説明

ヒートパイプ

【課題】取扱が容易なヒートパイプを提供する。
【解決手段】 ヒートパイプ10は、両端を例えばアルミニウム製の端板11,12で閉塞されたアルミニウム製の熱シリンダ13と、該シリンダ13を貫て延びるアルミニウム製の熱源パイプ14とを備えている。一方の端板11には<シリンダ13内に熱媒体を注入するための注入路15が形成されている。その注入路15には、注入された熱媒体を密封するためのボール16が圧入されている。さらに、必要に応じて接着剤を注入口に装填する場合もある。従って、端板11の外方へ突出する流入路が不要になる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば加熱源として用いられるヒートパイプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】ヒートパイプは、金属管の中に、大きな気化熱をもち、しかも、蒸気の拡散速度の大きな熱媒体を閉じ込めたもので、熱媒体はパイプの一部(高温部)で蒸発して他部(低温部)に移り、そこで放熱、凝縮して再び高温部に還流するようになっている。
【0003】このようなヒートパイプを製造するための方法としては、様々な技術が提案されてきたが、いずれも一長一短であり、熱媒体を漏れの少ない簡単な方法で密封しうる技術は提供されていなかった。そのため、特開昭54−59658号公報は、注入管より熱媒体をパイプ内に注入し、残留空気を除去した後、注入管開口部よりボールを挿入し、注入管を閉塞する熱媒封入方法を提案している。
【0004】以下、図6〜図8を参照して特開昭54−59658号公報に記載の技術について具体的に説明する。これは、複写機等に用いるヒートパイプローラに適用されるものであって、軸1により回転自在に支持されるヒートパイプローラ2には注入管3を介して熱媒体が注入される。ヒートパイプローラ2の両端部は端板2dで閉鎖されている。
【0005】そして、注入管3を介して熱媒体をヒートパイプローラ2内に注入した後、同じく注入管3を介してヒートパイプローラ2内から空気を排出する。熱媒体の注入及び空気排出が終わると、鋼球4を注入管3の開口部3aに挿入する。そして、注入管3の先端を圧潰して、注入管3を封止する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、注入管3に鋼球4を挿入し、注入管3の先端を圧潰することにより熱媒体を封入するようにした構成において、注入管3がヒートパイプの端面から図示のように突出することになる。
【0007】しかも、注入管3は細いため、上述のように突出していると、ヒートパイプの組付けなどの際に、注入管3が邪魔になるばかりでなく、組付け後も、細心の注意を払わないと注入管3が損傷を受け易い。そして、注入管3が損傷すると、ヒートパイプの気密が破壊され、ヒートパイプとして機能しなくなる問題があった。
【0008】従って、本発明の目的は、上述したような問題のないアルミニウム製ヒートパイプを提供することであり、また、そのようなヒートパイプへの熱媒体封入方法及び封入工具を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】以上の目的を達成するために、請求項1に記載の発明においては、両端を端板で閉塞された熱媒体シリンダと、該シリンダを貫いて延びる熱源パイプとを備え、前記端板の一方には、前記シリンダ内に熱媒体を注入するための注入路が形成されており、該注入路には、注入された熱媒体を密封するための栓が圧入されているものである。
【0010】従って、注入路を端板に貫設したため、ボールが圧入される注入路を端板から突出させる必要がなく、従来とは異なり、ヒートパイプの損傷を未然に防止できる。
【0011】請求項2に記載の発明においては、請求項1において、前記端板がアルミニウムまたはアルミニウム合金である。従って、端板の部分変形により、栓の密封状態を効果的に保持できる。
【0012】請求項3に記載の発明においては、栓がボールである。従って、栓はその向きを制約されず、取り扱いが容易である。請求項4に記載の発明においては、請求項1〜3のいずれかにおいて、栓がアルミニウムまたはアルミニウム合金である。
【0013】従って、栓の変形により、密封状態を効果的に保持できる。請求項5に記載の発明においては、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記栓が圧入された前記注入路に接着剤を装填している。
【0014】従って、圧入した栓が接着剤によっても該注入口に固着される。
【0015】
【発明の実施の形態】[第1の実施形態]以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0016】図1は、本発明の第1の実施形態に係るヒートパイプ10を概略的に示すものであり、両端がアルミニウム製の端板11,12で閉鎖されたアルミニウム製の円筒形をなすシリンダ13を備えている。後述するように真空状態にされたシリンダ13の内部には、適宜の熱媒体が封入されている。なお、この実施形態で、アルミニウム製とは、アルミニウムのみから製作されたものに限らず、適宜のアルミニウム合金から製作されたものも含むものとする。
【0017】このシリンダ13を長手方向に貫いて延びているのは、同様にアルミニウム製の熱源パイプ14であり、その内部に熱源流体が通過するようになっている。熱源としては、勿論、流体に限らず、ヒータのような電気的手段を使用してもよい。
【0018】内端側が狭くなるテ―パ状の注入路15が一方の端板11を貫通するように形成されている。この注入路15は、従来とは異なり、端板に挿入されているパイプではなく、端板11自体に形成された通路であるから、その各開口端15aは端板11の表面と面一になっている。ヒートパイプ10は、注入路15内に栓としてのアルミニウム製のボール16を圧入することにより密封される。
【0019】図2の(a)に示すように、シリンダ13の端部周面は外側縁も内側縁も面取りされている。一方、端板11は、シリンダ13の中に入り込み、シリンダ13の内径にほぼ等しい小径部11aと、シリンダ13の外部に位置し、シリンダ13の外径にほぼ等しい大径部11bと、両者の間にあるフランジ部11cとを有している。そして、端板11の小径部11aをシリンダ13に挿入した状態では、フランジ部11cがシリンダ13の端面に当接する。端板11の小径部11aのフランジ部11c側には、フランジ部11c側ほど小径となるようにテ―パが付いており、小径部11a、フランジ部11c及びシリンダ13の端部の間に形成された断面三角形状のスペース17に環状のシールリング18が挿入されている。このシールリング18は例えばゴム製とすることができる。
【0020】そして、端板11をシリンダ13に固着するために、図2の(b)に示すように端板11のフランジ部11cをシリンダ13側にかしめると、端板11の小径部11aにはフランジ部11c側ほど小径となるようにテ―パが付いているので、フランジ部11cがシリンダ13側に屈曲して、そのシリンダ13の端部を半径方向の外側から押圧する。次いで、シリンダ13側の端部がシールリング18を圧縮して、前述したスペース17に具合良く、シールを保って入り込むようになる。
【0021】また、熱源パイプ14が端板11,12を貫通する部分には、図3に示すように(代表的に端板11について示す)、シールリング19を有するブッシュ20が設けられ、該ブッシュ20を熱源パイプ14が貫いて延びている。そして、このブッシュ20により熱源パイプ14と端板11,12との間のシールが確保されている。このブッシュ20もアルミニウム製とすることができ、また、シールリング19はゴム製とすることができる。
【0022】次に、図4(a),(b)を参照して、注入路15を介してシリンダ13内を真空にすると共に、熱媒体を注入し、しかる後、該注入路15にボール16を圧入する工具30について説明する。
【0023】図4において、該工具30は、一端が穴31aを除いて実質的に閉じ、他端が開放した円筒形のケーシング31を有する。ケーシング31の中央部に長手方向に沿ってロッド通路32aが貫通形成されている。該ロッド通路32aには作動ロッド43がその軸線方向に移動自在に挿入支持されている。
【0024】ケーシング31は、その長手方向中央部に形成された環状流路32bと、該環状流路32bに連通するように先端部側の3カ所に形成された溝32cと、その溝32c間に形成されたボール保持孔31bとを有し、該環状流路32bは、ケーシング31の肉厚を半径方向に貫通するように形成されたポート31cに連通している。このポート31cは流路33aを介して三方弁33に、そして、流路33b、33cを介して真空源34と熱媒体源35にそれぞれ連絡している。また、ケーシング31の平らな先端面にはシールリング36が保持されている。
【0025】次に、この工具30を用いて注入路15を介してシリンダ13内を真空にすると共に、熱媒体を注入し、しかる後、該注入路15にボール16を圧入する方法について説明する。
【0026】先ず、ケーシング31のボール保持孔31bにボール16を保持させる。次いで、工具30をロッド通路32aが注入路15と対応するように位置決めする。このときシールリング36は端板11の端面に押し付けられて注入路15を囲んでいる。次に、三方弁33を操作して流路33a,33bを連通させてから真空源34を作動させると、シリンダ13内の空気が注入路15,溝32c,環状流路32b,ポート31cを介して吸引される。シリンダ13内が所望の真空状態となったことを例えば圧力ゲージで確認したら、三方弁33を切り替え操作して流路33a,33cを接続すると、熱媒体源35内の熱媒体は、シリンダ13内の負圧により吸引されて溝32c、注入路15等を介して一瞬にしてシリンダ13内に流入する。
【0027】この状態で再び三方弁33を操作して閉弁してから、作動ロッド43を操作して、装填されていたボール16を注入路15内に圧入すれば、シリンダ13内への熱媒体の封入が完了する。
【0028】この第1の実施形態は、以下のような効果がある。
・ ボール16によって栓をされる注入路15が端板11に形成されているため、従来とは異なり、注入路15の部分が外方へ突出することはない。従って注入路15の部分が損傷したり、邪魔になったりするおそれがない。
【0029】・ ボール16及び端板11がアルミニウム製なので、ボール16の圧入によりそれらは変形しやすい。このため、ボール16と端板11との間のシールを有効に発揮させることができる。
【0030】[第2の実施形態]図5は、本発明の第2の実施形態の要部を示す注入口近傍の断面図である。前記第1の実施形態では、栓となボール16をアルミニウム製とし、その圧入力による変形でシールを有効にしたが、それではシリンダ13の気密性が保てない場合がある。例えば、シリンダ13内の気圧が外部の気圧よりも高くなると、テーパを有する注入口15から逆にボール16が押し出される可能性がある。このような現象は圧入力が弱かったとき、或いはボール16の材質が硬くて十分に変形しなかった場合に起こりうる。
【0031】そこで、この第2の実施形態では、ボール16の圧入を終了した後に、注入口15に、接着剤40を装填する。接着剤40としては、2液混合タイプのエポキシ系接着剤が、硬化したときに金属との接着力も強いので好ましい。
【0032】接着剤40が注入口15に装填されたヒートパイプでは、シリンダ13内の気圧が外気より高くなっても、ボール16が接着剤40によって注入口5に固定されているので、気密性を保持できる。
【0033】以上のように、この第2の実施形態では次のような作用効果を奏する。
・ ボール16の圧入力が弱くてもシリンダ13の気密性を保てるので、ボール16を圧入する際の圧入力の管理を厳格に行う必要がなくなる。また、ボール16或いはシリンダ13の材質に自由度ができ、これらを鉄、ステンレス、銅等に変更できる。
【0034】なお、この発明は、以下のように具体化することも可能である。
・ シリンダ13、熱源パイプ14、ボール16及び端板11の少なくともひとつをアルミニウム以外の材質、例えばステンレススチールで構成すること。ステンレススチールで構成した場合には腐食に強くなる。なお、端板11及びボール16の双方をステンレススチールで構成した場合には、ねじ等によりボール16を常時押し込むようにすることが必要になる場合もある。
【0035】・ 図4に2点鎖線で示すように、注入路15の中間部にボール16を保持するための段差部15bを設けること。前記実施形態から把握される技術的思想は以下の通りである。
【0036】(1) 請求項1〜4のいずれかにおいて、熱媒体シリンダがアルミニウムまたはアルミニウム合金であるヒートパイプ。従って、シリンダが軽量化されて、取り扱いが容易になるとともに、放熱特性が向上する。
【0037】(2) 請求項1〜4,前記(1)項のいずれかにおいて、注入路は、その内端部側が狭くなっているヒートパイプ。従って、注入路に確実に栓をすることができる。
【0038】(3) 請求項1〜4,前記(1),(2)項のいずれかに記載のヒートパイプに熱媒体を封入するための方法であって、熱媒体シリンダの端部開口に端板を嵌合し、その端板の注入路からシリンダ内の空気を抜いた後、注入路からシリンダ内に熱媒体を注入し、次いで、その注入路内に栓を圧入するヒートパイプへの熱媒体封入方法。
【0039】従って、ボールが圧入される注入路を端板から突出させる必要がないため、従来とは異なり、ヒートパイプの損傷を未然に防止できる。
(4) 注入路を有する端板に対して注入路の周囲を気密にした状態で接合可能な案内体と、その案内体に貫設された支持孔に摺動可能に支持された押込み体とを備え、前記案内体には、真空源及び熱媒体供給源に接続されるとともに、前記注入路に対応配置される流体通路を設けるとともに、前記押込み体の先端前方において、前記支持孔に栓を保持できるように構成し、案内体を端板に接合した状態で、真空源の作用により注入路及び流体通路を介してシリンダ内の空気を抜いた後に、熱媒体供給源から流体通路及び注入路を介してシリンダ内に熱媒体を注入し、次いで、支持孔に保持された栓を押込み体の移動により注入路内に押し込むようにした封入工具。
【0040】従って、栓の押し込みにより、栓と注入路との間の気密を確実に保持できる。
【0041】
【発明の効果】以上、実施形態で例示したように、この発明においては、栓が圧入される注入路は端板自体に形成されているため、端板から突出することがなく、従来の技術において生じていた注入管の損傷のような不都合は生じず、取り扱いが容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施形態のヒートパイプを示す一部省略正面図。
【図2】 (a)は組付け途中を示す断面図、(b)は組付け完了時を示す断面図。
【図3】 端板の熱源パイプ貫通部を示す断面図。
【図4】 (a)はボールを圧入する工具の断面図、(b)は同側面図。
【図5】 第2の実施形態のヒートパイプの要部を示す断面図。
【図6】 従来のヒートパイプを示す正面図。
【図7】 同じく注入管の部分を示す断面図。
【図8】 同じく注入管をかしめた状態を示す断面図。
【符号の説明】
10…ヒートパイプ、11…端板、12…端板、13…熱媒体シリンダ、14…熱源パイプ、15…注入路、16…栓としてのボール、30…封入工具、31…案内体としてのケーシング、32a…ロッド通路、43…押込み体としての作動ロッド、36…環状シールリング、40…接着剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 両端を端板で閉塞された熱媒体シリンダと、該シリンダを貫て延びる熱源パイプとを備え、前記端板の一方には、前記シリンダ内に熱媒体を注入するための注入路が貫設されており、該注入路には、注入された熱媒体を密封するための栓が圧入されているヒートパイプ。
【請求項2】 請求項1において、前記端板がアルミニウムまたはアルミニウム合金であるヒートパイプ。
【請求項3】 請求項1または2において、栓がボールであるヒートパイプ。
【請求項4】 請求項1〜3のいずれかにおいて、栓がアルミニウムまたはアルミニウム合金であるヒートパイプ。
【請求項5】 請求項1〜4のいずれかにおいて、前記栓が圧入された前記注入路に接着剤を装填したことを特徴とするヒートパイプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2002−5585(P2002−5585A)
【公開日】平成14年1月9日(2002.1.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−307750(P2000−307750)
【出願日】平成12年10月6日(2000.10.6)
【出願人】(591186866)株式会社箕浦 (8)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣 (外1名)
【出願人】(500250644)颯爽工業株式会社 (2)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣