説明

ヒドロクロロフルオロオレフィン発泡剤組成物

1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび/または2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび下記:ヒドロクロロフルオロオレフィン、ヒドロフルオロオレフィン、ヒドロクロロオレフィン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、炭化水素、置換または非置換エーテル、置換または非置換アルコール、置換または非置換アルデヒド、置換または非置換ケトンおよび置換または非置換エステルの中から選択される少なくとも一種の追加化合物を含む組成物であって、沸点が20℃以上である組成物の、二成分スプレーポリウレタンフォーム用の発泡剤としての使用と、それを使用したポリウレタンフォームの製造方法と、本発明の実施に適した特定組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロクロロフルオロオレフィン-ベースの発泡剤組成物と、このヒドロクロロフルオロオレフィン-ベースの発泡剤組成物の二成分スプレーポリウレタンフォームの製造での使用とに関するものである。本発明はさらに、上記使用に適したいくつかの特定の発泡剤組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームの製造方法は公知で、一般には有機イソシアネート化合物とポリオールまたはポリオールの混合物とを発泡剤の存在下で反応させる。違いは、イソシアネート化合物とポリオール化合物とを混合した後にフォームを膨張させる一成分配合組成物であるか、フォームの膨張中にイソシアネート化合物とポリオール化合物とを混合する二成分配合組成物であるかにある。
【0003】
ポリウレタンフォームの分野では、他の分野と同様に、オゾン層の破壊を防ぐことを目的としたモントリオール議定書によって発泡剤としてのフッ素化生成物の使用に厳しい規制が課されている。発泡剤の第1世代であるCFC(クロロフルオロカーボン)および発泡剤の第2世代であるHCFC(ヒドロクロロフルオロカーボン)は比較的高いODP(オゾン層破壊係数)を有する。HFC(ヒドロフルオロカーボン)は発泡剤の第3世代で、ODPが無視できるほど低い。そのため現在ではこの化合物がフォームの分野で広く用いられている。
【0004】
一方、HFCのGWP(地球温暖化係数)がかなり高い。従って、発泡剤の第4世代であるヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFOまたはHFCO)に代えることが提案されている。特許文献1(国際特許第WO2009/089511号公報)にはヒドロクロロフルオロオレフィンをベースにした組成物、特に1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HFCO−1233zd)をベースにした組成物のポリウレタンフォームの製造での使用が記載されている。
【0005】
HFCO−1233zdは特にその低い熱伝導率によってポリウレタンフォームの発泡剤として良く機能する化合物である。しかし、本発明者はこの化合物が特定の用途、特に二成分スプレーポリウレタンフォーム(一般に「スプレーフォーム」とよばれる)の製造の中で問題を引き起こすことを確認した。
【0006】
二成分スプレーポリウレタンフォームは、2つの前駆体製品すなわちイソシアネートを含む組成物(A)と発泡剤を含むポリオール配合物とを含む組成物(B)から成る。これら2つの組成物を一般に内部ミキサーを備えたガンを用いてスプレーする。従って、2つの組成物の混合はスプレーの瞬間に行われる。
【0007】
しかし、HFCO−1233zdは最も一般的な操作温度で蒸発しやすいため、フォームの前駆体製品の包装時、ハンドリング時、塗布時に問題が起こる。すなわち、包装時にはHFCO−1233zdの減少を防ぐために冷却が必要になり、貯蔵時または輸送時には前駆体化製品が容器内で過剰な圧力になるリスクがあるということがわかる。こらに、二成分スプレーフォームの製造時(すなわちスプレー時)に発泡剤の大部分が失われる可能性がある。沸点がHFCO−1233zdの沸点よりさらに低い2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HFCO−1233xf)では同じ問題がより急激に起こる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際特許第WO2009/089511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、包装時、ハンドリング時および使用時の上記問題を避け、好ましくは、発泡剤としてHFCO−1233zdまたはHFCO−1233xfを用いて得られるフォームと比較して本発明フォームの物理化学的特性を大幅に低下させずに、二成分スプレーポリウレタンフォームを製造するというニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1発明の対象は、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび/または2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、ヒドロクロロフルオロオレフィン、ヒドロフルオロオレフィン、ヒドロクロロオレフィン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、炭化水素、置換または非置換エーテル、置換または非置換アルコール、置換または非置換アルデヒド、置換または非置換ケトンおよび置換または非置換エステルの中から選択される少なくとも一種の追加の化合物とを含む組成物であって、沸点が20℃以上である組成物の、二成分スプレーポリウレタンフォーム用の発泡剤としての使用にある。
沸点は実施例1に記載の方法で測定する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発泡剤の一実施例では、上記組成物の沸点は21℃以上、好ましくは22℃以上、さらに好ましくは23℃以上、さらに好ましくは24℃以上、さらに好ましくは25℃以上、さらに好ましくは26℃以上であり且つ好ましくは30℃以下である。
【0012】
本発明の一実施例では、発泡剤として用いる化合物は下記(1)および/または(2)であり:
(1)不燃性であり、および/または
(2)GWPが150以下、好ましくは100以下、さらに好ましくは50以下、さらに好ましくは25以下であり、および/または、
二成分スプレーポリウレタンフォームは下記(1)〜(9)特性を有する:
(1)気泡サイズが0.05〜1mmであり、および/または
(2)独立気泡の比率が90%以上、好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上であり、および/または
(3)密度が55kg/m3以下、好ましくは24〜48kg/m3であり、および/または
(4)70℃で48時間後の体積変化率が3%以下、好ましくは1%以下であり、および/または
(5)−20℃で48時間後の体積変化率が3%以下、好ましくは1%以下であり、および/または
(6)10℃での初期熱伝導率が24mW/m.K以下であり、および/または
(7)エージング後の10℃での熱伝導率が28mW/m.K以下であり、および/または
(8)膨張に対して平行な方向の圧縮強度が100kPa以上、好ましくは130kPa以上であり、および/または
(9)膨張に対して垂直な方向の圧縮強度が90kPa以上、好ましくは100kPa以上である。
【0013】
本発明の他の対象は、本発明の発泡剤を用いたポリウレタンフォームの製造方法にある。この方法は下記(1)〜(3):
(1)イソシアネート化合物を含む組成物Aを用意し、
(2)ポリオール化合物と発泡剤とを含む組成物Bを用意し、
(3)組成物Aと組成物Bとをスプレー・混合して組成物Aと組成物Bとを反応させてポリウレタンフォームにする、
の段階を含み、発泡剤は1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび/または2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、ヒドロクロロフルオロオレフィン、ヒドロフルオロオレフィン、ヒドロクロロオレフィン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、炭化水素、置換または非置換エーテル、置換または非置換アルコール、置換または非置換アルデヒド、置換または非置換ケトンおよび置換または非置換エステルの中から選択される少なくとも一種の追加の化合物とを含む組成物によって構成され、この組成物は沸点が20℃以上である。
【0014】
本発明方法の一実施例では、発泡剤の沸点が21℃以上、好ましくは22℃以上、さらに好ましくは23℃以上、さらに好ましくは24℃以上、さらに好ましくは25℃以上、さらに好ましくは26℃以上で且つ好ましくは30℃以下である。
【0015】
本発明方法の一実施例では、発泡剤が下記(1)および(2)である:
(1)不燃性である、および/または
(2)GWPが50以下、好ましくは25以下であり、および/または、
ポリウレタンフォームが下記(1)〜(9)の特性を有する:
(1)気泡サイズが0.05〜1mmであり、および/または
(2)独立気泡の比率が90%以上、好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上であり、および/または
(3)密度が55kg/m3以下、好ましくは24〜48kg/m3であり、および/または
(4)70℃で48時間後の体積変化率が3%以下、好ましくは1%以下であり、および/または
(5)−20℃で48時間後の体積変化率が3%以下、好ましくは1%以下であり、および/または
(6)10℃での初期熱伝導率が24mW/m.K以下であり、および/または
(7)エージング後の10℃での熱伝導率が28mW/m.K以下であり、および/または
(8)膨張に対して平行な方向の圧縮強度が100kPa以上、好ましくは130kPa以上であり、および/または
(9)膨張に対して垂直な方向の圧縮強度が90kPa以上、好ましくは100kPa以上である。
【0016】
本発明の発泡剤の一実施例では、上記の追加の化合物が、トランス−1,2−ジクロロエチレン、エチルテトラフルオロエチルエーテル、酢酸メチル、ギ酸メチル、ジメトキシメタン、ノナフルオロエトキシブタン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンおよびこれらの混合物の中から選択される。
【0017】
上記方法の一実施例では、発泡剤が下記(1)〜(9)から成る:
(1)75〜90%の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、10〜25%のトランス−ジクロロエチレン、または
(2)30〜95%の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペと、5〜70%のエチルテトラフルオロエチルエーテル、または
(3)50〜95%の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、5〜50%のノナフルオロエトキシブタン、または
(4)58〜95%の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、5〜42%の酢酸メチル、または
(5)71〜95%の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、5〜29%のギ酸メチル、または
(6)81〜86%の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、14〜19%の1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、または
(7)80〜90%の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、10〜20%のジメトキシメタン、または
(8)60〜85%の2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、15〜40%の酢酸メチル、または
(9)70〜80%の2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、20〜30%のトランス−ジクロロエチレン。
【0018】
本発明の他の対象は、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、ノナフルオロエトキシブタンおよびエチルテトラフルオロエチルエーテルから選択される少なくとも一種の追加化合物とを含む組成物にある。
【0019】
本発明の一実施例の組成物は下記(1)または(2)から成る:
(1)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、ノナフルオロエトキシブタン(重量比は50:50〜95:5)、
(2)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、エチルテトラフルオロエチルエーテル(重量比は30:70〜95:5)
【0020】
本発明の他の対象は、2−クロロ3,3,3−トリフルオロプロペンと、酢酸メチル、ギ酸メチル、ジメトキシメタン、トランス−ジクロロエチレン、エチルテトラフルオロエチルエーテルおよびノナフルオロエトキシブタンの中から選択される少なくとも一種の追加の化合物とを含む、上記方法を実施するための特定の組成物にある。
【0021】
本発明の一実施例の組成物は下記(1)または(2)を含む:
(1)2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、酢酸メチル(重量比は60:40〜85:15)、または、
(2)2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、トランス−ジクロロエチレン(重量比は70:30〜80:20)
【0022】
本発明の一実施例では、上記組成物がポリオール化合物を好ましくは60〜90%の重量含有率でさらに含む。
【0023】
本発明を用いることで従来法の上記欠点を無くすことができる。特に、二成分スプレーポリウレタンフォームを製造するための発泡剤が提供される。この発泡剤を用いることで包装時、ハンドリング時および使用時に、HFCO−1233zdまたはHFCO−1233xfを用いた場合に直面する上記の問題を避けることができ、それは少なくとも一種の共発泡剤をHFCO−1233zdまたはHFCO−1233xfと組合せて添加することで達成される。
【0024】
こうして得られた混合物は、HFCO−1233zd単独(約18℃)またはHFCO−1233xf単独(約13℃)の沸点より高い沸点を有し、多くの場合、特に周囲温度よりも高い沸点を有する。
【0025】
本発明の特定実施例は下記の利点の一つ、好ましくは複数を有する:
(1)本発明の発泡剤は環境の制約(特に低GWP)、毒性および安全性(不燃性)に対して許容可能な特性を有し、ポリオールに可溶である。
(2)本発明で得られるポリウレタンフォームは熱伝導率、密度、寸法安定性、気泡構造および圧縮強度に関して許容可能な特性を有し、好ましくは、これらの特性は、発泡剤としてHFCO−1233zd単独(それぞれHFCO−1233xf単独)を用いて得られる二成分スプレーポリウレタンフォームの特性と同程度に満足のいくものである。
(3)発泡剤とポリオール化合物との混合は発泡剤の過剰な減少なしに周囲温度で実施でき、これによってより経済的になり且つ発泡剤の使用が容易になる。
(4)発泡剤と一緒に配合したポリオールの蒸気圧は低くなり、使用する容器(ドラム)の操作圧力以上の圧力に達するリスクが制限される。
(5)比較的に高い温度の場合のフォーム製造時の発泡剤のロスが制限される。
【0026】
以下、本発明をより詳細に説明するが、本発明が下記に限定されるものではない。特に断らない限り、全ての百分比は重量百分比である。
【0027】
発泡剤
本発明は、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HFCO−1233zd)または2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HFCO−1233xf)と、少なくとも一種の共発泡剤(追加の化合物)の、二成分スプレーポリウレタンフォームの製造での発泡剤としての使用に基づくものであり、本発明はさらに上記使用に適した特定の組成物を提供する。
【0028】
一般に、上記の追加の化合物は追加の化合物の沸点がHFCO−1233zdの沸点より高く、HFCO−1233zdとこの追加の化合物とを含む組成物の沸点が20℃以上または21℃以上または22℃以上または23℃以上または24℃以上または25℃以上または26℃以上で且つ好ましくは30℃以下となるように選択される。
【0029】
発泡剤は特に、基本的にHFCO−1233zdと単一の追加化合物とから成る二元組成物(binary composition)、または、基本的にHFCO−1233xfと単一の追加化合物とから成る二元組成物、または、基本的にHFCO−1233zdと2種の追加化合物とから成る三元組成物、または、基本的にHFCO−1233xfと2種の追加化合物とから成る三元組成物、または、基本的にHFCO−1233zdとHFCO−1233xfと単一の追加化合物とから成る三元組成物にすることができる。
【0030】
「基本的に〜から成る」とは、組成物が、上記化合物に加えて、不純物またはその他の添加剤を任意成分として1%以下、好ましくは0.5%以下、さらには0.1%以下の比率で含むことができるということを意味する。
【0031】
HFCO−1233zdはトランス形であるのが好ましい。トランス形はシス形より有毒でないという利点がある。トランス形のHFCO−1233zdは少なくとも80重量%であるのが有利であり、好ましくは少なくとも90重量%、特に好ましくは少なくとも95重量%、例えば少なくとも98重量%にする。理想的にはHFCO−1233zdの基本的に全てをトランス形にする。
【0032】
追加の化合物は一般に下記の中から選択される:ヒドロクロロフルオロオレフィン(塩素およびフッ素置換基を有するアルケン)、ヒドロフルオロオレフィン(フッ素置換基を有するアルケン)、ヒドロクロロオレフィン(塩素置換基を有するアルケン)、飽和または不飽和炭化水素(特にアルカンまたはアルケン)、ヒドロフルオロカーボン(フッ素置換基を有する炭化水素)、ヒドロクロロフルオロカーボン(フッ素および塩素置換基を有する炭化水素)、置換または非置換のエーテル(特に塩素および/またはフッ素置換基を含むハロゲン化エーテル)、置換または非置換のアルコール(特に塩素および/またはフッ素置換基を含むハロゲン化アルコール)、置換または非置換のアルデヒド(特に塩素および/またはフッ素置換基を含むハロゲン化アルデヒド)、置換または非置換のケトン(特に塩素および/またはフッ素置換基を含む、ハロゲン化ケトン)および置換または非置換のエステル(特に塩素および/またはフッ素置換基を含むハロゲン化エステル)およびこれらの混合物。
【0033】
好ましい追加の化合物はトランス−1,2−ジクロロエチレン(TDCE)、エチルテトラフルオロエチルエーテル(ETFEE)、酢酸メチル、ギ酸メチル、ジメトキシメタン、ノナフルオロエトキシブタン(HFE−7200)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)およびこれらの混合物である。
【0034】
追加の化合物の種類および量は、組成物が(スプレー時の蒸気放出に関するリスクを考慮して)好ましくは不燃性になり且つ組成物のGWPが好ましくはできるだけ低く(好ましくは150以下または100以下または50以下または25以下に)なるように選択される。
【0035】
組成物の可燃性または不燃性は、組成物の液相中で、ASTM規格D3828に従って測定する。
【0036】
本明細書では地球温暖化係数(GWP)は非特許文献1(オゾン層破壊の科学的評価、2002、世界気象協会の全球オゾンの研究・モニタリングプロジェクトの報告)に記載の方法に従って、二酸化炭素に対し且つ100年の期間に対して定義される。
【非特許文献1】オゾン層破壊の科学的評価、2002、世界気象協会の全球オゾンの研究・モニタリングプロジェクトの報告
【0037】
追加の化合物の種類および量は、本発明の発泡剤の存在下でイソシアネート化合物とポリオール化合物との反応で得られるポリウレタンフォームが下記(1)〜(8)の特性を有するように選択するのが好ましい:
(1)走査電子顕微鏡法で測定した気泡サイズが0.05〜1mmである;
(2)ガスピクノメータを用いてASTM規格D2856−87に従って測定した、独立気泡の比率が90%以上、好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上である;
(3)密度が55kg/m3以下、好ましくは24〜48kg/m3である(ISO規格845:2006);
(4)70℃で48時間後の体積変化率が3%以下(好ましくは1%以下)であり、−20℃で48時間後の体積変化率が3%以下(好ましくは1%以下)である;
(5)10℃での初期熱伝導率が24mW/m.K以下である(ISO規格8301);
(6)エージング後の10℃での熱伝導率が28mW/m.K以下である(ISO規格8301);
(7)ASTM規格D1621−00に従って測定した、膨張に対して平行な方向の圧縮強度が100kPa以上、好ましくは130kPa以上である;
(8)ASTM規格D1621−00に従って測定した、膨張に対して垂直な方向の圧縮強度が90kPa以上、好ましくは100kPa以上である。
【0038】
HFCO−1233zdまたはHFCO−1233xfはポリウレタンフォームに一般に(熱伝導率、密度、寸法安定性、気泡構造および圧縮強度に関して)優れた特性を与える。従って、本発明で用いる発泡剤は特に熱伝導率、密度、寸法安定性、気泡構造および圧縮強度に関してHFCO−1233zd(それぞれHFCO−1233xf)で得られる特性にできるだけ近い特性をポリウレタンフォームに与えることが望ましい。
【0039】
そのために、発泡剤組成物中のHFCO−1233zdおよび/またはHFCO−1233xfの比率は50%以上、好ましくは55%または60%または65%または70%または75%または80%以上であるのが好ましい。
【0040】
好ましい組成物は以下である:
(1)HFCO−1233zdとTDCEとから成るか、これらを主とする混合物:75〜90%のHFCO−1233zdと、10〜25%のTDCE;
(2)HFCO−1233zdとETFEEとから成るか、これらを主とする混合物:30〜95%のHFCO−1233zdと5〜70%のETFEE;
(3)HFCO−1233zdとHFE−7200とから成るか、これらを主とする混合物:50〜95%のHFCO−1233zdと5〜50%のHFE−7200;
(4)HFCO−1233zdと酢酸メチルとから成るか、これらを主とする混合物:58〜95%のHFCO−1233zdと5〜42%の酢酸メチル;
(5)HFCO−1233zdとギ酸メチルとから成るか、これらを主とする混合物:71〜95%のHFCO−1233zdと5〜29%のギ酸メチル;
(6)HFCO−1233zdとHFC−365mcとから成るか、これらを主とする混合物:81〜86%のHFCO−1233zdと14〜19%のHFC−365mc;
(7)HFCO−1233zdとジメトキシメタンとから成るか、これらを主とする混合物:80〜90%のHFCO−1233zdと10〜20%のジメトキシメタン;
(8)HFCO−1233xfと酢酸メチルとから成るか、これらを主とする混合物:60〜85%のHFCO−1233xfと15〜40%の酢酸メチル;
(9)HFCO−1233xfとTDCEとから成るか、これらを主とする混合物:70〜80%のHFCO−1233xfと20〜30%のTDCE。
【0041】
上記の好ましい組成物中のHFCO−1233zdの含有量の上限は主として沸点の選択基準によって決まり、その沸点は約20℃以上であるのが望ましい。
【0042】
二元HFCO−1233zd/TDCE混合物のHFCO−1233zdが75%以下になると、ポリウレタンフォームの寸法安定性が低下する。
二元HFCO−1233zd/ETFEE混合物のHFCO−1233zdが30%以下になると、混合物は引火性になる。
二元HFCO−1233zd/酢酸メチル混合物は58%以下のHFCO−1233zdを含むと、合物が引火性になる。
二元HFCO−1233zd/ギ酸メチル混合物が71%以下のHFCO−1233zdを含む場合には、混合物が引火性になる。
二元HFCO−1233zd/HFC−365mc混合物が81%以下のHFCO−1233zdを含む場合には、混合物のGWPが150以上になる。
【0043】
ポリウレタンフォームの製造
本発明では、イソシアネート化合物を含む組成物Aと、ポリオール化合物と上記発泡剤とを含む組成物Bとから二成分スプレーポリウレタンフォームを製造する。これら2つの組成物を(一般に内部ミキサーを備えたガンによって)スプレーし、プレーする瞬間に混合する。ポリウレタンを形成するためのポリオール化合物とイソシアネート化合物との反応はインサイチュー(その場)すなわちフォームの使用場所で行なわれる。
【0044】
「二成分スプレーポリウレタンフォーム」はスプレーフォーム(spray form)ともよばれる。このフォームは一成分ポリウレタンフォーム(OCF)とは異なる。一成分フォームは配合したポリオールおよびイソシアネートの両方が混合されたエアゾールを用いて製造される。この場合、発泡剤は推進剤の役目をする。一成分フォームでは低沸点の発泡剤、例えば沸点が−19℃のトランス−HFO−1234zeが望ましい。
【0045】
上記組成物Bは60〜90%のポリオール化合物と、5〜30%の発泡剤とを含むのが好ましい。
「ポリオール化合物」とはポリオールまたはポリオールの混合物を意味する。適したポリオールの例はグリセロール、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ポリエーテルポリオール、酸化アルキレンまたは酸化アルキレンの混合物とグリセロール、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ポリエステルポリオールとの縮合で得られるもの、例えばポリカルボン酸、特にシュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、イソフタル酸またはテレフタル酸とグリセロール、エチレングリコール、トリメチロールプロパンまたはペンタエリトリトールとの縮合で得られるものである。
【0046】
さらに、酸化アルキレン、特に酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンを芳香族アミン、特に2,4−トルエンジアミンと2,6−トルエンジアミンの混合ものに付加して得られるポリエーテルポリオールも適している。ポリエーテルポリオールが特に好ましい。
【0047】
ポリオールの他のタイプとしては特にヒドロキシル末端のポリチオエーテル、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリオレフィンおよびポリシロキサンが挙げられる。
【0048】
上記組成物Bは当分野で周知の一種以上の界面活性剤および一種以上の触媒を好ましくは5〜20%の総量でさらに含むことができる。
上記組成物Aはイソシアネート化合物、好ましくは有機ポリイソシアネートを含む。
【0049】
有機ポリイソシアネートとしては炭素原子数が18以下の炭化水素ベースの基を有する脂肪族ポリイソシアネート、15以下の炭素原子を含む炭化水素ベースの基を有する脂環式ポリイソシアネート、6〜15個の炭素原子を含む炭化水素ベースの基を有する芳香族ポリイソシアネート、および、8〜15個の炭素原子を含む炭化水素ベースの基を有するアリール脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0050】
好ましいポリイソシアネートは2,4−トルエンジイソシアネートおよび2,6−トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートおよびこれらの混合物である。変性ポリイソシアネート、例えばカルボジイミド基、ウレタン基、イソシアヌレート基、ウレア基またはビウレア基を含むものも適している。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
実施例1(発泡剤の沸点)
組成物の温度測定に用いる技術は沸点上昇 (ebulliometry) 法である。
エブリオメータ(沸点測定装置)は凝縮器を上部に有する周囲圧力(1.013バール)下に維持された丸底フラスコから成る。容量の少なくとも50%のHFCO−1233xf(またはHFCO−1233xf)を導入する。HFCO−1233zdを加熱して沸騰させ、温度を測定する。丸底フラスコを冷却し、所定の少ない量の別の成分を丸底フラスコに添加する。添加後に毎回、混合物を沸騰させ、媒体の温度を測定する。
組成物の測定温度をHFCO−1233zdの測定温度の関数として補正する。
結果を[表1]にまとめる。不確実性は組成物に対して±1%で、温度に対して±0.5℃である。
【0052】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二成分スプレーポリウレタンフォームでの発泡剤としての組成物の使用であって、上記組成物が1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび/または2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、ヒドロクロロフルオロオレフィン、ヒドロフルオロオレフィン、ヒドロクロロオレフィン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、炭化水素、置換または非置換のエーテル、置換または非置換のアルコール、置換または非置換のアルデヒド、置換または非置換のケトンおよび置換または非置換のエステルの中から選択される少なくとも一種の追加の化合物とを含み、且つ、上記組成物が沸点が20℃以上であることを特徴とする使用。
【請求項2】
上記組成物の沸点が21℃以上、好ましくは22℃以上、さらに好ましくは23℃以上、さらに好ましくは24℃以上、さらに好ましくは25℃以上、さらに好ましくは26℃以上で且つ好ましくは30℃以下である請求項1に記載の使用。
【請求項3】
上記組成物が下記(1)および/または(2):
(1)不燃性であり、および/または
(2)GWPが150以下、好ましくは100以下、さらに好ましくは50以下、さらに好ましくは25以下であり、および/または、
上記二成分スプレーポリウレタンフォームが下記(1)〜(9)である請求項1または2に記載の使用:
(1)気泡サイズが0.05〜1mmであり、および/または
(2)独立気泡の比率が90%以上、好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上であり、および/または
(3)密度が55kg/m3以下、好ましくは24〜48kg/m3であり、および/または
(4)70℃で48時間後の体積変化率が3%以下、好ましくは1%以下であり、および/または
(5)−20℃で48時間後の体積変化率が3%以下、好ましくは1%以下であり、および/または
(6)10℃での初期熱伝導率が24mW/m.K以下であり、および/または
(7)エージング後の10℃での熱伝導率が28mW/m.K以下であり、および/または
(8)膨張に対して平行な方向の圧縮強度が100kPa以上、好ましくは130kPa以上であり、および/または
(9)膨張に対して垂直な方向の圧縮強度が90kPa以上、好ましくは100kPa以上である。
【請求項4】
上記の追加の化合物がトランス−1,2−ジクロロエチレン、エチルテトラフルオロエチルエーテル、酢酸メチル、ギ酸メチル、ジメトキシメタン、ノナフルオロエトキシブタン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンおよびこれらの混合物の中から選択される請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
上記組成物が下記(1)〜(9)から成る請求項4に記載の使用:
(1)75〜90%の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、10〜25%のトランス−ジクロロエチレン、または
(2)30〜95%の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、5〜70%のエチルテトラフルオロエチルエーテル、または
(3)50〜95%の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、5〜50%のノナフルオロエトキシブタン、または
(4)58〜95%の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、5〜42%の酢酸メチル、または
(5)71〜95%の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、5〜29%のギ酸メチル、または
(6)81〜86%の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、14〜19%の1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、または
(7)80〜90%の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、10〜20%のジメトキシメタン、または
(8)60〜85%の2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、15〜40%の酢酸メチル、または
(9)70〜80%の2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、20〜30%のトランス−ジクロロエチレン。
【請求項6】
下記(1)〜(3):
(1)イソシアネート化合物を含む組成物Aを用意し、
(2)ポリオール化合物と発泡剤とを含む組成物Bを用意し、
(3)組成物Aと組成物Bとをスプレー且つ混合して、組成物Aと組成物Bとの反応でポリウレタンフォームにする、
段階を含むポリウレタンフォームの製造方法において、発泡剤が1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよび/または2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、ヒドロクロロフルオロオレフィン、ヒドロフルオロオレフィン、ヒドロクロロオレフィン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、炭化水素、置換または非置換のエーテル、置換または非置換のアルコール、置換または非置換のアルデヒド、置換または非置換のケトンおよび置換または非置換のエステルの中から選択される少なくとも一種の追加の化合物を含む組成物から構成され、且つ、上記組成物の沸点が20℃以上であることを特徴とする方法。
【請求項7】
発泡剤の沸点が21℃以上、好ましくは22℃以上、さらに好ましくは23℃以上、さらに好ましくは24℃以上、さらに好ましくは25℃以上、さらに好ましくは26℃以上で且つ好ましくは30℃以下である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
発泡剤が下記(1)および/または(2):
(1)不燃性であり、および/または
(2)GWPが50以下、好ましくは25以下であり、
および/または、ポリウレタンフォームが下記(1)〜(9)を有する請求項6または7に記載の方法、:
(1)気泡サイズが0.05〜1mmであり、および/または
(2)独立気泡の比率が90%以上、好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上であり、および/または
(3)密度が55kg/m3以下、好ましくは24〜48kg/m3であり、および/または
(4)70℃で48時間後の体積変化率が3%以下、好ましくは1%以下であり、および/または
(5)−20℃で48時間後の体積変化率が3%以下、好ましくは1%以下であり、および/または
(6)10℃での初期熱伝導率が24mW/m.K以下であり、および/または
(7)エージング後の10℃での熱伝導率が28mW/m.K以下であり、および/または
(8)膨張に対して平行な方向の圧縮強度が100kPa以上、好ましくは130kPa以上であり、および/または
(9)膨張に対して垂直な方向の圧縮強度が90kPa以上、好ましくは100kPa以上である。
【請求項9】
上記の追加の化合物がトランス−1,2−ジクロロエチレン、エチルテトラフルオロエチルエーテル、酢酸メチル、ギ酸メチル、ジメトキシメタン、ノナフルオロエトキシブタン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンおよびこれらの混合物の中から選択される請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
発泡剤が下記(1)〜(9)から成る請求項9に記載の方法:
(1)75〜90%の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、10〜25%のトランス−ジクロロエチレン、または
(2)30〜95%の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、5〜70%のエチルテトラフルオロエチルエーテル、または
(3)50〜95%の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、5〜50%のノナフルオロエトキシブタン、または
(4)58〜95%の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、5〜42%の酢酸メチル、または
(5)71〜95%の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、5〜29%のギ酸メチル、または
(6)81〜86%の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、14〜19%の1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、または
(7)80〜90%の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、10〜20%のジメトキシメタン、または
(8)60〜85%の2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、15〜40%の酢酸メチル、または
(9)70〜80%の2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、20〜30%のトランス−ジクロロエチレン。
【請求項11】
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、ノナフルオロエトキシブタンおよびエチルテトラフルオロエチルエーテルから選択される少なくとも一種の追加の化合物とを含む組成物。
【請求項12】
下記(1)または(2)から成る請求項11に記載の組成物:
(1)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、ノナフルオロエトキシブタン(重量比は50:50〜95:5)、または、
(2)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、エチルテトラフルオロエチルエーテル(重量比は30:70〜95:5)
【請求項13】
2−クロロ3,3,3−トリフルオロプロペンと、酢酸メチル、ギ酸メチル、ジメトキシメタン、トランス−ジクロロエチレン、エチルテトラフルオロエチルエーテルおよびノナフルオロエトキシブタンの中から選択される少なくとも一種の追加の化合物とを含む組成物。
【請求項14】
下記(1)または(2)を含む請求項13に記載の組成物:
(1)2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、酢酸メチル(重量比は60:40〜85:15)、または、
(2)2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと、トランス−ジクロロエチレン(重量比は70:30〜80:20)
【請求項15】
ポリオール化合物を好ましくは60〜90%の重量含有率でさらに含む請求項11〜14のいずれか一項に記載の組成物。

【公表番号】特表2013−521397(P2013−521397A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556561(P2012−556561)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【国際出願番号】PCT/FR2011/050317
【国際公開番号】WO2011/110762
【国際公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】