ヒンジ装置並びにヒンジ装置を用いた電子機器
【課題】本発明は、従来にない作用効果を発揮する画期的なヒンジ装置並びにヒンジ装置を用いた電子機器を提供することを目的とする。
【解決手段】第一部材1と第二部材2とを回動自在に連結するヒンジ装置であって、前記第一部材1の回動と共に回動する第一回動体3に設けるカム部4と、前記第二部材2の回動と共に回動する第二回動体5に設けるカム係合部6とを、互いに相対回動自在に設けると共に、付勢体7に付勢されて互いに凹凸係合するように構成して、前記カム部4と前記カム係合部6とが前記付勢体7により付勢係合若しくは付勢係合途中となることで前記第一部材1と前記第二部材2との回動位置が保持されるように構成したものである。
【解決手段】第一部材1と第二部材2とを回動自在に連結するヒンジ装置であって、前記第一部材1の回動と共に回動する第一回動体3に設けるカム部4と、前記第二部材2の回動と共に回動する第二回動体5に設けるカム係合部6とを、互いに相対回動自在に設けると共に、付勢体7に付勢されて互いに凹凸係合するように構成して、前記カム部4と前記カム係合部6とが前記付勢体7により付勢係合若しくは付勢係合途中となることで前記第一部材1と前記第二部材2との回動位置が保持されるように構成したものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ノート型と称されるパソコンやワープロ、或いは携帯電話などにおける操作部を備えた本体部とディスプレイ部を備えた重合部とを起伏回動自在に枢着するために使用されるヒンジ装置並びにヒンジ装置を用いた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、開閉式の携帯電話やノート型パソコンは、操作部を備えた本体部に対してディスプレイ部を備えた重合部がヒンジ装置を介して起伏開閉回動自在に設けられているが、この重合部を本体部に伏した重合閉塞状態でこの重合部が勝手に回動して開いてしまうことがないように、閉塞状態を維持する重合保持機能をヒンジ装置に設けているものがある。
【0003】
即ち、例えば、ヒンジ装置の回動軸部を軸に互いに相対回動自在に設けられる本体部の回動と共に回動する第一回動体に設けるカム部(例えば凸部)と、重合部の回動と共に回動する第二回動体に設けるカム係合部(例えば凹部)とを有し、閉塞重合状態となるとき、このカム部とカム係合部とが付勢体(バネ)によって係合することでこの重合状態が係合保持されるように構成し、開放回動時に再び係合し、所定回動位置が係合保持されるように構成している。例えば、重合閉塞時に係合若しくは係合途中となって閉塞保持された状態で重合保持され、180度近く起動回動すると、再び係合若しくは係合途中となって開放状態が係合クリック保持されるように構成されている。
【0004】
このようにヒンジ装置を構成することで、別に閉塞保持装置を設けてこれをロック解除するなどの厄介な操作は一切不要にして重合状態とすることで自動的に付勢体の係合付勢によってこの重合状態が係合保持されることとなり、そのままこの閉塞付勢に抗して回動すれば開放できることとなる。即ち、常に重合状態では開き止め付勢され、また、開放回動したいときにはこの付勢力に抗して回動すればカム係合が外れてそのまま開放回動することができる。
【0005】
ところで、例えば閉塞重合状態から本体部に対して重合部を起伏回動させて重合部を開放回動する際には、前記カム部と前記カム係合部とは、前述のようにカム係合(係合途中のカム係合)が解除されてカム部の凸部がカム係合部の凹部外を移動し、再び凹部にカム係合する。
【0006】
このカム部の凸部がカム係合部の凹部外(凹部間)を移動する際、カム部とカム係合部とは、前記付勢体により互いに近接(係合)する方向に付勢されているため、前記凸部は凹部間である摺動面をいわば圧接しながら摺動することになる。
【0007】
即ち、この付勢体による押圧が回動抵抗(回動トルク)となり、回動途中では、この回動トルクが大きければこの回動トルクによって、手を放した位置で回動停止するいわゆるフリーストップが実現できることとなる。即ち、勝手に自重によって回動せずスムーズに手で回動できるが、手を放せばその位置で自動的に停止保持されるフリーストップが実現できることとなる。
【0008】
本出願人は、このカム部の凸部(頂部)とカム係合部の凹部間の摺動面との回動抵抗(回動トルク)により、本体部に対して開放した重合部の手を放した位置で回動停止して良好なフリーストップ状態を実現するヒンジ装置並びにこのヒンジ装置を用いた電子機器を完成し、特許出願している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−161311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、ヒンジ装置に対する高性能化と小型化が益々要求される中、重量のある本体部を支えるだけの十分な回動抵抗を生じさせて良好なフリーストップを実現する為には、このフリーストップを実現する摺動面に対する凸部の圧接を強くする必要があるが、この摺動面に対する凸部の圧接が強くなる程、この摺動部位(摺動面及び凸部)の耐久性が低下する。
【0011】
そこで、従来においてもこの摺動部位には、安定した回動抵抗を伴う良好な摺動を得るとともに、耐久性を向上すべくグリスが塗布されているが、前述したように強く圧接された状態で摺動が行われる為、使用を重ねるうちにグリスが掻き取られることでグリス切れが生じて摺動が悪くなるのは勿論、結局は耐久性が著しく低下してしまう場合がある。
【0012】
本出願人は、前述した問題点に着目し、種々の実験・研究を繰り返し行った結果、極めて商品価値の高い画期的なヒンジ装置並びにヒンジ装置を用いた電子機器を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0014】
第一部材1と第二部材2とを回動自在に連結するヒンジ装置であって、前記第一部材1の回動と共に回動する第一回動体3に設けるカム部4と、前記第二部材2の回動と共に回動する第二回動体5に設けるカム係合部6とを、互いに相対回動自在に設けると共に、付勢体7に付勢されて互いに凹凸係合するように構成して、前記カム部4と前記カム係合部6とが前記付勢体7により付勢係合若しくは付勢係合途中となることで前記第一部材1と前記第二部材2との回動位置が保持されるように構成したヒンジ装置において、前記カム部4が回動に際して摺動する前記第二回動体5の摺動面8にグリス溜り凹部10を有し、前記カム部4の摺動方向に長さを有し且つ前記第二回動体5の回動中心が円弧中心となる円弧状凹溝を前記摺動面8に設けて前記グリス溜り凹部10を構成したことを特徴とするヒンジ装置に係るものである。
【0015】
また、複数の前記グリス溜り凹部10を前記第二回動体5の回動中心から放射方向に並設したことを特徴とする請求項1記載のヒンジ装置に係るものである。
【0016】
また、第一部材1と第二部材2とを回動自在に連結するヒンジ装置であって、前記第一部材1の回動と共に回動する第一回動体3に設けるカム部4と、前記第二部材2の回動と共に回動する第二回動体5に設けるカム係合部6とを、互いに相対回動自在に設けると共に、付勢体7に付勢されて互いに凹凸係合するように構成して、前記カム部4と前記カム係合部6とが前記付勢体7により付勢係合若しくは付勢係合途中となることで前記第一部材1と前記第二部材2との回動位置が保持されるように構成したヒンジ装置において、前記カム部4が回動に際して摺動する前記第二回動体5の摺動面8にグリス溜り凹部10を複数有し、この複数のグリス溜り凹部10を、前記カム部4の摺動方向に列となる状態で前記摺動面8に並設し、且つ、前記摺動面8に前記カム部4の摺動方向に並設される複数の前記グリス溜り凹部10から成る列を前記第二回動体5の回動中心から放射方向に複数列設けたことを特徴とするヒンジ装置に係るものである。
【0017】
また、前記係合カム部6に対して前記カム部4が係合する際に摺動する前記カム係合部6の下り摺動面8aに前記グリス溜り凹部10を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒンジ装置に係るものである。
【0018】
また、前記グリス溜まり凹部10は、前記カム部4の摺動方向に長さを有し且つ前記第二回動体5の回動中心が円弧中心となる円弧状凹溝を前記下り摺動面8aに設けて構成されていることを特徴とする請求項4記載のヒンジ装置に係るものである。
【0019】
また、凸部で構成される前記カム部4が凹凸係合する凹部で構成される前記カム係合部6の底部にグリス溜り凹状部11を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒンジ装置に係るものである。
【0020】
また、前記カム部4が前記カム係合部6に係合する回動領域では、前記カム係合部6に設けた下り摺動面8aに対して前記カム部4が摺動する際に落ち込み作用が生じ、この落ち込み作用により前記第一部材1と前記第二部材2との回動を付勢する回動付勢機能を具備するとともに、前記第一部材1と前記第二部材2とを回動させて前記カム部4が前記カム係合部6から係脱した回動領域では、前記摺動面8に対して前記カム部4が摺動する際に回動抵抗が生じ、この回動抵抗により前記第一部材1と前記第二部材2とを回動させる手を放した位置で回動停止するフリーストップ状態となるフリーストップ機能を具備することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のヒンジ装置に係るものである。
【0021】
また、上面に操作部12若しくはディスプレイ部13を備えた本体部を前記第一部材1若しくは前記第二部材2とし、伏面にディスプレイ部13若しくは操作部12を備えた重合部を前記第二部材2若しくは前記第一部材1とし、この本体部と重合部との端部同士を前記請求項1〜7のいずれか1項に記載のヒンジ装置によって枢着連結したことを特徴とするヒンジ装置を用いた電子機器に係るものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明は上述のように構成したから、前述した従来例に比し、使用を重ねてもグリス切れが生じず摺動部位の良好な摺動を維持でき、且つ、摺動部位の耐久性を飛躍的に向上し得ることになり、しかも、これらの効果が常に安定した回動抵抗を伴う良好な摺動を実現し得る構造により達成されて非常に実用性に秀れるなど極めて商品価値の高い画期的なヒンジ装置並びにヒンジ装置を用いた電子機器となる。
【0023】
また、請求項2記載の発明においては、より一層安定した回動抵抗を伴う良好な摺動を実現し得る構造となるなど画期的なヒンジ装置となる。
【0024】
また、請求項3記載の発明においては、前述した請求項1記載の発明と同様の作用効果を発揮する画期的なヒンジ装置となる。
【0025】
また、請求項4〜6記載の発明においては、より一層摺動部位の耐久性を向上し得る構造となるなど画期的なヒンジ装置となる。
【0026】
また、請求項7記載の発明においては、前述した安定した回動抵抗を伴う良好な摺動を実現しつつ良好な回動付勢機能及びフリーストップ機能も実現し得ることになるなど画期的なヒンジ装置となる。
【0027】
また、請求項8記載の発明においては、前述のような作用効果を発揮する画期的なヒンジ装置を用いた電子機器を提供できることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1の使用状態説明図である。
【図2】実施例1を示す斜視図である。
【図3】実施例1を示す分解斜視図である。
【図4】実施例1に係る要部を示す説明斜視図である。
【図5】実施例1に係る要部を示す説明斜視図である。
【図6】実施例1に係る要部を示す正面図である。
【図7】図6のA−A断面図である。
【図8】実施例1の概略動作説明図である。
【図9】実施例2に係る要部を示す斜視図である。
【図10】実施例2に係る要部を示す正面図である。
【図11】図10のC−C断面図である。
【図12】実施例3に係る要部を示す斜視図である。
【図13】実施例3に係る要部の正面図である。
【図14】図13のB−B断面図である。
【図15】実施例3に係る要部の拡大正面図である。
【図16】図15のD−D断面図である。
【図17】実施例4に係る要部の斜視図である。
【図18】実施例4に係る要部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0030】
カム部4とカム係合部6とが付勢体7により付勢係合若しくは付勢係合途中となることで第一部材1と第二部材2との回動位置は保持される。
【0031】
即ち、例えば、第一部材1と第二部材2とを重合閉塞状態とした際に、カム部4とカム係合部6とが付勢体7により付勢係合若しくは付勢係合途中となるように設けることで、この第一部材1と第二部材2との重合閉塞状態は保持される。
【0032】
また、例えば、この重合閉塞状態から第一部材1と第二部材2を開放回動して、カム係合部6からカム部4を係脱すると、カム部4は摺動面8を摺動するが、このカム部4が摺動する際、カム部4は付勢体7により付勢されて摺動面8に圧接しており回動抵抗(回動トルク)が発生する。この回動抵抗は、例えば、第一部材1と第二部材2との急激な回動を抑制するいわゆるダンパー機能であり、更には、例えば、この回動抵抗の大きさ次第では任意の回動位置で手を放してもこの回動停止状態を維持し得るいわゆるフリーストップ機能も具備できる。
【0033】
また、第一部材1と第二部材2との回動に伴い摺動面8に対してカム部4が摺動する際、摺動面8に設けたグリス溜り凹部10のグリスにより常に円滑な摺動が達成される。
【0034】
具体的には、この摺動面8とカム部4とから成る摺動部位にはグリスの存在により耐久性が向上し、しかも、このグリスはグリス溜り凹部10に保持されることになり、即ち、摺動面8を摺動するカム部4が達しない部位(掻き取られない部位)にグリスが保持される為、前述した従来例のように摺動部位のグリス切れが生じることはない。
【0035】
従って、使用を重ねてもグリス切れが生じず摺動部位の円滑な摺動を維持でき、且つ、摺動部位の耐久性を飛躍的に向上し得ることになる。
【0036】
ところで、本発明は、この摺動面8にグリス溜り凹部10を設けるにあたり、カム部4の摺動方向に長さを有し且つ第二回動体5の回動中心が円弧中心となる円弧状凹溝を摺動面8に設けてグリス溜り凹部10を構成しており、この構成から、単にグリスを介在した円滑な摺動が維持されるだけでなく、摺動面8に対してカム部4が摺動する際の接触面積の変化を可及的に防止することができて、常に安定した回動抵抗(回動トルク)を伴った良好な摺動が得られることになる。
【0037】
即ち、例えば、摺動面8にグリス溜り凹部10をランダムに設けた場合、回動位置によって摺動面8に対するカム部4の接触面積が異なり、このカム部4の摺動によって生じる回動抵抗が回動位置によって不均一となり、よって、むしろ摺動面8にグリス溜り凹部10を設けることで安定した回動抵抗を伴った良好な摺動が得られず、ひいては、安定しない摺動から摺動部位の耐久性が低下してしまう場合がある。仮に摺動面8にグリス溜り凹部10をランダムに設けることで摺動面8に対するカム部4の接触面積を一定に設定しようとする場合、径の小さいグリス溜り凹部10を無数に設けることになるが、これは回動トルクの設定が難しく、しかも、量産性及びコスト性も悪くなるなど量産化するにおいて現実的ではない。
【0038】
この点、本発明は、前述したようにグリス溜り凹部10が摺動方向に長さを有し且つ第二回動体5の回動中心が円弧中心となる円弧状凹溝を摺動面8に設けて構成されており、即ち、この構成から、例えばカム部4が摺動する際に接触する摺動面8の所定面積の領域内において、どの程度の面積のグリス溜り凹部10を設ければどの程度の回動抵抗が生じるかなどの設定が極めて簡易に行えることになる為、摺動面8に対するカム部4の接触面積を一定に設定でき、このカム部4の摺動によって生じる回動抵抗がどの回動位置でも均一にできる。この点において、本発明は量産性及びコスト性にも秀れる。
【0039】
しかも、本発明は、前述した構成から摺動面8に対するカム部4の摺動に際してグリスが摺動方向に筋のようになり、常に摺動面8とカム部4との間に供給されるグリス量も均一となるから、安定した回動抵抗を伴った良好な摺動が得られることになる。このグリス溜り凹部10を摺動方向に設けることにより安定した回動抵抗を伴った良好な摺動が得られる点については本出願人は繰り返し行った実験により確認している。
【0040】
以上のように、本発明は、摺動面8に対するカム部4の接触面積を確保しつつグリスを均一に介在させることができ、良好な回動抵抗の発生と耐久性を向上することができ、グリス溜り凹部10を設けても摺動部位の本来の機能を害することはない。
【0041】
また、請求項4記載の発明においても、前述した本発明と同様の作用効果を奏することになる。
【実施例1】
【0042】
本発明の具体的な実施例1について図1〜8に基づいて説明する。
【0043】
本実施例は、図1に示すように、ラップトップタイプのノート型パソコンに適用した場合のもので、キー操作部12を備えた本体部を第一部材1とし、ディスプレイ部13(LCD)を備えた重合部を第二部材2とし、この第一部材1と第二部材2とが重合した閉塞状態から第二部材2を所定角度開放状態(使用位置)とすることができる枢着構造に本発明のヒンジ装置Hを適用している。
【0044】
本実施例では、第一部材1(本体部)に連結する第一連結体14(連結金具)に枢着軸15を回り止め状態に設け、第二部材2(重合部)に連結する第二連結体16(連結金具)に前記枢着軸15を回動自在に嵌挿する軸受部16a(孔)を設けている。尚、図面では第一部材1と枢着軸15とを別部材で形成し、この第一部材1と枢着軸15とを回り止め状態に連結する構成とした場合を示しているが、第一部材1と枢着軸15とを一体的に構成しても良い。
【0045】
また、この軸受部16aの図における右側にリング状の第二回動体5を回り止め状態に付設し、この第二回動体5を付設した軸受部16aを摩擦板17を介して前記枢着軸15に回動自在に被嵌している。
【0046】
具体的には、第二回動体5の周縁一箇所に軸受部16a方向へ向けて凸部5aを突設する一方、軸受部16aの周縁一箇所にはこの凸部5aが嵌合する凹部16bを設け、この凸部5aと凹部16bとの嵌合関係により軸受部16aに対して第二回動体5を回り止め状態に付設する構成としている。尚、図面では軸受部16aと第二回動体5とを別部材で形成し、この軸受部16aと第二回動体5とを回り止め状態に連結する構成とした場合を示しているが、軸受部16aと第二回動体5とを一体的に構成しても良い。
【0047】
一方、この軸受部16aを被嵌した枢着軸15には、第二回動体5の外側(図面右側)からリング状の第一回動体3を対向状態に被嵌し、この第一回動体3は枢着軸15に対して回り止め状態であって、且つこの枢着軸15に沿って該枢着軸15の長さ方向にスライド可能に設けている。
【0048】
具体的には、枢着軸15の所定範囲の断面形状を長円形状に形成する一方、第一回動体3の中心孔の形状も枢着軸15断面形状に対応した長円形状に形成することで、枢着軸15に第一回動体3を被嵌すると、第一回動体3は枢着軸15に対し回り止め状態となり、且つこの枢着軸15に沿って枢着軸15の長さ方向にスライド可能となる構成としている。
【0049】
また、この第一回動体3の第二回動体5との対向側面には、カム部4としての凸部4を対向二箇所に突設する一方、第二回動体5の第一回動体3との対向側面には、カム部4が係合するカム係合部6としての凹部6を対向二箇所に凹設している。
【0050】
また、本実施例は、一対のカム部4(凸部)を第一回動体3の端面にして第二回動体5との対向側面における同一円周上でない位置に設けると共に、一対のカム係合部6(凹部)を第二回動体5の端面にして第一回動体3との対向側面における同一円周上でない位置に設けている。
【0051】
従って、このカム係合部6にカム部4が係合する回動ロック状態(重合閉塞状態)から少なくとも第一連結体3が第二連結体5に対し180度相対回動しても再び係合して回動ロック状態とならない構成である。
【0052】
また、この枢着軸15への軸受部16aの取付構造について説明すると、枢着軸15の先端にプレート18を被嵌して枢着軸15をカシメ止めし、このプレート18と前記第一回動体3との間の枢着軸15に付勢体7(係合付勢機構)として弾性体7a(図面ではリング状の皿バネ7aを採用している。)を被嵌状態に配設し、この皿バネ7aがカム係合部6に対してカム部4が係脱する(第二回動体5に対して第一回動体3が離反する)に際して離反する際係合方向に付勢するように構成している。尚、弾性体7aは枢着軸15に被嵌するコイルバネでも良い。
【0053】
また、本実施例では、この付勢体7により前記カム部4とカム係合部6との係合は係脱せず、回動ロック状態が保持されるように構成し、カム部4(第一回動体3)を付勢体7に抗して離反方向にスライド移動させつつ軸受部16aと共にカム係合部6(第二回動体5)を回動させることで前記カム係合部6に対しカム部4を係脱させ、前記第二部材2を前記第一部材1に対して相対回動させるように構成している。
【0054】
本実施例では、前記第一部材1と前記第二部材2との双方が重合した閉塞状態のとき、前記カム部4とカム係合部6とが係合した回動ロック状態となり、この閉塞状態が前記付勢体7によって保持されるように構成している。
【0055】
この第一部材1と第二部材2とが完全に閉塞状態となる手前の位置から閉塞状態となるまでの領域、即ち、カム部4がカム係合部6に係合する回動領域では、付勢体7の付勢を伴ってカム係合部6に設けた下り摺動面8aに対してカム部4が摺動する際に落ち込み作用が生じ、この落ち込み作用により第一部材1と第二部材2との回動を付勢する回動付勢機能を具備している。
【0056】
また、本実施例では、前記第二回動体5に設けた一対のカム係合部6以外の一対の対向頂部面8を一対のカム部4が回動に際して前記付勢体7により圧接した状態で摺動する摺動面8とし、カム部4がカム係合部6に係合する前記回動ロック状態以外の回動領域ではカム部4が付勢体7によってこの摺動面8夫々に圧接することによる回動抵抗が付与されるように構成している。
【0057】
即ち、この一対のカム部4が付勢体7によって一対の摺動面8に圧接する回動抵抗によって、回動ロック状態(第一部材1と第二部材2との重合閉塞状態)以外の回動領域では第一部材1に対し第二部材2がどのような角度でも停止できるフリーストップとなるように構成しているもので、本実施例では、このフリーストップを実現するに十分な回動抵抗を生じるように付勢体7の付勢力を設定構成している。
【0058】
次に、作動を説明すると、第一部材1と第二部材2との重合閉塞状態では、付勢体7によりカム部4がカム係合部6に係合しているために、強い回動抵抗を生じ、この閉塞状態が保持される。この際、カム部6は下り摺動面8aに位置して停止状態となる。
【0059】
一方、この閉塞保持状態から、第一部材1に対し第二部材2を起こすと、枢着軸15に対して軸受部16aが回動するが、このときカム係合部6(第二回動体5)に対してカム部4(第一回動体3)が軸受部16aと共に回動しつつカム係合部6が付勢体7に抗して離反方向に移動しながら前記係合が係脱することになる。
【0060】
そして、この第二部材2が開放した(起動)した状態では、付勢体7によりカム4が摺動面8に圧接しているために回動抵抗を生じてフリーストップとなる。
【0061】
また、逆に、第二部材2を第一部材1に近付けてある程度まで重合閉塞状態に近付けると、カム部4とカム係合部6とのカム係合力が働いて閉塞方向に回動付勢力が生じ、後は自動的に閉塞状態にまで伏動回動する。
【0062】
つまり、前記カム係合部6の凹部内を前記カム部4が係合する係合部分とし、この凹部間の頂部面8をカム部4が回動に際して前記付勢体7により圧接した状態で摺動する摺動面8としたため、付勢体7によりこのカム部4がこの摺動面8から凹部内へ落ち込もうとする前記カム係合力によって第二部材2の閉塞方向への回動付勢力が生じることになる。
【0063】
また、本実施例では、前記したようにカム部4を第一回動体3の対向二箇所に設け、カム係合部6を第二回動体5の対向二箇所に設け、このカム部4及びカム係合部6が夫々第一回動体3及び第二回動体5における同一周面上には設けられていない構造上、このカム係合部6にカム部4が係合する前記回動ロック状態(重合閉塞状態)から少なくとも第一連結体3が第二連結体5に対し180度相対回動しても再び係合して回動ロック状態とならない構成であり、これにより第二部材2のディスプレイ部13を閉塞状態から180度開いた状態で使用することも可能である。
【0064】
してみると、例えば、車両内や電車内などデスクやテーブルのないところでは、シートに座り、膝(太もも)の上にノート型パソコンを載せて使用することがあるが、この場合にはディスプレイ部13が操作部12に対して立った状態にあると、ディスプレイ部13が非常に見づらく使いづらい。この点、本実施例によれば、上記したように、ディスプレイ部13を閉塞状態から180度開いた状態で使用することも可能であるため、このような使用状況においても秀れた実用性を発揮する構成となる。
【0065】
また、本実施例は、一対のカム部4が回動に際して摺動する第二回動体5の対向する摺動面8夫々にグリス溜り凹部10を有し、カム部4の摺動方向に長さを有し且つ第二回動体5の回動中心が円弧中心となる円弧状凹溝を摺動面8に設けてグリス溜り凹部10を構成している。
【0066】
具体的には、図4,5に図示したように摺動面8に、カム部4の摺動方向に長さを有する一対のグリス溜り凹部10を前記第二回動体5の回動中心から放射方向に所定間隔を介して2列となるよう並設している。
【0067】
尚、グリス溜り凹部10の数は二本に限定されるものではない。
【0068】
従って、第一部材1と第二部材2との回動に伴い摺動面8に対してカム部4が摺動する際、摺動面8に設けたグリス溜り凹部10のグリスにより常に円滑な摺動が達成される。
【0069】
具体的には、この摺動面8とカム部4とから成る摺動部位にはグリスの存在により耐久性が向上し、しかも、このグリスはグリス溜り凹部10に保持されることになり、即ち、摺動面8を摺動するカム部4が達しない部位(掻き取られない部位)にグリスが保持される為、前述した従来例のように摺動部位のグリス切れが生じることはない。
【0070】
従って、使用を重ねてもグリス切れが生じず摺動部位の円滑な摺動を維持でき、且つ、摺動部位の耐久性を飛躍的に向上し得ることになる。
【0071】
また、本実施例は、この摺動面8にグリス溜り凹部10を設けるにあたり、グリス溜り凹部10をカム部4の摺動方向に長さを有する状態で摺動面8に設けており、この構成から、単にグリスを介在した円滑な摺動が維持されるだけでなく、摺動面8に対してカム部4が摺動する際の接触面積の変化を可及的に防止することができて、常に安定した回動抵抗(回動トルク)を伴った良好な摺動が得られることになる。
【0072】
以上のように、本実施例は、摺動面8に対するカム部4の接触面積を確保しつつグリスを均一に当てることができ、良好な回動抵抗の発生と耐久性を向上することができ、グリス溜り凹部10を設けても摺動部位の本来の機能を害することはない。
【実施例2】
【0073】
本発明の具体的な実施例2について図9〜11に基づいて説明する。
【0074】
本実施例は、一対のカム部4が回動に際して摺動する第二回動体5の摺動面8にグリス溜り凹部10を複数(3個以上)有し、この複数のグリス溜り凹部10を、カム部4の摺動方向に列となる状態で摺動面8に並設し、且つ、摺動面8に前記カム部4の摺動方向に並設される複数のグリス溜り凹部10から成る列を第二回動体5の回動中心から放射方向に複数列設けた場合である。
【0075】
具体的には、摺動面8に、複数の円形状のグリス溜り凹部10をカム部4の摺動方向に等間隔を介して列となり且つ、第二回動体5の回動中心から放射方向に等間隔を介して複数列(3列)となる状態で並設したものである。つまり、前述した実施例1の円弧状凹溝を断続的に設けた状態であり同様の作用を発揮する。
【0076】
従って、前述した実施例1と同様、摺動面8に対するカム部4の接触面積を確保しつつグリスを均一に当てることができ、良好な回動抵抗の発生と耐久性を向上することができ、グリス溜り凹部10を設けても摺動部位の本来の機能を害することはない。
【0077】
その余は実施例1と同様である。
【実施例3】
【0078】
本発明の具体的な実施例3について図12〜16に基づいて説明する。
【0079】
本実施例は、前述した実施例2と同様、一対のカム部4が回動に際して摺動する第二回動体5の摺動面8にグリス溜り凹部10を複数有し、この複数のグリス溜り凹部10を、カム部4の摺動方向に列となる状態で摺動面8に並設し、且つ、摺動面8に前記カム部4の摺動方向に並設される複数のグリス溜り凹部10から成る列を第二回動体5の回動中心から放射方向に複数列設け、更に、係合カム部6に対してカム部4が係合する際に摺動するカム係合部6の下り摺動面8aにグリス溜り凹部10を設けた場合である。
【0080】
この下り摺動面8aに設けられるグリス溜まり凹部10は、カム部4の摺動方向に長さを有し且つ第二回動体5の回動中心が円弧中心となる円弧状凹溝を設けて構成されている。
【0081】
また、本実施例は、凸部で構成されるカム部4が凹凸係合する凹部で構成されるカム係合部6の底部にグリス溜り凹状部11を設けている。
【0082】
従って、前述した実施例1及び実施例2と同様、摺動面8に対するカム部4の接触面積を確保しつつグリスを均一に当てることができ、良好な回動抵抗の発生と耐久性を向上することができ、グリス溜り凹部10を設けても摺動部位の本来の機能を害することはない。
【0083】
また、本実施例は、グリス溜り凹部10を強い負荷のかかる部位である下り摺動面8aに設けることで、より一層耐久性を向上することができ、しかも、凹部で構成されるカム係合部6の底部にグリス溜り凹状部11を設けることで大量のグリスを保持することができる。
【0084】
その余は実施例1と同様である。
【実施例4】
【0085】
本発明の具体的な実施例4について図17,18に基づいて説明する。
【0086】
本実施例は、係合カム部6に対してカム部4が係合する際に摺動するカム係合部6の下り摺動面8aにグリス溜り凹部10を設けた場合である。
【0087】
この下り摺動面8aに設けられるグリス溜まり凹部10は、カム部4の摺動方向に長さを有し且つ第二回動体5の回動中心が円弧中心となる円弧状凹溝を設けて構成されている。
【0088】
また、本実施例は、凸部で構成されるカム部4が凹凸係合する凹部で構成されるカム係合部6の底部にグリス溜り凹状部11を設けている。
【0089】
従って、グリス溜り凹部10を強い負荷のかかる部位である下り摺動面8aに設けることで、より一層耐久性を向上することができ、しかも、凹部で構成されるカム係合部6の底部にグリス溜り凹状部11を設けることで大量のグリスを保持することができる。
【0090】
その余は実施例1と同様である。
【0091】
尚、本発明は、実施例1,2,3,4に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0092】
1 第一部材
2 第二部材
3 第一回動体
4 カム部
5 第二回動体
6 カム係合部
7 付勢体
8 摺動面
8a 下り摺動面
10 グリス溜り凹部
11 グリス溜り凹状部
12 操作部
13 ディスプレイ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ノート型と称されるパソコンやワープロ、或いは携帯電話などにおける操作部を備えた本体部とディスプレイ部を備えた重合部とを起伏回動自在に枢着するために使用されるヒンジ装置並びにヒンジ装置を用いた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、開閉式の携帯電話やノート型パソコンは、操作部を備えた本体部に対してディスプレイ部を備えた重合部がヒンジ装置を介して起伏開閉回動自在に設けられているが、この重合部を本体部に伏した重合閉塞状態でこの重合部が勝手に回動して開いてしまうことがないように、閉塞状態を維持する重合保持機能をヒンジ装置に設けているものがある。
【0003】
即ち、例えば、ヒンジ装置の回動軸部を軸に互いに相対回動自在に設けられる本体部の回動と共に回動する第一回動体に設けるカム部(例えば凸部)と、重合部の回動と共に回動する第二回動体に設けるカム係合部(例えば凹部)とを有し、閉塞重合状態となるとき、このカム部とカム係合部とが付勢体(バネ)によって係合することでこの重合状態が係合保持されるように構成し、開放回動時に再び係合し、所定回動位置が係合保持されるように構成している。例えば、重合閉塞時に係合若しくは係合途中となって閉塞保持された状態で重合保持され、180度近く起動回動すると、再び係合若しくは係合途中となって開放状態が係合クリック保持されるように構成されている。
【0004】
このようにヒンジ装置を構成することで、別に閉塞保持装置を設けてこれをロック解除するなどの厄介な操作は一切不要にして重合状態とすることで自動的に付勢体の係合付勢によってこの重合状態が係合保持されることとなり、そのままこの閉塞付勢に抗して回動すれば開放できることとなる。即ち、常に重合状態では開き止め付勢され、また、開放回動したいときにはこの付勢力に抗して回動すればカム係合が外れてそのまま開放回動することができる。
【0005】
ところで、例えば閉塞重合状態から本体部に対して重合部を起伏回動させて重合部を開放回動する際には、前記カム部と前記カム係合部とは、前述のようにカム係合(係合途中のカム係合)が解除されてカム部の凸部がカム係合部の凹部外を移動し、再び凹部にカム係合する。
【0006】
このカム部の凸部がカム係合部の凹部外(凹部間)を移動する際、カム部とカム係合部とは、前記付勢体により互いに近接(係合)する方向に付勢されているため、前記凸部は凹部間である摺動面をいわば圧接しながら摺動することになる。
【0007】
即ち、この付勢体による押圧が回動抵抗(回動トルク)となり、回動途中では、この回動トルクが大きければこの回動トルクによって、手を放した位置で回動停止するいわゆるフリーストップが実現できることとなる。即ち、勝手に自重によって回動せずスムーズに手で回動できるが、手を放せばその位置で自動的に停止保持されるフリーストップが実現できることとなる。
【0008】
本出願人は、このカム部の凸部(頂部)とカム係合部の凹部間の摺動面との回動抵抗(回動トルク)により、本体部に対して開放した重合部の手を放した位置で回動停止して良好なフリーストップ状態を実現するヒンジ装置並びにこのヒンジ装置を用いた電子機器を完成し、特許出願している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−161311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、ヒンジ装置に対する高性能化と小型化が益々要求される中、重量のある本体部を支えるだけの十分な回動抵抗を生じさせて良好なフリーストップを実現する為には、このフリーストップを実現する摺動面に対する凸部の圧接を強くする必要があるが、この摺動面に対する凸部の圧接が強くなる程、この摺動部位(摺動面及び凸部)の耐久性が低下する。
【0011】
そこで、従来においてもこの摺動部位には、安定した回動抵抗を伴う良好な摺動を得るとともに、耐久性を向上すべくグリスが塗布されているが、前述したように強く圧接された状態で摺動が行われる為、使用を重ねるうちにグリスが掻き取られることでグリス切れが生じて摺動が悪くなるのは勿論、結局は耐久性が著しく低下してしまう場合がある。
【0012】
本出願人は、前述した問題点に着目し、種々の実験・研究を繰り返し行った結果、極めて商品価値の高い画期的なヒンジ装置並びにヒンジ装置を用いた電子機器を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0014】
第一部材1と第二部材2とを回動自在に連結するヒンジ装置であって、前記第一部材1の回動と共に回動する第一回動体3に設けるカム部4と、前記第二部材2の回動と共に回動する第二回動体5に設けるカム係合部6とを、互いに相対回動自在に設けると共に、付勢体7に付勢されて互いに凹凸係合するように構成して、前記カム部4と前記カム係合部6とが前記付勢体7により付勢係合若しくは付勢係合途中となることで前記第一部材1と前記第二部材2との回動位置が保持されるように構成したヒンジ装置において、前記カム部4が回動に際して摺動する前記第二回動体5の摺動面8にグリス溜り凹部10を有し、前記カム部4の摺動方向に長さを有し且つ前記第二回動体5の回動中心が円弧中心となる円弧状凹溝を前記摺動面8に設けて前記グリス溜り凹部10を構成したことを特徴とするヒンジ装置に係るものである。
【0015】
また、複数の前記グリス溜り凹部10を前記第二回動体5の回動中心から放射方向に並設したことを特徴とする請求項1記載のヒンジ装置に係るものである。
【0016】
また、第一部材1と第二部材2とを回動自在に連結するヒンジ装置であって、前記第一部材1の回動と共に回動する第一回動体3に設けるカム部4と、前記第二部材2の回動と共に回動する第二回動体5に設けるカム係合部6とを、互いに相対回動自在に設けると共に、付勢体7に付勢されて互いに凹凸係合するように構成して、前記カム部4と前記カム係合部6とが前記付勢体7により付勢係合若しくは付勢係合途中となることで前記第一部材1と前記第二部材2との回動位置が保持されるように構成したヒンジ装置において、前記カム部4が回動に際して摺動する前記第二回動体5の摺動面8にグリス溜り凹部10を複数有し、この複数のグリス溜り凹部10を、前記カム部4の摺動方向に列となる状態で前記摺動面8に並設し、且つ、前記摺動面8に前記カム部4の摺動方向に並設される複数の前記グリス溜り凹部10から成る列を前記第二回動体5の回動中心から放射方向に複数列設けたことを特徴とするヒンジ装置に係るものである。
【0017】
また、前記係合カム部6に対して前記カム部4が係合する際に摺動する前記カム係合部6の下り摺動面8aに前記グリス溜り凹部10を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒンジ装置に係るものである。
【0018】
また、前記グリス溜まり凹部10は、前記カム部4の摺動方向に長さを有し且つ前記第二回動体5の回動中心が円弧中心となる円弧状凹溝を前記下り摺動面8aに設けて構成されていることを特徴とする請求項4記載のヒンジ装置に係るものである。
【0019】
また、凸部で構成される前記カム部4が凹凸係合する凹部で構成される前記カム係合部6の底部にグリス溜り凹状部11を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒンジ装置に係るものである。
【0020】
また、前記カム部4が前記カム係合部6に係合する回動領域では、前記カム係合部6に設けた下り摺動面8aに対して前記カム部4が摺動する際に落ち込み作用が生じ、この落ち込み作用により前記第一部材1と前記第二部材2との回動を付勢する回動付勢機能を具備するとともに、前記第一部材1と前記第二部材2とを回動させて前記カム部4が前記カム係合部6から係脱した回動領域では、前記摺動面8に対して前記カム部4が摺動する際に回動抵抗が生じ、この回動抵抗により前記第一部材1と前記第二部材2とを回動させる手を放した位置で回動停止するフリーストップ状態となるフリーストップ機能を具備することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のヒンジ装置に係るものである。
【0021】
また、上面に操作部12若しくはディスプレイ部13を備えた本体部を前記第一部材1若しくは前記第二部材2とし、伏面にディスプレイ部13若しくは操作部12を備えた重合部を前記第二部材2若しくは前記第一部材1とし、この本体部と重合部との端部同士を前記請求項1〜7のいずれか1項に記載のヒンジ装置によって枢着連結したことを特徴とするヒンジ装置を用いた電子機器に係るものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明は上述のように構成したから、前述した従来例に比し、使用を重ねてもグリス切れが生じず摺動部位の良好な摺動を維持でき、且つ、摺動部位の耐久性を飛躍的に向上し得ることになり、しかも、これらの効果が常に安定した回動抵抗を伴う良好な摺動を実現し得る構造により達成されて非常に実用性に秀れるなど極めて商品価値の高い画期的なヒンジ装置並びにヒンジ装置を用いた電子機器となる。
【0023】
また、請求項2記載の発明においては、より一層安定した回動抵抗を伴う良好な摺動を実現し得る構造となるなど画期的なヒンジ装置となる。
【0024】
また、請求項3記載の発明においては、前述した請求項1記載の発明と同様の作用効果を発揮する画期的なヒンジ装置となる。
【0025】
また、請求項4〜6記載の発明においては、より一層摺動部位の耐久性を向上し得る構造となるなど画期的なヒンジ装置となる。
【0026】
また、請求項7記載の発明においては、前述した安定した回動抵抗を伴う良好な摺動を実現しつつ良好な回動付勢機能及びフリーストップ機能も実現し得ることになるなど画期的なヒンジ装置となる。
【0027】
また、請求項8記載の発明においては、前述のような作用効果を発揮する画期的なヒンジ装置を用いた電子機器を提供できることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1の使用状態説明図である。
【図2】実施例1を示す斜視図である。
【図3】実施例1を示す分解斜視図である。
【図4】実施例1に係る要部を示す説明斜視図である。
【図5】実施例1に係る要部を示す説明斜視図である。
【図6】実施例1に係る要部を示す正面図である。
【図7】図6のA−A断面図である。
【図8】実施例1の概略動作説明図である。
【図9】実施例2に係る要部を示す斜視図である。
【図10】実施例2に係る要部を示す正面図である。
【図11】図10のC−C断面図である。
【図12】実施例3に係る要部を示す斜視図である。
【図13】実施例3に係る要部の正面図である。
【図14】図13のB−B断面図である。
【図15】実施例3に係る要部の拡大正面図である。
【図16】図15のD−D断面図である。
【図17】実施例4に係る要部の斜視図である。
【図18】実施例4に係る要部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0030】
カム部4とカム係合部6とが付勢体7により付勢係合若しくは付勢係合途中となることで第一部材1と第二部材2との回動位置は保持される。
【0031】
即ち、例えば、第一部材1と第二部材2とを重合閉塞状態とした際に、カム部4とカム係合部6とが付勢体7により付勢係合若しくは付勢係合途中となるように設けることで、この第一部材1と第二部材2との重合閉塞状態は保持される。
【0032】
また、例えば、この重合閉塞状態から第一部材1と第二部材2を開放回動して、カム係合部6からカム部4を係脱すると、カム部4は摺動面8を摺動するが、このカム部4が摺動する際、カム部4は付勢体7により付勢されて摺動面8に圧接しており回動抵抗(回動トルク)が発生する。この回動抵抗は、例えば、第一部材1と第二部材2との急激な回動を抑制するいわゆるダンパー機能であり、更には、例えば、この回動抵抗の大きさ次第では任意の回動位置で手を放してもこの回動停止状態を維持し得るいわゆるフリーストップ機能も具備できる。
【0033】
また、第一部材1と第二部材2との回動に伴い摺動面8に対してカム部4が摺動する際、摺動面8に設けたグリス溜り凹部10のグリスにより常に円滑な摺動が達成される。
【0034】
具体的には、この摺動面8とカム部4とから成る摺動部位にはグリスの存在により耐久性が向上し、しかも、このグリスはグリス溜り凹部10に保持されることになり、即ち、摺動面8を摺動するカム部4が達しない部位(掻き取られない部位)にグリスが保持される為、前述した従来例のように摺動部位のグリス切れが生じることはない。
【0035】
従って、使用を重ねてもグリス切れが生じず摺動部位の円滑な摺動を維持でき、且つ、摺動部位の耐久性を飛躍的に向上し得ることになる。
【0036】
ところで、本発明は、この摺動面8にグリス溜り凹部10を設けるにあたり、カム部4の摺動方向に長さを有し且つ第二回動体5の回動中心が円弧中心となる円弧状凹溝を摺動面8に設けてグリス溜り凹部10を構成しており、この構成から、単にグリスを介在した円滑な摺動が維持されるだけでなく、摺動面8に対してカム部4が摺動する際の接触面積の変化を可及的に防止することができて、常に安定した回動抵抗(回動トルク)を伴った良好な摺動が得られることになる。
【0037】
即ち、例えば、摺動面8にグリス溜り凹部10をランダムに設けた場合、回動位置によって摺動面8に対するカム部4の接触面積が異なり、このカム部4の摺動によって生じる回動抵抗が回動位置によって不均一となり、よって、むしろ摺動面8にグリス溜り凹部10を設けることで安定した回動抵抗を伴った良好な摺動が得られず、ひいては、安定しない摺動から摺動部位の耐久性が低下してしまう場合がある。仮に摺動面8にグリス溜り凹部10をランダムに設けることで摺動面8に対するカム部4の接触面積を一定に設定しようとする場合、径の小さいグリス溜り凹部10を無数に設けることになるが、これは回動トルクの設定が難しく、しかも、量産性及びコスト性も悪くなるなど量産化するにおいて現実的ではない。
【0038】
この点、本発明は、前述したようにグリス溜り凹部10が摺動方向に長さを有し且つ第二回動体5の回動中心が円弧中心となる円弧状凹溝を摺動面8に設けて構成されており、即ち、この構成から、例えばカム部4が摺動する際に接触する摺動面8の所定面積の領域内において、どの程度の面積のグリス溜り凹部10を設ければどの程度の回動抵抗が生じるかなどの設定が極めて簡易に行えることになる為、摺動面8に対するカム部4の接触面積を一定に設定でき、このカム部4の摺動によって生じる回動抵抗がどの回動位置でも均一にできる。この点において、本発明は量産性及びコスト性にも秀れる。
【0039】
しかも、本発明は、前述した構成から摺動面8に対するカム部4の摺動に際してグリスが摺動方向に筋のようになり、常に摺動面8とカム部4との間に供給されるグリス量も均一となるから、安定した回動抵抗を伴った良好な摺動が得られることになる。このグリス溜り凹部10を摺動方向に設けることにより安定した回動抵抗を伴った良好な摺動が得られる点については本出願人は繰り返し行った実験により確認している。
【0040】
以上のように、本発明は、摺動面8に対するカム部4の接触面積を確保しつつグリスを均一に介在させることができ、良好な回動抵抗の発生と耐久性を向上することができ、グリス溜り凹部10を設けても摺動部位の本来の機能を害することはない。
【0041】
また、請求項4記載の発明においても、前述した本発明と同様の作用効果を奏することになる。
【実施例1】
【0042】
本発明の具体的な実施例1について図1〜8に基づいて説明する。
【0043】
本実施例は、図1に示すように、ラップトップタイプのノート型パソコンに適用した場合のもので、キー操作部12を備えた本体部を第一部材1とし、ディスプレイ部13(LCD)を備えた重合部を第二部材2とし、この第一部材1と第二部材2とが重合した閉塞状態から第二部材2を所定角度開放状態(使用位置)とすることができる枢着構造に本発明のヒンジ装置Hを適用している。
【0044】
本実施例では、第一部材1(本体部)に連結する第一連結体14(連結金具)に枢着軸15を回り止め状態に設け、第二部材2(重合部)に連結する第二連結体16(連結金具)に前記枢着軸15を回動自在に嵌挿する軸受部16a(孔)を設けている。尚、図面では第一部材1と枢着軸15とを別部材で形成し、この第一部材1と枢着軸15とを回り止め状態に連結する構成とした場合を示しているが、第一部材1と枢着軸15とを一体的に構成しても良い。
【0045】
また、この軸受部16aの図における右側にリング状の第二回動体5を回り止め状態に付設し、この第二回動体5を付設した軸受部16aを摩擦板17を介して前記枢着軸15に回動自在に被嵌している。
【0046】
具体的には、第二回動体5の周縁一箇所に軸受部16a方向へ向けて凸部5aを突設する一方、軸受部16aの周縁一箇所にはこの凸部5aが嵌合する凹部16bを設け、この凸部5aと凹部16bとの嵌合関係により軸受部16aに対して第二回動体5を回り止め状態に付設する構成としている。尚、図面では軸受部16aと第二回動体5とを別部材で形成し、この軸受部16aと第二回動体5とを回り止め状態に連結する構成とした場合を示しているが、軸受部16aと第二回動体5とを一体的に構成しても良い。
【0047】
一方、この軸受部16aを被嵌した枢着軸15には、第二回動体5の外側(図面右側)からリング状の第一回動体3を対向状態に被嵌し、この第一回動体3は枢着軸15に対して回り止め状態であって、且つこの枢着軸15に沿って該枢着軸15の長さ方向にスライド可能に設けている。
【0048】
具体的には、枢着軸15の所定範囲の断面形状を長円形状に形成する一方、第一回動体3の中心孔の形状も枢着軸15断面形状に対応した長円形状に形成することで、枢着軸15に第一回動体3を被嵌すると、第一回動体3は枢着軸15に対し回り止め状態となり、且つこの枢着軸15に沿って枢着軸15の長さ方向にスライド可能となる構成としている。
【0049】
また、この第一回動体3の第二回動体5との対向側面には、カム部4としての凸部4を対向二箇所に突設する一方、第二回動体5の第一回動体3との対向側面には、カム部4が係合するカム係合部6としての凹部6を対向二箇所に凹設している。
【0050】
また、本実施例は、一対のカム部4(凸部)を第一回動体3の端面にして第二回動体5との対向側面における同一円周上でない位置に設けると共に、一対のカム係合部6(凹部)を第二回動体5の端面にして第一回動体3との対向側面における同一円周上でない位置に設けている。
【0051】
従って、このカム係合部6にカム部4が係合する回動ロック状態(重合閉塞状態)から少なくとも第一連結体3が第二連結体5に対し180度相対回動しても再び係合して回動ロック状態とならない構成である。
【0052】
また、この枢着軸15への軸受部16aの取付構造について説明すると、枢着軸15の先端にプレート18を被嵌して枢着軸15をカシメ止めし、このプレート18と前記第一回動体3との間の枢着軸15に付勢体7(係合付勢機構)として弾性体7a(図面ではリング状の皿バネ7aを採用している。)を被嵌状態に配設し、この皿バネ7aがカム係合部6に対してカム部4が係脱する(第二回動体5に対して第一回動体3が離反する)に際して離反する際係合方向に付勢するように構成している。尚、弾性体7aは枢着軸15に被嵌するコイルバネでも良い。
【0053】
また、本実施例では、この付勢体7により前記カム部4とカム係合部6との係合は係脱せず、回動ロック状態が保持されるように構成し、カム部4(第一回動体3)を付勢体7に抗して離反方向にスライド移動させつつ軸受部16aと共にカム係合部6(第二回動体5)を回動させることで前記カム係合部6に対しカム部4を係脱させ、前記第二部材2を前記第一部材1に対して相対回動させるように構成している。
【0054】
本実施例では、前記第一部材1と前記第二部材2との双方が重合した閉塞状態のとき、前記カム部4とカム係合部6とが係合した回動ロック状態となり、この閉塞状態が前記付勢体7によって保持されるように構成している。
【0055】
この第一部材1と第二部材2とが完全に閉塞状態となる手前の位置から閉塞状態となるまでの領域、即ち、カム部4がカム係合部6に係合する回動領域では、付勢体7の付勢を伴ってカム係合部6に設けた下り摺動面8aに対してカム部4が摺動する際に落ち込み作用が生じ、この落ち込み作用により第一部材1と第二部材2との回動を付勢する回動付勢機能を具備している。
【0056】
また、本実施例では、前記第二回動体5に設けた一対のカム係合部6以外の一対の対向頂部面8を一対のカム部4が回動に際して前記付勢体7により圧接した状態で摺動する摺動面8とし、カム部4がカム係合部6に係合する前記回動ロック状態以外の回動領域ではカム部4が付勢体7によってこの摺動面8夫々に圧接することによる回動抵抗が付与されるように構成している。
【0057】
即ち、この一対のカム部4が付勢体7によって一対の摺動面8に圧接する回動抵抗によって、回動ロック状態(第一部材1と第二部材2との重合閉塞状態)以外の回動領域では第一部材1に対し第二部材2がどのような角度でも停止できるフリーストップとなるように構成しているもので、本実施例では、このフリーストップを実現するに十分な回動抵抗を生じるように付勢体7の付勢力を設定構成している。
【0058】
次に、作動を説明すると、第一部材1と第二部材2との重合閉塞状態では、付勢体7によりカム部4がカム係合部6に係合しているために、強い回動抵抗を生じ、この閉塞状態が保持される。この際、カム部6は下り摺動面8aに位置して停止状態となる。
【0059】
一方、この閉塞保持状態から、第一部材1に対し第二部材2を起こすと、枢着軸15に対して軸受部16aが回動するが、このときカム係合部6(第二回動体5)に対してカム部4(第一回動体3)が軸受部16aと共に回動しつつカム係合部6が付勢体7に抗して離反方向に移動しながら前記係合が係脱することになる。
【0060】
そして、この第二部材2が開放した(起動)した状態では、付勢体7によりカム4が摺動面8に圧接しているために回動抵抗を生じてフリーストップとなる。
【0061】
また、逆に、第二部材2を第一部材1に近付けてある程度まで重合閉塞状態に近付けると、カム部4とカム係合部6とのカム係合力が働いて閉塞方向に回動付勢力が生じ、後は自動的に閉塞状態にまで伏動回動する。
【0062】
つまり、前記カム係合部6の凹部内を前記カム部4が係合する係合部分とし、この凹部間の頂部面8をカム部4が回動に際して前記付勢体7により圧接した状態で摺動する摺動面8としたため、付勢体7によりこのカム部4がこの摺動面8から凹部内へ落ち込もうとする前記カム係合力によって第二部材2の閉塞方向への回動付勢力が生じることになる。
【0063】
また、本実施例では、前記したようにカム部4を第一回動体3の対向二箇所に設け、カム係合部6を第二回動体5の対向二箇所に設け、このカム部4及びカム係合部6が夫々第一回動体3及び第二回動体5における同一周面上には設けられていない構造上、このカム係合部6にカム部4が係合する前記回動ロック状態(重合閉塞状態)から少なくとも第一連結体3が第二連結体5に対し180度相対回動しても再び係合して回動ロック状態とならない構成であり、これにより第二部材2のディスプレイ部13を閉塞状態から180度開いた状態で使用することも可能である。
【0064】
してみると、例えば、車両内や電車内などデスクやテーブルのないところでは、シートに座り、膝(太もも)の上にノート型パソコンを載せて使用することがあるが、この場合にはディスプレイ部13が操作部12に対して立った状態にあると、ディスプレイ部13が非常に見づらく使いづらい。この点、本実施例によれば、上記したように、ディスプレイ部13を閉塞状態から180度開いた状態で使用することも可能であるため、このような使用状況においても秀れた実用性を発揮する構成となる。
【0065】
また、本実施例は、一対のカム部4が回動に際して摺動する第二回動体5の対向する摺動面8夫々にグリス溜り凹部10を有し、カム部4の摺動方向に長さを有し且つ第二回動体5の回動中心が円弧中心となる円弧状凹溝を摺動面8に設けてグリス溜り凹部10を構成している。
【0066】
具体的には、図4,5に図示したように摺動面8に、カム部4の摺動方向に長さを有する一対のグリス溜り凹部10を前記第二回動体5の回動中心から放射方向に所定間隔を介して2列となるよう並設している。
【0067】
尚、グリス溜り凹部10の数は二本に限定されるものではない。
【0068】
従って、第一部材1と第二部材2との回動に伴い摺動面8に対してカム部4が摺動する際、摺動面8に設けたグリス溜り凹部10のグリスにより常に円滑な摺動が達成される。
【0069】
具体的には、この摺動面8とカム部4とから成る摺動部位にはグリスの存在により耐久性が向上し、しかも、このグリスはグリス溜り凹部10に保持されることになり、即ち、摺動面8を摺動するカム部4が達しない部位(掻き取られない部位)にグリスが保持される為、前述した従来例のように摺動部位のグリス切れが生じることはない。
【0070】
従って、使用を重ねてもグリス切れが生じず摺動部位の円滑な摺動を維持でき、且つ、摺動部位の耐久性を飛躍的に向上し得ることになる。
【0071】
また、本実施例は、この摺動面8にグリス溜り凹部10を設けるにあたり、グリス溜り凹部10をカム部4の摺動方向に長さを有する状態で摺動面8に設けており、この構成から、単にグリスを介在した円滑な摺動が維持されるだけでなく、摺動面8に対してカム部4が摺動する際の接触面積の変化を可及的に防止することができて、常に安定した回動抵抗(回動トルク)を伴った良好な摺動が得られることになる。
【0072】
以上のように、本実施例は、摺動面8に対するカム部4の接触面積を確保しつつグリスを均一に当てることができ、良好な回動抵抗の発生と耐久性を向上することができ、グリス溜り凹部10を設けても摺動部位の本来の機能を害することはない。
【実施例2】
【0073】
本発明の具体的な実施例2について図9〜11に基づいて説明する。
【0074】
本実施例は、一対のカム部4が回動に際して摺動する第二回動体5の摺動面8にグリス溜り凹部10を複数(3個以上)有し、この複数のグリス溜り凹部10を、カム部4の摺動方向に列となる状態で摺動面8に並設し、且つ、摺動面8に前記カム部4の摺動方向に並設される複数のグリス溜り凹部10から成る列を第二回動体5の回動中心から放射方向に複数列設けた場合である。
【0075】
具体的には、摺動面8に、複数の円形状のグリス溜り凹部10をカム部4の摺動方向に等間隔を介して列となり且つ、第二回動体5の回動中心から放射方向に等間隔を介して複数列(3列)となる状態で並設したものである。つまり、前述した実施例1の円弧状凹溝を断続的に設けた状態であり同様の作用を発揮する。
【0076】
従って、前述した実施例1と同様、摺動面8に対するカム部4の接触面積を確保しつつグリスを均一に当てることができ、良好な回動抵抗の発生と耐久性を向上することができ、グリス溜り凹部10を設けても摺動部位の本来の機能を害することはない。
【0077】
その余は実施例1と同様である。
【実施例3】
【0078】
本発明の具体的な実施例3について図12〜16に基づいて説明する。
【0079】
本実施例は、前述した実施例2と同様、一対のカム部4が回動に際して摺動する第二回動体5の摺動面8にグリス溜り凹部10を複数有し、この複数のグリス溜り凹部10を、カム部4の摺動方向に列となる状態で摺動面8に並設し、且つ、摺動面8に前記カム部4の摺動方向に並設される複数のグリス溜り凹部10から成る列を第二回動体5の回動中心から放射方向に複数列設け、更に、係合カム部6に対してカム部4が係合する際に摺動するカム係合部6の下り摺動面8aにグリス溜り凹部10を設けた場合である。
【0080】
この下り摺動面8aに設けられるグリス溜まり凹部10は、カム部4の摺動方向に長さを有し且つ第二回動体5の回動中心が円弧中心となる円弧状凹溝を設けて構成されている。
【0081】
また、本実施例は、凸部で構成されるカム部4が凹凸係合する凹部で構成されるカム係合部6の底部にグリス溜り凹状部11を設けている。
【0082】
従って、前述した実施例1及び実施例2と同様、摺動面8に対するカム部4の接触面積を確保しつつグリスを均一に当てることができ、良好な回動抵抗の発生と耐久性を向上することができ、グリス溜り凹部10を設けても摺動部位の本来の機能を害することはない。
【0083】
また、本実施例は、グリス溜り凹部10を強い負荷のかかる部位である下り摺動面8aに設けることで、より一層耐久性を向上することができ、しかも、凹部で構成されるカム係合部6の底部にグリス溜り凹状部11を設けることで大量のグリスを保持することができる。
【0084】
その余は実施例1と同様である。
【実施例4】
【0085】
本発明の具体的な実施例4について図17,18に基づいて説明する。
【0086】
本実施例は、係合カム部6に対してカム部4が係合する際に摺動するカム係合部6の下り摺動面8aにグリス溜り凹部10を設けた場合である。
【0087】
この下り摺動面8aに設けられるグリス溜まり凹部10は、カム部4の摺動方向に長さを有し且つ第二回動体5の回動中心が円弧中心となる円弧状凹溝を設けて構成されている。
【0088】
また、本実施例は、凸部で構成されるカム部4が凹凸係合する凹部で構成されるカム係合部6の底部にグリス溜り凹状部11を設けている。
【0089】
従って、グリス溜り凹部10を強い負荷のかかる部位である下り摺動面8aに設けることで、より一層耐久性を向上することができ、しかも、凹部で構成されるカム係合部6の底部にグリス溜り凹状部11を設けることで大量のグリスを保持することができる。
【0090】
その余は実施例1と同様である。
【0091】
尚、本発明は、実施例1,2,3,4に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0092】
1 第一部材
2 第二部材
3 第一回動体
4 カム部
5 第二回動体
6 カム係合部
7 付勢体
8 摺動面
8a 下り摺動面
10 グリス溜り凹部
11 グリス溜り凹状部
12 操作部
13 ディスプレイ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材と第二部材とを回動自在に連結するヒンジ装置であって、前記第一部材の回動と共に回動する第一回動体に設けるカム部と、前記第二部材の回動と共に回動する第二回動体に設けるカム係合部とを、互いに相対回動自在に設けると共に、付勢体に付勢されて互いに凹凸係合するように構成して、前記カム部と前記カム係合部とが前記付勢体により付勢係合若しくは付勢係合途中となることで前記第一部材と前記第二部材との回動位置が保持されるように構成したヒンジ装置において、前記カム部が回動に際して摺動する前記第二回動体の摺動面にグリス溜り凹部を有し、前記カム部の摺動方向に長さを有し且つ前記第二回動体の回動中心が円弧中心となる円弧状凹溝を前記摺動面に設けて前記グリス溜り凹部を構成したことを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
複数の前記グリス溜り凹部を前記第二回動体の回動中心から放射方向に並設したことを特徴とする請求項1記載のヒンジ装置。
【請求項3】
第一部材と第二部材とを回動自在に連結するヒンジ装置であって、前記第一部材の回動と共に回動する第一回動体に設けるカム部と、前記第二部材の回動と共に回動する第二回動体に設けるカム係合部とを、互いに相対回動自在に設けると共に、付勢体に付勢されて互いに凹凸係合するように構成して、前記カム部と前記カム係合部とが前記付勢体により付勢係合若しくは付勢係合途中となることで前記第一部材と前記第二部材との回動位置が保持されるように構成したヒンジ装置において、前記カム部が回動に際して摺動する前記第二回動体の摺動面にグリス溜り凹部を複数有し、この複数のグリス溜り凹部を、前記カム部の摺動方向に列となる状態で前記摺動面に並設し、且つ、前記摺動面に前記カム部の摺動方向に並設される複数の前記グリス溜り凹部から成る列を前記第二回動体の回動中心から放射方向に複数列設けたことを特徴とするヒンジ装置。
【請求項4】
前記係合カム部に対して前記カム部が係合する際に摺動する前記カム係合部の下り摺動面に前記グリス溜り凹部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒンジ装置。
【請求項5】
前記グリス溜まり凹部は、前記カム部の摺動方向に長さを有し且つ前記第二回動体の回動中心が円弧中心となる円弧状凹溝を前記下り摺動面に設けて構成されていることを特徴とする請求項4記載のヒンジ装置。
【請求項6】
凸部で構成される前記カム部が凹凸係合する凹部で構成される前記カム係合部の底部にグリス溜り凹状部を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒンジ装置。
【請求項7】
前記カム部が前記カム係合部に係合する回動領域では、前記カム係合部に設けた下り摺動面に対して前記カム部が摺動する際に落ち込み作用が生じ、この落ち込み作用により前記第一部材と前記第二部材との回動を付勢する回動付勢機能を具備するとともに、前記第一部材と前記第二部材とを回動させて前記カム部が前記カム係合部から係脱した回動領域では、前記摺動面に対して前記カム部が摺動する際に回動抵抗が生じ、この回動抵抗により前記第一部材と前記第二部材とを回動させる手を放した位置で回動停止するフリーストップ状態となるフリーストップ機能を具備することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のヒンジ装置。
【請求項8】
上面に操作部若しくはディスプレイ部を備えた本体部を前記第一部材若しくは前記第二部材とし、伏面にディスプレイ部若しくは操作部を備えた重合部を前記第二部材若しくは前記第一部材とし、この本体部と重合部との端部同士を前記請求項1〜7のいずれか1項に記載のヒンジ装置によって枢着連結したことを特徴とするヒンジ装置を用いた電子機器。
【請求項1】
第一部材と第二部材とを回動自在に連結するヒンジ装置であって、前記第一部材の回動と共に回動する第一回動体に設けるカム部と、前記第二部材の回動と共に回動する第二回動体に設けるカム係合部とを、互いに相対回動自在に設けると共に、付勢体に付勢されて互いに凹凸係合するように構成して、前記カム部と前記カム係合部とが前記付勢体により付勢係合若しくは付勢係合途中となることで前記第一部材と前記第二部材との回動位置が保持されるように構成したヒンジ装置において、前記カム部が回動に際して摺動する前記第二回動体の摺動面にグリス溜り凹部を有し、前記カム部の摺動方向に長さを有し且つ前記第二回動体の回動中心が円弧中心となる円弧状凹溝を前記摺動面に設けて前記グリス溜り凹部を構成したことを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
複数の前記グリス溜り凹部を前記第二回動体の回動中心から放射方向に並設したことを特徴とする請求項1記載のヒンジ装置。
【請求項3】
第一部材と第二部材とを回動自在に連結するヒンジ装置であって、前記第一部材の回動と共に回動する第一回動体に設けるカム部と、前記第二部材の回動と共に回動する第二回動体に設けるカム係合部とを、互いに相対回動自在に設けると共に、付勢体に付勢されて互いに凹凸係合するように構成して、前記カム部と前記カム係合部とが前記付勢体により付勢係合若しくは付勢係合途中となることで前記第一部材と前記第二部材との回動位置が保持されるように構成したヒンジ装置において、前記カム部が回動に際して摺動する前記第二回動体の摺動面にグリス溜り凹部を複数有し、この複数のグリス溜り凹部を、前記カム部の摺動方向に列となる状態で前記摺動面に並設し、且つ、前記摺動面に前記カム部の摺動方向に並設される複数の前記グリス溜り凹部から成る列を前記第二回動体の回動中心から放射方向に複数列設けたことを特徴とするヒンジ装置。
【請求項4】
前記係合カム部に対して前記カム部が係合する際に摺動する前記カム係合部の下り摺動面に前記グリス溜り凹部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒンジ装置。
【請求項5】
前記グリス溜まり凹部は、前記カム部の摺動方向に長さを有し且つ前記第二回動体の回動中心が円弧中心となる円弧状凹溝を前記下り摺動面に設けて構成されていることを特徴とする請求項4記載のヒンジ装置。
【請求項6】
凸部で構成される前記カム部が凹凸係合する凹部で構成される前記カム係合部の底部にグリス溜り凹状部を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒンジ装置。
【請求項7】
前記カム部が前記カム係合部に係合する回動領域では、前記カム係合部に設けた下り摺動面に対して前記カム部が摺動する際に落ち込み作用が生じ、この落ち込み作用により前記第一部材と前記第二部材との回動を付勢する回動付勢機能を具備するとともに、前記第一部材と前記第二部材とを回動させて前記カム部が前記カム係合部から係脱した回動領域では、前記摺動面に対して前記カム部が摺動する際に回動抵抗が生じ、この回動抵抗により前記第一部材と前記第二部材とを回動させる手を放した位置で回動停止するフリーストップ状態となるフリーストップ機能を具備することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のヒンジ装置。
【請求項8】
上面に操作部若しくはディスプレイ部を備えた本体部を前記第一部材若しくは前記第二部材とし、伏面にディスプレイ部若しくは操作部を備えた重合部を前記第二部材若しくは前記第一部材とし、この本体部と重合部との端部同士を前記請求項1〜7のいずれか1項に記載のヒンジ装置によって枢着連結したことを特徴とするヒンジ装置を用いた電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−214328(P2011−214328A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84247(P2010−84247)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(396019022)株式会社ストロベリーコーポレーション (88)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(396019022)株式会社ストロベリーコーポレーション (88)
【Fターム(参考)】
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