説明

ヒューズユニット

【課題】内蔵したヒューズエレメントからのスプリングバックの負荷を確実に受けることができ、分割ボディの屈曲状態を保持し破損を防止するヒューズユニットを提供する。
【解決手段】各分割ボディ5、7に形成され、ヒューズエレメントのヒンジ部3で対向している対向壁部51、71と、対向壁部51、71の交差方向に延びる両側の側壁部52、53、72、73と、分割ボディ5の両側の側壁部52、53に設けられたロックアーム11、12と、第1傾斜面25、35が形成され、ロックアーム11、12に設けられたロック突起13、14と、ロック突起13、14に対応するように分割ボディ7の両側の側壁部72、73に設けられた凸部17、18と、凸部17、18と対応するように他方の分割ボディ7に設けられ、各分割ボディ5、7を屈曲させたときに第1傾斜面25、35が面合わせされる第2傾斜面39とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載されるバッテリーに直付けされて、バッテリーの電力を電力供給用の電線に供給するヒューズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
図12は、特許文献1に記載された従来のヒューズユニット100を示す。ヒューズユニット100は、樹脂ボディ110内に導電性金属板からなるヒューズエレメント(図示省略)を内蔵して形成されている。樹脂ボディ110は、平面状に延びた状態で、前後の分割ボディ120,130に分割されており、バッテリーへの装着の際には、分割ボディ120,130が図12に示すようにL字形に屈曲される。屈曲は、分割ボディ120,130の間から露出したヒューズエレメントのヒンジ部を中心にして行われる。このようにヒューズユニット100がL字形に屈曲された状態で使用されることにより、狭いスペース内での回路配置に対応することが可能となっている。
【0003】
以上のようなヒューズユニットの使用状態においては、L字形の屈曲状態を保持する必要があり、このため、従来のヒューズユニット100は、以下のように構成されている
一方の分割ボディ120の内面壁121に対峙する規制壁140を他方の分割ボディ130の内面壁131に立設させ、規制壁140には、一方の分割ボディ120の内面壁121から離れる方向に傾斜した傾斜壁面141を形成する。また、規制壁140の両端部に、倒れ防止リブ143を設けて規制壁140の曲げ剛性を大きくする。
【0004】
さらに、一方の分割ボディ120に掛部151を有したロックアーム150を設けると共に、掛部151が係合する切欠部153を他方の分割ボディ130の規制壁140に設けて第1のロック手段を形成する。また、一方の分割ボディ120に係止突起(図示省略)を設け、係止突起が係止する係合溝160を他方の分割ボディ130に設けて第2のロック手段を形成する。係合溝160は、他方の分割ボディ130における側面壁133,135からの延出壁165に設けるものである。
【0005】
このような構造において、一方の分割ボディ120に対して他方の分割ボディ130を屈曲させると、他方の分割ボディ130の規制壁140が一方の分割ボディ120の内面壁121に当接する。また、一方の分割ボディ120におけるロックアーム150の掛部151が切欠部153に引っ掛かることにより、ロックアーム150が切欠部153に係合してロックされると共に、一方の分割ボディ120の係止突起が他方の分割ボディ130の係合溝160に係合してロックされる。これにより、2つの分割ボディがL字形に屈曲した状態を保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−329457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のヒューズユニット100においては、第2のロック手段である係合突起と係合溝160とが係合したロック状態において、第1のロック手段であるロックアーム150の掛部151と切欠部153との間に隙間が発生することがあり、この隙間が発生することによりロック力が低下し、第1のロック手段ではロック状態を保持することができなくなる。
【0008】
これにより、L字形に屈曲した内蔵のヒューズエレメントからのスプリングバックの負荷が全て、延出壁165の内側に設けられた係合突起および係合溝160からなる第2のロック手段に作用するため、L字形の屈曲状態を保持するための保持力を十分に確保することができず、ヒューズユニット100が破損するおそれがあるという問題を有している。
【0009】
そこで、本発明は、内蔵したヒューズエレメントからのスプリングバックの負荷を確実に受けることができ、分割ボディの屈曲状態を保持することが可能で破損を防止することが可能なヒューズユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、導電性金属板のヒューズエレメントを内蔵した樹脂ボディが前記ヒューズエレメントのヒンジ部を境にして分割された2つの分割ボディによって形成され、これらの分割ボディが前記ヒンジ部を中心に屈曲可能となっているヒューズユニットであって、前記各分割ボディに形成され、前記ヒンジ部で対向している対向壁部と、この対向壁部の交差方向に延びる両側の側壁部と、一方の分割ボディの両側の側壁部に設けられた一対のロックアームと、第1傾斜面が形成され、前記ロックアームに設けられた一対のロック用係合部と、前記ロック用係合部に対応するように他方の分割ボディの両側の側壁部に設けられた一対のロック用被係合部と、前記ロック用被係合部と対応するように他方の分割ボディに設けられ、前記2つの分割ボディを屈曲させたときに前記第1傾斜面が面合わせされる第2傾斜面とを備え、前記第1傾斜面および前記第2傾斜面は、前記分割ボディの屈曲に基づく前記ヒューズエレメントのスプリングバックによる反力に対して交差する方向に沿って形成されているヒューズユニットである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載のヒューズユニットであって、前記ロック用係合部はロック突起であり、前記ロック用被係合部は凸部であり、前記ロック突起および前記凸部には、前記分割ボディの屈曲の際に相互に接触して前記ロック突起および前記凸部を前記屈曲に合わせてスライドさせるスライド面部が形成されているヒューズユニットである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載のヒューズユニットであって、前記ロックアームは可撓性を有しており、前記分割ボディの屈曲の際に相互に干渉して前記ロックアームを前記側壁部の外方に撓ませる干渉部が前記ロック突起、前記凸部の少なくともいずれかに形成されているヒューズユニットである。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1または2記載のヒューズユニットであって、前記第1傾斜面および前記第2傾斜面の面合わせの延長線が前記分割ボディの屈曲中心と一致しているヒューズユニットである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1、2記載の発明によれば、一方の分割ボディの両側の側壁部にロックアームが設けられると共に他方の分割ボディの両側の側壁部に凸部が設けられており、2つの分割ボディを屈曲させると、ロックアームに形成された第1傾斜面と、凸部に設けられた第2傾斜面とが面合わせされた状態となる。このような構造では、2つの分割ボディの係合が両側の側壁部でなされるため、確実なロック状態となる。
【0015】
しかも、第1傾斜面および第2傾斜面が分割ボディの屈曲に基づくヒューズエレメントのスプリングバックによる反力に対して交差する方向に沿って形成されているため、第1傾斜面および第2傾斜面の面合わせ状態では、スプリングバックによる反力をこれらの面で確実に受けることができる。
【0016】
このような請求項1、2記載の発明では、ヒューズエレメントからのスプリングバックの負荷を確実に受けることができるため、分割ボディの屈曲状態を保持することができ、破損を防止することができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、相互に接触してスライドするスライド面部がロック突起および凸部に形成されているため、分割ボディの屈曲の際にロック突起および凸部が相対的にスライドする。このため、ロック突起の第1傾斜面および凸部の第2傾斜面が円滑に面合わせされ、屈曲状態のロックを円滑に行うことができる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、請求項1、2記載の発明の効果に加えて、ロック突起および凸部に形成された干渉部が分割ボディの屈曲の際にロックアームを撓ませるため、ロックアームが分割ボディの屈曲の邪魔になることがなく、第1傾斜面および第2傾斜面の面合わせを円滑に行うことができる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、請求項1、2記載の発明の効果に加えて、第1傾斜面および第2傾斜面の面合わせの延長線が分割ボディの屈曲中心と一致しているため、分割ボディの屈曲に基づいたヒューズエレメントのスプリングバックの反力を確実に受けることができ、分割ボディの屈曲状態をさらに安定して保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態のヒューズユニット1の屈曲前の斜視図である。
【図2】ヒューズユニット1におけるロックアーム部分を示す斜視図である。
【図3】ヒューズユニット1における凸部部分を示す斜視図である。
【図4】ヒューズユニット1におけるロックアーム部分を示す図である。
【図5】ヒューズユニット1における凸部部分を示す図である。
【図6】2つの分割ボディを屈曲する前を示す平面図である。
【図7】2つの分割ボディを屈曲する前を示す側面図である。
【図8】(a)、(b)、(c)は2つの分割ボディの屈曲動作を示す側面図である。
【図9】2つの分割ボディを屈曲させた状態を示す斜視図である。
【図10】2つの分割ボディを屈曲させた状態を示す平面図である。
【図11】2つの分割ボディを屈曲させた状態を示す図10のE−E線側面図である。
【図12】従来のヒューズユニットの屈曲状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を図示する実施形態により、具体的に説明する。
【0022】
図1〜図11は、本発明の一実施形態のヒューズユニット1を示し、図1は、本発明の一実施形態のヒューズユニット1の全体斜視図、図2は、ロックアーム部分の斜視図、図3は、凸部部分の斜視図、図4は、ロックアーム部分の図(図7におけるIV−IV矢視図)、図5は、凸部部分の平面図(図7におけるV−V矢視図)、図6は、ヒューズユニット1の屈曲前の平面図、図7は、ヒューズユニット1の側面図、図8は、屈曲の動作を示す側面図、図9は、ヒューズユニット1を屈曲させた状態を示す斜視図、図10は、ヒューズユニット1を屈曲させた状態を示す平面図、図11は、ヒューズユニット1を屈曲させた状態を示す側面図(図10におけるE―E矢視図)である。
【0023】
図1および図9に示すように、この実施形態のヒューズユニット1は、図示を省略したヒューズエレメントと、ヒューズユニットを内蔵した絶縁性の樹脂ボディ2とを備えている。ヒューズユニット1は、車載のバッテリーに直付けされることにより、バッテリーの電力を電力供給用の電源に分配供給する。
【0024】
ヒューズエレメントは、導電性金属板からなり、樹脂ボディ2の成型の際に金型内にインサートされることにより樹脂ボディ2と一体成型される。ヒューズエレメントは、複数のヒューズやタブ端子(いずれも図示省略)が形成されている。ヒューズエレメントの中間部分は、樹脂ボディ2から露出した可撓性のヒンジ部3(図6〜8参照)となっており、後述するように、樹脂ボディ2はヒンジ部3を中心として屈曲可能となっている。
【0025】
樹脂ボディ2は、2つの分割ボディ5、7によって形成されている。2つの分割ボディ5、7は、ヒューズエレメントのヒンジ部3を境にして分割されており、分割ボディ5、7の中間には、ヒューズエレメントのヒンジ部3が露出している。上述した樹脂ボディ2の屈曲は、ヒューズエレメントのヒンジ部3を中心としてL字状になるようになされるものである。このように、L字状に屈曲されることにより、ヒューズユニット1は、狭いスペース内での数多くの回路配置に対応することができる。以下、分割ボディ5を一方の分割ボディ5、分割ボディ7を他方の分割ボディ7として説明する。
【0026】
図1および図9に示すように、他方の分割ボディ7には、バッテリー端子の端子接続部81、オルタネータ端子の端子接続部82、スタータモータ端子の端子接続部83が形成されている。一方の分割ボディ5は、ヒューズ内蔵部85およびタブ端子内蔵部86を有している。
【0027】
一方の分割ボディ5および他方の分割ボディ7は、ヒューズエレメントのヒンジ部3を境として相互に対向した対向壁部51および対向壁部71が形成されている(図1、図6、図9参照)。一方の分割ボディ5における対向壁部51には、対向壁部51に対して直交した交差方向に延びる両側の側壁部52、53が平行となるように形成され、他方の分割ボディ7における対向壁部71には、対向壁部71に対して直交した交差方向に延びる両側の側壁部72、73が平行となるように形成されている。また、分割ボディ5、7の間においては、側壁部52、53および側壁部72、73の全てが平行となっている。
【0028】
一方の分割ボディ5には、一対のロックアーム11、12が形成されている。ロックアーム11、12は、一方の分割ボディ5における側壁部52、53に設けられるものであり、側壁部52,53におけるヒンジ部3側に位置している。ロックアーム11,12が側壁部52,53に設けられることにより、ロックアーム11、12は一方の分割ボディ5における幅方向の両端部分に位置している。ロックアーム11、12は、対応した側壁部52、53の内壁部分から起立(分割ボディ5側に位置しているヒューズエレメントの導電性金属板の厚さ方向に起立)するように設けられている。また、ロックアーム11、12は、ある程度の肉薄状となっており、これにより厚さ方向(ヒューズユニット1の幅方向;ヒンジ部3の長手方向)に撓むことが可能な可撓性が付与されている。
【0029】
それぞれのロックアーム11、12には、ロック用係合部の例であるロック突起13、14がそれぞれ設けられている。ロック突起13はロックアーム11に設けられ、ロック突起14はロックアーム12に設けられている。これらのロック突起13、14は、ロックアーム11、12の対向面の上部に設けられるものである。なお、ロック突起13、14の詳細については後述する。
【0030】
他方の分割ボディ7には、一対の凸部17、18が設けられている。ロック用被係合部の例である凸部17、18は、他方の分割ボディ7における側壁部72、73に設けられるものであり、側壁部72,73におけるヒンジ部3側に位置している。凸部17,18が他方の分割ボディ7の側壁部72,73に設けられることにより、凸部17,18は、他方の分割ボディ7における幅方向の両端部分に位置している。この場合、凸部17は、ロックアーム11のロック突起13に対応し、凸部18は、ロックアーム12のロック突起14に対応している。
【0031】
図1および図2に示すように、ロックアーム11側のロック突起13は、ロックアーム12との対向面から内側(ロックアーム12側)へ突出するように設けられており、その頂面がスライド面部21となっている。スライド面部21は、略台形面となっており、外側の2辺には、干渉部22、23が連設されている。干渉部(ガイド面部)22、23は、ロックアーム11から傾斜して立ち上がる面により形成されるものである。ロック突起13における干渉部22、23と対向した部分には、第1傾斜面25が形成されている。第1傾斜面25がロックアーム11から傾斜して立ち上がる面に形成されるものである。第1傾斜面25の傾斜は、ヒューズエレメントのヒンジ部3を折り曲げ塑性変形させたときのスプリングバックによる反力に対して交差する方向(たとえば、直交する方向)となっている。すなわち、第1傾斜面25は、ヒンジ部3における屈曲の中心軸を含む平面の一部で形成されている。
【0032】
ロックアーム12側のロック突起14は、ロックアーム11側のロック突起13と面対称(ヒューズユニット1の幅方向の中心を通りヒンジ部3の屈曲の中心軸に対して直交する平面に対して対称)となるように形成されるものであり、図7に示すように、頂面がスライド面部31となっており、スライド面部31の外側の2辺が干渉部32、33となっていると共に、干渉部32、33と対向した部分には第1傾斜面35が形成されている。ロック突起14の第1傾斜面35も、ロック突起13の第1傾斜面25と同様に、ヒューズエレメントのスプリングバックによる反力に対して交差する方向に傾斜している。
【0033】
図3に示すように、ロックアーム12のロック突起14に対応した凸部18は、その頂面(頂上に位置している平面)がロック突起14の平面状のスライド面部31に対応したスライド面部36となっている。スライド面部36の外側の2辺には、側壁部73からスライド面部36へ斜め(ヒューズユニット1の幅方向に対して斜め)に立ち上がる干渉部(ガイド面部)37、38が形成されている。干渉部37、38は、ロック突起14における干渉部32、33に対応するものである。スライド面部36における干渉部32、33と対向した部分には、スライド面部36から斜め方向に垂れ下がる第2傾斜面39が連設されている。第2傾斜面39は、ロック突起14の第1傾斜面35と同様に、ヒューズエレメントのスプリングバックによる反力に対して交差する方向に傾斜している。
【0034】
2つの分割ボディ5、7をヒンジ部3のところで屈曲させると、まず、凸部18の干渉部37、38が、ロック突起14の干渉部32、33と干渉する。この干渉によりロックアーム12が一方の分割ボディ5の側壁部53の外側に向かって撓むように動作する。続いて、凸部18のスライド面部36が、ロック突起14のスライド面部31とスライド可能に接触する。さらに、ヒンジ部3のところで90°曲げ終えた状態では、ロック突起14が凸部18を乗り越えて、スライド面部36とスライド面部31との接触が無くなり、ロックアーム12が復元する。そして、凸部18の第2傾斜面39は、ロック突起14の第1傾斜面35と面合わせされる(お互いが面接触する)。
【0035】
図示を省略するが、ロックアーム11のロック突起13に対応した凸部17は、上述した凸部18と面対称となるように形成されるものであり、ロック突起13のスライド面部21に対応したスライド面部と、干渉部22、23に対応した干渉部と、第1傾斜面25と対応した第2傾斜面とが形成されている。凸部17の第2傾斜面は、ロック突起13の第1傾斜面25と同様に、ヒューズエレメントのスプリングバックによる反力に対して交差する方向に傾斜している。
【0036】
2つの分割ボディ5、7を屈曲させると、凸部18やロック突起14と同様にまた同時に、まず、凸部17の干渉部が、ロック突起13の干渉部22、23と干渉し、この干渉によりロックアーム11が一方の分割ボディ5の側壁部52の外側に向かって撓むように動作する。続いて、凸部17のスライド面部が、ロック突起13のスライド面部21とスライド可能に接触する。さらに、凸部17の第2傾斜面は、ロック突起13の第1傾斜面25と面合わせされる。
【0037】
次に、この実施形態の樹脂ボディ2を屈曲させる動作を図7、図8および図10,図11により説明する。これらの図においては、分割ボディ5のロックアーム12およびこれに対応した分割ボディ7の凸部18の動作を示している。すでに理解されるように、ロックアーム11およびこれに対応した凸部17も同様に動作する。
【0038】
図7は、分割ボディ5、7の屈曲前の状態を示し、この状態から分割ボディ5、7を屈曲させる。図8(a)は、ヒューズエレメントのヒンジ部3を中心として一方の分割ボディ5を他方の分割ボディ7側に屈曲させた当初の状態を示す。図8(a)の状態では、ロックアーム12に設けたロック突起14の干渉部32、33が他方の分割ボディ7側の凸部18の干渉部37、38に接近する。
【0039】
図8(b)は、一方の分割ボディ5をさらに屈曲させた状態を示し、この状態ではロック突起14の干渉部32、33が凸部18の干渉部37、38に干渉する。この干渉によりロックアーム12が側壁部53の外方に撓む。ロックアーム11側においても同様な動作が行われ、ロック突起13の干渉部22、23が他方の分割ボディ7の凸部17の干渉部に干渉し、この干渉によりロックアーム11が側壁部52の外方に撓む。このように、ロックアーム11、12が側壁部52、53の外方に撓むことにより、一方の分割ボディ5の屈曲を円滑に行うことができる。
【0040】
図8(c)および図10、図11は、一方の分割ボディ5を直立状態となるまで(分割ボディ5に対して分割ボディ7がほぼ直交するまで)屈曲させた屈曲の最終段階を示し、樹脂ボディ2がL字形となる。屈曲の最終段階では、ロックアーム12におけるロック突起14の第1傾斜面35が他方の分割ボディ7側の凸部18の第2傾斜面39と面合わせされた状態となる。同様に、ロックアーム11におけるロック突起13の第1傾斜面25が他方の分割ボディ7の凸部17の第2傾斜面と面合わせされた状態となる。この状態では、ロック突起13,14の干渉部22,23,32,33と凸部17,18の干渉部37,38と干渉が解消されているため、ロックアーム11,12は元の位置に復帰(復元)している。
【0041】
上述したロック突起13,14の第1傾斜面と凸部17,18の第2傾斜面との面合わせは、分割ボディ5,7の両側の側壁部で行われる。このため、2つの分割ボディ5,7の係合が幅方向の両端部分で行われることとなり、屈曲状態を確実にロックすることができる。
【0042】
また、図11に示すように、この実施形態においては、ロック突起13,14の第1傾斜面25、35および凸部17,18の第2傾斜面39が、分割ボディ5,7の屈曲に基づくヒューズエレメントのスプリングバックによる反力に対して交差する方向に沿って形成されていることから、第1傾斜面25,35および第2傾斜面39の面合わせ状態(第1傾斜面25と一方の第2傾斜面39とがお互いに面接触し、第1傾斜面35と他方の第2傾斜面39とがお互いに面接触している状態)では、スプリングバックによる反力Fをこれらの面で確実に受けることができる。従って、屈曲状態を確実に固定することができる。
【0043】
以上のように、この実施形態では、ヒューズエレメントからのスプリングバックの負荷を確実に受けることができるため、分割ボディ5,7の屈曲状態を保持することができ、樹脂ボディ2の破損を防止することができる。
【0044】
さらに、この実施形態では、図8(c)で示すように、ロック突起13,14の第1傾斜面25、35および凸部17,18の第2傾斜面39の面合わせの延長線が分割ボディ5,7の屈曲中心(ヒンジ部3)と一致する。このため、分割ボディ5,7の屈曲に基づいたヒューズエレメントのスプリングバックの反力を確実に受けることができ、分割ボディ5,7の屈曲状態をさらに安定して保持することができる。
【0045】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく種々変形が可能である。
【0046】
以上の実施形態では、ロックアーム11、12に可撓性が付与されることにより、ロックアーム11、12が側壁部の外方に撓むようになっているが、これに限らず、他方の分割ボディ7の凸部17、18をボディ本体に対してスリットを介して設けることにより(凸部17、18を分割ボディ7から突出しているアーム部の先端部側に設けることにより)、凸部17、18に可撓性を付与してもよい。この場合は、凸部17、18が側壁部の内方に撓むことにより、分割ボディ5、7の屈曲動作を円滑に行うことができる。
【0047】
また、ロック突起13,14の干渉部22,23,32,33、凸部17,18の干渉部37,38の少なくともいずれかを省略してもよい。
【0048】
さらに、分割ボディの屈曲はL字形とする必要がなく、L字となる前に屈曲を停止させる構造のヒューズユニットにも適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 ヒューズユニット
2 樹脂ボディ
3 ヒンジ部
5 一方の分割ボディ
7 他方の分割ボディ
11、12 ロックアーム
13、14 ロック突起
17、18 凸部
21、31、36 スライド面部
22、23、32、33、37、38 干渉部
25、35 第1傾斜面
39 第2傾斜面
51、71 対向壁部
52、53、72、73 側壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性金属板のヒューズエレメントを内蔵した樹脂ボディが前記ヒューズエレメントのヒンジ部を境にして分割された2つの分割ボディによって形成され、これらの分割ボディが前記ヒンジ部を中心に屈曲可能となっているヒューズユニットであって、
前記各分割ボディに形成され、前記ヒンジ部で対向している対向壁部と、この対向壁部の交差方向に延びる両側の側壁部と、
一方の分割ボディの両側の側壁部に設けられた一対のロックアームと、
第1傾斜面が形成され、前記ロックアームに設けられた一対のロック用係合部と、
前記ロック用係合部に対応するように他方の分割ボディの両側の側壁部に設けられた一対のロック用被係合部と、
前記ロック用被係合部と対応するように他方の分割ボディに設けられ、前記2つの分割ボディを屈曲させたときに前記第1傾斜面が面合わせされる第2傾斜面とを備え、
前記第1傾斜面および前記第2傾斜面は、前記分割ボディの屈曲に基づく前記ヒューズエレメントのスプリングバックによる反力に対して交差する方向に沿って形成されていることを特徴とするヒューズユニット。
【請求項2】
請求項1記載のヒューズユニットであって、
前記ロック用係合部はロック突起であり、前記ロック用被係合部は凸部であり、
前記ロック突起および前記凸部には、前記分割ボディの屈曲の際に相互に接触して前記ロック突起および前記凸部を前記屈曲に合わせてスライドさせるスライド面部が形成されていることを特徴とするヒューズユニット。
【請求項3】
請求項2記載のヒューズユニットであって、
前記ロックアームは可撓性を有しており、
前記分割ボディの屈曲の際に相互に干渉して前記ロックアームを前記側壁部の外方に撓ませる干渉部が前記ロック突起、前記凸部の少なくともいずれかに形成されていることを特徴とするヒューズユニット。
【請求項4】
請求項1または2記載のヒューズユニットであって、
前記第1傾斜面および前記第2傾斜面の面合わせの延長線が前記分割ボディの屈曲中心と一致していることを特徴とするヒューズユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−81912(P2011−81912A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230528(P2009−230528)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】