説明

ビスフェノールA誘導体を含有するHIF阻害剤

【課題】従来のビスフェノールAよりもHIF阻害活性に優れ、好ましくはさらに安全性の高いHIF阻害剤を提供する。
【解決手段】以下の式(3)で表されるビスフェノールA誘導体、その薬理上許容される塩又はその薬理上許容されるエステルを含有するHIF阻害剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスフェノールA誘導体を含有するHIF阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
低酸素応答(誘導)因子(HIF)は細胞への酸素供給が不足した際に誘導されるタンパク質であり、様々な血管新生因子や細胞遊走因子を誘導する転写因子として機能する。HIFの一種であるHIF-1(hypoxia-inducible factor 1)は、HIF-1αとβという二種のサブユニットからなるヘテロ二量体であり、造血因子エリスロポイエチン(EPO)、血管内皮増殖因子VEGF(vascular endothelial growth factor)、各種解糖系酵素及びグルコース輸送タンパク質等の、いわゆる低酸素応答にかかわる様々な遺伝子の発現を転写レベルで制御する。
【0003】
この発現制御は、次のような機序で起こるとされている。HIF-1αは通常不安定であり、通常酸素分圧下ではユビキチン化−プロテアゾーム系により分解される。ところが、低酸素環境下ではHIF-1αはユビキチン化されなくなり、さらに分子シャペロンであるHsp90(heat shock protein 90)と会合することにより安定化される。続いて、HIF-1αは細胞核内に移行し、そこでβサブユニット等と会合した形となり、標的遺伝子のHRE(hypoxia responsive element)と呼ばれるDNA領域に結合することによって発現誘導が起こる。HIF-2αは、アミノ酸配列がHIF-1αと48%相同性を有し、HIF-1αが全身の組織に広く発現しているのに対し、主に肺や上皮細胞において発現している。HIF-2αもHIF-1βとヘテロ2量体を形成する。
【0004】
発症により低酸素状態になる疾患(低酸素関連疾患)において、HIFがその病態を悪化させることが知られている。例えば、低酸素環境下にある癌病巣においてHIFがVEGF等の血管新生因子誘導を介して血管を新生し、血流を増やすことにより癌細胞を低酸素状態から脱出させて増殖を継続させる作用を示すこと等が知られている。その他にも、低酸素環境下にある慢性関節リウマチ炎症巣においてもHIF-1がTh1及びTh2等のサイトカインの産生を増強することにより炎症を増強させる可能性が指摘されている。そして、HIF活性を抑制することにより、免疫細胞であるリンパ球の寿命や機能を制御し、ひいては自己免疫性関節炎の発症を抑制し得ることが報告されている。
【0005】
以下の式(1)で表されるビスフェノールA(BPA)を低酸素環境下で癌細胞に与えると、HIF-1αの分解が促進され、低酸素環境下で通常みられるEPO遺伝子の転写と発現促進が阻害されることが報告されている。このビスフェノールAによるHIF-1阻害活性は、HIF-1α-Hsp90複合体からHIF-1αを解離させて、不安定化させることにより引き起こされていることが報告されている。
【0006】
【化1】

【0007】
ビスフェノールAの二つの水酸基を両方ともメチル化した以下の式(2)で表されるジメチルビスフェノールAもビスフェノールAよりは若干弱いが、ほぼ同程度のHIF阻害活性を持つことが報告されている。一方、ビスフェノールAのメチル基の一方を脱離した化合物は、一応HIF阻害活性を持つが、ビスフェノールAに比べかなり弱いことおよび両方のメチル基を脱離した化合物は実質HIF阻害活性を示さないことが報告されている。このことからビスフェノールAやその類縁化合物の場合、HIF阻害作用には少なくとも一つのメチル基の存在が必要であることが示唆されている。このように現在までにビスフェノールAよりも高いHIF阻害活性を有するビスフェノールA類縁体は報告されていない(非特許文献1)。
【0008】
【化2】

【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Biochemical and Biophysical Research Communications 318 (2004) 1006-1011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記HIF阻害活性を有することが知られているビスフェノールAよりも、よりHIF阻害活性に優れ、またより安全性の高いHIF阻害剤、とりわけHIF-1阻害剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく、広範囲の種々の化合物についてHIF阻害活性を検証した結果、ビスフェノールAの水酸基側はそのままに、メチル基側のみを特定の炭素数を有する炭化水素基等に置換したビスフェノールA誘導体が、予期せずビスフェノールAよりも高いHIF阻害活性を示すこと、またその中にはビスフェノールAよりも毒性が低く安全性が高いことを新たに見出すに至った。本発明はかかる知見に基づきさらに検討を重ねた結果完成されたものである。本発明は、下記に掲げる態様を包含するものである。
I.HIF阻害剤
[項I−1]
以下の式(3)で表されるビスフェノールA誘導体、その薬理上許容される塩又はその薬理上許容されるエステルを有効成分として含有するHIF阻害剤:
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、R1及びR2は、
A.同一又は異なって、(a)ヘテロ原子を有してもよい直鎖状、分枝状若しくは脂環式の、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基であって、炭素数及び該ヘテロ原子数の合計数が1〜8である脂肪族炭化水素基、(b)置換基を有していてもよい芳香族基、又は(c)水素原子であるか、
B.互いに結合して、ヘテロ原子を有してもよい炭化水素骨格からなる環状構造であって、炭素数及び該ヘテロ原子数の合計数が5又は6の環状構造を形成している
(ただし、R1及びR2が互いに同一であって、かつ水素原子又はメチル基である場合、並びにR1及びR2の一方が水素原子であって、かつ他方がメチル基である場合を除く。))。
[項I−2]
上記式(3)で表されるビスフェノールA誘導体が、式(3)中
C.R1が水素原子又はメチル基であって、かつ前記R2が置換基を有していてもよい炭素数2〜8のアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基であるか、
D.前記R1及びR2が互いに結合して、置換基を有していてもよいシクロヘキサンを形成しているものである、
項I−1記載のHIF阻害剤。
[項I−3]
前記ビスフェノールA誘導体(3)が、ビスフェノールB、ジメチルブチリデンジフェノール、エチルヘキシリデンジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン及びメチルベンジリデンビスフェノールからなる群より選択される少なくとも1種のビスフェノールA誘導体である、項I−1又は2記載のHIF阻害剤。
[項I−4]
エリスロポエチン(EPO)産生抑制剤、癌細胞増殖抑制剤、血管新生阻害剤又は低酸素応答抑制剤である、項I−1〜3のいずれか1項記載のHIF阻害剤。
[項I−5]
低酸素関連疾患治療剤である、項I−1〜4のいずれか1項記載のHIF阻害剤。
[項I−6]
上記低酸素関連疾患が、リウマチ、癌、又は炎症疾患である、項I−5に記載するHIF阻害剤。
[項I−7]
前記ビスフェノールA誘導体(3)がビスフェノールAよりも高いHIF阻害活性を有するものである、項I−1〜5のいずれか1項記載のHIF阻害剤。
[項I−8]
HIF-1阻害剤である、項I−1〜6のいずれか1項記載のHIF阻害剤。
[項I−9]
HIF-1α阻害剤である、項I−1〜6のいずれか1項記載のHIF阻害剤。
【0014】
II.HIF阻害剤の製造のための使用
[項II−1]
HIF阻害剤の製造のための上記の式(3)で表されるビスフェノールA誘導体、その薬理上許容される塩又はその薬理上許容されるエステルの使用。
[項II−2]
上記式(3)で表されるビスフェノールA誘導体が、式(3)中
C.R1が水素原子又はメチル基であって、かつ前記R2が置換基を有していてもよい炭素数2〜8のアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基であるか、
D.前記R1及びR2が互いに結合して、置換基を有していてもよいシクロヘキサンを形成しているものである、
項II−1記載の使用。
[項II−3]
前記ビスフェノールA誘導体(3)が、ビスフェノールB、ジメチルブチリデンジフェノール、エチルヘキシリデンジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン及びメチルベンジリデンビスフェノールからなる群より選択される少なくとも1種のビスフェノールA誘導体である、項II−1又は2記載の使用。
[項II−4]
前記HIF阻害剤が、エリスロポエチン(EPO)産生抑制剤、癌細胞増殖抑制剤、血管新生阻害剤又は低酸素応答抑制剤である、項II−1〜3のいずれか1項記載の使用。
[項II−5]
前記HIF阻害剤が、低酸素関連疾患治療剤である、項II−1〜4のいずれか1項記載の使用。
[項III−6]
上記低酸素関連疾患が、リウマチ、癌、又は炎症疾患である、項II−5に記載するHIF-1阻害剤。[項II−7]
前記HIF阻害剤が、ビスフェノールAよりも高いHIF阻害活性を有するものである、項II−1〜6のいずれか1項記載の使用。
[項II−8]
前記HIF阻害剤が、HIF-1阻害剤である、項II−1〜7のいずれか1項記載の使用。
[項II−9]
前記HIF阻害剤が、HIF-1α阻害剤である、項II−1〜7のいずれか1項記載の使用。
【0015】
III.HIF阻害方法
[項III−1]
低酸素関連疾患の患者に対して、上記の式(3)で表されるビスフェノールA誘導体、その薬理上許容される塩又はその薬理上許容されるエステルを有効量投与する工程を含むHIF阻害方法。
[項III−2]
上記の式(3)で表されるビスフェノールA誘導体が、式(3)中
C.R1が水素原子又はメチル基であって、かつ前記R2が置換基を有していてもよい炭素数2〜8のアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基であるか、
D.前記R1及びR2が互いに結合して、置換基を有していてもよいシクロヘキサンを形成しているものである、
項III−1記載のHIF阻害方法。
[項III−3]
前記ビスフェノールA誘導体(3)が、ビスフェノールB、ジメチルブチリデンジフェノール、エチルヘキシリデンジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン及びメチルベンジリデンビスフェノールからなる群より選択される少なくとも1種のビスフェノールA誘導体である、項III−1又は2記載のHIF阻害方法。
[項III−4]
エリスロポエチン(EPO)産生抑制方法、癌細胞増殖抑制方法、血管新生阻害方法又は低
酸素応答抑制方法である、項III−1〜3のいずれか1項記載のHIF阻害方法。
[項III−5]
低酸素関連疾患治療方法である、項III−1〜4のいずれか1項記載のHIF阻害方法。
[項III−6]
低酸素関連疾患の患者が、リウマチ患者、癌患者又は炎症疾患患者である、項III−1〜5のいずれか1項記載のHIF-1阻害方法。
[項III−7]
癌増殖抑制方法であり、かつ前記低酸素関連疾患の患者が放射線治療を受けた癌患者である項III−1〜6のいずれか1項記載のHIF阻害方法。
[項III−8]
前記ビスフェノールA誘導体(3)が、ビスフェノールAよりも高いHIF阻害活性を有するものである、項III−1〜7のいずれか1項記載のHIF阻害方法。
[項III−9]
HIF-1阻害方法である、項III−1〜8のいずれか1項記載のHIF阻害方法。
[項III−10]
HIF-1α阻害方法である、項III−1〜9のいずれか1項記載のHIF阻害方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明のHIF阻害剤を用いると、HIFが通常有するHIF活性を阻害することができる。そのHIF阻害活性は、従来からHIF阻害活性が知られているビスフェノールAよりも高い。また、低酸素ストレス応答時において通常みられるHIFを介した所定の遺伝子群の発現誘導を、本発明のHIF阻害剤を用いることにより阻害することができる。これらの遺伝子群の中には発症により低酸素状態になる疾患(低酸素関連疾患)の病態に関連するものが含まれるため、本発明のHIF阻害剤を用いることにより、例えばリウマチ、癌、及び炎症などの低酸素関連疾患を治療することができる。さらに本発明のHIF阻害剤によれば、そのHIF-1αの活性阻害を介して、血管新生抑制効果や癌細胞増殖抑制効果を発揮することができる。このため、本発明のHIF阻害剤は、とりわけ癌細胞に対する血管新生抑制剤及び癌細胞増殖抑制剤として有用である。
【0017】
また本発明によれば、ビスフェノールAよりもHIF阻害活性が高く、また毒性が低いビスフェノールA誘導体を有効成分とすることで、有効且つ安全性の高い医薬組成物、例えば血管新生抑制剤、癌細胞増殖抑制剤(抗癌剤)または低酸素関連疾患の治療剤として、ヒトを初めとする哺乳類に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ビスフェノールB(BPB)及びジメチルブチリデンジフェノール(DMBDP)が低酸素応答に与える影響を、EPO遺伝子のRNA転写量をRT-PCR法で測定することによって調べた結果を示す図面である。比較のためビスフェノールA(BPA)を用いた結果も同時に示している。Normoxiaは通常酸素処理を、Hypoxiaは低酸素処理をそれぞれ示す。図中、下段にEPO及びβ-actin(コントロール)のRT-PCR産物の電気泳動画像を示すが、その電気泳動写真を基にRNA転写量を定量化した結果を上段の棒グラフに示している。
【図2】BPB及びDMBDPが低酸素応答に与える影響を、HIF-1αのタンパク質発現量をウェスタンブロッティング法で測定することによって調べた結果を示す図面である。比較のためBPAを用いた結果も同時に示している。Normoxiaは通常酸素処理を、Hypoxiaは低酸素処理をそれぞれ示す。HIF-1α抗体及びβ-actin(コントロール)抗体を用いてウェスタンブロッティングを行った結果を示す電気泳動画像を上段に示す。その画像を基にタンパク質発現量を定量化した結果を下段の棒グラフに示す。
【図3】1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(BHCH)及びメチルベンジリデンビスフェノール(MBBP)が低酸素応答に与える影響を、EPO遺伝子のRNA転写量をRT-PCR法で測定することによって調べた結果を示す図面である。比較のためBPAを用いた結果も同時に示している。Normoxiaは通常酸素処理を、Hypoxiaは低酸素処理をそれぞれ示す。EPO及びβ-actin(コントロール)のRT-PCR産物の電気泳動画像を下段に示すが、その電気泳動画像を基にRNA転写量を定量化した結果を上段の棒グラフに示している。
【図4】BHCH及びMBBPが低酸素応答に与える影響を、HIF-1αのタンパク質発現量をウェスタンブロッティング法で測定することによって調べた結果を示す図面である。比較のためBPAを用いた結果も同時に示している。Normoxiaは通常酸素処理を、Hypoxiaは低酸素処理をそれぞれ示す。HIF-1α抗体及びβ-actin(コントロール)抗体を用いてウェスタンブロッティングを行った結果を示す電気泳動画像を上段に示す。その画像を基にタンパク質発現量を定量化した結果を下段の棒グラフに示す。
【図5】1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(BHCH)及びメチルベンジリデンビスフェノール(MBBP)(20μM及び50μM)について細胞毒性を調べた結果を示す図面である。比較のためビスフェノールA(BPA)を用いた結果も同時に示している。縦軸は、異常胚の発生率(%)を示す。横軸の化合物名の後ろの数字は、胚の曝露に使用した化合物の濃度(μM)を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
I.HIF阻害剤
本発明のHIF阻害剤は、所定のビスフェノールA誘導体、その薬理上許容される塩又はその薬理上許容されるエステル(以下、これらを総称して「ビスフェノールA誘導体類(3)」と称する場合がある)を有効成分として含有し、HIFを阻害する作用を有することを特徴とする。
【0020】
1.ビスフェノールA誘導体
本発明のビスフェノールA誘導体は、以下の式(3)で表される化合物である。
【0021】
【化3】

【0022】
(式中、R1及びR2は、
A.同一又は異なって(a)ヘテロ原子を有してもよい直鎖状、分枝状若しくは脂環式の、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基であって、炭素数及び該ヘテロ原子数の合計数が1〜8である脂肪族炭化水素基、(b)置換基を有していてもよい芳香族基、又は(c)水素原子であるか、
B.互いに結合して、ヘテロ原子を有してもよい炭化水素骨格からなる環状構造であって、炭素数及び該ヘテロ原子数の合計数が5又は6の環状構造を形成している
(ただし、R1及びR2が互いに同一であって、かつ水素原子又はメチル基である場合、並びにR1及びR2の一方が水素原子であって、かつ他方がメチル基である場合を除く。))。
【0023】
(1)(a)脂肪族炭化水素基、(b)芳香族基、又は(c)水素原子
まず、R1及びR2が、(a)ヘテロ原子を有してもよい直鎖状、分枝状若しくは脂環式の、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基であって、炭素数及び該ヘテロ原子数の合計数が1〜8である脂肪族炭化水素基である場合について説明する。
【0024】
本発明において「脂肪族炭化水素基」には、炭素数1〜8の直鎖状、分枝状若しくは脂環式のアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基が含まれる。好ましくはアルキル基である。
【0025】
炭素数1〜8の直鎖状または分枝状のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、n-オクチル基及び2-エチルヘキシル基等を挙げることができる。これらはいずれも好適に用いられるものの、より好ましくは、メチル基、イソブチル基、2-エチルヘキシル基である。
【0026】
炭素数1〜8の直鎖状または分枝状のアルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチルアリル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、2-メチル-2-ペンテニル基、1-ヘプテニル基、2-ヘプテニル基、3-ヘプテニル基、4-ヘプテニル基、5-ヘプテニル基、6-ヘプテニル基、1-オクテニル基及び2-オクテニル基等を挙げることができる。
【0027】
炭素数1〜8の直鎖状または分枝状のアルキニル基の具体例としては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-メチル-2-プロピニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-メチル-3-ブチニル基、1-ヘキシニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、4-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、2-メチル-4-へプチニル基、1-へプチニル基、2-へプチニル基、3-へプチニル基、4-へプチニル基、5-へプチニル基、6-へプチニル基、1-オクチニル基、2-オクチニル基、3-オクチニル基、4-オクチニル基、5-オクチニル基、6-オクチニル基及び7-オクチニル基等を挙げることができる。
【0028】
炭素数1〜8の脂環式の脂肪族炭化水素基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基を挙げることができる。制限されないが、好ましくはシクロヘキシル基である。
【0029】
本発明において「ヘテロ原子を有してもよい脂肪族炭化水素基」とは、上記炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基において、その炭素原子の少なくとも1つがヘテロ原子で置換されているもの(ヘテロ原子含有脂肪族炭化水素基)を意味する。ヘテロ原子とは、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子をいう。これらをそれぞれ、酸素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基及び硫黄含有炭化水素基という。ヘテロ原子の数は、1〜4の範囲で適宜選択することができるが、脂肪族炭化水素基中の炭素原子の数よりも少ないほうが好ましく、例えば1〜3、好ましくは1〜2を挙げることができる。
【0030】
これらの「脂肪族炭化水素基」または「ヘテロ原子含有脂肪族炭化水素基」は、置換基を有していてもよい。ここで置換基としては、疎水性を示すものが好ましい。置換基としては、限定されないが、例えば、フェニル基、及びナフチル基等の炭素数6〜14の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子(フッ素、塩素及びヨウ素)、トリフルオロメチル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、並びにカルバモイル基等が挙げられる。これらのうちフェニル基が好ましい。
【0031】
次に、R1及びR2が、(b)芳香族基である場合について説明する。
【0032】
本発明において「芳香族基」とは、炭化水素芳香族基及び複素芳香族基を意味する。
【0033】
芳香族基の具体例としては、例えば、フェニル基及びナフチル基等の炭素数6〜14の炭化水素芳香族基、並びにピリジル基、ピラゾリル基、キノリル基、イミダゾリル基及びベンズチアゾリル基等の、窒素、酸素及び硫黄原子から選択される少なくとも1種のヘテロ原子を1〜3個含有する5〜10員の複素芳香族基を挙げることができる。
【0034】
これらの「芳香族基」は置換基を有していてもよい。ここで置換基としては、疎水性を示すものが好ましい。置換基としては、限定されないが、例えば、ハロゲン原子(フッ素、塩素及びヨウ素)、前述のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基のうち炭素数が1〜4のもの、ハロゲン原子(フッ素、塩素及びヨウ素)で1〜3個置換されたアルキル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基及びカルバモイル基等が挙げられる。とりわけメチル基、エチル基及びn-プロピル基などの炭素数1〜3のアルキル基並びにトリフルオロメチル基が好ましい。
【0035】
最後に、R1及びR2が、(a)脂肪族炭化水素基、(b)芳香族基、及び(c)水素原子のいずれであっても共通する事項について説明する。
【0036】
R1及びR2が互いに同一である場合は両者を互いに区別する必要はないが、そうでない場合は、炭素数、又はヘテロ原子を有するときは炭素数及び該ヘテロ原子数の合計数がより少ないものをR1、よりを多いものR2とする。
【0037】
この場合、R2の炭素数、又はヘテロ原子を有する場合は炭素数及び該ヘテロ原子数の合計数は、2〜8であるが、下限は3又は4であってもよく、4が好ましい。また、炭素数又は前記炭素数とヘテロ原子数の合計数の上限は7又は6であってもよく、6が好ましい。炭素数又は前記合計数は2〜7であれば好ましく、2〜6であればより好ましく、4〜7であればさらに好ましく、4〜6であればさらにより好ましい。
【0038】
(2)互いに結合して形成された環状構造
次に、R1及びR2が、互いに結合して、ヘテロ原子を有してもよい炭化水素骨格からなる環状構造であって、炭素数及び該ヘテロ原子数の合計数が5又は6の環状構造を形成している場合について説明する。
【0039】
「ヘテロ原子を有してもよい炭化水素骨格からなる環状構造」には、炭化水素骨格からなる環状構造、及び当該環状構造において少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置換されているもの(ヘテロ原子含有環状構造)が含まれる。ヘテロ原子とは、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子をいう。これらをそれぞれ、酸素含有環状構造、窒素含有環状構造及び硫黄含有環状構造という。ヘテロ原子の数は、1〜4の範囲で適宜選択することができるが、環状構造を構成する脂肪族炭化水素基の炭素原子の数よりも少ないほうが好ましく、例えば1〜2、好ましくは1を挙げることができる。
【0040】
この場合、ヘテロ原子を有しない場合は炭素原子の数、又はヘテロ原子を有する場合は炭素原子の数と該ヘテロ原子の数の合計数が、5又は6である5員環又は6員環が好ましい。とりわけ6員環が好ましい。
【0041】
この場合、環状構造は、飽和結合のみからなっていてもよいし、不飽和結合を有していてもよい。
【0042】
環状構造の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びフェニル基等が挙げられる。好ましくはシクロヘキシル基である。
【0043】
かかる「ヘテロ原子を有してもよい炭化水素骨格からなる環状構造」は、置換基を有していてもよい。ここで置換基としては、疎水性を示すものが好ましい。置換基としては、限定されないが、例えば、前述のアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基のうち炭素数が1〜4のもの、フェニル基及びナフチル基等の炭素数6〜14の芳香族炭化水素基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基並びにカルバモイル基等が挙げられる。とりわけメチル基、エチル基及びn-プロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基、フェニル基、水酸基、カルボキシル基並びにアミノ基等が好ましい。
【0044】
本発明のビスフェノールA誘導体のうち公知のものについては後述の通り製造方法が既に知られている。したがって、公知でないビスフェノールA誘導体については、公知のビスフェノールA誘導体の製造方法に準じて製造することができる。
【0045】
(3)好ましいビスフェノールA誘導体
本発明のビスフェノールA誘導体の好ましい態様としては、R1が水素原子又はメチル基であって、かつR2が炭素数2〜8のアルキル基、又はフェニル基である化合物を挙げることができる。ここでR2で示されるアルキル基またはフェニル基は、それぞれ置換基を有していてもよいが、好ましくは置換基を有しないアルキル基またはフェニル基である。
【0046】
また別の好ましい態様として、R1及びR2が互いに結合して、シクロヘキサンを形成しているビスフェノールA誘導体も挙げることができる。ここで、R1及びR2から形成されるシクロヘキサンは、置換基を有していてもよいが、好ましくは置換基を有しないシクロヘキサンである。
【0047】
好ましい態様の具体例としては、下記式(4)に示すビスフェノールB(BPB)、下記式(5)に示すジメチルブチリデンジフェノール(DMBDP)、下記式(6)に示す1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(BHCH)、下記式(7)に示すメチルベンジリデンビスフェノール(MBBP)及び下記式(8)に示すエチルヘキシリデンジフェノール(EHDP)等を挙げることができる。毒性が低く安全性が高い点から好ましくは、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(BHCH)(6)及びメチルベンジリデンビスフェノール(MBBP)(7)である。
【0048】
ビスフェノールB(BPB)(4)は、R 1がメチル基であって、かつR2が置換基を有しない炭素数2のアルキル基(エチル基)であるビスフェノールA誘導体;ジメチルブチリデンジフェノール(DMBDP)(5)は、R 1がメチル基であって、かつR2が置換基を有しない炭素数4の分岐状アルキル基(イソブチル基)であるビスフェノールA誘導体;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(BHCH)(6)は、R1及びR2が互いに結合して、置換基を有しないシクロヘキサンを形成しているビスフェノールA誘導体;メチルベンジリデンビスフェノール(MBBP)(7)は、R1がメチル基であって、かつR2が置換基を有しないフェニル基であるビスフェノールA誘導体;エチルヘキシリデンジフェノール(EHDP)(8)は、R1が水素原子であって、かつR2が置換基を有しない炭素数7の分岐状アルキル基(2−エチルヘキシル基)であるビスフェノールA誘導体に相当する。
【0049】
【化4】

【0050】
【化5】

【0051】
【化6】

【0052】
【化7】

【0053】
【化8】

【0054】
これらの具体例は全て公知のビスフェノールA誘導体である。これら公知の誘導体は全て市販されており、BPB、BHCH、MBBP及びEHDPは東京化成工業株式会社から、DMBDPは和光純薬工業株式会社からそれぞれ入手できる。また、製造方法が知られているものについてはその方法にしたがって製造することができる。例えば、DMBDPについてはBeilstein 6(3)5523に製造方法が記載されており、これにしたがって製造できる。
【0055】
2.薬理上許容される塩又はエステルについての説明
本発明において「薬理上許容される塩」とは、医薬として使用され得る塩のことをいう。ビスフェノールA誘導体の薬理上許容される塩としては、公知の酸を本発明のビスフェノールA誘導体に付加して得られる酸付加塩およびアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、及びアンモニウム等の金属乃至有機アミンなどの塩基と形成される塩等が挙げられる。酸付加塩として、例えば、塩酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、及びp-トルエンスルホン酸塩等の有機酸塩等を挙げることができる。また、金属や塩基と形成される塩としては、例えば、ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩やアルミニウム塩等のアルカリ土類金属塩、及びアンモニウム塩等の無機塩;並びに有機アミン塩等の有機塩を挙げることができる。ビスフェノールA誘導体の薬理上許容される塩としては、塩酸塩及び硫酸塩などが好ましく、塩酸塩がより好ましい。
【0056】
本発明において「薬理上許容されるエステル」とは、医薬として使用され得るエステルのことをいう。本発明のビスフェノールA誘導体は、水酸基を有しているためエステル化できる。またR1及びR2に含まれる水酸基などの置換基においてエステルを形成していてもよい。本発明のビスフェノールA誘導体とオキソ酸との間で縮合反応を起こさせるなどの常法に従い、エステル化することができる。本発明のビスフェノールA誘導体またはその塩は、公知の方法により溶媒和物に変換して用いることもできる。溶媒和物は毒性のない、水溶性のものが好ましい。このような溶媒和物としては、例えば、水、アルコール(例、メタノール、エタノールなど)等の溶媒和物が挙げられる。また本発明のビスフェノールA誘導体は、生体内において酵素や胃酸などによる反応によりもとの本発明のビスフェノールA誘導体に変換されるプロドラッグの形で医薬として用いてもよい。このようなプロドラッグは慣用方法により得ることができる。例えば、水酸基がアシル化、アルキル化、リン酸化された化合物などが代表例として挙げられる。
【0057】
3.HIF阻害剤についての説明
本発明において「HIF阻害剤」とは、低酸素応答(誘導)因子であるHIF(hypoxia-inducible factor)の作用を阻害する剤をいう。当該HIFには、HIF-1及びHIF-2が含まれる。好ましくはHIF-1である。また当該HIFには、上記HIF-1を構成するサブユニットであるHIF-1α及びHIF-1βや、上記HIF-2を構成するサブユニットであるHIF-2α及びHIF-2βも含まれる。
【0058】
HIFの作用とは、限定されないが、特に低酸素環境下で、所定の遺伝子の発現を促進するHIFの作用をいう。そのような遺伝子としては、例えば、発症することで細胞または組織が低酸素状態になる疾患において、HIFの作用により発現誘導されており、症状を悪化させる一因となっている遺伝子を挙げることができる。
【0059】
なお、本発明において「低酸素関連疾患」とは、発症することにより細胞または組織が低酸素状態になる疾患のことをいう。低酸素関連疾患としては、限定されないが、例えば、リウマチ、癌及び炎症等を挙げることができる。これらの中でもとりわけ関節リウマチ、癌が好ましい。
【0060】
また、低酸素関連疾患において、当該低酸素状態になっている細胞または組織において発現が上昇しており、症状を悪化させる一因となっている前述の遺伝子を「低酸素関連疾患遺伝子」という。
【0061】
低酸素関連疾患遺伝子としては、例えば、EPO、VEGF、トランスフェリン、アルドラーゼA 、アルドラーゼC, エンドセリンー1、エンドグリン、インスリン様成長因子‐2(IGF-2)及びトランスフォーミング成長因子‐α等の遺伝子が挙げられる。これらの中でもEPO、VEGF及びインスリン様成長因子‐2(IGF-2)等の遺伝子は、癌細胞における血管新生あるいは細胞増殖にかかわる遺伝子として知られており、本発明の医薬用途(血管新生阻害剤、癌細胞増殖抑制剤)と密接に関連する。
【0062】
これら低酸素関連疾患に対してはHIF阻害剤の投与が有効であると考えられており、実際に低酸素関連疾患患者に対してHIF阻害剤を投与することにより治療効果を確認したことが報告されている。例えば、癌治療効果を確認した報告として、PNAS February 16, 2010, 107(7);PNAS December 16, 2008 vol. 105 no. 50 19579-19586;Cancer Chemotherapy and Pharmacology Volume 58, Number 6, pp. 776-784;Journal of the National Cancer Institute 2009 101(6):368-370;THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY VOL. 282, NO. 32, pp. 23572-23580, August 10, 2007;及びNature reviews cancer, 2003 -166.111.30.161等がある。
【0063】
本発明において、「HIF阻害活性」とは、HIFの作用を阻害する活性をいう。本発明において、ビスフェノールA誘導体類(3)が、HIF阻害作用が知られているビスフェノールAに比べて高いHIF阻害活性を有するか否かは、通常の生体内の酸素状態に比べて低酸素状態において、ビスフェノールA誘導体類(3)がEPOの発現及び産生をどの程度誘導するかをタンパク質レベルで測定し、この測定値がビスフェノールAの測定値と比較して高いか否かによって決定する。詳しい測定条件は実施例記載の条件に従う。
【0064】
ビスフェノールAよりも高い HIF阻害活性を有するビスフェノールA誘導体類(3)を有効成分とする本発明のHIF阻害剤は、HIF-1αの分解を促進する作用を有しており、その作用を通してHIF-1の形成を阻害し、これによりHIF-1本来の機能を生じさせない作用を示す。したがって、本発明のHIF阻害剤は、HIF-1阻害剤又はHIF-1α阻害剤であるともいえる。
【0065】
本発明のHIF阻害剤は、有効成分であるビスフェノールA誘導体類(3)に加えて必要に応じてさらに他の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては例えば、剤型に応じて製剤化のために必要となる製剤成分、保存安定のために必要となる保存安定成分、及びその他の薬効成分等が挙げられる。その他の薬効成分としては、例えば、抗炎症剤及び抗菌剤等が挙げられる。
【0066】
本発明のHIF阻害剤におけるビスフェノールA誘導体類(3)の含有割合は、投与形態、剤型、投与量及び投与頻度等に応じて決められる。
【0067】
本発明のHIF阻害剤の投与形態は、適用対象患部等に応じて適宜設定される。全身的投与であってもよいし、局所的投与であってもよい。全身的投与としては、経口投与又は非経口投与が挙げられる。さらに非経口投与としては、静脈内注射、皮下注射及び筋肉内注射等が挙げられる。局所的投与としては、皮膚、粘膜、鼻内又は眼内等に対する投与を挙げることができる。
【0068】
本発明のHIF阻害剤の剤型は、投与形態等に応じて適宜設定される。例えば、経口投与する場合、錠剤、顆粒、散剤、坐剤及びカプセル剤等の固形製剤や液状等が挙げられる。非経口投与する場合、クリーム剤、ゲル剤及び軟膏剤等の半固形状、並びに液剤及びローション剤等の液剤等が挙げられる。通常注射剤として投与するのが好ましい場合が多い。
【0069】
本発明のHIF阻害剤の投与量及び投与頻度は、投与形態、投与方法及び剤型の他、被投与者の状態、並びにHIF阻害活性の程度等に応じて適宜設定される。適切な投与量及び投薬法は、当業者に公知の通常の投与量決定技術に従い決定することができる。本発明のHIF阻害剤を癌細胞増殖抑制剤や抗癌剤として用いる際、放射線治療も併せて行うことが好適である場合が多い。この場合、放射線治療前ではなく、放射線治療直後に本発明のHIF阻害剤(または癌細胞増殖抑制剤や抗癌剤)を投与することが、癌細胞のアポトーシスをより促進するという点では好ましい。一回あたりの投与量は治療有効量であればよい。例えば、1日当たりの投与量の平均としては、ビスフェノールA誘導体類(3)換算で体重あたり0.01〜50mg/kgを挙げることができる。なお、「ビスフェノールA誘導体類(3)換算」とは、本発明のHIF阻害剤がビスフェノールA誘導体類(3)のみからなる場合は当該量のHIF阻害剤そのものの量を意味し、ビスフェノールA誘導体類(3)に加えて他の成分を含む場合は、当該HIF阻害剤に含まれるビスフェノールA誘導体類(3)の量に換算した量を意味する。
【0070】
また、本発明のHIF阻害剤は、例えば、1日当たり1回の頻度で投与しても、また1日当たり2回若しくは3回程度に分割して投与してもよい。また、HIF阻害剤を徐放性製剤とすることで、2日〜1週間あたりに1回の割合で2日〜1週間分の投与量を一度にまとめて投与してもよい。
【0071】
なお、ビスフェノールAの無毒性量が5mg/kg/日であることは確認されている。
本発明のHIF阻害剤は、対象疾患の治療、緩解、再燃抑制、延命及び緩和等の有用性を有するものである。患者QOLの観点からみてかかる有用性が毒性発生の危険性に勝るといえる投与条件で用いられる限り、本発明のHIF阻害剤の毒性の問題は無視できるといえる。しかし、本発明のHIF阻害剤の有効成分として、例えば後述する実験例2に示すように、ビスフェノールAよりも毒性の低いビスフェノールA誘導体類(3)を用いることにより、ビスフェノールAよりもより安全性の高いHIF阻害剤を提供することができ、対象疾患の治療、緩解、再燃抑制、延命及び緩和等の医薬用途に好適に使用することができる。
【0072】
II.HIF-1阻害剤の製造のための使用
本発明には、HIF-1阻害剤の製造のための上記の式(3)で表されるビスフェノールA誘導体、その薬理上許容される塩又はその薬理上許容されるエステル(ビスフェノールA誘導体類(3))の使用が含まれる。
【0073】
HIF-1阻害剤の製造は、I.3.で説明した通り行うことができる。ビスフェノールA誘導体類(3)及びHIF-1阻害剤についての説明は、それぞれI.1.及び2.に記載の通りである。
【0074】
III.HIF-1阻害方法
本発明には、低酸素関連疾患の患者に対して、上記の式(3)で表されるビスフェノールA誘導体、その薬理上許容される塩又はその薬理上許容されるエステル(ビスフェノールA誘導体類(3))を治療有効量投与する工程を含むHIF-1阻害方法が含まれる。当該HIF-1阻害方法は、別の角度から、EPO産生抑制方法、癌細胞増殖抑制方法、抗癌方法、血管新生阻害方法、低酸素応答抑制方法、低酸素関連疾患治療方法ということもできる。
【0075】
低酸素関連疾患、ビスフェノールA誘導体類(3)、治療有効量、投与方法及びHIF-1阻害方法についての説明はI.に記載の通りである。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を試験例及び実施例に基づき具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0077】
実験例1 HIF阻害活性の評価
従来ビスフェノールA自体がHIF-1阻害活性を有することが知られていた。このビスフェノールAのHIF-1阻害活性には、二つのメチル基が必要であることが報告されていた。さらに、ビスフェノールAの二つの水酸基を両方ともメチル基に置換したジメチルビスフェノールAがHIF-1阻害活性を有することも報告されていた(非特許文献1)。
【0078】
このように、活性を維持しつつビスフェノールAを改変するためには二つのメチル基ではなくて水酸基を修飾するというのが従来のアプローチであった。本発明者はこれに反して、従来活性維持に不可欠とされたビスフェノールAの二つのメチル基を修飾するというアプローチを採用した。
【0079】
そのアプローチに沿って、次のビスフェノールA誘導体のHIF阻害活性を評価対象とすることにした。
・ビスフェノールB(BPB):(販売者:東京化成工業(株))
・ジメチルブチリデンジフェノール(DMBDP)(販売者:和光純薬工業(株))
・1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(BHCH)(販売者:東京化成工業(株))
・メチルベンジリデンビスフェノール(MBBP)(販売者:東京化成工業(株))
これらのビスフェノールA誘導体の構造式は、前述の式(4)〜(7)に記載の通りである。
【0080】
[実験方法]
1.細胞培養
ヒト肝癌細胞(Hep3B)を用い、Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium(High Glucose) with L-Glutamine and Phenol Red (Wako)にFBS(10%)とペニシリン・ストレプトマイシン(Sigma, 1%)を加えたものを培地として用いた。培養条件は37℃、5% CO2/95% room airとした。
【0081】
2.低酸素処理
低酸素(Hypoxia)処理として、細胞を5%CO2/94%N2/1%O2で満たしたインキュベーターに移し、6時間後に回収した。同時に、細胞を5%CO2/95% room airで培養し、6時間後に回収したものを通常酸素(Normoxia)処理(コントロール)として用いた。
【0082】
3.被験化合物の添加
各被験化合物をNormoxia処理およびHypoxia処理を行う直前に添加した。使用した被験化合物は全て99%エタノールに溶解させた。添加濃度は50μM及び100μMとした。
【0083】
4.RT-PCR
Hep3B細胞を60mmシャーレに播種してNormoxiaまたはHypoxia条件で6時間培養し、冷却PBSで5度洗浄操作を行った後、ISOGEN(Nippon gene)をシャーレ一枚あたり400μL加えて細胞を回収した。その後、23Gの針を装着したテルモシリンジを30回通して細胞を破砕した。クロロホルム80μLを加え、vortexで撹拌し、13000rpmで15分間遠心した。水層を新しいエッペンチューブに移し、水層と等量のイソプロパノールを加えて撹拌し、13000rpmで10分間遠心した。得られた沈殿にDEPC水で作製した70%エタノールを加えて洗浄し、風乾した。得られたRNAをDNase(Amersham-Pharmacia)で37℃、30分間処理した。その後、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈殿を行い、RNAを精製した。精製したRNAを分光光度計(Beckman)で260nmおよび280nmの吸光度を測定し、総RNA量を定量した。
【0084】
RT-PCRは次のようにして行った。
<Reverse Transcriptase反応>
Reverse Aid M MuLvRT(Fermentas)を用いてRT反応を行った。上記の方法でDNase処理したRNA(1μg)を鋳型として用い、5pmolのRandom 9mer(TaKaRa)を加え、DEPC水により全量5.5μLにした後、70℃で5分間加温し、その後、氷上に放置した。さらに、5×転写バッファー(Fermentas)、10mM dNTPs、RNase Inhibitor(TaKaRa)、RTase(Fermentas)を加えて、25℃:15分、42℃:60分、70℃:10分で反応させた。
【0085】
<RT-PCR>
RT反応液1μLにプライマー(各10pmol)とGo Taq(Promega)、Nuclease Free Waterで全量を15μLとし、サーマルサイクラーを用いてPCR反応を行った。PCRの条件は以下の通りである。
(i) 次のサイクルをEPO検出時には30サイクル、β-actin検出時には18サイクル行った。
94℃ 2分→94℃ 30秒→55℃ 30秒
(ii)さらに、EPO検出時、β-actin検出時の別を問わず次のサイクルを行った。
72℃ 30秒→4℃ ∞
【0086】
以下に使用した各遺伝子のプライマー配列を示す。
EPO(487bp) [ACCESSION NM_000799]
Forward primer: 5’-ATGTGGATAAAGCCGTCAGTGG-3’(配列番号1)
Reverse primer: 5’-CTGGAGTGTCCATGGGACAG-3’ (配列番号2)
β-actin(275bp) [ACCESSION X00351]
Forward primer: 5’-CAAGAGATGGCCACGGCTGCT-3’ (配列番号3)
Reverse primer: 5’-TCCTTCTGCATCCTGTCGGCA-3’ (配列番号4)
【0087】
得られたPCR産物を泳動槽を用いて、TAEバッファー(400mM Tris、400mM 酢酸、10mM EDTA)及びEtBr(Wako)を加えた2%アガロースゲル(Nippon gene)をもちいて展開した後、ゲルをAE-6905H Image Save HR(Atto)を用いて可視化した。この画像をImage J(http://rsbweb.nih.gov/ij/)を用いて定量した。なお、定量化に際してはコントロールとして同時に測定したβ-actinのRNA転写量でEPO転写量を割った値を算出した。
【0088】
5.Western Blotting
<タンパク質回収およびサンプル化>
各被験化合物を暴露し、Hypoxia条件下もしくはNormoxia条件下で6時間培養したシャーレを冷却PBSで5回洗浄した後、ラバーポリスマンを用いて細胞のタンパク質をエッペンチューブに回収した。回収したタンパク質を超音波破砕機にてアウトプット1で5秒×3セット超音波破砕した。その後、Lowry法を用いてタンパク質の濃度を測定し、3×サンプルバッファー(150mM Tris-HCl pH 6.8、6% SDS、1.8% 2-mercaptoethanol、20% glycerol、1% BPB)が3倍希釈されるように加え、95℃で5分間処理し、SDS-PAGE分析を行った。
【0089】
<Western Blotting>
サンプル化を行ったタンパク質を用いてSDS-PAGEを行った(HIF-1α;7.5%ゲル、β-actin;10%ゲル)。泳動後、ポリアクリルアミドゲルを転写バッファー(100mM Tris、190mM Glycine、20%メタノール)に30分間置換した。その後、セミドライ式ブロッティング装置(ATTO)でニトロセルロース膜(BIO-RAD)に転写した。ブロッティングを行ったメンブレンをTPBS(PBS+0.05% Tween 20)で作製した5%スキムミルク溶液に45分間室温で置換しブロッキングを行い、メンブレンをTPBSで10分×3回洗浄した。CanGet Signal Solution 1(TOYOBO)にHIF-1αの1次抗体を加え(β-actinの1次抗体はTPBSに加えた)、メンブレンと4℃で一晩反応させた。次にメンブレンをTPBSで再度10分×3回洗浄した後、CanGet Signal Solution 2に2次抗体である抗ウサギIgG抗体を加えたもの(β-actinのメンブレンはTPBSに抗ウサギIgG抗体を加えたもの)とメンブレンを30分間室温で反応させた。PBSで10分×3回洗浄した後、4-Chlolo-1-Naphtol(Wako)6mgをPBS 10mLおよび100%メタノール2mLの溶液に溶かして作製した発色液にメンブレンを浸し、過酸化水素水20μLを加えて発色させた。この画像をNIHimageにより数値化した。なお、定量化に際してはコントロールとして同時に測定したβ-actinのRNA転写量でEPO転写量を割った値を算出した。
【0090】
[結果と考察]
BPB及びDMBDPを用いた結果を図1及び2に、BHCH及びMBBPを用いた結果を図3及び4にそれぞれ示す。なお、図1及び3はRT-PCR法により測定したRNA転写量を、図2及び4はウェスタンブロッティング法により測定したタンパク質発現量をそれぞれ示している。
【0091】
これらの結果から、低酸素(hypoxia)条件下においてEPOの発現が顕著に誘導されることが確認された(図1及び3)。さらに、この時HIF-1αのタンパク質は安定化されていることも確認された(図2及び4)。また、陽性コントロールであるBPA(100μM)の添加によって、低酸素条件下におけるEPOの誘導は、約50%に抑えられることも確認された(図1及び3)。
【0092】
一方、BPA誘導体であるBPB、DMBDP、BHCH及びMBBPを添加することにより、EPOの発現がBPAを同濃度添加したときよりも、有意に強く抑制されることが分かった(図1及び3)。したがって、これらのBPA誘導体は、BPAよりも高いEPO発現抑制能を有しているといえる。
【0093】
また、DMBDP、BHCH又はMBBPを添加したときにはHIF-1αが完全に分解されていることが分かった(図2及び4)。
【0094】
被験化合物として用いたこれらのBPB、DMBDP、BHCH及びMBBPは、全てBPAのメチル基側の疎水性を高くしたBPA誘導体である。以上の結果より、BPAのメチル基側の疎水性を高くすることで、BPAに比べて格段に高いHIF-1α分解活性(HIF-1阻害活性、HIF阻害活性)が得られることが分かった。
【0095】
実験例2 HIF阻害剤の安全性
実験例1でHIF阻害活性、特にHIF-1阻害活性(HIF-1α分解活性)を確認したビスフェノールA誘導体のうち、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(BHCH)とメチルベンジリデンビスフェノール(MBBP)について毒性を評価した。また比較のため、HIF阻害剤として公知のビスフェノールA(BPA)についても同様に毒性を評価した。
【0096】
[実験方法]
アフリカツメガエルの雌の背側尾部に絨毛性{じゅうもうせい}ゴナドトロピンを120ユニット注射し、排卵を誘導した。翌日、産卵した未受精卵に、精巣懸濁液を混ぜた。精巣懸濁液として、雄から摘出した精巣を0.1×MBS(0.5mM HEPES[pH7.5]に10mM NaCl, 0.2mM KCl, 0.1mMgCl2, 0.2mM CaCl2を含んだ溶液)に懸濁したものを用いた。卵の回転によって受精を確認後、1%チオグリコール酸ナトリウム溶液(0.1×MBSに1%チオグリコール酸ナトリウムを溶かしたもの)によって受精卵からゼリー層を完全に排除した。0.1×MBSによる洗浄を5回行い、チオグリコール酸ナトリウム溶液を除去した。1つのガラスシャーレに10mLの0.1×MBSを入れ、その中に最大20匹となるように受精卵を移して、14℃の恒温槽で飼育した。受精から34時間後、顕微鏡にて胚がステージ12 (神経胚期の開始時期)に育ったことを確認し、各被験化合物(BPA、 BHCH、MBBP)を含む溶液を10μL (溶液量の0.1%)、最終濃度が10μMまたは20μMとなるように0.1×MBSに添加し、飼育している溶液を交換した。各被験化合物は全てエタノールを溶媒とした。被験化合物の暴露時期はステージ12から22の神経胚期、約24時間とした。暴露期間中も14℃の恒温槽で飼育した。暴露後、0.1×MBSによる洗浄を5回行い、被験化合物を除去した。胚は引き続き、ステージ22から38までの尾芽胚期(約72時間)、0.1×MBSの中にいれて、14℃の恒温槽で飼育した。ステージ38において、胚の死亡数と異常な胚の数をカウントした。
【0097】
[結果と考察]
結果を図5に示す。なお、図5は、飼育した胚の全数に対する異常胚の割合を示す。また、図5中、「Control」は被験化合物で曝露しないで飼育した胚における異常胚の割合を示す。この結果からわかるように、本発明が対象とするビスフェノールA誘導体(BHCH及びMBBP)で曝露した胚は、ビスフェノールAで曝露した胚と比べて、異常胚の発生率が格段に低く、これから当該ビスフェノールA誘導体(BHCH及びMBBP)は、ビスフェノールAに比べて毒性が顕著に低いことが確認できた。
【0098】
BHCH及びMBBPはいずれもR1またはR2のいずれか一方に環状基を有するものであることから、毒性が低く、安全性が高いという観点から、式(3)で示すビスフェノールA誘導体のうち、R1またはR2のいずれか一方が、ヘテロ原子を有していてもよい脂環式の、置換基を有するか若しくは有しない脂肪族炭化水素基であるか;置換基を有するか若しくは有しない芳香族基であるか;またはR1とR2が互いに結合して、ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素骨格からなる環状構造を形成してなる、ビスフェノールA誘導体が好ましいと考えられる。
【配列表フリーテキスト】
【0099】
配列番号1及び2は、EPO遺伝子を増幅するために使用したフォーワードプライマー及びリバースプライマーの塩基配列を、また配列番号3及び4は、β−アクチン遺伝子を増幅するために使用したフォーワードプライマー及びリバースプライマーの塩基配列を、それぞれ意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(3)で表されるビスフェノールA誘導体、その薬理上許容される塩又はその薬理上許容されるエステルを含有するHIF阻害剤:
【化1】

(式中、R1及びR2は、
A.同一又は異なって、(a)ヘテロ原子を有してもよい直鎖状、分枝状若しくは脂環式の、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基であって、炭素数及び該ヘテロ原子数の合計数が1〜8である脂肪族炭化水素基、(b)置換基を有していてもよい芳香族基、又は(c)水素原子であるか、
B.互いに結合して、ヘテロ原子を有してもよい炭化水素骨格からなる環状構造であって、炭素数及び該ヘテロ原子数の合計数が5又は6の環状構造を形成している
(ただし、R1及びR2が互いに同一であって、かつ水素原子又はメチル基である場合、並びにR1及びR2の一方が水素原子であって、かつ他方がメチル基である場合を除く。))。
【請求項2】
上記式(3)で表されるビスフェノールA誘導体が、当該式(3)中
C.R1が水素原子又はメチル基であって、かつ前記R2が置換基を有していてもよい炭素数2〜8のアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基であるか、
D.前記R1及びR2が互いに結合して、置換基を有していてもよいシクロヘキサンを形成しているものである、
請求項1記載のHIF阻害剤。
【請求項3】
前記ビスフェノールA誘導体が、ビスフェノールB、ジメチルブチリデンジフェノール、エチルヘキシリデンジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン及びメチルベンジリデンビスフェノールからなる群より選択される少なくとも1種のビスフェノールA誘導体である、請求項1又は2記載のHIF阻害剤。
【請求項4】
エリスロポエチン(EPO)産生抑制剤、癌増殖抑制剤、血管新生阻害剤又は低酸素応答抑制剤である、請求項1〜3のいずれか1項記載のHIF阻害剤。
【請求項5】
低酸素関連疾患治療剤である、請求項1〜4のいずれか1項記載のHIF阻害剤。
【請求項6】
HIF-1阻害剤である、請求項1〜5のいずれか1項記載のHIF阻害剤。
【請求項7】
HIF-1α阻害剤である、請求項1〜5のいずれか1項記載のHIF阻害剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−195574(P2011−195574A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37587(P2011−37587)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(503092180)学校法人関西学院 (71)
【Fターム(参考)】