説明

ビタミン含有量が改変された果実を有するコショウ植物

本発明は、ビタミン含有量が改変された可食果実、特に高い含有量のビタミンEを含み、高い含有量のプロビタミンA、高い含有量のビタミンC及びこれらの組合せの少なくとも1つをさらに含む果実を有するコショウ植物を提供する。ビタミンE濃度の濃度は少なくとも約5mg/100g新鮮重量であり、望ましくない形質と連鎖している分子マーカーを欠いている植物を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミン含有量が改変された果実を有するコショウ植物、特に高いビタミンE含有量、並びに高いプロビタミンA含有量、高いビタミンC含有量及びこれらの組合せの少なくとも1つを有する新鮮な可食果実に関する。本発明はさらに、高いビタミン含有量という望ましい形質を保持しながら、望ましくない形質と連鎖している遺伝子マーカーを欠いているとして選択した植物に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ビタミンは、哺乳動物身体の正常な機能に必要不可欠な有機食用物質である。しかしながら、幾つかの例外を除いて、哺乳動物はビタミンを生成又は合成することができず、したがって、ビタミンは食品中に、又は栄養サプリメントとして供給されなければならない。消費されるべき特定のビタミンの量は年齢、性別及びビタミンの型に依存する。ビタミンの栄養所要量(RDA)は、各年齢段階及び性別集団中のほぼ全ての(97〜98%の)健康な個体の栄養要件を満たすのに充分な、平均的な1日当たりの食物摂取レベルである。高濃度の幾つかのビタミンは、健康問題を引き起こす可能性があるので、RDAを超える用量でビタミンを消費することは勧められていない。ビタミンの上限の許容レベルは、典型的には「一般的な集団中のほぼ全ての個体において悪い健康上の影響の危険性を呈する可能性がない栄養素の最大摂取を表す」レベルとして認められている(Institute of Medicine、Food and Nutrition board.Dietary Reference Intakes:VitaminC,VitaminE,Selenium、and Carotenoids.National Academy Press、ワシントン、DC、2000)。
【0003】
ヒトに関しては、果実及び野菜が、抗酸化ビタミン、ビタミンE、ビタミンA及びビタミンCを含めたビタミンの主な食品源である。
【0004】
ビタミンEとも呼ばれるトコフェロール化合物は、植物油中に見られる活性要素である。ビタミンEは8つの異なる化学形で存在し、その中でヒトにおいて最も有効な形はα−トコフェロールである。ビタミンEの活性は、この群の栄養物質の生理活性を指す。ビタミンEの活性を有する物質は、いずれもクロマン−6−オールの誘導体である。これらの化合物は、イソプレノイドCi−側鎖を有するトコール誘導体である。用語「トコール」は、2−メチル−2−(4’,8’,12’−トリメチルトリデシル)クロマン−6−オールを指す。α−、β−、γ−、及びδ−トコフェロールを含むこれらの化合物は、ビタミンEの活性に最も重要である。
【0005】
近年公開された前方視的健康試験は、ビタミンEサプリメントの摂取は、女性と男性の両方において冠状動脈性心疾患(CHD)の低い危険性と関係があることを実証している。例えばRimmら(NEJM、328、1450〜1456、1993)は、ビタミンEの1日当たりのサプリメントレベルが増大すると、CHDの危険性が有意に低下したことを示した。この試験は、ビタミンEの15〜25国際単位(IU)の現在のRDA(すなわち、10〜15mg/1日)は、ビタミンEの完全な防御利点を得るのに充分ではない可能性があることを示す。他の試験は、酸化ダメージに対する血漿LDLコレステロール及び細胞要素の保護、及び疾患に対して身体を保護するための正常な免疫機能の維持に関する、ビタミンEの有益な機能を示してきている。長期間健康な高齢者によって摂取される1日当たりのビタミンEの高用量(すなわち、4カ月間1日当たり800IU)さえも、副作用を引き起こさず、一般的な健康又は代謝機能に否定的な変化を引き起こさなかったことも、広範囲の一連の血液試験に基づいた対象試験において示されてきている(Meydaniら、Am.J.Clin.Nutr.68:311〜318、1998)。対照的に、T細胞介在性機能の有意な改善、及び血漿中のビタミンEレベルの有意な増大が記された。植物油、ナッツ、及び青葉野菜は、ビタミンEのよい供給源である。しかしながら、例えばマンゴーフルーツ又はブロッコリーの1食分によって与えられるビタミンEの量は、栄養所要量の約5〜8パーセントしか与えない。
【0006】
ビタミンA化合物のファミリーのうち、レチノールが最も活性があり、すなわち有用な形であり、それは、ビタミンAの他の活性形であるレチナール及びレチノイン酸に転換され得る。カロテノイドは、果実にその黄色から赤色を与える色素のファミリーである。プロビタミンAカロテノイドの中では、β−カロテンが、他のプロビタミンカロテノイド、例えばα−カロテン及びβ−クリプトキサンチンより効率良くレチノールに転換される。リコペン、ルテイン及びゼアキサンチンなどの他の知られているカロテノイドはビタミンAの供給源ではないが、しかしながらそれらは、強い抗酸化性及び抗発癌活性を有する重要な栄養素でもある。ビタミンAは骨の成長、細胞分裂及び細胞分化において重要な役割を果たす。ビタミンA、特にレチノールは、眼、気道、尿路及び腸管の表面内層の維持と関係があり、したがってこれらの内層を完全に保つことによって感染を予防する際に役割を有する。ビタミンAは、皮膚及び粘膜の完全性を保つため、並びに細菌及びウイルス感染を妨げるために近年使用されている。それが免疫系の制御を手助けすることも知られている。ビタミンAのRDAは、レチノール及びプロビタミンAカロテノイドの異なる活性を計算するためのレチノール活性当量(RAE)として記され、現在は年齢及び性別に応じて600〜900μgである。身体中のビタミンAの高い貯蔵レベル(ビタミンA過剰症)は、毒性症状をもたらす可能性がある。過剰量のビタミンAが原因である3つの主な悪影響:先天性異常、肝臓の異常、及び骨粗しょう症をもたらす可能性がある低い骨ミネラル密度が存在する。短期間で非常に多量の予備形成ビタミンAを消費した後に、毒性症状が生じる可能性もある。ビタミンAはレバー、全乳及び全卵などの動物性食品中に見られる。しかしながら、脂肪及びコレステロールの高い含有量のために、このような食品の多大な消費は勧められない。β−カロテンを含む暗色の野菜及び果実を消費することが、したがって好ましい。さらに、プロビタミンAカロテノイドのビタミンAへの転換は、身体中の貯蔵が完全であるとき減少し、これがしたがって貯蔵レベルのさらなる増大を制限し、ビタミンA過剰症を予防する。
【0007】
アスコルビン酸としても知られるビタミンCは、抗酸化剤としてのその役割だけには限らないがそれを含めた様々な理由で、適切な栄養摂取に必要不可欠である。多くの栄養物質は酸化によって破壊されるが、ビタミンCはそれ自体が酸化状態になることによって、これらの物質を保護することができる(Understanding Nutrition、294、Whitney and Rolfes Eds.6th Ed.、1993)。食品製造者はビタミンCを彼らの製品に加えて、食品を酸化から保護することが多いはずである。身体内においてビタミンCは、他のビタミン及びミネラルを酸化から保護する。例えば腸内では、ビタミンCは鉄を保護し、したがってその生物学的利用能を促進する。
【0008】
ビタミンCは、結合組織を含む繊維状構造タンパク質であるコラーゲンの形成、及びホルモンエピネフィリン及びチロキシンに転換されるアミノ酸を含めた、幾つかのアミノ酸の代謝に関与している。風邪及び感染に曝されることによって、ビタミンCの必要性が増大する。ビタミンCによって形成されるチロキシンは、身体が熱の生成を必要とするとき、例えば発熱中又は非常に寒い気候中に常に増大する代謝率を制御する。
【0009】
異なる国々がビタミンCに関する異なる1日当たりの要件を設定しているが、毎日約10mgはビタミンC欠乏症(壊血病)となるはずであることに、大部分が賛同している。1日当たり60mgでは、身体はさらなるビタミンC摂取に対する応答を止めるはずである。毎日100mgでは、全ての身体の組織が飽和状態であり、身体は過剰のビタミンCを排出し始める。米国内のビタミンCの栄養所要量(RDA)は、1日当たり60mgである。しかしながら、患者がちょうどある程度の生理的又は精神的ストレスを経ているか、毎日アルコールを消費する或いは喫煙している場合、より多くのビタミンCが必要とされる可能性がある。妊婦又は授乳中の女性も、胎児又は母乳に移動するその1日当たりの摂取量の割合のために、追加のビタミンCを必要とする。
【0010】
過剰のビタミンCは毒性であり、痙攣、悪心及び下痢を引き起こす可能性があり、糖尿病の存在を不明瞭にする可能性もある。毒性レベルは1日2gで始まる可能性がある。ビタミンCのよい供給源には柑橘系果実、ブロッコリー、カリフラワー、イチゴ、ジャガイモ、並びに腎臓及び肝臓などの臓器の肉がある。
【0011】
要約すると、食事においてビタミンA、C及びEを得ることは、良好な健康状態を保つためには必要不可欠であり、果実及び野菜はこれらのビタミンの好ましい供給源である。
【0012】
コショウは、その種であるCapsicum annum及びCapsicum frutescensを含むトウガラシ属に属しており、大部分の栽培されているコショウはそれに由来する。コショウはピーマンなどのアマトウガラシとして、ハラペニョトウガラシなどの刺激性チリペッパーとして、(タバスコソースを作製するために使用される)タバスコトウガラシとして、及びパプリカなどの様々な色の乾燥粉末の供給源として、世界中で栽培及び使用されている。コショウ果実、特に赤色及びオレンジ色の果実を有するコショウ果実は、プロビタミンAカロテノイドを含めたカロテノイドの供給源として知られている。ビタミンCは充分な量で存在してもよいが、高いビタミンC含有量を含む果実は典型的には刺激性である。可食果実を有するコショウ変種では、ビタミンE含有量は1食当たりのRDAをごく一部分しか与えない。高いビタミン含有量は典型的には、コショウ果実の可食部分である薄い果皮を有する刺激性果実と関係がある。このような刺激性果実は、少量の1食分でスパイスとして新鮮な状態で消費され、消費することができるビタミン含有量は劇的に減少する。望ましくない可食果実である刺激性及び薄い果皮という形質は、交配によって除去することは難しく、刺激性変種から市販レベルでの高いビタミンE含有量を有する果実を作出することができる植物の開発は、冗長且つ困難であろうことは、したがって予想される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、刺激性形質及び他の望ましくない形質を欠きながら、高い含有量のビタミンE、及びプロビタミンA、ビタミンCの少なくとも1つを有する果実を有するコショウ植物を有することは、非常に有利であるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、改善されたビタミン含有量を有するコショウ果実の必要性を述べる。したがって本発明は、現在市販されているコショウ品種の可食果実と比較してビタミン含有量が改変された可食性の甘い果実を有する、市販用に生長させるのに適したコショウ植物を提供する。より詳細には本発明は、現在市販されているコショウ品種と比較してビタミン含有量が改変された果実を有するコショウ植物であって、果実が高いビタミンE含有量を含み、高いプロビタミンA含有量、高いビタミンC含有量又はこれらの組合せの少なくとも1つをさらに含み、ビタミンEの濃度が少なくとも5mg/100g新鮮重量(FW)である、コショウ植物を提供する。本発明の果実は、非刺激性であり厚い果皮を有するものをさらに選択する。このような選択は、例えばDNAマーカーを使用して実施する。
【0015】
好ましくは、コショウ果実は高い含有量の全3種の必須ビタミンを含み、プロビタミンA濃度は少なくとも約3mg/100gFWであり、ビタミンCの濃度は少なくとも約200mg/100gFW、好ましくは約200mg/100gFW〜約500mg/100gFWの範囲である。コショウ果実は、少なくとも70mg/100gFWの高い含有量の合計カロテノイドを含むことがさらに好ましい。本発明の植物は安定した真の近交系の形であってよく、或いは雑種、交配種などを含めたより多様な物質としての形であってよく、前に記載したように、これらはいずれもビタミン含有量が改変された果実を与える。
【0016】
本発明はさらに、本発明の植物の種子、種子から生長した植物、それらの子孫、植物によって作出された果実、これらに由来する植物の一部分、及びこれらの作出法に関する。本発明はさらに、本発明の植物によって作出された優性の高ビタミンコショウ果実から得た作出物に関する。
【0017】
一態様によれば本発明は、現在市販されているコショウ品種の可食果実と比較してビタミン含有量が改変された果実を有するコショウ植物であって、果実が高いビタミンE含有量を含み、高いプロビタミンA含有量、高いビタミンC含有量及びこれらの組合せの少なくとも1つをさらに含み、ビタミンEの濃度が少なくとも約5mg/100gFWである、コショウ植物を提供する。特定の実施形態によれば、果実は非刺激性であり厚い果皮を有する。
【0018】
一実施形態によれば、果実は少なくとも約7mg/100gFWのビタミンE、好ましくは少なくとも約9mg/100gFW、より好ましくは少なくとも約11mg/100gFWのビタミンEを含む。
【0019】
別の実施形態によれば、本発明は少なくとも約5mg/100gFWのビタミンEを含み、プロビタミンAをさらに含む果実を有するコショウ植物を提供する。なお別の実施形態によれば、本発明は少なくとも約5mg/100gFWのビタミンEを含み、ビタミンCをさらに含む果実を有するコショウ植物を提供する。さらなる実施形態によれば、本発明は少なくとも約5mg/100gFWのビタミンEを含み、高い含有量のプロビタミンA及びビタミンCをさらに含む果実を有するコショウ植物を提供する。特定の実施形態によれば、果実は非刺激性であり厚い果皮を有する。
【0020】
一実施形態によれば、プロビタミンA濃度は少なくとも約3mg/100gFW、好ましくは少なくとも約4mg/100gFW、より好ましくは少なくとも約6mg/100gFWであり、且つビタミンCの濃度は少なくとも約200mg/100gFW、好ましくは約200mg/100gFW〜約500mg/100gFWの範囲である。
【0021】
いっそうさらなる実施形態によれば、本発明のコショウ植物によって作出された果実は、高い含有量の合計カロテノイドをさらに含む。一実施形態によれば、合計カロテノイド濃度は少なくとも約70mg/100gFWである。
【0022】
本明細書で使用する用語「改変されたビタミン含有量」は、前に記載した高いビタミンE濃度、並びにプロビタミンA及びビタミンC、及びこれらの組合せの少なくとも1つの高い濃度を指し、コショウ果実、特に非刺激性であり厚い果皮を有する現在市販されている新鮮な可食コショウ果実における、これまでに知られているビタミン濃度と比較して、これらの濃度は改変されている。このような可食コショウ果実における知られているビタミン濃度は、約1.5〜3.0mg/100gFWのビタミンE濃度、約1.0mg/100gFWのプロビタミンA、及び約100mg/100gFWのビタミンCである。好ましい実施形態では、このビタミンE、プロビタミンA及び/又はビタミンCの濃度は、現在市販されている可食コショウ果実において見られるビタミンE、プロビタミンA及び/又はビタミンCの濃度と比較して高い。
【0023】
本明細書で前に記載したように、ビタミンEの天然供給源は、1日当たりの用量に必要とされるビタミンのわずか一部分しか含まない。果実は知られている多量のビタミンEの供給源に含まれず、このような供給源は典型的にはカロリーが高く、したがって健康食にはあまり勧められない。今日現在、必要量のビタミンEを得るには、天然形と同一でなく天然形と比較して活性が低い合成α−トコフェロールを補った食品を消費することが必要である。
【0024】
これまで、高濃度のビタミンC及びビタミンEは、それぞれ刺激性のコショウ果実及びパプリカ系果実においてのみ見られた、これらは少量の1食分においてのみ働く可能性があり、或いは典型的には生鮮品として消費されず、したがってわずかな少ない割合のRDAを与える。
【0025】
本発明は、生鮮品用可食コショウ果実を有するコショウ植物であって、現在市販されているコショウ果実において見られるこれらのビタミンの濃度と比較して、果実が高濃度のビタミンEを含み、高濃度のプロビタミンA、特にβ−カロテン、及び抗酸化ビタミンCの少なくとも1つをさらに含むコショウ植物を与えることによって、これらの制約に答える。好ましくは、果実は高い含有量の合計カロテノイドも含む。
【0026】
特定の実施形態によれば、本発明は、高刺激性形質と同時分離するDNA配列を欠いているコショウ植物を提供する。一実施形態によれば、DNA配列はDNA断片の増幅用の鋳型であり、この場合DNA断片は刺激性に関する分子マーカーとして使用され、したがってこのDNAマーカーを欠いている植物は非刺激性である。一実施形態によれば、高刺激性と同時分離するDNA配列は、配列番号3で示されるポリヌクレオチド配列又はその断片を含む。現在好ましい一実施形態によれば、刺激性と同時分離するDNA配列は、配列番号1で示されるポリヌクレオチド配列を有する第1プライマー、及び配列番号2で示されるポリヌクレオチド配列を有する第2プライマーを使用するDNA断片の増幅用の鋳型である。生成するDNA断片は、配列番号3で示されるヌクレオチド配列を有する約700bpである。したがって、現在好ましい一実施形態によれば、本発明の植物は配列番号3を有するDNA断片を欠いている。
【0027】
特定の実施形態によれば、本発明の植物は100gの平均重量を有する果実を作出する。ビタミンEのRDAは、今日現在10〜15mgである。したがって、本発明の1つの100gのコショウ果実は、ビタミンEのRDAの少なくとも25%、好ましくはRDAの55%までを含み、これは現在市販用に生産されているアマトウガラシ果実によって与えられる約3〜5倍のビタミンE量である。本発明の果実は刺激性を欠くので、1食分は約100gの少なくとも1つの果実である。
【0028】
別の態様によれば本発明は、ビタミン含有量が改変された果実作物を作出するコショウ植物であって、果実作物が高いビタミンE含有量を含み、高いプロビタミンA含有量、高いビタミンC含有量又はこれらの組合せの少なくとも1つをさらに含み、平均的な作物のビタミンEの濃度が少なくとも5mg/100gFWである、コショウ植物を提供する。幾つかの実施形態によれば、果実は非刺激性であり厚い果皮を有する。
【0029】
本発明の範囲内のコショウ植物は、ビタミン含有量が改変された可食コショウ果実を有する任意の植物であって、果実が高いビタミンE含有量を含み、高いプロビタミンA含有量、高いビタミンC含有量及びこれらの組合せの少なくとも1つをさらに含み、ビタミンEの濃度が少なくとも約5mg/100gFWである植物を含む。この新鮮な可食コショウ果実は、刺激性を欠いており厚い果皮を有する。これらのコショウ植物は有利なことに、高い発芽率、除草剤抵抗性、虫害抵抗性、細菌性、真菌性又はウイルス性の病害に対する抵抗性、様々な型の非生物的ストレスに対する抵抗性、雄性不稔及び活発な生長だけには限られないが、これらを含めた、当技術分野でよく知られている有益な農業上の形質をさらに含むことができる。
【0030】
本発明の植物は非遺伝子組換え(非GMO)であることが好ましいが、しかしながら、形質転換による形質の付加又は欠失が、本発明の範囲内に明らかに含まれることは理解されよう。
【0031】
本発明はさらにコショウの種子を提供し、これらの種子から生長した植物は、本明細書で前に記載したように、改変されたビタミン含有量、特に高いビタミンE含有量、及び高いプロビタミンA含有量、高いビタミンC含有量又はこれらの組合せの少なくとも1つを有する可食果実を有する。幾つかの実施形態によれば、これらの種子から生長した植物の果実は、非刺激性であり厚い果皮を有する。
【0032】
本発明の種子から生長したコショウ植物は、安定した真の近交系の形であってよく、或いはより多様な物質としての形であってよく、本明細書で前に記載したように、これらはいずれもビタミン含有量が改変された可食コショウ果実を有する。
【0033】
Capsicum annuum雑種ACE05F01−521は、本発明の植物の一例として働く。ACE05F01−521の代表的な種子は、2006年3月9日にアクセッション番号41381でNCIMB Ltd.に寄託された。本明細書で以後記載する本発明の教示によれば、ACE05F01−521の種子から生長した植物は、高いビタミン含有量を有する可食果実を作出する。
【0034】
本発明のコショウ植物由来の花粉及び胚珠、これらから生長した種子、及び種子から生長した植物、及びこれらの植物によって作出される果実も、本発明の範囲内に含まれる。
【0035】
なお別の態様によれば、本発明は、本発明の植物から再生した組織培養物及びそこから再生した植物を提供する。
【0036】
一実施形態によれば、組織培養物は葉、花粉、胚、根、根端、葯、花、果実及び種子だけには限られないが、これらからなる群から選択される組織由来の細胞又はプロトプラストを含む。
【0037】
なおさらなる態様によれば、本発明は、本明細書で前に記載したように、現在市販されている甘い可食性のコショウ果実と比較してビタミン含有量が改変された可食コショウ果実を提供する。特定の実施形態によれば、果実は非刺激性であり厚い果皮を有する。新鮮な果実は生鮮品として市場に出すことができ、或いは加工コショウ製品の供給源として働くことができる。
【0038】
なお別の態様によれば、本発明は、ビタミン含有量が改変された可食果実を有するコショウ植物を作出するための方法であって、現在市販されているコショウ品種の可食果実と比較して、高いビタミンE含有量を含む果実を有する少なくとも1つのコショウ植物、高いプロビタミンA含有量を含む果実を有する少なくとも1つのコショウ植物、及び高いビタミンC含有量を含む果実を有する少なくとも1つのコショウ植物を選択するステップ;それぞれの高ビタミン含有量の植物と知られている市販の植物を交配して少なくとも1つの集団を作出するステップ;DNAマーカーを使用して高いビタミン含有量と刺激性の間、及び高いビタミン含有量と薄い果皮の間で連鎖していない植物の集団をスクリーニングするステップ;並びに少なくとも約5mg/100gFWのビタミンE濃度、並びに少なくとも約3mg/100gFWのプロビタミンA濃度、及び約200mg/100gFW〜約500mg/100gFWの範囲のビタミンC濃度、又はこれらの組合せの少なくとも1つを有し、非刺激性であり厚い果皮を有するコショウ果実を有する植物を選択するステップを含む方法を提供する。
【0039】
一実施形態によれば、この方法は、現在市販されているコショウ品種の可食果実と比較して、高いビタミンE含有量を含む果実を有する少なくとも1つのコショウ植物、高いプロビタミンA含有量を含む果実を有する少なくとも1つのコショウ植物、及び高いビタミンC含有量を含む果実を有する少なくとも1つのコショウ植物を選択するステップ;高いビタミンE含有量を含む果実を有する少なくとも1つのコショウ植物と知られている市販の植物を交配して第1Fi集団を作出するステップ;高いプロビタミンA含有量を含む果実を有する少なくとも1つのコショウ植物と高いビタミンC含有量を含む果実を有する少なくとも1つのコショウ植物を交配して第2Fi集団を作出するステップ;第1及び第2Fi集団の種子を回収するステップ;前記第1及び前記第2Fi種子集団から植物を生長させるステップ;前記第1Fi集団由来の少なくとも1つの植物と前記第2Fi集団由来の少なくとも1つの植物を交配してF集団を作出するステップ;雑種F種子を回収するステップ;F種子からF植物を生長させるステップ;高刺激性形質と同時分離するDNA配列の存在をF植物において調べるステップ;F植物によって作出された成熟果実における果皮の厚さを測定するステップ;高刺激性と同時分離するDNA配列を欠いており厚い果皮を有するF植物を選択するステップ;DNAマーカーを欠き厚い果皮を有するF植物によって作出された成熟果実における、ビタミンE、プロビタミンA及びビタミンCの含有量を測定するステップ;並びに少なくとも約5mg/100gFWのビタミンE濃度、及び場合によっては少なくとも約3mg/100gFWのプロビタミンA濃度、及び約200mg/100gFW〜約500mg/100gFWの範囲のビタミンC濃度、又はこれらの組合せの少なくとも1つを有するコショウ果実を有する植物を選択するステップを含む。
【0040】
一実施形態によれば、知られている市販の植物は、高い発芽率、活発な生長、除草剤抵抗性、虫害抵抗性、少なくとも1つの細菌性、真菌性又はウイルス性の病害に対する抵抗性、及び様々な型の非生物的ストレスに対する抵抗性からなる群から選択される少なくとも1つの形質を示す。
【0041】
一実施形態によれば、高刺激性と同時分離するDNA配列は、配列番号3で示されるポリヌクレオチド配列又はその断片を含む。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、交配のステップ及び選択のステップは少なくとも1回繰り返す。
【0043】
別の実施形態によれば、本発明の方法は、選択した植物を少なくとも1回自家受粉させるステップ、及び非刺激性であり厚い果皮を有しながら、前に記載したビタミン含有量を有する可食コショウ果実を有する植物をさらに選択するステップをさらに含む。
【0044】
なお別の実施形態によれば、その遺伝物質が1つ又は複数の制御要素と動作可能に連結した1つ又は複数のトランス遺伝子を含むように、植物又はその子孫又は一部分が形質転換されている、本発明によるコショウ植物を提供する。コショウ植物及び形質転換した変種から作出されたその一部分も、本発明の範囲内に含まれる。一実施形態によれば、形質転換した1つ又は複数の遺伝子は、除草剤抵抗性、虫害抵抗性、細菌性、真菌性又はウイルス性の病害に対する抵抗性、雄性不稔及び活発な生長からなる群から選択される特徴を与える。
【0045】
これらの実施形態及びさらなる実施形態は、以下の図面、記載及び特許請求の範囲と共にさらに理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明は、不均衡な食物摂取のため、ビタミンで哺乳動物、特にヒトの食事を補う増大する必要性に関する。天然供給源から栄養所要量(RDA)のビタミンを得るには、多量の果実及び野菜を消費することが必要である。しかしながら、大部分の現代の集団の食物摂取はごくわずかな割合の新鮮な果実及び野菜を含み、したがって勧められている必須ビタミンの摂取はもたらさない。
【0047】
したがって本発明の目的は、一食分の1つのコショウ果実中に約25%〜約50%のRDAのビタミンEを含む、新鮮な可食性のコショウ果実を提供することである。本発明の他の目的は、前に確認したビタミンE含有量を含み、約70%〜約100%のRDAのプロビタミンA及び/又はビタミンCをさらに含むコショウ果実を提供することである。コショウ果実は、高含有量の合計カロテノイドをさらに含むことが好ましい。
【0048】
定義
本明細書で使用する用語「ビタミンE」は、天然D−α−トコフェロールを指す。用語「プロビタミンA」は、哺乳動物の身体中でビタミンAの最も活性がある形であるレチノールに転換され得る、プロビタミンAカロテノイド、特にβ−カロテン、α−カロテン及びβ−クリプトキサンチンからなる群から選択されるカロテノイドを指す。用語ビタミンCは、アスコルビン酸を指す。
【0049】
本明細書で使用する「可食果実」及び「新鮮な可食果実」は、如何なる他の加工もせずに、ヒトが消費するのに適した植物から採取した果実を指す。
【0050】
本明細書で使用する用語「非刺激性コショウ果実」は、低レベルのカプサイシン(8−メチル−n−バニリル−6−ノネンアミド)、ジヒドロカプサイシン(8−メチル−n−バニリル−6−ノネンアミド)、及びそれらの前駆体を有する果実を指す。果実の味は一群の独立したボランティアによって調べた。特に「低いカプサイシンレベル」は、0.003%未満、好ましくは0.001%未満のカプサイシンを指す。
【0051】
本明細書で使用する用語「形質」は、特徴又は表現型を指す。例えば、本発明の文脈では、「刺激性」は、本明細書で前に記載した、コショウ果実の味及びそのカプサイシンレベルに関する。形質は優性又は劣性式、或いは部分的又は不完全優性的に遺伝され得る。形質は単遺伝子性(すなわち、1つの遺伝子座によって決定される)又は多遺伝子性(すなわち、2つ以上の遺伝子座によって決定される)である可能性があり、或いは1つ又は複数の遺伝子と環境の相互作用から生じる可能性もある。優性形質はヘテロ接合又はホモ接合状態での完全な表現型の出現をもたらし、劣性形質はホモ接合状態で存在するときのみそれ自体が現れる。
【0052】
用語「果皮」は、当技術分野で知られているように、成熟した子房の壁を指す。特に、コショウ果実の果皮は、コショウ果実の色つきの可食部分である果実の壁を指す。
【0053】
本明細書で使用する用語「厚い果皮」は、少なくとも5mm、好ましくは少なくとも8mmの果皮の幅を指す。
【0054】
本明細書で使用する用語「自家受粉」は、植物の制御型の自家受粉、すなわち同じ植物によって作出された花粉と胚珠を接触させることを指す。用語「交配」は、制御型の交配受粉、すなわちそれぞれ異なる植物によって作出された花粉と胚珠を接触させることを指す。
【0055】
用語「植物の生長力」は、本明細書では広義に使用し、植物の一般的な強さを指す。
【0056】
本明細書で使用する用語「平均」は、ビタミンE濃度の平均プラス又はマイナス標準偏差を指す。ストレスフリーの栽培によって得た完熟した果実作物のビタミンE濃度を測定することによって、平均値を得る。
【0057】
本明細書で使用する「果実作物」は、1種の植物の作物、或いは好ましくは商業規模で生長させたコショウ植物から得た果実作物を指す。
【0058】
本明細書で使用する用語「市販のコショウ品種」は、厚い果皮を有する甘い可食果実を有する、市販されているコショウ品種を指す。典型的には市販のコショウ品種は、塊状のカリフォルニア系果実の形状を有する果実を有する。
【0059】
一態様によれば本発明は、現在市販されているコショウ品種の果実と比較してビタミン含有量が改変された果実を有するコショウ植物であって、果実が高いビタミンE含有量を含み、高いプロビタミンA含有量、高いビタミンC含有量及びこれらの組合せの少なくとも1つをさらに含み、ビタミンEの濃度が少なくとも約5mg/100gFWである、コショウ植物を提供する。特定の実施形態によれば、果実は非刺激性であり厚い果皮を有する。
【0060】
一実施形態によれば、果実は少なくとも約7mg/100gFWのビタミンE、好ましくは少なくとも約9mg/100gFW、より好ましくは少なくとも約11mg/100gFWのビタミンEを含む。
【0061】
トコフェロールは、高等植物のプラスチド(主に葉緑体)中で合成される2次的な代謝産物である。プラスチド中では、トコフェロールは全キノンプールの40%までを占める。トコフェロールは、イソプレノイド生合成経路によって生成される。高等植物中のα−トコフェロール(ビタミンE)の生合成は、ホモゲンチシン酸とフィチルピロリン酸を縮合させて、環状化及び後のメチル化によって様々なトコフェロールを形成することができる、2−メチル−6フィチルベンゾキノールを形成することを含む。トコフェロール及びトコトリエノール(不飽和トコフェロール誘導体)はよく知られている抗酸化剤であり、フリーラジカルによるダメージから細胞を保護する際に重要な役割を果たす。トコフェロールは植物において重要な機能を果たすだけでなく、哺乳動物の栄養観点からも重要である。トコフェロール、特にビタミンEは、心臓病、癌、白内障、網膜障害、神経障害及びアルツハイマー病を含めた多くの疾患の予防と関係がある。ビタミンEは、関節炎の症状に対して有益な影響を有するとして、且つアンチエイジング物質としても示されてきている。ビタミンEは、肉の貯蔵寿命、外見、香り、及び酸化安定性を改善するため、及び飼料から卵にトコールを移動させるためにニワトリ用飼料中にも使用されている。ビタミンEは正常な生殖に必要不可欠であることが示されてきており、全体の性能を改善し、家畜動物中の免疫能力を増大させる。動物飼料中のビタミンEサプリメントは、乳製品に酸化安定性も与える。天然トコフェロールは、合成によって生じるトコフェロールのラセミ混合物より生物学的効能があることが知られている。天然に存在するトコフェロールはいずれもD−ステレオマーであり、一方合成α−トコフェロールは8つのD,L−α−トコフェロール異性体の混合物であり、そのうちの1つのみ(12.5%)が天然のD−α−トコフェロールと同一である。天然のD−α−トコフェロールは、他の天然トコフェロール又はトコトリエノールと比較すると、最高のビタミンE活性(1.49IU/mg)を有している。合成α−トコフェロールは、1.1IU/mgのビタミンE活性を有する。
【0062】
市販の非刺激性の可食コショウ果実は、少量のビタミンEを含む。一実施形態では、本発明のコショウ果実は、約1.5〜3.0mg/100gFWのビタミンEを典型的に含む、これまでに知られている市販の甘いコショウ果実におけるその濃度と比較して、2倍を超えるビタミンE濃度を含む。
【0063】
本発明のコショウ植物は、コショウ、主にCapsicum annum種だけでなく、さらにC.frutescens、C.chinense、C.baccatum及びC.chacoenseを含めた他種の集団、外来種、栽培品種及び変種に由来する。スクリーニングプロセス中に、高いビタミンE濃度を有する果実を有する植物を同定した。しかしながら、これらの野生型植物は、可食コショウ果実を作出するのに適していない(典型的には、刺激性及び/又は薄い、咀嚼するのが困難な果皮のため)。本発明はここで、非刺激性であり、厚い果皮を有し新鮮な可食製品として市場に出すのに適した、高いビタミンE含有量を有する果実を有するコショウ植物を提供する。さらに、本発明のコショウ植物は、商業規模で生長させるのに適している。
【0064】
別の実施形態によれば、本発明は、少なくとも約5mg/100gFWのビタミンEを含み、プロビタミンA及びビタミンCの少なくとも1つをさらに含む果実を有するコショウ植物を提供する。
【0065】
一実施形態によれば、プロビタミンA濃度は少なくとも約3mg/100gFW、好ましくは少なくとも約4mg/100gFW、より好ましくは少なくとも約6mg/100gFWである。
【0066】
プロビタミンAカロテノイドの生合成は、大きなイソプレノイド生合成経路の一部でもある。カロテノイド炭化水素はカロテンと呼ばれ、一方で酸素添加誘導体はキサントフィルと呼ばれる。植物中のカロテノイド経路は、α−カロテン、β−カロテン、及びリコペンなどのカロテン、並びにルテインなどのキサントフィルを生成する。カロテノイドの生合成は、C20前駆体ゲラニルピロリン酸の2分子を縮合させて、第1のC40炭化水素フィトエンを生成することを含む。一連の連続的な飽和度低下反応において、フィトエンはリコペンを生成する。リコペンは環状カロテン、β−カロテン及びα−カロテンの前駆体であり、これらはビタミンAに転換され得る。ヒトを含めた哺乳動物は、肝臓中でカロテンをレチノールに転換することができる。レチノールは最も活性のある形のビタミンAであり、β−カロテンの1分子はレチノールの2分子に切断されるので、β−カロテンはレチノールの最良の供給源である。市販のレッドペッパー果実は、本発明のコショウ果実における約2g/100gFWの約2倍のβ−カロテン濃度と比較して、約1〜1.5mgのβ−カロテン/100g新鮮重量を典型的には含む。
【0067】
一般にカロテノイドは、果実にその黄−オレンジ−赤色を与える色素であり、したがってこのような果実中により多量に存在する。ケトカロテノイド、カプサンシン及びカプソルビンはレッドペッパー中にのみ存在し、その赤色に貢献する。幾つかの実施形態によれば、本発明のコショウ果実は少なくとも70mg/100gFWの高含有量の合計カロテノイドを含む。
【0068】
別の実施形態によれば、本発明の植物によって作出される果実中のビタミンC濃度は、少なくとも約200mg/100gFWである。ビタミンC(L−アスコルビン酸)は果実及び野菜中に見られる。近年、植物中のL−アスコルビン酸の生合成は、D−ガラクツロン酸、細胞壁のペクチンの主成分を介して生じることが示されてきている。D−ガラクツロン酸リダクターゼをコードするGaIURはビタミンC合成を制御し、これを使用して植物中のビタミンC生成を増大させることができる。
【0069】
一般にコショウ果実は、約100mgのビタミンC/100g新鮮重量を典型的に含むので、ビタミンCのよい供給源として考えられていない。本発明によれば多量のビタミンCは、少なくとも2倍のこのような濃度、すなわち少なくとも200mg/100gFWを含むコショウ果実を指す。高濃度(典型的には約500〜600mg/100gFWを超える)の酸性ビタミンCの存在は、果実にすっぱい味を与える。ビタミンCの「よい」供給源としての果実の定義は、100gの新鮮重量当たりのビタミンCの絶対量だけではなく、果実の嗜好性にも従って依存する。非常に少量の1食分でのみ消費され得る非常にすっぱい果実は、必要とされる1日当たりの所要量を与えないはずである。好ましい一実施形態によれば、本発明の植物は、200〜500mg/100gFWの範囲のビタミンC濃度を含む果実を提供する。
【0070】
別の態様によれば本発明は、現在市販されている品種の可食コショウ果実において見られるビタミンレベルと比較して、ビタミン含有量が改変された果実作物を作出するコショウ植物であって、果実作物が高いビタミンE含有量を含み、高いプロビタミンA含有量、高いビタミンC含有量及びこれらの組合せの少なくとも1つをさらに含み、平均的な作物のビタミンEの濃度が少なくとも5mg/100gFWである、コショウ植物を提供する。特定の実施形態によれば、果実は非刺激性であり厚い果皮を有する。
【0071】
本発明の植物によって作出されるコショウ果実中のビタミンE、プロビタミンA(β−カロテン)及びビタミンCの含有量は、当業者に知られている技法を使用して測定する。典型的には、ビタミンE、β−カロテン、プロビタミンA及び合計カロテノイドの濃度は、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定する。アスコルビン酸濃度の測定は、本明細書の以後の実施例項に記載したように比色反応に基づく。しかしながら、これらの方法を使用して本発明の果実のビタミン含有量を実証したが、それによってビタミンE、プロビタミンA、ビタミンC及び合計カロテノイドの含有量を測定することができる任意の他の方法も、本発明の範囲内に含まれることは理解されよう。
【0072】
本発明によるコショウ果実のビタミンプロファイルは、1つの果物中のそれぞれのビタミンの含有量、及びそれぞれのビタミンの平均的な果実作物中の含有量を表すことができる。果実作物は、1つの植物によって作出される果実、又は好ましくは商業規模で生長させた植物によって作出される果実作物を指すことができる。本明細書で使用する用語「平均的な作物中の含有量」は、例えばストレスフリーの栽培によって得た成熟したコショウ作物に関して測定した、ビタミンE濃度の平均プラス又はマイナス標準偏差を指す。
【0073】
本発明のコショウ果実中のビタミンの含有量、特にビタミンEの含有量は、コショウ植物の生長条件、コショウ果実の成熟段階及び保存条件によって影響を受ける。本明細書で以後例示するように、高生長温度(それぞれ29℃/21℃の日中/夜間温度)は、低生長温度(それぞれ20℃/12℃の日中/夜間温度)と比較して2倍のビタミン濃度をもたらした。完熟した果実中のビタミン含有量は保存中安定しているが、一方で完全な成熟前に採取した果実中のビタミンE濃度は、時間と共に増大する可能性がある。
【0074】
したがって、本発明中、本発明の果実中のビタミン濃度に関して示す値は、ストレスフリーの環境条件下で生長させた植物から新鮮な状態で採取した完熟した果実において測定した値を表す。
【0075】
本発明のコショウ植物は、遺伝的に安定した近交系、及び2つの異なる品種を交配させることによって生じる雑種であってよい。本明細書で使用するように、親系統は、自家受粉及び植付けのサイクル中の望ましい形質に関して安定した自然受粉の近交系を指す。
【0076】
本発明の親系統は、その高いビタミン含有量に関して選択した品種改良品種と、本発明の出願の1つに属する占有の品種改良物質の生殖質の集合から選択した市販の生長力のあるコショウ植物の間の、交配から開発した。
【0077】
市販の優性のコショウ品種の開発は、相当な品種改良努力を必要とする。かなりの変化が異なるコショウ集団内で見られ、したがってそれらは、新たな又は望ましい形質の供給源として働き得る。しかしながら、望ましい形質を有する植物は、乏しい発芽率、低い生長力、低い果実収率、小さな果実、病害への感受性などの望ましくない形質を有する可能性があるので、必ずしも商業規模の生産に有用であるわけではない。特に、高いビタミン含有量は典型的には刺激性及び/又は薄い果皮と連鎖しており、本発明の品種改良プログラムは、刺激性に関する分子DNAマーカーを使用してこの連鎖を切断することを目的とした。トウガラシ属果実における刺激性は、アルカロイドカプサイシン及びその類似体の蓄積によるものである。カプサイシンの生合成はトウガラシ属に限られており、分岐鎖脂肪酸による芳香族部分、バニリルアミンのアシル化に原因がある。刺激性はPunl遺伝子座と連鎖していることが報告された。近年、刺激性コショウ果実中に存在するカプサイシノイド生合成に重要なアセチルトランスフェラーゼを、Punlがコードすることが分かってきている(例えば、Capsicum annuum栽培品種Thai Hot由来のPunl遺伝子、アクセッション番号AY819029;配列番号4;Stewart Cら、Plant J.42(5):675〜88 2005)。刺激性の欠如と関係があることが知られていた劣性対立遺伝子punlは、この遺伝子座における大きな欠失に原因がある(アクセッション番号AY819031、部分配列;配列番号5)。この欠失は、1.8kbの推定プロモーター及び0.7kbの第1エクソンに及ぶ2.5kbであったことが分かった(Stewart Cら、上記)。したがって、この欠失内由来の配列は刺激性に関するマーカーとして働くことができ、このような配列を欠くゲノムを有する植物は非刺激性果実を作出した。本発明の幾つかの現在好ましい実施形態に従い使用するDNAマーカーは、Punl遺伝子のプロモーター領域内由来の約700bpの断片である(配列番号4の位置666〜1397、本明細書では配列番号3と明示する)。したがって、このDNA断片を欠き配列番号3で示されるポリヌクレオチド配列を有する植物は、劣性punlpunl遺伝子に関してホモ接合であり、したがって非刺激性である。
【0078】
さらに、本発明のコショウ植物は、高濃度のビタミンの組合せを有する果実であって、このような組合せがこれまで知られているコショウ果実中に存在しない果実を作出する。
【0079】
本明細書で使用する用語「発芽率」は、まいた種子から出現する実生の割合を指す。「乏しい発芽率」は、まいた種子からの80%未満の実生の出現、及び出現する実生の乏しい均一性を指す。本明細書で使用する用語「非生物的ストレス」は、低温、水の限られた供給、土壌中の塩分、次善の光強度及びこれらの任意の組合せだけには限られないが、これらを含めた植物の生長に好ましくない環境条件を指す。本発明によるコショウ植物の生長に関する「低温」は、10℃未満の温度を指す。
【0080】
本発明の品種改良プログラムは、コショウ、主にCapsicum annum種の集団、外来種、栽培品種及び変種由来、並びにC.frutescens、C.chinense、C.baccatum及びC.chacoenseを含めた他種由来の数種由来の数百の植物のスクリーニングで始めた。植物はカロテノイドスペクトル、β−カロテン(プロビタミンA)濃度並びにビタミンC及びEの合計含有量に関して分析した。
【0081】
ビタミンE、プロビタミンA(β−カロテン)及びビタミンCの1つ又は複数の最高含有量を示す果実を有する植物を選択した。これらの植物のそれぞれを、制御型自家受粉用に野生から温室に移した。これらの植物によって作出された果実をそれらのビタミン含有量に関して調べ、3品種:高いビタミンE含有量を有する果実を有する品種(「HE」)、高いプロビタミンA(β−カロテン)含有量を有する果実を有する品種(「HPA」)、及び高いビタミンC含有量を有する果実を有する品種(「HC」)を選択した。
【0082】
HAとHCの間、及びHEと望ましい農業形質を有する市販の品種の間で交配を行って、F植物を得た。2つのF集団を次いで交配して、F植物を作出した。F植物は、植物の生長力、果実組合せの回数及び均一性、収率、果実の大きさ、形状、果皮の厚さ、触感、色、果皮上の裂け目の存在を含めた園芸形質に関してスクリーニングし、それらの果実の質に従いスコアをつけた。さらに植物は、刺激性に関するDNAマーカーの存在に関してスクリーニングした。高スコアを有する果実を有し刺激性に関するDNAマーカーを欠く植物を、ビタミン含有量の分析用に選択した。ビタミンE、プロビタミンA及びビタミンCの少なくとも1つの高い含有量をさらに示す果実を有する植物を、さらなる品種改良用に選択した。これらの植物は最初に自家受粉させてF集団を得た。高スコアの果実(すなわち、望ましい園芸形質及び高いビタミン含有量を示す果実)を作出するその能力を保っているF植物を、さらなる品種改良用に得た(図1)。交配は選択した植物間、及び選択した植物と望ましい園芸形質を有する市販の品種の間で行った。形質の安定性は、自家受粉によって得た種子から生長させた植物を調べることによって確認した。
【0083】
一実施形態によれば、本発明は、現在市販されているコショウ品種の可食果実と比較して、非刺激性であり厚い果皮を有しながら、ビタミン含有量が改変された可食果実を有するコショウ植物を作出するための方法であって、現在市販されているコショウ品種の可食果実と比較して、高いビタミンE含有量を含む果実を有する少なくとも1つのコショウ植物、高いプロビタミンA含有量を含む果実を有する少なくとも1つのコショウ植物、及び高いビタミンC含有量を含む果実を有する少なくとも1つのコショウ植物を選択するステップ;高いビタミンE含有量を含む果実を有する少なくとも1つのコショウ植物と知られている市販の植物を交配して第1F集団を作出するステップ;高いプロビタミンA含有量を含む果実を有する少なくとも1つのコショウ植物と高いビタミンC含有量を含む果実を有する少なくとも1つのコショウ植物を交配して第2F集団を作出するステップ;第1及び第2F集団の種子を回収するステップ;前記第1及び前記第2Fi種子集団から植物を生長させるステップ;前記第1Fi集団由来の少なくとも1つの植物と前記第2F集団由来の少なくとも1つの植物を交配してF集団を作出するステップ;雑種F種子を回収するステップ;F種子からF植物を生長させるステップ;高刺激性形質と同時分離するDNA配列の存在をF植物において調べるステップ;F植物によって作出された成熟果実における果皮の厚さを測定するステップ;DNAマーカーを欠き厚い果皮を有するF植物を選択するステップ;高刺激性と同時分離するDNA配列を欠いており厚い果皮を有するF植物によって作出された成熟果実における、ビタミンE、プロビタミンA及びビタミンCの含有量を測定するステップ;並びに少なくとも約5mg/100gFWのビタミンE濃度、及び少なくとも約3mg/100gFWのプロビタミンA濃度、約200mg/100gFW〜約500mg/100gFWの範囲のビタミンC濃度、又はこれらの任意の組合せの少なくとも1つを有するコショウ果実を有する植物を選択するステップを含む方法を提供する。
【0084】
一実施形態によれば、知られている市販の植物は、高い発芽率、活発な生長、除草剤抵抗性、虫害抵抗性、細菌性、真菌性又はウイルス性の病害に対する抵抗性、及び様々な型の非生物的ストレスに対する抵抗性からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を与える。特に、トウガラシマイルドモットルウイルス(PMMV)3類及び/又はトマト黄化壊疽トスポウイルス(TSWV)に対する耐性、厚い果皮、並びに望ましい果実の大きさ及び形状を与えるために、知られている市販の植物を選択した。
【0085】
一実施形態によれば、高刺激性と同時分離するDNA配列は、配列番号3で示されるポリヌクレオチド配列又はその断片を含む。
【0086】
本発明の一実施形態によれば、交配のステップ及び選択のステップは少なくとも1回繰り返す。
【0087】
他の実施形態によれば、本発明の方法は、選択した植物を少なくとも1回自家受粉させるステップ、及び少なくとも約5mg/100gFWのビタミンE濃度、少なくとも約3mg/100gFWの少なくとも1つのプロビタミンA濃度、約200mg/100FW〜約500mg/100FWの範囲のビタミンC濃度、又はこれらの組合せを有し、非刺激性であり厚い果皮を有するコショウ果実を有する植物をさらに選択するステップをさらに含む。
【0088】
一実施形態によれば、本発明の方法によって作出された植物は遺伝的に安定した近交系である。別の実施形態によれば植物は、2つの近交系を交配させることによって作出された雑種である。
【0089】
別の態様によれば本発明は、第1世代(F)雑種コショウ種子を作出するための方法を提供する。
【0090】
一実施形態によれば、本発明は、第1世代の雑種種子を作出するための方法であって、第1の安定した近交系コショウ植物と第2の安定した近交系コショウ植物を交配させるステップ、及び作出されたF雑種種子を採取するステップを含み、第1及び第2の安定した近交系植物が、現在市販されている品種の可食果実と比較して改変されたビタミン含有量を有し、特に高いビタミンE含有量を含み、高いプロビタミンA含有量、高いビタミンC含有量又はこれらの組合せの少なくとも1つをさらに含み、一方で非刺激性であり厚い果皮を有する選択した果実を有するコショウ植物である方法を提供する。
【0091】
別の実施形態によれば、本発明はさらに、前に記載した方法により雑種コショウ種子を生長させることによって作出される、第1世代のFi雑種コショウ植物を提供する。Fi植物は高いビタミン含有量を有する果実を有しているだけでなく、それらは農業用途にも適しており、知られている市販の雑種に匹敵する園芸形質を有する。
【0092】
アクセッション番号41381でNCIMBに寄託された雑種ACE05F01−521種子は、ビタミン含有量が改変された果実を有する雑種植物に対する一例として働く。特に、これらの種子から生長させた植物の果実は、約9mg/100gFWのビタミンE、約5mg/100gFWのプロビタミンA(β−カロテン)及び約260mg/100gFWのビタミンCを含む。
【0093】
本発明はさらに、Fi雑種コショウ植物から採取した種子、及びこれらの種子から生長させた植物に関する。植物の品種改良における一般的な慣習は、戻し交配の方法を使用して単一形質変換により新たな変種を開発することである。本明細書で使用する用語、単一形質変換は、親系統への新たな一遺伝子又は対立遺伝子の取り込みを指し、この場合移動する一遺伝子又は対立遺伝子以外に、親系統のほぼ全ての望ましい形態及び生理特徴が回復する。本明細書で使用する用語、戻し交配は、親コショウ植物の1つに戻す雑種子孫の反復交配を指す。遺伝子又は対立遺伝子に望ましい特徴を与える親コショウ植物は、1回親又はドナー親と呼ばれる。この専門用語は、1回親は戻し交配プロトコル中に1回使用され、したがって反復しないという事実を指す。1回親由来の遺伝子又は対立遺伝子が移動する親コショウ植物は戻し交配プロトコル中に数ラウンド使用される反復親として知られている。典型的な戻し交配プロトコルでは、当該の原種(反復親)由来の植物を、移動する当該の一遺伝子/対立遺伝子を有する第2種(1回親)から選択した植物と交配させる。次いでこの交配から生じた子孫を反復親と再度交配し、コショウ植物を得るまでこのプロセスを繰り返し、この場合1回親由来の移動する一遺伝子又は対立遺伝子以外に、反復親のほぼ全ての望ましい形態及び生理特徴が変換された植物において回復する。戻し交配法を本発明と共に使用して、特徴を改善するか或いは親系統に導入することができる。
【0094】
本発明は、花粉、胚珠及びこれらの植物から再生した組織培養物を含めた、安定した親植物又は雑種植物の任意の部分を含む。花粉及び胚珠を、一般的且つ本発明によって記載したのと同様に、品種改良プログラムにおいて使用する。コショウの組織培養物は、当技術分野でよく知られているように、コショウ植物のin vitro再生用に使用することができる。
【0095】
本発明によるビタミン含有量が改変された果実を有するコショウ植物をその系統内に含む植物、及びこれらを作出するための方法も、本発明の範囲内に含まれる。
【0096】
本発明はコショウの種子をさらに提供し、それらの種子から生長した植物は、高いビタミンE含有量を含み、高いプロビタミンA含有量、高いビタミンC含有量及びこれらの組合せの少なくとも1つをさらに含み、ビタミンEの濃度が少なくとも約5mg/100gFWである、ビタミン含有量が改変された可食果実を有する。特定の実施形態によれば、果実は非刺激性であり厚い果皮を有する。
【0097】
一実施形態によれば、種子から生長した植物は、少なくとも約7mg/100gFWのビタミンE、好ましくは少なくとも約9mg/100gFW、より好ましくは少なくとも約11mg/100gFWのビタミンEを含む果実を有する。
【0098】
別の実施形態によれば、種子から生長した植物は、少なくとも5mg/100gFWのビタミンEを含み、プロビタミンAをさらに含む果実を有する。なお別の実施形態によれば、種子から生長した植物は、少なくとも5mg/100gFWのビタミンEを含み、ビタミンCをさらに含む果実を有する。さらに他の実施形態によれば、種子から生長した植物は、少なくとも5mg/100gFWのビタミンEを含み、プロビタミンA及びビタミンCをさらに含む果実を作出する。
【0099】
一実施形態によれば、種子から生長した植物によって作出された果実中のプロビタミンA濃度は、少なくとも約3mg/100gFW、好ましくは約4mg/100gFW、より好ましくは約6mg/100gFWであり、且つビタミンCの濃度は少なくとも約200mg/100gFW、好ましくは約200mg/100gFW〜約500mg/100gFWの範囲である。
【0100】
いっそうさらなる実施形態によれば、種子から生長した植物によって作出されたコショウ果実は、少なくとも約5mg/100gFWのビタミンEを含み、少なくとも約3mg/100gFWのプロビタミンA、少なくとも約200mg/100gFWのビタミンC、及び高い含有量の合計カロテノイドをさらに含む。一実施形態によれば、合計カロテノイド濃度は少なくとも約70mg/100gFWである。
【0101】
なお別の実施形態によれば、その遺伝物質が1つ又は複数の制御要素と動作可能に連結した1つ又は複数のトランス遺伝子を含むように、植物又はその子孫又は一部分が形質転換されている、本発明による強壮なコショウ植物を提供する。コショウ植物及び形質転換した植物から作出されたその一部分も、本発明の範囲内に含まれる。一実施形態によれば、形質転換した1つ又は複数の遺伝子は、除草剤抵抗性、虫害抵抗性、細菌性、真菌性又はウイルス性の病害に対する抵抗性、雄性不稔及び活発な生長からなる群から選択される特徴を与える。
【0102】
別の実施形態によれば、本発明は、現在市販されている甘い可食果実である可食果実と比較して改変されたビタミン含有量、特に高いビタミンE含有量を有し、好ましくは高いプロビタミンA含有量及び高いビタミンC含有量をさらに含む、可食コショウ果実を提供する。果実は生鮮品として市場に出すことができ、或いは新鮮な果実は、加工された高ビタミンのコショウ製品の供給源として働き得る。コショウ及びコショウ製品の消費は、1年中供給することができる新たな変種が開発されているため、及び果実の一般的な栄養利点に対する意識が増大しているため、絶えず増大している。
【0103】
一実施形態によれば、可食コショウ果実は、少なくとも約5mg/100gFW、好ましくは少なくとも約7mg/100gFWのビタミンE、より好ましくは少なくとも約9mg/100gFW、最も好ましくは少なくとも約11mg/100gFWのビタミンEを含む。
【0104】
別の実施形態によれば、本発明は、少なくとも約5mg/100gFWのビタミンEを含み、高い含有量のプロビタミンAをさらに含む可食コショウ果実を提供する。なお別の実施形態によれば、少なくとも約5mg/100gFWのビタミンEを含む可食コショウ果実は、高い含有量のビタミンCをさらに含む。さらなる実施形態によれば、少なくとも約5mg/100gFWのビタミンEを含む可食コショウ果実は、高い含有量のプロビタミンA及びビタミンCをさらに含む。特定の実施形態によれば、果実は非刺激性であり厚い果皮を有する。
【0105】
一実施形態によれば、果実中のプロビタミンA濃度は、少なくとも約3mg/100gFW、好ましくは約4mg/100gFW、より好ましくは約6mg/100gFWである。別の実施形態によれば、果実中のビタミンCの濃度は少なくとも約200mg/100gFW、好ましくは約200mg/100gFW〜約500mg/100gFWの範囲である。
【0106】
いっそうさらなる実施形態によれば、本発明は、少なくとも約5mg/100gFWのビタミンEを含み、少なくとも約3mg/100gFWのプロビタミンA、少なくとも200mg/100gFWのビタミンC、及び高い含有量の合計カロテノイドをさらに含む、可食コショウ果実を提供する。一実施形態によれば、合計カロテノイド濃度は少なくとも約70mg/100gFWである。
【0107】
高含有量のビタミン、特に少なくとも約5mg/100gFWのビタミンE濃度、少なくとも約3mg/100gFWのプロビタミンA濃度及び約200mg/100gFW〜約500mg/100gFWの範囲のビタミンC濃度を有する可食果実を有するコショウ植物に関して本発明を詳細に記載するが、このような高いビタミン含有量を有する果実を有する他の植物種も、本発明の範囲内にあると企図されることは理解されるはずである。本発明の選択法を使用して、本明細書に記載したように、高含有量のビタミンE、プロビタミンA及び/又はビタミンCを有する果実を有する広く様々な植物種を作出することができる。したがって、当業者に知られているように選択しやすい、特にDNAマーカーを使用して選択しやすい任意の植物種が、本発明の広い範囲内に含まれる。このような植物種は、コショウナス科、例えばトマト及びナス、又は例えばキュウリ、パンプキンなどの他の科由来の可食果実を有する植物であってよい。
【0108】
以下の実施例は、本発明の幾つかの実施形態をより完全に例示するために示す。しかしながら決して、本発明の広い範囲を制限するものとしてこれらを解釈すべきではない。当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに、本明細書で開示する原理の多くの変形及び改変を容易に考案することができる。
【実施例】
【0109】
(実施例1:高いビタミン濃度を有するコショウ植物の選択)
コショウ、主にCapsicum annum種の集団、外来種、栽培品種及び変種由来、並びにC.frutescens、C.chinense、C.baccatum及びC.chacoenseQを含めた他種由来の数百の植物をスクリーニングした。植物は、特にβ−カロテンを含めたカロテノイドのスペクトル、並びにビタミンC及びビタミンEの濃度に関して分析した。以下のように、3つの品種改良品種を、ビタミンE、カロテノイド及びビタミンCの少なくとも1つが豊富な果実を有する数世代の植物の制御型自家受粉によって開発した:
【0110】
A)品種E−8511、比較的高い安定性の赤色パプリカの開発を目的とした品種改良プログラムの分離集団由来のパプリカ系コショウ。そのビタミンE含有量は分析した全ての集団中で最も高く、約12.5mg/果実果皮100g新鮮重量であった。この果実は薄い果皮を有しており、その味は非常に刺激性が強かった。
【0111】
B)品種CLR−7174、非常に強烈な色、及びその約10分の1がβ−カロテンである約185mg/100gFWのカロテノイド含有量を有する果実を有する品種。この品種は高いカロテノイド含有量のために特別に開発し、薄い果皮を有する果実を作出するパプリカ系コショウであった。
【0112】
この2つの選択品種は、果実を採取しようとする前に果実の果皮が乾燥する傾向があるので、製粉を製造するのに適しているが新鮮な可食製品として使用するのに適していない、果実を作出する。
【0113】
C)750mg/100g果実FWを超える非常に高い含有量のビタミンCを有する品種C−8271。この品種はイスラエルのGene Bankから得た観賞用コショウの外来種に由来し、丸く小さな非常に刺激性が強い果実を有するキダチトウガラシ系である。
【0114】
この3つの品種、及び塊状のカリフォルニア系果実を有する第4の市販の「Maor」栽培品種を、高い含有量の1つ又は複数のビタミンE、C、及びプロビタミンAと植物及び果実の望ましい農業上の特徴とを組み合わせた品種改良品種を開発するための、4親の交配において親として使用した。
【0115】
4親の交配は以下及び図1中に示したように実施した:
【化1】

【0116】
1万を超えるF世代の植物を野生で生長させ、果実の大きさ、形状及び色、果実組合せの回数及び均一性、生長習性、並びに病原型及び発生頻度を含めた病害への感受性を含めた農業上の形質に関してスクリーニングした。非刺激性である果実を選択するために、本明細書の以下の実施例2に記載したように、刺激性に関するDNAマーカーの存在を調べた。
【0117】
2つ以上の望ましい形質を組み合わせた31のF植物を、4親の交配のF世代から選択した。制御された自家受粉及び後代検定によって、これらの植物をF世代に進行させた。
【0118】
これらの品種改良品種は、異なる気象条件下で生長させた。最も性能の良かった品種を、様々な広範囲のコショウの病害に抵抗性がある遺伝子を有するHazera Genetics Ltd.の生殖質由来の品種改良系と交配した。
【0119】
(実施例2:分子DNAマーカーを使用した非刺激性果実を有する植物の選択)
刺激性の存在又は不在は、1つの優性遺伝子Punlによって制御される(Stewart Cら、上記)。この遺伝子(punlpunl)に対してホモ劣性である植物は、果実において刺激性を示さない。劣性遺伝子は優性遺伝子と比較して2.5kbの欠失を有し、これは遺伝子のプロモーターから第1エクソンまで及ぶ。使用したマーカーは、以下のプライマーを使用したPCR反応の約700bpの産物である。
【化2】

【0120】
約700bpの生成したDNA断片はPunl遺伝子のプロモーター内に位置し、したがって刺激性のコショウ果実を有する植物のみが、予想される700bp断片を示すはずである(図2)。
【0121】
当技術分野で知られている標準法によって調べた植物からDNAを単離し、以下の条件下で前に同定したプライマーを使用するPCR反応にかけた。
PCR反応混合物:
バッファー×10(MgCl含まず) 2.5μl
MgCl(2.5mM) 1.5μl
dNTP(10mM) 4μl
プライマー(PT−1+PT−2)100ng/μl 2μl+2μl
Taqポリメラーゼ 0.2μl(IU)
O 10.8μl
DNA 2μl(100ng/μl)
全体積 25μl
【表1】

【0122】
PCRプログラムの終了後、サンプルを1.5%アガロースゲルにロードし、対照サンプルの明確なバンドが出現するまで80〜120Vで泳動した。
【0123】
PCR法は、多数のDNAサンプルを同時に調べることができる。図1は、マーカー、並びに刺激性果実を有することが知られている植物から単離したDNA(陽性対照)、及び調べた植物から単離したDNAをロードしたアガロースゲルの典型的な写真を示す。700bpバンドの不在は、非刺激性果実を有する植物からDNAサンプルが単離されたことを示す。
【0124】
(実施例3:ビタミン濃度の測定)
コショウ果実中のカロテノイド含有量の測定
けん化:調べたレッドペッパー果実を凍結乾燥させ、乾燥物質はコーヒーマシーンを使用して粉末にすり潰した。30mgの凍結乾燥粉末を、2%BHT及び1.25mlのKOH60%を含む7.5mlエタノール溶液中に導入した。溶液中にNガスを導入しながら、混合物を37℃で30分間インキュベートした。
【0125】
抽出:5mlのHOをけん化混合物に加え、混合物を室温で10分間インキュベートした。5mlのヘキサンを次いで加え、混合物を攪拌し、ヘキサン分画と水分画が分離するまで次いで放置した。
【0126】
抽出したカロテノイドを含むヘキサン分画を次いで回収した。もはや色が検出されなくなる(すなわち、目に見える量のカロテノイドが存在しなくなる)まで、抽出手順を5回繰り返した。ヘキサン分画中の残留HOは硫酸ナトリウムで乾燥させた。ヘキサンはNガスと共に乾燥状態まで蒸発させ、カロテノイドは1mlのアセトンによって溶かした。サンプルは0.2μフィルターを介して濾過し、HPLC系に注入した。
【0127】
HPLCによるカロテノイド濃度の測定:測定はShimadzu LC−IOA HPLCを使用して実施した。この系は、自己注射用注入器及び検出器ダイオードアレイ(SPD−MIOAVP)を含む。カラムLichrosphare−100、RP−18.5、250mm×5μm粒子径を、カロテノイド分離用に使用した。ガードカラム(Lichrosphare4−4RP−18.5μm)も使用した。HO(25%〜0、37分中)の勾配を使用して1ml/分の流速で、溶液A:アセトンと溶液B:HOの混合物を用いてカロテノイドを溶出した。以下の経験に基づく勾配を用いて最良の分離を得た。
時間(分):0 15 12 5 5
Oの%:25 25 5 0 25
【0128】
ピークは474nm及び460nmで検出した。
【0129】
合計カロテノイドは、25mlのアセトンを用いて抽出した100mgのレッドペッパー粉末から推定した。色は474nmで決定し、カプサンシン1%=1905、(Dawsonら、1969.「生化学リサーチのデータ(Data for Biochemical Research)」、Clarendon Press、オクスフォード、イングランド p.328)の吸光係数によって合計カロテノイドを計算した。ピークを同定するために、Levyら(J.of Agric.and Food Chem.43:362〜366、1995)によって記載されたのと同様に、Rf値及び吸収スペクトルを標準物質のそれらと比較した。
【0130】
コショウ果実中のビタミンEの測定
レッドペッパー果実を凍結乾燥させ、乾燥物質はコーヒーマシーンを使用して粉末にすり潰し、30mgのコショウ粉末からα−トコフェロールを、4℃で一晩3mlのエタノールを用いて抽出した。エタノール抽出物は3分間20,800gで遠心分離にかけた。上清は0.2μm膜を介して濾過した。20μlのサンプルをHPLC(Merck−Hitachi L−6200A)に注入し、Merck LichrocartカラムRP−18、125〜4mmで分離させ、1ml/分の流速でメタノールの均一濃度移動相によって溶出させ、HPLC分光蛍光計検出器(Jasco FP−210)を用いて検出した。この成分を290nmで励起させ、329nmで発光させた。結果はそれぞれのサンプルに関する3つの測定値の平均である。D−α−トコフェロール(Sigma)は、標準曲線の較正用に使用した。
【0131】
コショウ果実中のビタミンCの測定
新鮮なコショウ果実を2×2cmの立方体に切断した。5gの果実の立方体を、Waringブレンダーを使用して20mlの4%メタリン酸とブレンドした。生成したジュースは30分間23,500gで遠心分離にかけた。上清中のアスコルビン酸濃度は、製造者の指示に従いMerck RQflexキットを使用して、反射率計によって測定した。原則としてこのアッセイは、青色を有するリンモリブデンへの黄色い物質モリブドリン酸の還元に基づく。反射率計によって示された値はアスコルビン酸のmg/1リットルであり、これらの値をアスコルビン酸のmg/100gFWに変換した。
【0132】
HPLCによるビタミンCの測定:サンプルの一部において、HPLCによってアスコルビン酸濃度を測定した。測定用に得た果実エキスは、本明細書で前に記載したのと同様である。HPLCによるアスコルビン酸の測定は、自己注射用注入器及び検出器ダイオードアレイ(SPD−MIOAVP)を含むShimadzu LC−IOA HPLCを用いて実施した。抽出した溶液は0.2μのフィルターを介して濾過し、Merck RP−18e 4×250mm、5μm粒子径のカラムに注入し、1ml/分の流速でKHPO 10mM/MeOH(97:3v/v)及び水酸化テトラブチルアンモニウム0.75mMの均一濃度移動相で溶出させた。アスコルビン酸は268nmで検出した。アスコルビン酸(Merck)を標準曲線の較正用に使用した。
【0133】
(実施例4:ビタミン含有量及び環境要因)
本発明によるビタミン含有量が改変された果実を有する植物の品種改良の工程中に、植物を異なる環境条件下で生長させて、果実中のビタミン濃度に影響を与える可能性がある要因を確認した。
【0134】
実験1
74のRi交配植物(2つの親品種由来の初代雑種植物)を同じ場所に植えて、2002年11月及び2003年1月に果実を採取した。したがって、植物における成熟した果実を、1年の時期に応じて異なる温度及び光レジメンに曝した(1月と比較して11月はより暖かく日が長い)。図3中に示すように、ビタミンE含有量は果実を採取した季節に依存することが分かった。
【0135】
実験2
21のRi交配植物を2つの異なる場所:マイボア(南イスラエル)及びアルメリア(南スペイン)に植えた。果実はそれぞれ2002年5月及び2002年11月に採取した。両群由来の果実を、2002年11月にも採取した。これらの果実において、ビタミンE含有量及びビタミンC含有量を測定した。図4中に示すように、ビタミンE含有量の有意な変化を、植えた場所(すなわち、温度、光及び灌漑の異なる環境条件)に関して観察した。両方の場所で、比較可能なビタミンC濃度を測定した(データ示さず)。
【0136】
実験3
制御した温度レジメン:高温(日中29℃及び夜間21℃)、及び低温(日中20℃及び夜間12℃)の下で植物を生長させた。さらに、それぞれの温度レジメンで生長させた植物を3群に分けた。1群は完全な自然光(2000マイクロアインシュタイン、μE)を得た;1群は30%日陰(1200〜1400μE)下で生長させ、1群は50%日陰(900〜1000μE)下で生長させた。ビタミン含有量(E、プロA及びC)は、光強度に依存しないことが分かった。温度レジメンは、ビタミンC及びプロビタミンAのレベルにごくわずかに影響を与えた。しかしながら、高温レジメンはビタミンE濃度を約2倍増大させた。
【0137】
実験4
ビタミンE及びビタミンC濃度を、採取時に未熟果実(緑色果実)及び完全成熟果実(赤色果実)において測定した。さらに、それぞれの群において、7℃で30日間の保存期間中にビタミン濃度をさらに測定した。保存中、5つの時間地点でビタミン濃度を測定した。結果(3回の実験の平均)は以下の表1中に要約する。
【0138】
【表2】

【0139】
表1中に示すように、果実を成熟状態で採取したとき、高く安定した濃度のビタミンE及びビタミンCを得る。
【0140】
要約すると、本明細書及び以下の特許請求の範囲を通じて記載するビタミン濃度の値は、好ましい条件、特に10℃を超える温度下で生長させた植物由来の成熟果実から得た値を指す。
【0141】
(実施例5:品種改良プログラム中に選択した果実中のビタミン含有量)
ビタミンC、ビタミンE、プロビタミンA(β−カロテン)及び合計カロテノイドの含有量を、100を超えるサンプルにおいて測定した。この様々な集団中で見られるビタミンの範囲は、ビタミンC:200〜600mg、ビタミンE:2〜12mg、及びβ−カロテン:1〜7mg(mg/100gFW)であった。本明細書の前の実施例1に記載した1つの市販品種及び高いビタミン含有量を有する3つの植物を含めた、4つの親植物を選択した。表2Aは、4つの親品種におけるビタミン濃度を示す。表2Bは、前に記載したF集団のビタミン濃度を記載する。
【0142】
前に記載したF集団の種子から生長させた約5,000の苗木を、野生で生長させた(F植物集団)。これらのF植物は、果実の大きさ及び形状、果皮上の裂け目の存在、果実の触感及び色、植物の生長力、及び果皮の厚さを含めた園芸形質に関してスクリーニングした。約300の植物が望ましい特徴を有する果実を作出し、それらの果実をビタミン含有量に関してさらに分析した。ビタミンE、プロビタミンA及びビタミンCの少なくとも1つの高い含有量を有する果実を有する植物を、さらなる品種改良用に使用した。これらの植物を自家受粉させ、F種子を高いビタミン含有量、及びDNAマーカーを用いて検出した刺激性の不在に関するさらなる選択にかけた。この選択法を繰り返して、本発明の教示に従い高いビタミン含有量、厚い果皮を有し、刺激性がない果実を有する安定した親系統を得た。
【0143】
表2Cは、その種子がアクセッション番号41381でNCIMBに寄託された雑種品種ACE05F01−521から得た、コショウ果実のビタミン含有量を示す。この雑種は、前に記載した自家受粉と選択の連続ステップを使用して得た、ACE05F08−71、雄親及びACE05F11−118、雌親のFiである。表1C中に示すビタミンの値は、2005年11月及び2006年1月に採取した代表的な果実の平均値である。品種ACE05F01−521は、本発明による高いビタミン含有量を有する果実を作出する植物の一例として本明細書に記載し、本発明の範囲内に含まれ得る様々なコショウ型及び系を制限することは意味せず、これらを例示するものである。
【0144】
【表3】

【0145】
【表4】

【0146】
【表5】

【0147】
具体的な実施形態の前述の記載は、他者が現在の知識を適用することによって、過度の実験なしで一般的な概念から逸脱せずに、このような具体的な実施形態を様々な用途に容易に改変及び/又は適用することができ、したがって、このような適用及び改変は、開示した実施形態の均等物の意味及び範囲内に含まれるはずであり、含まれることを意図するように、本発明の一般的な性質を完全に明らかにするはずである。本明細書で使用する語句又は用語は、記載の目的であり制限の目的ではないことは理解されよう。様々な開示した機能を実施するための手段、物質及びステップは、本発明から逸脱せずに様々な代替形態をとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】出発物質として使用したコショウ植物の果実、及び選択法のスキームを示す図である。
【図2】PCR産物をロードしたアガロースゲルの典型的な写真である。約700bpのバンドの存在は、刺激性果実を有する植物から得たサンプルを示す(例えば、レーン4;9〜10)。バンドの不在は非刺激性果実を示す(例えば、レーン1〜3;5〜8)。レーンMはサイズマーカー−pBR322/AluIを示す。
【図3】2つの時間地点:2002年11月(系1)及び2003年1月(系2)において採取した果実中の、ビタミンEの含有量(mg/100gFW)を示す図である。
【図4】アルメリア、スペインで生長した植物から2002年11月に採取した果実、及びマイボア、イスラエルで生長した植物から2002年の春に採取した果実中の、ビタミンEの含有量(mg/100gFW)を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在市販されているコショウ品種の可食果実と比較してビタミン含有量が改変された可食果実を有するコショウ植物であって、果実が高いビタミンE含有量を含み、高いプロビタミンA含有量、高いビタミンC含有量及びこれらの組合せの少なくとも1つをさらに含み、ビタミンEの濃度が少なくとも約5mg/100g新鮮重量である、コショウ植物。
【請求項2】
果実が非刺激性であり厚い果皮を有する、請求項1に記載のコショウ植物。
【請求項3】
植物ゲノムが高刺激性形質と同時分離するDNA配列を欠いている、請求項2に記載のコショウ植物。
【請求項4】
高刺激性形質と同時分離するDNA配列が配列番号3で示されるポリヌクレオチド配列又はその断片を含む、請求項3に記載のコショウ植物。
【請求項5】
ビタミンEの濃度が少なくとも約7mg/100g新鮮重量である、請求項1に記載のコショウ植物。
【請求項6】
ビタミンEの濃度が少なくとも約9mg/100g新鮮重量である、請求項1に記載のコショウ植物。
【請求項7】
ビタミンEの濃度が少なくとも約11mg/100g新鮮重量である、請求項1に記載のコショウ植物。
【請求項8】
プロビタミンA濃度が少なくとも約3mg/100g新鮮重量であり、ビタミンC濃度が少なくとも約200mg/100g新鮮重量である、請求項1に記載のコショウ植物。
【請求項9】
ビタミンC濃度が約200mg〜約500mg/100g新鮮重量の範囲である、請求項8に記載のコショウ植物。
【請求項10】
果実がビタミンE、プロビタミンA及びビタミンCを含む、請求項8に記載のコショウ植物。
【請求項11】
果実が少なくとも約70mg/100g新鮮重量のカロテノイドをさらに含む、請求項10に記載のコショウ植物。
【請求項12】
ビタミン含有量が改変された果実作物を作出し、ビタミンEの平均濃度が少なくとも約5mg/100g新鮮重量である、請求項1に記載のコショウ植物。
【請求項13】
近交系及び雑種からなる群から選択される、請求項1に記載のコショウ植物。
【請求項14】
請求項1に記載の植物の花粉。
【請求項15】
請求項1に記載の植物の胚珠。
【請求項16】
高い発芽率、活発な生長、除草剤抵抗性、虫害抵抗性、細菌性、真菌性又はウイルス性の病害に対する抵抗性、及び非生物的ストレスに対する抵抗性からなる群から選択される少なくとも1つの他の形質をさらに含む、請求項1に記載の植物。
【請求項17】
品種改良、単一形質変換及び形質転換からなる群から選択される方法によって他の形質が導入される、請求項16に記載の植物。
【請求項18】
ACE05F01−521で明示される雑種であり、その種子がアクセッション番号41381でNCIMB Ltd.に寄託された、請求項1に記載の植物。
【請求項19】
現在市販されているコショウ品種の可食果実と比較してビタミン含有量が改変された可食コショウ果実であって、果実が高いビタミンE含有量を含み、高いプロビタミンA含有量、高いビタミンC含有量及びこれらの組合せの少なくとも1つをさらに含み、ビタミンEの濃度が少なくとも約5mg/100g新鮮重量である、可食コショウ果実。
【請求項20】
非刺激性であり厚い果皮を有する、請求項19に記載の可食コショウ果実。
【請求項21】
果実ゲノムが高刺激性形質と同時分離するDNA配列を欠いている、請求項20に記載の可食果実。
【請求項22】
高刺激性形質と同時分離するDNA配列が配列番号3で示されるポリヌクレオチド配列又はその断片を含む、請求項21に記載の可食果実。
【請求項23】
プロビタミンA濃度が少なくとも約3mg/100g新鮮重量であり、ビタミンC濃度が少なくとも約200mg/100g新鮮重量である、請求項19に記載の可食コショウ果実。
【請求項24】
ビタミンC濃度が約200mg〜約500mg/100g新鮮重量の範囲である、請求項23に記載の可食果実。
【請求項25】
果実がビタミンE、プロビタミンA及びビタミンCを含む、請求項23に記載の可食コショウ果実。
【請求項26】
少なくとも約70mg/100g新鮮重量のカロテノイドをさらに含む、請求項25に記載の可食コショウ果実。
【請求項27】
コショウ植物の種子であって、種子から生長した植物が現在市販されているコショウ品種の可食果実と比較してビタミン含有量が改変された果実を作出し、果実が高いビタミンE含有量を含み、高いプロビタミンA含有量、高いビタミンC含有量及びこれらの組合せの少なくとも1つをさらに含み、ビタミンEの濃度が少なくとも約5mg/100g新鮮重量である種子。
【請求項28】
果実が非刺激性であり厚い果皮を有する、請求項27に記載の種子。
【請求項29】
種子から生長した植物のゲノムが高刺激性形質と同時分離するDNA配列を欠いている、請求項28に記載の種子。
【請求項30】
高刺激性形質と同時分離するDNA配列が配列番号3で示されるポリヌクレオチド配列又はその断片を含む、請求項29に記載の種子。
【請求項31】
プロビタミンA濃度が少なくとも約3mg/100g新鮮重量であり、ビタミンC濃度が少なくとも約200mg/100g新鮮重量である、請求項27に記載の種子。
【請求項32】
ビタミンC濃度が約200mg〜約500mg/100g新鮮重量の範囲である、請求項31に記載の種子。
【請求項33】
果実がビタミンE、プロビタミンA及びビタミンCを含む、請求項31に記載の種子。
【請求項34】
果実が少なくとも約70mg/100g新鮮重量のカロテノイドをさらに含む、請求項33に記載の種子。
【請求項35】
種子から生長した植物が近交系及び雑種からなる群から選択される、請求項27に記載の種子。
【請求項36】
請求項27に記載の種子を生長させることによって作出されたコショウ植物、又はその一部分。
【請求項37】
請求項1に記載のコショウ植物、又はその一部分から得た、再生可能な細胞の組織培養物。
【請求項38】
組織培養物の再生可能な細胞が、葉、花粉、胚、根、根端、葯、花、果実及び種子からなる群から選択される植物の一部分から得られる、請求項37に記載の組織培養物。
【請求項39】
組織培養物が現在市販されているコショウ品種の果実と比較してビタミン含有量が改変された果実を有する植物を再生し、果実が高いビタミンE含有量を含み、高いプロビタミンA含有量、高いビタミンC含有量及びこれらの組合せの少なくとも1つをさらに含み、ビタミンEの濃度が少なくとも約5mg/100g新鮮重量である、請求項37に記載の組織培養物。
【請求項40】
果実が非刺激性であり厚い果皮を有する、請求項39に記載の組織培養物。
【請求項41】
請求項37に記載の組織培養物から再生したコショウ植物。
【請求項42】
現在市販されているコショウ品種の可食果実と比較してビタミン含有量が改変された果実を有するコショウ植物であって、果実が高いビタミンE含有量を含み、高いプロビタミンA含有量、高いビタミンC含有量及びこれらの組合せの少なくとも1つをさらに含み、ビタミンEの濃度が少なくとも約5mg/100g新鮮重量であり、非刺激性であり厚い果皮を有するコショウ植物を作出するための方法であって、
a.現在市販されているコショウ品種の可食果実と比較して、高いビタミンE含有量を含む果実を有する少なくとも1つのコショウ植物、高いプロビタミンA含有量を含む果実を有する少なくとも1つのコショウ植物、及び高いビタミンC含有量を含む果実を有する少なくとも1つのコショウ植物を選択するステップ、
b.高いビタミンE含有量を含む果実を有する少なくとも1つのコショウ植物と市販のコショウ植物を交配して第1F集団を作出するステップ、
c.高いプロビタミンA含有量を含む果実を有する少なくとも1つのコショウ植物と高いビタミンC含有量を含む果実を有する少なくとも1つのコショウ植物を交配して第2Fi集団を作出するステップ、
d.第1及び第2Fi集団の種子を回収するステップ、
e.前記第1及び前記第2Fi種子集団から植物を生長させるステップ、
f.前記第1F集団由来の少なくとも1つの植物と前記第2Fi集団由来の少なくとも1つの植物を交配してF集団を作出するステップ、
g.雑種F種子を回収するステップ、
h.F種子からF植物を生長させるステップ、
i.高刺激性形質と同時分離するDNA配列の存在に関してF植物から得たDNAサンプルを調べるステップ、
j.F植物によって作出された果実における果皮の厚さを測定するステップ、
k.高刺激性形質と同時分離するDNA配列を欠いており厚い果皮を有するF植物を選択するステップ、
l.ステップ(k)で選択したF植物によって作出された果実におけるビタミンE、プロビタミンA及びビタミンCの含有量を測定するステップ、及び
m.少なくとも約5mg/100g新鮮重量のビタミンE濃度、並びに少なくとも約3mg/100g新鮮重量のプロビタミンA濃度、及び約200mg〜約500mg/100g新鮮重量の範囲のビタミンC濃度、又はこれらの組合せの少なくとも1つを有するコショウ果実を有する植物を選択するステップ
を含む方法。
【請求項43】
市販のコショウ果実が高い発芽率、活発な生長、除草剤抵抗性、虫害抵抗性、細菌性、真菌性又はウイルス性の病害に対する抵抗性、及び非生物的ストレスに対する抵抗性からなる群から選択される少なくとも1つの形質を示す、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
選択した植物を少なくとも1回自家受粉させるステップ、及び少なくとも約5mg/100g新鮮重量のビタミンE濃度、並びに少なくとも約3mg/100g新鮮重量のプロビタミンA濃度、少なくとも約200mg/100g新鮮重量のビタミンC濃度、及びこれらの組合せの少なくとも1つを有し、非刺激性であり厚い果皮を有するコショウ果実を有する植物をさらに選択するステップをさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
プロビタミンA濃度が少なくとも約3mg/100g新鮮重量であり、ビタミンC濃度が少なくとも約200mg/100g新鮮重量である、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
ビタミンC濃度が約200mg〜約500mg/100g新鮮重量の範囲である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
果実がビタミンE、プロビタミンA及びビタミンCを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
果実が少なくとも約70mg/100g新鮮重量のカロテノイドをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
高刺激性形質と同時分離するDNA配列が配列番号3で示されるポリヌクレオチド配列又はその断片を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項50】
請求項42に記載の方法によって作出されたコショウ植物、及びその一部分。
【請求項51】
現在市販されているコショウ品種の可食果実と比較してビタミン含有量が改変された可食果実を有するコショウ植物を作出するための方法であって、
a.現在市販されているコショウ品種の可食果実と比較して、高いビタミンE含有量を含む果実を有する少なくとも1つのコショウ植物、高いプロビタミンA含有量を含む果実を有する少なくとも1つのコショウ植物、及び高いビタミンC含有量を含む果実を有する少なくとも1つのコショウ植物を選択するステップ、
b.選択した植物のそれぞれと市販のコショウ植物を交配して少なくとも1つの子孫集団を作出するステップ、
c.高刺激性形質と同時分離するDNA配列の存在に関して子孫集団から得たDNAサンプルを調べるステップ、
d.高刺激性形質と同時分離するDNA配列を欠いており、少なくとも約5mg/100g新鮮重量のビタミンE濃度、並びに少なくとも約3mg/100g新鮮重量のプロビタミンA濃度、約200mg〜約500mg/100g新鮮重量の範囲のビタミンC濃度、及びこれらの組合せの少なくとも1つを有するコショウ果実を有する植物を選択するステップ
を含む方法。
【請求項52】
厚い果皮を有する果実を選択するステップをさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
市販のコショウ植物が高い発芽率、活発な生長、除草剤抵抗性、虫害抵抗性、細菌性、真菌性又はウイルス性の病害に対する抵抗性、及び非生物的ストレスに対する抵抗性からなる群から選択される少なくとも1つの形質を示す、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
交配のステップ(b)と選択のステップ(d)を少なくとも1回繰り返す、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
選択した植物を少なくとも1回自家受粉させるステップ、及び少なくとも約5mg/100g新鮮重量のビタミンE濃度、並びに少なくとも約3mg/100g新鮮重量のプロビタミンA濃度、約200mg〜約500mg/100g新鮮重量の範囲のビタミンC濃度、及びこれらの組合せの少なくとも1つを有し、非刺激性であり厚い果皮を有するコショウ果実を有する植物をさらに選択するステップをさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
果実がビタミンE、プロビタミンA及びビタミンCを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
果実が少なくとも約70mg/100gFWのカロテノイドをさらに含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
請求項51に記載の方法によって作出されたコショウ植物、及びその一部分。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【公表番号】特表2008−537487(P2008−537487A)
【公表日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502559(P2008−502559)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【国際出願番号】PCT/IL2006/000371
【国際公開番号】WO2006/100680
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(506260478)ヘゼラ ジェネティクス リミテッド (2)
【出願人】(304042504)ステート オブ イスラエル、ミニストリー オブ アグリカルチャー、 アグリカルチュラル リサーチ オーガナイゼイション (3)
【Fターム(参考)】