説明

ヒドロクロロシランの製造方法

水素を、四塩化ケイ素及び/又は塩化水素と、銅等の触媒材料の一種以上の化学気相成長によって表面を変性したシリコンと反応させて、水素含有クロロシランを合成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンから、水素含有クロロシラン、特には、トリクロロシラン及びジクロロシランを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
触媒又は促進剤を使用することなく、四塩化ケイ素と、水素及びシリコンとを反応させることで、トリクロロシランが生成することが知られている(イングル、米国特許第4526769号)。該反応の全体の経路は、
3SiCl4+2H2+Si → 4HSiCl3 (1)
で表わされる。
【0003】
また、触媒なしで、塩化水素とシリコンとを反応させることで、
3HCl+Si → HSiCl3+H2 (2)
で表わされるように、トリクロロシランを合成できることも知られている。
【0004】
また、銅等のある種の金属を使用した場合、反応速度及び反応の選択性を向上させられることも知られている(ブレネマン、米国特許第4676967号)。かかる触媒をプロセスに組み込む手順が、幾つかの出版物の主題となっている。更に、触媒は、下記反応:
2HCl+Si → H2SiCl2 (3)
によって、ジクロロシランをかなりの量生成する必要がある。
【0005】
ワグナー(米国特許第2499009号)は、段階的焼成法において大量のハロゲン化銅を使用して、ジクロロシランの生成を促進するのに有用な銅−シリコン材料を合成した。しかしながら、バッチ処理、最後の高温アニーリング、及び銅の所要濃度が高いことが原因で、彼の方法は、実用的でなく、また、大量の銅を含む廃棄物を処分するための環境上の課題が幾つか生じてしまう。ダウニング(米国特許第4314908号)は、水素雰囲気中、高温で、酸化銅を冶金グレードのシリコンと焼成して、シリコンの表面上に銅を実質均一に分布させる方法を教示している。ムイ(米国特許第5250716号)は、塩化第一銅の蒸気をシリコンと反応させて、銅−シリコン合金を生成させることを説示している。
【0006】
ワカマツ(独国特許第19654154号)は、銅シリサイド触媒を用いて、トリクロロシランを製造できることを教示している。マルガリアら(米国特許第6057469号)は、シリコン粒子の表面上に銅を堆積させること説示している。ブランら(米国特許出願公開2004/0022713号)は、効果的にするには、銅は、シリコン粒子よりも30〜100倍細かい粒状でなければならないことを示唆している。或いは、冶金処理において、銅を元素状の金属銅の形態で又は銅化合物として、シリコンに添加して、バルクのシリコン中に銅を組み込むことができる。しかしながら、かかるバルク混合は、銅をシリコンの表面だけに付ける場合と同等の触媒効果を達成するためには、非常に高い銅濃度でなければならない。バルク添加によって要求される高濃度の銅は、添加された銅を含む使用済みシリコンを効率的に処分する問題をもたらす。
【特許文献1】米国特許第4526769号
【特許文献2】米国特許第4676967号
【特許文献3】米国特許第2499009号
【特許文献4】米国特許第4314908号
【特許文献5】米国特許第5250716号
【特許文献6】独国特許第19654154号
【特許文献7】米国特許第6057469号
【特許文献8】米国特許出願公開2004/0022713号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かかる総ての従前の方法では、相当の努力が、非常に細かく分割された形態の銅を調製することに払われ、そして、シリコン材料と親密で且つ有効な微細形態の銅をもたらす、注意深く制御された方法を有する。また、水素化反応ゾーンの外側のゾーンで銅のコーティングを行うこと、例えば、ダウニング(米国特許第4314908号)は、付加的な操作上の課題をもたらし、処理された材料が、後続の水素化反応を阻害するであろう酸化物コーティングのリフォーミングを妨害する。これらの特別な方法は、常に、全体の製造に対してコストと複雑さを付加する。
【0008】
従来法の総ては、促進剤又は触媒の役割を考慮する場合、シリコン上に元々存在する表面酸化物の影響を評価できていない。シリコン金属上に元々存在する酸化物は、シリコン表面への銅の効果的な結合を阻害し、換言すると、元々存在する酸化物がプロセス内で他の化学作用により除去されるまで、触媒の効果的な取り込みを低減し、又は触媒の利益を遅らせる。元々存在する酸化物は、過剰な摩砕によって幾分除去されるかもしれない。しかし、一旦酸化物が除去されたら、シリコンを酸素が存在しない条件、即ち、実際的な商業的な試みにおいて難しく且つ高価なプロセス中に維持しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、ヒドロクロロシラン類の製造を促進するのに、活性な触媒種を生成させるための簡便な方法を有することが有用である。有効で且つ活性な触媒で、シリコン及び水素と、塩素源との反応からヒドロクロロシラン類を製造することができる。該塩素源としては、塩化水素、四塩化ケイ素、又はそれら二つの組み合わせが挙げられる。また、目的に応じて、水素:塩化物の比、ガスの滞留時間、並びに有効な触媒を使用する際の反応温度及び圧力を調整することで、ジクロロシランとトリクロロシランの比を変えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
シリコンを用いた有効な触媒を形成するために、最初にシリコンを還元性の雰囲気に曝して表面酸化物を除去するタイプの反応を採用することで、シリコンの表面上に元々存在する酸化物によってもたらされる問題を克服することができる。高温の水素ガスは、以下の反応:
2+SiO2(固体) → Si(金属)+H2O(蒸気) (4)
によって、これを達成することができる。
【0011】
そして、生成したシリコン表面を酸素が存在しない環境に維持すれば、該シリコン表面には、引き続き酸化物が存在しない。
【0012】
塩化第一銅は、高温において水素で速やかに還元される還元性物質である。
CuCl+H2 → 2HCl+Cu(金属) (5)
【0013】
反応(5)の還元は、水素雰囲気中、約275℃以上で自然に起こる。
【0014】
反応(1)又は(2)によるトリクロロシランの製造においては、出発物質として市販の冶金グレード又は精製グレードのシリコンを用いる。かかるシリコンは、本質的にシリコン表面上に酸化物が元々存在している。通常の商慣行では、該シリコンを摩砕し、篩い分けして、選択したプロセス設計の特別な要件に適当な粒径のものを準備する。多くのプロセスでは約200ミクロンの粒径が好適であるが、粒子が、ガスを容易にシリコン粒子と接触させられる流動床や撹拌床反応器中などの混合環境で操作するのに十分小さい限り、サイズは問題ではない。
【0015】
酸化物が存在しないシリコン表面上に有効量の銅を合金化することによって、銅の利用が実に良くなり、利益をもたらすのに必要な銅の量が非常に少なくなる。この利点は、ヒドロクロロシラン類の製造が通常の温度及び圧力で進む間、所望により追加量の銅及びシリコンを供給することで達成される。
【0016】
一般に反応(1,2又は3)に従ってヒドロクロロシラン類を製造するためには、シリコンを流動又は機械撹拌床反応器等の容器中に加え、ガス状の水素及び塩素源を供給しつつ、反応器を275℃〜550℃の通常の操作条件にする。塩素源は、塩化水素、四塩化ケイ素、又はそれらの組みあわせとすることができる。塩化水素の不存在下では、シリコンを含まない無触媒の反応:
SiCl4+H2 → HCl+HSiCl3 (6)
が起こり、少量(<1%)のHClが生成する。温度、反応器の滞留時間、並びに水素と塩化物の濃度を調整して、所望の混合産物を製造することができる。HClは、反応(2)によって、275℃以上のどの温度でも、シリコンを積極的に攻撃する。反応(2)と(6)の組み合わせにより、反応(1)がもたらされる。シリコンの効果は、反応環境からHClを除去し、反応(1)の平衡濃度を右にシフトさせ、ヒドロクロロシラン類の全体での収率を向上させることである。
【0017】
同時に、シリコンの表面が水素により攻撃され、表面酸化物及び吸着水分が除去される。
2+SiO(H) → Si+H2O (7)
【0018】
反応(6)及び(7)は、過剰量のH2で操作される。反応(6)及び(7)が共に組み合わさって、シリコンの表面の少なくとも一部から酸化物及び水分のいずれかが除去される。そして、続いて生成する酸化物が存在しないシリコン表面は、活性な金属銅を有効に受け入れることができ、また、活性な金属銅と有効に結合することができる。
【0019】
次に、銅、最も効果的には塩化第一銅(CuCl)の形態の銅を反応器に加えると、275℃から550℃で過剰の水素による還元が起こり、反応(5)によって金属銅及び付加的にHClが生成する。原子基準で生成した銅は、化学気相成長によってシリコンの少なくとも一部の実質的に酸化物が存在しない表面上に堆積して、銅−シリコン合金が生成する。特には、酸化物が存在しないシリコンの近傍においてインサイチューでCuClの粒子を還元し、有効な合金触媒を生成させる。銅の堆積物は、シリコンの表面上において、ランダムに配置された”島状”の銅からなっていてもよい。銅−シリコン合金表面は、反応(1)、(2)及び(3)に対して非常に有効な触媒である。1.0%未満の銅レベルで、非常に有効な結果が得られる。銅が、銅で合金化されたシリコンの質量の0.01%から0.5%の場合、特に効率的な操作を実現できる。環境的な影響を考慮すると、ヒドロクロロシラン類の所望の収率を達成するのに必要な銅の使用量が低くなればなる程良好で、ここで確認される低いレベルは、以前に要求されていたものよりも大幅に低い。
【0020】
他の還元可能な銅化合物を、塩化銅に加えて、或いは塩化銅の代わりに使用してもよい。酸化銅、又は酸化銅と金属銅の混合物を使用してもよい。しかし、これらを使用する場合、酸化銅の水素還元で生成する余剰の水分が、クロロシラン類のシロキサン類への加水分解によってクロロシランをロスさせ、高沸点の不純物であるシロキサン類が難しい処分の問題をもたらす。他の適切な還元性物質は、塩化白金酸である。四塩化ケイ素が塩素源の場合、促進金属としては、四塩化ケイ素及び水素の存在下で塩化水素化反応を促進できるものを選択すべきである。塩素源が塩化水素の場合、促進金属は、塩化水素及び水素の存在下でシリコンの塩化水素化を促進できる金属であるべきである。
【0021】
促進金属等の材料がシリコン表面と結合していないと、反応(1)に触媒作用を及ぼす上で効果が無い。例えば、促進金属がシリカやカーボン等の他の非反応性の表面上に存在すると、促進効果は観測されない。促進金属は、シリコンの表面に存在しなければならない。シリコンの素早い消費は、酸化物が存在しないシリコン表面上の促進金属の位置に直接隣接した領域でのみ起こる。
【0022】
促進金属−シリコン合金は、シリコンの表面上で均一に分布している必要はない。それは、ただ十分な量存在している必要がある。そして、シリコン上に元々存在する酸化物の除去は、完全又は均一である必要は無く、堆積させる量の促進金属を収容できるだけで十分である。
【0023】
高温を維持して、一種以上の所望のヒドロクロロシラン類の製造を実現する。反応(1)に従って四塩化ケイ素からトリクロロシランを製造するのを有利にするには、反応器内の温度を、最も良好には400℃から500℃に維持する。反応(2)及び(3)に従ってHClからトリクロロシラン及びジクロロシランを製造するのを有利にするには、反応器内の温度を、最も良好には275℃から350℃に維持する。
【0024】
反応器は、分解する還元性物質が促進金属を堆積させるシリコンの表面に移動するように、脱酸シリコンと促進金属を含む還元性物質との混合を容易にするタイプのものであるべきである。特に好適な反応器としては、移動ガスが混合力をもたらす流動床反応器、ロータリーキルン及び撹拌床反応器等の機械撹拌床反応器、並びに、シリコン及び塩化銅粒子が上方に上昇する水素リッチなガスの流れに逆らって重力で落下する塔型反応器が挙げられる。また、希薄(反応器の容積に対して固体粒子が少ない)相中では、水素化反応を実施することもできる。
【0025】
このプロセスの実際の実施においては、シリコンが反応(1)、(2)又は(3)で消費され、ヒドロクロロシラン類が反応器から除去されるので、実質的に一定の残留量を維持するためには、塩化水素化反応器に未使用のシリコンを加える必要がある。粒状のシリコンを、連続的に又は少量づつ断続的に供給することができる。塩化第一銅の粉体と粒状シリコンを同時に供給することで、単一で簡潔なシステムを使用することが可能となる。従って、好ましくは、塩化第一銅が銅に分解して反応ゾーン中に既に存在しているシリコンの実質的に酸化物が存在しない表面上に堆積する反応ゾーンに、塩化第一銅を直接加える。塩化第一銅と共に供給された未使用のシリコンは、その元々存在する酸化物をなくすために反応ゾーン中で短時間コンディショニングされて、次の機会に加えられる塩化第一銅との反応のために準備される。この手順では、シリコン及び銅含有物質のいずれも前提条件として特別な処置を必要とせず、全体的な効果として、通常の温度及び圧力において有益な高い速度でヒドロクロロシラン類を製造することができる。
【0026】
塩化水素化を促進する作用がある、又はより水素化されたクロロシラン類を比例的に高い収率で生成させる作用がある他の材料を、同様の方法で加えることができる。促進剤の材料の選択においては、反応条件で気化、或いは、反応ゾーンに高温で存在する水素によって還元されて、促進金属を堆積させられる形態のものによって、最良の結果がもたらされる。かかる材料としては、亜鉛及びスズの酸化物、炭酸塩並びに塩化物や、ルテニウム、レニウム、白金、銀、オスミウム及びニッケルの塩化物並びに炭酸塩が挙げられる。
【実施例】
【0027】
以下の非限定的な例で、このプロセスの実施方法を説明する。
【0028】
(例1)
直径122 cmの流動床反応器に、平均粒径200ミクロンに摩砕された13,000 kgの冶金グレードシリコンを投入した。温度500℃、圧力3 MPaで、水素を3350 m3/hrで流して、該反応器を始動させた。該反応器が操作温度に到達した後、温度500℃、圧力3 MPa、3350 m3/hrの流速で四塩化ケイ素の蒸気を流し始めた。水素不存在基準でトリクロロシランを20 mol%含む反応器産物が得られた。反応器のレベルを150 kgに落とした場合において、反応(1)を経てシリコンが消費されるので、冶金グレードシリコンの定期的な添加を始め、かかる方法で、プロセスを幾日か継続した。3日間の操作の後、シリコンの初期投入質量の72%に相当する量が消費され、該量を、等量の未使用の冶金グレードシリコンで置換した。この時点で、1363 kgのシリコンを含むバルクバッグに、4.5 kgの塩化第一銅を添加して、冶金グレードシリコンと塩化第一銅の混合物を調製した。空気コンベヤーを用いて、銅/シリコン混合物を流動床反応器の頂上の固定ホッパーに移動させ、銅/シリコン混合物を、反応器に供給された通常の冶金グレードシリコンと置き換えた。塩化第一銅/シリコン混合物の添加の直後、水素の消費量が大幅に増えることが観測された。水素不存在基準で、反応器の生成物は、トリクロロシランが25 mol%に増加した。消費されたシリコンを補給するために塩化第一銅/シリコンの添加を継続する限り、トリクロロシランの収率は、高いレベルのままであった。塩化銅の添加を終了すると、トリクロロシランの収率が減少し始め、最終的には、塩化第一銅の供給を始める前の元のレベルに戻った。速度の低下は、シリコンと結合している銅が、結合したシリコン粒子が飛沫同伴サイズ(〜15ミクロン)よりも小さなサイズまで化学的にエッチングされた場合のみ、反応器から排出されることを示していた。トリクロロシラン転化率が触媒添加前のレベルに戻った後の反応マスの分析は、銅が堆積しないことを示しており、一方、反応器から排出された微細なシリコン中の銅のレベルはトリクロロシランの収率が減少するのに正比例で減少した。
【0029】
この例によって、酸化物が存在しないシリコンが既に存在している反応ゾーンに促進金属を含む還元性物質を直接添加することで、トリクロロシランへの転化率が向上することが示された。また、塩化銅がシリコンと密接に結合すること、並びに、トリクロロシランの収率が反応マス中の銅の濃度に直接関連していることも示された。
【0030】
(例2)
摩砕された冶金グレードのシリコン(平均粒径=200ミクロン)50 gを小さなオーブン中に保持された直径25 mmのテストチューブ中にセットし、水素を流しながら、525℃の温度に加熱した。四塩化ケイ素を、25℃に保持された恒温容器中にセットした。容器を通して水素をバブリングして水素を四塩化ケイ素で飽和させ、H2:SiCl4のモル比が2.0となるように、該飽和した水素を追加の水素と共に、シリコンを含むテストチューブの下部に流した。合計の水素の流速は、12 cc/分であった。ガスクロマトグラフ分析用に少量のガスサンプルが収集できるように、反応器チューブの出口にセプラムを取り付けた。525℃の反応器温度で、トリクロロシランの収率は、4.6%であった。
【0031】
(例3)
例2と同じ装置と用いて、反応器チューブ中に49 gの冶金グレードのシリコンをセットし、水素雰囲気中で525℃に加熱した。シリコンを熱い水素に曝した後、水素を流し続けながら、0.39 gの塩化第一銅を反応器に加えた。次に、水素の流れを、四塩化ケイ素の恒温容器を経由させ、流出物をサンプリングした。水素不存在基準でのトリクロロシランの濃度は、6.14%であった。
【0032】
(例4)
例2と同じ装置と用いて、予め1%の白金を堆積させたシリコン50グラムを反応器に投入した。水素及び四塩化ケイ素の標準流と525℃で反応させた際の水素不存在基準でのトリクロロシランの濃度は、6.05%であった。
【0033】
(例5)
例2と同じ装置と用いて、冶金グレードのシリコン49.9 gと5%の白金を載せたシリカゲル0.1グラムとの混合物を反応器に投入した。その結果、トリクロロシランの濃度は、水素不存在基準で4.28%であった。
【0034】
(例6)
例2と同じ装置と用いて、白色石英49 gと5%の白金を載せた活性炭0.1グラムとを反応器チューブに充填した。例2で用いたのと同じ標準条件下で、流出物中のトリクロロシラン濃度は、0.1%未満であった。
【0035】
これらの説明例では、水素化反応を促進するためには、活性な促進金属及び金属シリコン源の両方が必要であることが示された。促進金属が存在しないと、収率が低下し(例2)、一方、シリコンが存在しないと、活性な水素化触媒が存在しても、転換が起こらない(例6)。より良好な転化率をもたらすためには、活性な促進金属がシリコンと密接に結合する必要がある(例5と比較した例2及び4)。
【0036】
(例7)
例2に記載したのと同じ装置と用いて、50グラムの冶金グレードシリコンを反応器に投入し、12 cc/分の水素及び6 cc/分の塩化水素の流れの下、300℃に加熱した。シリコンを熱い水素及び塩化水素の混合物に数時間曝した後、水素/塩化水素を流し続けながら、反応器に0.4グラムの塩化第一銅を添加した。例2に示したようにしてサンプリングした際の流出物は、トリクロロシランと数パーセントのジクロロシランを含んでいた。銅−シリコン合金触媒を用いない場合、ジクロロシランのレベルは、痕跡程度に過ぎなかった。
【0037】
本明細書においては、好適な実施態様を参照して、水素含有クロロシラン類の製造方法を説明した。本明細書を考慮すること、或いは、ここに記載した方法を実施することで、当業者には、他の実施態様が明らかになるであろう。明細書及び例は、単なる例として考慮されることを意図しており、本発明の実際の範囲及び精神は、添付の請求の範囲によって示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素、塩素源、及びシリコン粒子を反応させる一種以上のヒドロクロロシランの製造方法であって、
前記シリコン粒子上には、シリコン粒子の表面から酸素を除去し、塩化水素化の促進金属を含む還元性物質を還元し、酸素が除去されたシリコン粒子上に塩化水素化の促進金属を堆積させる化学気相成長によって、塩化水素化の促進金属が堆積している、
ヒドロクロロシランの製造方法。
【請求項2】
前記反応を275℃から550℃で行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
トリクロロシラン及びジクロロシランを含むヒドロクロロシランの製造方法であって、
前記塩素源が、四塩化ケイ素であって;
前記促進金属が、四塩化ケイ素及び水素の存在下で、塩化水素化反応を促進することが可能な金属である
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記反応を400℃から500℃で行うことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
トリクロロシラン及びジクロロシランを含むヒドロクロロシランの製造方法であって、
前記塩素源が、塩化水素であって;
前記促進金属が、水素の存在下で、シリコンの塩化水素化を促進することが可能な金属である
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記反応を275℃から350℃で行うことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
還元性雰囲気中で表面酸化物を有するシリコン粒子を加熱することにより、該表面酸化物を有するシリコン粒子の表面の少なくとも一部から酸素を除去して、少なくとも1つの領域に酸化物が存在しないシリコン粒子を生成させ、
シリコンの塩化水素化を促進することが可能な金属を、該金属を含む還元性物質を還元することを含む化学気相成長によって前記酸化物が存在しない領域上に堆積させて、促進金属−シリコンの合金表面を生成させ、
水素、塩素源、及び促進金属で合金化されたシリコンを反応させて、一種以上のヒドロクロロシランを生成させる、
ヒドロクロロシランの製造方法。
【請求項8】
前記除去、堆積、及び反応を275℃から550℃で行うことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
トリクロロシラン及びジクロロシランを含むヒドロクロロシランの製造方法であって、
前記塩素源が、四塩化ケイ素であって;
前記促進金属が、四塩化ケイ素及び水素の存在下で、シリコンの塩化水素化を促進することが可能な金属である
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記除去、堆積、及び反応を400℃から500℃で行うことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
トリクロロシラン及びジクロロシランを含むヒドロクロロシランの製造方法であって、
前記塩素源が、塩化水素であって;
前記促進金属が、水素の存在下で、シリコンの塩化水素化を促進することが可能な金属である
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記除去、堆積、及び反応を275℃から350℃で行うことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
水素、塩素源、及び表面酸化物を有するシリコンを組み合わせ、
シリコンの表面の少なくとも1つの領域から酸素を除去するのに十分な温度に、水素、塩素源、及びシリコンを加熱し、
酸化物が存在しない領域を有するシリコンと、シリコンの塩化水素化を促進することが可能な金属を含む還元性物質とを接触させ、
前記還元性物質を還元して前記金属を前記酸化物が存在しない領域上に堆積させるのに十分な温度に、前記還元性物質を加熱して、促進金属−シリコンの合金表面を生成させ、
水素、塩素源、及び促進金属で合金化されたシリコンを反応させて、一種以上のヒドロクロロシランを生成させる、
ヒドロクロロシランの製造方法。
【請求項14】
前記複数の加熱により275℃から550℃にし、前記反応を275℃から550℃で行うことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
トリクロロシラン及びジクロロシランを含むヒドロクロロシランの製造方法であって、
前記塩素源が、四塩化ケイ素であって;
前記促進金属が、四塩化ケイ素及び水素の存在下で、シリコンの塩化水素化を促進することが可能な金属である
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記複数の加熱により400℃から500℃にし、前記反応を400℃から500℃で行うことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
トリクロロシラン及びジクロロシランを含むヒドロクロロシランの製造方法であって、
前記塩素源が、塩化水素であって;
前記促進金属が、水素の存在下で、シリコンの塩化水素化を促進することが可能な金属である
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の加熱により275℃から350℃にし、前記反応を275℃から350℃で行うことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記促進金属が、前記促進金属で合金化されたシリコンの質量の0.1%未満であることを特徴とする請求項1、7、又は13に記載の方法。
【請求項20】
前記促進金属が、前記促進金属で合金化されたシリコンの質量の0.01%から0.5%であることを特徴とする請求項1、7、又は13に記載の方法。
【請求項21】
前記還元性物質が、塩化第一銅であることを特徴とする請求項1、7、又は13に記載の方法。
【請求項22】
前記還元性物質が、酸化銅であることを特徴とする請求項1、7、又は13に記載の方法。
【請求項23】
前記還元性物質が、塩化白金酸であることを特徴とする請求項1、7、又は13に記載の方法。
【請求項24】
容器中で、表面酸化物を有するシリコンの表面の少なくとも一部から酸素を除去するのに十分な温度及び時間、水素と、塩素源と、表面酸化物を有するシリコンとを含む混合物を加熱し、
前記容器の内側で、還元性雰囲気中、シリコンの塩化水素化を促進することが可能な金属を含む還元性物質と、少なくとも部分的に酸化物が存在しない表面を有するシリコンとを、前記還元性物質を還元して前記金属を前記シリコンの酸化物が存在しない表面上に堆積させるのに十分高い温度で接触させ、
前記容器の内側で、水素と、塩素源と、促進金属で合金化されたシリコンとを反応させて、一種以上のヒドロクロロシランを生成させる、
ヒドロクロロシランの製造方法。
【請求項25】
前記容器中で、シリコン粒子、水素、塩素源、及び塩化水素化を促進することが可能な金属を含む還元性物質を、前記シリコン粒子の表面から酸素を除去し、前記還元性物質を還元し、化学気相成長によって前記シリコン粒子の表面上に前記金属が堆積するのに十分な時間、275℃から550℃に維持して、促進金属−シリコンの合金表面を生成させる、
促進金属を含む反応マスの形成方法。
【請求項26】
前記還元性物質が塩化第一銅であって、
前記金属が銅であって、該銅を化学気相成長によって前記シリコンの表面の少なくとも一部上に堆積させて、銅−シリコンの合金表面を生成させる、
請求項25に記載の方法。

【公表番号】特表2008−532907(P2008−532907A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500692(P2008−500692)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/008204
【国際公開番号】WO2006/098722
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(507002985)アールイーシー シリコン インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】