説明

ヒータ及びこのヒータを搭載する像加熱装置

【課題】 発熱分布が均一で、装置が対応する最大サイズよりも小さなサイズをプリントする場合の非通紙部昇温を抑えられるヒータ、及びエンドレスベルトを用いた像加熱装置を提供する。
【解決手段】 ヒータ基板上に、長手方向において導電体を流れる電流の向きと発熱抵抗体を流れる電流の向きが同じである第1の発熱ブロックと、導電体を流れる電流の向きと発熱抵抗体を流れる電流の向きが逆である第2の発熱ブロックと、を共に有する第1列と第2列を短手方向の異なる位置に設け、第1列中の一つの第1の発熱ブロック全体と第2列中の一つの第2の発熱ブロック全体が長手方向において重なり、第1列中の一つの第2の発熱ブロック全体と第2列中の一つの第1の発熱ブロック全体が長手方向において重なるように第1列と第2列を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、電子写真プリンタなどの画像形成装置に搭載される加熱定着装置に利用すれば好適なヒータ、及びこのヒータを搭載する像加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタに搭載する定着装置として、エンドレスベルトと、エンドレスベルトの内面に接触するセラミックヒータと、エンドレスベルトを介してセラミックヒータと定着ニップ部を形成する加圧ローラと、を有する装置がある。この定着装置を搭載する画像形成装置で小サイズ紙を連続プリントすると、定着ニップ部長手方向において紙が通過しない領域の温度が徐々に上昇するという現象(非通紙部昇温)が発生する。非通紙部の温度が高くなり過ぎると、装置内の各パーツへダメージを与えたり、非通紙部昇温が生じている状態で大サイズ紙にプリントすると、小サイズ紙の非通紙部に相当する領域でトナーが高温オフセットすることもある。
【0003】
この非通紙部昇温を抑制する手法の一つとして、セラミック基板上の発熱抵抗体を正の抵抗温度特性を有する材質で形成し、発熱抵抗体に対してヒータの短手方向(記録紙の搬送方向)に電流が流れるように二本の導電体を基板の短手方向の両端に配置することが考えられている。非通紙部が昇温すると非通紙部の発熱抵抗体の抵抗値が昇温し、非通紙部の発熱抵抗体に流れる電流が抑制されることにより非通紙部の発熱を抑制するという発想である。正の抵抗温度特性は、温度が上がると抵抗が上がる特性であり、以後PTC(Positive Temperature Coefficient)と称する。
【0004】
しかしながら、PTCの材質は体積抵抗が非常に低く、一本のヒータの発熱抵抗体の総抵抗を、商用電源で使用できる範囲内に設定するのは非常に難しい。そこで、セラミック基板上に形成するPTCの発熱抵抗体をヒータの長手方向で複数の発熱ブロックに分割し、各発熱ブロックではヒータの短手方向(記録紙の搬送方向)に電流が流れるように二本の導電体を基板の短手方向の両端に配置する。更に複数の発熱ブロックを電気的に直列に繋ぐ構成が特許文献1に開示されている。また、この文献には、複数本の発熱抵抗体を二本の導電体の間に電気的に並列に接続して発熱ブロックを構成することも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−209493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、導電体の抵抗値はゼロではなく、導電体で生じる発熱の影響を考慮しないとヒータ長手方向における発熱分布ムラを抑えることができないことが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するための本発明は、基板と、前記基板上に基板長手方向に沿って設けられている第1導電体と、前記基板上に前記第1導電体とは基板短手方向で異なる位置に前記長手方向に沿って設けられている第2導電体と、正の抵抗温度特性を有しており前記第1導電体と前記第2導電体間に電気的に並列接続されている複数本の発熱抵抗体と、を有し、電気的に並列接続された複数本の前記発熱抵抗体を有する発熱ブロックが前記長手方向に沿って複数個設けられており、複数個の前記発熱ブロックが電気的に直列に接続されているヒータにおいて、前記複数の発熱抵抗体は前記長手方向及び前記短手方向に対して斜めに傾いており、前記長手方向において前記第1及び第2導電体を流れる電流の向きと前記発熱抵抗体を流れる電流の向きが同じである第1の発熱ブロックと、前記長手方向において前記第1及び第2導電体を流れる電流の向きと前記発熱抵抗体を流れる電流の向きが逆である第2の発熱ブロックと、が前記長手方向で隣り合わせに直列接続されており、前記第1の発熱ブロックと前記第2の発熱ブロックを共に有する第1列と第2列が前記短手方向の異なる位置に設けられており、第1列中の一つの前記第1の発熱ブロック全体と第2列中の一つの前記第2の発熱ブロック全体が前記長手方向において重なり、前記第1列中の一つの前記第2の発熱ブロック全体と前記第2列中の一つの前記第1の発熱ブロック全体が前記長手方向において重なるように前記第1列と前記第2列が配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヒータ長手方向における発熱分布ムラを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の像加熱装置の断面図。
【図2】実施例1のヒータ構成図。
【図3】実施例1のヒータの発熱分布説明図。
【図4】ヒータのサイズと用紙サイズの関係を示した図。
【図5】実施例2のヒータ構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は像加熱装置の一例としての定着装置の断面図である。定着装置は、筒状のフィルム(エンドレスベルト)1と、フィルム1の内面に接触するヒータ10と、フィルム1を介してヒータ10と共に定着ニップ部Nを形成する加圧ローラ(ニップ部形成部材)2と、を有する。フィルムのベース層の材質は、ポリイミド等の耐熱樹脂、またはステンレス等の金属である。加圧ローラ2は、鉄やアルミニウム等の材質の芯金2aと、シリコーンゴム等の材質の弾性層2bを有する。ヒータ10は耐熱樹脂製の保持部材3に保持されている。保持部材3はフィルム1の回転を案内するガイド機能も有している。加圧ローラ2は不図示のモータから動力を受けて矢印方向に回転する。加圧ローラ2が回転することによってフィルム1が従動して回転する。
【0011】
ヒータ10は、セラミック製のヒータ基板13と、基板13上に形成された発熱ラインA(第1列)及び発熱ラインB(第2列)と、発熱ラインA及びBを覆う絶縁性(本実施例ではガラス)の表面保護層14を有する。ヒータ基板13の裏面側であって、プリンタで設定されている利用可能な最小サイズ紙(本例では封筒DL:110mm幅)の通紙領域にはサーミスタ等の温度検知素子4が当接している。温度検知素子4の検知温度に応じて商用交流電源から発熱ラインへ供給する電力が制御される。未定着トナー画像を担持する記録材(用紙)Pは、定着ニップ部Nで挟持搬送されつつ加熱されて定着処理される。ヒータ基板13の裏面側には、ヒータが異常昇温した時に作動して発熱ラインへの給電ラインを遮断するサーモスイッチ等の安全素子5も当接している。安全素子5も温度検知素子4と同様に最小サイズ紙の通紙領域に当接している。番号6は保持部材3に不図示のバネの圧力を加えるための金属製のステーである。
【0012】
本例の定着装置は、LETTERサイズ(約216mm×279mm)に対応するA4サイズ(210mm×297mm)対応プリンタに搭載するものである。つまり、基本的にA4サイズ紙を縦送りする(長辺が搬送方向と平行になるように搬送する)プリンタに搭載する定着装置であるが、A4サイズよりも若干幅が大きなLETTERサイズ紙も縦送りできるように設計してある。したがって、装置が対応している定型の記録材サイズ(カタログ上の対応用紙サイズ)のうち最も大きな(幅が大きな)サイズはLETTERサイズである。
【実施例1】
【0013】
図2はヒータの構造を説明するための図面である。図2(a)がヒータの平面図、図2(b)が発熱ラインA中の1つの発熱ブロックA7を示した拡大図、図2(c)が発熱ラインA中の1つの発熱ブロックA8を示した拡大図である。なお、発熱ラインA中の発熱抵抗体、及び発熱ラインB中の発熱抵抗体は、いずれもPTCである。
【0014】
発熱ラインA(第1列)は、17個の発熱ブロックA1〜A17を有し、発熱ブロックA1〜A17は直列に接続されている。発熱ラインB(第2列)も、17個の発熱ブロックB1〜B17を有し、発熱ブロックB1〜B17も直列に接続されている。また、発熱ラインAと発熱ラインBも導電パターンABを介して電気的に直列に接続されている。発熱ラインA及びBには、給電用コネクタを繋ぐ電極AE及びBEから電力が供給される。発熱ラインAは、基板長手方向に沿って設けられている導電パターンAa(発熱ラインAの第1導電体)と、導電パターンAaとは基板の短手方向で異なる位置に基板長手方向に沿って設けられている導電パターンAb(発熱ラインAの第2導電体)を有する。導電パターンAaは基板長手方向で9本(Aa−1〜Aa−9)に分割されている。導電パターンAbは基板長手方向で9本(Aa−1〜Aa−9)に分割されている。図2(b)に示すように、導電パターンAaの一部である導電パターンAa−4と、導電パターンAbの一部である導電パターンAb−4の間には複数本(本例では4本)の発熱抵抗体(A7−1〜A7−4)が電気的に並列に接続されており、発熱ブロックA7を形成している。また、導電パターンAb−4と導電パターンAa−5の間にも4本の発熱抵抗体(A8−1〜A8−4)が電気的に並列に接続されており、発熱ブロックA8を形成している。発熱ラインAでは、発熱ブロックA7若しくは、A8と同様の構成の発熱ブロックが合計17個(A1〜A17)設けられている。
【0015】
発熱ラインBも、基板長手方向に沿って設けられている導電パターンBa(発熱ラインBの第1導電体)と、導電パターンBaとは基板の短手方向で異なる位置に基板長手方向に沿って設けられている導電パターンBb(発熱ラインBの第2導電体)を有する。発熱ラインB中の発熱ブロックの構成も発熱ラインAと同様である。
【0016】
また、図2(b)及び(c)のように、一つの発熱ブロック中では、複数の発熱抵抗体夫々の最短電流経路が、基板長手方向で隣り合う発熱抵抗体の最短電流経路に対して長手方向においてオーバーラップする位置関係となるように、複数の発熱抵抗体は基板長手方向及び短手方向(記録材搬送方向)に対して斜めに傾けて配置されている(隣り合う発熱抵抗体同士が長手方向において一部が重なり合うように配置されている)。この位置関係は、一つの発熱ブロック中の最端の発熱抵抗体(例えば発熱ブロックA7中の最も右側にある発熱抵抗体A7−4)と、隣の発熱ブロックの最端の発熱抵抗体(例えば発熱ブロックA8中の最も左側にある発熱抵抗体A8−1)との間においても同様である。本例の発熱抵抗体は形状が長方形であるため、一本の発熱抵抗体全域が最短電流経路となっている。本例では、図2(b)及び(c)に示すように、一本の発熱抵抗体の長方形の短辺の中心部が、隣の発熱抵抗体の長方形の短辺の中心部と基板長手方向で重なりあうように、夫々の発熱抵抗体が並べてある。このようなレイアウトにすることで、ヒータの長手方向において発熱抵抗体が発熱しない領域が生じないようにでき、発熱分布ムラを抑えることが出来る。
【0017】
ところで、上述したように、導電体の抵抗値はゼロではなく、導電体の抵抗成分の影響を受ける。一つの発熱ブロック中、中央部の発熱抵抗体に印加される電圧は両端部の発熱抵抗体に印加される電圧に比べて小さくなることが判った。発熱抵抗体の発熱量は印加電圧の二乗に比例するため、一つの発熱ブロックの中央部と両端部で発熱量が異なってしまう。具体的には、一つの発熱ブロック中においてブロックの両端の発熱量が最も大きく、中央部の発熱量が小さくなる。そこで、本実施例では、一つの発熱ブロックに含まれる複数本の発熱抵抗体は、長手方向の中央に配置されている発熱抵抗体よりも端部に配置されている発熱抵抗体のほうが抵抗値が高くなるように、各発熱抵抗体の抵抗値を設定している(図2参照)。本実施例のヒータは、ヒータ10の発熱ブロックA7の発熱抵抗体(A7−1〜A7−4)及び、発熱ブロックA8の発熱抵抗体(A8−1〜A8−4)の抵抗値は、中央部にある発熱抵抗体(A7−2、A7−3、A8−2、A8−3)ほど抵抗値が低く、端部にある発熱抵抗体(A7−1、A7−4、A8−1、A8−4)ほど抵抗値が高く設定してあり、一つの発熱ブロック内の発熱分布の均一性を改善している。
【0018】
また、導電体の抵抗値はゼロではないので導電体で生じる発熱の影響を受ける。上述のように、ヒータの長手方向において発熱抵抗体が発熱しない領域が生じないように、複数の発熱抵抗体を基板長手方向及び短手方向に対して斜めに傾けて配置すると、図2(b)に示す発熱ブロックと図2(c)に示す発熱ブロックで発熱量が異なってしまうことが判った。この現象を図3を用いて説明する。
【0019】
図3(a)は発熱ラインA中の発熱ブロックA7及びA8の等価回路図である。図3(b)は発熱ラインAの発熱分布図である。図3(c)は発熱ラインAと発熱ラインBを合計した発熱分布図である。図3(a)のように、複数の発熱抵抗体を基板長手方向及び短手方向に対して斜めに傾けて配置すると、長手方向において第1及び第2導電体を流れる電流の向きと発熱抵抗体を流れる電流の向きが同じである第1の発熱ブロック(発熱ブロックA7)と、長手方向において第1及び第2導電体を流れる電流の向きと発熱抵抗体を流れる電流の向きが逆である第2の発熱ブロック(発熱ブロックA8)が形成される。そして、第1の発熱ブロック(発熱ブロックA7)と第2の発熱ブロック(発熱ブロックA8)が長手方向で隣り合わせに直列接続される構造になる。
【0020】
図3(a)の発熱ブロックA7及びA8の等価回路図に示すように、発熱抵抗体(A7−1〜A7−4)及び、発熱抵抗体(A8−1〜A8−4)を並列接続する導電パターンの抵抗値をrとした場合、発熱ブロックA7の発熱抵抗体A7−1が存在する領域WA7−1の導電パターンの発熱量は、導電パターンAa−4の抵抗値と導電パターンAa−4に流れる電流値の2乗の積(=r×(I2+I3+I4))となる。発熱ブロックA8の発熱抵抗体A8−1が存在する領域WA8−1の導電パターンの発熱量は、導電パターンAa−5の抵抗値と導電パターンAa−5に流れる電流値の2乗の積(=r×I1)と、導電パターンAb−4の抵抗値と導電パターンAb−4に流れる電流値の2乗の積(=r×(I1+I2+I3+I4))の合計値となる。発熱ブロックA8では電流がヒータ長手方向の一方に流れる場合、逆方向に電流が流れる戻りの経路を持つため、その分発熱ブロックA7に比べて、導電パターンによる発熱量が大きくなることが分かる。同様に、発熱ブロックA8の発熱抵抗体A8−2〜A8−4が存在する領域の導電パターンの発熱量も、発熱ブロックA7の発熱抵抗体A7−2〜A7−4が存在する領域の導電パターンの発熱量に比べて大きくなる。発熱ラインAでは、発熱ブロックA2、A4、A6、A8、A10、A12、A14、A16の導電パターンの発熱量は、発熱ブロックA1、A3、A5、A7、A9、A11、A13、A15、A17の導電パターンの発熱量に比べて大きくなる。発熱ラインBでは、発熱ブロックB1、B3、B5、B7、B9、B11、B13、B15、B17の導電パターンの発熱量は、発熱ブロックB2、B4、B6、B8、B10、B12、B14、B16の導電パターンの発熱量に比べて大きくなる。ヒータ10では、導電パターンの発熱量が小さくなる発熱ブロック(第1の発熱ブロック)と、導電パターンの発熱量が大きくなる発熱ブロック(第2の発熱ブロック)が交互に接続されている。なお、図3(b)及び図3(c)のシミュレーションでは、ヒータ10の発熱抵抗体の総抵抗値を約11.5Ω、導電パターンのシート抵抗値を0.005Ω/□、発熱抵抗体のシート抵抗値を0.25Ω/□として計算している。発熱ブロック中の隣り合う発熱パターンの両端部が、線長3.24mm、線幅0.8mmの導電パターンで接続されていると条件を簡単化すると、発熱パターンを接続する導電パターンの抵抗値rは0.02Ωとなる。
【0021】
図3(b)では、導電パターンの発熱量を含めた、発熱ラインAの発熱分布図を示している。上述したように、発熱ラインAでは、導電パターンの発熱量が小さくなる発熱ブロックと、導電パターンの発熱量が大きくなる発熱ブロックが交互に接続されており、ヒータ長手方向に発熱ムラが生じることがわかる。
【0022】
そこで本実施例のヒータは、図2(a)に示すように、第1の発熱ブロックと第2の発熱ブロックを共に有する第1列と第2列が短手方向の異なる位置に設けられている。そして、第1列中の一つの第1の発熱ブロック全体と第2列中の一つの第2の発熱ブロック全体が長手方向において実質的に重なり、第1列中の一つの第2の発熱ブロック全体と第2列中の一つの第1の発熱ブロック全体が長手方向において実質的に重なるように第1列と第2列が配置されている。これにより、発熱ラインA(第1列)中の導電パターンの発熱量が大きくなる発熱ブロック(第2の発熱ブロック)と、発熱ラインB(第2列)中の導電パターンの発熱量が小さくなる発熱ブロック(第1の発熱ブロック)が、基板長手方向において重なり、また、発熱ラインA(第1列)中の導電パターンの発熱量が小さくなる発熱ブロック(第1の発熱ブロック)と、発熱ラインB(第2列)中の導電パターンの発熱量が大きくなる発熱ブロック(第2の発熱ブロック)が、基板長手方向において重なる。したがって、ヒータ長手方向における、導電パターンによる発熱分布ムラを抑えることができる。なお、必ずしも第1の発熱ブロックと第2の発熱ブロックが1mmのずれもなく完璧に重なっている必要はなく、発熱分布ムラが抑えられるように一つの第1の発熱ブロック全体と一つの第2の発熱ブロック全体がほぼ重なっていれば良い。図2(a)の場合における発熱分布ムラ抑制効果を、図3を用いて説明する。
【0023】
図3(c)では、導電パターンの発熱量を含めた、発熱ラインAと発熱ラインBを合計したの発熱分布図を示している。上流側の発熱ラインAと下流側の発熱ラインBで発熱量の差分が打ち消されるため、ヒータ長手方向に発熱ムラが改善できることがわかる。
【0024】
このように、第1列中の一つの第1の発熱ブロック全体と第2列中の一つの第2の発熱ブロック全体が長手方向において実質的に重なり、第1列中の一つの第2の発熱ブロック全体と第2列中の一つの第1の発熱ブロック全体が長手方向において実質的に重なるように第1列と第2列を配置すれば、発熱分布ムラを抑えることができる。
【0025】
なお、1本の発熱抵抗体の形状は図2に示すような長方形に限るものではないが、特に長方形とするのが好ましい。形状を長方形とすることにより発熱抵抗体全体に電流が流れるようにできる。例えば発熱抵抗体の形状を平行四辺形にした場合、電流が流れやすい最短経路が1本の発熱抵抗体全体ではなく一部になりこの最短経路に多くの電流が集中する。このため、1本の発熱抵抗体に流れる電流分布に偏りが生じ、発熱分布ムラ抑制効果が低減してしまう場合があるが、形状を長方形すればこの現象を抑えることができる。
【0026】
図4はヒータ10の非通紙部昇温を説明するための図である。このヒータは、基板長手方向において発熱抵抗体が設けられている領域(発熱ライン長)の中央部がプリンタの記録材搬送基準Xと合うように配置されている。本例では、A4サイズ(210mm×297mm)紙を縦送りする場合(297mmの辺が搬送方向と平行になるように搬送する場合)を例として示しており、A4サイズ紙の210mmの辺の中央が基準Xと合うように記録材を搬送するプリンタに搭載される。
【0027】
ヒータ10は、US−LETTER紙(約216mm×279mm)を縦送りする場合に対応するため、220mmの発熱ライン長を有している。ところで、上述したように本例の定着装置を搭載するプリンタは、LETTERサイズに対応しているが、基本的にA4サイズ紙対応のプリンタである。したがって、A4サイズ紙を利用する頻度が最も多いユーザー向けのプリンタである。しかしながら、LETTERサイズにも対応しているため、A4サイズ紙をプリントする場合、発熱ラインの両端部に5mmずつ非通紙領域が生じる。定着処理中、記録材搬送基準X付近のヒータ温度を検知する温度検知素子111の検知温度が制御目標温度を維持するようにヒータへの供給電力が制御されている。したがって非通紙部では紙に熱を奪われないため、非通紙部の温度が通紙部に比べて上昇する。なお、本例ではLETTERサイズを最大サイズ、A4サイズを非通紙領域の昇温を抑えたい特定サイズとしている。
【0028】
本実施例のヒータは、A4サイズ紙の端部が、図4のように、ヒータ両端に設けられた発熱ブロックA1、A17、B1、B17を通過し、且つそれぞれの発熱ブロックの両端に設けられた発熱抵抗体(A1−1、A1−4、A17−1、A17−4、B1−1、B1−4、B17−1、B17−4)を紙の端部が通過しないようにヒータが構成されている。このため、A4サイズ紙が通過しない領域の発熱抵抗体の温度が上昇するものの、発熱抵抗体はPTCなので、この発熱抵抗体の抵抗値が上昇して電流が流れにくくなることにより発熱が抑えられ、結果的に非通紙領域の昇温が抑えられるようになっている。
【0029】
また、上述したようにヒータ長手方向に亘って発熱分布ムラが生じないようにヒータの構成を設定しているので、紙が通過する領域における発熱ムラは抑えられており、定着性も均一にできる。
【実施例2】
【0030】
図5は実施例2のヒータ20の構成を示す図である。このヒータ20は、発熱抵抗体の傾きの向きが発熱ラインAと発熱抵抗体Bで同じになっている点が、実施例1のヒータ10と異なる。しかしながらこのヒータ20も、発熱ラインBの導電体(Ba、Bb)の形状を工夫することで、実施例1のヒータ10と同様、第1列(発熱ラインA)中の一つの第1の発熱ブロック全体と第2列(発熱ラインB)中の一つの第2の発熱ブロック全体が長手方向において実質的に重なり、第1列中の一つの第2の発熱ブロック全体と第2列中の一つの第1の発熱ブロック全体が長手方向において実質的に重なるように第1列と第2列を配置している。つまり、発熱ラインAでは、発熱ブロックA1、A3、A5、A7、A9、A11、A13、A15、A17が発熱量が小さくなる第1の発熱ブロックに相当し、発熱ブロックA2、A4、A6、A8、A10、A12、A14、A16が発熱量が大きくなる第2の発熱ブロックに相当する。発熱ラインBでは、発熱ブロックB2、B4、B6、B8、B10、B12、B14、B16が発熱量が小さくなる第1の発熱ブロックに相当し、発熱ブロックB1、B3、B5、B7、B9、B11、B13、B15、B17が発熱量が大きくなる第2の発熱ブロックに相当する。そして、(A1とB1)、(A2とB2)、・・・・・、(A17とB17)がそれぞれ基板長手方向で重なっているので、発熱分布ムラを抑えることが出来る。
【符号の説明】
【0031】
1 定着フィルム
2 加圧ローラ
10 ヒータ
A 発熱ラインA(第1列)
B 発熱ラインB(第2列)
A1〜A17 発熱ラインAの発熱ブロック
B1〜B17 発熱ラインBの発熱ブロック
Aa、Ab 発熱ラインAの導電体
Ba、Bb 発熱ラインBの導電体
A1−1〜A17−4、B1−1〜B17−4 発熱抵抗体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に基板長手方向に沿って設けられている第1導電体と、前記基板上に前記第1導電体とは基板短手方向で異なる位置に前記長手方向に沿って設けられている第2導電体と、正の抵抗温度特性を有しており前記第1導電体と前記第2導電体間に電気的に並列接続されている複数本の発熱抵抗体と、を有し、電気的に並列接続された複数本の前記発熱抵抗体を有する発熱ブロックが前記長手方向に沿って複数個設けられており、複数個の前記発熱ブロックが電気的に直列に接続されているヒータにおいて、
前記複数の発熱抵抗体は前記長手方向及び前記短手方向に対して斜めに傾いており、前記長手方向において前記第1及び第2導電体を流れる電流の向きと前記発熱抵抗体を流れる電流の向きが同じである第1の発熱ブロックと、前記長手方向において前記第1及び第2導電体を流れる電流の向きと前記発熱抵抗体を流れる電流の向きが逆である第2の発熱ブロックと、が前記長手方向で隣り合わせに直列接続されており、前記第1の発熱ブロックと前記第2の発熱ブロックを共に有する第1列と第2列が前記短手方向の異なる位置に設けられており、第1列中の一つの前記第1の発熱ブロック全体と第2列中の一つの前記第2の発熱ブロック全体が前記長手方向において重なり、前記第1列中の一つの前記第2の発熱ブロック全体と前記第2列中の一つの前記第1の発熱ブロック全体が前記長手方向において重なるように前記第1列と前記第2列が配置されていることを特徴とするヒータ。
【請求項2】
前記第1列と前記第2列は電気的に直列に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【請求項3】
前記発熱抵抗体の形状は長方形であり、隣り合う前記発熱抵抗体と前記長手方向において一部が重なり合うように配置されていることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載のヒータ。
【請求項4】
一つの前記発熱ブロックに含まれる前記複数本の発熱抵抗体は、前記長手方向において中央に配置されている発熱抵抗体よりも端部に配置されている発熱抵抗体のほうが抵抗値が高いことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のヒータ。
【請求項5】
エンドレスベルトと、前記エンドレスベルトの内面に接触するヒータと、前記エンドレスベルトを介して前記ヒータと共にニップ部を形成するニップ部形成部材と、を有し、前記ニップ部で画像を担持する記録材を挟持搬送しつつ加熱する像加熱装置において、前記ヒータが請求項1〜4いずれか1項に記載のヒータであることを特徴とする像加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−129483(P2011−129483A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289723(P2009−289723)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】