説明

ヒートポンプ式給湯システム

【課題】簡単な構成で利用側で断水状態となるのを防止する。
【解決手段】このヒートポンプ式給湯システム100は、貯湯タンク1aに設けられた温度センサ50と、当該温度センサ50により検出される温度に基づいて、ボールバルブ40a及び40bを制御するコントローラ60とを備えている。そして、このコントローラ60は、温度センサ50によって検出される温度が40℃より低くなった場合に出湯流路55aを閉鎖し且つ出湯流路55bを開放するようにボールバルブ40a及び40bを制御する。その後、温度センサ50によって検出される温度が48℃より高くなった場合に出湯流路55aを開放し且つ出湯流路55bを閉鎖するすようにボールバルブ40a及び40bを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の貯湯タンクを備えたヒートポンプ式給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
使用湯量が多い業務用として、複数の貯湯タンクを並列に接続したヒートポンプ式給湯システムが利用されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、1つの貯湯タンク及び1つの熱源ユニットを含むヒートポンプ式給湯機が2台並列に接続されるヒートポンプ式給湯システムが開示されている。この特許文献1に開示されるヒートポンプ式給湯システムでは、貯湯タンクのそれぞれに、底部に接続される給水路と、その給水路上に設けられるバルブと、貯湯タンクの残湯量を検出する温度センサと、当該温度センサの温度に基づいてバルブを制御するコントローラとが設けられている。そして、このヒートポンプ式給湯システムでは、各貯湯タンクにおいて、残湯量が著しく減少すると、各コントローラがバルブを閉状態に制御して、それ以上の出湯が規制される。
【特許文献1】特開2005−134063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に開示されるヒートポンプ式給湯システムでは、各貯湯タンクからの出湯が別々に制御される。従って、両貯湯タンクにおいて、残湯量が著しく減少した場合には、各コントローラが個別にバルブを閉鎖してしまい、利用側で断水状態になる恐れがある。また、このヒートポンプ式給湯システムでは、貯湯タンクからの出湯を、貯湯タンク毎に個別に行うため、貯湯タンク毎に温度センサとコントローラとが必要になっている。
【0004】
そこで、この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、簡単な構成で利用側で断水状態となるのを防止することが可能なヒートポンプ式給湯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明にかかるヒートポンプ式給湯システムは、第1貯湯タンクと、第2貯湯タンクと、第1貯湯タンクに付設され、第1貯湯タンクの底部側の水を加熱して当該第1貯湯タンクの頂部側へと返流する第1ヒートポンプ式給湯ユニットと、第2貯湯タンクに付設され、第2貯湯タンクの底部側の水を加熱して当該第2貯湯タンクの頂部側へと返流する第2ヒートポンプ式給湯ユニットと、第1貯湯タンクに設けられた第1出湯口と共通出湯流路とを接続する第1出湯流路と、第2貯湯タンクに設けられた第2出湯口と共通出湯流路とを接続する第2出湯流路と、第1出湯流路を開閉する第1開閉手段と、第2出湯流路を開閉する第2開閉手段と、第1貯湯タンクに設けられた温度検出手段と、温度検出手段により検出される温度に基づいて、第1開閉手段及び第2開閉手段を制御するコントローラとを備えている。
【0006】
このヒートポンプ式給湯システムでは、第1開閉手段及び第2開閉手段を共通のコントローラで制御するので、各開閉手段を別々のコントローラで個別に制御する場合と異なり、第1出湯流路及び第2出湯流路のいずれもが閉鎖されてしまうのを防止することが可能となる。これにより、利用側で断水状態となるのを防止することが可能となる。
また、このヒートポンプ式給湯システムは、1つの温度検出手段と1つのコントローラとで、両開閉手段を制御しているので、タンク毎に温度センサとコントローラとを設ける場合に比べて、システムの構成が簡単になる。
【0007】
第2の発明にかかるヒートポンプ式給湯システムは、第1の発明にかかるヒートポンプ式給湯システムにおいて、コントローラは、温度検出手段によって検出される温度に基づいて、第1出湯流路及び第2出湯流路の一方を開放し且つ他方を閉鎖するように第1開閉手段及び第2開閉手段を制御する。
【0008】
このヒートポンプ式給湯システムでは、第1出湯流路及び第2出湯流路のいずれかが開放しているので、利用側で断水状態となるのを確実に防止することができる。
【0009】
第3の発明にかかるヒートポンプ式給湯システムは、第1又は第2の発明にかかるヒートポンプ式給湯システムにおいて、第1出湯口は、第1貯湯タンクの底部よりも頂部側に配置され、温度検出手段は、第1出湯口と同じ高さに配置された温度センサを含んでいる。
【0010】
このヒートポンプ式給湯システムでは、温度センサは第1貯湯タンクから出湯される水の温度とほぼ同一の温度を検出するので、第1出湯口から出湯される水の温度に基づいて、第1貯湯タンクからの出湯を制御することができる。
【0011】
第4の発明にかかるヒートポンプ式給湯システムは、第3の発明にかかるヒートポンプ式給湯システムにおいて、コントローラは、温度センサによって検出される温度が第1温度より低い場合に第1出湯流路を閉鎖し且つ第2出湯流路を開放すると共に、温度センサによって検出される温度が第1温度以上の第2温度より高い場合に第1出湯流路を開放し且つ第2出湯流路を閉鎖する。
【0012】
このヒートポンプ式給湯システムでは、温度センサによって検出される温度が第1温度より低い場合に第1出湯流路を閉鎖し且つ第2出湯流路を開放するので、第1貯湯タンク内の第1温度以上の水を使い切ることができる。そして、温度センサによって検出される温度が第2温度より高い場合に第1出湯流路を開放し且つ第2出湯流路を閉鎖するので、第2貯湯タンクから出湯を行っている間に、前記温度センサによって検出される温度が第2温度より高くなるまで第1貯湯タンク内の水を沸かし上げることができる。
【0013】
第5の発明にかかるヒートポンプ式給湯システムは、第1〜第4のいずれかの発明にかかるヒートポンプ式給湯システムにおいて、第1貯湯タンクと第2貯湯タンクとは同一形状であって、第1貯湯タンクの底部からの第1出湯口の高さと第2貯湯タンクの底部からの第2出湯口の高さとは同じである。
【0014】
このヒートポンプ式給湯システムでは、第1貯湯タンクと第2貯湯タンクとの最大貯湯量が同じになるので、第1貯湯タンクの残湯量と第2貯湯タンクの残湯量とのバランスを維持することが可能となる。
【0015】
第6の発明にかかるヒートポンプ式給湯システムは、第5の発明にかかるヒートポンプ式給湯システムにおいて、第1出湯口は第1貯湯タンクの側面に設けられ且つ第2出湯口は第2貯湯タンクの側面に設けられており、第1貯湯タンクの頂部に設けられた第3出湯口と他の共通出湯流路とを接続する第3湯流路と、第2貯湯タンクの頂部に設けられた第4出湯口と他の共通出湯流路とを接続する第4湯流路とを備えている。
【0016】
このヒートポンプ式給湯システムでは、貯湯タンクの側面に設けられる中温給湯に係る第1出湯流路及び第2出湯流路に第1開閉手段及び第2開閉手段が設けられるので、利用側(例えば、人が温湯を直接利用するシンク等)において安定して中温給湯が行われる。また、貯湯タンクの頂部に設けられる高温給湯に係る第3出湯流路及び第4出湯流路に開閉手段が設けられないため低温の水が供給される場合があるが、利用側(例えば、人が温湯を直接利用しない食器洗浄機)の負荷が大きくなるだけで、問題となる恐れはない。
【発明の効果】
【0017】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0018】
第1の発明では、各開閉手段を別々のコントローラで個別に制御する場合と異なり、第1出湯流路及び第2出湯流路のいずれもが閉鎖されてしまうのを防止することが可能となる。これにより、利用側で断水状態となるのを防止することが可能となる。また、この第1の発明では、1つの温度検出手段と1つのコントローラとで、両開閉手段を制御しているので、タンク毎に温度センサとコントローラとを設ける場合に比べて、システムの構成が簡単になる。
【0019】
また、第2の発明では、第1出湯流路及び第2出湯流路のいずれかが開放しているので、利用側で断水状態となるのを確実に防止することができる。
【0020】
また、第3の発明では、温度センサは第1貯湯タンクから出湯される水の温度とほぼ同一の温度を検出するので、第1出湯口から出湯される水の温度に基づいて、第1貯湯タンクからの出湯を制御することができる。
【0021】
また、第4の発明では、温度センサによって検出される温度が第1温度より低い場合に第1出湯流路を閉鎖し且つ第2出湯流路を開放するので、第1貯湯タンク内の第1温度以上の水を使い切ることができる。そして、温度センサによって検出される温度が第2温度より高い場合に第1出湯流路を開放し且つ第2出湯流路を閉鎖するので、第2貯湯タンクから出湯を行っている間に、前記温度センサによって検出される温度が第2温度より高くなるまで第1貯湯タンク内の水を沸かし上げることができる。
【0022】
また、第5の発明では、第1貯湯タンクと第2貯湯タンクとの最大貯湯量が同じになるので、第1貯湯タンクの残湯量と第2貯湯タンクの残湯量とのバランスを維持することが可能となる。
【0023】
また、第6の発明では、貯湯タンクの側面に設けられる中温給湯に係る第1出湯流路及び第2出湯流路に第1開閉手段及び第2開閉手段が設けられるので、利用側(例えば、人が温湯を直接利用するシンク等)において安定して中温給湯が行われる。また、貯湯タンクの頂部に設けられる高温給湯に係る第3出湯流路及び第4出湯流路に開閉手段が設けられないため低温の水が供給される場合があるが、利用側(例えば、人が温湯を直接利用しない食器洗浄機)の負荷が大きくなるだけで、問題となる恐れはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面に基づいて、本発明に係るヒートポンプ式給湯システムの実施形態について説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係るヒートポンプ式給湯システムの構成を示す模式図である。まず、図1を参照して、本実施形態に係るヒートポンプ式給湯システム100について詳細に説明する。
【0026】
ヒートポンプ式給湯システム100は、1つの貯湯タンク及び1つのヒートポンプ式給湯ユニットを含むヒートポンプ式給湯機A及びBが2台並列に接続されている。
【0027】
ヒートポンプ式給湯機Aは、図1に示すように、貯湯タンク1aと、当該貯湯タンク1aに付設され、貯湯タンク1aの底部側の水を加熱して貯湯タンク1aの頂部側へと返流するヒートポンプ式給湯ユニット2aとを備えている。本実施形態では、貯湯タンク1aに貯湯された温湯が、例えば飲食店の調理場等(図示省略)に設置されるシンクCや食器洗浄機Dに供給されるようになっている。
【0028】
貯湯タンク1aの底部には、給水口11a及び出水口12aが設けられている。この給水口11aには、給水源Eに接続される共通給水流路51の一方側に延びる給水流路51aから分岐した入水流路52aが接続されている。これにより、給水源Eから供給される市水が、共通給水流路51、給水流路51a及び入水流路52aを介して貯湯タンク1aの底部に導入される。また、出水口12aには、循環路53aの一方端が接続されている。そして、この循環路53a上には、循環ポンプ20a及び後述するヒートポンプ式給湯ユニット2aの水熱交換器22aが介設されている。
【0029】
また、貯湯タンク1aの頂部には、給湯口13a及び高温出湯口14aが設けられている。この給湯口13aには、循環路53aの他方端が接続されている。また、高温出湯口14aには、食器洗浄機Dに接続される共通出湯流路54から分岐した出湯流路54aが接続されている。これにより、貯湯タンク1a内の頂部側の温湯が出湯流路54a及び共通出湯流路54を介して食器洗浄機Dに供給される。
【0030】
また、貯湯タンク1aの側面には、中温出湯口15aが設けられている。この中温出湯口15aには、シンクCに接続される共通出湯流路55から分岐した出湯流路55aが接続されている。これにより、貯湯タンク1a内の中央部近傍の温湯が出湯流路55a及び共通出湯流路55を介してシンクCに供給される。なお、出湯流路55a上には、混合弁30aとボールバルブ40aとが介設されている。
【0031】
混合弁30aには、上記した出湯流路55aの他に、給水流路51aから分岐した入水流路56aが接続されており、中温出湯口15aから出湯された温湯を給水源Eから供給される水と混合することが可能となっている。これにより、シンクCにおいて、所望の温度に調節された温湯を供給することが可能となる。
【0032】
ボールバルブ40aは、混合弁30aの下流側に設けられており、混合弁30aにおいて所望の温度に調節された温湯が通過する出湯流路55aを開閉する。このボールバルブ40aは、後述するコントローラ60と有線又は無線により通信可能に接続されている。
【0033】
ヒートポンプ式給湯ユニット2aは、圧縮機21aと、水熱交換器22aと、電動膨張弁(減圧機構)23aと、空気熱交換器(蒸発器)24aとを順に接続して構成される冷媒回路を有している。すなわち、圧縮機21aの吐出管25aを水熱交換器22aに接続し、水熱交換器22aと電動膨張弁23aとを冷媒通路26aにて接続し、電動膨張弁23aと空気熱交換器24aとを冷媒通路27aにて接続し、空気熱交換器24aと圧縮機21aとを冷媒通路28aにて接続している。これにより、圧縮機21aが駆動すると、水熱交換器22aが循環路53aを流れる水を加熱する。また、空気熱交換器24aには、この空気熱交換器24aの能力を調整するファン29aが付設されている。
【0034】
上記のように構成されたヒートポンプ式給湯ユニット2aによれば、圧縮機21aを駆動させると共に、循環ポンプ20aを駆動させると、貯湯タンク1aの底部に設けられた出水口12aから貯溜水が流出し、これが循環路53aを流通する。そのとき、循環路53aを流通する水は、水熱交換器22aによって加熱され(沸き上げられ)、給湯口13aから貯湯タンク1aの頂部に返流される。このような動作を継続して行うことによって、貯湯タンク1aに高温の温湯を貯湯することができる。この場合、現状の電力料金制度は深夜の電力料金単価が昼間に比べて安価に設定されているので、この運転は、低額である深夜時間帯(例えば、23時から7時までの時間帯)に行うものである。すなわち、このヒートポンプ式給湯ユニット2aでは、電力の安価な深夜に貯湯タンク1aに温湯を貯湯しておき、昼間にこれを使用する。また、昼間の使用時に、貯湯タンク1内の残湯量が所定量以下になったときに、追い炊き運転を行って、湯切れを防止するようにしている。
【0035】
ヒートポンプ式給湯機Bの構成は、上記したヒートポンプ式給湯機Aと略同一であって、貯湯タンク1aと同一形状の貯湯タンク1bと、ヒートポンプ式給湯ユニット2aと同様の構成を有するヒートポンプ式給湯ユニット2bとを備えている。そして、貯湯タンク1bの底部に設けられる給水口11bには、共通給水流路51の他方側に延びる給水流路51bから分岐した入水流路52bが接続されると共に、出水口12bには、循環路53bの一方端が接続されている。そして、この循環路53b上には、循環ポンプ20b及び上記したヒートポンプ式給湯ユニット2bの水熱交換器(図示せず)が介設されている。また、貯湯タンク1bの頂部に設けられる給湯口13bには、循環路53bの他方端が接続されると共に、高温出湯口14bには、共通出湯流路54から分岐した出湯流路54bが接続されている。また、貯湯タンク1bの側面に設けられる中温出湯口15bには、共通出湯流路55から分岐した出湯流路55bが接続される。そして、出湯流路55b上には、混合弁30bとボールバルブ40bとが介設されている。このボールバルブ40bも、後述するコントローラ60と有線又は無線により通信可能に接続されている。
【0036】
また、本実施形態では、貯湯タンク1aには、温度センサ50が設けられている。この温度センサ50は、貯湯タンク1aの側面に設けられる中温出湯口15aと同じ高さに配置されており、中温出湯口15aから出湯される温湯の温度を検出している。また、上記したように、本実施形態のヒートポンプ式給湯機Aは、貯湯タンク1aの底部の貯留水を加熱して頂部に返流するものであるから、温度センサ50より頂部側の貯湯タンク1a内には、温度センサ50により検出される温度以上の温湯が存在し、温度センサ50より底部側の貯湯タンク1a内には、温度センサ50により検出される温度以下の温湯が存在する。なお、温度センサ50は、貯湯タンク1aのみに設置されており、貯湯タンク1bには設置されていない。
【0037】
また、本実施形態のヒートポンプ式給湯システム100は、上記した温度センサ50により検出される温度に基づいて、出湯流路55a及び出湯流路55bの一方を開放し且つ他方を閉鎖するようにボールバルブ40a及び40bを制御するコントローラ60を備えている。具体的には、このコントローラ60は、温度センサ50によって検出される温度が40℃より低い場合に、出湯流路55aを閉鎖し且つ出湯流路55bを開放するようにボールバルブ40a及び40bを制御すると共に、温度センサ50によって検出される温度が48℃より高い場合に、出湯流路55aを開放し且つ出湯流路55bを閉鎖するようにボールバルブ40a及び40bを制御する。
【0038】
図2は、図1に示したヒートポンプ式給湯システムのコントローラの制御方法を示したフローチャートである。図3及び図4は、貯湯タンク内の様子を模式的に示した図である。次に、図2〜図4を参照して、本実施形態に係るヒートポンプ式給湯システム100のコントローラ60の制御方法について詳細に説明する。
【0039】
まず、貯湯タンク1a及び1b内に温湯が満蓄になった状態では、コントローラ60は、ボールバルブ40aを開状態にすると共にボールバルブ40bを閉状態にする(ステップS1)。これにより、貯湯タンク1a内の温湯が、出湯流路55a及び共通出湯流路55を介してシンクCに供給される。そして、温湯の使用に伴って、図3に示すように、貯湯タンク1a内の温湯の温度が低下していくが、温度センサ50により検出される温度が40℃以上の間は(ステップS2:No)、コントローラ60は、ボールバルブ40aを開状態に維持すると共にボールバルブ40bを閉状態に維持し(S1)、貯湯タンク1aから出湯を継続する。
【0040】
そして、貯湯タンク1aに取り付けられる温度センサ50により検出される温度が40℃より低くなった場合には(ステップS2:Yes)、コントローラ60は、ボールバルブ40aを閉状態にすると共にボールバルブ40bを開状態にし(ステップS3)、温湯の出湯が出湯流路55aから出湯流路55bに切り換えられる。これにより、貯湯タンク1b内の温湯が、出湯流路55b及び共通出湯流路55を介してシンクCに供給される。この間、貯湯タンク1a側では、沸かし上げが行われている。そして、温湯の使用に伴って、図4に示すように、貯湯タンク1b内の温湯の温度が低下するが、温度センサ50により検出される温度が48℃以下の間は(ステップS4:No)、コントローラ60は、ボールバルブ40aを開状態に維持すると共にボールバルブ40bを閉状態に維持し(S3)、貯湯タンク1bから出湯を継続する。つまり、温度センサ50により検出される温度が48℃に回復するまでの間は、貯湯タンク1bから出湯が継続される。
【0041】
この際、温度センサ50により検出される温度が48℃に回復するまでの間に、貯湯タンク1bから低温の水が出湯される可能性があるが、ユーザの使用湯量、貯湯タンク1bの容量、第1温度(40℃)と第2温度(48℃)とのクリアランスを考慮すれば、シンクCにおいて低温の水が供給されてしまうのを抑制することが可能となる。
【0042】
そして、貯湯タンク1aに取り付けられる温度センサ50により検出される温度が48℃より高くなった場合には(ステップS4:Yes)、再びステップS1の処理が繰り返されて、コントローラ60は、ボールバルブ40aを開状態にすると共にボールバルブ40bを閉状態にする(ステップS1)。
【0043】
[本実施形態のヒートポンプ式給湯システムの特徴]
本実施形態のヒートポンプ式給湯システム100には、以下のような特徴がある。
【0044】
本実施形態のヒートポンプ式給湯システム100では、ボールバルブ40a及び40bを共通のコントローラ60で制御するので、両バルブを別々のコントローラで個別に制御する場合と異なり、出湯流路55a及び55bのいずれもが閉鎖されてしまうのを防止することができる。これにより、利用側で断水状態となるのを防止することができる。
【0045】
また、本実施形態のヒートポンプ式給湯システム100では、1つの温度センサ50と1つのコントローラ60とで、両ボールバルブ40a及び40bを制御しているので、タンク毎に温度センサとコントローラとを設ける場合に比べて、システムの構成が簡単になる。
【0046】
また、本実施形態のヒートポンプ式給湯システム100では、温度センサ50を中温出湯口15aと同じ高さに配置することによって、当該温度センサ50は貯湯タンク1aの中温出湯口15aから出湯される水の温度とほぼ同一の温度を検出するので、その中温出湯口15aから出湯される水の温度に基づいて、ボールバルブ40a及び40bを制御することができる。
【0047】
また、本実施形態のヒートポンプ式給湯システム100では、温度センサ50によって検出される温度が40℃より低くなった場合に出湯流路55aを閉鎖し且つ出湯流路55bを開放するので、貯湯タンク1a内の40℃以上の水を使い切ることができる。そして、温度センサ50によって検出される温度が48℃より高くなった場合に出湯流路55aを開放し且つ出湯流路55bを閉鎖するので、貯湯タンク1bから出湯を行っている間に、温度センサ50によって検出される温度が48℃より高くなるまで貯湯タンク1a内の水を沸かし上げることができる。
【0048】
また、本実施形態のヒートポンプ式給湯システム100では、貯湯タンク1a及び1bを同一形状にすることによって、貯湯タンク1aと1bとの最大貯湯量が同じになるので、貯湯タンク1aの残湯量と貯湯タンク1bの残湯量とのバランスを維持することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態のヒートポンプ式給湯システム100では、中温給湯に係る出湯流路55a及び55bにボールバルブ40a及び40bがそれぞれ設けられるので、人が温湯を直接利用するシンクCにおいて安定して中温給湯が行われる。また、高温給湯に係る出湯流路54a及び54b上にボールバルブを設けられないために、低温の水が供給される場合があるが、人が温湯を直接利用しない食器洗浄機Dの負荷が大きくなるだけで、問題となる恐れはない。
【0050】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0051】
例えば、上記実施形態では、中温給湯に係る出湯流路にボールバルブを設ける例について説明したが、本発明はこれに限らず、高温給湯に係る出湯流路にボールバルブを設けてもよい。また、中温給湯及び高温給湯に係る出湯流路のそれぞれにボールバルブを設けてもよい。
【0052】
また、上記本実施形態では、第1温度(40℃)と第2温度(48℃)とを固定値にする例について説明したが、当該第1温度と第2温度との差をユーザの利用態様などを加味した学習機能に基づいて逐次変化させてもよい。これにより、温度センサにより検出される温度が第2温度(48℃)に回復するまでの間(第1貯湯タンクにおいて沸かし上げを行う間)に、貯湯タンク1bから低温の水が出湯されてしまうのを抑制することが可能となる。また、第1温度と第2温度とを同じにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明を利用すれば、簡単な構成で利用側で断水状態となるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係るヒートポンプ式給湯システムの構成を示す模式図である。
【図2】図1に示したヒートポンプ式給湯システムのコントローラの制御方法を示したフローチャートである。
【図3】貯湯タンク内の様子を模式的に示した図である。
【図4】貯湯タンク内の様子を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0055】
100 ヒートポンプ式給湯システム
1a 貯湯タンク(第1貯湯タンク)
1b 貯湯タンク(第2貯湯タンク)
2a ヒートポンプ式給湯ユニット(第1ヒートポンプ式給湯ユニット)
2b ヒートポンプ式給湯ユニット(第2ヒートポンプ式給湯ユニット)
14a 高温出湯口(第3出湯口)
14b 高温出湯口(第4出湯口)
15a 中温出湯口(第1出湯口)
15b 中温出湯口(第2出湯口)
40a ボールバルブ(第1開閉手段)
40b ボールバルブ(第2開閉手段)
50 温度センサ(温度検出手段)
54 共通出湯流路(他の共通出湯流路)
55 共通出湯流路(共通出湯流路)
55a 出湯流路(第1出湯流路)
55b 出湯流路(第2出湯流路)
60 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1貯湯タンクと、
第2貯湯タンクと、
前記第1貯湯タンクに付設され、前記第1貯湯タンクの底部側の水を加熱して当該第1貯湯タンクの頂部側へと返流する第1ヒートポンプ式給湯ユニットと、
前記第2貯湯タンクに付設され、前記第2貯湯タンクの底部側の水を加熱して当該第2貯湯タンクの頂部側へと返流する第2ヒートポンプ式給湯ユニットと、
前記第1貯湯タンクに設けられた第1出湯口と共通出湯流路とを接続する第1出湯流路と、
前記第2貯湯タンクに設けられた第2出湯口と前記共通出湯流路とを接続する第2出湯流路と、
前記第1出湯流路を開閉する第1開閉手段と、
前記第2出湯流路を開閉する第2開閉手段と、
前記第1貯湯タンクに設けられた温度検出手段と、
前記温度検出手段により検出される温度に基づいて、前記第1開閉手段及び前記第2開閉手段を制御するコントローラとを備えることを特徴とする、ヒートポンプ式給湯システム。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記温度検出手段によって検出される温度に基づいて、前記第1出湯流路及び前記第2出湯流路の一方を開放し且つ他方を閉鎖するように前記第1開閉手段及び前記第2開閉手段を制御することを特徴とする、請求項1に記載のヒートポンプ式給湯システム。
【請求項3】
前記第1出湯口は、前記第1貯湯タンクの底部よりも頂部側に配置され、
前記温度検出手段は、前記第1出湯口と同じ高さに配置された温度センサを含んでいることを特徴とする、請求項1又は2に記載のヒートポンプ式給湯システム。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記温度センサによって検出される温度が第1温度より低い場合に前記第1出湯流路を閉鎖し且つ前記第2出湯流路を開放すると共に、前記温度センサによって検出される温度が前記第1温度以上の第2温度より高い場合に前記第1出湯流路を開放し且つ前記第2出湯流路を閉鎖することを特徴とする、請求項3に記載のヒートポンプ式給湯システム。
【請求項5】
前記第1貯湯タンクと前記第2貯湯タンクとは同一形状であって、
前記第1貯湯タンクの底部からの前記第1出湯口の高さと前記第2貯湯タンクの底部からの前記第2出湯口の高さとは同じであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒートポンプ式給湯システム。
【請求項6】
前記第1出湯口は前記第1貯湯タンクの側面に設けられ且つ前記第2出湯口は前記第2貯湯タンクの側面に設けられており、
前記第1貯湯タンクの頂部に設けられた第3出湯口と他の共通出湯流路とを接続する第3湯流路と、
前記第2貯湯タンクの頂部に設けられた第4出湯口と前記他の共通出湯流路とを接続する第4湯流路とを備えていることを特徴とする、請求項5に記載のヒートポンプ式給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−257618(P2009−257618A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104407(P2008−104407)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】