説明

ヒドロキシ官能性ポリマー、それから得られるイソシアネート基末端重付加生成物、及びその使用

本発明は、ヒドロキシル基を有するポリマーとポリイソシアネートとの反応に基づく、ポリウレタンの製造方法に関する。更に、本発明は、この方法により製造されるイソシアネート基末端樹付加生成物、こうしたイソシアネート基末端樹付加生成物を含む接着剤、及び、接着剤中における硬化成分としての前記重付加生成物の使用に関する。本発明によるポリウレタンは、少なくとも2つのカルボキシル基及び/またはフェノール基を有する、式(I)または(II)のポリマーと、少なくとも1つのグリシジル基を有する少なくとも1つの化合物との反応により得られ、且つ、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する、少なくとも1つのポリマー(A)と、少なくとも1つのポリイソシアネート(B)とを反応させることによって得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシル含有ポリマーとポリイソシアネートとの反応に基づく、ポリウレタンの製造方法に関する。本発明は、更に、この方法によって製造される、イソシアネート基末端重付加生成物に、こうしたイソシアネート基末端重付加生成物を含む接着剤に、並びに前記重付加生成物の、接着剤中の硬化成分としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン(PU;DIN略記:PUR)は、ジオール及び/またはポリオールとポリイソシアネートとの重付加反応から形成されるプラスチックまたは合成樹脂である。
【0003】
ポリウレタンは、イソシアネート及びポリオールの選択によって、様々な特性を備えうる。後の特性は、ポリオール成分によって実質的に決定されるが、これはしばしば、所望の特性を達成するために適合(すなわち、化学変性)させられるのは、イソシアネート成分ではなく、ポリオール成分であるためである。
【0004】
多数の生成物が、PUから製造されており、例えば、シール、ホース、フローリング、コーティング、更には、特に、接着剤などがある。
【0005】
さらにまた、当工業分野では、液体ゴムと呼称される特殊なコポリマーが長年に亘って使用されている。化学的に反応性の基、例えば、エポキシド、カルボキシル、ビニル、またはアミノ基の使用により、この種の液体ゴムを、化学的にマトリックス中に導入することができる。然るに、例えば、長年に亘り、ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーを含む反応性液体ゴムが存在しており、これは、エポキシド、カルボキシル、ビニル、またはアミノ基を末端に有する、B.V. Goodrich社またはNoveon社より、商品名Hycar(登録商標)の下に入手可能である。
【0006】
これらの生成物に使用される出発ベースは、通常はカルボキシル末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー(CTBN)であり、典型的には大過剰のジアミン、ジエポキシド、またはグリシジル(メタ)アクリレートが加えられたものである。しかしながら、このことは、一方では高粘度がもたらされることを意味し、他方では、非常に高濃度の未反応ジアミン、ジエポキシド、またはグリシジル(メタ)アクリレートが存在することを意味するが、前記の未反応ジアミン、ジエポキシド、またはグリシジル(メタ)アクリレートは、除去せねばならず、除去しなければ機械的特性に非常に不利な影響を与えるが、その除去は高価で且つ不便なものである。
【0007】
接着剤中におけるこの種のエポキシド−、カルボキシル−、アミン−、またはビニル官能性ブタジエン/アクリロニトリルポリマーの使用は、既知である。
【0008】
これらのヒドロキシル官能性変異体は、ポリウレタン化学にとっては、アミノ官能性生成物よりも興味深く、また、イソシアネート成分との反応のためのポリオールとして作用するものであるが、技術的に要求が高く、費用がかかり、さらに調製に不便であり、たいていの場合はCTBNとエチレンオキシドとを反応させることによって得られるものである。これは、第一級アルコール末端基を生成する。この方式で形成したポリエチレングリコール基は、更に、水との接触において有利である。
【0009】
例えば、US4,444,692には、ヒドロキシル末端反応性液体ポリマーの、エチレンオキシドとカルボキシ末端反応性液体ポリマーとの、アミン触媒の存在下での製造が開示されている。これにより、上述の通り、ポリマー中に第一級アルコール末端基が生成される。
【0010】
US3,712,916にもまた、接着剤及びシーリング材として有用な、ヒドロキシル末端ポリマーが記載されている。これらのヒドロキシル末端ポリマーは、同様にカルボキシル末端ポリマーとエチレンオキシドとを、第三級アミノ触媒の存在下で反応させることによって製造される。
【0011】
ヒドロキシル官能性変異体の製造の別の経路は、末端カルボン酸とアミノアルコール及び/または低分子量ジオールとの反応である。いずれの場合も、大過剰で操作する必要があり、このために仕上げ処理が高価且つ不便になっている。
【0012】
US4,489,008には、ポリウレタンの製造において有用であり、加水分解に対して安定なヒドロキシル末端液体ポリマーが開示されている。これらは、少なくとも1つのアミノアルコールとカルボキシ末端ポリマーとを反応させることによって製造される。カルボキシル末端ポリマーと、少なくとも1つのグリシジル基を有する少なくとも1つの化合物との反応は、開示されていない。従来のポリウレタンに比べて、最終生成物の加水分解に対する安定性の向上が強調されている。
【0013】
US3,551,472には、カルボキシル末端ポリマーとC3-C6アルキレンジオールとを、酸性触媒の存在下において反応させることによって製造される、ヒドロキシル末端ポリマーが記載されている。これらのポリマーは、接着剤及びシーリング材として有用であるとされている。
【0014】
US3,699,153には、カルボキシル末端ポリマーとC3-C6アルキレンジオールとを反応させることによって製造される、ヒドロキシル末端ポリマーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】US4,444,692
【特許文献2】US3,712,916
【特許文献3】US4,489,008
【特許文献4】US3,551,472
【特許文献5】US3,699,153
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の基礎を成す目的は、広範な基質に対してより優れた接着を示す、改善されたポリウレタン組成物、特に、接着剤、シーリング材及びプライマーを提供することである。本発明の更なる目的は、従来技術に表示された問題を解決することができ、とりわけ、カルボキシル末端ポリマーとエチレンオキシドとの、技術的に要求が高く、費用がかかり、さらに調製に不便な反応を回避することができる、官能性末端基を有する靱性改善材を提供することである。
【0017】
これらの目的は、独立請求項1、16、18、19、20、及び21の主題によって達成される。好ましい実施態様は、従属請求項から明らかである。
【0018】
ポリウレタンの製造のための本発明の方法は、ヒドロキシル官能性変異体を形成するための、カルボキシル基及び/またはフェノール基を含むポリマーの反応に、代替的且つ改善された経路を提供する。毒物学的理由から有害となる可能性のあるエチレンオキシド(またはジオール及び/またはアミノアルコールの使用)に代えて、少なくとも1つのグリシジル基を有する化合物、すなわち、その使用により第二級アルコールが生成する、比較的に高分子量のエポキシドが使用される。例えば、容易に入手可能であり、取扱容易であり、且つ、毒物学的に無害なビスフェノールAジグリシジルエーテルまたはクレジルグリシジルエーテルの使用によれば、単純な方法で芳香族構造を導入することができ、これにより、ポリウレタンの機械的特性に著しい増大がもたらされうる。更に、これらの反応生成物は、加水分解に対して高い安定性を有する。
【0019】
本発明は、特に、カルボキシル-及び/またはフェノール-基含有ポリマーと、少なくとも1つのグリシジル基を有する化合物との反応によって得られる、ヒドロキシル官能性ポリマーが、(ポリイソシアネートとの反応からポリウレタンを生成して、)従来の生成物と比較して改善された特性を有する最終生成物を生成するという事実によって、製造方法自体が単純化され、且つ改善されることに加えて、接着、靱性改良、及び加水分解安定性の点で利点を見出す。
【0020】
既に冒頭で強調した通り、本発明によって製造されるポリウレタン、もしくは上述のポリマーとポリイソシアネートとの反応により生じるイソシアネート末端重付加生成物は、接着剤に応用を見出す。ヒドロキシル官能性ポリマーは、とりわけ、二液型接着剤中の硬化成分として、または硬化成分の一部として、応用を見出す。
【課題を解決するための手段】
【0021】
第1の態様によれば、本発明は、
a)少なくとも2つのカルボキシル基及び/またはフェノール基を有する、式(I)または(II)のポリマーと、少なくとも1つのグリシジル基を有する少なくとも1つの化合物との反応により得られ、且つ、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する、少なくとも1つのポリマー(A)を準備する工程;
b)少なくとも1つのポリマー(A)と少なくとも1つのポリイソシアネート(B)とを反応させる工程;
を含む、ポリウレタンの製造方法を提供する。
【0022】
第1の実施態様では、式(I)のカルボキシル末端ポリマーが、ポリマー(A)の調製に使用される。これは、ヒドロキシル-、アミン-、またはチオール-末端ポリマーとジカルボン酸及び/またはこれらの無水物との反応によって得られる。
【化1】

ここで、Xは、O、S、またはNR4であり、さらに、R4は、Hまたは、1乃至10の炭素原子を有するアルキル基である。R1は、ポリマーR1-[XH]nの、n個のXH基が脱離した後のn価の基である。R2は、2つのカルボキシル基の脱離後のジカルボン酸基、とりわけ、飽和または不飽和の、任意に置換された1乃至6の炭素原子を有するアルキレン基、または、任意に置換されたフェニレン基である。
【0023】
第2の実施態様では、式(II)のヒドロキシフェニル末端ポリマーが、ポリマー(A)の調製に使用される。これらは、ヒドロキシル-、アミン-、またはチオール-末端ポリマーとヒドロキシフェニル官能性カルボン酸またはこれらのエステルとの反応によって得られる。
【化2】

ここで、X1は、NR4、CH2、またはC2H4であり、mは、0または1である。R1、X、NR4、及びnは、既に以上に定義した。
【0024】
しかしながら、少なくとも2つのカルボキシル及び/またはフェノール基を有するポリマーの調製は、これら上述の経路に限定されず、また、当業者が、代替的な方法を適宜採用できることが理解されよう。
【0025】
本発明において「ポリイソシアネート」等の物質名に使用される「ポリ」なる接頭語は、一般的に、当該物質が、形式上、その名称中に存在する官能基を、一分子中に1つもしくは複数含むことを示す。
【0026】
「フェノール基」とは、本明細書中は、芳香核に直接結合しているヒドロキシル基が1つであるかまたは二つ以上であるかに関係なく、核に直接結合したヒドロキシル基であると解される。
【0027】
一実施態様においては、ポリマー(A)は、少なくとも2つの官能性を有するカルボキシル末端ポリマーと芳香族グリシジルエーテルとの反応によって得られる。
【0028】
本発明によって使用されるグリシジル基は、好ましくは、グリシジルエーテル、グリシジルエステル、グリシジルアミン、グリシジルアミド、またはグリシジルイミドを含む。
本発明においては、「グリシジルエーテル基」は、下式:
【化3】

[式中、Y1は、Hまたはメチルである]
の基である。
本発明においては、「グリシジルエステル基」は、下式:
【化4】

[式中、Y1は、Hまたはメチルである]
の基である。
【0029】
少なくとも1つのグリシジル基を有する化合物は、1つまたは二つ以上の官能性を有するグリシジルエステルまたはグリシジルエーテルから選択されることが特に好ましい。
【0030】
一実施態様においては、ジグリシジルエーテルは、脂肪族または脂環族ジグリシジルエーテル、特に、二官能性の飽和または不飽和であり、分枝状または非分枝状の、環状または開環のC2-C30鎖アルコールのジグリシジルエーテル、例えば、エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、またはオクタンジオールのジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルである。
【0031】
ジグリシジルエーテルは、例えば、脂肪族または脂環族ジグリシジルエーテル、特に、下式(III)または(IV):
【化5】

のジグリシジルエーテルである。
【0032】
これらの式では、rは、1乃至9の値、特に、3または5である。更にまた、qは、0乃至10の値であり、tは、0乃至10の値であるが、qとtとの合計が1以上であることを条件とする。最後に、dは、エチレンオキシド由来の構造要素を表し、eは、プロピレンオキシド由来の構造要素を表す。したがって、式(IV)は、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び(ポリ)エチレングリコール/プロピレングリコールジグリシジルエーテルを含み、d及びeの単位は、ブロックごとに、交互に、またはランダムに並んでいて良い。
【0033】
特に好適な脂肪族または脂環族ジグリシジルエーテルは、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、またはヘキサンジオールジグリシジルエーテルである。グリシジルエーテル及びエステルの特に好ましい例は、グリシジルネオデカノエート、グリシジルベンゾエート、ジグリシジルフタレート、オクチルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、tert-ブチルフェノールグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、カルダノールグリシジルエーテル(カルダノール=3-ペンタデセニルフェノール(カシューナッツシェルオイル由来))、ビスフェノールのジグリシジルエーテル、特に、固体エポキシ樹脂、液体エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル(蒸留及び未蒸留)、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(蒸留及び未蒸留)、好ましくはビスフェノールAジグリシジルエーテル(蒸留または未蒸留)からなる群より選択される。
【0034】
グリシジルエーテルまたはグリシジルエステルに加えて、本発明によれば、上述の通り、アミン-グリシジル化合物を使用することも可能である。
【0035】
挙げてよいこうした化合物に相当する例には、例えば、以下のものが含まれる。
【化6】

【0036】
一実施態様によれば、ポリマー(A)は、式(I)の少なくとも1つのカルボキシル末端ポリマーと、少なくとも1つのグリシジルエーテルまたはグリシジルエステルとを反応させ、式(A-I)のポリマーとして式(A-I)のポリマーを生成させることにより調製される。
【化7】

【0037】
別の実施態様においては、ポリマー(A)は、式(II)の少なくとも1つのフェノール基含有ポリマーと、少なくとも1つのグリシジルエーテルまたはグリシジルエステルとを反応させることにより調製される。その結果、その後の反応により、式(A-II)のポリマーが生成する。
【化8】

【0038】
好ましくは、R1は、ヒドロキシル、アミン、またはメルカプタン基の脱離後の、ポリ(オキシアルキレン)ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリ(オキシアルキレン)ポリアミン、ポリアルキレンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリメルカプタン、またはポリヒドロキシポリウレタンである。
【0039】
一実施態様においては、R1-[XH]nは、ポリオールである。この種のポリオールは、好ましくは、ジオールまたはトリオールであり、特に、以下のものである:
・ポリエーテルポリオールとも呼称される、ポリオキシアルキレンポリオールであって、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、1,2-または2,3-ブチレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフラン、またはこれらの混合物の重合生成物であり、任意に、2つまたは3つの活性H原子を有する出発分子、例えば、水または2つまたは3つのOH基を有する化合物を用いて重合化されているもの。低不飽和度のポリオキシアルキレンポリオール(ASTM D-2849-69によって測定され、ポリオール1グラム当たりの不飽和ミリ当量(meq/g)で表され、例えば、二重金属シアニド錯体触媒(略称DMC)と呼称されるものを使用して調製される)と、例えば、アニオン性触媒、例えば、NaOH、KOH、またはアルカリ金属アルコキシドを用いて調製される、高不飽和度のポリオキシアルキレンポリオールとの、両方を使用して良い。特に好適なものは、0.02meq/g未満の不飽和度を有し、且つ300-20000ダルトンの範囲の分子量を有するポリオキシプロピレンジオール及びトリオール、ポリオキシブチレンジオール及びトリオール、400-8000ダルトンの分子量を有するポリオキシプロピレンジオール及びトリオール、並びにEO末端封止(エチレンオキシド末端封止)と呼称されるポリオキシプロピレンジオールまたはトリオールである。後者は、例えば、ポリプロポキシル化の終了後に純粋ポリオキシプロピレンポリオールをエチレンオキシドでアルコキシル化することによって得られ、結果として第一級ヒドロキシル基を含む、特定のポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンポリオールである;
・ヒドロキシ末端ポリブタジエンポリオール、例えば、1,3-ブタジエンとアリルアルコールとの重合により、またはポリブタジエンの酸化により調製されるもの、更にこれらの水素化生成物;
・スチレン-アクリロニトリルグラフト化ポリエーテルポリオール、例えば、Elastoran社によってLupranol(登録商標)の名称で供給される種類のもの;
・ポリエステルポリオール、例えば、二価から三価のアルコール、例えば、1,2-エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、1,1,1-トリメチロールプロパン、あるいは上述のアルコールの混合物と、有機ジカルボン酸またはこれらの無水物またはエステル、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びヘキサヒドロフタル酸、または上述の酸の混合物とから調製されるもの、並びに、例えば、ε-カプロラクトンなどのラクトン由来のポリエステルポリオール;
・ポリカーボネートポリオール、例えば、上述のアルコール(ポリエステルポリオールの構築に使用されるもの)とジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、またはホスゲンとの反応によって得られる種類のもの;
・1,2-エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール(=2,2-ビスヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール)、ジペンタエリスリトール(=3-(3-ヒドロキシ-2,2-ビスヒドロキシメチルプロポキシ)-2,2-ビスヒドロキシメチルプロパン-1-オール)、グリセロール(=1,2,3-プロパントリオール)、トリメチロールプロパン(=2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール)、トリメチロールエタン(=2-(ヒドロキシメチル)-2-メチル-1,3-プロパンジオール)、ジ(トリメチロールエタン)(=3-(2,2-ビスヒドロキシメチルブトキシ)-2-エチル-2-ヒドロキシメチルプロパン-1-オール)、ジ(トリメチロールエタン)(=3-(3-ヒドロキシ-2-ヒドロキシメチル-2-メチルプロポキシ)-2-ヒドロキシメチル-2-メチルプロパン-1-オール)、ジグリセロール(=ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)エーテル);
・二量体化脂肪酸の還元によって得られる種類のポリオール。
【0040】
別の実施態様においては、R1-[XH]nは、ポリアミンである。この種のポリアミンは、特に、ジアミンまたはトリアミン、好ましくは、脂肪族または脂環族のジアミンまたはトリアミンである。特に、これらは、2つまたは3つのアミノ基を有するポリオキシアルキレン-ポリアミン、例えば、Jeffamine(登録商標)(Huntsman Chemicals社製)の名で、ポリエテラミン(BASF社製)の名で、またはPC Amine(登録商標)(Nitroil社製)の名で、並びに上述のポリアミンの混合物として入手可能である。
【0041】
好ましいジアミンは、2つのアミノ基を有するポリオキシアルキレン-ポリアミン、特に下式(V):
【化9】

のものである。
【0042】
この式中では、g’は、プロピレンオキシド由来の構造要素であり、h’は、エチレンオキシド由来の構造要素である。更にまた、g、h、及びiは、それぞれ0乃至40の値であり、g、h、及びiの合計が1以上であることを条件とする。
【0043】
特に好ましいのは、200乃至10000g/molの分子量である。
【0044】
更に特に好ましいジアミンは、Huntsman Chemicals社により、品番Dまたは品番EDの下に市販のJeffamine(登録商標)、例えば、Jeffamine(登録商標)D-230、Jeffamine(登録商標)D-400、Jeffamine(登録商標)D-2000、Jeffamine(登録商標)D-4000、Jeffamine(登録商標)ED-600、Jeffamine(登録商標)ED-900、またはJeffamine(登録商標)ED-2003である。更に好ましいトリアミンは、例えば、Huntsman Chemicals社により、Jeffamine(登録商標)Tの品番の下に市販され、例えば、Jeffamine(登録商標)T-3000、Jeffamine(登録商標)T-5000、またはJeffamine(登録商標)T-403である。
【0045】
別の実施態様では、R1-[XH]nは、ポリメルカプタンである。好適なポリメルカプタンは、例えば、ポリオールのポリメルカプトセテートである。これらは、特に、以下のポリオールのポリメルカプトセテートである:
・ポリエーテルポリオールとも呼称される、ポリオキシアルキレンポリオールであって、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、1,2-または2,3-ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、またはこれらの混合物の重合生成物であり、任意に、2つまたは3つの活性H原子を有する出発分子、例えば、水または2つまたは3つのOH基を有する化合物を用いて重合化されているもの。低不飽和度のポリオキシアルキレンポリオール(ASTM D-2849-69によって測定され、ポリオール1グラム当たりの不飽和ミリ当量(meq/g)で表され、例えば、二重金属シアニド錯体触媒(略称DMC)と呼称されるものを使用して調製される)と、例えば、アニオン性触媒、例えば、NaOH、KOH、またはアルカリ金属アルコキシドを用いて調製される、高不飽和度のポリオキシアルキレンポリオールとの、両方を使用して良い。特に好適なものは、0.02meq/g未満の不飽和度を有し、且つ300-20000ダルトンの範囲の分子量を有するポリオキシプロピレンジオール及びトリオール、ポリオキシブチレンジオール及びトリオール、400-8000ダルトンの分子量を有するポリオキシプロピレンジオール及びトリオール、並びにEO末端封止(エチレンオキシド末端封止)と呼称されるポリオキシプロピレンジオールまたはトリオールである。後者は、例えば、ポリプロポキシル化の終了後に純粋ポリオキシプロピレンポリオールをエチレンオキシドでアルコキシル化することによって得られ、結果として第一級ヒドロキシル基を含む、特定のポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンポリオールである;
・ヒドロキシ末端ポリブタジエンポリオール、例えば、1,3-ブタジエンとアリルアルコールとの重合により、またはポリブタジエンの酸化により調製されるもの、更にこれらの水素化生成物;
・スチレン-アクリロニトリルグラフト化ポリエーテルポリオール、例えば、Elastoran社によってLupranol(登録商標)の名称で供給される種類のもの;
・ポリエステルポリオール、例えば、二価から三価のアルコール、例えば、1,2-エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、1,1,1-トリメチロールプロパン、あるいは上述のアルコールの混合物と、有機ジカルボン酸またはこれらの無水物またはエステル、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びヘキサヒドロフタル酸、または上述の酸の混合物とから調製されるもの、並びに、例えば、ε-カプロラクトンなどのラクトン由来のポリエステルポリオール;
・ポリカーボネートポリオール、例えば、上述のアルコール(ポリエステルポリオールの構築に使用されるもの)とジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、またはホスゲンとの反応によって得られる種類のもの;
・1,2-エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール(=2,2-ビスヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール)、ジペンタエリスリトール(=3-(3-ヒドロキシ-2,2-ビスヒドロキシメチルプロポキシ)-2,2-ビスヒドロキシメチルプロパン-1-オール)、グリセロール(=1,2,3-プロパントリオール)、トリメチロールプロパン(=2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール)、トリメチロールエタン(=2-(ヒドロキシメチル)-2-メチル-1,3-プロパンジオール)、ジ(トリメチロールエタン)(=3-(2,2-ビスヒドロキシメチルブトキシ)-2-エチル-2-ヒドロキシメチルプロパン-1-オール)、ジ(トリメチロールエタン)(=3-(3-ヒドロキシ-2-ヒドロキシメチル-2-メチルプロポキシ)-2-ヒドロキシメチル-2-メチルプロパン-1-オール)、ジグリセロール(=ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)エーテル);
・二量体化脂肪酸の還元によって得られる種類のポリオール。
【0046】
更に、特に好ましいのは、グリコールジメルカプトアセテート、トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート、及びブタンジオールジメルカプトアセテートである。
【0047】
最も好ましいと見なされるポリメルカプタンは、下式(VI):
【化10】

のジメルカプタンである。
【0048】
この式中、yは、1乃至45、特に、5乃至23の値である。好ましい分子量は、800乃至7500g/mol、特に、1000乃至4000g/molである。
【0049】
この種のポリメルカプタンは、Toray Fine Chemicals社より品番Thiokol(登録商標)LPとして購入可能である。
【0050】
好ましいヒドロキシフェニル官能性カルボン酸エステルは、メチルオルト-、メタ-、パラ-ヒドロキシベンゾエート、エチルオルト-、メタ-、パラ-ヒドロキシベンゾエート、イソプロピルオルト-、メタ-、パラ-ヒドロキシベンゾエート、ベンズオキサゾリノン、ベンゾフラン-2-オン、ベンゾジヒドロピロンである。
【0051】
好ましいジカルボン酸無水物は、フタル酸無水物、マレイン酸無水物、コハク酸無水物、メチルコハク酸無水物、イソブテンコハク酸無水物、フェニルコハク酸無水物、イタコン酸無水物、シス-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ノルボルナン-2,3-ジカルボン酸無水物、ヘキサヒドロ-4-メチルフタレート無水物、グルタル酸無水物、3-メチルグルタル酸無水物、(±)-1,8,8-トリメチル-3-オキサビシクロ[3.2.1]オクタン-2,4-ジオン、オキセパン-2,7-ジオンである。
【0052】
この反応は、好ましくは、触媒の存在下で、50乃至150℃、好ましくは、70乃至130℃の高温にて行われる。
【0053】
触媒としては、トリフェニルホスフィンを使用することが好ましく、この反応は、任意に不活性ガス下または減圧下で行って良い。使用可能な別の触媒の例は、第三級アミン、第四級ホスホニウム塩、または第四級アミン塩である。
【0054】
しかしながら、この反応のために触媒を使用せずともよいが、その場合は、この反応は、80乃至200℃、好ましくは、90乃至180℃の高温で行われる。
【0055】
反応混合物中において、カルボキシル及び/またはフェノール基に対して、モル過剰のエポキシド基を選択することが好ましい。この場合は、エポキシド基の数対カルボキシル及び/またはフェノール基の数の日は、1:1乃至50:1、好ましくは、1:1乃至20:1、更に好ましくは、1:1乃至10:1である。
【0056】
好ましい一実施態様においては、ポリイソシアネート(B)として、ジイソシアネートまたはトリイソシアネートが使用される。
【0057】
使用可能なポリイソシアネートには、脂肪族、脂環族、または芳香族のポリイソシアネート、特に、ジイソシアネートが含まれる。特に好適なものは、下記のものである:
・1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2-メチルペンタメチレン、1,5-ジイソシアネート、2,2,4-及び2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、1,10-デカメチレンジイソシアネート、1,12-ドデカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、及びリジンエステルジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-及び-1,4-ジイソシアネート、並びにこれらの異性体のあらゆる所望の混合物、1-メチル-2,4-及び-2,6-ジイソシアナトシクロヘキサン、並びにこれらの異性体(HTDIまたはH6TDI)のあらゆる所望の混合物、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(=イソホロンジイソシアネートもしくはIPDI)、ペルヒドロ-2,4’-及び-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDIまたはH12MDI)、1,4-ジイソシアナト-2,2,6-トリメチルシクロヘキサン(TMCDI)、1,3-及び1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、m-及びp-キシリレンジイソシアネート(m-及びp-XDI)、m-及びp-テトラメチル-1,3-及び-1,4-キシリレンジイソシアネート(m-及びp-TMXDI)、ビス-(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ナフタレン;
・2,4-及び2,6-トリレンジイソシアネート及びこれらの異性体(TDI)のあらゆる所望の混合物、4,4’-、2,4’-、及び2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート及びこれらの異性体(MDI)のあらゆる所望の混合物、1,3-及び1,4-フェニレンジイソシアネート、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-ジイソシアナトベンゼン、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート(NDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル(TODI)、ジアニシジンジイソシアネート(DADI);
・オリゴマー(例えば、ビウレット、イソシアヌレート)及び上述の単量体ジイソシアネートのポリマー;
・上述のポリイソシアネートのあらゆる所望の混合物。
好ましいのは、単量体ジイソシアネート、特に、MDI、TDI、HDI、及びIPDIである。
【0058】
ポリイソシアネート(B)は、特に、ヒドロキシル含有ポリマー(A)のNCO基対OH基の比が、1より大であり、2までであるような量で使用され、イソシアネート基末端重付加生成物をもたらす。特に好適なものは、1.5乃至2のNCO/OHの比から生じる重付加生成物である。当業者には、例えば、下記のイソシアナート反応性ポリマー(C)等の、別のNCO反応性化合物がこの反応中に存在する場合は、これに応じてポリイソシアネート(B)の量を増大させるべきことが明白である。
【0059】
本発明の製造方法の一変形においては、少なくとも1つのポリマー(A)と少なくとも1つのポリイソシアネート(B)との反応の間に、少なくとも1つの別のイソシアネート反応性ポリマー(C)が更に存在する。このイソシアネート反応性ポリマー(C)は、好ましくは、ポリ(オキシアルキレン)ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(オキシアルキレン)ポリアミン、ポリアルキレンポリオール、及びポリメルカプタンからなる群より選択される。これらの物質群の例については、R1-[XH]nに関する上記記述を参照して良い。
【0060】
ポリマー(A)及び別のポリマーは、好ましくは、1:100乃至100:1の混合質量比で存在する。
【0061】
第2の態様によれば、本発明は、i)上述のポリマー(A)及び、ii)ポリイソシアネート(B)から形成される、イソシアネート基末端重付加生成物を提供する。
【0062】
本発明のイソシアネート基末端重付加生成物は、更に、以上に定義される方法によって得られる。冒頭に述べたとおり、本発明のイソシアネート基末端重付加生成物は、特に、接着剤中に使用可能であり、かくして、本発明は、前記生成物を含む接着剤組成物を提供する。
【0063】
ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーベースの付加生成物とは対照的に、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む本明細書中に記載のポリマー(A)並びに既述のイソシアネート基末端重付加生成物は、著しく低い粘度を有し、このためその使用及び処理に関して著しい利点をもたらす。さらにまた、その製造のための出発物質の入手は、著しく容易であり、これら両方の点が、財政的利益をもたらし、また、特定の要求に応じた製品を提供できる可能性を増大させる。
【0064】
その特定の特性に基づき、本発明は、ポリウレタン化学におけるポリマー(A)の、好ましくは、二液型接着剤中の硬化成分として、または硬化成分の一部としての使用を採用する。これに加えて、例えば、シール、ホース、フローリング、コーティング、シーリング材、スキー、織物繊維、競技場の陸上競技場トラック、封入組成物、及びその他多くのための、PU中の多様な別の応用が想定しうる。
【実施例】
【0065】
以下の実施例は、以上に詳細に記載した本発明を詳説するに過ぎず、何ら本発明を制限するものではない。
【0066】
(少なくとも2つのヒドロキシル基を有するポリマーの調製)
A-1
300gのDynacoll(登録商標)7250(ポリエステルポリオール、OH価が約22.5mg KOH/gのもの、Evonik社製)及び18.55gのヘキサヒドロフタル酸無水物を混合した。これらを、窒素雰囲気下、150℃にて2時間、更に減圧下で30分間撹拌した。これにより、21.6mg KOH/g(理論値21.2mg KOH/g)の酸価を有するポリマーが得られた。130gのこのカルボン酸末端ポリマー(50mmolのCOOH基)を、13.1gのPolypox(登録商標)R7(p-t-ブチルフェニルグリシジルエーテル;エポキシド含量 約4.20eq/kg:55mmolのエポキシド基、UPPC)及び0.29gのトリフェニルホスフィンと混合した。この混合物を、窒素雰囲気下、120℃にて5時間に亘り、一定のエポキシド濃度が達成されるまで撹拌した(最終エポキシド含量:0.14eq/kg、理論値:0.04eq/kg)。これにより、約19.6mg KOH/gのOH価を有する粘性のポリマーが得られた。
【0067】
A-2
600gのPoly-THF(登録商標)2000(ポリエーテルポリオール、OH価が約57.0mg KOH/gのもの、BASF社製)及び90.3gのフタル酸無水物を混合した。これらを、窒素雰囲気下、150℃にて2時間、更に減圧下で30分間撹拌した。これにより、49.3mg KOH/g(理論値49.5mg KOH/g)の酸価を有するポリマーが得られた。200gのこのカルボン酸末端ポリマー(176mmolのCOOH基)を、300gのEpilox(登録商標)A 17-01(蒸留ビスフェノールAジグリシジルエーテル;エポキシド含量が約5.75eq/kg:1725mmolのエポキシド基、Leuna-Harze GmbH)及び1.0gのトリフェニルホスフィンと混合した。この混合物を、窒素雰囲気下、120℃にて5時間に亘り、一定のエポキシド濃度が達成されるまで撹拌した(最終エポキシド含量:3.12eq/kg、理論値:3.10eq/kg)。これにより、約19.7mg KOH/gのOH価を有する粘性のポリマーが得られた。
【0068】
A-3
200gのJeffamine(登録商標)D2000(アミン含量が約1eq/kg、200mmolのアミン、Huntsman社製)、42.0g(276mmol)のメチル4-ヒドロキシベンゾエート、及び0.3gのジブチルチンジラウレートを計量して500mlの三ツ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下でマグネチックスターラーロッドを用いて均質化した。この混合物を、220℃にて30分間に亘り還流させたところ、その間に、IRにおける約1723cm-1のエステルバンドに著しい減少が見られ、同時に、約1659cm-1のアミドバンドが、一定の強度に達するまで増大した。過剰のメチル4-ヒドロキシベンゾエートを、約0.2mbar及び160℃の高真空下で留去した。これにより、IR分析によればエステル基をもはや全くもたない、低粘度の明褐色液体が得られ、これは約48.7mg/g KOHの理論フェノール含量を有していた。38.0gのこのポリマー(約33mmolの芳香族OH基)を、70.6gのEpilox(登録商標)A 17-01(蒸留ビスフェノールAジグリシジルエーテル;エポキシド含量が約5.75eq/kg:406mmolのエポキシド基、Leuna-Harze GmbH)、0.1gのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)(フリーラジカル捕捉剤)、及び0.21gのトリフェニルホスフィンと混合した。この混合物を、窒素雰囲気下、130℃にて7時間に亘り、一定のエポキシド含量が達成されるまで撹拌した(最終エポキシド含量:3.49eq/kg、理論値:3.43eq/kg)。これにより、約17.0mg KOH/gの理論OH価を有する粘性のポリマーが得られた。
【0069】
A-4
200gのJeffamine(登録商標)D2000(アミン含量が約1eq/kg、200mmolのアミン、Huntsman社製)、42.0g(276mmol)のメチル4-ヒドロキシベンゾエート、及び0.3gのジブチルチンジラウレートを計量して500mlの三ツ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下でマグネチックスターラーロッドを用いて均質化した。この混合物を、220℃にて30分間に亘り還流させたところ、その間に、IRにおける約1723cm-1のエステルバンドに著しい減少が見られ、同時に、約1659cm-1のアミドバンドが、一定の強度に達するまで増大した。過剰のメチル4-ヒドロキシベンゾエートを、約0.2mbar及び160℃の高真空下で留去した。これにより、IR分析によればエステル基をもはや全くもたない、低粘度の明褐色液体が得られ、これは約48.7mg/g KOHの理論フェノール含量を有していた。
【0070】
100.0gのこのポリマー(約86.8mmolの芳香族OH基)を、24.3gのPolypox(登録商標)R7(p-t-ブチルフェニルグリシジルエーテル:エポキシド含有量約4.20eq/kg:102mmolのエポキシド基、UPPC)0.1gのブチルヒドロキシトルエン(BHT)(フリーラジカル捕捉剤)、及び0.25gのトリフェニルホスフィンと混合した。この混合物を、 130℃にて7時間に亘り、一定のエポキシド含量が達成されるまで撹拌した(最終エポキシド含量:0.21eq/kg、理論値:0.11eq/kg)。これにより、約39.2mg KOH/gの理論OH価を有する粘性のポリマーが得られた。
【0071】
(イソシアネート基を含むポリウレタンプレポリマーのポリマーの調製)
NCO-1
120gのヒドロキシ官能性ポリマーA-1(OH価が約19.6mg KOH/g)、10.3gのイソホロンジイソシアネート、0.12gのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)(フリーラジカル捕捉剤)、及び0.03gのジブチルチンジラウレートを混合した。この混合物を、減圧下、90℃にて2時間に亘り撹拌し、粘性の、NCO末端ポリマー(最終NCO含量:1.63%、理論値1.53%)を得た。
【0072】
NCO-2
150gのヒドロキシ官能性ポリマーA-2(OH価が約19.7mg KOH/g)、13.0gのイソホロンジイソシアネート、0.08gのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)(フリーラジカル捕捉剤)、及び0.04gのジブチルチンジラウレートを混合した。この混合物を、減圧下、100℃にて2時間に亘り撹拌し、粘性の、NCO末端ポリマー(最終NCO含量:1.22%、理論値1.56%)を得た。
【0073】
NCO-3
106gのヒドロキシ官能性ポリマーA-3(OH価が約17.0mg KOH/g)及び9.1gのイソホロンジイソシアネートを混合した。この混合物を、減圧下、90℃にて3時間に亘り撹拌し、粘性の、NCO末端ポリマー(最終NCO含量:約1.5%)を得た。
【0074】
NCO-4
108gのヒドロキシ官能性ポリマーA-4(OH価が約39.2mg KOH/g)及び20.4gのイソホロンジイソシアネートを混合した。この混合物を、減圧下、90℃にて3時間に亘り撹拌し、粘性の、NCO末端ポリマー(最終NCO含量:約3.3%)を得た。
【0075】
(組成物の調製)
表1に記載の成分を、重量部で混合することにより、組成物を製造した。
この目的のために必要とされる、イソシアネート末端ポリマーP1及びP2は、以下の通り調製された。
P1:
590gのポリオキシプロピレンジオール(Acclaim(登録商標)4200 N、Bayer MaterialScience AG社製;OH価が28.5mg KOH/gのもの)、1180gのポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレントリオール(Caradol(登録商標)MD34-02、Shell Chemicals社(UK)製;OH価が35.0mg KOH/gのもの)及び230gのイソホロンジイソシアネート(IPDI;Vestanat(登録商標)IPDI、Evonik Degussa AG社製)を、80℃にて既知の方法で反応させ、遊離のイソシアネート基含量が2.1質量%である、NCO末端ポリウレタンポリマーを得た。
【0076】
P2:
1300gのポリオキシプロピレンジオール(Acclaim(登録商標)4200 N、Bayer MaterialScience AG社製;OH価が28.5mg KOH/gのもの)、2600gのポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレントリオール(Caradol(登録商標)MD34-02、Shell Chemicals社(英国)製;OH価が35.0mg KOH/gのもの)、600gの4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート(4,4’-MDI;Desmodur(登録商標)44 MC L、Bayer MaterialScience AG社製)、及び500gのジイソデシルフタレート(DIDP;Palatinol(登録商標)Z、BASF SE(独国))を、80℃にて既知の方法で反応させ、遊離のイソシアネート基含量が2.05質量%である、NCO末端ポリウレタンポリマーを得た。
【0077】
(測定方法)
20gの各組成物を、2つの湿分透過性シートの間で圧縮して、2mm厚さのプラークを形成した。ダンベルを、前記2mm厚さのフィルムから打ち出し(punched)、23℃及び50%の相対周囲湿度にて1週間に亘り硬化させ、このダンベルを、200mm/分の伸長速度で引っ張った。この試験により、引張強度(「TS」)、破断点伸び(「EB」)、及び弾性係数の測定が行われた。0.5乃至5%の伸長の範囲の弾性係数が表1に報告される。
【0078】
【表1】

【0079】
全ての組成物が、多様な物質(ガラス、ガラスセラミック、鋼鉄、アルミニウム、塗装金属板)の接着に使用可能であり、各場合において優れた接着が得られることが、さらに判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンの製造方法であって、
a)式(I)または(II):
【化1】

[式中、
Xは、O、NR4、またはSであり、さらに、R4は、Hまたは、1乃至10の炭素原子を有するアルキル基であり;
X1は、NR4、CH2、またはC2H4であり;
R1は、ポリマーR1-[XH]nの、n個のXH基が脱離した後のn価の基であり;
R2は、2つのカルボキシル基の脱離後のジカルボン酸基、とりわけ、飽和または不飽和の、任意に置換された1乃至6の炭素原子を有するアルキレン基、または、任意に置換されたフェニレン基であり;
nは、1.7乃至4の値であり、
mは、0または1である]
の少なくとも2つのカルボキシル基及び/またはフェノール基を有するポリマーと、少なくとも1つのグリシジル基を有する少なくとも1つの化合物との反応により得られ、且つ、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する、少なくとも1つのポリマー(A)を準備する工程;
b)少なくとも1つのポリマー(A)と少なくとも1つのポリイソシアネート(B)とを反応させる工程;
を含む方法。
【請求項2】
少なくとも1つのグリシジル基を有する前記化合物が、グリシジルエーテル、グリシジルエステル、グリシジルアミン、グリシジルアミド、またはグリシジルイミドであることを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項3】
前記ポリマー(A)が、少なくとも2つの官能を有するカルボキシ末端ポリマーと芳香族グリシジルエーテルとを反応させることによって得られる、請求項1または2の方法。
【請求項4】
少なくとも1つのグリシジル基を有する前記化合物が、単官能性または多官能性のグリシジルエーテルまたはグリシジルエステルから選択される、請求項1または2の方法。
【請求項5】
前記グリシジルエーテルまたはグリシジルエステルが、グリシジルネオデカノエート、グリシジルベンゾエート、ジグリシジルフタレート、オクチルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタンールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、tert-ブチルフェノールグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、カルダノールグリシジルエーテル(カルダノール=3-ペンタデセニルフェノール)、ビスフェノールのジグリシジルエーテル、特に、固体エポキシ樹脂、液体エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル(蒸留及び未蒸留)、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(蒸留及び未蒸留)、好ましくはビスフェノールAジグリシジルエーテル(蒸留または未蒸留)からなる群より選択されるグリシジルエーテルである、請求項4の方法。
【請求項5】
前記R1が、ヒドロキシル、アミン、またはメルカプタン基の脱離後の、ポリ(オキシアルキレン)ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリ(オキシアルキレン)ポリアミン、ポリアルキレンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリメルカプタン、またはポリヒドロキシポリウレタンである、請求項1乃至4のいずれか一項の方法。
【請求項6】
前記ポリマー(A)が、少なくとも1つのグリシジルエーテルまたはグリシジルエステルと、少なくとも1つのヒドロキシル、アミン、もしくはチオール官能性ポリマーと少なくとも1つのヒドロキシフェニル官能性カルボン酸もしくはそのエステル及び少なくとも1つのジカルボン酸もしくはジカルボン酸無水物とを反応させることによって得られる、少なくとも1つのフェノール基またはカルボキシル末端ポリマーとを反応させることによって調製される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記反応が、触媒の存在下にて、50乃至150℃、好ましくは、70乃至130℃の高温で起こる、請求項6の方法。
【請求項8】
前記触媒が、トリフェニルホスフィンである、請求項7の方法。
【請求項9】
前記反応が、触媒の非存在下にて、80乃至200℃、好ましくは、90乃至180℃の高温で起こる、請求項6乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記反応混合物中において、カルボキシル及び/またはフェノール基に対するエポキシド基のモル過剰が選択される、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
エポキシド基の数対カルボキシル及び/またはフェノール基の数が、1:1乃至50:1、好ましくは、1:1乃至20:1、更に好ましくは、1:1乃至10:1である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ジイソシアネートまたはトリイソシアネートが、ポリイソシアネート(B)として使用される、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つのポリマー(A)と少なくとも1つのポリイソシアネート(B)との反応のために、少なくとも1つのイソシアネート反応性ポリマー(C)が更に存在する、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記イソシアネート反応性ポリマー(C)が、ポリ(オキシアルキレン)ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(オキシアルキレン)ポリアミン、ポリアルキレンポリオール、及びポリメルカプタンからなる群より選択される、請求項13の方法。
【請求項15】
ポリマー(A)及び別のポリマーもしくはポリマー(C)が、1:100乃至100:1の混合質量比で存在する、請求項13または14の方法。
【請求項16】
i)請求項1乃至15のいずれか一項に記載の方法において定義されるポリマー(A)及び、ii)ポリイソシアネート(B)から形成される、イソシアネート基末端重付加生成物。
【請求項17】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載の方法によって得られる、イソシアネート基末端重付加生成物。
【請求項18】
請求項16及び17のいずれかに記載のイソシアネート基末端重付加生成物を含む接着剤。
【請求項19】
ポリウレタン化学における、請求項1乃至15に定義されるポリマー(A)の使用。
【請求項20】
二液型接着剤における、硬化成分もしくは硬化成分の一部としての、請求項19のポリマー(A)の使用。
【請求項21】
ポリウレタンの製造方法における、請求項1乃至15に定義されるポリマー(A)の使用。

【公表番号】特表2011−506724(P2011−506724A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538612(P2010−538612)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067478
【国際公開番号】WO2009/077470
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】