説明

ビスアゾ化合物、2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物、ビスアゾ化合物の製造方法、電子写真方式の感光体、画像形成装置およびプロセスカートリッジ

【課題】高速応答性ならびに安定性の高い感光体を得るための有機光導電体として有用なビスアゾ化合物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】下記一般式[A]で表されるビスアゾ化合物。
【化1】


(前記式[A]中、Ar1、Ar2はそれぞれ独立して、置換もしくは無置換のアリール基を表し、前記Ar1およびAr2の少なくとも1つが置換基を有する場合、炭素数1から4のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基から選択され、R1はアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子もしくはニトロ基を表し、R2はエチレン基又はビニレン基を表し、nは1から3の整数を表し、nが複数の場合、複数のR1は同一でも異なっていても良い。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定のビスアゾ化合物及びそれを製造するための中間体である新規な2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物に関する。更に詳しくは有機光導体として有用なビスアゾ化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ある種のアゾ化合物が、積層型感光体の電荷発生層に用いられる電荷発生顔料として、有効であることが知られている。ここでいう積層型感光体とは電子写真感光体に用いられる感光体であって、導電性支持体上に、光によって電荷担体を生成する能力を有する電荷発生顔料を、適切な方法(例えば真空蒸着、顔料溶液の塗布、あるいは樹脂溶液に顔料の微細粒子を分散した分散液の塗布など)により、薄層として電荷発生層を形成し、その上に電荷発生層で生成した電荷担体が効率良く注入され、しかもその移動を行う電荷輸送層(通常この電荷輸送層は電荷輸送物質と結着樹脂からなる)を積層して形成せしめた感光体である。
【0003】
この種の感光体に使用されているアゾ化合物として、例えば特許文献1及び特許文献2などに記載されているベンジジン系ビスアゾ化合物、あるいは特許文献3に記載されているスチルベン系ビスアゾ化合物などが知られている。
【0004】
しかしながら、従来のアゾ化合物を用いた積層型の感光体は一般的に感度が低いため、高速複写機用の感光体としては不十分である。そこでこの問題に対して改善を試みた特許文献4に記載されている正孔輸送性電荷物質を結合させたビスアゾ化合物などが知られているが、さらなる高感度化が必要である。
【特許文献1】特開昭47−37543号公報
【特許文献2】特開昭52−55643号公報
【特許文献3】特開昭52−8834号公報
【特許文献4】特開平8−209007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は電子写真感光体において有効な、特に先に述べた積層型感光体において有用なビスアゾ化合物及びそれを製造するための中間体である新規な2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、新規な2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物及びアニリン化合物を合成し、さらに中間体として新規なビスアゾ化合物を合成し、このものによって上記課題が達成されることを見出し、本発明に至った。
【0007】
即ち、請求項1から4の発明は、下記一般式[A]、に表されるビスアゾ化合物が提供され、特には、[I]に表されるビスアゾ化合物、及びそれを製造するための中間体である下記一般式[II]に表される2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物、また下記一般式[B]で表される2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物であることを特徴とする。
【0008】
【化1】

【0009】
(上記式[A]中、Ar1、Ar2はそれぞれ独立して、置換もしくは無置換のアリール基を表し、前記Ar1およびAr2が置換基を有する場合には、それらの置換基は、炭素数1から4のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基の中から選択される1つであり、各々同一でも異なっていてもよく、R1はアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子もしくはニトロ基を表し、R2はエチレン基(−CH2−CH2−)又はビニレン基(−CH=CH−)を表す。nは1から3の整数を表し、nが複数の場合、複数のR1はそれぞれ同一でも異なっていても良い。)
【0010】
【化2】

【0011】
(上記式[B]中、Ar1、Ar2はそれぞれ独立して、置換もしくは無置換のアリール基を表し、前記Ar1およびAr2の少なくとも1つが置換基を有する場合、炭素数1から4のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基であり、各々同一でも異なっていてもよく、R2はエチレン基又はビニレン基を表す。)
【0012】
【化3】

【0013】
(上記式[I]中、R2はエチレン基又はビニレン基を表し、R3は水素原子もしくはアルキル基を表す。)
【0014】
【化4】

【0015】
(上記式[II]中、R2はエチレン基又はビニレン基を表し、R3は水素原子もしくはアルキル基を表す。)
【0016】
また、請求項5記載の発明は、以下に示す一般式[III]で表されるビス(ジアゾニウム塩)化合物と、上記の2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物[II]または下記式[IV]の2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物とのいずれかの前記フェニルカルバモイルナフタレン化合物との反応物に、残りの前記フェニルカルバモイルナフタレン化合物[II]または[IV]を反応させることによって得ることができるビスアゾ化合物の製造方法であることを特徴とする。
【0017】
【化5】

【0018】
(上記式[III]中、Xはアニオン官能基を表す。)
【0019】
【化6】

【0020】
(上記式[IV]中、R1は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子もしくはニトロ基を表し、nが複数の場合R1はそれぞれ同一でも異なってもよい。)
【0021】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1または2に記載のビスアゾ化合物において、電子写真感光体の感光材料として用いることを特徴とする。
【0022】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1または2に記載のビスアゾ化合物を電化発生層内に有する電子写真方式の感光体であることを特徴とする。
【0023】
また、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の感光体を有する画像形成装置であることを特徴とする。
【0024】
また、請求項9に記載の発明は、感光体ドラムと、現像装置とを少なくとも有するプロセスカートリッジであって、画像形成装置本体に着脱自在に形成され、前記感光体ドラムは請求項8に記載の感光体ドラムであるプロセスカートリッジであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の新規な2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物並びにビスアゾ化合物は容易に製造できる。又、応用例からも明らかなように本発明のビスアゾ化合物は高速度複写機などに実質的な高感度電子写真感光体における電荷発生物質として極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明のビスアゾ化合物は以下のような化学式で表される。
【0027】
【化7】

【0028】
前記式[A]中、Ar1、Ar2はそれぞれ独立して、置換もしくは無置換のアリール基を表し、前記Ar1およびAr2が置換基を有する場合には、それらの置換基は、炭素数1から4のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基の中から選択される1つであり、各々同一でも異なっていてもよく、R1はアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子もしくはニトロ基を表し、R2はエチレン基(−CH2−CH2−)又はビニレン基(−CH=CH−)を表す。nは1から3の整数を表し、nが複数の場合、複数のR1はそれぞれ同一でも異なっていても良い。
【0029】
本発明のビスアゾ化合物としては、特に下記一般式[I]で表されるビスアゾ化合物を挙げることができる。
【0030】
【化8】

【0031】
前記式[I]中、R2はエチレン基(−CH2CH2−)又はビニレン基(−CH=CH−)を表し、R3はアルキル基を表す。
【0032】
上記一般式[I]で表されるビスアゾ化合物はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)やジメチルスルホキシド(DMSO)などの有機溶媒に、第1段階のカップリング反応に用いる前記一般式[II]で表される2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物を溶解しておき、これに前記一般式[III]で表されるビス(ジアゾニウム塩)化合物を添加し、必要によって酢酸ナトリウム水溶液や有機アミンにような塩基性物質を添加することにより、第1段階のカップリング反応を終了して得られる。この時の反応温度としては、たとえば約−20℃から約40℃の範囲が好ましい。
【0033】
また、本発明の一般式[II]で表される2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物は、下記一般式[V]で表されるアニリン化合物と、下記式[VI]で表される2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸とを反応させることによって得ることができる。
【0034】
【化9】

【0035】
(上記式[V]中、R2はエチレン基(−CH2−CH2−)又はビニレン基(−CH=CH−)を表し、R3は水素原子もしくはアルキル基を表す。)
【0036】
【化10】

【0037】
前記一般式[II]で表される2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物は、ベンゼン、トルエン、ジオキサンなどの有機溶媒に、上記式[VI]で表される2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸を溶解もしくは分散しておき、これに五塩化リン、三塩化リン、塩化チオニルなどのハロゲン化剤を添加することにより酸ハロゲン化合物とし、これを単離するか、もしくはそのまま前記一般式[V]で表されるアニリン化合物と反応させることにより得ることができる。
【0038】
本発明の前記一般式[I]で表されるビスアゾ化合物は前述のように、積層型の電子写真感光体の電荷発生物質として有用であるが、更に樹脂中に電荷発生物質と電荷輸送物質とを分散させた単層型の感光層を有する電子写真感光体における電荷発生物質として、又、樹脂中に光導電性物質を分散させた感光層を有する電子写真感光体における光導電性物質としても有用である。
【0039】
本発明の一般式[I]で表されるビスアゾ化合物は、下記一般式[III]で表されるビス(ジアゾニウム塩)化合物と、前記一般式[II]で表される2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物または下記一般式[IV]で表される2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物とを2段階に順次反応させるか、あるいは最初のカップリング反応によって得られる下記一般式[VII]または[VIII]のジアゾニウム塩化合物を単離した後、さらにそれぞれに対応する2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物を反応させることによって得ることができる。
【0040】
【化11】

【0041】
(上記式[III]中、Xはアニオン官能基を表す。)
【0042】
【化12】

【0043】
上記式[IV]中、R1は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基もしくはジアルキル基を表し、nが複数の場合R1はそれぞれ同一でも異なってもよい。
【0044】
【化13】

【0045】
上記式[VII]中、Ar1、Ar2は置換もしくは無置換のアリール基を表し、置換基を有する場合、そのAr1およびAr2の置換基は、炭素数1から4のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基から選択されるいずれかであり、各々の置換基は同一でも異なっていてもよく、R2はエチレン基(−CH2CH2−)又はビニレン基(−CH=CH−)のいずれかを表し、Xはアニオン官能基を表す。
【0046】
【化14】

【0047】
前記式[VIII]中、R1は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基もしくはジアルキルアミノ基を表し、nは水素原子以外の時に整数を表し、nが複数の場合R1はそれぞれ同一でも異なってもよく、Xはアニオン官能基を表す。
【0048】
第2段階のカップリング反応は、上記で得られた反応混合物に、更に第1段階のカップリング反応で用いたものとは異なる前記一般式[IV]で表される2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物を更に添加し、第1段階のカップリング反応と同様に必要によって酢酸ナトリウム水溶液や有機アミンのような塩基性物質を添加することにより完了させる。
【0049】
または、第1段階のカップリング反応混合物を、必要により水あるいは希塩酸などの酸性水溶液を添加(この際には十分に冷却を行い、反応によって生成している前記一般式[VII]または[VIII]のジアゾニウム塩化合物を分解させないようにする必要がある。好ましくは10℃以下で処理することが望ましい)し、一般式[VII]または[VIII]のジアゾニウム塩化合物を濾別して単離し、更にこのジアゾニウム塩化物と、第1段階のカップリング反応で用いたものとは異なる一般式[II]または[IV]で表される2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物とを、第1段階のカップリング反応と同様に反応させることによって完了する。
【0050】
いずれの方法によって行った反応混合物においても、反応終了後析出している結晶を濾別し、適切な方法により精製(例えば水あるいは有機溶剤の少なくとも1つ(水と有機溶剤との混合溶媒も含む)による洗浄、再結晶法など)することにより前記一般式[I]のビスアゾ化合物の製造は完了する。
【0051】
前記一般式[I]、[II]、[IV]、[V]、[VI]、[VII]、[VIII]におけるAr1、Ar2、R1およびR3の置換基としては、炭素数1から4のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基が挙げられ、これらのより具体例として、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、2−メチルヘプチル基が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が挙げられ、ハロゲン原子としてフッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、アリール基としてフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基が挙げられる。また、R2としてはエチレン基(−CH2CH2−)又はビニレン基(−CH=CH−)を挙げることができる。また、前記一般式[III]、[VII]及び[VIII]における下記一般式
【0052】
【化15】

【0053】
[4]はアニオン官能基を表すが、このアニオン官能基としては、例えばテトラフルオロボレート、パークロレート、ヨーデイド、クロライド、ブロマイド、サルフェート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、パーヨーデイド、p−トルエンスルホネート等が挙げられる。
【0054】
本実施形態のビスアゾ化合物[A]、たとえば前記式[I]で表される化合物は、感光体を帯電し一様に帯電された感光体上に画像を露光し得られた潜像をトナーにより現像を行うような電子写真方式の感光体に使用することができる。このような感光体は導電性支持体上に直接または下引き層を介して電荷発生層と電荷輸送層とを有する感光層が設けることが好ましい。このような感光体の電荷発生層に、本実施形態のビスアゾ化合物[A]で表される化合物である、たとえば前記式[I]で表される化合物を有することができる。このような感光体を有する画像形成装置も本実施形態に含まれる。このような画像形成装置では、少なくとも前記ビスアゾ化合物[A]、たとえば[I]で表される化合物を有する感光体をドラム状にしたたとえばトナーの色毎の感光体ドラムと、これらの(あるいはこの)感光体ドラムを帯電する帯電器と、この帯電器によって一様に帯電された感光体ドラム面上に潜像を形成するための光走査手段と、得られた潜像をトナーにより現像するための現像装置と、得られた現像を紙などの薄層の媒体に転写する転写手段と転写された現像と前記薄層の媒体とを定着する定着手段とを有して構成される。さらに転写後の感光体ドラム表面を清浄化するクリーナーを有することができる。なお、前記した感光体ドラムと、現像装置とを少なくとも有してカートリッジ体とし、さらにこのカートリッジ体には前記クリーナーを有していてもよい。このようなカートリッジ体は、前記した画像形成装置本体と着脱自在に構成するプロセスカートリッジとすることができる。
【0055】
以下、本実施形態を実施例によりさらに詳細に説明するが、本実施形態は、これら実施例に拘束されて解釈されるものではなく、本実施形態は、明細書等に開示された範囲に示されている。
【0056】
本実施形態の2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物及びそれの中間体として製造されるビスアゾ化合物は、上記の説明に従って容易に製造することができる。また本実施形態のビスアゾ化合物が電子写真用感光体において有効な材料であることを明らかにするために以下の実施例及び応用例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。なお実施例中、比は、重量比を表す。
【0057】
[実施例1]
(2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物の合成例)
2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸3.76g(20mmol)、N’、N’−ジフェニル−4'−(3−アミノフェネチル)−4−ビフェニルアミン8.81g(20mmol)を1,4−ジオキサン50mlに溶解し、室温下に三塩化リン1.37g(10mmol)を1,4−ジオキサン5mlで希釈した溶液を10分間かけ滴下し、3時間還流撹拌した。内容物を室温まで放冷し、これを氷水に開け炭酸ナトリウムを用いて中和を行った。生成している沈澱を濾別し、水洗し、次いでメタノール洗浄後、減圧加熱乾燥して薄茶色の粗結晶11.62g(収率95.2%)を得た。更にこれをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製処理(展開溶媒:トルエン/酢酸エチル=5/1)し、減圧濃縮後酢酸エチル/エタノール混合溶媒で再結晶して、無色結晶の下記構造式[1]の2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物7.94g(収率65.0%)を得た。融点は272.0−275.0℃であった。この上記構造式[1]である2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物の元素分析値を表1に示し、また赤外吸収スペクトル(KBr錠剤法)を図1に示す。なお本発明のナフタレン化合物は溶剤等に溶解しないため、NMRによる同定を行わなかった。
【0058】
【表1】

【0059】
【化16】

【0060】
[実施例2]
(ビスアゾ化合物の合成例)
2−ヒドロキシ−3−(2−クロロフェニル)カルバモイルナフタレン2.233g(7.5mmol)をジメチルホルムアルデヒド300mlに溶解し、室温で9−フルオレン−2,7−ビスジアゾニウムビステトラフルオロボレート3.058g(7.5mmol)を加えた。室温下に10分間撹拌した後、上記構造式[1]の2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物4.58g(7.5mmol)をジメチルホルムアルデヒド300mlに溶解させたものを加え、次いで酢酸ナトリウム三水和物4.082g(30mmol)を水25mlに溶解させたものを20分間かけて滴下し、2時間室温下に撹拌した。生成している沈殿を濾別し、80℃に加熱したジメチルホルムアルデヒド600mlで3回洗浄し、次いで水600mlで2回洗浄した。120℃で減圧乾燥し、下記構造式[2]のビスアゾ化合物5.88g(収率68.8%)を得た。融点は280℃以上であった。この上記構造式[2]のビスアゾ化合物の赤外吸収スペクトル(KBr錠剤法)を図2に示す。
【0061】
【表2】

【0062】
【化17】

【0063】
[応用例1]
実施例2で得られた構造式[2]のビスアゾ化合物7.5重量部と、ポリエステル樹脂(東洋紡績社製バイロン200)のテトラヒドロフラン溶液(固形分濃度0.5重量%)500重量部をボールミル中で粉砕混合し、得られた分散液をアルミニウム蒸着したポリエステルベース(導電性支持体)のアルミニウム面上にドクターブレードを用いて塗布し、自然乾燥して、厚さ約1μmの電荷発生層を形成した。
【0064】
この電荷発生層上に電荷輸送物質として1−フェニル−3−(4−ジエチルアミノスチリル)−5−(4−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン1重量部、ポリカーボネート樹脂(帝人社製パンライトK−1300)1重量部及びテトラヒドロフラン8重量部を混合溶解した溶液を、ドクターブレードを用いて塗布し、80℃で2分間、次いで120℃で5分間乾燥して厚さ約20μmの電荷輸送層を形成して積層型の感光体を作成した。
【0065】
次に、得られた感光体に静電複写紙試験装置((株)川口電気製作所製EPA8100型)を用いて暗所で約−6KVのコロナ放電を20秒間行って帯電させた後、更に20秒間暗所に放置して感光体の表面電位V0(V:ボルト)を測定した。次いで、タングステンランプによってその表面が照度4.5luxになるように光を照射し、光減衰によってV0が1/2になるまでの時間(sec)を求め、感光体の感度として半減露光量E1/2(lux/sec)を求めた。結果を表3に示す。
【0066】
[応用例2]
電荷輸送物質として、4’−ジフェニルアミノ−α−フェニルスチルベンに変えた以外は、応用例1と同様にして感光体を作成し、測定を行った。結果を表1に示す。
【0067】
[比較例1]
電荷発生物質として下記構造式[3]のビスアゾ化合物に変えた以外は、応用例1と同様にして感光体を作成し、測定を行った。結果を表1に示す。
【0068】
【化18】

【0069】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施例1で得られた本実施形態の2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物[1]の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。
【図2】実施例2で得られた本実施形態のビスアゾ化合物[2]の赤外吸収スペクトル図(KBr錠剤法)であり、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は透過度(%)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[A]で表されるビスアゾ化合物。
【化1】

(前記式[A]中、Ar1、Ar2はそれぞれ独立して、置換もしくは無置換のアリール基を表し、前記Ar1およびAr2の少なくとも1つが置換基を有する場合、炭素数1から4のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基から選択され、R1はアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子もしくはニトロ基を表し、R2はエチレン基又はビニレン基を表し、nは1から3の整数を表し、nが複数の場合、複数のR1は同一でも異なっていても良い。)
【請求項2】
下記一般式[I]で表されるビスアゾ化合物。
【化2】

(前記式[I]中、R2はエチレン基又はビニレン基を表し、R3はアルキル基を表す。

【請求項3】
下記一般式[B]で表される2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物。
【化3】

(前記式[B]中、Ar1、Ar2はそれぞれ独立して、置換もしくは無置換のアリール基を表し、前記Ar1およびAr2の少なくとも1つが置換基を有する場合、炭素数1から4のアルキル基、フェニルキ基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基またはピレニル基であり、各々同一でも異なっていてもよく、R2はエチレン基又はビニレン基を表す。)
【請求項4】
下記一般式[II]で表される2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物。
【化4】

(式[II]中、R2はエチレン基又はビニレン基を表し、R3は水素原子もしくはアルキル基を表す。)
【請求項5】
下記式[III]で表されるビス(ジアゾニウム塩)化合物と、請求項4に記載の2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物[II]または下記式[IV]の2−ヒドロキシ−3−フェニルカルバモイルナフタレン化合物とのいずれかの前記フェニルカルバモイルナフタレン化合物との反応物に、残りの前記フェニルカルバモイルナフタレン化合物[II]または[IV]を反応させることを特徴とするビスアゾ化合物の製造方法。
【化5】

(前記式[III]中、Xはアニオン官能基を表す。)
【化6】

(式[IV]中、R1は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子もしくはニトロ基を表し、nが複数の場合R1はそれぞれ同一でも異なってもよい。)
【請求項6】
電子写真感光体の感光材料として用いることを特徴とする請求項1または2に記載のビスアゾ化合物。
【請求項7】
請求項1または2に記載の化合物を電荷発生層内に有することを特徴とする電子写真方式の感光体。
【請求項8】
請求項7に記載の感光体を有する画像形成装置。
【請求項9】
感光体ドラムと、現像装置とを少なくとも有するプロセスカートリッジであって、画像形成装置本体に着脱自在に形成され、前記感光体ドラムは請求項8に記載の感光体のドラムであることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−137947(P2008−137947A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325805(P2006−325805)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】