類において、抗CD28自己抗体の手段により、特に、強皮症もしくは紅斑性狼瘡を検出可能であり、しかしまた慢性関節リウマチおよび皮膚筋炎をも検出可能である。
【0043】
抗CD28自己抗体はまた、皮膚の水疱性自己免疫疾患(尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡)において出現する。
【0044】
抗CD28抗体の検出は、特に実験室試験において、上記の疾患のうちの1つの診断のために補助的診断技術なしで使用され得る。しかし、他の基準との組み合わせが、好ましい。特に、患者の医学的記録および家族医学歴、ならびに臨床症状は、無論、診断において重要な役割を果たし続ける。
【0045】
アトピーおよびアレルギーの分類におけるさらなる実験室試験の場合において、患者由来のサンプル(例えば血液サンプルもしくは血漿サンプル)中の総IgEの濃度の測定は、特に重要である。したがって、100IU/ml以上の総IgE濃度は、アレルギー性疾患および/またはアトピー性疾患の存在を示す。20〜100IU/mlの総IgE濃度は、このような疾患の存在の正確な指標を提供しない(Sanz ML,Prieto I,Garcia BE,Oehling A.Diagnostic reliability considerations of specific IgE determination.J Invest Allergol Clin Immunol.1996年5月〜6月;6(3):152−61)。特にこの場合、CD28のの補助による補助的診断は、感度が高い。
【0046】
喘息が疑われる場合、本発明に従う診断の方法と(例えば、メタコリンによる)刺激試験との組み合わせは、感度が高い。他の試験、例えば好酸球カチオン性蛋白についての試験(Wolthers OD.Eosinophil granule proteins in the assessment of airway inflammation in pediatric bronchial asthma.Pediatr Allergy Immunol.2003年8月;14(4):248−54.)は、本発明に従う方法と組み合わされ得る。
【0047】
本発明の範囲内で、CD28に対する自己抗体の濃度との陽性の相関性があることが確立されたので、特定の危険性、特に重度の疾患もしくは特定の強度の疾患の診断のために、方法がさらに作製され得る。アトピー性疾患の重傷度の重要なパラメータは、血清IgEである。検査される患者について、血清IgEのレベルと抗CD28自己抗体の力価のレベルとの間の相関性が見出された。
【0048】
本発明の方法に従う方法を実施するために、キットもまた、提供される。好ましくは、このキットは、アレルギー性疾患および/またはアトピー性疾患の診断のために適しており、そしてCD28および標識化抗免疫グロブリン抗体を含む。
【0049】
好ましくは、このキットは、ヒトCD28抗体および標識化抗免疫グロブリン抗体(特に抗ヒトIgG抗体)を含む。
【0050】
好ましい実施形態において、本発明に従うキットは、標識化抗IgE抗体をさらに含み、したがって、総IgE濃度とCD28自己抗体の検出との両方に基づいて、アレルギー性疾患もしくはアトピー性疾患の確認のための診断試験を実施するために適する。このキットは、未標識抗IgE抗体をさらに含み得る。何故なら、総IgEについての試験は、サンドイッチELISAとして実施され得るからである。未標識抗体は、ポリクローナル抗IgEであり得、そして標識化抗IgE抗体は、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。あるいは、この標識化抗IgE抗体および未標識抗IgE抗体は、各々、モノクローナル抗体であってもよいが、しかしこれらは、ことなるエピトープを指向しなければならない。
【0051】
上記キット中に含まれる標識化抗体は、酵素(例えば、アルカリホスファターゼもしくは西洋ワサビペルオキシダーゼ)、ビオチン、放射性同位体もしくは蛍光色素(例えば、FITCもしくはPE)で標識され得る。
【実施例】
【0052】
(実施例1:トリプシンによる組換えCD29−Ig融合タンパク質の酵素切断およびイムノブロットにおけるCD28に対する自己抗体の検出)
組換えCD28−Ig融合タンパク質(R&D Systems Inc.Minneapolis,USA)を、PBS緩衝液(2.7M NaCl、54mM KCl、87mM NaHPO、30mM KHPO、pH7.4)中に1mg/mlの濃度で溶解し、そして100μlのこの溶液を、50μlのトリプシン(10mg/ml)で37℃で15分間消化した。このインキュベーション時間の最後に、1.5μlのアプロチニン(10mg/ml)および2.5μlのTLCK(Nα−p−トシル−L−リジン−クロロメチルケトン、20mg/ml)を加え、トリプシンの酵素活性を阻害した。この溶液を、さらなる使用まで−20℃で保存し得る。
【0053】
タンパク質のゲル電気泳動による分離(SDS−PAGE)を、Lughtenbergら(Lughtenberg,B.(1975),FEBS Lett.58,254)の方法に従って実施する。上記の切断産物を、4%スタッキングゲルを用いたSDS−ゲル電気泳動(10%ゲル)(110V、150分間)によって、非還元条件下で分離した。次に、この切断産物を、50mAの電流で3時間にわたってPVDF(フッ化ポリビニリデン)膜(Segin−Blot,Biorad,Germany)上に移動させた。次いで、この膜を、5%スキムミルク粉末によって60分間室温でブロックし、そしてPBSで3回洗浄した。
【0054】
イムノブロットの感度および特異性を、以下の抗体でモニタリングした:モノクローナルマウス抗ヒトCD28抗体(R&D Systems,Minneapolis,USA)(PBS中1:5000希釈)、ビオチン化ポリクローナルマウス抗ヒトCD28抗体(R&D Systems,Minneapolis,USA)(PBS中1:5000希釈)、モノクローナルマウス抗ヒトFc抗体(Dianova,Hamburg,Germany)(PBS中1:10000希釈)、およびポリクローナルウサギ抗ヒトIgG抗体(Sigma−Aldrich,Steinheim,Germany)(PBS中1:3500希釈)。
【0055】
図1は、CD28−Ig融合タンパク質の切断産物は、抗CD28抗体によってのみ明瞭に認識されるが、IgGもしくはFcに対する抗体によっては明瞭には認識されないことを示す。
【0056】
血清中のCD28に対する自己抗体を検出するために、細長く切断した上記PVDF膜を、1:10希釈したヒト血清中で1時間、旋回テーブル上で室温でインキュベートした。ヒトFc(Dianova,Hamburg)およびヒトCD28(R&D,Wiesbaden)に対する特異的抗血清を、コントロールとして用いた。次いで、このブロットを、再び3回洗浄し、次いで、ヒトIgGに対するAP結合体化二次抗体(Serva,Heidelbergより)と共に室温で1時間インキュベートした。この結合を、酵素呈色反応(BCIP/NBT、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート/p−ニトロブルーテトラゾリウムクロリド)によって可視化した。
【0057】
図2は、例として、CD28に対する自己抗体を含む血清についての結果または陰性の結果を示す。イムノブロットにより、CD28に対する特異的IgG抗体が、血清中で検出される。
【0058】
(実施例2:CD28に対する自己抗体の種々の疾患との関連)
本方法を用いて、計268の血清を試験し、CD28に対する自己抗体の存在について評価した。この群において、72の血清を、健康な試験被験体から得、そして196の血清を、種々の疾患の患者から得た。学術目的で血液サンプルを採取するための書面による同意を、各患者から得た。
【0059】
健康な試験被験体の群において、CD28自己抗体を、8/72(11.1%)の血清中で検出した。患者群において、53/196(27.04%)の血清が陽性であった。表1は、CD28自己抗体の存在が、より若年の者および女性と相関している傾向があることを示す。
【0060】
(表1:抗CD28自己抗体に対する年齢および性別の関係)
【0061】
【表1】

単変量分析は、CD28自己抗体の出現が、アトピー性湿疹(オッズ比、25.31[95% CI、5.52−116.11];p<0.0001)、アレルギー性喘息およびアレルギー性鼻結膜炎(OR 10.78[95% CI、5.39−21.55];p<0.0001)と、ならびに強皮症、紅斑性狼瘡、慢性関節リウマチ、皮膚筋炎もしくは水疱性自己免疫疾患のような自己免疫疾患と、有意に関連していることを示す(表2)。患者群において診断された全ての他の疾患は、CD28自己抗体の出現と相関していなかった。
【0062】
他の要因(例えば血清IgE)を除外するため、さらに、多変ロジスティック回帰分析を行った。これに基づき、年齢、性別もしくは血清IgEの影響の可能性は、余因子として統計的に除外された(表3)。
【0063】
(表2:診断と抗CD28自己抗体との間の関係)
【0064】
【表2】

95%−CI:95%の信頼区間;n.s.:有意でない;p:フィッシャーの直接確率検定によるBonferroni修正p−値;OR:オッズ比。
【0065】
(表3:抗CD28自己抗体の出現に影響を有する要因のロジスティック回帰分析)
【0066】
【表3】

(実施例3:CD28に対する自己抗体の機能的有意性)
CD28に対する自己抗体の機能的有意性を、いわゆる混合リンパ球反応(MLR)によって検査した。
【0067】
まず、プロテインG−バンド(Dynal,Hamburg)を、指示書に従い、CD28融合タンパク質とともにローディングした。このタンパク質は、架橋によって不可逆的にビーズに結合した。そして結合を、フローサイトメトリーによって測定した。次いで、血清プールを、(1)アトピー性湿疹を有する患者由来の抗CD28自己抗体を含有する3つの血清(AE+)、(2)アトピー性湿疹を有する患者由来の抗CD28自己抗体を含有しない2つの血清(AEΦ)、(3)アトピー性湿疹を有さない患者由来の抗CD28自己抗体を含有する2つの血清(G+)、(3)アトピー性湿疹を有さない患者由来の抗CD28自己抗体を含有しない7つの血清(GΦ)から調製した。
【0068】
このプール血清を、順次ビーズによって精製することにより、CD28に対する抗体およびヒトFcに対する抗体を有する画分を得た。次いで、溶出物を、CD28に対する抗体の存在について、ウェスタンブロットによって試験した。
【0069】
次に、溶出物およびプール血清について、MLRの範囲内で増殖試験を実施した。細胞株を、RPMI1640培地+10%ウシ胎仔血清(FCS)中で培養した。MLRのために、Jurkat細胞(10個の細胞/ml)を、放射線照射した(用量:30gy)Raji細胞(10/ml)と共に培養した。溶出物(50μl)を、種々の培地に添加した。いくつかの培地において、4μgのCTLA−4−Ig(R&D Systems,Minneapolis,USA)を、アネルギーの誘導のために添加した。2日後、5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU)を、培養物に添加し、そして5時間インキュベートした(Neuberら,Immunology 2003,109:24−31)。次いで、細胞の増殖を、呈色反応によって測定した。
【0070】
この実験(図3)は、CD28に対する自己抗体を含む血清からの溶出物は、細胞増殖を大いに刺激したが、一方、自己抗体を含まない血清は、増殖を阻害したことを示した。
【0071】
Tリンパ球上のCTLA−4レセプターの刺激は、刺激シグナルの阻害を介して、細胞をアネルギー状態でシフトした(Sharpeら,Nature Rev 2002,2:116−126)。したがって、このCTLA−4−Ig融合タンパク質を、増殖実験におけるコントロールとして使用し得る(Linsleyら,J Exp Med 1991,174:561−569)。CD28に対する自己抗体を含む血清は、アネルギー状態を突破し、そしてT細胞は再び増殖し得ることを見出した。
【0072】
(実施例4:CD28−GST融合タンパク質の産生)
(ヒト全血からのRNA調製)
まず、RNAを、Qiagen社(Hilden,カタログ番号:52304)からのQIAamp RNA Blood Mini−Kitを用いてヒト全血から調製した。
【0073】
(cDNAの産生のためのRT−PCR)
5μgの調製RNAを、ランダムへキサマープライマーを用いSuperscript kit(Invitrogen,Karlsruhe)を用いて血液cDNAに転写した。
【0074】
(CD28 cDNAのクローニング)
次いで、上記タンパク質の細胞外領域(IgG−様ドメイン、膜貫通領域およびシグナルペプチドを含まない)をコードするcDNA領域を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅した。使用した参照は、配列NM_006139(配列番号3)であり、NCBIからインターネット上で利用可能である。
【0075】
増幅したcDNAは、以下のアミノ酸配列をコードする:
PSIQVTGNKILVKQSPMLVAYDNAVNLSCKYSYNLFSREFRASLHKGLDSAVEVCVVYGNYSQQLQVYSKTGFNCDGKLGNESVTFYLQNLYVNQTDIYFCKIEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLF(配列番号2)。
【0076】
使用したプライマーは、以下であった:
センス 5’−AAAGAATTCCCTTCAATTCAAGTAACAGGAAAC−3’ (配列番号4)
アンチセンス 5’−AAACCCGGGAAATAGGGGACTTGGACAAAG−3’ (配列番号5)
このcDNAを、制限酵素EcoRIおよびSmaIの切断部位(これらは、既に増幅に用いたプライマー5’内に組み込まれている(プライマー配列中の下線部位))を介してベクターpGEX−4T−1(Amersham Biosciences,Freiburg,カタログ番号:27−4580−01)のマルチクローニングサイトに組み込んだ。このために、PCR増幅産物およびベクターpGEX−4T−1の両方を、反応緩衝液NEB4中で、20℃もしくは37℃で、各々2時間にわたって、まずSmaI(New England Biolabs,Frankfurt A.M.,カタログ番号:#R0141S)と共にインキュベートし、次いで、EcoRI(New England Biolabs,カタログ番号#R0101S)と共にインキュベートした。この後、切断したDNAを、Roche社からのアガロースゲルDNA抽出キット(Basel,カタログ番号:1696505)によって精製した。次いで、この線状化ベクターを、脱リン酸化するために、この溶出したDNAを、適切な緩衝液の添加後、37℃で10Uのアルカリホスファターゼ(Roche、カタログ番号:713023)と共にインキュベートした。次いで、この制限調製物を、1%アガロースゲル中で100Vで分離した。臭化エチジウム染色の後、約400bpのバンドを、UVトランスイルミネーター上で可視化し、そして切り出した。次いで、切断したcDNAを、Rocheアガロースゲル溶出キットを用いて、50μl HO中で溶出した。次に、ライゲーションチャージを、T4−リガーゼ(Invitrogen,カタログ番号:E111−01)、100ngのベクターおよび200ngのcDNAフラグメントで調製し、そして12℃で数時間インキュベートした。これにより、リーディングフレーム中に存在するCD28から5’方向にグルタチオンS−トランスフェラーゼが配置されている構築物を得た。
【0077】
次に、コンピテントな細菌(XL1 Blue,HB 101)を、5分の1のライゲーションチャージで形質転換した。このために、5分の1のライゲーションチャージもしくは0.5μgのDNA調製物を、氷上で融解した50μlのコンピテント細菌にピペットで添加し、そして氷上で30分間インキュベートした。
【0078】
次いで、細菌調製物を、37℃で5分間加熱した。次いで、950μlのSOC培地を添加し、そして50μl〜1mlのチャージを、150μg/mlアンピシリン含有のLB−アガープレート上に均一にピペットで画線し、そして37℃で一晩インキュベートした。
【0079】
(細菌からのプラスミドの少量調製(minipreparation))
形質転換した細胞の個々のコロニーを、対応する抗生物質添加物と共に2.5mlの培地中に植菌し、そして一晩培養した。この細菌を、次いで、2400gで遠心分離し、上清を除去して、ペレットを、シェーカー上で、200μlの1μg/mlのリゾチーム含有STET(8%スクロース、5% Triton X−100、50mM Tris−HCl、pH8.0、50mM EDTA)中に再懸濁した。このチャージを、次いで2分間95℃で加熱し、次いで、10分間16000gで遠心分離した。沈殿をつまようじで除去し、廃棄した。10μlの5% CTAB溶液(セチル−トリメチル−アンモニウムブロミド)を上清に添加し、少し振とうし、ペレットを16000gで沈殿させた。上清を除去し、そしてペレットを、シェーカー上で、300μlの1.2M NaCl中に溶解した。次いで、750μlの100%エタノールを添加し、このチャージを激しく振とうして、そして10分間16000gで遠心分離した。この上清を除去し、そしてペレットを1mlの70%エタノール中で洗浄し、5分間16000gで遠心分離し、そして再び上清を廃棄した。このDNAペレットを、乾燥させ、そして30μl HO中に入れた。
【0080】
挿入された領域の配列の正確性を、配列決定法によって決定した。
【0081】
(組換えCD28−GST融合タンパク質の調製)
コンピテントBL21−RILsuppl. Bacteria(プロテアーゼ欠損E.coli株)を、上記のcDNA構築物で形質転換させ、その後、SOC培地中37℃で30分間プレインキュベーションし、150μg/mlアンピシリン含有のLB−アガープレート上に画線した。14時間のインキュベーション後、30mlのアンピシリン含有LB培地に、コロニーを植菌した。
【0082】
この予備培養物を、シェーカー内で、一晩37℃でインキュベートした。次いで、これをアンピシリン含有500ml LB培地に移し、そして37℃で、連続的に振とうしながら、600nmで0.6〜0.8の最適密度までインキュベートした(約1.5時間)。
【0083】
この密度に達するとすぐに、1mM IPTG(イソプロピルbD−チオガラクトピラノシド,Biomol,Hamburg,カタログ番号:05684−1)によってタンパク質発現を誘導した。約4時間後、細菌を4000g、4℃で10分間沈殿させ、培養上清を捨て、そしてペレットを5〜10mlの氷冷PBS中に再懸濁した。この上清を、5回、各回10秒間にわたって超音波処理し(Branson Sonifier 250、第6段階)、次いで、20分間30000gで遠心分離した。次いで、親和性精製を、GST−タグを介して行った。グルタチオン−セファロース4B(Amersham Biosciences,カタログ番号:27−4574−01)を、ベッド容量1mlの重力駆動ポリプロピレンカラムにローディングし、そして5倍の容量のPBSで平衡化した。
【0084】
細菌溶解物をローディングし、そしてカラムへの流れを再び開始した。第2の通過物を捨て、そしてカラムをベッド容量の5倍の容量のPBSで洗浄した。溶出を、10mM還元グルタチオン、50mM Tris pH7.5、100mM NaCl、10%グリセロール中で実施した。次いで、溶出したタンパク質のアリコートを、−80℃で保存した。
【0085】
(使用した材料)
PBS 137mM NaCl
2.7mM KCl
7.4mM NaHPO
1.5mM KHPO
STET 8%スクロース
0.1% Triton X
50mM EDTA
50mM Tris pH8
TAE×50 2M Tris塩基
5.71%氷酢酸
50mM EDTA
TE 20mM Tris pH7.5
1mMEDTA
適用緩衝液×5(核酸用) 40%スクロース
0.25%ブロモフェノールブルー
0.25% TE中キシレンX
SOC培地 2% Bacto−trypton
0.5% Bacto酵母抽出物
10mM NaCl
2.5mM KCl
5N NaOH(pH7.0まで)
オートクレーブの後、60℃まで冷ます
10mM MgCl
10mMグルコース
Dyt培地 1.6%Bacto−tryptone
1%Bacto酵母抽出物
100mM NaCl
LB培地 1%Bacto−tryptone
0.5% Bacto酵母抽出物
200mM NaCl
NaOHでpH7.5まで調整する
Y−ブロス LB培地
4mM MgSO
5mM KCl
TFB 1 15%グリセロール
10mM CaCl
30mM 酢酸カリウム
酢酸でpH5.8まで調整する
100mMRbCl
50mMMnCl
TFB 2 15%glycerol
10mM MOPS
75mM CaCl
10mM RbCl
LB培地 1%Bacto−tryptone
0.5%Bacto酵母抽出物
200mM NaCl
NaOHでpH7.5まで調整する
(コンピテント細菌の産生)
XL1blue細菌を、LBプレート上に画線し、そして37℃で一晩インキュベートした。朝に、数個のコロニーを、各々2mlのY−ブロスに植菌し、そしてシェーカー内で2時間37℃でインキュベートした。次いで、これらの予備培養物を、500ml Y−ブロスに入れ、そして600nmでのODが0.3〜0.35になるまでインキュベートした。次いで、この培養物を、2つの50mlポリプロピレンチューブに分配し、氷上に短時間置き、そして4℃、2000gで沈殿させた。上清を捨て、ペレットを各々15mlのTFB 1(15%グリセロール、10mM CaCl、30mM酢酸カリウム、酢酸でpH5.8に調整、100mM RbCl、50mM MnCl)中に再懸濁し、そして氷上に60〜90分間置いた。
【0086】
次いで、これを2000gで再び沈殿させ、上清を捨て、そしてペレットを各2ml TFB2(15%グリセロール、10mM MOPS、75mM CaCl、10mM RbCl)中に再懸濁した。次いで、細菌を、200μlのアリコートに分配し、そして直ちに液体窒素中で急速凍結させ、次いで−80℃で保存した。
【0087】
(実施例5:ヒトCD28の細胞外ドメインに特異的な抗体を検出するためのELISA)
マイクロタイタープレート(Maxisorp,Nunc)のウェルを、100μlモノクローナルマウス抗グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)抗体(Schistosoma japonicum由来のGSTに特異的、PBS中1:2000の事前希釈物)でコーティングした。室温で1時間のインキュベーション時間後、このウェルを、PBS+0.1% Tween 20で3回洗浄した。
【0088】
次いで、250μlの1%スキムミルク粉末含有PBS、および0.1% Tween 20で室温で1時間ブロッキングを実施し、その後、再びPBS+0.1% Tween 20で3回洗浄した。
【0089】
各100μlのCD28−GST抗原1:2事前希釈物(PBS+0.1% Tween 20)を、カラム1および2のウェル内にピペットで入れ、第3および第4のカラムのウェルに、各々、100μl PBS+0.1% Tween 20のみを入れた。このマイクロタイタープレートの他のカラムを、同様に調製した。
【0090】
室温で1時間の後、3回以上の洗浄工程を行った。次いで、患者由来の血清およびポジティブコントロール血清、ポリクローナルウサギ抗ヒトCD28抗体(Santa Cruz,Heidelberg)(濃度1μg/ml)を、PBS+0.1% Tween 20中で1:200に事前希釈した。
【0091】
ブランク値は、抗原を含むがコントロール血清を含まず、ネガティブコントロールはコントロール血清を含むが抗原を含まず、そしてブランクは、コントロール血清も抗原も含まなかった。各患者血清を、抗原および(非特異的反応を除外するために)PBS+0.1% /Tween 20に対して、2重決定で測定した。
【0092】
次いで、このマイクロタイタープレートを、室温で1時間インキュベートし、次いで、3回洗浄した。次の工程において、二次抗体を添加した。コントロール血清を含むウェル(B1〜4)中で各100μlの抗ウサギIgG抗体(Fc特異的;Sigma,Munich)を使用し、そして患者血清について、各100μlの抗ヒトIgG抗体(Fc特異的;Sigma,Munich)を使用した。両抗体を、1:5000に事前希釈し、そしてアルカリホスファターゼで標識した。インキュベーション時間は、室温で60分間であった。
【0093】
5回完全に洗浄した後、100μlのp−ニトロフェニル基質溶液(pNPP基質錠剤セット,Sigma,Munich)を、各ウェルに添加し、そして暗所で60分間、室温でインキュベートした。発色を、405nmで0分後および60分後に測定した。
【0094】
各血清についての結果を、以下の式から計算した:
【0095】
【数1】

商を、試験した全ての血清について計算した。限界値を、健康な試験被験体由来の72の血清で計算した。健康な試験被験体の全ての計算した商の95%は、9未満であり、したがって、10を超える値が陽性であると評価され、すなわち、これらは自己抗体を含むことが見出された。
【0096】
さらに、CD28に対する自己抗体を全く含まない血清およびCD28自己抗体を絶対に含む血清を、希釈系列中で試験した。CD28自己抗体を含む血清はまた、1:700の希釈における陰性の血清よりはっきりと高いODを示した(図4)。
【0097】
患者血清中のGSTに対して交差反応する抗体を、除外した。この目的で、32の血清を試験し、そしてこのELISAに用いたGSTに対する抗体を含む血清は見出されなかった。
【0098】
アトピー性疾患を有する全ての患者について、血清中のIgE値が、示された。IgEの濃度は、アトピー性疾患の重症度の程度についてのパラメータである。これらの患者について、CD28に対する自己抗体についての力かは、血清IgE力価のレベルと有意に相関している。したがって、抗CD28自己抗体力価のレベルが、アトピーの重症度と相関することを結論し得る。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】トリプシンによる酵素消化後のCD28−Ig融合タンパク質の切断産物。カラム1:マウス抗ヒトCD28 moAbで標識したCD28。カラム2:ビオチン化ポリクローナルマウス抗ヒトCD28 Abで標識したCD28。CD28融合タンパク質のいくつかのより小さいフラグメントは、このポリクローナルAbで検出されるが、モノクローナル抗体で検出されない。カラム3〜5:ウサギ抗ヒトIgG Abを有するIg部分の分割産物(カラム3)、ならびにヤギ抗ヒトIgG Abを有するIg部分の分割産物(カラム4)およびマウス抗ヒトFc Abを有するIg部分の分割産物(カラム5)。
【図2】アトピー性湿疹(AD)およびCD28に対する自己抗体を有する4人の患者、ならびに自己抗体を有さない1人の患者のイムノブロット。自己免疫疾患(AI)のCD28抗体についての例として、強皮症を有する患者の血清による結果を示す。ここで、後天性表皮水疱症(AI)および尋常性乾癬(PS)を有する患者において、CD28に対する自己抗体は検出されなかった。
【図3】放射線照射Raji細胞および生Jurkat細胞によるMLR。増殖を、培養の2日後にBrdUの組み込みによって測定した。結果は、自発的増殖(コントロール)の刺激の割合(%)で示される。CTLA4−Igが増殖を阻害する一方で、CD28自己抗体(CD28 auto−Ab)を含む溶出物は、T細胞増殖を有意に刺激した。CTLA4−IgおよびCD28に対する自己抗体による同時刺激は、Jurkat細胞増殖の阻害の有意な低下を示した。**P<0.01は、コントロールに対する比較において有意である。
【図4】ELISAによる抗CD28自己抗体についての血清の分析。絶対に抗CD28自己抗体を含む血清のODは、高い希釈においてさえも、抗CD28自己抗体について明瞭に陰性である血清よりもなお有意に高い。
【図5】それぞれ、抗CD28自己抗体とアトピーもしくはアトピー性湿疹を有する患者における血清IgEとの相関の提示。相関係数は0.206であり、そして有意性のレベルは、0.012である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレルギー性疾患、アトピー性疾患および/または自己免疫疾患の診断のための、CD28の使用。
【請求項2】
患者由来のサンプルが、該サンプルをCD28と接触させることによって抗CD28自己抗体の存在について分析されることを特徴とし、該自己抗体のCD28に対する結合が、アレルギー性疾患、アトピー性疾患および/または自己免疫疾患の存在を示すことを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
アレルギー性疾患、アトピー性疾患および/または自己免疫疾患の診断のための方法であって、該方法は、患者由来のサンプルが、該サンプルをCD28と接触させることによって抗CD28自己抗体の存在について分析されることを特徴とし、該自己抗体のCD28に対する結合が、アレルギー性疾患、アトピー性疾患および/または自己免疫疾患の存在を示すことを特徴とする、方法。
【請求項4】
CD28は、全長CD28分子もしくはその細胞外フラグメントを含むことを特徴とする、請求項1〜3に記載の方法もしくは使用。
【請求項5】
前記細胞外フラグメントは、配列番号2に記載の配列を有することを特徴とする、請求項4に記載の方法もしくは使用。
【請求項6】
前記全長CD28分子もしくはその細胞外フラグメントは、融合タンパク質の一部分であることを特徴とする、請求項4および請求項5に記載の方法もしくは使用。
【請求項7】
前記融合タンパク質は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼをさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法もしくは使用。
【請求項8】
前記サンプルは、血液サンプルもしくは血清サンプルであることを特徴とする、請求項2〜7に記載の方法もしくは使用。
【請求項9】
CD28は、支持体に結合していることを特徴とする、請求項1〜8に記載の方法もしくは使用。
【請求項10】
抗CD28自己抗体のCD28に対する結合は、前記支持体を、前記患者の属する種の抗体に対する標識化抗免疫グロブリン抗体と接触させること、および前記標識化抗体を検出することによって分析されることを特徴とする、請求項9に記載の方法もしくは使用。
【請求項11】
前記患者はヒトであり、そして前記抗免疫グロブリン抗体は抗ヒト免疫グロブリン抗体であることを特徴とする、請求項10に記載の方法もしくは使用。
【請求項12】
前記抗免疫グロブリン抗体は、酵素、ビオチン、放射性同位体もしくは蛍光色素によって標識されることを特徴とする、請求項10および請求項11に記載の方法もしくは使用。
【請求項13】
前記分析は、ブロット分析、ELISA分析、RIA分析、FACS分析もしくは液相検出系において実施されることを特徴とする、請求項10〜12に記載の方法もしくは使用。
【請求項14】
前記アレルギー性疾患は、アレルギー性鼻結膜炎もしくはアレルギー性気管支喘息であることを特徴とする、請求項1〜13に記載の方法もしくは使用。
【請求項15】
前記アトピー性疾患は、アトピー性皮膚炎であることを特徴とする、請求項1〜13に記載の方法もしくは使用。
【請求項16】
前記自己免疫疾患は、強皮症、紅斑性狼瘡、慢性関節リウマチ、皮膚筋炎、もしくは水疱性自己免疫疾患であることを特徴とする、請求項1〜13に記載の方法もしくは使用。
【請求項17】
さらに、前記サンプル中の総IgE濃度が決定され、ここで、100IU/ml以上の総IgE濃度は、アレルギー性疾患および/もしくはアトピー性疾患を示すことを特徴とする、請求項1〜15に記載の方法もしくは使用。
【請求項18】
高濃度の、CD28に対する自己抗体は、特別な危険性、特に重篤な疾患、もしくは特に激しい疾患を示すことを特徴とする、請求項1〜17に記載の方法もしくは使用。
【請求項19】
アレルギー性疾患および/またはアトピー性疾患の診断のためのキットであって、該キットは、CD28および標識化抗免疫グロブリン抗体を含むことを特徴とする、キット。
【請求項20】
CD28は、全長CD28分子もしくはその細胞外フラグメントを含むことを特徴とする、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
前記細胞外フラグメントは、配列番号2に記載の配列を有することを特徴とする、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
前記全長CD28分子もしくはその細胞外フラグメントは、融合タンパク質の一部分であることを特徴とする、請求項20および請求項21に記載のキット。
【請求項23】
前記融合タンパク質は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼをさらに含むことを特徴とする、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
標識化抗IgE抗体をさらに含むことを特徴とする、請求項19〜23に記載のキット。
【請求項25】
前記標識化抗体は、酵素、ビオチン、放射性同位体もしくは蛍光色素によって標識されることを特徴とする、請求項19〜24に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−530522(P2008−530522A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553539(P2007−553539)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000947
【国際公開番号】WO2006/082066
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(506126185)
【Fターム(参考)】