説明

ヒートアイランド対策用舗装及びヒートアイランド抑制方法

【課題】日射による蓄熱を抑え且つ速やかに熱を放出し得るヒートアイランド対策用舗装を提供する。
【解決手段】ヒートアイランド対策用舗装材料1は、日射を反射し得るように表面1sを構成するとともに、熱伝導性材料すなわち金属繊維たる鋼繊維10を含むことを特徴としている。そしてヒートアイランド対策用舗装1は、図1に模式的に示すように、セメントCMと、水Hと、細骨材Sと、粗骨材Gと、減水剤SPに加え、鋼繊維10を混合させた後、打設したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装路面温度の上昇を抑制することによってヒートアイランドを抑制する舗装並びに方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市部では、道路舗装率の増大等に伴って水環境や熱環境が著しく変化してきており、様々な問題が発生してきている。
【0003】
なかでも熱環境に関しては、昼間の日射による熱を都市の表面を覆う人工構造物が蓄熱することによって夜間温度の上昇を招き、特に都市部においてヒートアイランド現象をもたらす一因ともなっている。
【0004】
このような問題を解消すべく、保水性材料を用いて道路を舗装することにより舗装面を介して水を蒸発させることにより、地温上昇を有効に回避しようとした試みが行われている。
【0005】
他方、冬季の融雪を目的として、地下に敷設した熱源からの熱を効率良く地上に伝えることによって速やかに融雪するために、材料中に熱伝導性材料を含む舗装材料が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−66251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述した夜間の温度上昇は、昼間の日射によって都市の表面を覆う人工構造物が蓄熱し、人工構造物から熱が放出し続けることとによって起こると考えられている。従って、人工構造物の一つである舗装表層の蓄熱を防止することができれば、夜間の熱放出を抑制でき温度上昇を低下させることができると考えられている。
【0007】
しかしながら、上述した特許文献に記載のものは上述の通り、融雪を目的としているものであって、日射による舗装表層への蓄熱を抑制するという観点に立ってなされたものではないため、日射による熱は、舗装された層を伝達し、舗装表層へ蓄熱されてしまうので、やはり夜間の熱放出を防止できないと考えられる。
【0008】
本発明は、このような不具合に着目したものであり、日射による舗装体への蓄熱を抑え夜間の熱放出を抑制し得るヒートアイランド対策用舗装を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。すなわち、本発明に係るヒートアイランド対策用舗装は、日射を反射し得るように表面を構成するとともに、熱伝導性材料を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るヒートアイランド抑制方法は熱帯夜が多発する環境に対して斯かるヒートアイランド対策用舗装を用いて舗装を行うことを特徴とするものである。
【0011】
ここで熱帯夜とは、夜間の最低温度が25℃以上となる状態を指すものとする。
【0012】
また、多発とは、例えば年間10日以上、上述の熱帯夜となるような状態を指すものとする。
【0013】
このようなものであれば、日射を反射し得るように構成しているため昼間の日射を有効に反射し地下に熱を通すことを回避しつつ、熱伝導性材料を含むことにより、当該舗装材料自体も蓄熱しにくいものとなっているため、舗装体への蓄熱を有効に回避できるので、例えば日照の無い夜間に放出する熱量を抑制することができる。
【0014】
そして、格別の工夫を施すことなく表面が好適に日射を反射し得るように構成するためには、セメントを含むものとすることが望ましい。
【0015】
また、舗装材料自体が蓄熱しにくいように構成するためには、JIS A 1142―2に定義される熱伝導率が、2.3W/m・K以上となるようにすることが好ましい。
【0016】
好適に熱伝導率を向上させ得る熱伝導性材料としては、グラファイトファイバーや金属繊維を挙げることができる。特に望ましくは熱伝導性材料を、鋼繊維とすることが望ましい。
【0017】
鋼繊維によって熱伝導率を向上させる具体的な構成として、鋼繊維の含有量を、0.5〜1.5体積%とする事が望ましい。
【0018】
また、舗装表面が日射を反射し得るようにするために、JIS A 5759に定義される日射反射率が25%以上、更に好ましくは30%以上となるように構成することが望ましい。さらに、当該舗装材料が日射を反射しつつ、使用者が反射光によって眩しさを感じないようにするためには、表面を、可視領域の光のみを選択的に吸収し得るように構成することが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、日射を反射し得るように構成しているため昼間の日射を有効に反射し舗装体に蓄熱することを回避しつつ、熱伝導性材料を含むことにより、当該舗装材料自体が蓄熱しにくいものとなっているため、舗装体への蓄熱を有効に回避できるので、蓄熱した熱を、例えば日照の無い夜間に放出することを抑制することができる。
【0020】
そして本願に係るヒートアイランド対策用舗装を用いれば、通常の舗装に比べて日中における路面温度が高くならず、気流と共に熱を早く逸散させてしまうため、蓄熱により夜間に気温が下がらないといった熱帯夜日数の抑制に繋がるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0022】
本実施形態に係るヒートアイランド対策用舗装材料(以下、舗装材料と記す)1を、例えば熱帯夜が多発する環境に対して適用すべく土路盤R上に舗装することによって、本発明に係るヒートアイランド対策用舗装(以下、層と記す)Aを施した態様を、図1に模式的に示している。
【0023】
ここで、同実施形態に係る舗装材料1は、日射slを反射し得るように表面1sを構成するとともに、熱伝導性材料たる鋼繊維10を含むことを特徴としている。
【0024】
以下、舗装材料1の具体的な構成について詳述する。
【0025】
舗装材料1は、図1に模式的に示すように、セメントCMと、水Hと、細骨材Sと、粗骨材Gと、減水剤SPに加え、金属繊維たる鋼繊維10を例えばミキサによって混合させた後、同図右側或いは図2に模式的に示すような熱帯夜が多発する環境に打設したものである。
【0026】
セメントCMは、普通ポルドランドセメントを用いており、1立方メートル400Kg配合している。そして同実施形態ではセメントCMを主体としているため、表面1sにおいて、JIS A 5759に定義される日射反射率が30%以上となっている。ここで表面1sについては別途塗料を塗布する等して、可視領域の光を吸収し得るように構成してもよい。水Hは、本実施形態においては通常同様の工業用水あるいは雨水を用い、1立方メートル180Kg配合している。また、同実施形態では細骨材Sを1立方メートルあたり684〜710Kg、粗骨材Gを同1000Kg混合するように設定している。減水剤SPは、高性能AE減水剤SPを1立方メートルあたり0.4〜0.6Kg配合している。
【0027】
鋼繊維10は、全体に対する含有量を、0.5〜1.5体積%とすべく、1立方メートル39〜119Kg配合することによって、JIS A 1142―2に定義される熱伝導率が、2.3W/m・K以上となっている。なお、熱伝導性材料として、グラファイトファイバーを採用することにより、上記同様2.3W/m・K以上の熱伝導率を得るように構成することも可能である。
【0028】
このように、本実施形態に係るヒートアイランド対策用舗装材料1を適用することにより、図2に示す通り、日射slは好適に表面1sに反射される一方で、舗装材料1により形成される層A自体が蓄熱しにくいものとなっているため、舗装材料1並びに土路盤Rの蓄熱による夜温の上昇が有効に回避され得るものとなっている。
【0029】
以上のような構成とすることによって、本実施形態に係るヒートアイランド対策用舗装材料1は、日射を反射し得るように構成しているため昼間の日射slを有効に反射し舗装体に熱を通すことを抑制し得るものである。併せて、熱伝導性材料たる鋼繊維10を含むことにより、当該舗装材料1自体が蓄熱しにくいものである。そのため、地下への蓄熱を有効に回避できるので、例えば日射slの無い夜間に放出する熱hの量を抑制することができる。
【0030】
また、舗装材料1はセメントCMを含むもの、すなわちセメント硬化体として表面1sがセメントCMを反映した色彩をなしているため、好適に日射を反射し得るものとなっている。
【0031】
そして熱伝導性材料たる鋼繊維10を含むことによりJIS A 1142―2に定義される熱伝導率が、2.3W/m・K以上となるように構成しているので、上述したように舗装材料1自体が、より蓄熱しにくいものとなっている。
【0032】
さらに、同実施形態では熱伝導性材料として、金属繊維を適用しているため材料コストを安く抑えることができるのみならず、鋼繊維10とすることにより、セメントCMと混合しても化学反応が起こることによる舗装材料1の内部に気泡などを発生することが無く、安定して熱伝導性を向上させることができる。具体的には、混合させる鋼繊維10の含有量を、0.5〜1.5体積%とすることにより、上述の熱伝導率を実現し得るものとなっている。
【0033】
そして、斯かる舗装材料1を熱帯夜が多発する環境に対して用いて舗装を行うことを特徴とするヒートアイランド抑制方法によれば、地下への蓄熱を回避することにより夜間に気温が下がらないといった熱帯夜日数の抑制に繋がるものとなる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0035】
例えば、上記実施形態では舗装材料の表面に塗料を塗布する態様を例示したが当該態様の他に、舗装材料自体に塗料を混合した態様としても良い。
【0036】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例について記載するが、本発明は当該実施例に限定されるものではない。
【0038】
<第一実施例>
熱伝導率が大きい材料として鋼繊維を混入したコンクリート試験体(一辺10cm立方体)を作製した。
なお、試験項目としてスランプフロー(JIS A 1101)、熱伝導率(JIS A 1142−2熱流計法)、及び日射反射率(JIS A 5759)について測定した。
<使用材料>
セメントコンクリートに係る、鋼繊維以外の材料について以下に示す。
セメント:普通ポルトランドセメント(密度:3.15g/cm3
細 骨 材:川砂
粗 骨 材:砕石2005
混 和 剤:高性能AE減水剤
アスファルトコンクリートに係る、鋼繊維以外の材料について以下に示す。
アスファルト:スレートアスファルト
骨材:砂(海砂)、スクリーニングス(砂岩砂)、6号砕石、7号砕石、フィラー(石粉(石灰石質))
<混入割合及び配合>
混入割合及び配合を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
<試験結果並びに試験結果の評価>
試験結果を表2に、試験結果の評価一覧を表3に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
実施例1及び実施例2は施工性、熱伝導率ともに良い結果が得られ、実施例3は熱伝導性については良い結果が得られるとともに、施工性については減水剤使用量を変えて多少締固めを充分に行えば適用可能であった。
一方、比較例1は施工性は良いが繊維混入率が小さいため熱伝導率の改善が認められない結果となった。また、比較例2については日射反射率が低いものとなった。
【0044】
<第二実施例>
20℃での実験室にて行った第二実施例について以下に記す。
<試験方法>
上記実施例1、実施例2、実施例3並びに比較例1及び比較例2に係る試作品をホットプレートにのせ、試験体底面より定常的に80℃の熱を5時間供給した後、スイッチを切り放置した。温度測定は熱電対にて試験体中心部を測定した。
【0045】
<試験結果並びに試験結果の評価>
実施例1、実施例2、実施例3及び比較例1の温度測定結果について図3に示す。同図によれば、実施例1、実施例2、実施例3及び比較例1は温度上昇速度がほぼ同程度であるが、スイッチを切った直後から温度下降速度は比較例1に対し実施例1、実施例2及び実施例3は速いものとなっていた。
【0046】
この結果より実施例1及び実施例2は比較例1に対し温度の上昇及び下降といった効果が短時間で得られている事がわかる。
すなわち上述した第一実施例並びに第二実施例の結果から、実施例1、実施例2、実施例3に係るコンクリート試験体を舗装材料として適用すれば、舗装材料自体が蓄熱しにくいものとなり、舗装材料並びに土路盤の蓄熱による夜温の上昇が有効に回避され得るものとなると考えられる。
【0047】
<第三実施例>
上記実施例1の配合に係るセメントコンクリート舗装板と、比較例2の配合に係るアスファルトコンクリート舗装板とを大阪市内の所定箇所に施工し昼間及び夜間の表面温度の測定を行った。
<試験材料>
実施例1に係る舗装版:1m×1m×15cm
比較例2に係る舗装版:1m×1m×5cm
<試験方法>
上記実施例1の配合に係るセメントコンクリート舗装板と、比較例2の配合に係るアスファルトコンクリート舗装板とを大阪市内の所定箇所に、7月某日に施工した。その後8月某日に、日中及び翌日の朝までの路面温度を測定した。
路面温度の測定は、各舗装版の中央部表面に熱電対を貼付けることによって行った。
【0048】
<試験結果並びに試験結果の評価>
測定した路面温度データのうち、午前10時から午後3時までの間に記録した温度における最高温度を最高路面温度とし、翌日0時から6時までの間に記録した温度における最低温度を最低路面温度とし、図4に示した。
【0049】
最高路面温度に関して、実施例1は比較例2に比べて10℃近く低いことから、実施例1に係る舗装版の表面は好適に日射を反射して舗装体への蓄熱を好適に抑制しているという結果を得た。一方路面最低温度に関しては、実施例1並びに比較例2ともに略同様の路面温度を示した。このことは、大阪市内での8月の時期の気温とも考え合わせると、実施例1、比較例2ともに昼間の日射により上昇した温度に係る熱を、翌朝までには概ね放出しているということがわかる。すなわち、実施例1のほうが最高路面温度が低い分、日射による熱の総放出量は少ないことが判る。さらに実施例1に係るセメント硬化体は上記第2実施例により、熱を速やかに放出し得ると特性を有することが判っている。そのため、実施例1に係る舗装版に関しては最高路面温度を記録した時間から夜に至るまでにより多くの熱を逸散していることが考えられる。そのことを併せて考えると実施例1は、夜間の熱の放出量が比較例2に比べて十分に小さくなることは明らかと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る舗装材料を示す模式的な構成説明図。
【図2】同実施形態に係る模式的な作用説明図。
【図3】本発明の第二実施例における鋼繊維混入試験体の温度変化をグラフとして示す図。
【図4】同第三実施例における鋼繊維混入舗装版に係る最高路面温度及び最低路面温度をグラフとして示す図。
【符号の説明】
【0051】
1…ヒートアイランド対策用舗装材料
1s…表面
10…熱伝導性材料、金属繊維、鋼繊維(鋼繊維)
A…ヒートアイランド対策用舗装(層)
CM…セメント
sl…日射

【特許請求の範囲】
【請求項1】
日射を反射し得るように表面を構成するとともに、熱伝導性材料を含むことを特徴とするヒートアイランド対策用舗装。
【請求項2】
セメントを含むものとしている請求項1記載のヒートアイランド対策用舗装。
【請求項3】
JIS A 1142―2に定義される熱伝導率が、2.3W/m・K以上となるように構成している請求項1又は2記載のヒートアイランド対策用舗装。
【請求項4】
熱伝導性材料を、グラファイトファイバーとしている請求項1、2又は3記載のヒートアイランド対策用舗装。
【請求項5】
熱伝導性材料を、金属繊維としている請求項1、2又は3記載のヒートアイランド対策用舗装。
【請求項6】
熱伝導性材料を、鋼繊維としている請求項5記載のヒートアイランド対策用舗装。
【請求項7】
鋼繊維の含有量を、0.5〜1.5体積%としている請求項5記載のヒートアイランド対策用舗装。
【請求項8】
表面を、JIS A 5759に定義される日射反射率が25%以上となるように構成している請求項1、2、3、4、5、6又は7記載のヒートアイランド対策用舗装。
【請求項9】
表面を、可視領域の光を吸収し得るように構成している請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載のヒートアイランド対策用舗装。
【請求項10】
熱帯夜が多発する環境に対して請求項1乃至9の何れかに記載のヒートアイランド対策用舗装を用いて舗装を行うことを特徴とするヒートアイランド抑制方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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