説明

ヒドロキシルラジカルの連続的発生を利用した炭水化物の修飾

【課題】炭水化物のヒドロキシルラジカル修飾のための方法を提供すること。
【解決手段】ヒドロキシルラジカルを用いた炭水化物の修飾のための方法は本明細書で開示される。当該ヒドロキシルラジカルはUV光を用いて水溶液中でペルオキシドの光分解により形成され得る。また、本方法により修飾された炭水化物を含む組成物及び生成物も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本技術は一般的に修飾炭水化物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
以下の記述は読者の理解を助けるために提供される。提供された情報または引用文献は先行技術ではないことが認められている。
【0003】
炭水化物の修飾は二つの主な種類:化学的と流動学的、に分類することができる。化学的な修飾は一般的に化学基を有する炭水化物の置換を言う。それは炭水化物の電荷の状態を変化させ、または安定性を向上させる。炭水化物の化学的な修飾は、一般的に炭水化物の性質を変える官能基の導入によっておこる。修飾された炭水化物の性質は、官能基または置換基の種類、及び置換の程度に依存する。修飾は漂白、酸化、アセチル化、酸修飾、エーテル化、エステル化、架橋結合等のような様々な方法によって達成され得る。流動学的な修飾は、一般的に溶液中でより高い乾燥物含量が望まれる場合に用いられ、それは加水分解または酸化による粘度の低下を意味する。加水分解のためには酵素または酸が使われ得る。酸変換はデンプンの加水分解及び粘度の減少のために、酸を加えることで行われる。
【0004】
酸化は多種ある炭水化物の修飾方法の一つである。酸化は酸化剤と還元末端の電子の移動であり、高分子鎖長分解及び、炭水化物分子上でのカルボニル基とカルボキシル基の形成を引き起こす。酸化は一般的にアルカリ性水溶液中での臭素、塩素または対応する金属次亜ハロゲン酸塩による炭水化物の処理含む。例えば、次亜塩素酸ナトリウムなどの次亜塩素酸塩による炭水化物の処理である。炭水化物の次亜塩素酸塩酸化は、工業で通常用いられるにもかかわらず、揮発性有機塩素化合物 (VOC)の発生などの欠点に関連することが知られており、それらのうちのいくつかは有毒で、ヒトの発癌性物質の疑いがあり、比較的短い品質保持期限及び過剰摂取により生物処理の阻害を有する。
【0005】
デンプンに関しては、例えば、酸化はデンプン分子の様々な結合の開環及び開裂を通常含む。デンプンは直線的な主鎖をつくるグルコース環の1位と4位のエーテル結合により数珠つなぎとなるグルコース単位から成るグルコース重合体であり、環の1,6ユニットで結合する重合体、の更なる分岐を有する。酸化はそれらのエーテル結合を開裂し、デンプン分子の分子量を減少させる。加えて、それはグルコース環を2, 3ユニットの間で開裂させることもでき、得られるアルデヒド基の一つまたは二つをカルボキシル基にさらに変換することができる。酸化剤の選択、アルカリの量、温度及び反応時間は、異なる薄くなる割合 (rates of thinning)を引き起こし、また酸化処理を経て薄くなった(thinned)デンプンにおいて生成されたカルボキシルの量を変え得る。過ヨウ素酸塩のような他の選択的な酸化剤はデンプンの特定の結合のみを攻撃することができ、過ヨウ素酸塩はその2-3結合を攻撃する。デンプンの酸化のあいだに起こるいくつかの主たる反応は:(a)C-6位の一級ヒドロキシルがウロン酸を形成するカルボキシル基への酸化;(b)二級アルコールのケノンへの酸化;(c) C-2及びC-3位グリコールのアルデヒドへの酸化 ;(c)アルデヒド末端基のカルボニル基への酸化、である。デンプンの酸化はそれゆえ、結果としてカルボニル基とカルボキシル基の混合を生成する。
【0006】
フリーラジカル化学は工業的な炭水化物またはデンプンの製造において広く使われていない。フリーラジカルは、化学的開始剤または化学結合の開裂を経た物質に不対電子が誘発されたときにつくられる。ラジカル電子は非常に不安定であり、さまざまな物質と直ちに反応する。フリーラジカルの一例はヒドロキシルラジカルであり、それは過酸化水素などの過酸化物質がラジカルに開裂されたときに生成される。それは紫外光などの励起されたエネルギーをもって当該物質を処理することにより得られる。フリーラジカル反応は通常、反応用の供給源が存在する限り、連続的に行われる。供給源及びフリーラジカル反応の種類は著しく変わり得る。フリーラジカル重合において、供給源は単量体であり、反応はフリーラジカル結合から重合体を生成する。単量体が存在する限り、反応は進む。フリーラジカル滅菌において、供給源は紫外光であり、反応は化学結合の分裂または開裂である。さらに、この場合は、UVエネルギーが供給される限り反応は進行する。しかしながら、フリーラジカル反応は通常、反応後に残留ラジカルまたはラジカル源物質を有する。このことは、供給源として作用する化学物質またはエネルギーが存在する限り、フリーラジカル反応を進行させ続ける。酸化剤のような一つの化学物質として機能し得る多くの化学物質はまた、それらが紫外光のような反応エネルギーの十分なレベルにより処理された場合にはフリーラジカル反応に使用され得る。
【0007】
本明細書では、特に指定のない場合、すべての割合及び百分率は重量/重量を原則とする。
【発明の概要】
【0008】
概要
一態様によれば、本技術は、炭水化物のヒドロキシルラジカル修飾のための方法に関する。一つの実施形態において、本開示では、溶媒を含む炭水化物スラリーの形成及び炭水化物とヒドロキシラジカルとの反応を含む炭水化物の修飾方法であって、ヒドロキシルラジカルはUV光を使用した水溶液中の触媒量のペルオキシドの光分解によって発生させられ、反応器中、ペルオキシドに対するUV光の割合は約20〜500ワット/g の範囲である、方法を提供する。「ペルオキシドの触媒量」とは、ペルオキシドが反応中に触媒として作用し、UV光が十分な量供給される限り、ヒドロキシラジカルに再生し、炭水化物と反応し続けることを意味する。
【0009】
一つの実施形態では、ペルオキシドに対するUV光の割合は約30〜200 ワット/g の範囲である。ある実施形態では、炭水化物に対するペルオキシドの割合は約0.1〜2.5%wt/wtの範囲である。その他の実施形態では、炭水化物に対するペルオキシドの割合は約0.5〜1.3%wt/wtの範囲である。一つの実施形態では、炭水化物スラリーは約30%〜約50%の固体の百分率を有する。
【0010】
ある実施形態では、炭水化物スラリーを作製するために用いられる溶媒は水である。ある実施形態では、ペルオキシドは、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化カルシウム及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。ある実施形態では、炭水化物は、デンプン、親水コロイド及びセルロースからなる群より選択される。実例となる実施形態では、デンプンは修飾化デンプンである。ある実施形態では、デンプンは加熱されている。
【0011】
ある実施形態では、反応の進行の間、スラリーのpH は、pH 7〜11に維持されている。ある実施形態では、pHは、反応ステップの前、もしくは間のスラリーへのアルカリの添加によって維持されている。ある実施形態では、アルカリは、アルカリ金属水酸化物である。ある実施形態では、アルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0012】
一つの実施形態では、本発明で用いる反応器は連続的なヒドロキシルラジカル反応器である。このような反応器は、反応溶液に浸透し、炭水化物との反応のためのヒドロキシラジカルへのペルオキシド触媒を連続して再生するのに十分なUV光を提供するだろう。
【0013】
いくつかの実施形態では、本方法は誘導化反応の追加のステップを含む。いくつかの実施形態では、誘導化反応はカチオン化、エステル化、エーテル化、リン酸化、カルボキシメチル化及び架橋結合からなる群より選択される。
【0014】
いくつかの実施形態では、本方法は、ヒドロキシルラジカル反応の間に第二の触媒を用いる追加のステップを含む。実例となる実施形態では、第二の触媒は二酸化チタンである。
【0015】
一態様によれば、本技術は本方法を用いて作製した修飾炭水化物に関する。
【0016】
前述の概要は例示に過ぎず、何らかの方法で制限することを目的とするものではない。実例となる態様に加えて、上述の実施形態及び特徴、並びにさらなる態様、実施形態及び特徴は下記の図面及び詳細な説明の参照により明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は広い範囲の流動性と粘性にわたる修飾化デンプン試料についての流動性とブルックフィールドとのデータの比較を示すプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
ハーモンらによるDie Starke 1971,23,347−349及び1972,24,8−11の二つの刊行物は、UV光存在下で大量の過酸化水素を酸化剤として使用したデンプンの酸化を開示している。その方法はかなり大量のペルオキシドを必要とし、カルボキシル含有量の減少とpHの上昇とともに上昇する希薄性(thinning)を示す生成物をもたらす。本研究の焦点はデンプンの希薄に最小限の重点をおいての、高カルボニルデンプンの製造であった。カルボキシル基及びカルボニル基は安定性、色変化及びデンプン糊の皮膜特性に作用する修飾炭水化物の多くの性質に影響を及ぼす。異なる酸化条件は、異なるカルボキシルまたはカルボニル含量を有する同様の粘度のデンプンを生成し、それによってそれぞれが異なる性質を有する酸化された炭水化物をもたらす。大量の酸化剤を使用するこのような酸化反応は、反応中に時間とともに酸化剤が消費されるので直線的な減少を示す。
【0019】
本発明者は炭水化物がそれらをヒドロキシラジカル修飾に供することによって修飾され得ることを発見した。ヒドロキシルラジカル修飾は炭水化物表面上でのヒドロキシラジカルの移動を含み、次いで、それは、炭水化物と反応してそれを脱重合、及び開裂し、たんぱく質、脂質などの炭水化物中の他の成分とまた反応し、酸化デンプンと比較してより透明な糊及び輝く白いゲルを生成する修飾化デンプン生成物をもたらす。ヒドロキシラジカル修飾は異なる反応条件を必要とし、異なる機構によって進み、酸化よりもより区別しやすい生成物を製造する。例えば、ハーマンによって行われた反応は、UV光が溶液を透過することが可能なように、必ず2%固体に当該溶液を希釈させることが必要である。UV光は少量提供され、デンプンに比べて非常に高い量のペルオキシドが供給される。UV光は6.8 ワット/g ペルオキシドでのみ適用されるが、ペルオキシドはデンプンに対して83%超の割合で適用される。この条件下では、この反応は典型的な酸化反応のようにふるまい、ペルオキシドが消費されるに従い、反応速度は減少し、デンプンに対する高い割合のペルオキシドをもってさえも非常に低く希薄であり、粘度の減少はわずか2.5倍であった。それに反して、ヒドロキシラジカル反応は連続的であり、その反応は触媒量のペルオキシドが存在し、UV光が十分に供給される限り続く。30〜50%の商業的製造固形物は激しく撹拌した溶液へのUV光の透過を可能にする連続的な反応器によって達成され得る。UV光はさらに高いレベルである20〜500ワット/g ペルオキサイドで適用され、それはペルオキシドによるデンプンの酸化を触媒するよりはむしろヒドロキシラジカルを連続的に生成するのに十分である。ペルオキシドは、デンプンに対してわずか0.1〜2.5%の割合の触媒レベルで反応に加えられる。デンプンと比較してペルオキドの高いレベル、またはペルオキシドと比較してUV光の低いレベルは、連続的に再生するヒドロキシルラジカル反応よりもむしろ酸化をもたらす。その結果として、ヒドロキシルラジカル反応は1オーダー効率的であり、かなり短い時間で30倍まで粘度を低下させる。最終生成物はまた組成的に異なり、酸化反応は0.5%以上のカルボキシルを提供し、一方ヒドロキシルラジカル修飾は非常に希薄の生成物について0.05〜0.15%カルボキシルをもたらす。
【0020】
様々な実施形態では、本開示は炭水化物の修飾するための方法を提供する。酸化、酸修飾、エーテル化及びエステル化などの様々な方法が様々な炭水化物の希薄化を達成するため用いられることが報告されているが、それぞれの方法は異なる生理化学的性質を有する生成物、及び様々な適用を提供する。それらの方法は、頻繁に、過度の量の酸化剤、酸、無機及び有機塩基、酸無水物、酸塩化物、エーテルまたは他の過酷な化学物質が必要である。さらに、それらのいくつかの方法は低い収率を与え、加水分解などの副反応をもたらす。それらのいくつかの方法は非常に高度の脱重合を伴う。ごく低量の過酷な化学物質を使用して有効に低い粘度の炭水化物を達成し、同時に広い種類の工業的適用を有する生成物をもたらす数少ない方法が知られている。本発明者は、ごく低量のペルオキシド反応及び強いUV光の組み合わせを使用することにより、ヒドロキシラジカルを発生させることができ、所望の生理化学的な性質及び幅広い適用を有する生成物を製造するための炭水化物の修飾に使用できることを発見した。本発明者は、UV光及びペルオキシド触媒を用いる連続的なヒドロキシルラジカル修飾の達成のために、ある閾値を達成されなければならないことを発見した。ペルオキシドに供給するUV光の量は、酸化剤として反応する前に、ペルオキシドのヒドロキシラジカルへの十分な開裂をもたらすためには、20 ワット/g ペルオキシドより多い必要がある。この高いUV光の割合を許容し、ペルオキシドがヒドロキシルラジカルに変換され得るのを確実にするためには、ペルオキシドはデンプン溶液またはスラリーに0.1〜2.5%の触媒量で加えられる。このことはUV光が適用される限り続く連続的な反応をもたらす。この反応の効率における唯一の損失は競合する酸化反応によってもたらされ、そこではヒドロキシラジカルに変換されなかったペルオキシドはデンプンまたは他の物質と反応し、それゆえ、利用できるペルオキシド触媒を減少させる。
【0021】
詳細な説明において、詳細な説明で記述した具体的な実施形態、図及び特許請求の範囲は制限されることを意味しない。本明細書に提示された主題の趣旨と範囲から逸脱することなく、その他の実施形態は使用可能であり、また他の変更は行われ得る。後に続く記述において、多くの用語は広くにわたって使用される。下記の用語は全体として明細書を参照することにより十分に理解される。単位、接頭辞及び記号はそれらの許容された認められたSI形式で表示することができる。
【0022】
本明細書で用いる用語「a」及び「an」は、単数と明確に記述されない限りは、「1またはそれ以上」を意味する。それゆえ、例えば、「一つの炭水化物」への言及は、二つまたはそれ以上の炭水化物の混合、並びに一つの炭水化物を含む。
【0023】
本明細書で用いられる「約」は当業者により理解され、使われる文脈に依拠してある程度変動する。当業者にとって明確でない用語として使用された場合、使用される文脈を考慮すると「約」は特定の用語のプラスまたはマイナス10%まで意味する。
【0024】
本明細書で用いられる用語「炭水化物」は、ポリヒドロキシル-アルデヒド又は-ケトン及びそれらから派生した化合物を含むと当業者により理解される。炭水化物は少なくとも一つの基本的な単糖単位から構成される化合物を含み得る。それらは単純炭水化物と複合炭水化物に分類され得る。単純炭水化物は単糖類及び二糖類である。複合炭水化物は多糖類、または直鎖もしくは分枝鎖の単糖で構成される高分子である。
【0025】
本明細書で用いられる用語「ヒドロキシルラジカル」は、負電荷を引き起こす余分な電子を含まない
【0026】
【化1】

【0027】
を表すことを意味する。本技術の一つの実施形態では、ヒドロキシルラジカルは、例えば水中に存在する過酸化水素などのペルオキシド化合物の光分解により発生する。他の実施形態では、ヒドロキシルラジカルは、またフェントンの反応といわれる反応であって、過酸化水素は微量の減少した遷移金属触媒と反応する、反応によって発生し得る。さらにある実施形態では、ヒドロキシラジカルは、水、過酸化物または他のヒドロキシルを含む化学物質の電気化学的分解によってもまた発生し得る。
【0028】
ある態様では、炭水化物の修飾のための方法が提供される。ある実施形態では、当該方法は、溶媒との炭水化物スラリーを形成し、及びヒドロキシラジカルと当該炭水化物とを反応させることを含み、ヒドロキシルラジカルは当該反応器の中でUV光を用いて水溶液中でペルオキシドの光分解により発生させられ、そしてペルオキシドに対するUV光の割合は約20〜500ワット/g の範囲にある。
【0029】
最初のステップとして、炭水化物は、炭水化物スラリーを形成するための好適な溶媒と混合される。任意の好適な溶媒または溶媒(複数)、例えば水、有機溶媒またはそれらの組み合わせは、炭水化物スラリーを形成するために用いられる。例示的な有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール及びブタノールなどの低級アルコールを含む。ある実例となる実施形態では、溶媒は水である。
【0030】
本方法はごく低量のペルオキシド化合物を使用する点で、クリーンかつグリーンな方法である。事実、ペルオキシド化合物は、UV光に曝露される時に、ヒドロキシルラジカルの最初の発生のためにもっぱら使われる触媒量で用いられる。それゆえある実施形態では、ペルオキシドに対するUV光の割合は約20〜500ワット/g の範囲にある。ある実施形態では、ペルオキシドに対するUV光の割合は約30〜200ワット/g の範囲にある。ある実施形態では、ペルオキシドに対するUV光の割合は約30〜80ワット/g の範囲にある。従来の方法は反応の進行につれて消費される大量の酸化剤を使用する。これに対して、本方法では、ペルオキシド化合物は連続的に光分解され、消費される代わりに再発生させられる。
【0031】
UV光に曝露された時にヒドロキシルラジカルを発生する任意の好適なペルオキシド化合物が、本方法に用いられる。例示的な物質は、例えば過酸化水素、過酸化ナトリウムなどの無機過酸化物、例えばアルキル-及びアリル-ヒドロペルオキシドまたはジアルキルペルオキシドなどの有機過酸化物でよい。次亜塩素酸ナトリウムのような非過酸化物酸化剤は、必要な酸素の二重結合を欠いているので、ヒドロキシルラジカルを形成せず、またそれらは異なった機構で進行する。これらの条件下で扱われるこのような酸化剤は反応において消費され、そのため、それらは連続的なヒドロキシルラジカルの機構の一部にはなりえない。ある実施形態では、ペルオキシドは、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化カルシウム及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。実例となる実施形態では、ペルオキシドは過酸化水素である。
【0032】
ヒドロキシラジカルは水溶液中でのペルオキシドの光分解によって発生させることができる。ある実施形態では、UV光などのUV放射源はペルオキシドの光分解に使用される。ヒドロキシルラジカルの使用は炭水化物の修飾のために必要な反応時間及び化学物質を減らし、より効率的な反応を提供する。ペルオキシドに十分なレベルで適用されるUV光はヒドロキシラジカルを連続して再生するので、反応はペルオキシドの触媒量が利用でき、十分なUV光が適用されるかぎり進行する。
【0033】
様々な範囲の炭水化物は、本方法を用いて修飾することができる。好適な炭水化物に、糖、デンプン、セルロース、親水コロイド、及び様々なその他の化合物、またはそれらの誘導体を含む。他の好適な炭水化物はデキストリン、マルトデキストリン、コーンシロップ、及びその他の糖を含む。これらの炭水化物は根本的に異なる性質を有しているが、それらはすべて同じ一般的な組成を共有し、具体的には酸または酸化剤で容易に加水分解されるエーテル結合によって結合された、結合した炭水化物の環からできた重合体であり、その環はそれ自身が同様の反応によって開裂され得る。その結果として、それらの環及び重合体鎖はすべて同様の方法でヒドロキシルラジカルと反応する。
【0034】
セルロースは単糖であるグルコースの繰り返し単位でつくられる直鎖の重合体である。単糖は1,4グリコシド結合を介して結合している。ヘミセルロースは本技術において有用な親水コロイドの一例である。ヘミセルロースは米国特許5,358,559号明細書に記述されており、それは本明細書に参照によりその全体が組み込まれている。使用できる他の親水コロイドは、アラビアゴム、キサンタンゴム、カラヤゴム、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、タラ、ペクチン、ジェラン、及びカルボキシルメチル、メチルまたはエチルセルロース、微結晶性セルロースなどのセルロース誘導体、または他の多糖類型の親水コロイドを含む。親水コロイドの組み合わせを使用してもよい。糖類は一つまたはそれ以上の単糖類ユニットを含む炭水化物化合物であり、通常多価アルコールのアルデヒドまたはケトン誘導体である。例示的な糖類は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、アラビノース、マンノース、アセチルガラクトサミン、アセチルグルコサミンなどを含む。
【0035】
デンプンはいくつかの植物の根、茎または果実から製造される汎用化学製品である。それは直線的な及び分岐の多糖重合体からなる高分子量炭水化物重合体であり、それは約8%〜約20%の水分含量を有し、より一般的には約11%〜約13%である。コーン、小麦、大麦、タピオカ、ポテト等から生成されたデンプンのようなデンプン、本方法で用いられるモロコシ品種(sorghum varieties)と同様に好適である。様々な起源のデンプンの混合も使用できる。ある実施態様では、デンプンは真珠状デンプン、粉末状デンプン、粒状、または非加熱デンプン、及び加熱、またはアルファ化(pregelled)デンプンを含む。高アミロース及びワキシー(waxy)コーンなど、コーンの他の遺伝型由来のデンプンも本方法での使用に好適である。ある実施形態では、デンプンは天然の修飾されていないデンプン、または本方法以外の方法によって修飾されたデンプンでよい。それゆえ、ある実施形態では、本方法で使用されるデンプンは「修飾化デンプン」または「すでに修飾されたデンプン」でよい。本技術はまた、カルボキシルメチルの、陽イオン性の、または他の修飾された炭水化物を含む。
【0036】
本技術に従って用いられる修飾化デンプンは、機械的に、化学的に、または熱によって修飾することができる。非修飾化デンプンに比べて、修飾化デンプンは向上した溶解性、より優れた皮膜形成性、増加した白色性、向上したゲル強度、粘度安定性、上昇した接着力、向上した剪断耐性、上昇した凍結融解分解耐性、のような優れた物理的性質をしばしば有する。使用される修飾化デンプンまたは炭水化物は、例えば、カルボキシメチル、酢酸塩、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、リン酸塩、架橋された、オクテニルコハク酸塩、陽イオンのデンプンまたは加熱されたデンプンを含む。
【0037】
本技術で使用され、商工業的に入手可能な化学的に修飾されたデンプンの一例はFarmal(商標)MS6407修飾化デンプンである。この修飾化デンプンは架橋された酢酸デンプンであり、Corn Products International, Inc.、ウェストチェスター、イリノイ州、アメリカ合衆国、(「Corn Products」)から入手できる。
【0038】
ある実施形態では、本方法で用いられる炭水化物は加熱したデンプンである。デンプン糊のような加熱したデンプンは、本方法でヒドロキシラジカルで修飾されるかもしれず、アルカリ性の、中性のまたは酸性の条件下で薄くなりうる。
【0039】
本方法は、驚くべきことに、触媒量のペルオキシドを用いて、大量の炭水化物を修飾するために使用され得る。それゆえ、ある実施形態では、炭水化物に対するペルオキシドの割合は約0.1〜2.5%wt/wtの範囲である。ある実施形態では、炭水化物に対するペルオキシドの割合は約0.2〜1.5%wt/wtの範囲である。ある実施形態では、炭水化物に対するペルオキシドの割合は約0.5〜1.3%wt/wtの範囲である。全ての割合は乾燥重量に基づいて計算されている。
【0040】
本方法のその他の利点は、従来の方法を使用して見込まれるよりも、非常に高い固体パーセンテージを有する炭水化物スラリーを修飾するために使用されうることである。ある実施形態では、炭水化物スラリーは約10%超、約20%超、約30%超〜約50%超以上の固体パーセンテージを有する。ある実施形態では、炭水化物スラリーは約30〜約50%の固体パーセンテージを有する。
【0041】
炭水化物の修飾反応は幅広い範囲のpHで実施でき、中性、酸性またはアルカリ性条件下で起こる。ある実施形態では、pHは、反応の全持続期間、一定の値または一定の範囲で維持するよう制御され得る。ある実施形態では、スラリーが形成される間に、及び/またはスラリーが確立した後に、及び/または反応の間に、酸もしくはアルカリまたはそれらの組み合わせはpHを制御または維持するためにスラリーに加えられる。ある実施形態では、スラリーのpHは約2〜約12である。ある実施形態では、スラリーのpHは約5〜約12である。ある実施形態では、スラリーのpHは約4〜約6である。ある実施形態では、スラリーのpHは約7〜約11である。ある実施形態では、スラリーのpHは約9〜約12である。ある実施形態では、そのpHは反応ステップより前に、または間に、スラリーへのアルカリの添加によって維持される。
【0042】
反応の間にpHの制御に用いられる好適なアルカリ物質は当該分野で知られており、本方法で用いられる。ある実施形態では、アルカリはアルカリ金属水酸化物である。ある実施形態では、アルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0043】
ある実施形態では、本方法は誘導化反応と組み合わせられる。陽イオン化、エステル化、エーテル化、リン酸化、カルボキシルメチル化、架橋結合などの当該分野で知られている任意の好適な誘導化反応は、修飾された炭水化物誘導体を提供するために本方法と組み合わせて使用される。誘導化反応は、本方法を用いる炭水化物が修飾される前にまたは後で、行われうる。
【0044】
ある実施形態では、炭水化物とのヒドロキシラジカル反応はさらなる触媒を使用することで加速し得る。二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化カドミウム、二酸化スズ、及び二酸化ジルコニウム、などの任意の好適な光触媒は炭水化物修飾反応を加速するのに用いられる。実例となる実施形態では、追加の触媒は二酸化チタンである。しかしながら、追加の触媒がなくてもその反応は進行し得る。ある実施形態では、ヒドロキシラジカル反応の前に、間に、または後で、硫酸ナトリウムまたは塩化ナトリウムなどのゲル阻害剤はスラリーに加えられる。
【0045】
炭水化物修飾方法は、当該分野で知られている任意の好適な反応器中で実施され、それは光触媒反応及び修飾の実行を可能にする。ある実施形態では、本方法で用いられる反応器は連続的なドロキシルラジカル反応器である。この反応器は、少量のヒドロキシルラジカルから始まって、連続的にヒドロキシルラジカルを発生し、再生するという点で連続的である。このような連続的な反応器の一例は、一連のチューブまたはパイプとして設計された光反応器であり、反応器の全長にわたってUV光を含み、それを通して循環する炭水化物スラリーについて好適な太さを有し、同時にヒドロキシルラジカルをつくるために十分な量のUV光に十分に曝露される。チューブの太さは、確実にUV光が固体物の高い濃度を有するスラリーを浸透できるように調節され得る。スラリーの循環によっておこる乱流及び好適なチューブの太さは、UV光が不透明なスラリーを十分に透過し得るのを確実にし、ペルオキシド化合物または試薬と反応し、連続的にヒドロキシラジカルを生成する。本技術で使用される連続的ヒドロキシルラジカル反応器の一例は、PURIFICS(登録商標)(スペイン、ロンドン、オンタリオ、カナダ)からPhoto CatまたはMobil Catシステムとして知られている。
【0046】
その他の本方法の比類のない特徴は、従来の方法と比べて大変容易に修飾の程度を制御できる点である。例えば、紫外光などの光源をとめると反応がとまるが、光源を元に戻して点けると反応は再開しうる。従来の次亜塩素酸塩または酸の修飾方法を用いると、一度とめられると反応を再開するのは難しく、時間を消費する。
【0047】
理論に拘束されるわけではないが、UV光はペルオキシド化合物を光分解してヒドロキシルフリーラジカルを生成すると仮定し得る。次いでそれらは酸分解反応において炭水化物と反応し、デンプン鎖を主として乱雑に開裂することができる。フリーラジカルがデンプンを開裂するにつれて、それらは好適なペルオキシド様化合物に変換され、よってそれらに再びUV光で開裂されることを可能にする。この反応は、ペルオキシド化合物が得られ、十分なUV光が供給される限り、進行し続けるだろう。すべてのペルオキシド化合物を開裂するのに不十分なUV光しか得られない場合、それは、競合する酸化反応が行われ得る。酸化が支配的な反応である場合、ペルオキシドのヒドロキシルフリーラジカルへの変換が得られなくなる。行われる主要な反応が炭水化物のヒドロキシラジカル修飾であるように、本方法で用いられるペルオキシドに対するUV光の高い割合は競合する酸化反応を最小限にする。ペルオキシドが触媒として作用する一方、UV光はそれゆえ本方法において主要な反応剤である。
【0048】
本方法に関連する更なる利点は、当業者にとって容易に明らかである。例えば、本方法は炭水化物を修飾するための従来の方法よりも、より低い化学物質の使用を必要とする。本方法は、例えばハロゲン化アルキルを生成する次亜塩素酸塩酸化において塩素系の酸化剤を含まない。また、本方法は潜在的に腐食性の塩素化合物を導入し得る酸を含まない。それゆえ、本方法はハロゲン化アルキルを生成せず、このことは排水処理の作業的利点であり、得られる生成物はハロゲン化アルキルまたはハロゲン(例えば、塩素化合物)を含まず、本発明の方法からの修飾炭水化物の実用性を広げる。
【0049】
ある様態では、本技術は、本方法を用いてつくられた修飾された炭水化物生成物を提供する。本明細書で開示された実験結果から、当業者には容易に理解できるように、最終生成物の粘度と比較して低いカルボキシル含有量を有する点で、生成物は酸化デンプンのような他の修飾炭水化物生成物と異なる。典型的な酸化デンプンは、粘度の目標まで減少させたときに、より高いレベルのカルボキシルが生成するだろう。比較の目的のために、図1は、センチポイズ (cps)変化における粘度、対商業的デンプンの流動性を示す。流動性は通常、希薄デンプンの決定因子である。例えば、紙の製造におけるサイズプレス(size press)デンプンとして使用されるデンプンは、70流動度(fluidity)デンプン(例えば、Corn Productsの055720級酸化デンプン)と特徴付けられる。そのような生成物は通常、その希薄レベルにおいて0.4%カルボキシルを有し、糊化したときに、35℃、5%固体及びpH 7において、約40 cpsの粘度有する。それに反して、同程度の粘度または流動性を有するヒドロキシル修飾したデンプンは0.15%未満のカルボキシ含量である。それゆえ、ある実施形態では、本技術によって得られた修飾化デンプンは約0.01%〜約0.5%wt/wtカルボキシル含量を有する。ある実施形態では、修飾化デンプンは約0.02%〜約0.4%wt/wtのカルボキシル含量を有する。実例となる実施形態では、修飾化デンプンは約0.05%〜約0.15%wt/wtのカルボキシル含量を有する。
【0050】
ある実施形態では、本技術を用いて得られた修飾化デンプンは約0.1〜約200 cpsの範囲の粘度を有する。この粘度はデンプンを15分、95℃で加熱により5%固体及びpH 7で糊化し、その後35℃に冷却し、好適な計器で粘度を測定することにより決定される。比較のために、修飾されていないデンプンは約500 cpsの粘度を有する。最終生成物の粘度はデンプンに供給したUV光及びペルオキシドの量、反応pH、温度及び時間に依存する。ある実施形態では、本技術を用いて得られた修飾化デンプンは約5〜約170 cpsの範囲の粘度を有する。実例となる実施形態では、本技術を用いて得られた修飾化デンプンは約15〜約140 cpsの範囲の粘度を有する。粘度に代わるものとして、生成物の流動性で表され、デンプンはアルカリで糊化され、標準化されたファンネル(funnel)から一定の時間に集められた量は決定される。流動性及び粘度は図1で図解され、お互いを予測するために用いられる。
【0051】
修飾された炭水化物は、食品、製薬、及び化粧品用途などの用途に使用され、ハロゲン化アルキル及びハロゲンは望ましくない。本方法を用いることにより得られた修飾化デンプンは、従来の方法により修飾された炭水化物よりもより広い最終用途適用を有する。また、炭水化物は、当該分野で知られている典型的な修飾方法により達成され得るよりも、本方法によって、より効率的に、かつより高いレベルまで希薄にすることができ、加熱デンプンはインサイチュで希薄になり得る。
【0052】
本方法により得られるスラリーは、修飾化デンプン、またはセルロースは親水コロイドなどの他の炭水化物を含むオフホワイトの修飾粉末を形成して乾燥し得る。特に炭水化物がコーンデンプンである場合、粉末は再水和し、過熱されて、透明な糊を形成する。この糊は、糊が冷え、固くなるに従って、輝く白色になり得る。本発明の本方法によりつくられた修飾炭水化物の性質は、他の方法により修飾された炭水化物を用いて経験されたものと異なる。たとえば、次亜塩素酸修飾したデンプンは、その糊は曇っていて茶色に変わる、白色粉末であり、一方、改良した糊の色は多くの工業への、及び食品への応用に重要な価値を有する。酸希薄化デンプンがオフホワイトの糊をつくる。
【0053】
修飾した炭水化物生成物は、機能性、または貯蔵安定性を提供する添加剤と混合し得る。添加剤は、粘度安定剤、機能性化学物質、及び/または架橋剤を含む。本発明において有用である粘度安定剤は、界面活性剤、脂肪酸複合体、せっけん、及びステアリン酸モノグリセロールのような化学物質を含む。ホウ砂などの架橋剤、及びOmnova Solutions, Inc.(フェアローン、オハイオ州、アメリカ合州国)から入手できる、SEQUAREZ(登録商標)のような不溶化剤は、本発明に使用できる。他の有用な添加剤は亜硫酸水素塩、尿素、炭酸塩等を含む。
【0054】
修飾炭水化物は多数の用途を持ち、多数の製品に組み込まれ得る。例えば、修飾炭水化物によりつくられた糊はコラゲイティング接着剤(corrugating adhesive)、ペーパーサイジング、ペーパーコーティングのための粘度の減少した炭水化物を提供する。粉末状または糊の修飾炭水化物は、食品の増粘剤、及びテクスチャ(texturizing)、ゲル、脂肪代替品、ダスティング(dusting)などの他の食品用途において用いられる。修飾炭水化物は、ゲル、糊及びローションのための医薬及び化粧品において用いられ得る。光反応または電気化学的な変換方法により得られる、修飾炭水化物からつくられる糊の白さ、及びハロゲン化アルキル及びハロゲンの欠如は、従来の方法で修飾されたデンプンのような炭水化物より、非常に幅広い応用性をもつ修飾炭水化物生成物を提供する。さらに、失敗した場合には、修飾化デンプンは、応用において特に有用である修飾化デンプン生成物がつくる白い糊をもたらす。一方で、石膏ボード、及び焼成または菓子の応用などにおいて失敗は好まれる。
【0055】
下記の実施形態は、本発明をさらに例証し説明するために示され、それはいかなる点においても限定するものとして解釈するべきでない。
【0056】
1. 溶媒で炭水化物スラリーを形成させ、及び当該炭水化物をヒドロキシラジカルと反応させることを含む炭水化物の修飾のための方法であって、当該ヒドロキシラジカルはUV光を用いて水溶液中でペルオキシドの光分解により発生し、ペルオキシドに対するUV光の割合は約20〜500ワット/g の範囲にある、方法。
【0057】
2. 前記のペルオキシドに対するUV光の割合が約30〜200ワット/g の範囲にある、実施形態1の方法。
【0058】
3. 前記の溶媒が水である、実施形態1の方法。
【0059】
4. 前記のペルオキシドが、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化カルシウム、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、実施形態1の方法。
【0060】
5. 前記の炭水化物が、デンプン、親水コロイド、及びセルロースからなる群より選択される、実施形態1の方法。
【0061】
6. 前記のデンプンが修飾化デンプンである、実施形態5の方法。
【0062】
7. 前記のデンプンが加熱されている、実施形態6の方法。
【0063】
8. 前記の炭水化物に対するペルオキシドの割合が、約0.1〜2.5%wt/wtである、実施形態1の方法。
【0064】
9. 前記の炭水化物に対するペルオキシドの割合が、約0.5〜1.3%wt/wtである、実施形態8の方法。
【0065】
10. 前記の修飾が連続的ヒドロキシルラジカル反応器で行われる、実施形態1の方法。
【0066】
11. 前記の炭水化物スラリーが約30%〜約50%の固体のパーセンテージを有する、実施形態1の方法。
【0067】
12. 前記のスラリーのpHが7〜11に維持されている、実施形態1の方法。
【0068】
13. 前記のpHが、反応ステップの前または間の、アルカリのスラリーへの添加によって維持されている、実施形態12の方法。
【0069】
14. 前記のアルカリがアルカリ金属水酸化物である、実施形態13の方法。
【0070】
15. 前記のアルカリ金属水酸化物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、実施形態14の方法。
【0071】
16. 誘導化反応の追加のステップが含まれる、実施形態1の方法。
【0072】
17. 前記の誘導化反応が、陽イオン化、エステル化、エーテル化、リン酸化、カルボキシメチル化、及び架橋結合からなる群より選択される、実施形態16の方法。
【0073】
18. ヒドロキシルラジカル反応の間に、触媒を用いる追加のステップを含む、実施形態1の方法。
【0074】
19. 前記の触媒が二酸化チタンである、実施形態18の方法。
【0075】
20. 実施形態1によって製造された修飾された炭水化物。
【実施例】
【0076】
実施例1
約30%固体の炭水化物、水を含む20ガロンのデンプンスラリーは、デンプンに対して1.86%の割合のペルオキシド、及びpH 11に維持するために十分な水酸化ナトリウムとともに連続的ヒドロキシルラジカル反応器(Mobile Cat system PURIFICS(登録商標)、スペイン、ロンドン、オンタリオ、カナダ)を通過した。それぞれのUV光ラック(rack)は400 mlの溶液につき75ワット提供し、30.1ワットUV /g 溶液中のペルオキシド、が供給された。
【0077】
連続的なヒドロキシルラジカル反応器によりつくられた修飾化デンプン生成物は、同じ流動的な特性を有する次亜塩素酸で酸化したデンプンと比べて、加熱すると透明な糊と輝く白色のゲルをつくり出した。修飾化デンプンでつくった糊は20%固体、及び約65.5℃(150゜F)において約20〜25センチポイズのブルックフィールド粘度を有した。また、50℃(122゜F)において30分保管したときに、糊は好ましい粘度安定性を示した。
【0078】
実施例2
ヒドロキシラジカルによる反応によって修飾されたデンプンは、中性pH、133.3℃(290゜F)及び背圧約340キロパスカル(50psi)において噴出加熱(jet cook)された。この糊は、表面サイズ(size)またはコルゲーティング(coating)用途へなど、フィルムまたは紙上としてドローダウン(draw down)した際に、許容される皮膜特性を有した。
【0079】
実施例3
軽く希薄化したヒドロキシラジカル処理したデンプンは、加熱した固体の粘着性を上げ、よりべとべとする、粘質の接着剤をつくるための妨げる担体を提供する、担体デンプンとしてコルゲーティング接着剤に用いられる。修飾化デンプンは、完全にデンプンが加熱されるまで、高い剪断混合器で約37.8℃(100゜F)において十分なアルカリとともに加熱される。コルゲーティング接着剤を完成するために、追加して水、修飾されていないデンプン及びホウ砂は加えられた。ヒドロキシルラジカル処理したデンプンは接着剤中の全デンプン量の通常10〜20%であった。アルカリは約65.5℃(150゜F)未満に十分に下がった接着剤のゲル温度に加えられ、ホウ砂は接着剤に乾燥腐食剤(水酸化ナトリウムの形で)の通常50〜100%加えた。ゲル温度は、担体として作用する修飾していないデンプンに懸濁した接着剤の非加熱のまたは第二の部分に参照する。コルゲーティング接着剤の正確な含有物及び含有物の割合は設備及び所望の取扱特性により変わる。
【0080】
実施例4
ヒドロキシラジカル処理したデンプンは、約137.8℃(280゜F)及び背圧約207キロパスカル(30psi)において噴出加熱(jet cook)された。加熱されたデンプンは界面活性剤(Magrabar Chemical Corporation、モートングローブ、イリノイ州、アメリカ合衆国のVS100)と、糊の成分の重量の約0.5%の量で混合された。この得られるペーストは冷却すると不透明な白色ゲルになり、数日の保存を経ても粘度の安定性を有した。この糊は保存料、及びローション製剤としての有効成分を含む。
【0081】
実施例5
41%固体デンプン、及び水スラリーはPhotoCat 反応器(PURIFICS(登録商標、スペイン、ロンドン、オンタリオ、カナダ) )を循環し、15 gpmの割合で区切られた反応チューブに、8の75ワットUV電球が適合していた。反応中にpH 11に維持するのに十分な4% NaOHとも、1.26%ペルオキシド db /デンプンは、スラリーに加えられた。それぞれの反応チューブはスラリー400 mlに対して、溶液中に30.6ワット/g ペルオキシドでさらされた。温度は水冷ジャケットにより30℃に持続された。反応は125分間、進行を許容される、しかし、試料は20、40、60、95及び125分に採取された。0分及び125分のスラリーの酸化剤のレベルはペルオキシド計深棒(dipstick)により試験され、反応の進行の間の酸化剤のたいしたことのない変化が示されたことがわかった。生成物試料はオーブンで40℃にて脱水及び乾燥された。流動性はそれぞれの試料で測定し、表1にまとめた。相当するブルックフィールド粘度は実験的な結果に基づいたそれぞれの流動性の値から見積もることができ、それは95℃、15分のデンプン糊の流動性と5%固体及び35℃におけるブルックフィールド粘度は相互に関係がある(図1に示す)。流動性は、技術としてしられており、実施例11で記載するCPC-SMA方法によって測定された。ブルックフィールドのデータは、SSBサンプルアダプターを有するブルックフィールドRVT粘度計において、5%固形にて糊化した修飾化デンプン、すなわち、5%固体及びpH 7の8 mlのデンプン、SSBにて95℃で糊化し、続いて測定温度35℃に冷却した、を表す。流動性及びブルッククフィールド粘度データは、修飾化デンプンの粘度は時間とともに著しく減少することを示す。反応の125分後には、生成物のカルボキシル含量は0.15%になった。参考のために、処理していないコーンデンプンは、ブルックフィールド条件下で、0の流動性、500 cpsの粘度を有した。
【0082】
【表1】

【0083】
実施例6
低pH、低ペルオキシド、及び高UV照射:38%固体デンプンスラリーは15gpmの割合で、0.52%ペルオキシド db / デンプンで、PhotoCat反応器を循環し、反応進行中にpH 7に維持するのに十分な4%NaOHはスラリーに加えられた。温度は水冷ジャケットを用いて30℃に維持された。反応は30分の進行が許容された。得られたデンプン生成物は40℃で脱水され、乾燥された。乾燥したサンプルの流動性は12であり、35℃、5%糊化溶液における210 cps相当のブルックフィールド粘度を有した。反応チューブのワット/g ペルオキシドdbの割合は80.1であった。
【0084】
実施例7
高pH、低ペルオキシド、及び高UV照射:38%固体デンプンスラリーは15gpmの割合でPhotoCat反応器を循環した。0.77%ペルオキシド db / デンプンは反応進行中にpH 11.8に維持するのに十分な4%NaOHとともにで、スラリーに加えられた。温度は水冷ジャケットにより30℃に維持された。反応は125分間進行が許容された。修飾化デンプン生成物は40℃で脱水され、乾燥された。乾燥したサンプルの流動性は64であり、35℃、5%糊化溶液における45 cps相当のブルックフィールド粘度を有する。反応チューブのワット/g ペルオキシドdbの割合は50.8であった。
【0085】
実施例8
低pH、高ペルオキシド、及びUV照射:41%固体デンプンスラリーは15 gpmの割合でPhotoCat反応器を循環した。1.26%ペルオキシド db / デンプンは反応進行中にpH 8に維持するのに十分な4%NaOHとともにで、スラリーに加えられた。温度は水冷ジャケットにより30℃に維持された。反応は125分間進行が許容される。修飾化デンプン生成物は40℃で脱水され、乾燥された。乾燥した試料の流動性は25であり、35℃、5%糊化ペースト溶液における240 cps相当のブルックフィールド粘度を有する。修飾生成物のカルボキシル含量は0.05%であった。反応チューブのワット/g ペルオキシドdbの割合は30.6であった。条件はpHを除いて実施例5と同じであり、pH 11でつくられた生成物80.5流動度、15 cpsよりも、得られる生成物は粘度においてより高くなった(流動性においてはより低くなった)。
【0086】
実施例9
延長した反応:38%固体デンプンスラリーは15 gpmの割合でPhotoCat反応器を循環した。0.77%ペルオキシド db / デンプンは反応進行中にpH 9.8に維持するのに十分な4%NaOHとともに、スラリーに加えられた。温度は水冷ジャケットにより30℃に維持された。反応は185分間進行が許容され、125分で追加して試料は採取された。修飾化デンプン生成物は40℃で脱水され、乾燥された。流動性は125分の試料において70、185分の試料において75が観察された。35℃、5%ペースト溶液における相当するブルックフィールド粘度はそれぞれ40及び25 cpsであった。生成物のカルボキシル含量はそれぞれ0.09、0.11%であった。スラリーは185分後であっても残余の酸化剤を示し続け、ペルオキシドの触媒量とUV光が存在する限り、反応は進行し続けることが実証される。反応チューブのワット/g ペルオキシドdbの割合は50.1であった。
【0087】
実施例10
UV処理なし:41%固体デンプンスラリーはUV光なしで15 gpmの割合でPhotoCat反応器を循環した。1.22%ペルオキシド db / デンプンは反応進行中にpH 11に維持するのに十分な4%NaOHとともに、スラリーに加えられた。温度は水冷ジャケットにより30℃に維持された。反応は120分間進行が許容された。ペルオキシド計深棒(dipstick)は120分後には残余の酸化剤を示さなかった。修飾化デンプン生成物は40℃で脱水され、乾燥された。乾燥したサンプルの流動性は2であり、35℃、5%ペースト溶液における450 cps相当のブルックフィールド粘度を有する。生成物のカルボキシル含量は0.03%であった。流動性に対してカルボキシルの高い割合によって、生成物はヒドロキシルラジカル修飾よりもむしろ酸化である証拠を示した。UV光を導入しなかったので、デンプンに対してのペルオキシドの同程度のレベルは先の実施例のように適用されるとしても、ペルオキシドは、連続的なヒドロキシルラジカルを形成するよりもむしろ、酸化剤として反応した。
【0088】
実施例11
SMA F60は分析の内部標準方法である。この方法は実例となる目的のために本明細書で説明される。水分レベル約10%の乾燥デンプン5 g を、300 mlのトールビーカーの中の、70 mの水に分散させた。30 mlの3%水酸化ナトリウムが加えられるあいだ、スラリーは200 rpmで撹拌し、正確に3分間撹拌した。得られた糊は次に、さらに29.5分間25℃で保持された。そして、糊は目盛り付の流動度ファンネルに、そして撹拌が完了してから30分時点で注がれ、目盛り付シリンダーに排出された。70秒後に回収量は記録され、任意のファンネル較正により調節され、流動性のミリリットルが決定された。
【0089】
実施例12
ペルオキシドの割合に対して不十分なUV光。生成工程はpH 11、9.3%ペルオキシド/デンプン、及びわずか6.4ワット/g ペルオキシドの30%デンプンスラリーを用いてMobileCat反応器にて行われた。残存する酸化剤は、ペルオキシド試験紙により測定されるように反応を通して顕著に減少し、2時間以内で消費された。低いUV光の割合において、触媒として使われるペルオキシドが、酸化反応の競合により消費されるので、連続的なヒドロキシルラジカル反応は続かないことと試験結果は指し示している。
【0090】
いくつかの実施形態を例証し、記述してきたが、変更及び修飾は、下記の請求項に定義されるように、その広い様態における技術から逸脱することなく、当該分野における通常の技術に従ってその中でなされると理解すべきである。
【0091】
本明細書で例証的に記述された実施形態は、特に本明細書で開示されていない任意の要素または要素(複数)、限定または限定(複数)なしに適切に実行される。それゆえ、例えば、「を含むこと(comprising)」、「を含むこと(including)」、「を含むこと(containing)」などの用語は制限なく拡張的に読まれる。さらに、本明細書で用いられた用語及び表現は制限のない記述として使われ、示された及び記述された特徴、またはそれらの一部と任意の同等のものを除く用語及び表現の使用に意図はないが、しかし様々な修飾は請求された技術の範囲内で可能であると理解される。さらに語句「から本質的に成ること(consisting essentially of)」はそれらの特に引用された要素及び主張する技術の基礎的及び新規の特性に著しく影響を与えないそれらの追加の要素を含むと理解されうる。語句「から成ること(consisting of)」は詳細に定められていない任意の要素を除く。
【0092】
本開示は本願に記載された特定の実施形態の観点から制限されない。多くの修飾及び変更は、当業者にとってあきらかであるように、その趣旨と範囲から逸脱することなくなされる。開示した範囲内の機能的に同等の方法及び組成物は、本明細書で列挙されたこれらに加えて、先の記述から当業者に明らかである。それらの修飾及び変更は添付の請求項の範囲に含まれると意図される。本開示は、添付の請求項に権利を与えられる等価物の全範囲と共に、かかる請求項の用語によってのみ制限されるべきである。本開示は、当然変わりうる特定の方法、試薬、化合物、構成及び生物学的系を制限しないことを理解される。本明細書で使われる専門用語は詳細な実施形態の記述の目的のためのみであり、限定をすることを意図しないことも理解されたい。
【0093】
すべての刊行物、特許出願、交付済み特許、及び明細書に言及された他の文書は本明細書で参照することにより含まれ、あたかもそれぞれの個別の刊行物、特許出願、交付済み特許、及び他の文書がその全体を参照することにより含まれると、特に、個別に意図される。参照することにより含まれる文章に含む定義は開示の中で矛盾する定義の範囲で除かれる。
【0094】
加えて、特徴及び態様の開示はマーカッシュ群の観点から記述される場合には、当業者は、開示はまたそれによってマーカッシュ群の任意の個々の一員または一員の小群の観点から記述されることを認識される。
【0095】
当業者に理解されうる通り、任意のまたはすべての目的のために、とりわけ記述を提供する観点から、本明細書で開示された全ての範囲は、任意の、及び全ての可能性のある部分的な範囲、並びにそれらの部分的な範囲の組み合わせを包む。任意の記載された範囲は、少なくとも2等分、3等分、4等分、5等分、10等分などに分割された同一の範囲を可能ならしめるものとして、十分に記載されるとして容易に理解される。非制限的な例として、本明細書で議論されたそれぞれの範囲は、下部3分の1、中部3分の1、上部3分の1などに容易に分割され得る。当業者に理解されうる通り、全ての言語の「まで」、「少なくとも」、「超」、「未満」及び同様のものは、引用された数字を含む、上記で議論したように部分的な範囲にその後に分解されうる範囲を言及する。最後に、当業者に理解されうるとおり、範囲はそれぞれの個別の数字を含む。
【0096】
様々な態様及び実施形態は本明細書で開示される一方、他の態様及び実施形態は当業者に理解されうる。真実の範囲及び趣旨は下記の請求項により示されるとともに、本明細書で開示された様々な様態及び実施形態は例証する目的であって、限定を意図するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒で炭水化物スラリーを形成させ、及び当該炭水化物をヒドロキシラジカルと反応させることを含む炭水化物の修飾のための方法であって、当該ヒドロキシラジカルはUV光を用いて水溶液中でペルオキシドの光分解により発生し、ペルオキシドに対するUV光の割合は約20〜500ワット/g の範囲にある、方法。
【請求項2】
前記のペルオキシドに対するUV光の割合が、約30〜200ワット/g の範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の炭水化物に対するペルオキシドの割合が、約0.1〜2.5%wt/wtの範囲にある、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記の炭水化物スラリーが、約30%〜約50%の固体のパーセンテージを有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法により製造された修飾化炭水化物。

【図1】
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