説明

ヒトFcガンマ受容体III

本発明はヒト免疫グロブリン受容体の分野に関する。本明細書において、ヒト胚腎細胞及びチャイニーズハムスター卵巣細胞において組み換え発現させたヒトFcガンマ受容体HIaの糖構造を報告する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒト免疫グロブリン受容体の分野に関する。本明細書においてヒト胚腎細胞及びチャイニーズハムスター卵巣細胞において組み換え発現させたヒトFcガンマ受容体を報告し、特に本発明はその糖構造に関する。
【0002】
発明の背景
免疫グロブリンは、一般に、2つの軽ポリペプチド鎖及び2つの重ポリペプチド鎖を含む。重及び軽ポリペプチド鎖の各々が可変領域(一般的にポリペプチド鎖のアミノ末端部分)を含み、それは抗原と特異的に相互作用できる一つ又は複数の結合ドメインを含む。重及び軽ポリペプチド鎖の各々は定常領域(一般的にカルボキシ末端部分)も含む。重鎖の定常領域は、例えば、食細胞などのFcガンマ受容体(FcγR)を持つ細胞、又は、Brambell受容体としても公知の新生児Fc受容体(FcRn)を持つ細胞への免疫グロブリンの結合を媒介する。それは、成分(C1q)などの古典的な補体系の因子を含むいくつかの因子への結合も媒介する。
【0003】
免疫グロブリン分子は、5つの異なるクラスに割り当てられる:IgA(クラスAの免疫グロブリン)、IgD、IgE、IgG、及びIgM。これらのクラスの中で、免疫グロブリンはそれらの全体構造において異なるが、しかし、構成要素は非常に似ている。
【0004】
Hulett及びHogarth(Hulett, M.D. and Hogarth, P.M., Adv. Immunol. 57 (1994) 1127)は、クラスGの免疫グロブリンのFc部分に対する細胞外受容体が、異なる結合特異性を有する3つの異なる受容体型:FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを含む膜貫通糖タンパク質のファミリーであることを報告した。I型の受容体が非複合型IgGと相互作用するのに対し、II及びIII型の受容体は好ましくは複合型IgGと相互作用する。ヒトFcγRIII(CD16)は、2つのアイソフォーム及び2つの多型で存在する。第1のアイソフォームFcγRIIIaが、第2のアイソフォームFcγRIIIbとは異なる遺伝子によりコード化される膜貫通分子であり、それはGPI固定膜タンパク質である。第1の多型V159がアミノ酸配列の159番目の位置にバリン残基を有するのに対して、第2の多型F159は159番目の位置にフェニルアラニン残基を有する。
【0005】
Takahashiら(Takahashi, N., et al., Glycobiology 12 (2002) 507-515)は、BHK細胞において産生した組み換えヒト可溶性FcγRIIIのNグリコシル化プロファイルを報告する。FcγRIIIb細胞外ドメインと単量体ヒトIgGサブクラスの間の相互作用の親和力がGalonらにより報告された(Galon, J., et al., Eur. J. Immunol. 27 (1997) 1928-1932)。CD16アイソフォームによるリガンド結合及び食作用がNagarajanらにより報告された(Nagarajan, S., et al., J. Biol. Chem. 270 (1995) 25762-25770)。EP−A−1314 741には、二重特異性抗CD19 x 抗CD16抗体及びその使用が報告されている。
【0006】
ヒトFcガンマ受容体IIIaの定義された糖構造を提供すること、即ちヒトFcガンマ受容体IIIaの特定の位置に付着したオリゴ糖の一覧を提供するが、本発明の目的である。
【0007】
発明の概要
本発明は、Fcガンマ受容体の糖構造の分野におけるいくつかの局面を含む。第1の局面は配列番号1のアミノ酸配列を伴う、組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaであり、配列番号1のアミノ酸の163番目の位置に以下のN結合型オリゴ糖の1つを含む:
【表1】

【0008】
一態様において、受容体は、配列番号1のアミノ酸の75番目の位置に以下のN結合型オリゴ糖の1つを含む:
【表2】

【0009】
別の態様において、受容体は、配列番号1のアミノ酸の46番目の位置に以下のN結合型オリゴ糖の1つを含む:
【表3】

【0010】
別の態様において、受容体は、配列番号1のアミノ酸の170番目の位置に以下のN結合型オリゴ糖を含む:
【表4】

【0011】
別の態様において、受容体は配列番号1のアミノ酸の180又は181番目の位置の1つに以下のO結合型オリゴ糖を含む:
【表5】

【0012】
一態様において、受容体はアミノ酸の159番目の位置にフェニルアラニンを有する。
【0013】
本発明の第2の局面は組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaであり、配列番号1のアミノ酸配列を伴い、配列番号1のアミノ酸の163番目の位置に以下のN結合型オリゴ糖の1つを含む:
【表6】

【0014】
本発明の第3の局面は、本発明の組み換えFcガンマ受容体への免疫グロブリンの結合の判定方法であって、以下の段階を含む:
i)分析する免疫グロブリンの提供;
ii)本発明の組み換えFcガンマ受容体の提供;
iii)免疫グロブリンとFcガンマ受容体との接触、及び
iv)Fcガンマ受容体への免疫グロブリンの結合の判定。
【0015】
一態様において、Fcガンマ受容体は固相にコンジュゲーションする。別の態様において、免疫グロブリンは固相にコンジュゲーションする。
【0016】
さらなる態様において、Fcガンマ受容体又は免疫グロブリンのコンジュゲーションは、N末端及び/又はε−アミノ基(リジン)、異なるリジンのε−アミノ基、アミノ酸骨格のカルボキシ、スルフヒドリル、ヒドロキシル、及び/又はフェノール官能基、及び/又は糖鎖構造の糖アルコール基を介した化学結合により実施される。さらに別の態様において、Fcガンマ受容体又は免疫グロブリンのコンジュゲーションは、以下の特異的結合対より選択される特異的結合対を介して実施される(第1成分/第2成分):
− ストレプトアビジン又はアビジン/ビオチン、
− 抗体/抗原、
− レクチン/多糖体、
− ステロイド/ステロイド結合タンパク質、
− ホルモン/ホルモン受容体、
− 酵素/基質、又は
− 免疫グロブリンG/プロテインA及び/又はプロテインG及び/又はプロテインL。
【0017】
本発明の方法のさらなる態様において、Fcガンマ受容体への免疫グロブリンの結合の判定は、表面プラズモン共鳴、音響共鳴、蛍光共鳴エネルギー移動、イムノアッセイ、全反射、光ファイバー、表面プラズモン共鳴蛍光増強、又は蛍光活性化細胞選別により達成する。
【0018】
本発明の別の局面は、組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaの組成物であって、それにより、
a)組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaが配列番号1のアミノ酸配列を有し、HEK293細胞において発現されており、及び
b)組成物は、配列番号1のアミノ酸の163番目の位置のN結合型オリゴ糖において異なる、配列番号1の少なくとも2つの組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaの混合物を含み、
ここで、少なくとも2つの異なるN結合型オリゴ糖は以下より選択される:
無、
【表7】

【0019】
本発明のさらなる局面は、HEK293細胞から得られる本発明の組成物への免疫グロブリンの結合の判定方法であり、以下の段階を含む:
i)分析する免疫グロブリンの提供、
ii)本発明のHEK293細胞から得られる組み換えヒトFcガンマ受容体の組成物の提供、
iii)該免疫グロブリンと組み換えヒトFcガンマ受容体の該組成物との接触、及び
iv)組み換えヒトFcガンマ受容体の該組成物への該免疫グロブリンの結合の判定。
【0020】
本方法の一態様において、組み換えヒトFcガンマ受容体は固相にコンジュゲーションする。別の態様において、免疫グロブリンは固相にコンジュゲーションする。さらなる態様において、コンジュゲーションは、N末端及び/又はε−アミノ基(リジン)、異なるリジンのε−アミノ基、アミノ酸骨格のカルボキシ、スルフヒドリル、ヒドロキシ、及び/又はフェノール官能基、又は糖鎖構造の糖アルコール基を介した化学結合により実施される。さらに別の態様では、固相へのコンジュゲーションは、以下の特異的結合対より選択される特異的結合対を介して実施される(第1成分/第2成分):
− ストレプトアビジン又はアビジン/ビオチン、
− 抗体/抗原、
− レクチン/多糖体、
− ステロイド/ステロイド結合タンパク質、
− ホルモン/ホルモン受容体、
− 酵素/基質、
− 免疫グロブリンG/プロテインA及び/又はプロテインG及び/又はプロテインL。
【0021】
別の態様において、判定は、表面プラズモン共鳴、音響共鳴、蛍光共鳴エネルギー移動、イムノアッセイ、全反射、光ファイバー、表面プラズモン共鳴蛍光増強、及び蛍光活性化細胞選別より選択される方法による。好ましくは、表面プラズモン共鳴による判定である。方法の別の態様では、判定は、イムノアッセイ、異種イムノアッセイ又はサンドイッチイムノアッセイのいずれかによる。さらなる態様において、サンドイッチイムノアッセイは、固相に固定した捕捉抗体及び直接的又は間接的な検出に適した検出抗体を含む。一態様において、検出抗体は、化学発光基、蛍光基、発光金属複合体、酵素、及びラジオアイソトープより選択される検出可能標識を含む。
【0022】
別の態様において、検出抗体は、以下より選択されるバイオアフィン(bioaffine)結合対の第1のパートナーを含む(第1成分/第2成分):
− ハプテン又は抗原/抗体、
− ビオチン又はアミノビオチン、イミノビオチンもしくはデスチオビオチンなどのビオチン類似体/アビジン又はストレプトアビジン、
− 糖/レクチン、
− 核酸又は核酸類似体/相補的核酸、
− 受容体/リガンド。
【0023】
本発明の別の局面は、以下の段階を含む、ヒトFcガンマ受容体IIIaの組み換え産生のための方法である:
− 真核細胞の提供、
− ヒトFcガンマ受容体IIIaをコード化する異種核酸での提供した該真核細胞のトランスフェククト、
− 該ヒトFcガンマ受容体IIIaの発現に適した条件下でのトランスフェクトした該真核細胞の培養、
− 真核細胞又は培養液からの該組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaの回収、それにより、該組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaは、配列番号1のアミノ酸の163番目の位置のN結合型オリゴ糖において異なる、配列番号1の少なくとも2つの組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaの混合物を含む組成物として得られる。
【0024】
一態様において、真核細胞がHEK293細胞であり、少なくとも2つの異なる該オリゴ糖が以下より選択される:
無、
【表8】

【0025】
異なる態様において、真核細胞がCHO細胞であり、少なくとも2つの異なる該オリゴ糖が以下より選択される:
無、
【表9】

【0026】
本発明の別の局面は、組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaを含む組成物であり、ここで、
a)組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaが配列番号1のアミノ酸配列を有し、CHO細胞において発現され、及び、
b)組成物が、配列番号1のアミノ酸の163番目の位置のN結合型オリゴ糖において異なる、配列番号1の少なくとも2つの組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaの混合物を含み、ここで、少なくとも2つの異なる該オリゴ糖が以下より選択される:
無、
【表10】

【0027】
本発明の別の局面は、CHO細胞から得られる本発明の組成物への免疫グロブリンの結合の判定方法であり、以下の段階を含む:
i)分析する免疫グロブリンの提供、
ii)本発明のCHO細胞から得られる組み換えヒトFcガンマ受容体の組成物の提供、iii)該免疫グロブリンと組み換えヒトFcガンマ受容体の該組成物との接触、及び
iv)組み換えヒトFcガンマ受容体の該組成物への該免疫グロブリンの結合の判定。
【0028】
一態様において、組み換えヒトFcガンマ受容体は固相にコンジュゲーションする。さらなる態様において、免疫グロブリンは固相にコンジュゲーションする。別の態様において、コンジュゲーションは、N末端及び/又はε−アミノ基(リジン)、異なるリジンのε−アミノ基、アミノ酸骨格のカルボキシ、スルフヒドリル、ヒドロキシル、及び/又はフェノール官能基、又は糖鎖構造の糖アルコール基を介した化学結合により実施される。さらに別の態様において、固相へのコンジュゲーションは、以下を含む特異的結合対の群より選択される特異的結合対を介して実施される(第1成分/第2成分):
− ストレプトアビジン又はアビジン/ビオチン、
− 抗体/抗原、
− レクチン/多糖体、
− ステロイド/ステロイド結合タンパク質、
− ホルモン/ホルモン受容体、
− 酵素/基質、
− 免疫グロブリンG/プロテインA及び/又はプロテインG及び/又はプロテインL。
【0029】
本発明のこの局面の別の態様において、判定は、表面プラズモン共鳴、音響共鳴、蛍光共鳴エネルギー移動、イムノアッセイ、全反射、光ファイバー、表面プラズモン共鳴蛍光増強、及び蛍光活性化細胞選別より選択される方法による。好ましくは、表面プラズモン共鳴による判定である。別の態様において、判定はイムノアッセイによる。さらなる態様において、イムノアッセイは異種イムノアッセイである。さらなる態様において、イムノアッセイはサンドイッチイムノアッセイである。別の態様では、サンドイッチイムノアッセイは、固相に固定した捕捉抗体及び直接的又は間接的な検出に適した検出抗体を含む。さらなる態様において、検出抗体は、化学発光基、蛍光基、発光金属複合体、酵素、及びラジオアイソトープより選択される検出可能標識を含む。さらなる別の態様において、検出抗体は、以下より選択されるバイオアフィン(bioaffine)結合対の第1のパートナーを含む:
− ハプテン又は抗原/抗体、
− ビオチン又はアミノビオチン、イミノビオチンもしくはデスチオビオチンなどのビオチン類似体/アビジン又はストレプトアビジン、
− 糖/レクチン、
− 核酸又は核酸類似体/相補的核酸、
− 受容体/リガンド。
【0030】
発明の詳細な説明
本発明は配列番号1のアミノ酸配列を伴う、組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaを含み、配列番号1のアミノ酸の163番目の位置に以下のN結合型オリゴ糖の1つを含む。
【0031】
一態様において、組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaは、HEK細胞、好ましくはHEK293細胞において発現させる。別の態様において、組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaはCHO細胞において発現させる。
【0032】
当業者に公知の方法及び技術は、本発明を実施するために有用であり、例えば、"Ausubel, F.M., ed., Current Protocols in Molecular Biology, Volumes I to III (1997), Wiley and Sons; Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)"において記載される。
【0033】
本明細書において使用する「核酸」とは、組み換え産生できるポリペプチドをコード化する天然又は部分的もしくは完全に非天然の核酸を指す。核酸は、単量体ヌクレオチドを含む多量体分子である。核酸は、化学的手段により単離又は合成されるDNA断片から構築できる。核酸は、別の核酸、例えば、発現プラスミド又は真核宿主細胞のゲノム/染色体中に組み込める。「プラスミド」という用語は、シャトルベクター及び発現ベクターを含む。典型的に、プラスミドは、細菌/原核生物におけるプラスミドの複製及び選択のための、それぞれ複製起点(例、ColE1複製起点)及び選択マーカー(例、アンピシリン又はテトラサイクリン耐性遺伝子)を含む原核生物の増殖単位も含む。
【0034】
核酸は、同様に、個々のヌクレオチドから成るその核酸配列により、又は/及び核酸によりコード化されるアミノ酸配列により特性付けられる。
【0035】
「発現カセット」とは、細胞中の少なくとも含まれる構造遺伝子の発現及び分泌に必要なエレメントを含む核酸を指す。
【0036】
「遺伝子」とは、例えば、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の発現に必要である染色体上又はプラスミド上のセグメントを表示する。コード領域の他、遺伝子は、プロモーター、イントロン、及びターミネーターなどの他の機能的エレメントを含む。
【0037】
「構造遺伝子」は、シグナル配列を伴わない遺伝子の領域をコード化するポリペプチドを表示する。
【0038】
「耐性遺伝子」又は「選択マーカー」は、本明細書中で互換的に使用され、それを保有する細胞を対応する選択剤の存在下で、それについて、又は、それに対して特異的に選択可能にする遺伝子/核酸である。有用なポジティブ耐性遺伝子は抗生物質耐性遺伝子である。この選択マーカーによって、対応する核酸で形質転換した宿主細胞を、対応する抗生物質の存在下で、それについてポジティブ選択可能になる。非形質転換宿主細胞は、対応する選択剤の存在下で、即ち、選択培養条件下で、増殖及び/又は生存できないであろう。選択マーカーは、ポジティブ、ネガティブ、又はニ機能性でありうる。ポジティブ選択マーカーによってマーカーを保有する細胞の選択が可能になるが、ネガティブ選択マーカーによってマーカーを保有する細胞を選択的に除去できる。典型的に、選択マーカーによって薬物に対する耐性が付与される、又は、宿主細胞における代謝又は異化の欠損が補われる。真核細胞で有用な選択マーカーとしては、例えば、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(hyg)、ネオマイシン及びG418 APHなどのアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジンキナーゼ(tk)、グルタミン合成酵素(GS)、アスパラギン合成酵素、トリプトファン合成酵素(インドール)、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(ヒスチジノールD)の遺伝、ならびに、プロマイシン、ブレオマイシン、フレオマイシン、クロラムフェニコール、Zeocin、及びミコフェノール酸に対する耐性をコード化する遺伝子が挙げられる。さらなる選択マーカーは、例えば、国際公開広報第92/08796号及び国際公開広報第94/28143号において報告されている。
【0039】
分泌ポリペプチドを産生するために、目的の構造遺伝子は、シグナル配列/リーダーペプチドをコード化するDNAセグメントも含む。シグナル配列は、新たに合成されたポリペプチドを、ポリペプチドが分泌のために送られる小胞体(ER)の膜に、及び、膜通過を方向づける。シグナル配列は、タンパク質がER膜を通過する際にシグナルペプチダーゼにより切断される。シグナル配列の機能については、宿主細胞の分泌機構による認識が不可欠である。従って、使用するシグナル配列は、宿主細胞のタンパク質及び分泌機構の酵素により認識されなければならない。
【0040】
翻訳調節エレメントには、翻訳開始(AUG)及び停止(TAA、TAG、又はTGA)コドンが含まれる。内部リボソーム侵入部位(IRES)が一部のコンストラクトに含まれうる。
【0041】
本明細書において使用する「発現」という用語は、宿主細胞内で起こる核酸の転写及び/又は翻訳を指す。宿主細胞における所望の核酸の転写レベルは、該細胞中に存在する対応するmRNAの量に基づき決定できる。例えば、選択した核酸から転写されるmRNAは、PCR又はノーザンハイブリダイゼーションにより定量化できる(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)を参照)。選択した核酸によりコード化されるタンパク質は、様々な方法、例えば、ELISAにより、タンパク質の生物活性をアッセイすることにより、又は、タンパク質を認識し、結合する抗体を使用したウェスタンブロッティングもしくはラジオイムノアッセイなどのそのような活性とは無関係なアッセイを用いることにより定量化できる(例、Sambrook et al., 1989、上記を参照)。
【0042】
「宿主細胞」とは、本発明のポリペプチドをコード化する遺伝子/核酸を導入する細胞を指す。宿主細胞は、プラスミド/ベクターの複製のために使用する原核細胞及び構造遺伝子の発現のための真核細胞の両方を含む。典型的に、真核細胞は哺乳動物細胞である。
【0043】
「ポリペプチド」は、天然に、又は、合成的に産生されるかを問わず、ペプチド結合により結合されたアミノ酸残基の多量体である。約20未満のアミノ酸残基のポリペプチドは、「ペプチド」と呼ばれることがある。1又は複数のポリペプチド鎖を含む、又は、100のアミノ酸又はそれ以上の長さの単一アミノ酸鎖を含むポリペプチドは、「タンパク質」と呼ばれる。
【0044】
「タンパク質」は、少なくとも100のアミノ酸の長さの単一ポリペプチド又は2又はそれ以上のポリペプチドのいずれかを含む巨大分子である。タンパク質は、炭水化物群などの非ペプチド成分も含みうる。炭水化物群及び他の非ペプチド成分は、タンパク質が産生される細胞により、タンパク質に添加でき、細胞型により変わりうる。タンパク質は、アミノ酸骨格構造/アミノ酸配列に関して本明細書において定義される;糖鎮群などの付加は一般的に特定されないが、しかし、それでも存在しうる。
【0045】
「異種DNA」又は「異種ポリペプチド」とは、所与の宿主細胞内に天然に存在しない、DNA分子もしくはポリペプチド、又は、DNA分子集団もしくはポリペプチド集団を指す。特定の宿主細胞に異種であるDNA分子は、その宿主DNAが非宿主DNA(即ち、外因性DNA)と併用される限り、宿主細胞種に由来するDNA(即ち、内因性DNA)を含みうる。例えば、プロモーターを含む宿主DNAに機能的に連結されたポリペプチドをコード化する非宿主DNAを含むDNA分子は、異種DNA分子と見なされる。逆に、異種DNA分子は、外因性プロモーターと機能的に連結された内因性構造遺伝子を含みうる。
【0046】
非宿主DNA分子によりコード化されるペプチド又はポリペプチドは、「異種」ペプチド又はポリペプチドである。
【0047】
「クローニングベクター」は、プラスミド、コスミド、ファージミド、又は細菌人工染色体(BAC)などの核酸分子であり、それらは宿主細胞において自己複製する能力を有する。クローニングベクターは、典型的に、1又は少数の制限酵素認識部位を含み、それによって、ベクターの必須の生物学的機能を喪失することなく判定可能な様式で核酸、ならびに、クローニングベクターで形質転換した細胞の同定及び選択における使用に適した選択マーカーをコード化するヌクレオチド配列を挿入可能になる。耐性遺伝子は、典型的に、テトラサイクリン耐性又はアンピシリン耐性を提供する遺伝子を含む。
【0048】
「発現プラスミド」は、宿主細胞において発現されるポリペプチドをコード化する核酸である。典型的に、発現プラスミドは、例えば大腸菌での、原核生物のプラスミド増殖単位を含み、複製起点、及び選択マーカー、真核生物選択マーカーをコード化する核酸、ならびに、プロモーター、構造遺伝子、及びポリアデリル化シグナルを含む転写ターミネーターの各々を含む目的の構造遺伝子の発現のための1又は複数の発現カセットを含む。遺伝子発現は、通常、プロモーターの制御下に置かれ、そのような構造遺伝子はプロモーターに「機能的に連結される」と言われる。同様に、調節エレメント及びコアプロモーターは、調節エレメントがコアプロモーターの活性を調節する場合、機能的に連結されている。
【0049】
「単離ポリペプチド」は、炭水化物、脂質、又は、本来はポリペプチドに結合する、即ち、共有結合しない他のタンパク性不純物などの汚染細胞成分が本質的にないポリペプチドである。典型的に、単離ポリペプチドの調製物は、高度に精製した形状、即ち、少なくとも約80%純粋、少なくとも約90%純粋、少なくとも約95%純粋、約95%超純粋、又は99%超純粋であるポリペプチドを含む。特定のタンパク質調製物が単離ポリペプチドを含むことを示すための方法は、タンパク質調製物のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動及びゲルのクマシーブリリアントブルー染色後の単一バンドの出現による。しかし、「単離」という用語は、二量体又は代わりにグリコシル化もしくは誘導体化した形状などの代わりの物理的形状の同じポリペプチドの存在を除外しない。
【0050】
「免疫グロブリン」という用語は、免疫グロブリン遺伝子により実質的にコード化される1又は複数のポリペプチドから成るタンパク質を指す。認識される免疫グロブリン遺伝子は、異なる定常領域の遺伝子ならびに無数の免疫グロブリン可変領域の遺伝子を含む。免疫グロブリンは、例えば、Fv、Fab、及びF(ab)ならびに単鎖(scFv)を含む様々な形式で存在しうる(例、Huston, J. S., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85 (1988) 5879-5883; Bird, R. E., et al., Science 242 (1988) 423-426;一般に、Hood et al., Immunology, Benjamin N. Y., 2nd edition (1984);及びHunkapiller, T. and Hood, L., Nature 323 (1986) 15-16)。
【0051】
「免疫グロブリン断片」は、免疫グロブリンの鎖の少なくとも定常ドメイン、即ち、C1ドメイン、ヒンジ領域、C2ドメイン、C3ドメイン、及び、場合により免疫グロブリンの重鎖のC4ドメイン又は免疫グロブリンの軽鎖のCドメインを含むポリペプチドを表示する。その派生物及び変異体も含む。加えて、1又は複数のアミノ酸又はアミノ酸領域が欠失した可変領域が存在しうる。
【0052】
本出願中に使用する「アミノ酸」という用語は、アラニン(3文字コード:ala、1文字コード:A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、イソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リジン(lys、K)、メチオニン(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、プロリン(pro、P)、セリン(ser、S)、トレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、V)、及びバリン(val、V)を含む。
【0053】
本発明の第1の局面は、組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaであり、それは配列番号1のアミノ酸配列を有し、及び、HEK293細胞から発現及び単離され、及び、配列番号1のアミノ酸の163番目の位置に以下のN結合型オリゴ糖の1つを含む:
無し、又は
【表11】

【0054】
配列番号1は、1文字コードで与えられる以下のアミノ酸配列を含む:
【表12】

【0055】
配列番号1は、ヒトFcガンマ受容体の細胞外ドメインを表示し、シグナルペプチドを含むその完全アミノ酸配列は配列番号2において与える(例、Swiss−Prot entry P08637も参照)。
【0056】
本発明の異なるN又はO結合型オリゴ糖の表記では、個々の糖残基は、オリゴ糖分子の非還元末端から還元末端まで記載する。最長の糖鎖を表記のための基本鎖として選んだ。N又はO結合型オリゴ糖の還元末端は糖残基であり、それは受容体のアミノ酸骨格のアミノ酸に直接結合しているが、N又はO結合型オリゴ糖の末端は、基本鎖の還元末端として反対末端に位置し、非還元末端と呼ばれる。
【0057】
本発明の第2の局面は、組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaであり、それは配列番号1のアミノ酸配列を有し、CHO細胞から発現及び単離され、及び、配列番号1のアミノ酸の163番目の位置に以下のN結合型オリゴ糖の1つを含む:
無、又は
【表13】

【0058】
配列番号1において、5つのNグリコシル化部位が見出されるとの事実のため、グリコシル化パターンは、全タンパク質質量分析又はグリカンのみの分析のいずれでも試験できない。例えば、配列番号1の39番目及び46番目の位置のグリコシル化部位、同様に、配列番号1の163番目及び170番目の位置のグリコシル化部位は、非常に接近している。グリコシル化部位のこれらの対を分離するための消化では、特別な酵素が必要とされる。
【0059】
ポリペプチドの消化、即ち酵素切断では、異なるエンドプロテアーゼ、例えば、Glu−C(黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来エンドプロテアーゼ(Protease V8)、C末端グルタミン酸残基に対する特異性)、シアリダーゼ(末端アセチルノイラミン酸残基の加水分解を触媒するノイラミニダーゼ)、及びキモトリプシン(チロシン、トリプトファン、及びフェニルアラニンのN末端のペプチド結合を切断するエンドペプチダーゼ)を用いることができる。
【0060】
驚くべきことに、本発明において、Glu−C及びキモトリプシン、場合により追加シアリダーゼでの併用消化は、グリコシル化、即ち、配列番号1の163番目の位置の糖構造の分析での最良の結果を与えることが見出されている。グリコシル化の分析は、ポリペプチドの還元、アルキル化、及び酵素切断、それに続くエレクトロスプレーイオン化法及びLTQ FT質量分析計(各々のフルMSスキャン後の5つのMS/MSスキャンを伴うリニアトラップ質量分析計)を使用した、MS検出(SIDスキャン及びMS−MSカップリング)での逆相(RP)HPLクロマトグラフィーにより実施できることが見出されている。グリコシル化パターンは非常に複雑であり、驚くべきことに、構造解明がMS/MS分析によりできることが見出された。
【0061】
本出願において互換的に使用される「糖構造」、「グリコシル化」、及び「グリコシル化パターン」という用語は、組み換え産生したポリペプチド中の特定のアミノ酸残基に付着した全てのオリゴ糖を含む。細胞のグリコシル化の異質性のため、組み換え産生したポリペプチドは、特定のアミノ酸残基に単一の定義したN又はO結合型オリゴ糖を含むだけでなく、特定の該アミノ酸位置に同じアミノ酸配列を有するが、しかし、異なるオリゴ糖を含む各々のポリペプチドの混合物でもある。このように、上の用語は、組み換え産生したポリペプチドの特定のアミノ酸位置に付着した一群のオリゴ糖、即ち、付着したオリゴ糖の異質性を表示する。本出願において使用する「オリゴ糖」という用語は、2又はそれ以上の共有結合した単糖単位を含む多量体の糖を表示する。
【0062】
上に報告したアプローチにより、配列番号1の163番目の位置の以下の主なN結合型オリゴ糖が、本発明の第1局面について同定されている(図1も参照)
【表14】



【0063】
本発明の組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaは、異なる相対頻度を伴う、上で同定したN結合型オリゴ糖を含む異なるグリコシル化を受けた分子の混合物である。組み換え受容体は、また、本出願において指す1又は複数のグリコシル化部位で、ある程度はグリコシル化されない。このように、本明細書において提示するグリコシル化プロファイルは、平均的グリコシル化プロファイルである。及び、従って、本発明の一局面は、組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaを含む組成物であって、ここで、組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaは配列番号1のアミノ酸配列を有し、HEK293細胞から発現及び/又は単離されており、及び、ここで、組成物は配列番号1の少なくとも2つの組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaの混合物を含み、それは配列番号1の163番目のアミノ酸位置でのN結合型オリゴ糖において異なり、それにより、少なくとも2つの異なる該オリゴ糖が以下より選択される:
無、又は
【表15】

【0064】
HEK細胞において発現させた組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaの配列番号1の163番目の位置の主なN結合型オリゴ糖は、オリゴ糖ナンバー1であり、第2のN結合型オリゴ糖はオリゴ糖ナンバー4である。
【0065】
上で同定したアプローチにより、配列番号1の他のアミノ酸位置のN及びO結合型オリゴ糖が同定されている。本発明の一態様において、HEK293細胞において発現させる受容体は、配列番号1のアミノ酸の75番目の位置に以下のN結合型オリゴ糖のいずれも含まない、又は、1つを含む:
【表16】

【0066】
HEK293細胞において発現させた組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaの配列番号1の75番目の位置の主なN結合型オリゴ糖は、オリゴ糖ナンバー10である。配列番号1の75番目の位置の第2のN結合型オリゴ糖は、ナンバー11又は12のオリゴ糖の1つである。
【0067】
別の態様において、HEK293細胞において発現させる受容体は、配列番号1のアミノ酸の46番目の位置に以下のN結合型オリゴ糖のいずれも含まない、又は、1つを含む:
【表17】

【0068】
別の態様において、HEK293細胞において発現させる受容体は、配列番号1の170番目の位置に何も含まないか、又は、以下のN結合型オリゴ糖を含む:
【表18】

【0069】
別の態様において、HEK293細胞において発現させる受容体は、配列番号1の180又は181番目の位置に何も含まないか、又は、以下のO結合型オリゴ糖を含む:
【表19】

【0070】
一態様において、受容体は配列番号1の159番目の位置にフェニルアラニンを有する。
【0071】
本出願において使用する“HexNAc”という用語は、Nアセチル化ガラクトサミン又はグルコサミン糖残基(GalNAc又はGlcNAc)を表示する。
【0072】
本発明のさらなる局面は組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaであり、それは配列番号1のアミノ酸配列を有し、CHO細胞から発現及び単離され、及び、配列番号1のアミノ酸の163番目の位置に以下のN結合型オリゴ糖のいずれも含まない、又は、1つを含む:
【表20】

【0073】
本発明の別の局面は、組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaを含む組成物であって、ここで、組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaは配列番号1のアミノ酸配列を有し、CHO細胞から発現及び/又は単離されており、及び、ここで、組成物は配列番号1の少なくとも2つの組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaの混合物を含み、それは配列番号1の163番目のアミノ酸位置でのN結合型オリゴ糖において異なり、ここで、少なくとも2つの異なる該オリゴ糖が以下より選択される:
無、又は
【表21】

【0074】
本発明のさらなる局面は、本発明の組み換えFcガンマ受容体への免疫グロブリンの結合の判定方法であり、以下の段階を含む:
i)分析する免疫グロブリンの提供、
ii)本発明の組み換えFcガンマ受容体の提供、
iii)該免疫グロブリンと該Fcガンマ受容体との接触、及び
iv)該Fcガンマ受容体への該免疫グロブリンの結合の判定。
【0075】
分析する免疫グロブリンは、例えば、単離した免疫グロブリン、免疫グロブリンの混合物、又はサンプルでよい。
【0076】
別の局面は、本発明の組成物への免疫グロブリンの結合の判定方法であり、以下の段階を含む:
i)分析する免疫グロブリンの提供、
ii)本発明の組み換えヒトFcガンマ受容体の組成物の提供、
iii)該免疫グロブリンと組み換えヒトFcガンマ受容体の該組成物との接触、及び
iv)組み換えヒトFcガンマ受容体の該組成物への該免疫グロブリンの結合の判定。
【0077】
本発明の「サンプル」は、任意の組織又は液体サンプルでありうる。好ましくは、サンプルは、唾液、尿、全血、血漿、又は血清などの液体サンプルである。好ましくは、サンプルは全血、血漿、又は血清である。好ましくは、サンプルは、無細胞サンプル、即ち、細胞を含まないサンプルである。
【0078】
本発明の受容体への免疫グロブリンの結合に適当である条件は、当業者に周知であり、容易に決定できる。これらの条件下で、免疫グロブリンは受容体に結合し、免疫グロブリンと受容体の間の免疫複合体が形成し、免疫グロブリン‐受容体複合体をもたらす。この複合体は適当な手段により検出できる。
【0079】
一態様において、免疫グロブリン‐受容体複合体は、イムノアッセイにより検出される。好ましく使用されるイムノアッセイは、異種イムノアッセイである。
【0080】
一態様において、免疫グロブリン‐受容体複合体の検出は、競合イムノアッセイにより、又は、いわゆるサンドイッチイムノアッセイにより達成される。
【0081】
当業者はイムノアッセイを問題なく準備し、それは免疫グロブリン‐受容体複合体を検出できる。例として、そのような検出はサンドイッチ型イムノアッセイにおいて実施でき、ここで、抗体を捕捉抗体として使用し、それは、受容体に結合するエピトープと重ならないエピトープで免疫グロブリンに結合する。免疫グロブリン‐受容体複合体の検出では、免疫グロブリン又は捕捉抗体のいずれでも認識されないエピトープに結合する受容体に対する二次抗体又は検出抗体を使用できる。
【0082】
一態様において、検出抗体‐免疫グロブリン‐受容体複合体のサンドイッチを形成できる検出抗体を使用する。前記の二次抗体又は検出抗体は、好ましくは、直接的又は間接的な検出を容易にするようなやり方で標識する。
【0083】
直接検出では、標識基は、任意の公知の検出マーカー基、色素、発光性標識基など、化学発光基など、例えば、アクリジニウムエステルもしくはジオキセタン、又は蛍光色素、例えば、フルオレセイン、クマリン、ローダミン、オキサジン、レゾルフィン、シアニン及びその誘導体から選択できる。標識基の他の例は、発光金属複合体、ルテニウム又はユーロピウムの複合体、酵素、例えば、ELISA又はCEDIA(クローン化酵素ドナーイムノアッセイ(Cloned Enzyme Donor Immunoassay)、例、欧州特許第0 061 888号)で使用するもの、及びラジオアイソトープである。
【0084】
間接検出系は、例えば、検出試薬、例えば、バイオアフィン(bioaffine)結合対の第1のパートナーで標識した検出抗体を含む。適した結合対の例は、ハプテン又は抗原/抗体、ビオチン又はアミノビオチン、イミノビオチンもしくはデスチオビオチンなどのビオチン類似体/アビジン又はストレプトアビジン、糖/レクチン、核酸又は核酸類似体/相補的核酸、及び受容体/リガンド、例、ステロイドホルモン受容体/ステロイドホルモンである。好ましい第1の結合対のメンバーは、ハプテン、抗原、及びホルモンを含む。特に好ましいのは、ジゴキシン、ジゴキシゲニン、及びビオチンなどのハプテンならびにその類似体である。そのような結合対の第2のパートナー、例えば、抗体、ストレプトアビジンなどは、通常、標識して、例えば、上記の標識による直接検出を可能にする。
【0085】
イムノアッセイは当業者に周知である。そのようなアッセイならびに実際の適用及び手順を実施するための方法は、関連テキストにまとめられている。関連テキストの例は、Tijssen, P., Preparation of enzyme-antibody or other enzyme-macromolecule conjugates: Practice and theory of enzyme immunoassays, Burdon, R.H. and v. Knippenberg, P.H. (eds.), Elsevier, Amsterdam (1990) pp.221-278;及び、免疫学的検出方法を扱った、Methods in Enzymology, Colowick, S. P., Caplan, N.O., Eds., "Methods in Enzymology"の様々な巻、特に第70、73、74、84、92、及び121巻、Academic Pressである。
【0086】
全ての上の免疫学的検出方法において、用いる試薬の結合、例えば、免疫グロブリンのその対応する受容体への結合を可能する条件を選ぶ。本発明に従って検出される免疫グロブリン‐受容体複合体は、最新の手順により、例えば、サンプル中の対応する濃度の免疫グロブリン又は受容体と相関する。
【0087】
一態様において、本発明の方法におけるFcガンマ受容体は固相へコンジュゲーションする。別の態様において、本発明の方法における免疫グロブリンは固相へコンジュゲーションする。
【0088】
さらなる態様において、Fcガンマ受容体又は免疫グロブリンのコンジュゲーションは、N末端及び/又はε−アミノ基(リジン)、異なるリジンのε−アミノ基、アミノ酸骨格のカルボキシ、スルフヒドリル、ヒドロキシル、及び/又はフェノール官能基、及び/又は糖鎖構造の糖アルコール基を介した化学結合により実施される。別の態様において、コンジュゲーションは受動的吸着により実施する。さらに別の態様において、Fcガンマ受容体又は免疫グロブリンのコンジュゲーションは、以下の特異的結合対より選択される特異的結合対を介して実施される(第1成分/第2成分):
− ストレプトアビジン又はアビジン/ビオチン、
− 抗体/抗原、
− レクチン/多糖体、
− ステロイド/ステロイド結合タンパク質、
− ホルモン/ホルモン受容体、
− 酵素/基質、又は
− 免疫グロブリンG/プロテインA及び/又はプロテインG及び/又はプロテインL。
【0089】
さらなる態様では、Fcガンマ受容体への免疫グロブリンの結合の判定は、表面プラズモン共鳴、音響共鳴、蛍光共鳴エネルギー移動、イムノアッセイ、全反射、光ファイバー、表面プラズモン共鳴蛍光増強、又は蛍光活性化細胞選別により達成する。好ましい方法は、表面プラズモン共鳴、酵素結合免疫吸着測定法、又は蛍光共鳴エネルギー移動である。
【0090】
「固相」は非液体物質を表示し、多量体、金属(正磁性、強磁性粒子)、ガラス、及びセラミックなどの物質から作られる粒子(微粒子及びビーズを含む);シリカ、アルミナ、及び多量体ゲルなどのゲル状物質;多量体、金属、ガラス、及び/又はセラミックから作ることのできる毛細管;ゼオライト及び他の多孔質物質;電極;マイクロタイタープレート;固体ストリップ;及びキュベット、チューブ又は他の分光計サンプル容器を含む。アッセイの固相成分は、「固相」がその表面に分子と化学的に相互作用することを意図する少なくとも1つの構成成分を含む点で、アッセイが接触しうる不活性な固相表面とは区別される。固相は、チップ、チューブ、ストリップ、キュベット、又はマイクロタイタープレートなどの固定成分でありうる、又は、ビーズ及び微粒子などの非固定成分でありうる。微粒子は、同種アッセイ形式のための固相としても使用できる。タンパク質及び他の物質の非共有付着又は共有付着のいずれも可能にする様々な微粒子を使用できる。そのような粒子として、ポリスチレン及びポリ(メチルメタクリレート)などの多量体粒子;金ナノ粒子及び金コロイドなどの金粒子;及びシリカ、ガラス、及び金属酸化物の粒子などのセラミック粒子が挙げられる。例えば、"Martin, C.R., et al., Analytical Chemistry - News & Features, May 1 (1998) 322A-327A"を参照すること。それは参照により本明細書に組み入れられる。固相は、任意に、全体又は特定の面積をコーティングできる。物質の表面上には、スポットの任意のアレイ又は面積が、可視的又は協調的のいずれかで存在する。各々のスポット又は面積上には、それぞれ、物質の表面にリンカー又はスペーサーを伴う、又は、伴わないポリペプチドを固定化できる。好ましくは、固定化ポリペプチドは本発明の受容体であり、クラスGの免疫グロブリン(IgG)のFc部分を結合できる。本発明のイムノアッセイのための固相は、最新技術において広く記載される(例、Butler, J. E., Methods 22 (2000) 4-23を参照)。
【0091】
本発明の受容体を伴う固相イムノアッセイは、例えば、固相に吸着又は結合した抗体(捕捉抗体)、受容体、受容体に結合する免疫グロブリンと、検出可能標識にコンジュゲーションした、免疫グロブリン又は受容体の別のエピトープに結合する抗体(トレーサー抗体)との間の複合体の形成を含む。このように、複合体サンドイッチが形成される:固体担体‐捕捉抗体‐受容体‐免疫グロブリン‐トレーサー抗体又は担体‐捕捉抗体‐免疫グロブリン‐受容体‐トレーサー抗体。サンドイッチにおいて、トレーサー抗体‐コンジュゲーション検出可能標識の強度は、インキュベーション培地中の免疫グロブリン濃度に比例する。"Mire-Sluis, A. R., et al., J. Immunol. Methods 289 (2004) 1-16"には、バイオテクノロジー製品に対する宿主抗体の検出を使用したイムノアッセイのデザイン及び最適化のための推奨事項がまとめられている。
【0092】
本発明の態様において、受容体又は免疫グロブリンのいずれかを検出可能標識にコンジュゲーションし、好ましくは特異的結合対を介してコンジュゲーションする。そのような結合対(第1成分/第2成分)は、例えば、ストレプトアビジン又はアビジン/ビオチン、抗体/抗原(例えば、Hermanson, G.T., et al., Bioconjugate Techniques, Academic Press, 1996を参照)、レクチン/多糖体、ステロイド/ステロイド結合タンパク質、ホルモン/ホルモン受容体、酵素/基質、IgG/プロテインA及び/又はG及び/又はLなどである。好ましくは、コンジュゲーションは、ジゴキシゲニン及び検出可能標識へのジゴキシゲニンに対する抗体を介する。代わりに、受容体又は免疫グロブリンは、ルテニウムビスピリジル複合体のような電気化学発光標識にコンジュゲーションする。
【0093】
異なるイムノアッセイの原理が、例えば、"Hage, D.S., Anal. Chem. 71 (1999) 294R-304R"により記載されている。"Lu, B., et al., Analyst 121 (1996) 29R-32R"には、イムノアッセイにおける使用のための抗体の配向固定化が報告されている。アビジン−ビオチン媒介性イムノアッセイが、例えば、"Wilchek, M. and Bayer, E.A., Methods Enzymol. 184 (1990) 467-469"において報告されている。
【0094】
抗体、特にそれらの定常ドメインは、アミノ酸側鎖の機能性、即ち、結合対の表面、タンパク質、ポリマー(PEG、セルロース、又はポリスチロールなど)、酵素、又はメンバーのような、結合対への共役のための化学反応基を含む。抗体の化学反応基は、例えば、アミノ基(リジンのエプシロンアミノ基、アルファアミノ基)、チオール基(シスチン、システイン、及びメチオニン)、カルボン酸基(アスパラギン酸、グルタミン酸)、及び糖アルコール基である。そのような方法は、例えば、"Aslam, M. and Dent, A., Bioconjuation MacMillan Ref. Ltd. (1999) 50-100"により記載されている。
【0095】
ポリペプチドの、例えば、固相へのコンジュゲーションには、適切な化学保護剤が必要になる。これらの形状、例、未保護側鎖アミンでの結合は、N末端での結合ほど安定ではなく、それらとは異なる。多くのそのような化学保護剤が公知である(例えば、欧州特許出願欧州特許第0651761号を参照)。好ましい化学保護剤として、無水マレイン酸又はシトラコン酸無水物(citraconylic anhydride)のような環状ジカルボン酸無水物が挙げられる。
【0096】
色素原(蛍光基又は発光基及び色素)、酵素、NMR活性基、又は金属粒子、例えばジゴキシゲニンなどのハプテンは、「検出可能標識」の例である。検出可能標識は、光活性化架橋基、例えば、アジド基又はアジリン基でもよい。電気化学発光により検出できる金属キレートも好ましいシグナル放出基であり、特にルテニウムキレート、例えば、ルテニウム(ビスピリジル)2+キレートが好ましい。適切なルテニウム標識基は、例えば、欧州特許第0580979号、国際公開広報第90/05301号、国際公開広報第90/11511号、及び国際公開広報第92/14138号において記載されている。
【0097】
免疫グロブリン‐受容体複合体の検出では、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、免疫放射線測定法(IRMA)、又は表面プラズモン共鳴(SPR)などの異なる方法を用いてよい。一態様において、検出は、SPR、ELISA、又はFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)による。
【0098】
抗体、特にKDissの結合特性は、好ましくは、BIAcore(登録商標)機器により評価する。この方法において、結合特性は、表面プラズモン共鳴(SPR)における変化により評価する。研究中である物質を固相(チップと呼ばれる)に結合させ、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、又はさらにはIgGを含む血清のこのコーティング済みチップへの結合を評価することが便利である。そのようなアッセイは、洗浄段階を伴う(異種(heterogeneous)イムノアッセイ)、又は、洗浄段階を伴わず(同種(homogeneous)イムノアッセイ)実施できる。
【0099】
全ての上の免疫学的検出方法において、用いる試薬の結合、例えば、抗体のその対応する抗原への結合を可能にする試薬条件を選ぶ。当業者は、複合体という用語を使用することにより、そのような結合事象の結果を指す。本発明のアッセイ方法において形成する複合体は、最新技術の手法により、サンプル中の該抗体/免疫グロブリンの対応する濃度に相関する。
【0100】
用いる検出試薬に応じて、この相関する段階は、全活性型又は抗原結合型の治療抗体の濃度をもたらす。
【0101】
例えば、免疫グロブリンのインビボでの効果の評価のために有用なインビトロでのデータを提供するために、可能な限り正確にインビボでの条件に似たアッセイ系を用いなければならない。まず、インビボでの化合物と最低限同一であるアッセイ化合物を使用しなければならない。今日、アッセイ系において使用する化合物は、バイオテクノロジーの方法により組み換え産生する。そのようなアッセイ系において用いるポリペプチドでは、インビボでの対応物と同じアミノ酸配列及びグリコシル化を有することがとりわけ重要である。従って、アッセイ系において有用なポリペプチドの産生を可能にする産生方法を手元に有することが望ましく、ここで、該ポリペプチドは生きた哺乳動物において産生されたものと同じアミノ酸配列及びグリコシル化のパターンを有する。この要求の背後にある比率は、インビボでの条件に可能な限り厳密に似ているアッセイ系での比率であり、アッセイ結果のインビボでの効果とのより正確な相関を得ることができる。従って、本発明は、以下の段階を含む、ヒトFcガンマ受容体IIIaの組み換え産生のための方法を含む:
− 真核細胞の提供、
− ヒトFcガンマ受容体IIIaをコード化する異種核酸での提供した該真核細胞のトランスフェクト、
− 該ヒトFcガンマ受容体IIIaの発現に適した条件下でのトランスフェクトした該真核細胞の培養、
− 真核細胞又は培養液からの該組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaの回収、それにより、該組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaは、配列番号1のアミノ酸の163番目の位置のN結合型オリゴ糖において異なる、配列番号1の少なくとも2つの組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaの混合物を含む組成物として得られる。
【0102】
一態様において、前記真核細胞がHEK293細胞であり、異なる該オリゴ糖が以下より選択される:
無、
【表22】

【0103】
別の態様において、真核細胞がCHO細胞であり、異なる該オリゴ糖が以下より選択される:
無、
【表23】

【0104】
以下の実施例、配列リスト、及び図は本発明の理解を助けるために提供し、その本当の範囲は添付の特許請求の範囲において示す。本発明の精神から逸脱することなく、示した手順を改変できることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】配列番号1の163番目の位置の主なN結合型オリゴ糖。
【図2】pCLF60のプラスミドマップ。
【図3】HEK細胞において発現させたFcガンマRIIIaのBIAcoreアッセイクロマトグラム。
【図4】CHO細胞において発現させたFcガンマRIIIaのBIAcoreアッセイクロマトグラム。
【図5】スキャンイベントサイクルの時間的表現。
【図6】エンドプロテアーゼGlu−c/キモトリプシン消化物のRP分離についての全イオンクロマトグラム;A:全イオンクロマトグラム;B:SID−スキャン、糖特異的断片イオンについての選択イオンクロマトグラム。
【0106】
実施例1
プラスミドpCLF60
プラスミドpCLF60は、骨髄増殖性肉腫ウイルス(MPSV)プロモーターの制御下で可溶性ヒトFcγRIIIa受容体を発現するように構築している。プラスミドは、アデノウイルスの三部リーダー配列(TPL:tripartite leader sequence)及び合成イントロン(IVS)を含む。HEK293 EBNA細胞におけるエピソーム複製のために、oriPエレメントを挿入した。注釈付きプラスミドマップを図2において与える。精製目的で、ヘキサヒスチジンタグを、核酸をコード化するFcガンマRIIIaのC末端にクローン化している。
【0107】
同じプラスミドを、CHO細胞における可溶性ヒトFcガンマ受容体IIIaの発現のためにも使用している。従って、C末端ヘキサヒスチジンタグをコード化する核酸配列は除去されている。
【0108】
実施例2
a)細胞培養及びプラスミドpCLF60でのHEK293細胞のトランスフェクション、ヘキサヒスチジンタグを伴うHEK発現FcガンマRIIIaの発現、単離、及び精製。
細胞培養
ヒト胚腎細胞HEK293 EBNA(Invitrogen, Switzerland)は、Ca還元強化培地中での無血清増殖に適応させた(Schumpp, B., and Schlaeger, E. J., J. Cell Sci. 97 (Pt 4, 1990) 639-47; Schlaeger, E. J., J. Immunol. Methods 194 (1996) 191-199)。
【0109】
細胞は、通常どおりにスピナーフラスコ(Bellco, Inotech AG, Dotlikon, Switzerland)中で80−100rpmの撹拌で増殖させた。大規模培養及びトランスフェクションは、5リットル撹拌タンク(Infors, Switzerland)又は24リットル・エアーリフト・バイオリアクター(Chemap, MBR, Zurich, Switzerland)のいずれかにおいて実施した。
【0110】
pCLF60のプラスミド調製は、市販キット(Nucleobond Ax, Macherey-Nagel AG, Switzerland)を使用して実施した。プラスミド濃度は分光光度法で測定し、スタンダードとしてpUC18 DNA(Pharmacia Biotech, Zurich, Switzerland)を伴うアガロースゲル電気泳動により推定した。
【0111】
トランスフェクション手順
トランスフェクション実験では、細胞を6−10x10個細胞/mlの密度まで培養し、460x g(Heraeus-Kendro, Germany)で5分間遠心し、無ヘパリンHL培地で1回洗い、無ヘパリンHL培地中に浮遊させた(無カルシウムHL培地は、"Schlaeger, E.J., J. Immunol. Methods, 194 (1996) 191-199"に記載の強化DHI及びRPMI 1640培地(2:1wt/wt)の混合物である)。細胞濃度を5.5−6x10個細胞/mlに調整し、培養物は、トランスフェクションが起こる前の1−2時間の間に、バイオリアクター中でインキュベートした。トランスフェクション複合体をバイオリアクターに無菌的に加え、細胞は、上清を回収する前の4日間にわたりインキュベートした。細胞は、グルコース、グルタミン、及びペプトンを含む濃縮供給溶液と共に供給した(Schumpp, B. and Schlaeger, E. J., J. Cell Sci. 97 (Pt 4, 1990) 639-647; Schlaeger, E.J., J. Immunol. Methods 194 (1996) 191-199)。
【0112】
トランスフェクション複合体の調製
DNA複合体は、室温の無ヘパリンHL培地中で1/10の培養容積において形成させた。最適化した遺伝子デリバリー条件下で、1mlのHEK293 EBNA細胞について、0.4μgのDNAを0.1mlの新鮮培地に加えて、静かに混合した。2分後、1μlのXtreme Gene(Roche Applied Science, Indianapolis, USA)を加えて、混合した。室温で15分間インキュベーション後、トランスフェクション複合体を等量の細胞に移し、37℃で培養した(Schlaeger, E.J. and Christensen, K., Cytotechnology 30 (1999) 71-83)。
【0113】
回収及び精製
上清を深層ろ過段階(Cuno Filter Systems, Switzerland)により回収した。その後、10kDカットオフセルロースメンブレン(Millipore, Switzerland)を使用した限外ろ過ユニット(Millipore HeliconTM UF Filtration cartridge)での濃縮及びバッファー交換段階を実施した。細胞培養の上清は、500mM NaClを含む50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH8.0)と交換し、精製前にろ過滅菌した。限外ろ過した溶液は、クロマトグラフィーでの精製前に、0.22μmフィルターに適用した。
【0114】
得られたタンパク質溶液に、最終濃度10mMでイミダゾールを添加した。この溶液は、流速3ml/分で、4℃のNi−NTAカラムに適用した。結合タンパク質は、洗浄段階後に50mMのリン酸ナトリウムバッファー(pH8.0、500mM NaCl添加)中の0から500mMイミダゾール勾配で溶出した。画分を含む産物は、クマシーブリリアントブルー染色でのSDS−PAGE電気泳動により同定した。
【0115】
画分を含む産物は、Sephacryl(登録商標) S200 SECカラムでのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)のためにプール及び濃縮した。SECクロマトグラフィーは、100mM塩化ナトリウムを添加した25mMリン酸ナトリウムバッファー、pH7.4で実施した。
【0116】
b)AvitagによるFcガンマRIIIaをコード化するプラスミドでのCHO細胞のトランスフェクション、AvitagによるCHO発現FcガンマRIIIaの発現、単離、及び精製
CHO細胞中でのヒトFcガンマRIIIaの発現のために、pCLF60に基づくプラスミドを使用してきた。このプラスミドにおいて、FcガンマRIIIaのための発現カセットは、精製後ビオチン化のためのAvitagをコード化する。
【0117】
ヒトFcガンマRIIIaを発現するCHO細胞の調製のために、培養及び単離ならびに精製、即ち、上で概説する同じ手順を使用してきた。
【0118】
クロマトグラフィーでの精製後、例えば、大腸菌の酵素ビオチンホロ酵素合成酵素(BirA)(ビオチンリガーゼ)による酵素的ビオチン化を実施できる。
【0119】
実施例3
発現させたFcガンマRIIIaのグリコシル化の解明
エンドプロテイナーゼGlu−C/キモトリプシン(Roche Diagnostics GmbH, Germany)併用から得られるペプチドは、逆相液体クロマトグラフィーを使用して分離した。溶出物は、タンデム質量分析及び並行質量誘発(parallel mass triggered)での画分回収のために分割した。ペプチド消化物は、自動サンプラー、ナノフローセルを伴う二波長UV検出器、及び温度制御カラムコンパートメント(Ultimate 3000, Dionex Corp.)を備えた逆相HPLC(Ultimate 3000, Dionex Corp., USA)により分離した。Hypersil Gold C18カラム(250x0.3mm I.D., 粒径5μm、孔径175Å、Thermo Fisher Inc., USA)を分離のために使用した。溶媒はA:水中0.1%(v/v)ギ酸(Sigma Aldrich)及びB:アセトニトリル(Baker)中0.1%ギ酸であった。カラムは2vol%Bで平衡化し、流速5μl/分を使用して以下の勾配を適用した:10分間2vol%B、40分間50vol%B、40分間80vol%B、4分間95vol%B、2分間95vol%B、25分間2vol%B。消化したペプチドは、前処置なしに、カラムに注入した。
【0120】
溶出物は、Triversa NanoMate(Advion)を使用して1:20の比率に分割し、約200nl/分をタンデム質量分析(LTQ FT ICR, Thermo Fisher Corp.)のために使用した。残りの4.8μl/分は、質量誘発での画分回収のために使用した。正確な質量MSのためのFT ICR細胞及び高感度MS/MSのための線形イオントラップを使用したグリコシル化及び非グリコシル化酵素的ペプチドのオンライン同定及び特性付けのために用いたスキャンイベントサイクルの時間的表現を図5において示す。
【0121】
エンドプロテイナーゼGlu−C/キモトリプシン消化物の逆相分離のための典型的な全イオンクロマトグラム及び実施したSIDスキャンのための対応する選択イオンクロマトグラムを図6において示す。明確に見られる場合、SIDスキャンはグリコペプチドの溶出物の同定に非常に役立つ。
【0122】
異種グリコシル化のため、多数の異なるオリゴ糖が異なるグリコシル化部位に存在する。例えば、配列番号1の163番目の位置には、以下のオリゴ糖を見出せる。
【表24】

【0123】
実施例4
BIAcoreアッセイ
a)HEK293細胞において発現させたFcガンマRIIIa
実施例2a)の単離受容体は、リジン残基を介してCM5チップ表面のデキストランマトリクスに共役させたアミンであった。これのために、デキストランマトリクスは、最初に、EDG(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩)及びNHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)の混合物により活性化する。受容体の希釈物を注入し、アミンはアミン基を介して共役する。
【0124】
受容体は、pH6.0−6.5の酢酸ナトリウムバッファー又はマレイン酸バッファーで濃度0.05mg/mlまで希釈した。共役は、5μl/分に設定した流速で実施した。注入時間は25分間に設定した。EDG/NHS混合物によるデキストランマトリクスの7分間の活性化後、受容体の希釈物の25分間の注入(容積125μl)が続いた。レベル893RUに固定化している。
【0125】
抗IGF−1R抗体(例、国際公開広報第2004/087756号において報告)は、50mM HBS−Pバッファー(BIAcore;0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、0.005% Surfactant P−20)中に6.25から100nMまでの異なる濃度で溶解した。抗体溶液は、BIACORE(登録商標)3000機器において、上で調製したフローセルと接触させた。固定化した受容体との会合は、5分間の注入により測定した;解離は、チップ表面を無抗体バッファーで5分間洗うことにより測定した。最高反応105RUを記録した(図3)。
【0126】
b)CHO細胞において発現させたFcガンマRIIIa
実施例2b)の単離受容体は、アビジン/ストレプトアビジンでコーティングしたCM5チップの表面に固定化した。
【0127】
受容体は、pH6.0−6.5の酢酸ナトリウムバッファー又はマレイン酸バッファーで濃度0.05mg/mlまで希釈した。共役は、5μl/分に設定した流速で実施した。注入時間は25分間に設定した。レベル916RUに固定化している。
【0128】
抗IGF−1R抗体は、50mM HBS−Pバッファー(BIAcore;0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、0.005% Surfactant P−20)中に6.25から100nMまでの異なる濃度で溶解した。抗体溶液は、BIACORE(登録商標)3000機器において、上で調製したフローセルと接触させた。固定化した受容体との会合は、5分間の注入により測定した;解離は、チップ表面を無抗体バッファーで5分間洗うことにより測定した。最高反応105RUを記録した(図4)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaの組成物であって、
a)該組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaが、配列番号1のアミノ酸配列を有し、HEK293細胞において発現されており、
b)該組成物が、配列番号1のアミノ酸の163番目の位置のN結合型オリゴ糖において異なる、配列番号1の少なくとも2つの組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaの混合物を含み、ここで、異なる該N結合型オリゴ糖が:
無、
【表25】


より選択されることを特徴とする組成物。
【請求項2】
請求項1記載の組成物への免疫グロブリンの結合の判定方法であって、:
i)分析する免疫グロブリンの提供;
ii)請求項1記載の組み換えヒトFcガンマ受容体の組成物の提供;
iii)免疫グロブリンと該組み換えヒトFcガンマ受容体の組成物との接触、及び
iv)該組み換えヒトFcガンマ受容体の組成物への免疫グロブリンの結合の判定;
の段階を含む方法。
【請求項3】
組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaの組成物の組み換え産生のための方法であって、以下の段階:
− 真核細胞の提供、
− ヒトFcガンマ受容体IIIaをコード化する核酸での提供した該真核細胞のトランスフェクト、
− 該ヒトFcガンマ受容体IIIaの発現に適した条件下でのトランスフェクトした該真核細胞の培養、
− 真核細胞又は培養液からの該組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaの回収、それにより、該組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaが、配列番号1のアミノ酸の163番目の位置のN結合型オリゴ糖において異なる配列番号1の少なくとも2つの組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaの混合物を含む組成物として得られる、
を含む、方法。
【請求項4】
真核細胞がHEK293細胞であり、異なるオリゴ糖が:
無、
【表26】


より選択されることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
真核細胞がCHO細胞であり、異なるオリゴ糖が:
無、
【表27】


より選択されることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項6】
組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaを含む組成物であって、
a)該組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaが配列番号1のアミノ酸配列を有し、CHO細胞において発現されており、
b)該組成物が、配列番号1のアミノ酸の163番目の位置のN結合型オリゴ糖において異なる、配列番号1の少なくとも2つの組み換えヒトFcガンマ受容体IIIaの混合物を含み、それにより、異なる該N結合型オリゴ糖が:
無、
【表28】


より選択されることを特徴とする、組成物。
【請求項7】
請求項6記載の組成物への免疫グロブリンの結合の判定方法であって、以下の段階:
i)分析する免疫グロブリンの提供、
ii)請求項6記載の組み換えヒトFcガンマ受容体の組成物の提供、
iii)免疫グロブリンと該組み換えヒトFcガンマ受容体の組成物との接触、及び
iv)該組み換えヒトFcガンマ受容体の組成物への免疫グロブリンの結合の判定、
を含む、方法。
【請求項8】
受容体が、
a)配列番号1のアミノ酸配列を含み、及び
b)配列番号1のアミノ酸の163番目の位置に以下:
無、
【表29】


のN結合型オリゴ糖の1つを含むことを特徴とする、組み換えヒトFcガンマ受容体IIIa。
【請求項9】
受容体が配列番号1のアミノ酸の75番目の位置に以下:
無、
【表30】


のN結合型オリゴ糖の1つを含むことを特徴とする、請求項8記載のFcガンマ受容体。
【請求項10】
受容体が配列番号1のアミノ酸の46番目の位置に以下:
無、
【表31】


のN結合型オリゴ糖の1つを含むことを特徴とする、請求項8から9のいずれか1項記載のFcガンマ受容体。
【請求項11】
受容体が配列番号1のアミノ酸の170番目の位置に何も含まないか、又は、以下:
【表32】


のN結合型オリゴ糖を含むことを特徴とする、請求項8から10のいずれか1項記載のFcガンマ受容体。
【請求項12】
受容体が配列番号1のアミノ酸の180又は181番目の位置に何も含まないか、又は、以下:
【表33】


のO結合型オリゴ糖を含むことを特徴とする、請求項8から11のいずれか1項記載のFcガンマ受容体。
【請求項13】
受容体が配列番号1のアミノ酸の159番目の位置にフェニルアラニンを有することを特徴とする、請求項1から12のいずれか1項記載のFcガンマ受容体。
【請求項14】
請求項8記載のFcガンマ受容体への免疫グロブリンの結合の判定方法であって、以下の段階:
i)分析する免疫グロブリンの提供、
ii)請求項8記載のFcガンマ受容体の提供、
iii)該免疫グロブリンと該Fcガンマ受容体との接触、及び
iv)該Fcガンマ受容体への該免疫グロブリンの結合の判定
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項15】
組み換えヒトFcガンマ受容体を固相にコンジュゲーションすることを特徴とする、請求項2又は7又は14記載の方法。
【請求項16】
免疫グロブリンを固相にコンジュゲーションすることを特徴とする、請求項2又は7又は14記載の方法。
【請求項17】
コンジュゲーションが、N末端及び/又はε−アミノ基(リジン)、異なるリジンのε−アミノ基、アミノ酸骨格のカルボキシ、スルフヒドリル、ヒドロキシル、及び/又はフェノール官能基、又は糖鎖構造の糖アルコール基を介した化学結合により実施されることを特徴とする、請求項15又は16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
固相へのコンジュゲーションが:
− ストレプトアビジン又はアビジン/ビオチン、
− 抗体/抗原、
− レクチン/多糖体、
− ステロイド/ステロイド結合タンパク質、
− ホルモン/ホルモン受容体、
− 酵素/基質、
− 免疫グロブリンG/プロテインA及び/又はプロテインG及び/又はプロテインL、を含む特異的結合対(第1成分/第2成分)の群より選択される特異的結合対を介して実施されることを特徴とする、請求項15又は16のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
判定が、表面プラズモン共鳴、音響共鳴、蛍光共鳴エネルギー移動、イムノアッセイ、全反射、光ファイバー、表面プラズモン共鳴蛍光増強、又は蛍光活性化細胞選別により選択される方法によることを特徴とする、請求項2又は7又は14から18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
判定が表面プラズモン共鳴によることを特徴とする、請求項19記載の方法。
【請求項21】
判定がイムノアッセイによることを特徴とする、請求項19記載の方法。
【請求項22】
イムノアッセイが異種イムノアッセイであることを特徴とする、請求項21記載の方法。
【請求項23】
イムノアッセイがサンドイッチイムノアッセイであることを特徴とする、請求項21記載の方法。
【請求項24】
サンドイッチイムノアッセイが、固相に固定した捕捉抗体及び直接的又は間接的な検出に適した検出抗体を含むことを特徴とする、請求項23記載の方法。
【請求項25】
検出抗体が、化学発光基、蛍光基、発光金属複合体、酵素、及びラジオアイソトープより選択される検出可能標識を含むことを特徴とする、請求項24記載の方法。
【請求項26】
検出抗体が、
− ハプテン又は抗原/抗体、
‐ ビオチン又はアミノビオチン、イミノビオチンもしくはデスチオビオチンなどのビオチン類似体/アビジン又はストレプトアビジン、
− 糖/レクチン、
− 核酸又は核酸類似体/相補的核酸、及び
− 受容体/リガンド、
より選択されるバイオアフィン結合対の第1のパートナーを含むことを特徴とする、請求項24記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−523508(P2010−523508A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501419(P2010−501419)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【国際出願番号】PCT/EP2008/002569
【国際公開番号】WO2008/119545
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【出願人】(506153815)ロシュ グリクアート アクチェンゲゼルシャフト (25)
【Fターム(参考)】