説明

ヒハツ抽出物を含有する飲食品組成物及びヒハツ抽出物含有飲食品組成物の味改善方法

【課題】ヒハツ抽出物を含有する飲食品であって、摂取により温熱を感じることができ、かつヒハツ抽出物に由来する良好な香ばしさや旨みを残しつつ辛さと刺激感が抑制されている飲食品を提供することを課題とする。
また、摂取により温熱を感じさせるに足りる量のヒハツ抽出物を含有させた飲食品において、ヒハツ抽出物に由来する良好な香ばしさや旨みを残しつつ辛さと刺激感を抑制する方法、すなわち、温熱効果を有するヒハツ抽出物含有飲食品における味改善方法を提供することも別の課題とする。
【解決手段】ヒハツ抽出物を0.2重量%(抽出物乾燥粉末換算)以上含有するヒハツ抽出物含有飲食品において、ヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末換算)に対して乳脂肪を0.1〜70重量部、及び乳タンパク質を0.1〜30重量部含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒハツ抽出物を含有する飲食品組成物に関する。また本発明は、ヒハツ抽出物含有飲食品組成物の味を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コショウ科コショウ属植物のヒハツ(Piper longum)は、香辛料の原料として知られ、香辛料として使用される場合には、辛さ、刺激感、香ばしさ、及び旨みを呈する。そして、その抽出物には、温熱効果に基づく冷え性改善効果があることが知られている(特許文献1)。
【0003】
飲食品に配合した場合、摂取時に温熱効果を発揮させるためには一定量以上のヒハツ抽出物を配合する必要がある。しかしながら、ヒハツ抽出物には特有の辛さと刺激感があるため、一定量以上配合すると飲食品の味に悪影響を及ぼすという問題があった。
【0004】
これまでに、ヒハツ抽出物の持つ不快な辛さや刺激感が改善されたヒハツ抽出物含有飲食品として糖及び酸を添加した飲食品、並びにヒハツ抽出物の辛さや刺激感の改善方法として糖及び酸を添加する方法が報告されている(特許文献2)。また、ヒハツ抽出物の持つ不快な辛さや刺激感が改善されたヒハツ抽出物含有飲食品として果汁、野菜汁、又は茶等を添加した飲食品、並びにヒハツ抽出物の辛さや刺激感の改善方法として果汁、野菜汁、又は茶等を添加する方法が報告されている(特許文献3)。しかしながら、これらの飲食品及び方法においては配合できるヒハツ抽出物の量に限りがあるため、温熱効果の点で満足のいくものではなかった。また、ヒハツの不快な辛さや刺激感のみならず、良好な香ばしさや旨みまでもが抑えられることになるため、味の点においても満足のいくものではなかった。
【特許文献1】特開2003-40788号公報
【特許文献2】特開2003-135037号公報
【特許文献3】特開2007-274929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ヒハツ抽出物を含有する飲食品であって、摂取により温熱を感じることができ、かつヒハツ抽出物に由来する良好な香ばしさや旨みを残しつつ辛さと刺激感が抑制されている飲食品を提供することを課題とする。
【0006】
また、本発明は、摂取により温熱を感じさせるに足りる量のヒハツ抽出物を含有させた飲食品において、ヒハツ抽出物に由来する良好な香ばしさや旨みを残しつつ辛さと刺激感を抑制する方法、すなわち、温熱効果を有するヒハツ抽出物含有飲食品における味改善方法を提供することも別の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討した結果、ヒハツ抽出物を0.2重量%(抽出物乾燥粉末換算)以上含有するヒハツ抽出物含有飲食品において、ヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末換算)に対して乳脂肪を0.1〜70重量部、及び乳タンパク質を0.1〜30重量部含有させた飲食品は、摂取により温熱を感じることができ、かつヒハツ抽出物に由来する良好な香ばしさと旨みを残しつつ辛さと刺激感が抑制されていることを見出した。さらに本発明者らは、ヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末換算)に対し、0.1〜70重量部の乳脂肪及び0.1〜30重量部の乳タンパク質をヒハツ抽出物含有飲食品組成物中に含有させる方法が、ヒハツ抽出物を0.2重量%(抽出物乾燥粉末換算)以上含有するヒハツ抽出物含有飲食品において、ヒハツ抽出物に由来する良好な香ばしさと旨みを残しつつ辛さと刺激感を抑制することを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0008】
1−1.ヒハツ抽出物含有飲食品組成物
(1−1―1)ヒハツ抽出物、乳脂肪、及び乳タンパク質を含有し、以下の特徴を有するヒハツ抽出物含有飲食品組成物:
(A) ヒハツ抽出物を0.2重量%(抽出物乾燥粉末換算)以上含む;
(B) ヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末換算)に対して乳脂肪が0.1〜70重量部である;
(C) ヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末換算)に対して乳タンパク質が0.1〜30重量部である。
(1−1―2)ヒハツ抽出物、乳脂肪、及び乳タンパク質を含有し、以下の特徴を有するヒハツ抽出物含有飲食品組成物:
(A) ヒハツ抽出物を0.3重量%(抽出物乾燥粉末換算)以上含む;
(B) ヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末換算)に対して乳脂肪が0.1〜70重量部である;
(C) ヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末換算)に対して乳タンパク質が0.1〜30重量部である。
(1−1−3)ヒハツ抽出物、乳脂肪、及び乳タンパク質を含有し、以下の特徴を有するヒハツ抽出物含有飲食品組成物:
(A) ヒハツ抽出物を0.3〜1重量%(抽出物乾燥粉末換算)含む;
(B) ヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末換算)に対して乳脂肪が0.1〜70重量部である;
(C) ヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末換算)に対して乳タンパク質が0.1〜30重量部である。
(1−1−4)ヒハツ抽出物、乳脂肪、及び乳タンパク質を含有し、以下の特徴を有するヒハツ抽出物含有飲食品組成物:
(A) ヒハツ抽出物を0.3〜0.6重量%(抽出物乾燥粉末換算)含む;
(B) ヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末換算)に対して乳脂肪が0.1〜70重量部である;
(C) ヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末換算)に対して乳タンパク質が0.1〜30重量部である。
(1−1−5)ヒハツ抽出物、乳脂肪、及び乳タンパク質を含有し、以下の特徴を有するヒハツ抽出物含有飲食品組成物:
(A) ヒハツ抽出物由来のピペリン類を0.0008重量%以上含む;
(B) ヒハツ抽出物由来のピペリン類1重量部に対して乳脂肪が6.67〜17500重量部である;
(C) ヒハツ抽出物由来のピペリン類1重量部に対して乳タンパク質が6.67〜7500重量部である。
(1−1−6)ヒハツ抽出物、乳脂肪、及び乳タンパク質を含有し、以下の特徴を有するヒハツ抽出物含有飲食品組成物:
(A) ヒハツ抽出物由来のピペリン類を0.0012重量%以上含む;
(B) ヒハツ抽出物由来のピペリン類1重量部に対して乳脂肪が6.67〜17500重量部である;
(C) ヒハツ抽出物由来のピペリン類1重量部に対して乳タンパク質が6.67〜7500重量部である。
(1−1−7)ヒハツ抽出物、乳脂肪、及び乳タンパク質を含有し、以下の特徴を有するヒハツ抽出物含有飲食品組成物:
(A) ヒハツ抽出物由来のピペリン類を0.0012〜0.015重量%含む;
(B) ヒハツ抽出物由来のピペリン類1重量部に対して乳脂肪が6.67〜17500重量部である;
(C) ヒハツ抽出物由来のピペリン類1重量部に対して乳タンパク質が6.67〜7500重量部である。
(1−1−8)ヒハツ抽出物、乳脂肪、及び乳タンパク質を含有し、以下の特徴を有するヒハツ抽出物含有飲食品組成物:
(A) ヒハツ抽出物由来のピペリン類を0.0012〜0.009重量%含む;
(B) ヒハツ抽出物由来のピペリン類1重量部に対して乳脂肪が6.67〜17500重量部である;
(C) ヒハツ抽出物由来のピペリン類1重量部に対して乳タンパク質が6.67〜7500重量部である。
(1−1−9)ヒハツ抽出物が水による抽出物である、(1−1−1)〜(1−1−8)記載のヒハツ抽出物含有飲食品組成物。
(1−1−10)ヒハツ抽出物がヒハツの果穂由来の抽出物である、(1−1−1)〜(1−1−9)記載のヒハツ抽出物含有飲食品組成物。
(1−1−11)乳脂肪1重量部に対して乳タンパク質が0.01〜65重量部である(1−1−1)〜(1−1−10)記載の飲食品組成物。
(1−1−12)80〜200℃で加熱処理されている(1−1−1)〜(1−1−11)記載の飲食品組成物。
(1−1−13)100〜150℃で加熱処理されている(1−1−1)〜(1−1−12)記載の飲食品組成物。
(1−1−14)乳脂肪及び乳タンパク質が80〜200℃で加熱処理されている(1−1−1)〜(1−1−13)記載の飲食品組成物。
(1−1−15)乳脂肪及び乳タンパク質が100〜150℃で加熱処理されている(1−1−1)〜(1−1−14)記載の飲食品組成物。
(1−1−16)温熱効果のために用いられるものである旨の表示を付した(1−1−1)〜(1−1−15)記載の飲食品組成物。
(1−1−17)冷え性改善のために用いられるものである旨の表示を付した(1−1−1)〜(1−1−16)記載の飲食品組成物。
【0009】
1−2.ピペリン類含有飲食品組成物
(1−2−1)ピペリン類、乳脂肪、及び乳タンパク質を含有し、以下の特徴を有するピペリン類含有飲食品組成物:
(A) ピペリン類を0.0008重量%以上含む;
(B) ピペリン類1重量部に対して乳脂肪が6.67〜17500重量部である;
(C) ピペリン類1重量部に対して乳タンパク質が6.67〜7500重量部である。
(1−2−2)ピペリン類、乳脂肪、及び乳タンパク質を含有し、以下の特徴を有するピペリン類含有飲食品組成物:
(A) ピペリン類を0.0012重量%以上含む;
(B) ピペリン類1重量部に対して乳脂肪が6.67〜17500重量部である;
(C) ピペリン類1重量部に対して乳タンパク質が6.67〜7500重量部である。
(1−2−3)ピペリン類、乳脂肪、及び乳タンパク質を含有し、以下の特徴を有するピペリン類含有飲食品組成物:
(A) ピペリン類を0.0012〜0.015重量%含む;
(B) ピペリン類1重量部に対して乳脂肪が6.67〜17500重量部である;
(C) ピペリン類1重量部に対して乳タンパク質が6.67〜7500重量部である。
(1−2−4)ピペリン類、乳脂肪、及び乳タンパク質を含有し、以下の特徴を有するピペリン類含有飲食品組成物:
(A) ピペリン類を0.0012〜0.009重量%含む;
(B) ピペリン類1重量部に対して乳脂肪が6.67〜17500重量部である;
(C) ピペリン類1重量部に対して乳タンパク質が6.67〜7500重量部である。
(1−2−5)乳脂肪1重量部に対して乳タンパク質が0.01〜65重量部である(1−2−1)〜(1−2−4)記載の飲食品組成物。
(1−2−6)80〜200℃で加熱処理されている(1−2−1)〜(1−2−5)記載の飲食品組成物。
(1−2−7)100〜150℃で加熱処理されている(1−2−1)〜(1−2−6)記載の飲食品組成物。
(1−2−8)乳脂肪及び乳タンパク質が80〜200℃で加熱処理されている(1−2−1)〜(1−2−7)記載の飲食品組成物。
(1−2−9)乳脂肪及び乳タンパク質が100〜150℃で加熱処理されている(1−2−1)〜(1−2−8)記載の飲食品組成物。
(1−2−10)温熱効果のために用いられるものである旨の表示を付した(1−2−1)〜(1−2−9)記載の飲食品組成物。
(1−2−11)冷え性改善のために用いられるものである旨の表示を付した(1−2−1)〜(1−2−10)記載の飲食品組成物。
【0010】
2−1.ヒハツ抽出物含有飲食品組成物の味改善方法
(2−1−1)ヒハツ抽出物を0.2重量%(抽出物乾燥粉末換算)以上含むヒハツ抽出物含有飲食品組成物の味改善方法であって、
ヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末換算)に対し、0.1〜70重量部の乳脂肪及び0.1〜30重量部の乳タンパク質を含有させることを特徴とする味改善方法。
(2−1−2)ヒハツ抽出物を0.3重量%(抽出物乾燥粉末換算)以上含むヒハツ抽出物含有飲食品組成物の味改善方法であって、
ヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末換算)に対し、0.1〜70重量部の乳脂肪及び0.1〜30重量部の乳タンパク質を含有させることを特徴とする味改善方法。
(2−1−3)ヒハツ抽出物を0.3〜1重量%(抽出物乾燥粉末換算)含むヒハツ抽出物含有飲食品組成物の味改善方法であって、
ヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末換算)に対し、0.1〜70重量部の乳脂肪及び0.1〜30重量部の乳タンパク質を含有させることを特徴とする味改善方法。
(2−1−4)ヒハツ抽出物を0.3〜0.6重量%(抽出物乾燥粉末換算)含むヒハツ抽出物含有飲食品組成物の味改善方法であって、
ヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末換算)に対し、0.1〜70重量部の乳脂肪及び0.1〜30重量部の乳タンパク質を含有させることを特徴とする味改善方法。
(2−1−5)ヒハツ抽出物由来のピペリン類を0.0008重量%以上含むヒハツ抽出物含有飲食品組成物の味改善方法であって、
ヒハツ抽出物由来のピペリン類1重量部に対し、6.67〜17500重量部の乳脂肪及び6.67〜7500重量部の乳タンパク質を含有させることを特徴とする味改善方法。
(2−1−6)ヒハツ抽出物由来のピペリン類を0.0012重量%以上含むヒハツ抽出物含有飲食品組成物の味改善方法であって、
ヒハツ抽出物由来のピペリン類1重量部に対し、6.67〜17500重量部の乳脂肪及び6.67〜7500重量部の乳タンパク質を含有させることを特徴とする味改善方法。
(2−1−7)ヒハツ抽出物由来のピペリン類を0.0012〜0.015重量%含むヒハツ抽出物含有飲食品組成物の味改善方法であって、
ヒハツ抽出物由来のピペリン類1重量部に対し、6.67〜17500重量部の乳脂肪及び6.67〜7500重量部の乳タンパク質を含有させることを特徴とする味改善方法。
(2−1−8)ヒハツ抽出物由来のピペリン類を0.0012〜0.009重量%含むヒハツ抽出物含有飲食品組成物の味改善方法であって、
ヒハツ抽出物由来のピペリン類1重量部に対し、6.67〜17500重量部の乳脂肪及び6.67〜7500重量部の乳タンパク質を含有させることを特徴とする味改善方法。
(2−1−9)ヒハツ抽出物が水による抽出物である、(2−1−1)〜(2−1−8)記載のヒハツ抽出物含有飲食品組成物の味改善方法。
(2−1−10)ヒハツ抽出物がヒハツの果穂由来の抽出物である、(2−1−1)〜(2−1−9)記載のヒハツ抽出物含有飲食品組成物の味改善方法。
(2−1−11)乳脂肪1重量部に対して乳タンパク質が0.01〜65重量部である(2−1−1)〜(2−1−10)記載の味改善方法。
(2−1−12)乳脂肪及び乳タンパク質が80〜200℃で加熱処理されている(2−1−1)〜(2−1−11)記載の味改善方法。
(2−1−13)乳脂肪及び乳タンパク質が100〜150℃で加熱処理されている(2−1−1)〜(2−1−12)記載の味改善方法。
(2−1−14)乳脂肪及び乳タンパク質を含有させた組成物を80〜200℃で加熱する工程を含む(2−1−1)〜(2−1−13)記載の味改善方法。
(2−1−15)乳脂肪及び乳タンパク質を含有させた組成物を100〜150℃で加熱する工程を含む(2−1−1)〜(2−1−14)記載の味改善方法。
【0011】
2−2.ピペリン類含有飲食品組成物の味改善方法
(2−2−1)ピペリン類を0.0008重量%以上含むピペリン類含有飲食品組成物の味改善方法であって、
ピペリン類1重量部に対し、6.67〜17500重量部の乳脂肪及び6.67〜7500重量部の乳タンパク質を含有させることを特徴とする味改善方法。
(2−2−2)ピペリン類を0.0012重量%以上含むピペリン類含有飲食品組成物の味改善方法であって、
ピペリン類1重量部に対し、6.67〜17500重量部の乳脂肪及び6.67〜7500重量部の乳タンパク質を含有させることを特徴とする味改善方法。
(2−2−3)ピペリン類を0.0012〜0.015重量%含むピペリン類含有飲食品組成物の味改善方法であって、
ピペリン類1重量部に対し、6.67〜17500重量部の乳脂肪及び6.67〜7500重量部の乳タンパク質を含有させることを特徴とする味改善方法。
(2−2−4)ピペリン類を0.0012〜0.0075重量%含むピペリン類含有飲食品組成物の味改善方法であって、
ピペリン類1重量部に対し、6.67〜17500重量部の乳脂肪及び6.67〜7500重量部の乳タンパク質を含有させることを特徴とする味改善方法。
(2−2−5)乳脂肪1重量部に対して乳タンパク質が0.01〜65重量部である(2−2−1)又は(2−2−4)記載の味改善方法。
(2−2−6)乳脂肪及び乳タンパク質が80〜200℃で加熱処理されている(2−2−1)〜(2−2−5)記載の味改善方法。
(2−2−7)乳脂肪及び乳タンパク質が100〜150℃で加熱処理されている(2−2−1)〜(2−1−6)記載の味改善方法。
(2−2−8)乳脂肪及び乳タンパク質を含有させた組成物を80〜200℃で加熱する工程を含む(2−2−1)〜(2−2−7)記載の味改善方法。
(2−2−9)乳脂肪及び乳タンパク質を含有させた組成物を100〜150℃で加熱する工程を含む(2−2−1)〜(2−2−8)記載の味改善方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のヒハツ抽出物含有飲食品組成物は、所定量のヒハツ抽出物を含んでいるため、摂取により温熱を感じることができ、かつ所定量の乳脂肪及び乳タンパク質を含んでいるため、ヒハツ抽出物に由来する良好な香ばしさや旨み風味を残しつつ辛さや刺激感が抑制されている。
【0013】
また、本発明の、ヒハツ抽出物を含有し温熱効果を有する飲食品組成物の味改善方法は、所定量の乳脂肪及び乳タンパク質を配合することにより、ヒハツ抽出物に由来する良好な香ばしさや旨みを残しつつ辛さや刺激感を抑制することができる。
【0014】
そのため、本発明は、味が改善された、温熱効果を有するヒハツ抽出物含有飲食品組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
1―1.ヒハツ抽出物含有飲食品組成物について
本発明のヒハツ抽出物含有飲食品組成物(以下、「本ヒハツ抽出物含有飲食品組成物」という。)は、以下の飲食品組成物である:
ヒハツ抽出物、乳脂肪、及び乳タンパク質を含有し、以下の特徴を有するヒハツ抽出物含有飲食品組成物:
(A) ヒハツ抽出物を0.2重量%(抽出物乾燥粉末重量)以上含む;
(B) ヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末重量)に対して乳脂肪が0.1〜70重量部である;
(C) ヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末重量)に対して乳タンパク質が0.1〜30重量部である。
【0016】
ヒハツ(学名: Piper longum)は、コショウ科コショウ属に属する常緑のつる植物である。主に東南アジアに分布する。果穂は多肉質で太い円筒状であり、主に香辛料として利用されている。
【0017】
ヒハツ抽出物は、ヒハツから抽出される抽出物である。
【0018】
ヒハツ抽出物の抽出対象部位としてはヒハツの果穂、根、葉、茎、及び花からなる群より選択される少なくとも1つの部位が好ましい。後述するピペリン類の含有率などの点から、少なくとも果穂を含む部位がより好ましい。
【0019】
抽出の方法としては、植物の抽出に一般に用いられている抽出方法を使用できる。例えば、抽出に使用する溶媒(抽出溶媒)を入れた槽内にヒハツの抽出対象部位を入れ、必要に応じて撹拌しながら、30分〜4時間静置することで可溶性成分を抽出することができる。得られた抽出液は、ろ過などにより固形分を除去して使用される。
【0020】
抽出溶媒としては、例えば、水若しくは親水性有機溶媒、又はこれらの混合物(含水親水性有機溶媒)が挙げられ、20℃以上溶媒の沸点温度以下の範囲内において常法に従い抽出する方法が好ましい。
【0021】
水としては、精製水、イオン交換水、生理食塩水やそれらから調製される緩衝液(例えば、リン酸緩衝液、又はリン酸緩衝生理食塩水)などを使用することができる。
【0022】
親水性有機溶媒としては、例えば炭素数1〜6の低級アルコール、炭素数1〜5の低級アルコール、炭素数1〜4の低級アルコール、炭素数1〜3の低級アルコール、炭素数1〜2の低級アルコール、若しくはメタノール;又は炭素数1〜4の低級脂肪族ケトン、炭素数1〜3の低級脂肪族ケトン;炭素数2〜5の多価アルコール、炭素数2〜4の多価アルコール、若しくは炭素数2〜3の多価アルコール等を挙げることができる。
【0023】
炭素数1〜4の低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、及びブタノールを挙げることができる。炭素数1〜3の低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、及びイソプロピルアルコールを挙げることができる。炭素数1〜2の低級アルコールとしては、例えば、メタノール、及びエタノールを挙げることができる。炭素数1〜4の低級脂肪族ケトンとしては、例えば、アセトン、及びメチルエチルケトンを挙げることができる。炭素数1〜3の低級脂肪族ケトンとしては、例えば、アセトンを挙げることができる。炭素数2〜4の多価アルコールとしては、例えば、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、及びグリセリンを挙げることができる。炭素数2〜3の多価アルコールとしては、例えば、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、及びグリセリンを挙げることができる。
【0024】
抽出効率の観点から、含水親水性有機溶媒における親水性有機溶媒の含有率は、10〜90容量%が好ましく、40〜70容量%がより好ましい。
【0025】
抽出溶媒の使用量としては、例えば、ヒハツの抽出対象部位1重量部に対して5〜15重量部を挙げることができる。
【0026】
抽出条件としては、抽出溶媒として水を用いる場合には、例えば、50〜95℃で1〜4時間という条件を挙げることができる。また、抽出溶媒として含水エタノールを用いる場合には、例えば、40〜75℃で30分〜4時間という条件を挙げることができる。
【0027】
なお、抽出溶媒が水又はエタノール等の安全性の高いものであればそのまま飲食品組成物に配合することもできるが、常法に従い希釈液、精製液若しくは濃縮液、又は乾燥物若しくは精製物としてから配合することが好ましい。
【0028】
精製する方法としては、例えば、活性炭、吸着樹脂、又はイオン交換樹脂等を用いた精製方法を挙げることができる。
【0029】
また、ヒハツ抽出物の乾燥物は、例えば、得られた抽出液を、濃縮、乾燥(好ましくは減圧下)する方法や、あらかじめ吸湿性を改善する目的でデキストリン、又はシクロデキストリン等のキャリア(腑形剤)を添加した後に同様に乾燥する方法などにより得ることができる。
【0030】
ヒハツ抽出物としては、抽出物に含まれる特定の成分群を単離したものを使用することもできる。
【0031】
抽出物に含まれる特定の成分群としては、例えば、ピペリン類を挙げることができる。ピペリン類はピペリジン環を含むアルカロイドに分類される物質であり、例えば、(2E,4E,8E)−N−[9−(3,4−メチレンデオキシフェニル)−2,4,8−ノナトリエノイル]ピペリジン、1−[(2E,4E)−5−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)ペンタ−2,4−ジエノイル]ピペリジン、1−[(2Z,4E)−5−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)ペンタ−2,4−ジエノイル]ピペリジンなどが挙げられる。例えば、(2E,4E,8E)−N−[9−(3,4−メチレンデオキシフェニル)−2,4,8−ノナトリエノイル]ピペリジンには、血管拡張作用があることが知られている。また、1−[(2E,4E)−5−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)ペンタ−2,4−ジエノイル]ピペリジン及び1−[(2Z,4E)−5−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)ペンタ−2,4−ジエノイル]ピペリジンは、ヒハツ抽出物特有の辛さ及び刺激感の原因物質として知られている。これらのピペリン類は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)法など当業者に周知の方法によって単離することができる。本発明のヒハツ抽出物にはピペリン類が400〜1,500ppm含まれる。
【0032】
ヒハツ抽出物としては、例えば、「ヒハツエキスパウダーMF」(丸善製薬株式会社)を商業的に入手して使用することができる。
【0033】
摂取により温熱を与える観点から、本ヒハツ抽出物含有飲食品組成物におけるヒハツ抽出物の含有割合の下限値は0.2重量%(抽出物乾燥粉末重量)であり、好ましくは0.3重量%(抽出物乾燥粉末重量)である。また、ヒハツ抽出物含有飲食品全体の味の調和の観点から、上限値は好ましくは1重量%(抽出物乾燥粉末重量)であり、より好ましくは0.6重量%(抽出物乾燥粉末重量)である。
【0034】
ここで、本明細書において「抽出物乾燥粉末重量」(又は単に「乾燥粉末重量」ともいう)とは、ヒハツ抽出物を得るために使用した溶媒や、その後に配合した腑形剤を除いた重量をいう。
【0035】
本ヒハツ抽出物含有飲食品組成物におけるヒハツ抽出物の含有割合は、例えばヒハツ抽出物に含まれるピペリン類の量に換算して表記することもできる。前述の通り、ヒハツ抽出物にはピペリン類が400〜1,500ppm含まれるため、本ヒハツ抽出物含有飲食品組成物におけるヒハツ抽出物の含有割合の下限値はピペリン類換算で0.0008重量%であり、好ましくは0.0012重量%である。上限値はピペリン類換算で好ましくは0.015重量%であり、より好ましくは0.009重量%である。
【0036】
乳脂肪としては、乳由来のものであればどのようなものでも使用することができる。乳脂肪としては、乳脂肪そのものを配合してもよく、又は乳脂肪を含む組成物を配合してもよい。
【0037】
乳脂肪そのものとしては、例えば、バターオイルを挙げることができる。
【0038】
乳脂肪を含む組成物としては、例えば、バター(無塩バターを含む。)、生クリーム、牛乳、生乳、全粉乳、濃縮乳、脱脂乳、部分脱脂乳、練乳などの乳製品を挙げることができる。
【0039】
乳タンパク質としては、乳由来のものであればどのようなものでも使用することができる。乳タンパク質としては、乳タンパク質そのものを配合してもよく、又は乳タンパク質を含む組成物を配合してもよい。
【0040】
乳タンパク質そのものとしては、例えば、ミルクプロテインを挙げることができる。
【0041】
乳タンパク質を含む組成物としては、例えば、バター(無塩バターを含む。)、生クリーム、牛乳、生乳、脱脂粉乳、全粉乳、濃縮乳、脱脂乳、部分脱脂乳、練乳などの乳製品を挙げることができる。
【0042】
乳脂肪は本ヒハツ抽出物含有飲食品組成物において、ヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末重量)に対して0.1〜70重量部、好ましくは0.1〜26重量部、より好ましくは0.1〜15重量部含まれる。
【0043】
また、乳脂肪は本ヒハツ抽出物含有飲食品組成物において、ピペリン類1重量部に対して6.67〜17500重量部、好ましくは6.67〜6500重量部、より好ましくは6.67〜3750重量部含まれる。
【0044】
乳タンパク質は本ヒハツ抽出物含有飲食品組成物において、ヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末重量)に対して0.1〜30重量部、好ましくは0.1〜22.5重量部、より好ましくは0.1〜6.5重量部含まれる。
【0045】
また、乳タンパク質は本ヒハツ抽出物含有飲食品組成物において、ピペリン類1重量部に対して6.67〜7500重量部、好ましくは6.67〜5625重量部、より好ましくは6.67〜1625重量部含まれる。
【0046】
本発明のヒハツ抽出物含有飲食品組成物において、ヒハツ抽出物又はピペリン類に対する乳脂肪及び乳タンパク質の配合量を上記範囲内とすることによって、ヒハツ抽出物に由来する味を改善できる。具体的には、ヒハツ抽出物に由来する香ばしさや旨みを残しつつ、辛さや刺激感を効果的に抑制することができる。
【0047】
本ヒハツ抽出物含有飲食品組成物において、ヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末重量)に対して、乳脂肪が0.1〜70重量部含まれており、かつ乳タンパク質が0.1〜30重量部含まれていると好ましく、乳脂肪が0.1〜26重量部含まれており、かつ乳タンパク質が0.1〜22.5重量部含まれているとより好ましく、乳脂肪が0.1〜15重量部含まれており、かつ乳タンパク質が0.1〜6.5重量部含まれているとさらに好ましい。
【0048】
また、本ヒハツ抽出物含有飲食品組成物において、ピペリン類1重量部に対して、乳脂肪が6.67〜17500重量部含まれており、かつ乳タンパク質が6.67〜7500重量部含まれていると好ましく、乳脂肪が6.67〜6500重量部含まれており、かつ乳タンパク質が6.67〜5625重量部含まれているとより好ましく、乳脂肪が6.67〜3750重量部含まれており、かつ乳タンパク質が6.67〜1625重量部含まれているとよりさらに好ましい。
【0049】
ヒハツ抽出物に由来する香ばしさや旨みをより残すことができる点から、本ヒハツ抽出物含有飲食品組成物において、乳脂肪1重量部に対して乳タンパク質が0.01〜65重量部含まれていると好ましい。
【0050】
本ヒハツ抽出物含有飲食品組成物は、基本的には、少なくともヒハツ抽出物、乳脂肪、及び乳タンパク質を配合することにより調製することができる。これら三成分は同時に配合してもよいし、任意の順番で配合してもよい。
【0051】
本ヒハツ抽出物含有飲食品組成物においては、ヒハツ抽出物を、当業者が利用できる任意の適切な方法によって配合すればよい。
【0052】
ヒハツ抽出物を配合する方法としては、例えば、ヒハツ抽出物を、飲食品組成物に直接混合、又は溶解する方法を挙げることができる。ヒハツ抽出物を、飲食品組成物に均一に分散、又は偏在させる方法も挙げることができる。また、ヒハツ抽出物を、飲食品組成物に塗布、被覆、浸透、又は吹き付ける方法も挙げることができる。さらに、ヒハツ抽出物を、可食フィルム、又は食用コーティング剤等で包み込んだ上で飲食品組成物に配合する方法も挙げることができる。
【0053】
ヒハツ抽出物を配合する際のヒハツ抽出物の形態としては、例えば、液体状、ゲル状、固体状、粉末状、又は顆粒状を挙げることができる。
【0054】
本ヒハツ抽出物含有飲食品組成物を調整する工程において、乳脂肪及び/又は乳脂肪を含有する組成物、並びに乳タンパク質及び/又は乳タンパク質を含有する組成物が加熱処理されることが好ましい。加熱処理により、より優れた味改善効果を得ることができる。乳脂肪及び/又は乳脂肪を含有する組成物、並びに乳タンパク質及び/又は乳タンパク質を含有する組成物は、それぞれ別々に加熱処理されてもよいが、その両者が存在している状態で加熱処理されることで、さらに優れた味改善効果を得ることができる。また、加熱処理は、ヒハツ抽出物の存在下か否かは問わないが、ヒハツ抽出物の存在下で行うことでより効果的に味改善を行うことができる。
【0055】
加熱処理の処理温度としては80〜200℃が好ましく、100〜150℃がより好ましい。また、加熱処理の時間としては、乳脂肪及び乳タンパク質の両方が加熱されれば特に制限されないが、例えば、2秒以上が好ましく、2秒〜30分がより好ましい。この範囲内であれば、乳脂肪及び乳タンパク質の両方が加熱処理され、ヒハツ抽出物含有飲食品の味改善をより好ましく行うことができる。
【0056】
本ヒハツ抽出物含有飲食品組成物には、必要に応じて、本ヒハツ抽出物含有飲食品組成物の温熱効果および味の調和を損なわない範囲で、当該分野において通常用いられる添加物をさらに配合することができる。
【0057】
添加物としては、ヒハツ抽出物同様に体を温める効果のある、ビタミンE、βカロチン、ビタミンB類、コエンザイムQ10、カテキン、ジンゲロール、生姜、唐辛子、紅花、イチョウ葉、アムラ、冬虫夏草、田七人参、トウキ、センキュウ、ドクダミ、ヨモギなどが挙げられ、これらの素材又はその抽出物を単独で又は2種以上組み合わせて配合することができる。
【0058】
その他の添加物としては、飲食品に一般的に使用される、賦形剤、滑沢剤、結合剤、防腐剤、粘稠剤、pH調整剤、甘味料、酸味料、着色料、香料、などが挙げられる。
【0059】
本ヒハツ抽出物含有飲食品組成物を調製するに際しては、これら添加物、並びにヒハツ抽出物、乳脂肪、及び乳タンパク質を、任意の順番で配合することができる。全て同時に配合してもよいし、順次配合してもよい。
【0060】
本ヒハツ抽出物含有飲食品組成物は、当業者に周知の方法により、液状、粉状、顆粒状、ペースト状、粒状、タブレット状いずれの形態にも調製することができ、飲食品形態としては、例えば、飴、乳飲料を挙げることができる。
【0061】
飴としては、例えば、ハードキャンディ、ソフトキャンディ、及びグミを挙げることができる。
【0062】
ハードキャンディとしては、例えば、糖質水溶液を原料とし、飴状に煮詰めたキャンディ類の中にあって、その水分が6重量%未満、好ましくは2重量%以下である硬質性のキャンディを挙げることができる。
【0063】
ハードキャンディの製造方法としては、例えば、特公昭57-34788号公報、及び特公昭58-50698号公報に示されるように、糖質水溶液を、まずその水分が6重量%未満、好ましくは2重量%以下になるように加熱濃縮し、次に常法に従って冷却、及び成形することにより製造する方法を挙げることができる。
【0064】
またハードキャンディの製造方法としては、例えば、実施例1〜9、又は14〜22の方法を挙げることもできる。
【0065】
本ヒハツ抽出物含有飲食品組成物がハードキャンディである場合、さらに水飴、果汁、酸味料、甘味料、着色剤、保存剤、香料などを配合することができる。
【0066】
ソフトキャンディとしては、例えば、糖質水溶液を原料とし、飴状に煮詰めたキャンディ類の中にあって、その水分が6重量%以上、好ましくは6〜20重量%である軟質性のキャンディを挙げることができる。
【0067】
ソフトキャンディとしては、例えば、キャラメル、ヌガー、又はマシュマロを挙げることができる。
【0068】
本発明においてキャラメルとは 、日本農林規格に示されるように、糖類に乳製品、必要により油脂、乳化剤、香料、着色料、又は澱粉のいずれかを加えたものを原料とし、飴状に煮詰めたキャンディ類の中にあって、その水分が6〜20 w/w%である軟質性のソフトキャンディの一種をいう。
【0069】
キャラメルの製造方法としては、例えば特開平5-236879号公報の方法を挙げることができる。
【0070】
またキャラメルの製造方法としては、例えば、実施例10〜13の方法を挙げることもできる。
【0071】
本ヒハツ抽出物含有飲食品組成物がキャラメルである場合、さらに食塩、果肉、果汁、酸味料、甘味料、保存剤などを配合することができる。
【0072】
乳飲料としては、例えば、ミルク、ミルクティー、ミルクコーヒー、ミルクココア、乳酸菌飲料を挙げることができる。
【0073】
本ヒハツ抽出物含有飲食品組成物は、温熱効果、又は温熱効果に基づく冷え性改善効果を有することが好ましい。
【0074】
温熱効果とは、食品組成物を摂取させた生体において体表面の一部(例えば手先、足先、首、顔、背中等)における表面温度が摂取前に比べて上昇する効果をいう。
【0075】
温熱効果を測定する方法としては、例えば、試験例2の方法を挙げることができる。
【0076】
本ヒハツ抽出物含有飲食品組成物は、温熱効果、又は温熱効果に基づく冷え性改善効果のために用いられるものである旨の表示が付されていてもよい。
【0077】
1―2.ピペリン類含有飲食品組成物について
本発明のピペリン類含有飲食品組成物(以下、「本ピペリン類含有飲食品組成物」という。)は、以下の飲食品組成物である。
ピペリン類、乳脂肪、及び乳タンパク質を含有し、以下の特徴を有するピペリン類含有飲食品組成物:
(A) ピペリン類を0.0008重量%以上含む;
(B) ピペリン類1重量部に対して乳脂肪が6.67〜17500重量部である;
(C) ピペリン類1重量部に対して乳タンパク質が6.67〜7500重量部である。
【0078】
以下、本ピペリン類含有飲食品組成物について説明するが、乳脂肪、及び乳タンパク質、並びに飲食品形態についての説明に関しては、上記した本ヒハツ抽出物飲食品組成物についての説明と同様であるため省略する。以下の説明は、ピペリン類に関連する事項についての説明である。
【0079】
ピペリン類は、天然由来のものであってもよく、人為的に合成されたものであってもよい。
【0080】
天然由来のピペリン類としては、例えば、ヒハツ由来、シロコショウ由来、クロコショウ由来を挙げることができる。
【0081】
摂取により温熱を与える観点から、本ピペリン類含有飲食品組成物におけるピペリン類の含有割合の下限値は0.0008重量%であり、好ましくは0.0012重量%である。また、ピペリン類含有飲食品全体の味の調和の観点から、上限値は好ましくは0.015重量%であり、より好ましくは0.009重量%である。
【0082】
本ピペリン類含有飲食品組成物において、乳脂肪は、ピペリン類1重量部に対して6.67〜17500重量部、好ましくは6.67〜6500重量部、さらに好ましくは6.67〜3750重量部含まれる。また、乳タンパク質は、ピペリン類1重量部に6.67〜7500重量部、好ましくは6.67〜5625重量部、より好ましくは6.67〜1625重量部含まれる。
【0083】
本発明のピペリン類含有飲食品組成物において、ピペリン類に対する乳脂肪及び乳タンパク質の配合量を上記範囲に規定することによって、ピペリン類に由来する味、例えば、辛さや刺激感を効果的に抑制することができる。
【0084】
本ピペリン類含有飲食品組成物は、基本的には、少なくともピペリン類、乳脂肪、及び乳タンパク質を配合することにより調製することができる。これら三成分は同時に配合してもよいし、任意の順番で配合してもよい。
【0085】
本ピペリン類含有飲食品組成物においては、ピペリン類を、当業者が利用できる任意の適切な方法によって飲食品組成物に含有させればよい。
【0086】
ピペリン類を本ピペリン類含有飲食品組成物に含有させる方法としては、例えば、ピペリン類を、飲食品組成物に直接混合、又は溶解する方法を挙げることができる。ピペリン類を、飲食品組成物に均一に分散、又は偏在させる方法も挙げることができる。また、ピペリン類を、飲食品組成物に塗布、被覆、浸透、又は吹き付ける方法も挙げることができる。さらに、ピペリン類を、可食フィルム、又は食用コーティング剤等で包み込んだ上で飲食品組成物に配合する方法も挙げることができる。
【0087】
本ピペリン類含有飲食品組成物に含有させる際のピペリン類の形態としては、例えば、液体状、ゲル状、固体状、粉末状、又は顆粒状を挙げることができる。
【0088】
本ピペリン類含有飲食品組成物を調整する工程において、乳脂肪及び/又は乳脂肪を含有する組成物、並びに乳タンパク質及び/又は乳タンパク質を含有する組成物が加熱処理されることが好ましい。加熱処理により、より優れた味改善効果を得ることができる。乳脂肪及び/又は乳脂肪を含有する組成物、並びに乳タンパク質及び/又は乳タンパク質を含有する組成物は、それぞれ別々に加熱処理されてもよいが、その両者が存在している状態で加熱処理されることで、さらに優れた味改善効果を得ることができる。また、加熱処理は、ピペリン類の存在下か否かは問わないが、ピペリン類の存在下で行うことでより効果的に味改善を行うことができる。
【0089】
加熱処理の処理温度としては80〜200℃が好ましく、100〜150℃がより好ましい。また、加熱処理の時間としては2秒以上が好ましく、2秒〜30分がより好ましい。この範囲内であれば、乳脂肪及び乳タンパク質の両方が加熱処理され、ピペリン類含有飲食品の味改善をより好ましく行うことができる。
【0090】
本ピペリン類含有飲食品組成物には、必要に応じて、本ピペリン類含有飲食品組成物の温熱効果および味の調和を損なわない範囲で、当該分野において通常用いられる添加物をさらに配合することができる。
【0091】
添加物としては、ピペリン類同様に体を温める効果のある、ビタミンE、βカロチン、ビタミンB類、コエンザイムQ10、カテキン、ジンゲロール、生姜、唐辛子、紅花、イチョウ葉、アムラ、冬虫夏草、田七人参、トウキ、センキュウ、ドクダミ、ヨモギなどが挙げられ、これらの素材又はその抽出物を単独で又は2種以上組み合わせて配合することができる。
【0092】
その他の添加物としては、飲食品に一般的に使用される、賦形剤、滑沢剤、結合剤、防腐剤、粘稠剤、pH調整剤、甘味料、酸味料、着色料、香料、などが挙げられる。
【0093】
本ピペリン類含有飲食品組成物がハードキャンディである場合、さらに水飴、果汁、酸味料、甘味料、着色剤、保存剤、香料などを配合することができる。
【0094】
本ピペリン類含有飲食品組成物がキャラメルである場合、さらに食塩、果肉、果汁、酸味料、甘味料、保存剤などを配合することができる。
【0095】
本ピペリン類含有飲食品組成物を調製するに際しては、これら添加物、並びにピペリン、乳脂肪、及び乳タンパク質を、任意の順番で配合することができる。全て同時に配合してもよいし、順次配合してもよい。
【0096】
本ピペリン類含有飲食品組成物は、温熱効果、又は温熱効果に基づき冷え性改善効果を有することが好ましい。
【0097】
本ピペリン類含有飲食品組成物は、温熱効果、又は温熱効果に基づく冷え性改善効果のために用いられるものである旨の表示が付されていてもよい。
【0098】
2―1.ヒハツ抽出物含有飲食品組成物の味改善方法について
本発明は、ヒハツ抽出物を0.2重量%以上含む飲食品組成物の味改善方法であって:
ヒハツ抽出物1重量部に対し、0.1〜70重量部の乳脂肪及び0.1〜30重量部の乳タンパク質を含有させることを特徴とする味改善方法も提供する。
【0099】
以下、この味改善方法について説明するが、ヒハツ抽出物、乳脂肪、及び乳タンパク質についての説明は、上記した本ヒハツ抽出物含有飲食品組成物についての説明と同様であるため、省略する。
【0100】
摂取により温熱を与える観点から、この味改善方法で味が改善される飲食品組成物は、ヒハツ抽出物の含有割合の下限値が0.2重量%(抽出物乾燥粉末重量)であり、好ましくは0.3重量%(抽出物乾燥粉末重量)である。また、ヒハツ抽出物含有飲食品全体の味の調和の観点から、上限値が好ましくは1重量%(抽出物乾燥粉末重量)であり、より好ましくは0.6重量%(抽出物乾燥粉末重量)である。
【0101】
飲食品組成物におけるヒハツ抽出物の含有割合は、例えばヒハツ抽出物に含まれるピペリン類の量に換算して表記することもできる。前述の通り、ヒハツ抽出物にはピペリン類が400〜1,500ppm含まれる。このため、摂取により温熱を与える観点から、この味改善方法で味が改善される飲食品組成物は、ヒハツ抽出物の含有割合の下限値がピペリン類換算で0.0008重量%であり、好ましくは0.0012重量%である。また、ヒハツ抽出物含有飲食品全体の風味の調和の観点から、上限値がピペリン類換算で好ましくは0.015重量%であり、より好ましくは0.009重量%である。
【0102】
本ヒハツ抽出物含有飲食品組成物の味改善方法においては、ヒハツ抽出物1重量部に対し、0.1〜70重量部の乳脂肪及び0.1〜30重量部の乳タンパク質を含有させる必要があり、0.1〜26重量部の乳脂肪及び0.1〜22.5重量部の乳タンパク質を含有させると好ましく、0.1〜15重量部の乳脂肪及び0.1〜6.5重量部の乳タンパク質を含有させるとより好ましい。
【0103】
また、本ヒハツ抽出物含有飲食品組成物の味改善方法においては、ヒハツ抽出物由来のピペリン類1重量部に対し、6.67〜17500重量部の乳脂肪及び6.67〜7500重量部の乳タンパク質を含有させると好ましく、6.67〜6500重量部の乳脂肪及び6.67〜5625重量部の乳タンパク質を含有させるとより好ましく、6.67〜3750重量部の乳脂肪及び6.67〜1625重量部の乳タンパク質を含有させるとよりさらに好ましい。
【0104】
本ヒハツ抽出物含有飲食品組成物の味改善方法において、ヒハツ抽出物又はピペリン類に対する乳脂肪及び乳タンパク質の配合量を上記範囲に規定することによって、ヒハツ抽出物に由来する香ばしさや旨みを残しながら、辛さや刺激感を効果的に抑制することができる。
【0105】
また、ヒハツ抽出物に由来する香ばしさや旨みをより残すことができる点から、乳脂肪1重量部に対して0.01〜65重量部の乳タンパク質を含有させると好ましい。
【0106】
この味改善方法においては、ヒハツ抽出物、乳脂肪、乳タンパク質、及びその他の成分を最終的に配合することにより、ヒハツ抽出物を0.2重量%以上含む飲食品組成物の味の改善が達成される。この味改善方法において、各成分を配合する順番は特に限定されない。
【0107】
各成分を配合する順番としては、例えば、ヒハツ抽出物を配合した後に、乳脂肪及び乳タンパク質を配合してもよい。また、例えば、乳脂肪及び乳タンパク質を配合した後に、ヒハツ抽出物を配合してもよい。
【0108】
乳脂肪及び乳タンパク質を配合する過程において、各成分を配合する順番は特に限定されない。乳脂肪を先に配合してもよいし、乳タンパク質を先に配合してもよいし、又はこれらを同時に配合してもよい。
【0109】
乳脂肪を先に配合する場合は、まずヒハツ抽出物を配合する前に乳脂肪を配合し、ヒハツ抽出物を配合した後に乳タンパク質を配合してもよい。また、乳タンパク質を先に配合する場合は、まずヒハツ抽出物を配合する前に乳タンパク質を配合し、ヒハツ抽出物を配合した後に乳脂肪を配合してもよい。
【0110】
この味改善方法のいずれかの工程において、乳脂肪及び/又は乳脂肪を含有する組成物、並びに乳タンパク質及び/又は乳タンパク質を含有する組成物が加熱処理されることが好ましい。加熱処理により、より優れた味改善効果を得ることができる。乳脂肪及び/又は乳脂肪を含有する組成物、並びに乳タンパク質及び/又は乳タンパク質を含有する組成物は、それぞれ別々に加熱処理されてもよいが、その両者が存在している状態で加熱処理されることで、さらに優れた味改善効果を得ることができる。また、加熱処理は、ヒハツ抽出物の存在下か否かは問わないが、ヒハツ抽出物の存在下で行うことでより効果的に味改善を行うことができる。
【0111】
加熱処理の温度としては、80〜200℃が好ましく、100〜150℃がより好ましい。また、加熱処理の時間としては、乳脂肪及び乳タンパク質の両方が加熱されれば特に制限されないが、例えば、2秒以上が好ましく、2秒〜30分がより好ましい。この範囲内であれば、乳脂肪及び乳タンパク質の両方が加熱処理され、ヒハツ抽出物含有飲食品の味改善をより好ましく行うことができる。
【0112】
2―2.ピペリン類含有飲食品組成物の味改善方法について
本発明は、ピペリン類を0.0008重量%以上含む飲食品組成物の味改善方法であって:
ピペリン類1重量部に対し、6.67〜17500重量部の乳脂肪及び6.67〜7500重量部の乳タンパク質を含有させることを特徴とする味改善方法も提供する。
【0113】
以下、この味改善方法について説明するが、ピペリン類、乳脂肪、及び乳タンパク質についての説明は、上記した本ヒハツ抽出物含有飲食品組成物、及び本ピペリン類抽出物含有飲食品組成物についての説明と同様であるため、省略する。
【0114】
摂取により温熱を与える観点から、この方法で味が改善される飲食品組成物は、ピペリン類の含有割合の下限値が0.0008重量%であり、好ましくは0.0012重量%である。また、ピペリン類含有飲食品全体の風味の調和観点から、上限値が好ましくは0.015重量%であり、より好ましくは0.009重量%である。
【0115】
本ピペリン類含有飲食品組成物の味改善方法においては、ピペリン類1重量部に対し、6.67〜17500重量部の乳脂肪及び6.67〜7500重量部の乳タンパク質を含有させると好ましく、6.67〜6500重量部の乳脂肪及び6.67〜5625重量部の乳タンパク質を含有させるとより好ましく、6.67〜3750重量部の乳脂肪及び6.67〜1625重量部の乳タンパク質を含有させるとよりさらに好ましい。
【0116】
本ピペリン類含有飲食品組成物の味改善方法において、ピペリン類に対する乳脂肪及び乳タンパク質の配合量を上記範囲内とすることによって、ピペリン類に由来する味、例えば、辛さや刺激感を効果的に抑制することができる。
【0117】
また、ピペリン類に由来する香ばしさや旨みをより残すことができる点から、乳脂肪1重量部に対して0.01〜65重量部の乳タンパク質を含有させると好ましい。
【0118】
この味改善方法においては、ピペリン類、乳脂肪、乳タンパク質、及びその他の成分を最終的に配合することにより、ピペリン類を0.0008重量%以上含む飲食品組成物の味の改善が達成される。この味改善方法において、各成分を配合する順番は特に限定されない。
【0119】
各成分を配合する順番としては、例えば、ピペリン類を配合した後に、乳脂肪及び乳タンパク質を配合してもよい。また、例えば、乳脂肪及び乳タンパク質を配合した後に、ピペリン類を配合してもよい。
【0120】
乳脂肪及び乳タンパク質を配合する過程において、各成分を配合する順番は特に限定されない。乳脂肪を先に配合してもよいし、乳タンパク質を先に配合してもよいし、又はこれらを同時に配合してもよい。
【0121】
乳脂肪を先に配合する場合は、まずピペリン類を配合する前に乳脂肪を配合し、ピペリン類を配合した後に乳タンパク質を配合してもよい。また、乳タンパク質を先に配合する場合は、まずピペリン類を配合する前に乳タンパク質を配合し、ピペリン類を配合した後に乳脂肪を配合してもよい。
【0122】
この味改善方法のいずれかの工程において、乳脂肪及び/又は乳脂肪を含有する組成物、並びに乳タンパク質及び/又は乳タンパク質を含有する組成物が加熱処理されることが好ましい。加熱処理により、より優れた味改善効果を得ることができる。乳脂肪及び/又は乳脂肪を含有する組成物、並びに乳タンパク質及び/又は乳タンパク質を含有する組成物は、それぞれ別々に加熱処理されてもよいが、その両者が存在している状態で加熱処理されることで、さらに優れた味改善効果を得ることができる。また、加熱処理は、ピペリン類の存在下か否かは問わないが、ピペリン類の存在下で行うことでより効果的に味改善を行うことができる。
【0123】
加熱処理の温度としては、80〜200℃が好ましく、100〜150℃がより好ましい。また、加熱処理の時間としては、乳脂肪及び乳タンパク質の両方が加熱されれば特に制限されないが、例えば、2秒以上が好ましく、2秒〜30分がより好ましい。この範囲内であれば、乳脂肪及び乳タンパク質の両方が加熱処理され、ピペリン類含有飲食品の味改善をより好ましく行うことができる。
【実施例】
【0124】
以下に実施例、試験例、及び処方例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例にのみ限定されるものではない。
【0125】
試験例1:辛さ及び刺激感、並びに香ばしさ及び旨みの評価
本発明のヒハツ抽出物含有飲食品組成物を複数種、被験試料として調製し、それらについて、ヒハツ抽出物に由来する辛さ及び刺激感がどれだけ改善されているか、並びにヒハツ抽出物に由来する香ばしさ及び旨みがどれだけ維持されているかを、それぞれ評価した。
【0126】
1.被験試料の調製
(1)ヒハツ抽出物含有ハードキャンディの調製
表1に示した材料を使用し、表2の組成の通り各種ヒハツ抽出物含有ハードキャンディを調製した(実施例1〜9;比較例1〜5)。ヒハツエキスパウダーについて、表中「抽出物乾燥粉末重量」とは、ヒハツエキスパウダー中に含まれる腑形剤(デキストリン)を除いた重量である。
【0127】
なお、ハードキャンディとしての性格上、脂肪成分を多量に含有させることはできない。
【0128】
【表1】

【0129】
【表2】

【0130】
製造方法は、次に示す通りである:
工程1.白糖及び水飴に水を加え、142℃に加熱する。
工程2.加熱したままさらに他の材料を加えよく混合する。
工程3.容量約3.5gの型に流し込み、室温に冷やして固める。
(2)ヒハツ抽出物含有キャラメルの調製
表1に示した材料を使用し、表3の組成の通り各種ヒハツ抽出物含有キャラメルを製造した(実施例10〜13;比較例6〜7)。ヒハツエキスパウダーについて、表中「抽出物乾燥粉末重量」とは、ヒハツエキスパウダー中に含まれる腑形剤(デキストリン)を除いた重量である。
【0131】
なお、キャラメルとしての性格上、脂肪成分を一定量以上含有させる必要がある。
【0132】
【表3】

【0133】
製造方法は、次に示す通りである:
工程1.水に白糖及び水飴を加え、煮沸により溶解させる。
工程2.煮沸したままさらにコンデンスミルク、バター、及び生クリームを加え130℃で加熱する。
工程3.80℃まで温度を下げ、他の成分を混合する。
工程4.約3.5gの大きさにカットする。
【0134】
(3)ヒハツ抽出物含有ミルクティー(乳飲料)の調製
紅茶のティーバッグ(ユニリーバ・ジャパン・ビバレッジ株式会社:商品名「リプトン(登録商標)イエローラベルティーバッグ」)に沸騰したお湯150mlを注ぎ、そこへヒハツエキスパウダーMF4.8gと、表1に示した全粉乳0.33gとを加えミルクティーを調製した(実施例23)。
【0135】
また、紅茶のティーバッグに沸騰したお湯150mlを注ぎ、そこへヒハツエキスパウダーMF4.8gを加え、30℃まで冷ました時点で表1に示した全粉乳0.33gをさらに加えミルクティーを製造した(実施例24)。
【0136】
(4)ヒハツ抽出物含有ミルク飲料(乳飲料)の調製
ヒハツエキスパウダーMF3.2gを表1に示した牛乳100mlに加え混合し、100℃まで加熱して、ヒハツ抽出物含有ミルク飲料を製造した(実施例25)。
【0137】
また、ヒハツエキスパウダーMF3.2gを表1に示した牛乳100mlに加え混合することのみによりヒハツ抽出物含有ミルク飲料を製造した(実施例26)。
2.試験方法
上の通り調製した各種ヒハツ抽出物含有飲食品をそれぞれ10名のパネラー(20〜40代の女性)に摂取させ、ヒハツ抽出物に由来する「辛さ及び刺激感」並びに「香ばしさ及び旨み」のそれぞれ二項目について評価させた。なお、「辛さ及び刺激感」の評価基準は、気になるを1点、やや気になるを2点、どちらでもないを3点、ほとんど気にならないを4点、及び気にならないを5点とし、「香ばしさ及び旨み」の評価基準は、感じるを3点、やや感じるを2点、及び感じないを1点とした。
3.試験結果
ハードキャンディ及びキャラメルについての評価結果をそれぞれ表2及び表3に示す。
[表中の記号]
「辛さ及び刺激感」
○:合計31点以上
△:16〜30点
×:10〜15点
「香ばしさ及び旨み」
◎:合計26点以上
○:21〜25点
×:10〜20点
その結果、ヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末重量)に対してそれぞれ乳脂肪含量が0.1重量部以上70重量部以下であり、かつ乳タンパク質含量が0.1重量部以上30重量部以下である実施例1〜13では、適度にヒハツ由来の辛さと刺激感を抑制しつつ、ヒハツの香ばしさ及び旨みの風味を残すことができ、食品として良好なものが得られた。
【0138】
それに対して、ヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末重量)に対してそれぞれ乳脂肪含量が0.1重量部未満である比較例1及び2、並びに乳タンパク質含量が0.1重量部未満である比較例3及び4では、ヒハツ抽出物由来の辛さ及び刺激感を有効に抑制することができないことが分かった。
【0139】
また、ヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末重量)に対する乳タンパク質含量が37重量部を超える比較例5では、ヒハツ抽出物由来の辛さ及び刺激感は抑制できたものの、香ばしさ及び旨みが消失してしまった。
【0140】
さらに、ヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末重量)に対する乳脂肪含量が80重量部を超える比較例6及び7でも、ヒハツ抽出物由来の辛さ及び刺激感は抑制できたものの、香ばしさ及び旨みが消失してしまった。
【0141】
そして、生姜抽出物を0.4重量%配合した実施例10と、生姜抽出物を含まない点を除きそれと同様の組成である実施例11とで評価結果に相違が生じなかった。
【0142】
ここで、ヒハツ抽出物の含有量を0.21重量%(抽出物乾燥粉末重量)、及び0.43重量%(抽出物乾燥粉末重量)とする点を除き表1及び2記載の実施例と同様の組成であるヒハツ抽出物含有キャラメルをそれぞれ製造し、これらについても評価したところ、同様の結果が得られた。
【0143】
実施例14〜22、及び比較例8のハードキャンディについても、同様の方法により評価した。いずれのハードキャンディも適度にヒハツ由来の辛さと刺激感を抑制しつつ、ヒハツの香ばしさ及び旨みを残すことができ、食品として良好であった。
【0144】
実施例23〜26の乳飲料も、適度にヒハツ由来の辛さと刺激感を抑制しつつ、ヒハツの香ばしさ及び旨みを残すことができ、飲料として良好であった。
【0145】
特に、乳脂肪及び乳タンパク質を加熱する工程を含む製造方法により製造された実施例23のほうが、乳脂肪及び乳タンパク質を加熱する工程を含まない製造方法により製造された実施例24に比べよりヒハツ由来の辛さと刺激感を抑制しつつ、香ばしさ及び旨みを残すことができ、飲料としてより良好であった。
【0146】
また、乳脂肪及び乳タンパク質の加熱工程を含む製造方法により製造された実施例25のほうが、乳脂肪及び乳タンパク質の加熱工程を含まない製造方法により製造された実施例26に比べよりヒハツ抽出物由来の辛さと刺激感を抑制しつつ、香ばしさ及び旨みを残すことができ、飲料としてより良好であった。
【0147】
これら乳飲料の結果は、加熱された乳脂肪及び乳タンパク質を配合したほうが、よりヒハツ抽出物由来の辛さと刺激感を抑制しつつ、香ばしさ及び旨みを残すことができることを示している。また、これらの結果は、ヒハツ抽出物を含有する組成物に対して乳脂肪及び乳タンパク質を配合した後にこの組成物を加熱したほうが、よりヒハツ由来の辛さと刺激感を抑制しつつ、香ばしさ及び旨みの風味を残すことができることを示している。
【0148】
試験例2:温熱効果の評価
1.被験試料の調製
表1に示した材料を使用し、表4の組成の通り各種ヒハツ抽出物含有ハードキャンディを製造した。ヒハツエキスパウダーについて、表中「抽出物乾燥粉末重量」とは、ヒハツエキスパウダー中に含まれる腑形剤(デキストリン)を除いた重量である。
【0149】
【表4】

【0150】
製造方法は次に示す通りである:
工程1.還元パラチノースと還元水飴を混合し、130℃に加熱する。
工程2.植物油脂に他の成分を加え混合する。
工程3.加熱したままの工程1の混合物に、工程2の混合物を加えよく混合する。
工程4.容量約3.5gの型に流し込み、室温に冷やして固める。
【0151】
なお、ハードキャンディとしての性格上、脂肪成分を多量に含有させることはできない。
【0152】
2.試験方法
上の通り製造した各種ヒハツ抽出物含有ハードキャンディをそれぞれ6名のパネラー(20〜40代の女性)に摂取させ、温熱効果について評価させた。評価は次に示す通り行った。まずパネラー6名を室温15度の部屋で10分間待機させ、寒さを感じる状態とした。続いて実施例14〜22及び比較例8で製造したヒハツ抽出物含有ハードキャンディ1粒を摂取させた後、摂取後20分の時点における体感を各パネラーに評価させた。なお、温熱効果の評価基準は、温かさを感じるを5点、やや温かさを感じるを4点、どちらでもないを3点、あまり温かさを感じないを2点、及び温かさを感じないを1点とした。
【0153】
また、摂取後20分の時点における背中の表面温度をサーモグラフィーによって測定した。
【0154】
3.試験結果
パネラーによる評価結果を表3に示す。また、実施例20のヒハツ抽出物含有ハードキャンディを使用した試験における、サーモグラフィーによる測定結果の一例を図1に示す。
[表中の記号]
◎◎:30点満点
◎:24〜29点
○:19〜23点
×:18点以下
ヒハツ抽出物を0.2重量%(抽出物乾燥粉末重量)以上含有する実施例14〜22のハードキャンディを摂取した場合、摂取後20分で温熱効果の評価が19点以上であったのに対し、ヒハツ抽出物を0.1重量%(抽出物乾燥粉末重量)含有する比較例8のハードキャンディを摂取した場合は温熱効果の評価は19点に満たなかった。生姜抽出物を0.45重量%添加した実施例17及び21においても同様に温熱効果が発揮された。
【0155】
また、図1に示すとおり、摂取後20分の時点で背中の表面温度が摂取前に比べて上昇しており、温熱効果が確認された。
【0156】
以上の結果から、ヒハツ抽出物を0.2重量%(抽出物乾燥粉末重量)以上含有するヒハツ抽出物含有飲食品は、それを摂取した個体に対して温熱効果を発揮することができ、さらにヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末重量)に対して乳脂肪が0.1〜70重量部含有されており、かつ乳タンパク質が0.1〜30重量部含有されていれば、ヒハツ由来の辛さと刺激感を抑制しつつ、ヒハツの香ばしさおよび旨みの風味を残すことができ、飲食品として良好であることが分かった。
【0157】
処方例1〜12:ヒハツ抽出物含有ハードキャンディの処方
表5の組成にしたがって、上記同様の方法により、ハードキャンディを製造した。
【0158】
【表5】

【0159】
処方例13〜24:ヒハツ抽出物含有キャラメルの処方
表6の組成にしたがって、上記同様の方法により、キャラメルを製造した。
【0160】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】本発明のヒハツ抽出物含有ハードキャンディ(実施例20)について、摂取前と摂取後20分経過時それぞれにおける被験者の背中の表面温度を、サーモグラフィーで測定した結果の一例を示す図面に代わる写真である。写真右側の数値は温度を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒハツ抽出物、乳脂肪、及び乳タンパク質を含有し、以下の特徴を有するヒハツ抽出物含有飲食品組成物:
(A) ヒハツ抽出物を0.2重量%(抽出物乾燥粉末換算)以上含む;
(B) ヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末換算)に対して乳脂肪が0.1〜70重量部である;
(C) ヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末換算)に対して乳タンパク質が0.1〜30重量部である。
【請求項2】
乳脂肪1重量部に対して乳タンパク質が0.01〜65重量部である請求項1記載の飲食品組成物。
【請求項3】
乳脂肪及び乳タンパク質が80〜200℃で加熱処理されている請求項1又は2記載の飲食品組成物。
【請求項4】
ヒハツ抽出物を0.2重量%(抽出物乾燥粉末換算)以上含むヒハツ抽出物含有飲食品組成物の味改善方法であって、
ヒハツ抽出物1重量部(抽出物乾燥粉末換算)に対し、0.1〜70重量部の乳脂肪及び0.1〜30重量部の乳タンパク質を含有させることを特徴とする味改善方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−110283(P2010−110283A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287172(P2008−287172)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】