説明

ヒドロキシアルキルトリエチレンジアミン類の製造方法

【課題】多段階の反応が不要であり、発火の危険性が高い還元剤を用いることなく、簡便且つ安全にヒドロキシアルキルトリエチレンジアミン類を製造する方法の提供。
【解決手段】


(式中、R、Rは各々独立して、水素原子、メチル基又はエチル基を表す。m、nは各々独立して0〜2の整数を表す。ただし、1≦m+n<4である。)で示されるヒドロキシアルキルピペラジン類と、エチレングリコール、2−アミノエタノール、1,2ープロパンジオールなどから選択される化合物を、酸触媒の存在下で分子間縮合反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒドロキシアルキルトリエチレンジアミン類の製造方法に関する。ヒドロキシアルキルトリエチレンジアミン類は、医農薬中間体、有機合成用触媒、化学吸着剤、抗菌剤等への利用が期待される化合物である。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシアルキルトリエチレンジアミン類の一種である、2−ヒドロキシメチルトリエチレンジアミンの製造方法としては、ピペラジンと2,3−ジブロモプロパン酸エチルとを反応させて1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン−2−カルボン酸エチルを調製し、次いで得られたエステルを還元して1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン−2−メタノール(2−ヒドロキシメチルトリエチレンジアミン)を得る方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献1によれば、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン−2−メタノールから誘導される1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタ−2−イルメチルベンゾアート誘導体が、中枢神経のレベル、胃腸間系のレベル、心血管系のレベル又は泌尿器系のレベルのいずれであろうと5−HT及び/又は5−HT受容体が関与する異常の治療又は予防に用いられる旨が記載されている(特許文献1、第11頁参照)。
【0004】
しかしながら、同公報に記載された製造方法は、第一工程において副生塩が大量に生成するため、精製が非常に煩雑になる他、低い基質濃度が必要となるため生産性に劣る欠点がある。また第二工程では、還元剤として発火の危険性が高い水素化リチウムアルミニウムを使用するため、工業的にも好ましいとは言えない。また高価な反応基質を使用する事から実用的とは言えない状況にある。
【0005】
【特許文献1】特表2001−504855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、多段階の反応が不要であり、発火の危険性が高い還元剤を用いることなく、簡便且つ安全にヒドロキシアルキルトリエチレンジアミン類を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ヒドロキシアルキルトリエチレンジアミン類の製造方法について、鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下に示すとおりのヒドロキシアルキルトリエチレンジアミン類の製造方法である。
【0009】
[1]下記式(1)
【0010】
【化1】

(式中、R、Rは各々独立して、水素原子、メチル基又はエチル基を表す。m、nは各々独立して0〜2の整数を表す。ただし、1≦m+n<4である。)
で示されるヒドロキシアルキルピペラジン類と、下記式(2)
【0011】
【化2】

(式中、R、Rは各々独立して、水酸基又はアミノ基を表し、R、Rは各々独立して、水素原子、メチル基又はエチル基を表す。)
で示される化合物を、酸触媒の存在下で分子間縮合反応させることを特徴とする下記式(3)
【0012】
【化3】

(式中、R、R、R、R、m、nは、上記と同じ定義である。)
で示されるヒドロキシアルキルトリエチレンジアミン類の製造方法。
【0013】
[2]上記式(1)で示されるヒドロキシアルキルピペラジン類が、2−ヒドロキシメチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−(1−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシプロピル)ピペラジン、及び2−(2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル)ピペラジンからなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、かつ上記式(2)で示される化合物がエチレングリコール、2−アミノエタノール、エチレンジアミン、1,2−プロパンジオール、D−2−アミノ−1−プロパノール、L−2−アミノ−1−プロパノール、D−1−アミノ−2−プロパノール、L−1−アミノ−2−プロパノール、及び1,2−ジアミノプロパンからなる群より選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする上記[1]に記載の製造方法。
【0014】
[3]上記式(2)で示される化合物と上記式(1)で示されるヒドロキシアルキルピペラジン類とのモル比([一般式(2)で示される化合物]/[一般式(1)で示されるヒドロキシアルキルピペラジン類]のモル比)が1〜20の範囲であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の製造方法。
【0015】
[4]酸触媒がリン含有物質を含むことを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の製造方法。
【0016】
[5]酸触媒がゼオライトであることを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の製造方法によれば、副生塩の生成が極めて少ない上に、還元性の化合物を用いないので、従来方法に比べて簡便且つ安全にヒドロキシアルキルトリエチレンジアミン類を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明の製造方法は、上記式(1)で示されるヒドロキシアルキルピペラジン類と上記式(2)で示される化合物を、酸触媒の存在下で分子間縮合反応させて、上記式(3)で示されるヒドロキシアルキルトリエチレンジアミン類を得ることをその特徴とする。
【0020】
上記式(1)〜(3)中、R、R、R、Rは、各々独立して、水素原子、メチル基、又はエチル基を表す。また、上記式(1)、(3)中、m、nは各々独立して0〜2の整数を表す。ただし、1≦m+n<4である。さらに、上記式(2)中、R、Rは水酸基又はアミノ基を表す。
【0021】
上記式(1)で示されるヒドロキシアルキルピペラジン類としては、特に限定するものではないが、例えば、2−ヒドロキシメチルピペラジン、2−(1−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−(1−ヒドロキシ−1−エチルメチル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−エチルブチル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−2−エチルブチル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシプロピル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−エチルエチル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシブチル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−メチルブチル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−エチルプロピル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシプロピル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジメチルブチル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジエチルペンチル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジメチルプロピル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−3−ブチル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジエチルプロピル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシペンチル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジメチルペンチル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジエチルブチル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシプロピル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1−メチルプロピル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシー1,2−ジメチルブチル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−2−メチルブチル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1−エチルプロピル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−2−エチルペンチル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1−メチル−2−エチルペンチル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1−エチル−2−メチルブチル)ピペラジン等が挙げられる。これらのうち、2−ヒドロキシメチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−(1−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシプロピル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル)ピペラジンが好適に用いられる。
【0022】
上記式(1)で示されるヒドロキシアルキルピペラジン類は、特に限定するものではないが、例えば、エチレンジアミン誘導体をブロモマロン酸ジエチルと反応させた後に、還元、脱保護させることにより得られる(J.Med.Chem,36,2075(1993)参照)。また、ピペラジンカルボン酸塩酸塩を触媒存在下で還元して得られたもの等を用いてもよい。
【0023】
上記式(2)で示される化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、エチレングリコール、2−アミノエタノール、1,2−ジアミノエタン、1,2−プロパンジオール、D−2−アミノ−1−プロパノール、L−2−アミノ−1−プロパノール、D−1−アミノ−2−プロパノール、L−1−アミノ−2−プロパノール、1,2−ジアミノプロパン、1,2−ブタンジオール、D−2−アミノ−1−ブタノール、L−2−アミノ−1−ブタノール、D−1−アミノ−2−ブタノール、L−1−アミノ−2−ブタノール、1,2−ジアミノブタン、2,3−ブタンジオール等が挙げられる。上記式(2)中のR、Rとしては、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0024】
本発明において得られる、上記式(3)で示されるヒドロキシアルキルトリエチレンジアミン類としては、特に限定するものではないが、例えば、2−ヒドロキシメチルピペラジン、2−ヒドロキシメチル−5−メチルトリエチレンジアミン、2−ヒドロキシメチル−6−メチルトリエチレンジアミン、2−ヒドロキシメチル−5,6−ジメチルトリエチレンジアミン、2−(1−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−(1−ヒドロキシエチル)−5−メチルピペラジン、2−(1−ヒドロキシエチル)−6−メチルピペラジン、2−(1−ヒドロキシエチル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(1−ヒドロキシ−1−エチルメチル)ピペラジン、2−(1−ヒドロキシ−1−エチルメチル)−5−メチルピペラジン、2−(1−ヒドロキシ−1−エチルメチル)−6−メチルピペラジン、2−(1−ヒドロキシ−1−エチルメチル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシエチル)−5−メチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシエチル)−6−メチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシエチル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル)−5−メチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル)−6−メチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−エチルブチル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−エチルブチル)−5−メチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−エチルブチル)−6−メチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−エチルブチル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−5−メチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−6−メチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−2−エチルブチル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−2−エチルブチル)−5−メチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−2−エチルブチル)−6−メチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−2−エチルブチル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−メチルエチル)−5−メチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−メチルエチル)−6−メチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−メチルエチル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシプロピル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシプロピル)−5−メチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシプロピル)−6−メチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシプロピル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−エチルエチル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−エチルエチル)−5−メチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−エチルエチル)−6−メチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−エチルエチル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシブチル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシブチル)−5−メチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシブチル)−6−メチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシブチル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−メチルブチル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−メチルブチル)−5−メチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−メチルブチル)−6−メチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−メチルブチル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−エチルプロピル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−エチルプロピル)−5−メチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−エチルプロピル)−6−メチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−エチルプロピル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシプロピル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシプロピル)−5−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシプロピル)−6−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシプロピル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジメチルブチル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジメチルブチル)−5−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジメチルブチル)−6−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジメチルブチル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジエチルペンチル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジエチルペンチル)−5−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジエチルペンチル)−6−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジエチルペンチル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジメチルプロピル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジメチルプロピル)−5−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジメチルプロピル)−6−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジメチルプロピル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−3−ブチル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−3−ブチル)−5−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−3−ブチル)−6−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−3−ブチル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジエチルプロピル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジエチルプロピル)−5−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジエチルプロピル)−6−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジエチルプロピル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシペンチル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシペンチル)−5−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシペンチル)−6−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシペンチル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジメチルペンチル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジメチルペンチル)−5−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジメチルペンチル)−6−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジメチルペンチル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジエチルブチル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジエチルブチル)−5−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジエチルブチル)−6−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1,2−ジエチルブチル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシプロピル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシプロピル)−5−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシプロピル)−6−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシプロピル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1−メチルプロピル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1−メチルプロピル)−5−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1−メチルプロピル)−6−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1−メチルプロピル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシー1,2−ジメチルブチル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシー1,2−ジメチルブチル)−5−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシー1,2−ジメチルブチル)−6−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシー1,2−ジメチルブチル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−2−メチルブチル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−2−メチルブチル)−5−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−2−メチルブチル)−6−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−2−メチルブチル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1−エチルプロピル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1−エチルプロピル)−5−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1−エチルプロピル)−6−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1−エチルプロピル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−2−エチルペンチル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−2−エチルペンチル)−5−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−2−エチルペンチル)−6−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−2−エチルペンチル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1−メチル−2−エチルペンチル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1−メチル−2−エチルペンチル)−5−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1−メチル−2−エチルペンチル)−6−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1−メチル−2−エチルペンチル)−5,6−ジメチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1−エチル−2−メチルブチル)ピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1−エチル−2−メチルブチル)−5−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1−エチル−2−メチルブチル)−6−メチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−1−エチル−2−メチルブチル)−5,6−ジメチルピペラジン等が挙げられる。これらのヒドロキシアルキルトリエチレンジアミン類は、上記した好適な式(1)で示される化合物と、上記した好適な式(2)で示される化合物とを分子間縮合反応させることにより得ることができる。
【0025】
本発明において、酸触媒としては、例えば、金属リン酸塩、無機リン化合物、有機リン化合物等のリン含有物質、窒素含有物質、硫黄含有物質、ニオブ含有物質、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、ゼオライト、ヘテロポリ酸、第4B族金属酸化物縮合触媒、第6B族金属含有縮合触媒、ブレンステッド酸、ルイス酸、リンアミド等が挙げられる。本発明においては、これらのうち金属リン酸塩、無機リン化合物、有機リン化合物等のリン含有物質が特に好ましい。
【0026】
金属リン酸塩としては、従来公知のものでよく、特に制限はないが、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸などの金属塩が挙げられる。リン酸と塩を形成する金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、パラジウム、銀、スズ、鉛等が挙げられる。
【0027】
無機リン化合物としては、従来公知のものでよく、特に制限はないが、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸や、ピロリン酸、トリポリリン酸等の縮合リン酸、メタリン酸等を挙げることができる。
【0028】
有機リン化合物としては、従来公知のものでよく、特に制限はないが、例えば、リン酸メチル等のリン酸エステル、リン酸ジメチル等のリン酸ジエステル、リン酸トリフェニル等のリン酸トリエステル、亜リン酸メチル、亜リン酸フェニル等の亜リン酸エステル、亜リン酸ジフェニル等の亜リン酸ジエステル、亜リン酸トリフェニル等の亜リン酸トリエステル、フェニルホスホン酸等のアリールホスホン酸、メチルホスホン酸等のアルキルホスホン酸、メチル亜ホスホン酸等のアルキル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸等のアリール亜ホスホン酸、ジメチルホスフィン酸等のアルキルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸等のアリールホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸等のアルキルアリールホスフィン酸、ジメチル亜ホスフィン酸等のアルキル亜ホスフィン酸、ジフェニル亜ホスフィン酸等のアリール亜ホスフィン酸、フェニルメチル亜ホスフィン酸等のアルキルアリール亜ホスフィン酸、ラウリルアシッドホスフェイト、トリデシルアシッドホスフェイト、ステアリルアシッドホスフェイト等の酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルの塩類等を挙げることができる。
【0029】
ゼオライト触媒としては、従来公知のものでよく、特に制限はないが、例えば、米国特許第3,702,886号明細書に記載のZSM−5、米国特許第1,334,243号明細書に記載のZSM−8、米国特許第3,709,979号明細書に記載のZSM−11、米国特許第3,832,449号明細書に記載のZSM−12、米国特許第4,001,346号明細書に記載のZSM−21等が挙げられる。これらの中でも、ZSM−5が、触媒活性の面、工業的製造の面でより好ましい。
【0030】
本発明において、酸触媒として、これらから選ばれる一種又は二種以上を用いることができる。
【0031】
本発明の製造方法において、上記式(2)で示される化合物と上記式(1)で示されるヒドロキシアルキルピペラジン類とのモル比([上記式(2)で示される化合物]/[上記式(1)で示されるヒドロキシアルキルピペラジン類]のモル比)は、特に限定するものではないが、1〜20とすることが好ましく、より好ましくはモル比1〜10である。モル比1以上とすると上記式(3)で示されるヒドロキシアルキルトリエチレンジアミン類の選択性が向上する。モル比20以下とすると上記式(3)で示されるヒドロキシアルキルトリエチレンジアミン類の生産性が向上する。
【0032】
本発明の製造方法において、上記式(1)で示されるヒドロキシアルキルピペラジン類と上記式(2)で示される化合物は同時に反応器内に導入してもよいし、予め混合した後に、原料溶液として反応器に導入してもよい。
【0033】
本発明の製造方法における希釈剤としては、特に限定するものではないが、窒素ガス、水素ガス、アンモニアガス、水蒸気、炭化水素等の不活性ガスや、水、不活性な炭化水素等の不活性溶媒が挙げられ、これらのうち単独或は複数を用いて、原料を希釈し、反応を進行させることができる。これらの希釈剤は任意の量で使用でき、特に限定するものではないが、上記式(1)で示されるヒドロキシアルキルピペラジン類/希釈剤のモル比は、特に限定するものではないが、0.001〜1の範囲とすることが好ましい。モル比0.001以上とすると、上記式(3)で示されるヒドロキシアルキルトリエチレンジアミン類の生産性が向上する。また、モル比1以下とすると、上記式(3)で示されるヒドロキシアルキルトリエチレンジアミン類の選択性が向上する
本発明の製造方法において、希釈剤は、上記式(1)で示されるヒドロキシアルキルピペラジン類と同時に反応器内に導入してもよいし、予め上記式(1)で示されるヒドロキシアルキルピペラジン類を希釈剤に溶解させた後に、原料溶液として反応器に導入してもよい。
【0034】
本発明の製造方法において、反応が気相で行われる場合、通常は、窒素ガス、アルゴンガス等の反応に不活性なガスの共存下で行われる。かかるガスの使用量は上記式(1)で示されるヒドロキシアルキルピペラジン類1モルに対して、通常0〜20モル、好ましくは0〜10モルの範囲である。
【0035】
本発明の製造方法において、反応温度は、通常150〜500℃、好ましくは200〜400℃の範囲である。500℃以下とすることで、原料及び生成物の分解が抑制されるため、上記式(3)で示されるヒドロキシアルキルトリエチレンジアミン類の選択率が向上し、150℃以上とすることで十分な反応速度が得られる。
【0036】
本発明の製造方法においては、反応終了後、上記式(3)で示されるヒドロキシアルキルトリエチレンジアミン類を含有する反応混合ガスを、水又は酸性水溶液に通じて溶解させ、上記式(3)で示されるヒドロキシアルキルトリエチレンジアミン類を含有する反応混合液を得る。そして、得られた反応混合液から、抽出、濃縮等の所望の分離精製操作により、上記式(3)で示されるヒドロキシアルキルトリエチレンジアミン類を得ることができる。また、ハロゲン化水素酸を用いて、ハロゲン化水素酸塩として得ることもできる。
【実施例】
【0037】
本発明を以下の参考例及び実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。尚、ガスクロマトグラフ分析(以下、「GC分析」と略する。)には、島津製作所製GC分析装置GC−17A型を用いた。
【0038】
調製例1(ジヒドロキシプロピルエチレンジアミンの合成).
10Lオートクレーブに、エチレンジアミン(東ソー社製)1202g(20モル)、溶媒としてメタノール1000mlを仕込み、窒素雰囲気下で3−クロロ−1,2−プロパンジオール(東京化成工業社製)663g(6モル)を2時間かけて滴下した。オートクレーブを加熱することで、反応液温度は、100℃に調整された。この時の反応容器圧力は0.5MPaであった。クロロプロパンジオールの滴下終了後、熟成反応を4時間行った。この反応液を48%水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、濾過操作を行った。この操作により得た濾液を、エバポレートして低沸分を留去した後、蒸留精製した結果、微黄色固体833gを得た。この物質は2,3−ジヒドロキシプロピルエチレンジアミンであることが、ガスクロマトグラフィー質量分析及び核磁気共鳴分析によって確認された。
【0039】
調製例2(2−ヒドロキシメチルピペラジンの合成).
調製例1で得られた2,3−ジヒドロキシプロピルエチレンジアミン124g(0.92モル)、溶媒として水500ml、触媒としてラネー銅(川研ファインケミカル社製、CDT−60)6.2gを1000mlオートクレーブに充填し、水素雰囲気下で165℃に加熱した。この時の反応容器圧力は3.5MPaであった。反応時間は4時間であった。得られた反応液をろ紙を用いてろ過操作を行った。得られたろ液を、エバポレートして低沸分を留去した後、蒸留精製した。得られた蒸留液を、テトラヒドロフランを溶媒として再結晶した結果、微黄色固体74.8gが得られた。この物質は、2−ヒドロキシメチルピペラジンであることが、ガスクロマトグラフィー質量分析及び核磁気共鳴分析によって確認された。
【0040】
実施例1.
直径15mmの石英管に、固形化して粒径1.0〜1.4mmに分粒したリン酸アルミニウム(和光純薬工業社製、化学用)20ml、その上下部に長さ23.5cmの磁器ラシヒリング(直径3mm×長さ3mm×厚み1mm)を詰めた。触媒層の温度は380℃に保ち、上部より、原料液(2−ヒドロキシメチルピペラジン:エチレングリコール:水=0.83:4.17:95.0(重量比))を42.1g/Hrの速度で滴下した。得られた反応混合ガスをコンデンサーで冷却し、反応混合液を得た。反応混合液のGC分析の結果、ヒドロキシメチルピペラジン転化率は87%であり、2−ヒドロキシメチルトリエチレンジアミンが収率8.2%で得られた。
【0041】
実施例2.
直径15mmの石英管に、粒径1.0〜1.4mmに分粒したZSM−5ゼオライト(東ソー社製、HSZ−860HOA、Si/Al=37)20ml、その上下部に長さ23.5cmの磁器ラシヒリング(直径3mm×長さ3mm×厚み1mm)を詰めた。触媒層の温度は350℃に保ち、上部より、原料液(2−ヒドロキシメチルピペラジン:1,2−ジアミノエタン:水=0.49:2.43:97.09(重量比))を24.9g/Hrの速度で滴下した。得られた反応混合ガスをコンデンサーで冷却し、反応混合液を得た。反応混合液のGC分析の結果、ヒドロキシメチルピペラジン転化率は93%であり、2−ヒドロキシメチルトリエチレンジアミンが収率9.2%で得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(式中、R、Rは各々独立して、水素原子、メチル基又はエチル基を表す。m、nは各々独立して0〜2の整数を表す。ただし、1≦m+n<4である。)
で示されるヒドロキシアルキルピペラジン類と、下記式(2)
【化2】

(式中、R、Rは各々独立して、水酸基又はアミノ基を表し、R、Rは各々独立して、水素原子、メチル基又はエチル基を表す。)
で示される化合物を、酸触媒の存在下で分子間縮合反応させることを特徴とする下記式(3)
【化3】

(式中、R、R、R、R、m、nは、上記と同じ定義である。)
で示されるヒドロキシアルキルトリエチレンジアミン類の製造方法。
【請求項2】
上記式(1)で示されるヒドロキシアルキルピペラジン類が、2−ヒドロキシメチルピペラジン、2−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−(1−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシプロピル)ピペラジン、及び2−(2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル)ピペラジンからなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、かつ上記式(2)で示される化合物がエチレングリコール、2−アミノエタノール、エチレンジアミン、1,2−プロパンジオール、D−2−アミノ−1−プロパノール、L−2−アミノ−1−プロパノール、D−1−アミノ−2−プロパノール、L−1−アミノ−2−プロパノール、及び1,2−ジアミノプロパンからなる群より選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
一般式(2)で示される化合物と一般式(1)で示されるヒドロキシアルキルピペラジン類とのモル比([一般式(2)で示される化合物]/[一般式(1)で示されるヒドロキシアルキルピペラジン類]のモル比)が1〜20の範囲であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
酸触媒がリン含有物質を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
酸触媒がゼオライトであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の製造方法。