説明

ヒトIL−12に対する抗体

【課題】ヒトIL-12生物活性の中和に関して既知のヘテロダイマー特異的IL-12モノクローナル抗体より高い効力およびより大きい有効性を有するヒトIL-12抗体の提供。
【解決手段】ヒトIL-12 p75ヘテロダイマーの1つ以上のエピトープを認識するが、p40サブユニット単独には結合しないヘテロダイマー特異的抗体。ヘテロダイマー特異的IL-12抗体は、ヒトIL-12生物活性の中和に関するその効力と類似の効力でアカゲザルIL-12生物活性を中和し、そのため有用なIL-12拮抗剤となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広くIL-12抗体、より詳しくは抗ヒトIL-12ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン-12(IL-12)はこれまで、細胞障害性リンパ球成熟因子またはナチュラルキラー細胞刺激因子として知られており、ジスルフィド結合で結合された40 kDa(p40)および35 kDa(p35)サブユニットを含む75 -kDa(p75)のヘテロダイマーサイトカインである。p40およびp35サブユニットはそれぞれ、アミノ酸残基306個およびアミノ酸残基197個を含むポリペプチドである(ガブラー(Gubler, U.)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:4143から4147(1991)(非特許文献1)。
【0003】
p75ヘテロダイマーはIL-12の生物学的活性型である(ガブラー(Gubler, U.)ら、1991、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:4143(非特許文献1);ウルフ(Wolf, S. F.)ら、1991、J. Immunol. 146:3074(非特許文献2)。IL-12 p75ヘテロダイマーは、Th1ヘルパー細胞の産生を刺激すること、活性化T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞を刺激すること、NK/LAK細胞の溶解活性を増強すること、ならびに休止期および活性化TおよびNK細胞によるIFN-γ産生を刺激することによって、異物抗原に対する細胞媒介性免疫応答を活性化および強化する。
【0004】
IL-12のp40サブユニットはp35サブユニットより過剰に産生されることが示されており、単量体および二量体型の双方が認められる(ポドラスキ(Podlaski, F. J.)ら、1992、Arch. Biochem. Biophys. 294:230(非特許文献3);ダンドレア(D'Andrea, A.)ら、1992、J. Exp. Med. 176:1387(非特許文献4)。IL-12 p40ホモダイマーは強力なIL-12拮抗剤である(リング(Ling, P.)ら、1995、J. Immunol. 154:116(非特許文献5);ギレッセン(Gillessen, S.)ら、1995、Eur. J. Immunol., 25:200(非特許文献6)。p40サブユニットとは対照的に、IL-12のp35サブユニットは既知の生物活性を示さず、p35蛋白質はIL-12 p75ヘテロダイマーの一部としてp40サブユニットに会合した場合に限って認められるに過ぎない。したがって、ヒトIL-12によって示されるエピトープには2つの重要なタイプ:(1)p40サブユニットによって示されるエピトープ;および(2)IL-12 p75ヘテロダイマーの3次元構造によって示されるエピトープが存在する。その結果、われわれはIL-12 p75ヘテロダイマー蛋白質上に存在するエピトープを認識するが、IL-12 p40サブユニット蛋白質上に存在するエピトープを認識しない抗体を、いわゆる「ヘテロダイマー特異的」抗体と命名した。
【0005】
既知のIL-12抗体は、IL-12活性を実質的に中和するために最適に有効ではないことが判明した。p40サブユニットと免疫学的に反応するIL-12抗体は、ヒトIL-12の生物活性を最適に阻害しない。例えば、p40サブユニットによって示されるエピトープに反応する抗体を用いれば、IL-12 p75ヘテロダイマーの産生によって、生物活性p75ヘテロダイマーと比較して不活性p40サブユニットが過剰となることが示されていることから、特に問題となる(ポドラスキ(Podlaski, F. J.)ら、1992、Arch. Biochem. Biophys. 294:230(非特許文献7);ダンドレア(D'Andrea, A.)ら、1992、J. Exp. Med. 176:1387(非特許文献8)。その結果、p40抗体は、p40サブユニットのみでは生物活性でなく、しかもp40抗体は生物活性p75ヘテロダイマーの一部であるそのp40サブユニットよりむしろ不活性なp40サブユニットに結合する傾向があるため、IL-12の有害な作用の減少においてはヘテロダイマー特異的抗体ほど有効ではない。
【0006】
p75ヘテロダイマーのみと反応する既知の抗体でさえ、IL-12生物活性を有効に中和しない。例えば、これまでに同定された20C2(チッゾナイト(Chizzonite)ら、Cytokine, 6:A82a(1994)(非特許文献8)およびダンドレア(D'Andrea, A.)ら、J. Exp. Med. 176:1387から1398(1992)(非特許文献10)と呼ばれるIL-12 p75ヘテロダイマー特異的抗体は、ヒトIL-12刺激PHA活性化リンパ芽球増殖およびIFN-γ産生を実質的に阻害することができない。
【0007】
IL-12の有害な作用を減少させるためには、より有効にIL-12生物活性を中和するヘテロダイマー特異的抗体が必要である。血清または組織にIL-12レベルが増加すれば、自己免疫障害の発症および進行に関係することが知られている。このように、IL-12抗体は免疫メカニズムを通じて媒介される病態を有する疾患、特に異常なTh1-ヘルパー細胞活性に関連した疾患を制御するために有用な拮抗剤である。そのような自己免疫障害の例には、多発性硬化症、クローン病および潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患(IBD)、リウマチ性関節炎ならびに自己免疫性真性糖尿病が含まれる。IL-12抗体の投与によって利益が得られることが示されているその他の疾患状態には、移植/移植対片宿主疾患および敗血症ショックが含まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ガブラー(Gubler, U.)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:4143から4147(1991)
【非特許文献2】ウルフ(Wolf, S. F.)ら、1991、J. Immunol. 146:3074
【非特許文献3】ポドラスキ(Podlaski, F. J.)ら、1992、Arch. Biochem. Biophys. 294:230
【非特許文献4】ダンドレア(D'Andrea, A.)ら、1992、J. Exp. Med. 176:1387
【非特許文献5】リング(Ling, P.)ら、1995、J. Immunol. 154:116
【非特許文献6】ギレッセン(Gillessen, S.)ら、1995、Eur. J. Immunol., 25:200
【非特許文献7】チッゾナイト(Chizzonite)ら、Cytokine, 6:A82a(1994)
【非特許文献8】ダンドレア(D'Andrea, A.)ら、J. Exp. Med. 176:1387から1398(1992)
【発明の概要】
【0009】
本発明に従って、p35サブユニットをコードする遺伝子および/またはp40サブユニットをコードする遺伝子を欠損する哺乳動物から得たIL-12抗体は、IL-12生物活性を実質的に中和することが判明した。
【0010】
本発明に従って、ヒトIL-12の生物活性を実質的に中和する抗体が、本明細書に記述の方法を用いて初めて製造される。他のIL-12 p75ヘテロダイマー特異的抗体とは異なり、本発明のヘテロダイマー特異的抗体はヒトIL-12活性を少なくとも90%中和する。さらに、本発明のIL-12 p75ヘテロダイマー特異的抗体は、アカゲザルIL-12と交叉反応する。
【0011】
本明細書に記述のp75へテロダイマー特異的IL-12抗体は、望ましくないIL-12刺激免疫応答によって媒介される疾患を治療するために、IL-12活性を阻害するために用いられる有効な治療薬である。本明細書に記述の高度に中和するヘテロダイマー特異的IL-12抗体は、IL-12刺激PHA活性化ヒトリンパ芽球の増殖およびPHA活性化ヒトリンパ芽球によるIFN-γ産生の特に有用な阻害剤である。
【0012】
本発明に従って、IL-12抗体がp35 IL-12サブユニットをコードする遺伝子および/またはp40 IL-12サブユニットをコードする遺伝子を欠損する哺乳動物から産生されれば、IL-12のp75ヘテロダイマーのエピトープと選択的に免疫学的に反応するIL-12抗体が得られ、ヒトIL-12のp75ヘテロダイマーとは選択的に免疫学的に反応するが、p40サブユニットのみとは免疫学的に反応しないことによって同定されることが判明した。
【0013】
以前から知られているIL-12 p75抗体とは異なり、ヒトIL-12の生物活性を実質的に中和する、すなわちヒトIL-12生物活性の少なくとも約90%を中和する抗体が、本明細書に記述の方法によって製造される。さらに、本発明のIL-12 p75ヘテロダイマー特異的抗体はアカゲザルIL-12と交叉反応する。
【0014】
本明細書に記述のIL-12抗体は、少なくとも約0.5 μg/mlの濃度でIL-12誘導PHA活性化ヒトリンパ芽球増殖を少なくとも約90%阻害することによって、および/または少なくとも約0.5 μg/mlの濃度でPHA活性化ヒトリンパ芽球によるIL-12刺激IFN-γ産生を少なくとも約90%阻害することによって、ヒトIL-12の生物活性を少なくとも90%中和する。さらに、本明細書に記述の抗体は、PHA活性化ヒトリンパ芽球のIL-12による増殖を特異的に阻害するがIL-2による増殖は阻害しない。PHA活性化リンパ芽球は以下のように調製する。末梢血単核球(PBMC)を単離して(ゲイトリー(Gately)ら、J. Natl. Cancer. Inst. 69:1245(1982))、0.1%PHA-P(ディフコ・ラボラトリーズ、デトロイト、ミシガン州)によって刺激した。3日後、ゲイトリー、チッゾナイト、およびプレスキー(Gately, M. K., Chizzonite, R. and Presky, D. H.)の「ヒトおよびマウスインターロイキン12の測定(Measurement of human and mouse interleukin 12)」「免疫学の現行プロトコール(Current Protocols in Immunology)」第1巻、コリガン、クルイスビーク、マルグリース、シェバック&ストローバー(J. E. Colligan, A. M. Kruisbeek, D. H. Margulies, E. M. Shevach, and W. Strober)編、ジョン・ウィリー&サンズインク、ニューヨーク、1995、6.16.1〜6.16.15ページに記述のように、培養を新鮮な培地および50 U/ml組換え型ヒトIL-12で1:1にした。さらに1日インキュベートした後のPHA活性化リンパ芽球を用いた。
【0015】
本発明に従って、p75ヘテロダイマーによって示されるエピトープに選択的に結合するが、p40サブユニットによって示されるエピトープには免疫学的に反応しないことに関して、IL-12抗体を同定する。この選択性は、本発明のIL-12抗体が特定の最小濃度で所定量のp75ヘテロダイマーに限って示されるエピトープに反応するが、同じ所定量のこのp75へテロダイマーのp40サブユニットによって示されるエピトープにはその濃度で反応しない、という事実によって定義される。このようにして、本発明の抗体はp40サブユニットによって示されるエピトープよりp75ヘテロダイマーに限って示されるエピトープに対して高い親和性を有する。p75ヘテロダイマーに対する抗体の選択的結合を同定するための簡便なアッセイ法を用いることができる。一般的に、そのようなアッセイ法では、抗体をヒトIL-12 p75ヘテロダイマーとインキュベートして、抗体がp75ヘテロダイマーに結合するか否かを決定する。抗体はまた、p40サブユニットの存在下および非存在下でヒトIL-12 p75ヘテロダイマーと共にインキュベートして、p40サブユニットが存在すればp75ヘテロダイマーの抗体結合または捕獲を阻害するか否かを決定する。例えば、競合的免疫沈降アッセイ法(本明細書の実施例7を参照のこと)を用いて、本明細書に記述の抗体がヒトIL-12のp75ヘテロダイマーと選択的に免疫学的に反応するが、p40サブユニットのみとは免疫学的に反応しないことを示すことができる。
【0016】
本発明に従って、本明細書に記載のIL-12抗体は、ノックアウト哺乳動物を用いることによって産生する。ノックアウト哺乳動物はp35サブユニットをコードする遺伝子および/またはIL-12 p40サブユニットをコードする遺伝子を欠損し、このようにIL-12 p75ヘテロダイマーを発現しない。IL-12 p75ヘテロダイマーによって免疫すると、IL-12 p35サブユニット欠損および/またはIL-12 p40サブユニット欠損ノックアウト哺乳動物は、IL-12 p75ヘテロダイマーを異物として認識し、それに対する抗体を産生する。好ましくは、ノックアウト哺乳動物はマウスである。本発明に従って、ノックアウト哺乳動物は当技術分野において記述された方法によって産生される。ノックアウト哺乳動物はp35 IL-12サブユニットおよび/またはp40 IL-12サブユニットをコードする遺伝子の変異のような従来の方法によって作製することができる。例えば、IL-12 p35サブユニット遺伝子に変異を有するマウスは、マットナー(Mattner, F.)ら、Eur. J. Immunol. 26:1553〜1559(1996)に記述のように作製することができる。IL-12 p40サブユニット遺伝子に変異を有するマウスは、マグラム(Magram, J.)ら、Immunity, 4:471〜481(1996)に記載のように作製することができる。
【0017】
本発明に従って、ヒトIL-12のp75ヘテロダイマーと選択的に免疫学的に反応するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体は、当技術分野で既知の従来の手段によって前記ノックアウト哺乳動物の活性化細胞から製造される。一般的に、抗体は、(a)抗体を産生させるために、p35サブユニットおよび/またはp40サブユニットをコードする遺伝子を欠損する「ノックアウト」哺乳動物を、ヒトp75ヘテロダイマーによって免疫することによって;(b)免疫した哺乳動物から抗体を得ることによって;および(c)選択的結合抗体を得るためにp75ヘテロダイマーによって示されるエピトープとの選択的結合能に関して抗体をスクリーニングすることによって製造される。
【0018】
ヒトIL-12 p75ヘテロダイマーと選択的に免疫学的に反応する本発明のIL-12モノクローナル抗体は、一般的に以下の段階を含む方法によって産生される:
(1)ノックアウト哺乳動物、例えば、IL-12 p35サブユニットおよび/またはIL-12 p40サブユニットをコードする遺伝子を欠損するマウスを、ヒトIL-12 p75ヘテロダイマーによって免疫する段階;
(2)免疫したノックアウト哺乳動物から、脾細胞またはリンパ節細胞のようなIL-12に対する抗体を発現するよう活性化されている細胞を選択する段階;
(3)回収した細胞を骨髄細胞と融合させてハイブリドーマ細胞を形成する段階;
(4)例えば標識もしくは非標識ヒトIL-12を用いるELISAまたは免疫沈降アッセイ法を用いることによって、抗ヒトIL-12抗体の存在下でハイブリドーマコンディションド(conditioned)培地を調べることによって、ヒトIL-12を認識する抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を選択する段階;および
(5)抗体がp75へテロダイマーに結合するか否かを決定するために、抗体をヒトIL-12 p75ヘテロダイマーと共にインキュベートすることによって、そして次にp40サブユニットの存在によって、p75ヘテロダイマーの抗体結合または捕獲が阻害されるか否かを決定するために、p40サブユニットの存在下および非存在下でヒトIL-12 p75ヘテロダイマーと抗体とをインキュベートすることによって、抗体がp75 IL-12ヘテロダイマーのエピトープと免疫学的に反応するが、p40サブユニットのエピトープとは免疫学的に反応しないことを示すことによって、p75ヘテロダイマー特異的であるか否かを決定する段階。例えば、競合的免疫沈降アッセイ(本明細書の実施例7を参照のこと)を用いて、本明細書に記述の抗体がヒトIL-12のp75ヘテロダイマーと選択的に免疫学的に反応するが、p40サブユニット単独とは免疫学的に反応しないことを示すことができる。
【0019】
本発明のp75ヘテロダイマー特異的IL-12モノクローナル抗体を製造する方法は、活性化リンパ球のIL-12刺激増殖、IL-12刺激によるIFN-γ産生、または細胞溶解活性のIL-12刺激による増強を測定するアッセイ系のような、IL-12生物活性に関するインビトロまたはインビボアッセイ系において、ヒトおよびアカゲザルの双方のIL-12生物活性を、ヘテロダイマー特異的IL-12抗体が阻害することができるか否かを決定する段階をさらに含むことができる。
【0020】
本発明の抗ヒトIL-12抗体は、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティクロマトグラフィー、またはイオン交換クロマトグラフィーのような、当技術分野で既知の標準的な方法によって実質的に純粋な形で単離することができる。
【0021】
本発明の抗体を得る方法の改変もまた、本発明に含まれる。例えば、ウェスタンブロッティング、競合的免疫沈降アッセイ法、またはクロスブロッキング結合アッセイ法のような当技術分野で既知の方法を用いて、抗体がp75ヘテロダイマー特異的であるか否かを決定することができる。
【0022】
マウスのほかに、本明細書に記述の抗体を製造するために、IL-12 p35サブユニット遺伝子および/またはIL-12 p40サブユニット遺伝子を欠損するラットおよびウサギのような哺乳動物を、IL-12 p75ヘテロダイマーによって免疫することができる。IL-12 p35サブユニット遺伝子および/またはIL-12 p40サブユニット遺伝子における欠損または変異は、IL-12 p75ヘテロダイマーの発現を欠損する如何なる欠失または変異ともなりうる。さらに、IL-12 p35サブユニット遺伝子および/またはIL-12 p40サブユニット遺伝子に変異を有し、その結果IL-12 p75欠損表現型となる哺乳動物細胞を得るための従来の方法を用いることができる。
【0023】
本発明に従って、ヒトIL-12 p75ヘテロダイマーに対する抗体を発現する活性化哺乳動物細胞は、天然のヒトIL-12または組換え型IL-12によってマウスまたはその他の哺乳動物を免疫することによって得ることができる。天然のヒトIL-12および組換え型ヒトIL-12は、本明細書に記載の実施例に提供する技術のように、当技術分野で既知の従来の技法によって調製することができる。
【0024】
本発明のIL-12抗体を分泌するハイブリドーマの製造に用いるのに適した骨髄腫細胞株、すなわち、融合パートナーには、例えばSP2/0およびNS/O細胞株のような当技術分野で周知の骨髄細胞株が含まれる。SP2/0マウス胃骨髄腫細胞が好ましい。好ましくは、骨髄融合パートナーおよびIL-12 p75ヘテロダイマーに対して活性化された哺乳動物細胞は、同じ種に由来する。
【0025】
本発明の抗体を産生するハイブリドーマ細胞は当技術分野で既知の従来の方法によって選択および単離することができる。好ましくは、骨髄腫細胞およびIL-12 p75ヘテロダイマーに対して活性化されたリンパ球を、骨髄腫細胞を殺すことができるが、リンパ球は殺すことができない選択物質を含む培地中で培養する。ハイブリドーマは、IL-12 p75ヘテロダイマーに対して活性化されたリンパ球と融合する骨髄腫細胞から形成される。そのようなハイブリドーマ細胞は、リンパ球のDNAが、選択物質によって阻害される代謝経路をもう一つの代謝経路に置き換えることによって、選択物質の毒性作用を予防する酵素をコードする必要な遺伝子を骨髄腫細胞に供給するために、選択物質を含む培地中で増殖することができる。融合していないリンパ球はそれらが形質転換されておらず、インビトロでは短い、有限寿命を有するために死滅する。本発明に従って、ハイブリドーマ細胞を選別するために用いられる適した選択物質は、アミノプテリンである。ハイブリドーマ細胞を培養する好ましい培地は、10%FBS(ハイクローン社)、100 U/mlペニシリンG(バイオウィッタッカー社)、100 μg/mlストレプトマイシン(バイオウィッタッカー社)、250 ng/mlファンギゾン(バイオウィッタッカー社)、2 mMグルタミン(バイオウィッタッカー社)、100 μg/ml硫酸ゲンタマイシン(バイオウィッタッカー社)、50 μM 2-メルカプトエタノール(バイオラド社)、100 μMヒポキサンチン(シグマ社)、400 nMアミノプテリン(シグマ社)、16 μMチミジン(シグマ社)、および2.5%P388D1培養上清(ノーダン(Nordan, R. P.)ら、J. Immunol. 139:813(1987)が記述したように調製)を添加したイスコブ改変ダルベッコ培地(IMDM)である。
【0026】
本発明のIL-12抗体の効力は、IL-12刺激ヒトリンパ芽球の増殖またはIFN-γ産生アッセイ法によって測定した場合に、IL-12生物活性において50%の最大阻害が起こるIL-12抗体の濃度に関して決定する。本発明の抗ヒトIL-12抗体は、これまでに特徴付けされたヘテロダイマー特異的IL-12抗体より高い効力を示す。さらに、本発明の抗ヒト抗体は、IL-12刺激リンパ球の増殖、またはIFN-γ産生の最大阻害の程度によって測定すると、これまでに特徴付けされたヘテロダイマー特異的IL-12抗体より大きい有効性を示す。
【0027】
本明細書に記述の抗体の効力および有効性は、例えば、IL-12誘導リンパ芽球増殖アッセイ法またはIFN-γ合成アッセイ法のような、当技術分野で既知の従来のアッセイ法によって決定することができる。
【0028】
本発明に従って、当技術分野で既知の如何なる従来の方法も、IL-12抗体によるヒトIL-12刺激リンパ芽球増殖の阻害を決定するために用いることができる。一般的に、ヒトリンパ球はマイトゲン性のレクチン、例えばフィトヘムアグルチニンA(PHA)、またはサイトカイン、ホルボルエステル、およびイオノフォアのような他の活性化物質の単独もしくは組み合わせによる使用、細胞表面分子に対して作製した抗体による処理、またはリンパ球の活性化に至るその他の方法を含む、多くの方法によって活性化することができる。次に活性化リンパ球を抗体の非存在下または存在下でIL-12と共におよびIL-12を加えないでインキュベートし、そして3H-チミジンのDNAへの取り込みを測定してDNA合成速度を決定することによって、様々な処置時間後に存在する細胞数を計数することによって、または細胞増殖速度をモニターするその他の方法によって、リンパ球増殖速度を測定する。増殖阻害は、様々な濃度の抗IL-12抗体の非存在下および存在下において、IL-12の規定濃度でのリンパ球増殖を比較することによって決定する。
【0029】
標準的なリンパ球増殖アッセイ法において、ヒトIL-12刺激PHA活性化ヒトリンパ芽球増殖の阻害は、抗体を加えない場合のヒトIL-12刺激PHA活性化ヒトリンパ芽球増殖のレベルおよびPHA活性化ヒトリンパ芽球増殖のバックグラウンドレベル、すなわちIL-12および抗体の双方が存在しない場合の増殖を考慮して決定する。一般的に、われわれの標準的なリンパ球増殖アッセイ法では、IL-12刺激による増殖レベルは約10,000〜80,000 cpmであり、バックグラウンドレベルは約5,000〜20,000 cpmである。刺激されたPHA活性化ヒトリンパ芽球のロット間に固有のばらつきが存在することから、バックグラウンドの増殖に対する刺激された増殖の比(すなわち刺激指数)が3に等しいまたはそれ以上であったアッセイのみをIL-12刺激増殖の測定に関して有効であると見なす。
【0030】
本発明に従って、IL-12抗体によるIFN-γ産生阻害を決定する従来の方法を用いることができる。例えば、本明細書に記述のように調製した活性化ヒトリンパ球、または全血もしくは単離PBMCをレクチン、サイトカイン、ホルボルエステル、イオノフォアを含むマイトゲン物質、または細胞表面分子に対して作製した抗体を単独もしくは併用して処置することによって、または活性化ヒトPBMCを産生させるその他の方法によって調製した活性化ヒト末梢血単核球(PBMC)を、IL-12および様々な他の物質、例えばIL-2および/またはIL-1βと共にまたはこれらを含まずに、抗体の非存在下および存在下でインキュベートする。次にIFN-γの産生は、例えば培養培地をサンプリングして、IFN-γの濃度をELISAまたはIFN-γを定量的に測定することができるその他の方法によって測定する。IFN-γ産生の阻害は、抗IL-12抗体の様々な濃度の非存在下および存在下でIL-12の一定濃度でのIFN-γを比較することによって決定する。
【0031】
標準的なIFN-γ合成アッセイ法において、IFN-γの阻害は、IL-12刺激IFN-γ産生およびIFN-γ産生のバックグラウンドレベル、すなわちIL-12の存在下または非存在下でのIFN-γ合成を考慮して測定する。一般に、IL-12刺激によるIFN-γ産生のレベルは約7〜220 ng/mlであり、産生のバックグラウンドレベルは約1〜3 ng/mlである。
【0032】
本明細書に記述の抗体は、ヒトIL-12生物活性を阻害する効力と類似の効力でアカゲザルのIL-12生物活性を中和し、そのためにこれらはアカゲザルにおけるインビボ試験に関して有用なIL-12拮抗剤となる。これらの抗ヒトIL-12抗体では効力および有効性の増加、およびアカゲザルIL-12との交叉反応性の増加により、これらはヒトにおいて用いられる有効なIL-12拮抗剤をデザインするために優れた候補物質となる。
【0033】
特に、本発明は、ヒトIL-12のp75ヘテロダイマーに対する4つの抗体5F2、16F2、16G2、および20E11を提供する。これらの抗体を産生する対応するハイブリドーマは、ブダペスト条約の条件下で1997年12月11日にアメリカンタイプカルチャーコレクションにそれぞれ、ATCCアクセッション番号HB-12446、HB-12447、HB-12449、およびHB-12448として寄託されている。しかし、本発明はこれらの4つの抗体に制限されない。本明細書に記述の特徴を有する如何なる抗体も本発明の中に含まれる。
【0034】
図6は、p75ヘテロダイマー特異的16G2抗体の重鎖可変領域の一部をコードするヌクレオチド配列およびこのヌクレオチド配列から推定されるアミノ酸配列を提供する。p75ヘテロダイマー特異的20E11抗体の重鎖可変領域の一部をコードするヌクレオチド配列およびこのヌクレオチド配列から推定されるアミノ酸配列を、図7に提供する。本明細書のヘテロダイマー特異的IL-12抗体の定常領域において、抗体結合特異性/親和性に有意な影響を及ぼすことなく、保存的アミノ酸置換を行うことができることは当業者によって理解されると思われる。可変フレームワーク領域に、またはより詳しくは相補性決定領域にアミノ酸置換を含むヘテロダイマー特異的IL-12抗体は、抗原結合特異性/親和性により大きい影響を有すると予想することができる。
【0035】
本発明のIL-12抗体は、完全長の重鎖2個および完全長の軽鎖2個を含む完全な抗体となりうる。または単鎖抗体のようなIL-12抗体、またはIL-12 p75ヘテロダイマーの1つ以上のエピトープに対する結合活性を保持している「ミニ」抗体を構築することができる。そのような構築物は、例えば、大腸菌において発現させる単鎖抗体のPCRによるクローニングおよび構築(「抗体の操作、実践アプローチシリーズ(Antibody Engineering, The practical approach series)」、マッカファーティ、ホーゲンブルーム&キスウェル(J. McCarfferty, H. R.,Hoogenboom, and D. J. Chiswell)編、オックスフォード大学出版、1996)のような当業者に既知の方法によって調製することができる。このタイプの構築物では、抗体分子の重鎖および軽鎖の可変部分をcDNAからPCR増幅する。得られたアンプリコンを、例えば第二のPCR段階でアミノ酸グリシンおよびセリンを含む柔軟な蛋白質リンカーをコードするリンカーDNAを通じて構築する。このリンカーによって、抗原結合ポケットが再生されて、抗体が親の完全長の二量体免疫グロブリン分子としばしば同等の親和性で結合するように、重鎖および軽鎖の可変部分が折り畳まれる。
【0036】
本明細書に記述の抗ヒトIL-12抗体は、IL-12 p75ヘテロダイマーに対して哺乳動物の抗ヒトIL-12抗体と同じまたは実質的に類似の親和性を有するが、ヒトにおいて実質的に非免疫原性である抗体を作製するようにヒト化してもよい。例えば、本発明に従ってヒト化IL-12抗体は、ヒト抗体の重鎖および軽鎖フレームワーク領域を含むことができる。好ましくは、ヒト化抗体フレームワーク領域のアミノ酸配列は、ドナーのフレームワーク領域と約60%〜95%同一である。ヒト化抗体は当技術分野で周知の組換え技法によって製造してもよい。ヒト化免疫グロブリンを製造する方法は例えば、米国特許第5,530,101号に記載されている。
【0037】
本発明のIL-12抗体は免疫メカニズムを通じて媒介される病態、特にIL-12活性の増加に関連し、その結果異常なTh1型ヘルパー細胞活性を生じる病態に関連した疾患を制御するための有効な拮抗物質である。本発明に従って、IL-12抗体は、例えば多発性硬化症、リウマチ性関節炎、自己免疫性真性糖尿病、ならびにクローン病および潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患(IBD)のような、ヒトまたは他の哺乳動物における自己免疫障害を治療するために用いられる。本明細書に記述の抗体はまた、例えば移植/移植片対宿主病および敗血症ショックを含む、IL-12抗体の投与から恩典を受けることが示されている他の疾患状態を治療するために用いることができる。
【0038】
本明細書に記述のIL-12抗体の投与の用量範囲は、過度の実験を行うことなく当業者が決定してもよい。一般的に適当な用量は、所望の効果を生じる、すなわちIL-12活性の少なくとも90%を中和するために十分な用量である。しかし、用量は、望ましくない交叉反応、アナフィラキシー反応等の有害な副作用を引き起こすほど多くてはならない。一般的に用量は、患者の年齢、疾患、性別および疾患の程度、反対適応、もしあれば、免疫寛容および他のそのような変数と共に変化して、個々の医師によって調節される。
【0039】
IL-12抗体は注射によって非経口的に投与してもよく、または経時的に徐々に還流することによって投与してもよい。それらは、静脈内、筋肉内、または皮下に投与することができる。非経口投与の製剤には滅菌、または水溶液もしくは非水溶液、懸濁液、および乳液が含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、およびオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルである。水性担体には、生理食塩液および緩衝培地を含む、水、アルコール/水溶液、乳液または懸濁液が含まれる。非経口溶媒には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、または固定油が含まれる。静脈内溶媒には、リンゲルデキストロースを基本とする補充液のような、液体および栄養補充液、電解質補充液等が含まれる。例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガス等の保存剤および他の添加剤が存在してもよい。一般的には、「レミントンの製薬科学(Remington's Pharmaceutical Science)」第16版、マック(Mack)編、1980を参考のこと。
【0040】
本発明のIL-12抗体の好ましい用量は、約0.1 mg/kg〜約10 mg/kgを週に2〜3回である。しかし、本明細書に記述のIL-12抗体を投与するための用量および投与スケジュールは、治療すべき個人、投与する抗体、および上記の変数によって変化してもよい。本発明に従って、IL-12抗体は単独で、または他の治療活性物質と併用して投与してもよい。
【0041】
実施例
実施例1
天然のヒトIL-12の調製
健常なボランティアドナーから、保存剤不含ヘパリン(シグマ社、セントルイス、ミズーリ州、アメリカ)を含むシリンジに血液を採取して、最終濃度を〜5単位ヘパリン/ml血液とした。ヘパリン化血液1容量を、0.1 mM非必須アミノ酸、60 μg/ml塩酸アルギニン、10 mM HEPES緩衝液、2 mM L-グルタミン、100 U/mlペニシリン、100 μg/mlストレプトマイシン(全て、ギブコBRL社、グランドアイランド、ニューヨーク州、アメリカから入手可能)、50 μM 2-メルカプトエタノール(フィッシャー・サイエンティフィック社、フェアローン、ニュージャージー州、アメリカ)、および1 mg/mlデキストロース(フィッシャー社)を添加した、RPMI 1640およびダルベッコ改変イーグル培地の1:1混合液を含む培地9容量で希釈した。この混合液にヒトインターフェロン-γ、20 U/ml(ペプロテックインク、ロッキーヒル、ニュージャージー州、アメリカ)およびパンソルビン(Pansorbin)細胞(ホルマリン固定黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、コワン(Cowan)株;カルビオケム社、サンジエゴ、カリフォルニア州、アメリカ)を最終希釈4000倍で加えた。(培養において使用する前に、パンソルビン(Pansorbin)細胞をダルベッコ燐酸緩衝生理食塩液(ギブコBRL社)によって2回洗浄し、製造元によって供給されたものと同じ容量にした。)得られた細胞懸濁液を162 cm2組織培養フラスコ(コスター社、ケンブリッジ、マサチューセッツ州、アメリカ)に80 ml/フラスコの割合で加え、フラスコを5%CO2/95%空気の湿潤大気中で37℃で24時間水平にしてインキュベートした。次に培養上清液を遠心によって回収して、0.22 μmフィルター(コスター社)を通過させて滅菌した。IL-12ヘテロダイマープラスIL-12 p40は、表面への非特異的吸着による蛋白質の損失を最小限にするために、溶出緩衝液に0.01%ゼラチン(シグマ社)を含むことを除いては、アカゲザルのIL-12の精製に関する下記と同じように、2-4A1プロテインGセファロース(PGS)カラムを用いたイムノアフィニティクロマトグラフィーによって培養上清から精製した。溶出液を100〜200倍量のダルベッコ燐酸緩衝生理食塩液に対して4〜6時間透析した後、100 μg/mlゲンタマイシンを含むRPMI 1640の同じ容量に対して一晩透析した。透析した溶出液を0.22 μmフィルターを通過させることによって滅菌して、IL-12ヘテロダイマーおよびIL-12 p40(ゲイトリー、チッゾナイト、およびプレスキー(Gately, M. K., Chizzonite, R. and Presky, D. H.)の「ヒトおよびマウスインターロイキン12の測定(Measurement of human and mouse interleukin 12)」「免疫学の現行プロトコール(Current Protocols in Immunology)」第1巻、コリガン、クルイスビーク、マルグリース、シェバック&ストローバー(J. E. Colligan, A. M. Kruisbeek, D. H. Margulies, E. M. Shevach, and W. Strober)編、ジョン・ウィリー&サンズインク、ニューヨーク、1995、6.16.1〜6.16.15ページ)の含有量ならびにIL-12生物活性(ibid)に関してELISAによってアッセイした。典型的に、IL-12 p40:IL-12ヘテロダイマーの重量比はELISAによって測定すると、約5:1であった。
【0042】
実施例2
組換え型ヒトIL-12の産生
組換え型ヒトIL-12は、米国特許第5,536,657号に述べたように調製され、特徴付けられおよび生成された。
【0043】
実施例3
アカゲザルIL-12の作製
アカゲザルIL-12のp35およびp40サブユニットcDNA配列(ビリンガー(F. Villinger)ら、J. Immunol. 155:3946〜3954(1995))を、標準的な方法(「分子生物学の現行プロトコール((Current Protocols in Molecular Biology)」、アウスユベール(Ausubel)編、J. ウィリー&サンズインク、ニューヨーク(1993))を用いて2つの異なるプラスミド上でCHO-dhfrマイナス細胞において発現するように操作した。増幅していない細胞集団からクローンを得て、そのIL-12産生をIL-12特異的ELISAによってモニターした。最適に産生するクローンを選択して、CHO血清不含培地(シグマ社)において増殖するよう適合させた。次に、蛋白質産生を目的として細胞をスピナ培養で増殖させた。アカゲザルIL-12を抗体アフィニティクロマトグラフィーによって上清から精製した。10 mMジメチルピメリミデート(ピアス社、ロックフォード、イリノイ州、アメリカ)を用いて、抗ヒトIL-12 p40 mAb 2-4A1の10 mgを1 mg mAb/mlゲルの密度でプロテインGセファロース(ファルマシア・バイオテック社)にクロスリンクさせることによってアフィニティカラムを作製した(スターン&ポドラスキ(Stern and Podlaski)、「蛋白質化学の技術(Tech. In Protein Chem.)」 IV巻、アカデミックプレス、ニューヨーク、353〜360(1993))。アカゲザルIL-12を含む血清不含CHO上清を0.2 μmフィルターを通じて濾過し、PBS(pH 7.2)で予め平衡化した10 ml 2-4A1 PGSカラムに直接ローディングした。流速は1 ml/分であった。カラムをPBSの10倍量で洗浄して、0.1 Mグリシン塩酸、0.15 M NaCl(pH3.0)で溶出した。溶出物を直ちに3 Mトリス塩酸(pH 9)で中和した。アフィニティカラムは、ブラッドフォードおよびSDS-PAGEによって測定すると、過剰量のp40モノマーを含めて、流したアカゲザルIL-12の〜2 mgsに結合することができた。その他の混入物質は痕跡レベルであった。アカゲザルIL-12を濃縮してさらに精製するために、IL-12含有溶出物を20 mM 燐酸ナトリウム(pH 7)に対して透析し、同じ緩衝液で慣らしたS-セファロースカラム上にローディングした。流速は1 ml/分であった。全ての蛋白質を結合させた。カラムを燐酸緩衝液10倍量で洗浄して、0.3 M NaClを含むリン酸緩衝液で溶出した。溶出したプールは、バイオウィッタッカー社のLALキットを用いてエンドトキシンの有無をアッセイし、蛋白質の10 EU/mg未満であることが判明した。mAb 2-4A1を検出物質として用いるウェスタンブロット分析によって、〜80 kDaでのアカゲザルのIL-12ヘテロダイマー並びに40 kDaでp40モノマーの明らかな過剰量が示された。クーマシー染色を施したSDS-PAGEによって、〜70 kDaでのp80ヘテロダイマーと同じ強度のさらなる顕著な蛋白質が示された。80 kDaおよび70 kDa蛋白質はいずれも、2-メルカプトエタノールによる処理後、そのモノマー型に還元するが、後者の蛋白質のバンドは、mAb 2-4A1とは反応しない。
【0044】
実施例4
ハイブリドーマ抗体の調製、特徴付け、および精製
遺伝背景がBalb/cでIL-12 p35サブユニット遺伝子に変異を有するマウスを、マットナー(Mattner, F.)ら、Eur. J. Immunol. 26:1553〜1559(1996)に記述のように作製した。精製した組換え型ヒトIL-12 5μgをフロイントの完全アジュバントと共に腹腔内投与することによって、IL-12 p35欠損マウスを免疫した。続く2.5ヶ月間に、マウスにヒトIL-125μgをフロイントの不完全アジュバントと共に腹腔内注射を3回行った。ヒトIL-12 75 μgのPBS溶液の最後の注射(50 μg i.p.および25 μg i.v.)を脾臓摘出の3日前および2日前に行い、その後ヒトIL-12 50 μgのPBS溶液を脾臓摘出の前日に腹腔内注射した。これらのマウスから脾細胞を回収して、オイ&ヘルツェンベルグ(Oi and Herzenberg、「細胞免疫学の選り抜きの方法(Selected Methods in Cellular Immunology)」、ミシェル&シイギ(Mishell and Shiigi)編、W. H. フリーマン&カンパニー、ニューヨーク、1980、351〜372ページ)の方法に従って、50%w/vポリエチレングリコール1500(ベーリンガーマンハイム社)を用いてマウス骨髄腫SP2/0細胞と1:1の比で融合した。96ウェルクラスタープレートにおいて、10%FBS(ハイクローン社)、100 U/mlペニシリンG(バイオウィッタッカー社)、100μg/mlストレプトマイシン(バイオウィッタッカー社)、250 ng/mlファンギゾン(バイオウィッタッカー社)、2 mMグルタミン(バイオウィッタッカー社)、100 μg/ml硫酸ゲンタマイシン(バイオウィッタッカー社)、50 μM 2-メルカプトエタノール(バイオラド社)、100 μMヒポキサンチン(シグマ社)、400 nMアミノプテリン(シグマ社)、16 μMチミジン(シグマ社)、および2.5%P388D1上清(ノーダン(Nordan, R. P.)ら、J. Immunol., 139:813(1987)による記述通りに調製)を添加したIMDM中で、融合細胞を60,000個/ウェルの密度で播種した。下記のように125I-標識ヒトIL-12の免疫沈降によってハイブリドーマの上清に特異的抗ヒトIL-12抗体が存在するか否かをアッセイした。抗ヒトIL-12抗体を分泌するハイブリドーマ細胞株を限界希釈によってクローニングした。既に記述されているように(レイク(Reik, L.)ら、J. Immunol. Methods, 100:123〜130(1987))、カプリル酸および硫酸アンモニウムで連続処理することによって、抗体を腹水から精製した。
【0045】
実施例5
125I-標識ヒトIL-12の調製
組換え型ヒトIL-12は、本明細書に参照として組み入れられる、チッゾナイト(Chizzonite)ら、J. Immunol. 147:1548〜1556(1991)およびチッゾナイト(Chizzonite)ら、J. Immunol. 148:3117〜3124(1992)に既に記載されている改変されたヨードゲン(ピアスケミカルカンパニー)法を用いて、比活性約2200 Ci/mmolとなるように放射標識した。ヨードゲンをクロロホルムに溶解して、0.05 mgを12×15 mmホウケイ酸ガラス管中で乾燥させた。放射標識するために、1.0 mCi Na[125I](アマシャム社、シカゴ、イリノイ州、アメリカ)を、トリスヨウ素化緩衝液(25 mMトリス塩酸(pH 7.5)、0.4 M NaCl、および1 mM EDTA)0.05 mlを含むヨードゲンコーティングチューブに加えて、室温で6分間インキュベートした。活性化125I溶液を、IL-12(31.5 μg)のトリスヨウ素化緩衝溶液0.1 mlを含むチューブに移して、室温で6分間インキュベートし、反応させた。インキュベート終了時、ヨードゲン停止緩衝液(10 mg/mlチロシン、10%グリセロールのダルベッコPBS溶液(pH 7.40))0.05 mlを加えて5分間反応させた。混合液を、1%(w/v)BSAのトリス・ヨウ素化緩衝溶液1.0 mlで希釈して、クロマトグラフィーのためにバイオゲルP10DG脱塩カラム(バイオラドラボラトリーズ(BRL))に載せた。標識した蛋白質のピーク量を含む分画(1 ml)を合わせて、1%(w/v)BSAのトリス・ヨウ素化緩衝溶液で1×108 cpm/mlに希釈した。TCAによって沈殿可能な放射活性(10%TCA最終濃度)は、典型的には総放射活性の95%を超えていた。組換え型ヒトIL-12の放射特異的活性は典型的には約2200 Ci/mmolであった。
【0046】
実施例6
125I-標識ヒトIL-12の免疫沈降アッセイ法
5μg/mlウサギ抗マウスIgGのカーボネート・コーティング緩衝溶液(15 mM Na2CO3/35 mM NaHCO3)(pH 9.6)100 μl/ウェルの割合で4℃で18時間インキュベートすることによって、ヌンク・マキシソープ96ウェル分離型プレートを、マウスIgGに対するウサギアフィニティ精製抗体(カッペル、ダーハム、ノースカロライナ州、アメリカ)でコーティングした。コーティングしたウェルをPBS/0.05%Tween-20/0.01%チメロソルで洗浄し、1%(w/v)BSA/PBS/0.01%チメロソル200 μlと共に37℃で4時間インキュベートすることによってブロッキングした。ハイブリドーマ上清(75 μl)を抗マウスIgG-コーティングウェルに加えて、22℃で3時間インキュベートした。ウェルをPBS/0.05%Tween-20/0.01%チメロソル300 μlで3回洗浄し、次に125I-標識ヒトIL-12の100,000 cpmを抗体希釈緩衝液(PBS/1%BSA(w/v)/0.5 M NaCl/0.05%Tween-20/0.01%チメロソル)100 μlを含むそれぞれのウェルに加えた。4℃で18時間後、ウェルをPBS/0.05%Tween-20/0.01%チメロソル200 μlで3回洗浄した。次にウェルを分離して、ウェルに結合した放射活性の量をガンマカウンターを用いて測定した。幾つかの実験では、ウサギ抗マウスIgG-コーティングウェル中でハイブリドーマ上清をインキュベートした後、既に記述されたように(ガブラー(Gubler)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:4143〜4147(1991))調製したヒトIL-12 p40トランスフェクトCOS細胞からの培養上清100 μlを37℃で1時間ウェル中でインキュベートしてから、125I-標識ヒトIL-12を加え、捕獲されたマウス抗ヒトIL-12抗体がヒトIL-12のp40サブユニットに結合するか否かを調べた。
【0047】
実施例7
抗ヒトIL-12モノクローナル抗体の同定
96ウェルプレートに基づく免疫沈降アッセイ法を用いて、抗ヒトIL-12抗体を分泌するハイブリドーマを同定した。ハイブリドーマの上清を、上記のようにヒトIL-12 p40サブユニットを含むCOS細胞上清100 μlの非存在下および存在下でインキュベートした。125I-標識ヒトIL-12(100,000 cpm/ウェル)を加え、ウェル上で捕獲された125I-標識ヒトIL-12の量を測定した。図1は、125I-標識ヒトIL-12を捕獲したハイブリドーマ5F2、16F2、16G2、20E11および17E2からの上清に抗体が含まれることを示している。さらに、免疫沈降反応の際に非標識ヒトIL-12 p40サブユニットが存在しても、抗体5F2、16F2、16G2および20E11による125I-標識ヒトIL-12の捕獲は阻害されず、このことは、これらの抗体がIL-12 p40サブユニットのみに対して高い親和性を有しないことを示している。対照的に、免疫沈降反応の際に非標識ヒトIL-12 p40サブユニットが存在すれば、17E2による125I-標識ヒトIL-12の捕獲は完全に阻害され、このことは17E2がヒトIL-12のp40サブユニットを認識することを示している。
【0048】
実施例8
抗ヒトIL-12モノクローナル抗体の分析的等電点電気泳動
分析的等電点電気泳動は、ファルマシアバイオテック社(コード番号、80-1124-80、アップサラ、スウェーデン)のpH 3.5〜9.5アンフォリンPAGプレートを用いて実施した。等電点電気泳動は、1 M燐酸および1 N水酸化ナトリウムの電解質溶液を用いて、製造元の説明書に従って実施した。ゲルに、それぞれが単一の免疫グロブリン、すなわち20E11、5F2、20C2、16G2および16F2を含む試料5個をローディングした。標準物質はファルマシア・バイオテック社の等電点電気泳動pH 3〜10較正キット(コード番号17-0471-01)のものであった。実験条件は1000ボルト、10ワット、2.5時間、4℃であった。ゲルは、製造元の説明書に従って蛋白質用のファルマシアバイオテック・プラスワン銀染色キット(コード番号17-1150-01)を用いて銀染色した。図2は、抗ヒトIL-12モノクローナル抗体、20C2、16G2、16F2、20E11、および5F2の等電点電気泳動パターンを示す。
【0049】
実施例9
抗ヒトIL-12モノクローナル抗体の等電点電気泳動パターン
図2に示すように、モノクローナル抗体20C2(チッゾナイト(Chizzonite)ら、Cytokine, 6:A82a(1994))、20E11、および5F2は、独自の免疫グロブリンである。モノクローナル抗体16G2および16F2は、等電点電気泳動では同一であるように思われるが、いずれも20C2、20E11および5F2とは異なる。これらの抗体のpIはpH 5〜6の範囲である。
【0050】
実施例10
PHA-活性化リンパ芽球の作製
天然のヒトIL-12およびアカゲザルIL-12による増殖の双方を測定するために、4日目のPHA活性化ヒト末梢血単核球細胞(PBMC)を用いた。PBMCを単離して(ゲイトリー(Gately)ら、J. Natl. Cancer Inst., 69:1245(1982))、0.1%PHA-P(ディフコラボラトリーズ社、デトロイト、ミシガン州、アメリカ)によって刺激した。3日後、記述通りに培養を新鮮な培地および50 U/ml組換え型ヒトIL-12によって1:1に分割した(ゲイトリイ、チッゾナイト、およびプレスキー(Gately, M. K., Chizzonite, R. and Presky, D. H.)の「ヒトおよびマウスインターロイキン12の測定(Measurement of human and mouse interleukin 12)」「免疫学の現行プロトコール(Current Protocols in Immunology)」第1巻、コリガン、クルイスビーク、マルグリース、シェバック&ストローバー(J. E. Colligan, A. M. Kruisbeek, D. H. Margulies, E. M. Shevach, and W. Strober)編、ジョン・ウィリー&サンズインク、ニューヨーク、1995、6.16.1〜6.16.15ページ)。細胞培養に用いた添加培地は天然のヒトIL-12の製造に関して先に記述したものに5%ヒトAB血清(アーバインサイエンティフィック社、サンタアナ、カリフォルニア州、アメリカ)を加えたものであった。
【0051】
実施例11
リンパ球増殖アッセイ法
様々な抗ヒトIL-12モノクローナル抗体がIL-12およびIL-2刺激PHA活性化ヒトリンパ芽球増殖に及ぼす影響は、M. K. ゲイトリーら(ゲイトリー、チゾナイト、およびプレスキー(Gately, M. K., Chizzonite, R. and Presky, D. H.)の「ヒトおよびマウスインターロイキン12の測定(Measurement of human and mouse interleukin 12)」「免疫学の現行プロトコール(Current Protocols in Immunology)」第1巻、コリガン、クルイスビーク、マルグリース、シェバック&ストローバー(J. E. Colligan, A. M. Kruisbeek, D. H. Margulies, E. M. Shevach, and W. Strober)編、ジョン・ウィリー&サンズインク、ニューヨーク、1995、6.16.1〜6.16.15ページ)に基づく方法によって調べた。上記のように調製した4日目のPHA活性化リンパ芽球を採取して、洗浄し、添加培地に4×105個/mlで再懸濁し、精製モノクローナル抗ヒトIL-12抗体および関連するサイトカイン、すなわちヒトまたはサルのIL-12と共に96ウェルプレート(2×104個/ウェル)でインキュベートした。天然のヒトIL-12を1 ng/mlまたはサルIL-12を2 ng/mlの双方の25 μlアリコットを、抗ヒトIL-12モノクローナル抗体(mAbs)の様々な希釈液の25 μlアリコットと混合した。ウェルにおける最終の抗体濃度は0.0005 μg/ml〜0.5 μg/mlであった。様々な抗ヒトIL-12 mAbsおよび組換え型IL-2を含む、異なる同一のセットのウェルを調製して、阻害特異性の手段として抗ヒトIL-12 mAbsがIL-2刺激増殖に及ぼす作用を調べた。IL-12反応性を決定するために、ヒトまたはサルIL-12のそれぞれ250 pg〜500 pg/ウェルから、加えた抗体がない0pgにまで及ぶ標準的な用量反応曲線も含められた。サイトカインおよび抗体の混合液を含むプレートを37℃で30分インキュベートし、次に細胞懸濁液50 μlをウェルに加えた。培養プレートを5%CO2の湿潤大気中で37℃で48時間維持した後3H-チミジンのパルスを行った。10 μCi/ml 3H-チミジン50 μl(5%ヒトAB血清の代わりに5%FCSを加えた培地で希釈する)を各ウェルに加えた。37℃でさらに6時間インキュベートした後、セルハーベスタを用いてウェルの内容物をグラスファイバーフィルター上に回収し、細胞DNAへの3H-チミジン取り込みを、液体シンチレーションカウンターを用いて測定した。図3および4に示す値はウェル3個の平均値である。
【0052】
実施例12
抗ヒトIL-12モノクローナル抗体によるサイトカイン刺激PHA活性化リンパ芽球増殖の阻害
0.25 ng/ml IL-12で刺激したPHA活性化ヒトリンパ芽球の増殖は、抗体5F2、16F2、16G2、および20E11(図3)によって用量依存的に阻害された。0.25 ng/ml IL-12刺激増殖において50%の最大阻害を生じる濃度(IC50)として定義されるこれらの抗ヒト抗体の効力は、5F2に関して0.03 μg/ml、16F2に関して0.01 μg/ml、16G2に関して0.01 μg/ml、および20E11に関して0.01 μg/mlである。リンパ芽球の最大(9440 cpm)およびバックグラウンド(1480 cpm)レベルをそれぞれ、プロットの上端および下端での水平の破線として表す。図3に示すように、5F2、16F2、16G2、および20E11抗体はヒトIL-12刺激PHA活性化リンパ芽球増殖を少なくとも90%阻害することができた。対照的に、図3に示すように、これまでに同定された抗ヒトIL-12 p75特異的抗体20C2(チッゾナイト(Chizzonite)ら、Cytokine, 6:A82a(1994))は、ヒトIL-12生物活性を実質的に阻害することができない。
【0053】
さらに、図4に示すように、5F2、16F2、16G2、および20E11は、0.5 ng/mlアカゲザルIL-12によって刺激したPHA活性化ヒトリンパ芽球の増殖を強く阻害し、ヒトIL-12刺激増殖に関して認められた結果と類似のIC50を示した。対照的に20C2は、アカゲザルIL-12刺激増殖に対してごくわずかな阻害作用を示したに過ぎない。したがって、抗体5F2、16F2、16G2、および20E11は、アカゲザルIL-12と良好な交叉反応性を示すが、20C2の交叉反応性ははるかに弱いように思われる。これらのモノクローナル抗体のいずれも、IL-2誘発増殖を阻害せず、このことは、IL-12刺激増殖に及ぼすそれらの作用がIL-12に特異的であって、細胞増殖の全般的阻害によるものではないことを示した。
【0054】
実施例13
インターフェロン-γ合成アッセイ法
インターフェロン-γ(IFN-γ)合成は、上記のように4日目のPHA活性化ヒトリンパ芽球を用いて誘導した。用いた培地は、天然のヒトIL-12の調製に関してRPMIおよび上記のように添加し、さらにヒトAB血清の代わりに5%熱不活化(56℃、30分)ウシ胎児血清(ハイクローン、ローガン、ユタ州)を含むダルベッコ改変イーグル培地の1:1混合液であった。培養1 mlずつ2個を24ウェル組織培養プレート(コスター社)のウェルに加えた。それぞれのウェルにPHA活性化リンパ芽球5×105個、0.25 ng/ml精製ヒトIL-12、20 単位/ml組換え型ヒトIL-2、1 ng/ml組換え型ヒトIL-1β(ホフマンラロシュ社のR.チッゾナイト(R. Chizzonite)博士からの供与)、および抗ヒトIL-12抗体の表示の濃度を加えた。最初に、リンパ芽球を除く全ての試薬をウェルに加えて、37℃で30分インキュベートし、その後リンパ芽球を加えた。次に培養を5%CO2を含む空気の湿潤大気中で37℃で24時間インキュベートした。この期間の終了時に培養上清液を遠心によって回収して、IFN-γの含有量をELISAを用いてアッセイした。リンパ芽球を含む培養においてIL-2+IL-1によって産生されたIFN-γの量は、IL-2+IL-1のほかに0.25 ng/ml IL-12を含む培養において産生された場合の常に15%以下であって、たいていの場合5%未満であった。
【0055】
ヒトIFN-γを測定するためのELISAは、エンドゲン社(ウォバーン、マサチューセッツ州)の抗ヒトIFN-γモノクローナル抗体を用いた。ヌンクEIAプレート(フィッシャー)を、1μg/ml抗ヒトIFN-γ(エンドゲン#M-700A)のコーティング緩衝溶液(0.015 M Na2CO3+0.035 M NaHCO3を含む蒸留水(pH 9.6))100 μl/ウェルで4℃で一晩コーティングした。翌朝、コーティング緩衝液をウェルから振り落とし、1%ウシ血清アルブミン(シグマ社)を含むダルベッコ燐酸緩衝生理食塩液(D-PBS;フィッシャー社)200 μl/ウェルを加えることによってウェルをブロックした。室温で1時間インキュベートした後、0.05%Tween20(シグマ社)を含むD-PBSでプレートを洗浄して、組換え型ヒトIFN-γ標準物質(エンドゲン社)またはアッセイ緩衝液で希釈した培養上清(D-PBS+0.5%ウシ血清アルブミン+0.05%Tween20)100 μlアリコットをウェルに加えた。次にプレートを振とうしながら室温で2時間インキュベートした。この後、プレートを再度洗浄して、各ウェルに300 ng/mlビオチン結合抗ヒトIFN-γ(エンドゲン社#M-701-B)のアッセイ緩衝溶液100 μlを加えた。プレートを37℃で1時間インキュベートした後洗浄した。アッセイ緩衝液で1000倍に希釈したストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ(シグマ社)100 μlを各ウェルに加えて、プレートを37℃で30分インキュベートした。プレートを再度洗浄して、TMBペルオキシダーゼ基質およびペルオキシダーゼB溶液の1:1混合液(カークガード&ペリー・ラボラトリーズ、ガイサーズバーグ、メリーランド州、アメリカ)100 μlアリコットを加えることによって顕色させた。反応は〜12分後に1 M H3PO4 50 μl/ウェルを加えることによって停止させ、650 nmでのバックグラウンドを差し引いて450 nmで吸光度を読みとった。
【0056】
実施例14
抗ヒトIL-12モノクローナル抗体によるサイトカイン刺激インターフェロン-γ産生の阻害
0.25 ng/mlヒトIL-12によって刺激したPHA活性化ヒトリンパ芽球によるIFN-γの産生は、抗体5F2、16F2、16G2、および20E11によって用量依存的に阻害された(図5)。これらの抗ヒト抗体の効力を、0.25 ng/mlヒトIL-12刺激IFN-γ産生における50%の最大阻害を生じる濃度(IC50)として定義すると、5F2に関して0.02 μg/ml、16F2に関して0.02 μg/ml、16G2に関して0.01 μg/ml、および20E11に関して0.02 μg/mlである。これらの抗ヒトヘテロダイマー特異的IL-12抗体は、0.5 μg/mlで用いると、IL-12刺激IFN-γ産生の90%以上を阻害することができた。対照的に、これまでに同定された抗ヒトIL-12 p75特異的抗体20C2(チッゾナイト(Chizzonite)ら、Cytokine, 6:A82a(1994))は作用がより弱く、IL-12刺激IFN-γ産生を0.5 μg/ml以下の濃度で65%以上阻害することができない。
【0057】
実施例15
抗ヒトIL-12抗体産生ハイブリドーマ細胞株に存在する抗体重鎖の可変領域をコードする遺伝子の配列分析
ウルトラスペックRNA単離システムを用いて製造元のプロトコールに従って(バイオテック、ハウストン、テキサス州、アメリカ)、ハイブリドーマ細胞から総RNAを抽出した。一本鎖cDNAを20 μl容量中の10 μgの総RNAおよびオリゴ-dTプライマーから合成した。ダッタマジュンダール(Dattamajumdar)ら(A. K. Dattamajumdar)ら、Immunogenetics 43:141〜151(1996))によって報告されたように、フレームワーク1および4の配列情報に従ってデザインしたプライマーを用いて、cDNA反応混合液4μlアリコットをマウスIgG重鎖可変領域のPCR増幅の鋳型として用いた。30サイクルPCR反応をアニーリング温度50℃を用いて実施した。全PCR反応物をフェノール抽出して、エタノール沈殿させ、1%低温溶解アガロースゲル上で流してアンプリコンを単離した。DNA断片をゲルから切り出して、70℃で融解し、5μlを30サイクルPCR反応において再増幅させて、より多くの材料を生成した。再増幅されたアンプリコンをゲル精製して、アプライドバイオシステムズ・インコーポレイテッド自動シークエンサーによって、蛍光に基づくサンガー・シークエンシング法を用いてシークエンシングした。
【0058】
実施例16
抗ヒトIL-12モノクローナル抗体重鎖の可変領域におけるヌクレオチドおよび推定アミノ酸配列
ハイブリドーマ細胞株HIL-12F3-16G2およびHIL-12F3-20E11によって産生されたIL-12抗体のフレームワーク領域(FR)1、相補性決定領域(CDR)1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4を含む免疫グロブリン重鎖遺伝子の可変領域の一部のヌクレオチド配列、およびその推定アミノ酸配列をそれぞれ、図6および図7に示す。CDR配列を下線で示す。利用できる配列情報を比較すると、ハイブリドーマHIL-12F3-16G2およびHIL-12F3-20E11によって産生された抗体の重鎖は、DNAレベルで94%の相同性およびアミノ酸レベルで93%の類似性を示すことが示された。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】ハイブリドーマHIL-12F3-5F2(本明細書において「5F2」と呼ぶ)、HIL-12F3-16F2(本明細書において「16F2」と呼ぶ)、HIL-12F3-16G2(本明細書において「16G2」と呼ぶ)、HIL-12F3-20E11(本明細書において「20E11」と呼ぶ)、およびHIL-12F1-17E2(本明細書において、「17E2」と呼ぶ)(白いバー)の上清に含まれる抗体による125I-標識ヒトIL-12の捕獲を示すグラフである。免疫沈降反応の際に非標識ヒトIL-12 p40サブユニットが存在しても(黒いバー)、モノクローナル抗体5F2、16F2、16G2、および20E11による125I-標識ヒトIL-12の捕獲は阻害されず、このことはこれらの抗体がIL-12 p40サブユニットのみに対しては高い親和性を有しないことを示している。
【図2】p75ヘテロダイマー特異的抗ヒトIL-12モノクローナル抗体20C2、16G2、16F2、20E11、および5F2の等電点電気泳動パターンを示す。図2に示すように、モノクローナル抗体20C2、20E11および5F2は、独自の免疫グロブリンである。モノクローナル抗体16G2および16F2は、等電点電気泳動では同一であるように思われるが、いずれも20C2、20E11および5F2とは異なる。
【図3】p75ヘテロダイマー特異的IL-12モノクローナル抗体20C2(+)、16G2(白い三角)、16F2(白い丸)、20E11(太い十字)、および5F2(黒い三角)による、天然のヒトIL-12刺激PHA活性化ヒトリンパ芽球の増殖の阻害を示すプロットである。天然のヒトIL-12刺激PHA活性化ヒトリンパ芽球増殖の阻害は、図3において9940 cpmでの水平の破線として示すように、IL-12抗体の非存在下における0.25 ng/mlヒトIL-12刺激PHA活性化ヒトリンパ芽球の増殖のレベル、および図3に1480 cpmでの水平の破線として示すように、PHA活性化ヒトリンパ芽球の増殖のバックグラウンドレベル、すなわちIL-12およびIL-12抗体の双方が存在しない場合を考慮して決定した。図3に示すように、IL-12モノクローナル抗体、16G2(白い三角)、16F2(白い丸)、20E11(太い十字)、および5F2(黒い三角)は、0.25 ng/mlヒトIL-12刺激PHA活性化リンパ芽球の増殖を少なくとも90%阻害する。対照的に、図3に示すように、以前から知られている20C2(+)抗体は、IL-12刺激PHA活性化ヒトリンパ芽球増殖を実質的に阻害しない。
【図4】本発明のp75へテロダイマー特異的IL-12モノクローナル抗体16G2(白い三角)、16F2(白い丸)、20E11(太い十字)、および5F2(黒い三角)によるアカゲザルIL-12刺激PHA活性化ヒトリンパ芽球増殖の阻害を、以前から知られている20C2(+)抗体と比較したプロットである。 0.5 ng/mlアカゲザルIL-12の存在下およびIL-12抗体の非存在下でのリンパ芽球の増殖のレベルは、プロットの上端での水平方向の破線によって示される。リンパ芽球増殖のバックグラウンドレベル、すなわちIL-12およびIL-12抗体の双方の非存在下でのレベルは、プロットの下端での水平方向の破線によって示す。図4に示すように、本発明の抗体は、アカゲザルIL-12刺激PHA活性化リンパ芽球増殖の強力な阻害剤であるが、これとは対照的に20C2(+)抗体は、アカゲザルIL-12刺激リンパ芽球増殖に及ぼす阻害作用が最小である。
【図5】p75ヘテロダイマー特異的モノクローナル抗体、16F2(白い丸)、16G2(黒い四角)、20E11(黒い三角)、5F2(黒い丸)および20C2(*)によるIFN-γ産生の阻害を示すプロットである。図5に示すように、抗体16F2(白い丸)、16G2(黒い四角)、20E11(黒い三角)、5F2(黒い丸)は、0.25 ng/mlヒトIL-12刺激IFN-γ産生を少なくとも90%阻害する。プロットの下端での水平方向の破線は、IL-12の非存在下でのバックグラウンドIFN-γ産生を表す。対照的に、図5に示すように、20C2(*)モノクローナル抗体は、0.25 ng/ml IL-12刺激IFN-γ産生を65%以上阻害することができない。
【図6】p75ヘテロダイマー特異的16G2抗体の重鎖可変領域の一部をコードするヌクレオチド配列、およびこのヌクレオチド配列から推定されるアミノ酸配列である。
【図7】p75ヘテロダイマー特異的20E11抗体の重鎖可変領域の一部をコードするヌクレオチド配列、およびこのヌクレオチド配列から推定されるアミノ酸配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
p35サブユニットおよびp40サブユニットを含む、ヒトIL-12 p75ヘテロダイマーに対する、以下の特徴を有する抗体:
(a)ヒトIL-12のp75ヘテロダイマーによって示されるエピトープと免疫学的に反応するが、p40サブユニットによって示されるいかなるエピトープとも免疫学的に反応しない;および
(b)IL-12のp35サブユニットまたはp40サブユニットをコードする遺伝子を欠損する哺乳動物、好ましくはマウスから製造される。
【請求項2】
p75ヘテロダイマーを形成するp35サブユニットおよびp40サブユニットを含むモノクローナル抗体であって、以下の特徴を有するヒトIL-12に対するモノクローナル抗体:
(a)ヒトIL-12のp75ヘテロダイマーによって示されるエピトープと免疫学的に反応するが、p40サブユニットによって示されるいかなるエピトープとも免疫学的に反応しない;および
(b)ヒトIL-12生物活性の少なくとも約90%を中和する。
【請求項3】
請求項2記載の抗体であって、抗体の濃度が0.5 μg/mlでありヒトIL-12の濃度が0.25 ng/mlである、IL-12刺激PHA活性化ヒトリンパ芽球増殖を阻害することによって、ヒトIL-12の生物活性の少なくとも約90%を中和する抗体。
【請求項4】
請求項2記載の抗体であって、抗体の濃度が0.5 μg/mlでありヒトIL-12の濃度が0.25 ng/mlである、IL-12刺激IFN-γ産生を阻害することによって、抗体がヒトIL-12の生物活性の少なくとも約90%を中和する抗体。
【請求項5】
アカゲザルIL-12と交叉反応する、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
マウスの細胞株から製造される、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項1から6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
抗体がハイブリドーマ、特にATCC指定番号HB-12446、HB-12447、HB-12448、またはHB-12449を有するハイブリドーマによって製造される、請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
抗体がヒト化されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の抗体を製造するハイブリドーマ。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の抗体を少なくとも1つ含む薬学的組成物。
【請求項12】
p35サブユニットおよびp40サブユニットを含む、ヒトIL-12 p75ヘテロダイマーと選択的に免疫学的に反応する抗体を製造する方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)抗体を製造するために、ヒトIL-12 p75ヘテロダイマーによってp35サブユニットまたはp40サブユニットをコードする遺伝子を欠損する哺乳動物を免疫する段階;
(b)免疫した哺乳動物から抗体を得る段階;
(c)選択的に結合する抗体を得るために、抗体がp75ヘテロダイマーによって示されるエピトープに選択的に結合することができるか否かをスクリーニングする段階。
【請求項13】
p35サブユニットおよびp40サブユニットを含む、ヒトIL-12 p75ヘテロダイマーと選択的に免疫学的に反応するモノクローナル抗体を製造する方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)抗体を製造するために、ヒトIL-12 p75ヘテロダイマーによって、p35サブユニットまたはp40サブユニットをコードする遺伝子を欠損する哺乳動物を免疫する段階;
(b)免疫した動物から抗体産生細胞を回収する段階;
(c)該細胞からモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを製造し、モノクローナル抗体を得る段階;
(d)選択的に結合するモノクローナル抗体を得るために、該ハイブリドーマによって製造される該モノクローナル抗体が、p75ヘテロダイマーによって示されるエピトープに選択的に結合するか否かをスクリーニングする段階。
【請求項14】
ハイブリドーマから製造された抗体が、アカゲザルIL-12との交叉反応能に関してさらにスクリーニングおよび選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
請求項12から14のいずれか一項に記載のプロセス、または請求項12から14のいずれか一項に記載のプロセスを含むプロセスによって製造される、請求項1から9のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項16】
治療的活性物質として請求項1から9のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項17】
免疫メカニズムを通じて媒介される病態を有する疾患、特に、IL-12生物活性の増加に関連し、その結果、例えば、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、自己免疫性真性糖尿病、ならびにクローン病および潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患(IBD)などの、自己免疫疾患のようなTh1-型のヘルパー細胞活性の異常が起こる疾患を制御する薬剤の調製における、請求項1から9のいずれか一項に記載の抗体の使用。
【請求項18】
本明細書においてこれまでに記載した発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−197008(P2009−197008A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98976(P2009−98976)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【分割の表示】特願2000−528602(P2000−528602)の分割
【原出願日】平成11年1月15日(1999.1.15)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】