説明

ヒータ設計・製作・施工方法およびそれに使用されるヒータ

【課題】ヒータ設計・製造・施工方法およびそれに使用されるヒータにおいて、加熱、保温を必要とする配管を含む製造装置の「配管工事」から「使用開始」に至る工期を大幅に短縮することにより、全体の工期を短縮するとともにヒータの十分な作り込み期間を得る。
【解決手段】加熱、保温を必要とする配管6を含む製造装置1のレイアウトから完成までの工期の間に、製造装置1のレイアウト、配管設計・製造および配管工事をこの順番でする際、ヒータ8、10、12を配管の外周に施工するためのヒータ設計・製作・施工方法において、配管6の長手方向に沿って伸縮可能な少なくとも1つの調整用ヒータ12と、所定長さの固定長ヒータ10とを必要に応じて組み合わせて使用し、配管工事より前に、ヒータ10、12の設計・製作を開始し、調整用ヒータ12の長さを調節して配管6に被嵌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、半導体製造装置等の加熱、保温を必要とする配管を含む製造装置において、配管を外部から加熱するためのヒータの施工、終了までの工期を短縮するヒータ設計・製作・施工方法およびそれに使用されるヒータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、半導体製造装置等においては、半導体の製造過程で生じる不要なガスを真空ポンプで真空引きして外部に排出することが行われている。外部に排出するのに先立って、排出ガス中の不要なあるいは有害な粒子、成分は、スクラバー〈洗浄集塵装置〉により洗浄および除去され、浄化されたガスが排出される。この真空ポンプとスクラバー間は配管によって接続されており、排出ガスはこの配管内を通過する。真空ポンプで吸引された、例えば約180°Cの如き温度の高い排出ガスは、配管内を通過する間に温度が低下すると、ガスが液化したり固体化したりすることがある。その場合、この液体がポンプに進入して、ポンプが正常に作動しなくなるおそれがある。またガスが粉末化して配管内に積層すると配管が狭くなる可能性もある。
【0003】
このため、配管の外周を、ヒータで覆って配管を加熱し、ガスの温度が低下しないような対策がなされている。このヒータとして、配管の長さに合わせて設計された所定の長さを有する固定長ヒータが複数個用意され、配管が露出しないようにそれらが連続的に配管の外周に被冠されるようになっている。
【0004】
このヒータを取付ける工事は、通常、製造装置のレイアウトから完成に至る工事全体の工程の最終段階で行われる。この従来の工程について、図9を参照して説明する。図9は、従来の、製造装置のレイアウトから完成に至るまでの工程を示す工程図であり、横に工程全体の流れを示し、縦にヒータの設計・製作、納品等の工程を示す。横の工程では、「レイアウト」は、例えば半導体製造装置、ポンプ、スクラバー(以下、集塵装置という)等のシステムに使用される装置全体の構成を設計する工程、「配管設計」は、それらの装置の間を連結する配管の構成を設計する工程、「配管工事」は、現場で実際に配管を施工する工程である。「ヒータ設計・製作」は、配管に被嵌されるヒータを設計し、製作する工程、「ヒータ工事」は、ヒータを現場で配管に取り付ける工程である。「ヒータ工事」完了後、製造装置が「使用開始」可能となる。
【0005】
ヒータ取付けのための縦の工程では、「パイプ採寸」は、「配管工事」が完了した後に現場で配管の採寸を行う工程で、配管の採寸とともに「ヒータ発注」すなわちヒータの発注がなされる。次に、「ヒータ設計・製作」を行い、製作されたヒータが「ヒータ工事」の開始までに納入されて、ヒータの配管への取付けが行われる。この従来例の場合、「配管工事」の開始から「ヒータ工事」の完了に至る工期が、一例として約6週間を要する場合がある。
【0006】
上記従来例は、配管の寸法等のデータを配管工事の現場で得る場合であるが、「配管設計」段階で配管の寸法データが得られる場合がある。この場合は、現場での「パイプ採寸」が不要となり、「配管設計」段階で「ヒータ発注」がなされ、「配管工事」段階で「ヒータ設計」を開始することが可能となる。これにより、「配管工事」の開始から「ヒータ工事」の完了に至るまでの工期を約1週間短縮し、上記6週間を要していた工程を5週間とすることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、「ヒータ設計・製作」は、配管の寸法が明確になるまで着手できなかった。このため「ヒータ設計・製作」の前段階の工程が遅延した場合、「ヒータ設計・製作」が必然的に圧迫され、全体の工期が長くなったり、ヒータの作り込みの期間が短縮されたり、あるいは作業の負荷が増大したりするという問題があった。前述の後者の従来例においては、「配管工事」の開始からシステムの「使用開始」に至るまでの工期を1週間短縮しているが、この期間の工期をこれ以上大幅に短縮することは困難であった。
【0008】
この種の製造装置の発注側としては、少しでも早くシステムの運転を開始したいという要望があり、配管へのヒータ取付工事のために余儀なくされている上記工期を短縮したいという強い要望があったが、これまではこの要望に十分応えることができなかった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、加熱、保温を必要とする配管を含む製造装置の「配管工事」から「使用開始」に至るまでの工期を大幅に短縮することにより、全体の工期を短縮するとともにヒータの十分な作り込み期間を得ることができるヒータ設計・製作・施工方法およびそれに使用されるヒータを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のヒータ設計・製作・施工方法は、加熱、保温を必要とする配管を含む製造装置のレイアウトから完成までの工期の間に、製造装置のレイアウト、配管設計・製造および配管工事をこの順番でする際、ヒータを配管の外周に施工するためのヒータ設計・製作・施工方法において、配管の長手方向に沿って伸縮可能な少なくとも1つの調整用ヒータと、所定長さの固定長ヒータとを必要に応じて組み合わせて使用し、配管工事より前に、ヒータの設計・製作を開始し、調整用ヒータの長さを調節して配管に被嵌することを特徴とするものである。すなわち、伸縮可能な調整用ヒータを固定長ヒータと組み合わせて現場で配管の長さに合わせて取り付けるようにしたことを特徴とするものである。
【0011】
ここで「ヒータ」とは、マントルヒータおよびシリコーンヒータの両方の種類を含むものとする。
【0012】
前記ヒータの設計・製作は、レイアウト時に開始することもできる。
【0013】
また、調整用ヒータは、配管に沿って変形する複数の孔が形成された、配管の外周に被嵌される円筒形の断熱材と、配管側に近接するように断熱材に配置された発熱部と、配管の外周で断熱材と発熱部とを被覆する外被とを有するよう構成することができる。
【0014】
また、調整用ヒータは、配管の外周に被嵌される複数のリング状断熱部材からなる断熱材と、断熱材に配管側に近接するように取り付けられた発熱部と、断熱材と発熱部とを、リング状断熱部材の間隔が互いに接離可能となるように被覆する外被とを有するように構成してもよい。
【0015】
また、調整用ヒータは、配管の長手方向に沿って配管の外周に被冠される、それぞれが発熱部を内蔵する1組の断熱部材からなる断熱材と、断熱部材の間隔が互いに接離可能となるように断熱部材を被覆する外被とを有し、1組の断熱部材が、長手方向に相対的に移動可能な互いに補完し合う形状の凹凸部を有するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のヒータ設計・製作・施工方法は、調整用ヒータを固定長ヒータと組み合わせて使用することにより、配管工事より前に、ヒータの設計・製作を開始し、調整用ヒータの長さを調節して配管に被嵌することができるようにしたので、配管の経路や全長が正確にわからなくとも、配管工事に先行してヒータの設計・製作を行うことができる。従って、従来のように配管の寸法が明確になるまで待たなくても、ヒータの設計と製作を開始することができ、「配管工事」から「使用開始」に至るまでの工期を大幅に短縮することができ、全体の工期の遅延を防止するとともに十分な作り込みの期間を得ることができる。また、ヒータの寸法を配管の長さから正確に割り出す必要がないので、ヒータの設計を簡略化してヒータ設計・製作の期間も短縮することができ、一層工期を短縮することが可能となる。
【0017】
また、ヒータの設計・製作を、レイアウト時に開始した場合は、さらに全体の工期を短縮することができ、これにより、従来は最短でも5週間程度を要していた工期を約2週間にまで短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明のヒータ設計・製作・施工方法の最良の実施の形態について添付図を参照して詳細に説明する。図1は、例えば半導体製造装置のような製造装置1から集塵装置4に至る配管の経路の一例を示す概念図である。図1に示すように、製造装置1、真空ポンプ2、集塵装置4の間は、配管6により連結されている。なお、図1では、配管6と、エルボー8、ヒータ10、12の関係は、模式的かつ透視的に示してある。配管6の屈曲部にはエルボー8(8a、8b、8c、8d)が取り付けられている。これらのエルボー8は、ヒータが取り付けられた断熱材すなわちマントルヒータから構成されており、各々は同様な形状、数種の規定の長さを有する固定長ヒータ10となる。また、真空ポンプ2とエルボー8aとの間、エルボー8aとエルボー8bとの間、エルボー8bとエルボー8cとの間およびエルボー8cとエルボー8dとの間は、固定長ヒータ10と、長さが伸縮する調整用ヒータ12とが組み合わされて配置されている。
【0019】
これらの固定長ヒータ10と、調整用ヒータ12の一例について、図8を参照して説明する。図8は、固定長ヒータ10と調整用ヒータ12の一例を示す図である。図8の最上部にヒータの長さの寸法をmmで示す。図8において、調整用ヒータ12aは、150mmから200mmの間でその長さを調節できることを示し、固定長ヒータ10aは、200mmの一定の長さを有することを示す。同様に調整用ヒータ12bは、200〜250mmのサイズでその全長を調整でき、固定長ヒータ10bは250mmの一定の長さを有する。
【0020】
例えば図1において真空ポンプ2とエルボー8aとの間が380mmであった場合、設置された配管6に現場でヒータを施工する場合には、次のように行う。すなわち図8の最下段に示すように、ヒータで被嵌すべき配管の長さが、380mmである場合、200mmの長さを有する固定長ヒータ10aと、150〜200mmの間で長さが可変である調整用ヒータ12aとを組み合わせることにより、配管6を被覆することができる。この場合、調整用ヒータ12aの長さは、図8において破線で示す長さ20mmが短縮されて180mmに調整される。図8に示すヒータは、一例であってこれらの限定されるものではない。例えば、固定長ヒータ10と調整用ヒータ12は、大寸法(例えば、500mm、1000mm)の一定長のサイズおよびそれらの寸法の近傍で可変なサイズを設定することができる。従って、例えば、図1において、エルボー8bとエルボー8cの間の配管6の寸法が950mmの場合、500mmの固定長ヒータ10cと、400〜500mmの間で可変な調整用ヒータ12cを組み合わせることにより対応することができる。もちろん直線的な一つの配管6の経路で、必要に応じて複数のヒータ10、12を使用してもよい。
【0021】
このように、ヒータは、配管6の長さに合わせて、ヒータの長さを正確に割り出されたものとする必要はなく、現場で、あるいは予め短縮可能な調整用ヒータ12と、固定長ヒータ10とを組み合わせて使用することにより、どのような配管6の長さにも対応することができる。換言すると、配管6の長さを現場で実測したり、設計された配管6のデータを得なくても、真空ポンプ2と集塵装置4等のレイアウト(配置)さえ確認できれば、配管6の概略の全長を予測することができ、必要とするエルボー8やヒータ10、12を用意することができる。この予測した配管6のルート22は、例えば、図1に一点鎖線で示すようなものとなる。予測したルート22が実際と多少長さが異なっても、調整用ヒータ12を使用することにより、配管の長さの誤差の問題を解消することができる。従って、予め真空ポンプ2や集塵装置4のレイアウトが決まった段階すなわち「レイアウト」段階で、ヒータの設計および製作に取り掛かることも可能となる。
【0022】
なお、図1においてエルボー8dと集塵装置4の間が、このように間隔が狭い場合には1個の調整用ヒータ12が配置される。
【0023】
次に、全体の工程について図7を参照して説明する。図7は本発明のヒータ設計・製作・施工方法を使用した場合の工程を示す、図9と同様な工程図である。この工程では、製造装置のシステムを検討する最初の段階である「レイアウト」で、前述の如く配管6の経路の概略の長さを把握することができるので、「レイアウト」段階で「ヒータの設計・製作」を開始することができる。ヒータの設計も従来のように、配管の長さに合わせた専用品として設計する必要がないので、大幅に設計作業を簡略化して、ヒータ設計の工程を短縮することができる。この結果、遅くとも「配管工事」終了時には、ヒータを納入することができ、「配管工事」の直後に「ヒータ工事」を開始することができる。このように、「ヒータ設計・製作」を「レイアウト」と並行に進めることによって、従来「配管工事」と「ヒータ工事」の間に必要であった「ヒータ設計・製作」の工期を削除すことができる。これにより、「配管工事」から「使用開始」に至る期間を、従来5〜6週間要していたところ、約2週間に大幅に短縮することが可能となる。
【0024】
なお、上記の工期は一例であり、レイアウトの状態、配管6の全長により工期に長短があることはもちろんである。従って、場合により「ヒータ設計・製作」が「配管設計」工程より前に短期間で完了することも可能である。
【0025】
次に、上記本発明のヒータ設計・製作・施工方法に使用される第1の実施形態の調整用ヒータについて、図2および図3を参照して説明する。図2は、第1の実施形態の調整用ヒータ12Aを示し、図2(a)は分解した部品およびそれらを組み立てた状態を示す斜視図であり、図2(b)は調整用ヒータ12Aの長さを短縮した状態を示す。図2に示すように、調整用ヒータ12Aに使用される断熱材14は、耐熱性の発泡体、綿状の有機繊維あるいは、無機繊維等からなる概略円筒形であり、その長手方向および円周方向に沿って多数の、例えば菱形の孔14aが形成されている。また、円筒の軸線方向に沿って分離部14cが形成されており、断熱材14はこの分離部14cで開閉できるようになっている。
【0026】
断熱材14の円筒を軸線方向に貫通する貫通孔14b内には配管6が収容されるため、貫通孔14bの直径は配管6の外径より大きくなっている。断熱材14の内側には、図2では示していないニクロム線18(図3)が取り付けられている。断熱材14を被覆する外被16は、ガラスクロス或いはシリコーンシート等で形成され、断熱材14を収容するための外布16aと内布16bからなる2重構造となっている。外被16は、軸線方向に沿った合せ部24を有する。断熱材14は、ニクロム線18とともに外被16により被覆されて、図2(a)に示すように調整用ヒータ12Aが構成される。前述の合せ部24は、図2に示すように直線的なものでなくてもよい。調整用ヒータ12Aは、綿のような断熱材14を外被16で覆った構造であるので、図示の如く幾何学的に正確な形状でなくとも十分役割を果たすことができる。この調整用ヒータ12Aの構造について、図3を併せて参照してさらに詳細に説明する。
【0027】
図3は、配管6に被嵌された調整用ヒータ12Aの断面を示す部分拡大断面図である。ニクロム線18は、ヒータ布20に所定の間隔で保持されている。これらニクロム線18およびヒータ布20を総括して発熱部19という。断熱材14および発熱部19は、外被16により覆われる。外被16のうち断熱材14の外側になる部分が外布16aであり、断熱材14の内側になる部分が内布16bとなる。
【0028】
配管6に調整用ヒータ12Aを取り付けるときは、この合せ部24で開いて、配管6の外周に被嵌される。取り付け後は、外被16の外側に取り付けられたマジックテープ(登録商標)26(図2(a))等で合せ部24が開かないように固定される。マジックテープ(登録商標)26は、合せ部24に沿って複数箇所に設けられることが好ましい。図2(a)では、一部のマジックテープ(登録商標)26のみを仮想線で例示的に示す。
【0029】
この調整用ヒータ12Aの長さを短縮するには、配管6に取り付ける前に、図2(b)に示すように長手方向からマントルヒータ12Aを押圧して圧縮すればよい。外被16の余分な部分の外布16aと内布16bは互いに縫い合わされて、短縮された断熱材14がその長さを維持するように規制している。外被16の余剰部分は、その後そのまま圧縮してもよいし、隣接する他の固定長ヒータ10あるいは調整用ヒータ12があれば、そのヒータ10、12の端部に被嵌してもよい。なお、断熱材14の孔14aは菱形である必要はなく、円形、楕円形、長方形等任意の形状とすることができる。
【0030】
次に、本発明の第2の実施形態の調整用ヒータ12Bについて、図4を参照して説明する。図4は、第2の実施形態の調整用ヒータ12Bを示し、図4(a)は分解した部品およびそれらを組み立てた状態を示す斜視図であり、図4(b)は調整用ヒータ12Bの長さを短縮した状態を示す。調整用ヒータ12Bは、第1の実施形態の調整用ヒータ12Aに使用された外被16と同様な外被56と、この外被56により被覆される断熱材54とを有する。外被56および断熱材54にも、それぞれ合せ部64と分離部54cが形成されている。断熱材54は、前述の第1の実施形態の場合と同様な材質からなる、互いに離隔して外被56内に配置される複数のリング状断熱部材54aから構成される。これらの断熱部材54aの内側には、第1の実施形態と同様の発熱部〈図示せず〉が配置される。発熱部は、第1の実施形態と同様に図示しないヒータ布にニクロム線が例えば断熱性の糸で所定の間隔で縫い止めされて構成される。この調整用ヒータ12Bをその長手方向に縮小するには、軸線方向に力を加えてリング状断熱部材54aの互いの間隔を狭めてやればよい。これにより、調整用ヒータ12Bの全長を所望の長さに短縮することができる。配管6への取り付けも、合せ部64と分離部54cを開いて取り付けることができる。また図4では、マジックテープ(登録商標)は図示を省略してある。
【0031】
次に、本発明の第3の実施形態について、図5および図6を参照して説明する。図5は、本発明の第3の実施形態の調整用のシリコーンヒータを示し、図6は、図5のシリコーンヒータの部分断面図であり、図6(a)は分解した部品と外被を示し、図6(b)は全長が最も長くなるように組み立てた状態を示し、図6(c)は全長を短縮した状態を示す。調整用のシリコーンヒータ(以下単に調整用ヒータという)12Cは、第1の実施形態と同様な外被106と、1組の断熱部材103a、103bからなる断熱材103を有する。各断熱部材103a、103bは、例えば、シリコーンゴムのような耐熱性樹脂で成形されており、環状の本体部107(107a、107b)と、互いの方向に向いて互いに補完し合う形状の凹凸部108(108a、108b)を有する。凹凸部108は、一方の断熱部材103aまたは103bの凸部110が、他方の断熱部材103bまたは103aの凹部112内に収容される寸法関係にある。従って、断熱部材103a、103bは、互いに接近したり、離隔したりすることが可能である。これらの、断熱部材103a、103bの各々には、図示しないニクロム線等が一体的に埋め込まれており、断熱部材103a、103bの面が発熱するようになっている。各ニクロム線は中継線(図示せず)で連結されている。
【0032】
1組の断熱部材103a、103bは、互いに組み合った状態で、カバーすなわち外被106内に収容される。各断熱部材103a、103bは軸線方向に分離部としてスリット114(114a、114b)を有し、外被106の合せ部124と位置合せして外被106内に配置される。断熱材103は、シリコーン等の比較的弾力性のある部材から成形されているので、スリット114の反対側が分離するようになっていなくても、スリット114の部分を拡開して配管6に被嵌することができる。もちろんスリット114の反対側にもスリットが形成されていて、各断熱部材103a、103bが各々分割するようになっていてもよい。また、断熱材103は、その内面が配管6の外面に合わせて成形された面となっているので、この部分は外被106で被覆せず、直接配管6の外面に接触するように配管6に被嵌される。
【0033】
調整用ヒータ12Cは、図6(b)に示すように、一方の断熱部材103aまたは103bの凸部110を、他方の断熱部材103bまたは103aの凹部112に挿入した状態で、断熱部材103a、103b同士を最大に離隔させたとき、調整用ヒータ12Cの全長は最大となる。他方、図6(c)に示すように、断熱部材103a、103b同士を、凸部110と凹部112を摺動させて互いに接近させると、調整用ヒータ12Cの全長は短縮される。もちろん断熱部材103a、103bの間隔を任意の位置にしてその全長を所望の長さに変更することは容易である。断熱材103を短縮した状態では、外被106の端部は、図6(c)に示すように余剰部分が発生するが、この部分は、切除してもよいし、断熱材103の内部に折り込んでもよい。この第3の実施形態においても、マジックテープ(登録商標)は図示を省略してある。
【0034】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形、変更が可能であることはいうまでもない。例えば、第3の実施形態において、2個1組の断熱部材103a、103bを使用したが、配管6に沿って配置される3個1組の断熱部材としてもよい。その場合、中間の断熱部材の両端には、対応する相手方の断熱部材の凹凸部と補完的な形状の凹凸部が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のヒータ設計・製作・施工方法による、製造装置から集塵装置に至る配管の経路の一例を示す概念図
【図2】本発明の第1の実施形態の調整用ヒータを示し、(a)は分解した部品およびそれらを組み立てた状態を示す斜視図であり、(b)は調整用ヒータの長さを短縮した状態を示す。
【図3】配管に被嵌された図2の調整用ヒータの断面を示す部分拡大断面図
【図4】本発明の第2の実施形態の調整用ヒータを示し、(a)は分解した部品およびそれらを組み立てた状態を示す斜視図であり、(b)は調整用ヒータの長さを短縮した状態を示す。
【図5】本発明の第3の実施形態の調整用ヒータを示す。
【図6】図5の調整用ヒータの部分断面図であり、(a)は分解した部品と外被を示し、(b)は全長が最も長くなるように組み立てた状態を示し、(c)は全長を短縮した状態を示す。
【図7】本発明のヒータ設計・製作・施工方法を使用した場合の工程を示す、図9と同様な工程図
【図8】本発明のヒータ設計・製作・施工方法に使用される固定長ヒータと調整用ヒータの一例を示す図
【図9】従来の、製造装置のレイアウトから使用開始に至るまでの工程を示す工程図
【符号の説明】
【0036】
1 半導体製造装置
6 配管
8、10 固定長ヒータ
12 調整用ヒータ
14、54、103 断熱材
14a 孔
16、56、106 外被
18 ニクロム線
19 発熱部
54a リング状断熱部材
103a、103b 断熱部材
108 凹凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱、保温を必要とする配管を含む製造装置のレイアウトから完成までの工期の間に、前記製造装置のレイアウト、配管設計・製造および配管工事をこの順番でする際、ヒータを前記配管の外周に施工するためのヒータ設計・製作・施工方法において、
前記配管の長手方向に沿って伸縮可能な少なくとも1つの調整用ヒータと、所定長さの固定長ヒータとを必要に応じて組み合わせて使用し、前記配管工事より前に、前記ヒータの設計・製作を開始し、前記調整用ヒータの長さを調節して前記配管に被嵌することを特徴とするヒータ設計・製作・施工方法。
【請求項2】
前記ヒータの設計・製作を前記レイアウト時に開始することを特徴とする請求項1記載のヒータ設計・製作・施工方法。
【請求項3】
前記調整用ヒータが、前記配管に沿って変形する複数の孔が形成された、前記配管の外周に被嵌される円筒形の断熱材と、前記配管側に近接するように前記断熱材に配置された発熱部と、前記配管の外周で前記断熱材と前記発熱部とを被覆する外被とを有することを特徴とする請求項1または2いずれか1項記載のヒータ設計・製作・施工方法に使用されるヒータ。
【請求項4】
前記調整用ヒータが、前記配管の外周に被嵌される複数のリング状断熱部材からなる断熱材と、該断熱材に前記配管側に近接するように取り付けられた発熱部と、前記断熱材と前記発熱部とを、前記リング状断熱部材の間隔が互いに接離可能となるように被覆する外被とを有することを特徴とする請求項1または2いずれか1項記載のヒータ設計・製作・施工方法に使用されるヒータ。
【請求項5】
前記調整用ヒータが、前記配管の長手方向に沿って前記配管の外周に被冠される、それぞれが発熱部を内蔵する1組の断熱部材からなる断熱材と、前記断熱部材の間隔が互いに接離可能となるように該断熱部材を被覆する外被とを有し、前記1組の断熱部材が、前記長手方向に相対的に移動可能な互いに補完し合う形状の凹凸部を有することを特徴とする請求項1または2いずれか1項記載のヒータ設計・製作・施工方法に使用されるヒータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−255819(P2007−255819A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82559(P2006−82559)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(503148649)株式会社東京技術研究所 (7)
【Fターム(参考)】