説明

ヒドロキシテトラヒドロ−ナフタレン誘導体の使用

本発明は、VR1活性に関連する疾患を処置するための医薬製剤の有効成分としてWO03/095420に記載されているヒドロキシ−テトラヒドロ−ナフタレニル尿素誘導体の、新しい用途に関する。本発明の新しい用途は、VR1活性に関連する疾患の予防および処置、特に、風邪、咳、くしゃみ、急性および慢性気管支炎を含む気管支炎、細気管支炎、鼻炎、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、粘膜炎、副鼻腔炎、アレルギー、煙草の煙、スモッグ、職場での高レベルの大気SOおよび窒素ガスなどの外的刺激に関連する障害、および気道反応亢進、乳製品不耐性、Loffler 肺炎、肺気腫、嚢胞性線維症、気管支拡張症、肺線維症、じん肺症、膠原病性脈管疾患、肉芽腫性疾患、喉頭炎、咽頭炎、肺炎、胸膜炎、持続性喘息および慢性喘息様気管支炎などの呼吸器疾患または障害の処置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、WO03/095420に記載されているヒドロキシ−テトラヒドロ−ナフタレニル尿素誘導体の、VR1活性に関連する疾患を処置するための医薬製剤の有効成分としての、新しい適応症での使用に関する。本発明のヒドロキシ−テトラヒドロ−ナフタレニル尿素誘導体は、VR1活性に関連する疾患の予防および処置、特に、風邪、咳、くしゃみ、急性および慢性気管支炎を含む気管支炎、細気管支炎、鼻炎、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、粘膜炎、副鼻腔炎、アレルギー、煙草の煙、スモッグ、職場での高レベルの大気SOおよび窒素ガスなどの外的刺激に関連する障害、および気道反応亢進、乳製品不耐性、Loffler 肺炎、肺気腫、嚢胞性線維症、気管支拡張症、肺線維症、じん肺症、膠原病性脈管疾患、肉芽腫性疾患、喉頭炎、咽頭炎、肺炎、胸膜炎、持続性喘息および慢性喘息様気管支炎などの呼吸器疾患または障害の処置に使用される。
【背景技術】
【0002】
バニロイド化合物は、バニリル基または機能的に同等な基の存在を特徴とする。いくつかのバニロイド化合物またはバニロイド受容体調節因子の例は、バニリン(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−ベンズアルデヒド)、グアヤコール(2−メトキシ−フェノール)、ジンゲロン(4−/4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル/−2−ブタノン)、オイゲノール(2−メトキシ4−/2−プロペニル/フェノール)およびカプサイシン(8−メチ−N−バニリル−6−ノネンアミド)である。
【0003】
なかんずく、「辛い」唐辛子の主要な刺激性成分であるカプサイシンは、C線維求心神経を脱感作させる特異的神経毒である。カプサイシンは、後根神経節(DRG)の細胞体またはC線維神経終末を含む求心感覚線維の神経終末に支配的に発現されるバニロイド受容体(VR1)と相互作用する[Tominaga M, Caterina MJ, Malmberg AB, Rosen TA, Gilbert H, Skinner K, Raumann BE, Basbaum AI, Julius D: The cloned capsaicin receptor integrates multiple pain-producing stimuli. Neuron. 21: 531-543, 1998]。VR1受容体は、最近クローニングされ [Caterina MJ, Schumacher MA, Tominaga M, Rosen TA, Levine JD, Julius D: Nature 389: 816-824, (1997)]、TRP(一過性受容体電位)チャネルファミリーと構造的に関連する6個の膜貫通ドメインを有する非選択的陽イオンチャネルとして同定された。VR1へのカプサイシンの結合は、ナトリウム、カルシウムおよび恐らくカリウムイオンをそれらの濃度勾配に沿って流れるようにし、初期脱分極および神経末端からの神経伝達物質の放出を引き起こす。従って、VR1は、病的状態または疾患において神経シグナルを誘起する化学および物理刺激の分子インテグレーター(integrator)と見ることができる。
【0004】
VR1活性と、疼痛、虚血および炎症性疾患などの疾患との関連を示す直接または間接的証拠が豊富に存在する(例えば、WO99/00115および00/50387)。さらに、VR1が、脊髄反射経路が損なわれているかまたは異常である患者の過活動膀胱に関与する反射シグナルを伝達することが立証された[De Groat WC: A neurologic basis for the overactive bladder. Urology 50 (6A Suppl): 36-52, 1997]。カプサイシンなどのVR1アゴニストを使用して神経伝達物質を涸渇させることによる求心神経の脱感作は、脊髄傷害および多発性硬化症に伴う膀胱機能不全の処置において、有望な結果をもたらすと示された [(Maggi CA: Therapeutic potential of capsaicin-like molecules - Studies in animals and humans. Life Sciences 51: 1777-1781, 1992) および (DeRidder D; Chandiramani V; Dasgupta P; VanPoppel H; Baert L; Fowler CJ: Intravesical capsaicin as a treatment for refractory detrusor hyperreflexia: A dual center study with long-term followup. J. Urol. 158: 2087-2092, 1997)]。
【0005】
VR1受容体の拮抗作用は、神経伝達物質放出の遮断を導き、VR1活性に関連する症状および疾患の予防および処置をもたらすと思われる。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、風邪、咳、くしゃみ、急性および慢性気管支炎を含む気管支炎、細気管支炎、鼻炎、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、粘膜炎、副鼻腔炎、アレルギー、煙草の煙、スモッグ、職場での高レベルの大気SOおよび窒素ガスなどの外的刺激に関連する障害、および気道反応亢進、乳製品不耐性、Loffler 肺炎、肺気腫、嚢胞性線維症、気管支拡張症、肺線維症、じん肺症、膠原病性脈管疾患、肉芽腫性疾患、喉頭炎、咽頭炎、肺炎、胸膜炎、持続性喘息および慢性喘息様気管支炎などの呼吸器疾患または障害の処置のための、WO03/095420(出典明示により本発明の説明の一部とする)に記載されているヒドロキシ−テトラヒドロ−ナフタレニル尿素誘導体に関する。
【0007】
風邪、咳、くしゃみ、急性および慢性気管支炎を含む気管支炎、細気管支炎、鼻炎、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、粘膜炎、副鼻腔炎、アレルギー、煙草の煙、スモッグ、職場での高レベルの大気SOおよび窒素ガスなどの外的刺激に関連する障害、および気道反応亢進、乳製品不耐性、Loffler 肺炎、肺気腫、嚢胞性線維症、気管支拡張症、肺線維症、じん肺症、膠原病性脈管疾患、肉芽腫性疾患、喉頭炎、咽頭炎、肺炎、胸膜炎、持続性喘息および慢性喘息様気管支炎などの呼吸器疾患または障害の処置のために、本発明で挙げられる特別に選択されたWO03/095420の化合物は、式(I)の化合物、その互変異性体または立体異性体、またはこれらの塩である:
【0008】
【化1】

式中、Xは、
【化2】

を表し、
式中、Yは直接結合を表すか、または、
【化3】

を表し、
ここで、RおよびRは、独立して、水素、クロロ、ブロモ、フルオロ、シクロペンチルアミノ、トリフルオロメチルまたはトリフルオロメトキシを表し;
、RおよびRは、各々水素を表し;そして、
およびZは、各々水素を表す。
【0009】
より好ましくは、該式(I)のヒドロキシ−テトラヒドロ−ナフタレニル尿素誘導体は、
N−[4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−N'−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)尿素;
N−(3−クロロフェニル)−N'−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)尿素;
N−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)−N'−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]尿素;
N−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)−N'−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]尿素;
N−(3,4−ジクロロフェニル)−N'−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)尿素;
N−[4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−N'−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル]尿素;
N−[4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−N'−[(7S)−7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル]尿素;
N−[4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−N'−[(7R)−7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル]尿素;
N−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)−N'−フェニル尿素;
N−(4−クロロフェニル)−N'−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)尿素;
N−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)−N'−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]尿素;
N−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)−N'−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]尿素;
【0010】
N−(3,4−ジクロロフェニル)−N'−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)尿素;
N−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)−N'−[4−(トリフルオロメトキシ)フェニル]尿素;
N−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)−N'−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル]尿素;
N−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)−N'−(2,4,6−トリメトキシベンジル)尿素;
N−(2,6−ジフルオロベンジル)−N'−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)尿素;
N−[(7R)−7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル]−N'−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]尿素;
N−[(7S)−7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル]−N'−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]尿素;
N−[(7R)−7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル]−N'−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル]尿素;
N−[(7S)−7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル]−N'−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル]尿素;
N−[2−(4−クロロフェニル)エチル]−N'−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)尿素;および
N−[3−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−N'−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)尿素
からなる群から選択される。
【0011】
さらに、本発明は、風邪、咳、くしゃみ、急性および慢性気管支炎を含む気管支炎、細気管支炎、鼻炎、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、粘膜炎、副鼻腔炎、アレルギー、煙草の煙、スモッグ、職場での高レベルの大気SOおよび窒素ガスなどの外的刺激に関連する障害、および気道反応亢進、乳製品不耐性、Loffler 肺炎、肺気腫、嚢胞性線維症、気管支拡張症、肺線維症、じん肺症、膠原病性脈管疾患、肉芽腫性疾患、喉頭炎、咽頭炎、肺炎、胸膜炎、持続性喘息および慢性喘息様気管支炎などの呼吸器疾患または障害の処置用の、WO03/095420に記載されているヒドロキシ−テトラヒドロ−ナフタレニル尿素誘導体の医薬の製剤に関する。
【0012】
さらに、本発明は、風邪、咳、くしゃみ、急性および慢性気管支炎を含む気管支炎、細気管支炎、鼻炎、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、粘膜炎、副鼻腔炎、アレルギー、煙草の煙、スモッグ、職場での高レベルの大気SOおよび窒素ガスなどの外的刺激に関連する障害、および気道反応亢進、乳製品不耐性、Loffler 肺炎、肺気腫、嚢胞性線維症、気管支拡張症、肺線維症、じん肺症、膠原病性脈管疾患、肉芽腫性疾患、喉頭炎、咽頭炎、肺炎、胸膜炎、持続性喘息および慢性喘息様気管支炎などの呼吸器疾患または障害の処置用の、式(I)の化合物、その互変異性体または立体異性体、またはそれらの塩の医薬の製剤に関する。
【0013】
好ましくは、WO03/095420に記載のヒドロキシ−テトラヒドロ−ナフタレニル尿素誘導体は、アレルギー性鼻炎の処置に使用される。
好ましくは、式(I)の化合物、その互変異性体または立体異性体、またはそれらの塩は、アレルギー性鼻炎の処置に使用される。
【0014】
本発明の式(I)の化合物を含むWO03/095420の化合物は、WO03/095420に記載の方法により製造できるが、これらに限定されない。
【0015】
式(I)で示される化合物またはその塩が構造中に不斉炭素を有する場合、それらの光学活性化合物およびラセミ混合物の使用も、本発明の範囲に包含される。
【0016】
式(I)で示される化合物の典型的な塩には、本発明の化合物と、無機もしくは有機酸、または有機もしくは無機塩基の反応により製造される塩が含まれる。かかる塩は、各々、酸付加塩および塩基付加塩として知られている。
【0017】
酸付加塩を形成する酸には、限定されないが、硫酸、リン酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などの無機酸、および、限定されないが、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、蓚酸、p−ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸などの有機酸が含まれる。
【0018】
塩基付加塩には、限定されないが、水酸化アンモニウム、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩などの無機塩基、および、限定されないが、エタノールアミン、トリエチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどの有機塩基から誘導されるものが含まれる。無機塩基の例には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムなどが含まれる。
【0019】
本発明の化合物またはその塩は、水和物および/または他の溶媒和物を形成していてもよい。これらの水和物および溶媒和物の使用は、本発明の範囲に含まれる。
【0020】
本発明の化合物は、限定されないが、通常および腸溶性被覆錠剤、カプセル剤、丸剤、粉末剤、顆粒剤、エリキシル剤、チンキ剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、固体および液体エアゾル剤および乳剤などの経口形態で投与し得る。それらはまた、限定されないが、静脈内、腹膜内、皮下、筋肉内などの、医薬分野の当業者に周知の非経腸形態で投与し得る。本発明の化合物は、適当な鼻腔内媒体の局所使用を介して鼻腔内形態で、または当業者に周知の経皮送達システムを使用して経皮経路で、または、経舌または頬側で、または吸入により、投与できる。
【0021】
本発明の化合物の使用を伴う投薬法は、限定されないが、受容者の年齢、体重、性別および健康状態、処置しようとする症状の重篤度、投与経路、受容者の代謝および排出機能のレベル、採用する用量形態、採用する特定の化合物およびその塩を含む様々な要因を考慮して、当業者により選択される。
【0022】
本発明の化合物は、好ましくは、投与に先立ち、1種またはそれ以上の医薬的に許容し得る補助剤と共に製剤される。補助剤は、限定されないが、担体、希釈剤、香味料、甘味料、滑沢剤、可溶化剤、懸濁化剤、結合剤、錠剤崩壊剤およびカプセル化材料などの不活性物質である。
【0023】
経口投与のために、有効成分を、限定されないが、乳糖、デンプン、ショ糖、ブドウ糖、炭酸ナトリウム、マンニトール、ソルビトール、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、メチルセルロースなどの経口用、非毒性、医薬的に許容し得る担体と;場合により、限定されないが、トウモロコシ、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタン・ガム、アルギニン酸などの崩壊剤と;そして、場合により、例えば、限定されないが、ゼラチン、天然糖、ベータ−ラクトース、トウモロコシ甘味料、天然および合成ゴム、アカシア、トラガカント、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、蝋などの結合剤と;そして、場合により、例えば、限定されないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、タルクなどの滑沢剤と、合わせ得る。
【0024】
粉末形態では、担体は、微粉化固体であり得、それを微粉化した有効成分と混合する。有効成分は、結合特性を有する担体と適当な割合で混合し得、錠剤を製造するのに望ましい形状とサイズに打錠し得る。粉末剤および錠剤は、好ましくは、約1ないし約99重量パーセントの、本発明の新規組成物である有効成分を含有する。適する固体担体は、マグネシウムカルボキシメチルセルロース、低融点蝋、ラクトースおよびココアバターである。
【0025】
滅菌液体製剤には、懸濁剤、乳剤、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。有効成分は、滅菌水、滅菌有機溶媒、または滅菌水と滅菌有機溶媒の両方の混合物などの、医薬的に許容し得る担体に溶解または懸濁できる。
【0026】
有効成分はまた、例えば、水性プロピレングリコールなどの適する有機溶媒に溶解することができる。他の組成物は、微粉化された有効成分を、水性デンプンもしくはナトリウムカルボキシメチルセルロース溶液または適当な油に分散させることにより作成できる。
【0027】
鼻腔内投与用に、本発明の医薬組成物を、点鼻薬により、鼻用エアロゾルにより、または、吸入用粉末剤として、投与し得る。
【0028】
適する本発明の組成物の点鼻スプレー製剤は、医薬製剤の当業者に周知の技法に従い、容易に製造できる。例えば、液剤または乳剤の製剤は、Achari et al., U.S. Pat. No. 6, 436,950 (前出)、J. G. Nair [Chapt. 39, Solutions, Emulsions, Suspensions and Extracts, pg. 721-752J] により、エアロゾルは、J. Sciarra および C. J. Sicarra [Chapt. 50, "Aerosols", pg. 963 to 979] により、標準的教科書: "Remington, the science and practice of pharmacy," Alfonso R. Gennaro, Chairman of the editorial board and editor. 20th ed. Baltimore, Md. Lippincott Williams & Wilkins, 2000 中に、記載されている。
【0029】
有効成分の組成物は、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウムまたは他の適する防腐剤、バイオアベイラビリティーを高めるシクロデキストリンなどの吸収促進剤、および接触を延長するための生体接着剤、および/または当分野で知られている他の可溶化剤または分散剤を用いて、塩水中のゲル剤、リポソーム分散剤、懸濁剤または乳剤として製造し得る。故に、鼻腔内表面に投与するための組成物は、特に、医薬的に許容し得る希釈剤(担体)に溶解または分散された有効成分の溶液を含むと企図する。溶媒または湿潤剤は、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)であり得、緩衝水、0.9パーセント塩水、緩衝水性エタノール溶液などの様々な水性担体を使用できる。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技法により滅菌できるか、または、濾過滅菌できる。得られる溶液を、そのまま使用するために包装しても、または補助剤として他の医薬に混合してもよい。
【0030】
本発明の実施態様の組成物は、pH調節および緩衝剤、張度(tonicity)調節剤、湿潤剤などの、生理的条件に近づけるために必要とされる医薬的に許容し得る補助物質、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエートなどを含有できる。
【0031】
鼻腔内投与の他の形態は、粉末剤形態の有効成分を、単独で、または、炭酸カルシウムまたはラクトースなどの不活性担体と混合して、投与することである。親水性補助剤、例えば、ポビドン、ラクトースを用いるスプレー乾燥粉末剤の製造および乾燥粉末剤鼻腔内吸入器を使用するその送達の方法は、Gordon ら (米国特許第6,365,190号)により記載された。これを出典明示により本明細書の一部とする。粉末剤の送達方法の利点は、鼻には強力な排泄メカニズムがあるので、乾燥粉末で投与されると、溶解形に対して、より延長された作用を有し得ることである。粉末剤は、再結晶により、造粒により、乾燥により、または、特定の粒径に粉砕することにより、微粉化形態で、従って、コールド受容体(cold receptors)と相互作用するのに大きい表面積を有するように、製造し得る。粉末剤の製造方法は、当分野で周知であり、R. E. O'Connor および J. B. Schwartz (Powders, Chapt. 37, pg. 681-699) により、標準的教科書: "Remington, the science and practice of pharmacy," Alfonso R. Gennaro, Chairman of the editorial board and editor. 20th ed. Baltimore, Md. Lippincott Williams & Wilkins, 2000 で概説された。この章から引用する(688頁):
【0032】
製剤は、単位剤型であり得る。それは、ヒトまたは他の哺乳動物への投与に適する単位用量を含有する、物理的に別個の単位である。単位剤型は、1個のカプセル剤または錠剤、あるいは数個のカプセル剤または錠剤であり得る。「単位用量」は、予め定めた本発明の活性化合物の量であり、1またはそれ以上の賦形剤と共に、所望の治療効果を奏するために算出されたものである。単位用量中の有効成分の量は、関与する特定の処置に準じて、約0.1ないし約1000ミリグラムまたはそれ以上の範囲で変動し得るか、またはそれに合わせ得る。
【0033】
典型的な本発明の経口用量は、指示された効果のために使用するとき、約0.01mg/kg/日ないし約100mg/kg/日、好ましくは、0.1mg/kg/日ないし30mg/kg/日、最も好ましくは、約0.5mg/kg/日ないし約10mg/kg/日の範囲にある。非経腸投与の場合、約0.001ないし100mg/kg/日、好ましくは0.01mg/kg/日ないし1mg/kg/日の量を投与するのが有利であることが、一般的に証明された。本発明の化合物は、一日量で投与してもよく、あるいは、総一日量を、一日に2回、3回またはそれ以上に分割された用量で投与してもよい。送達が経皮形態を介する場合、当然、投与は連続的である。
【実施例】
【0034】
実施例
本発明の化合物の効果を、WO03/095420に記載のアッセイおよび薬理試験で調べた。
本発明の化合物は、WO03/095420に記載の通りに製造した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風邪、咳、くしゃみ、急性および慢性気管支炎を含む気管支炎、細気管支炎、鼻炎、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、粘膜炎、副鼻腔炎、アレルギー、または、外的刺激に関連する障害(ここで、これらの障害は煙草の煙、スモッグ、職場での高レベルの大気SOおよび窒素ガスに関連するものである)、または、気道反応亢進、乳製品不耐性、Loffler 肺炎、肺気腫、嚢胞性線維症、気管支拡張症、肺線維症、じん肺症、膠原病性脈管疾患、肉芽腫性疾患、喉頭炎、咽頭炎、肺炎、胸膜炎、持続性喘息または慢性喘息様気管支炎である呼吸器疾患または障害の処置のための、式(I)の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはこれらの塩:
【化1】

式中、Xは、
【化2】

を表し、
式中、Yは直接結合を表すか、または、
【化3】

を表し、
ここで、RおよびRは、独立して、水素、クロロ、ブロモ、フルオロ、シクロペンチルアミノ、トリフルオロメチルまたはトリフルオロメトキシを表し;
、RおよびRは、各々水素を表し;そして、
およびZは、各々水素を表す。
【請求項2】
疾患または障害がアレルギー性鼻炎である、請求項1に記載の呼吸器疾患または障害の処置のための式(I)の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはこれらの塩。
【請求項3】
呼吸器疾患または障害の処置用の医薬を製造するための、請求項1に記載の一般式(I)の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはこれらの塩の使用であって、これらの疾患または障害が、風邪、咳、くしゃみ、急性および慢性気管支炎を含む気管支炎、細気管支炎、鼻炎、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、粘膜炎、副鼻腔炎、アレルギー、または、外的刺激に関連する障害(ここで、これらの障害は煙草の煙、スモッグ、職場での高レベルの大気SOおよび窒素ガスに関連するものである)、または、気道反応亢進、乳製品不耐性、Loffler 肺炎、肺気腫、嚢胞性線維症、気管支拡張症、肺線維症、じん肺症、膠原病性脈管疾患、肉芽腫性疾患、喉頭炎、咽頭炎、肺炎、胸膜炎、持続性喘息または慢性喘息様気管支炎である、使用。
【請求項4】
呼吸器疾患または障害の処置用の医薬を製造するための、請求項1に記載の一般式(I)の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはこれらの塩の使用であって、これらの疾患または障害がアレルギー性鼻炎である、使用。
【請求項5】
呼吸器疾患または障害の処置用の、少なくとも1種の請求項1に記載の一般式(I)の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはこれらの塩および薬学的に許容し得る希釈剤を含有する組成物であって、これらの疾患または障害が、風邪、咳、くしゃみ、急性および慢性気管支炎を含む気管支炎、細気管支炎、鼻炎、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、粘膜炎、副鼻腔炎、アレルギー、または、外的刺激に関連する障害(ここで、これらの障害は煙草の煙、スモッグ、職場での高レベルの大気SOおよび窒素ガスに関連するものである)、または、気道反応亢進、乳製品不耐性、Loffler 肺炎、肺気腫、嚢胞性線維症、気管支拡張症、肺線維症、じん肺症、膠原病性脈管疾患、肉芽腫性疾患、喉頭炎、咽頭炎、肺炎、胸膜炎、持続性喘息または慢性喘息様気管支炎である、組成物。
【請求項6】
呼吸器疾患または障害の処置用の、少なくとも1種の請求項1に記載の一般式(I)の化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはこれらの塩および薬学的に許容し得る希釈剤を含有する組成物であって、これらの疾患または障害がアレルギー性鼻炎である、組成物。
【請求項7】
式(I)のヒドロキシ−テトラヒドロ−ナフタレニル尿素誘導体が、
N−[4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−N'−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)尿素;
N−(3−クロロフェニル)−N'−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)尿素;
N−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)−N'−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]尿素;
N−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)−N'−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]尿素;
N−(3,4−ジクロロフェニル)−N'−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)尿素;
N−[4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−N'−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル]尿素;
N−[4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−N'−[(7S)−7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル]尿素;
N−[4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−N'−[(7R)−7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル]尿素;
N−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)−N'−フェニル尿素;
N−(4−クロロフェニル)−N'−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)尿素;
N−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)−N'−[2−(トリフルオロメチル)フェニル]尿素;
N−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)−N'−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]尿素;
N−(3,4−ジクロロフェニル)−N'−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)尿素;
N−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)−N'−[4−(トリフルオロメトキシ)フェニル]尿素;
N−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)−N'−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル]尿素;
N−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)−N'−(2,4,6−トリメトキシベンジル)尿素;
N−(2,6−ジフルオロベンジル)−N'−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)尿素;
N−[(7R)−7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル]−N'−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]尿素;
N−[(7S)−7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル]−N'−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]尿素;
N−[(7R)−7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル]−N'−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル]尿素;
N−[(7S)−7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル]−N'−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル]尿素;
N−[2−(4−クロロフェニル)エチル]−N'−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)尿素;および
N−[3−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−N'−(7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル)尿素
からなる群から選択される、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の式(I)のヒドロキシ−テトラヒドロ−ナフタレニル尿素誘導体、その互変異性体もしくは立体異性体、またはこれらの塩。
【請求項8】
式(I)のヒドロキシ−テトラヒドロ−ナフタレニル尿素誘導体が、
N−[4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−N'−[(7S)−7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル]尿素;
N−[4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−N'−[(7R)−7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル]尿素;
N−[(7R)−7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル]−N'−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]尿素;
N−[(7S)−7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル]−N'−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]尿素;
N−[(7R)−7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル]−N'−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル]尿素;および
N−[(7S)−7−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレニル]−N'−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル]尿素
からなる群から選択される、請求項1ないし請求項6に記載の式(I)のヒドロキシ−テトラヒドロ−ナフタレニル尿素誘導体、その互変異性体もしくは立体異性体、またはこれらの塩。

【公表番号】特表2008−532956(P2008−532956A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500067(P2008−500067)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001575
【国際公開番号】WO2006/094627
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(503412148)バイエル・ヘルスケア・アクチェンゲゼルシャフト (206)
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare AG
【Fターム(参考)】