ビタミンD化合物およびワックス状担体を含有する制御放出性経口組成物
ビタミンD化合物を経口で投与するための安定な制御放出性製剤が開示される。該製剤は、ワックス状材料の固体または半固体混合物中に1種または複数のビタミンD化合物を組み込むことによって調製される。経口剤形は、本明細書に記載の成分を溶融ブレンドすること、およびゼラチンカプセルに該製剤を充填することによって調製できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
米国特許法第119条第(e)項により2007年4月25日出願の米国特許仮出願第60/913853号の利益をこれによって請求する。
【0002】
本開示は、概して、制御放出性医薬組成物に関する。より詳細には、本発明は、ビタミンD化合物を経口で送達するための制御放出性製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロール(まとめて「ビタミンD」と呼ばれる)は、ビタミンDプロホルモンのための脂溶性セコステロイド前駆体である。25−ヒドロキシビタミンD2および25−ヒドロキシビタミンD3(本明細書中では合わせて「25−ヒドロキシビタミンD」と呼ぶ)として知られるビタミンD代謝産物は、血流中のカルシウムおよびリンの正常濃度を維持することに寄与するビタミンDホルモンのための脂溶性ステロイドプロホルモンである。
【0004】
コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールは、通常、ヒトの血液中に安定的な低い濃度で存在する。栄養補強されていない食事は、たとえビタミンDで補強された食品を含むものでさえビタミンD含有量が低く、食後に血中ビタミンD濃度の何らかの増加が起こるにしても、それは微々たるものである。ヒトにおけるビタミンD供給のほとんどすべては、強化食品、日光曝露から、または食事性サプリメントに由来し、後者の供給源は、ますます重要になりつつある。血中ビタミンD濃度は、日光曝露後であっても徐々に上昇するだけである。なぜなら、皮膚の7−デヒドロキシコレステロールは、UV照射によってプレビタミンD3に変えられ、該プレビタミンD3は、皮膚中で数日にわたるコレカルシフェロールへの熱転化を受けた後、血液中に循環するからである。対照的に、現在利用できるようなサプリメントは、管腔内、血中および細胞内ビタミンD濃度の投与量に比例した著しい増加を引き起こす。
【0005】
コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールは、両方とも、人体の肝臓中に主として存在する酵素によって代謝されてプロホルモンになる。コレカルシフェロールは、代謝されてプロホルモン、25−ヒドロキシビタミンD3になり、エルゴカルシフェロールは、代謝されて2種のプロホルモン、25−ヒドロキシビタミンD2および24(S)−ヒドロキシビタミンD2になる。コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールは、また、腸細胞などのいくつかの細胞中で、肝臓中に見出されるものと同一またはそれに類似した酵素によって代謝されて肝臓外プロホルモンになる場合がある。どちらの前駆体の濃度上昇もプロホルモンの産生を高め、同様に、前駆体濃度の低下は、ホルモン産生を低下させる。コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロール(「コレカルシフェロール/エルゴカルシフェロール」)の血中濃度の急増は、細胞内ビタミンD濃度を一時的に高め、プロホルモンの産生を加速し、細胞内および血中プロホルモン濃度を上昇させることができる。コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールの血中濃度の急増は、また、プロホルモンを産生する酵素を飽和して、過剰なビタミンDを代謝させるかあるいは脂肪組織中での長期貯蔵へ切り替えることができる。脂肪組織中に貯蔵されたビタミンDは、将来におけるプロホルモンへの転化にあまり利用できない。現在の経口サプリメントを摂取した後の管腔内ビタミンD濃度の急増は、局所腸細胞中のビタミンDおよびプロホルモン濃度を直接的に押し上げ、それによって、小腸中でのカルシウムおよびリンの代謝に関する「初回通過」効果を発揮することができる。
【0006】
ビタミンDプロホルモンは、腎臓中でさらに代謝されて強力なホルモンになる。プロホルモン、25−ヒドロキシビタミンD3は、代謝されてホルモン、1α,25−ジヒドロキシビタミンD3(またはカルシトリオール)になり、同様に25−ヒドロキシビタミンD2および24(S)−ヒドロキシビタミンD2は、代謝されてそれぞれ1α,25−ジヒドロキシビタミンD2および1α,24(S)−ジヒドロキシビタミンD2として知られるホルモンとなる。プロホルモンからのこれらのホルモンの産生は、腎臓外の、必要な酵素(群)を含む細胞中で行われる場合もある。
【0007】
血中または細胞内プロホルモン濃度の急増は、過剰な腎臓外ホルモン産生を促進し、カルシウムおよびリン代謝に関する局所的有害作用につながる場合がある。このような急増は、また、その後の補給性ビタミンDからの肝臓でのプロホルモン産生を阻害し、腎臓およびその他の組織中でのビタミンDおよび25−ヒドロキシビタミンDの両方の代謝を促進する場合がある。
【0008】
血中ビタミンDホルモン濃度は、健康な個体では1日を通して一定のままであるのが一般的であるが、日光曝露の季節的変化またはビタミンD摂取の継続的変化に応じて、長期にわたって相当に変化する場合がある。通常、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロールおよび3種のビタミンDプロホルモンの血中濃度も、日光曝露および非栄養補給日常食から継続的で十分なビタミンDを与えられるなら、1日を通して一定である。しかし、コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールの血中濃度は、現在利用可能なビタミンDサプリメントの、特に、ビタミンD欠乏症、くる病または骨軟化症を予防するのに必要とされる量を大きく超える投与量での投与後に、著しく増大する場合がある。
【0009】
ビタミンDホルモンは、ヒトの健康において、細胞内ビタミンD受容体(VDR)によって仲介される重要な役割を有する。特に、ビタミンDホルモンは、小腸による食事性カルシウムの吸収、および腎臓によるカルシウムの再吸収を制御することによって血中カルシウム濃度を調節する。過剰なホルモン濃度は、異常に高められた尿中カルシウム(高カルシウム尿症)、血中カルシウム(高カルシウム血症)および血中リン(高リン血症)につながる場合がある。ビタミンDホルモンは、また、細胞の分化および増殖の調節、副甲状腺による副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌、および正常な骨形成および骨代謝に関与する。さらに、ビタミンDホルモンは、筋骨格、免疫およびレニン−アンジオテンシン系を正常に機能させるのに必要とされる。ビタミンDホルモンに関するその他多くの役割は、ほとんどあらゆるヒト組織中で報告されている細胞内VDRの存在に基づいて仮定され、説明されている。
【0010】
二次性副甲状腺機能亢進症は、主としてビタミンD欠乏症のため発症する障害である。それは、異常に高められた血中PTH濃度によって特徴付けられ、早期の発見および治療が欠如すると、副甲状腺過形成および一連の代謝性骨疾患が付随するようになる。それは、慢性腎臓病(CDK)の広く知られた合併症であり、CKDが進行するにつれて発生率が上昇する。二次性副甲状腺機能亢進症は、健康な腎臓を有する個体でも、十分なビタミンDの供給を妨げる環境、文化または食事因子によって発症する場合がある。
【0011】
二次性副甲状腺機能亢進症およびCKDでのその発生に関して、25−ヒドロキシビタミンD3および25−ヒドロキシビタミンD2からビタミンDホルモン類(まとめて「1,25−ジヒドロキシビタミンD」)を合成するための主な部位である、隣接ネフロンの進行性細胞喪失が存在する。さらに、ネフロンの機能喪失は、Dホルモンを産生するための反応を触媒する酵素である腎臓の25−ヒドロキシビタミンD−1α−ヒドロキシラーゼの活性を低下させる過剰なリンの保持につながる。これら2つの事象は、ビタミンDの供給が十分であるのに中度から重度のCKDを有する患者において普通に見出される1,25−ジヒドロキシビタミンDの低い血清中濃度を説明する。
【0012】
血清中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度の低下は、直接および間接的機構によって、増大した、そして最終的には過剰なPTH分泌を引き起こす。生じる副甲状腺機能亢進症は、著しく増大した骨代謝回転、およびその続発症である腎性骨ジストロフィーにつながり、該ジストロフィーには、嚢胞性線維性骨炎、骨軟化症、骨粗鬆症、骨外性石灰化、および関連障害、例えば、骨痛、関節周囲炎症およびMockerberg硬化症などのその他各種疾患を含めることができる。血清中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度の低下は、また、筋力低下、および骨格変形を伴う発育遅滞(最も多くは小児患者で認められる)を引き起こす場合がある。
【0013】
血中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度は、PTHを含むフィードバック機構によって精密に調節される。腎臓の1α−ヒドロキシラーゼ(またはCYP27B1)は、PTHによって刺激され、1,25−ジヒドロキシビタミンDによって阻害される。血中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度が降下すると、副甲状腺は、細胞内ビタミンD受容体を介してこの変化を感知して、PTHを分泌する。分泌されたPTHは、腎臓のCYP27B1の発現を刺激し、それによって、ビタミンDホルモンの産生を増大させる。血中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度が再び上昇するにつれて、副甲状腺は、さらなるPTHの分泌を減衰させる。血中PTH濃度が降下するにつれて、ビタミンDホルモンの腎臓での産生が減少する。血中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度の上昇は、また、CYP27B1によるさらなるビタミンDホルモンの産生を直接的に阻害する。
【0014】
サルコイドーシスなどのいくつかの障害において、またはビタミンDホルモン補充療法でのボーラス投与の結果として発生し得るような、血中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度が過剰に高くなる状況で、PTHの分泌は異常に抑制され得る。PTH分泌の過剰抑制は、カルシウム恒常性の撹乱を引き起こす、または悪化させる場合がある。副甲状腺および腎CYP27B1は、血中ビタミンDホルモン濃度の変化に鋭敏であり、その結果、血清中1,25−ジヒドロキシビタミンDは、任意の24時間中に20%未満で上下させて厳重に制御される。ビタミンDホルモンの腎臓での産生と対照的に、腎臓外での産生は、精密なフィードバック制御下にない。
【0015】
1,25−ジヒドロキシビタミンDおよび基質25−ヒドロキシビタミンDプロホルモンの血中濃度、ならびにそれらの調節は、また、1α−ヒドロキシビタミンD2および19−ノル−1,25−ジヒドロキシビタミンD2などのビタミンDホルモン類似体によって影響される場合がある。
【0016】
特定組織に対するビタミンDホルモンの作用は、それらのホルモンがそれらの組織中の細胞内VDRに結合(または占有)する程度によって左右される。コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールは、ビタミンDホルモンのそれに比べて少なくとも100分の1であると見積もられるVDRに対する親和性を有する。結果として、生理学的濃度のコレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールは、前以てビタミンDホルモンへ代謝されないと、あったとしてもわずかな生物学的作用しか発揮しない。しかし、正常に比べて10〜1,000倍高い範囲の超生理学的濃度のコレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールは、VDRを十分に占拠し、ビタミンDホルモンに似た作用を発揮できる。同様に、プロホルモン、25−ヒドロキシビタミンD2および25−ヒドロキシビタミンD3は、VDRに対して、ビタミンDホルモンのそれに比べて、やはり少なくとも100分の1であると見積もられる本質的に同一の親和性を有する。結果として、生理学的濃度の25−ヒドロキシビタミンD2および25−ヒドロキシビタミンD3は、前以てビタミンDホルモンへ代謝されないと、あったとしてもわずかな生物学的作用しか有さない。しかし、正常に比べて10〜1,000倍高い範囲の超生理学的濃度の25−ヒドロキシビタミンD2および25−ヒドロキシビタミンD3は、VDRを十分に占拠し、ビタミンDホルモンに似た作用を発揮できる。
【0017】
ビタミンDプロホルモンの産生は、ビタミンD不足またはビタミンD欠乏症(あるいは、ビタミンD不足症)などの状態のように、ビタミンDが供給不足である場合に減退する。ビタミンDプロホルモンの低い産生は、25−ヒドロキシビタミンDの低い血中濃度につながる。不十分なビタミンD供給は、日光にめったに曝露されない、慢性的に不十分なビタミンD摂取を有する、または脂溶性ビタミン(ビタミンDなど)の腸での吸収を低下させる状態を有する個体で発生することが多い。最近、北部地方に住むほとんどの個体は、不十分なビタミンD供給を有することが報告されている。未治療で放置すると、不十分なビタミンD供給は、くる病および骨軟化症を含む深刻な骨障害を引き起こす場合がある。
【0018】
米国科学アカデミーの医学研究所(IOM)は、健康な個体に対するビタミンDの適正摂取量(AI)は、個体の年齢および性別に応じて1日につき200〜600IUの範囲であると結論付けている。参照により本明細書に組み込まれる、食事摂取基準の科学的評価に関する常任委員会、「食事摂取基準:カルシウム、リン、マグネシウム、ビタミンD、およびフッ素」、Washington、DC:National Academy Press(1997)を参照されたい。ビタミンDのAIは、主として、ビタミンD欠乏症、くる病または骨軟化症を予防するのに十分な血清中25−ヒドロキシビタミンD濃度(または少なくとも11ng/mL)に基づいて制定された。IOMは、また、より高い投与量が、高カルシウム尿症、高カルシウム血症、ならびに心不整脈、発作、および全身性の血管とその他軟組織の石灰化を含む関連続発症のリスク増加に関連しているという証拠に基づいて、1日につき2,000IUのビタミンDに関する最大許容摂取量濃度(UL)を確立した。
【0019】
現在利用可能な経口ビタミンDサプリメントは、最適な血中25−ヒドロキシビタミンD濃度を達成しかつ維持するための理想からかけ離れている。これらの調合物は、典型的には、400IU〜5,000IUのビタミンD3または50,000IUのビタミンD2を含有し、消化管での急速または即放用に製剤化される。ビタミンDの充足にしばしば必要とされるような慢性的高投与量で投与する場合、これらの製品は、下記に要約する重要でしばしば厳しい制約を有する。
【0020】
高投与量の即放性ビタミンDサプリメントは、血中ビタミンD濃度の著しい急増を引き起こし、それによって、(a)脂肪組織中へのビタミンDの貯蔵(このことは、貯蔵されたビタミンDが後程の肝臓での25−ヒドロキシビタミンDへの転化にあまり利用できないので、望ましくない)、(b)肝臓でのビタミンDの代謝産物への異化(このことは、24−および/または26−ヒドロキシル化により血中25−ヒドロキシビタミンD濃度を上昇させるのにあまり有用でないか、あるいはもはや有用ではない)、および(c)ビタミンDの過剰な細胞内24−または25−ヒドロキシル化(このことは、高カルシウム尿症、高カルシウム血症および高リン血症のリスク増大につながる)を促進する。
【0021】
高投与量の即放性ビタミンDサプリメントは、また、血中および細胞内25−ヒドロキシビタミンD濃度の急増またはスパイクを引き起こし、それによって、(a)ビタミンDホルモンの過剰な腎臓外産生(カルシウムおよびリン恒常性の局所的異常、ならびに高カルシウム尿症、高カルシウム血症および高リン血症のリスク増大につながる)、(b)腎臓およびその他の組織中での24−および/または26−ヒドロキシル化によるビタミンDおよび25−ヒドロキシビタミンDの両方の異化加速、(c)肝臓でのビタミンDプロホルモン産生の下向き調節(ビタミンDの不足または欠乏の効率的な充足を不必要に妨害する)、および(d)VDRへの直接結合によって仲介されるカルシウムおよびリン恒常性の局所的異常を促進する。
【0022】
さらに、高投与量の即放性ビタミンDサプリメントは、例えば十二指腸の管腔中でビタミンDの超生理学的な薬理学的濃度を引き起こし、(a)腸細胞での25−ヒドロキシル化、およびカルシウムおよびリンの腸吸収の局所性刺激(高カルシウム尿症、高カルシウム血症および高リン血症のリスク増大につながる)、(b)局所腸細胞中での24−および/または26−ヒドロキシル化によるビタミンDの異化(全身性生物学的利用能の減少を引き起こす)、および(c)主としてキロミクロンによる吸収(肝臓での異化増大につながる)を促進する。
【0023】
特定の個体では、ULを超えるビタミンDの栄養補給がしばしば必要とされるが、現在利用可能な経口ビタミンDサプリメントは、血中25−ヒドロキシビタミンD濃度を最適濃度で維持するのに十分には適合せず、高投与量の即放性ビタミンD化合物を投与することの問題性が生じる。
【0024】
健康な個体では、血中ビタミンDホルモン濃度も、一般には1日を通して一定なままであるが、日光曝露の季節的変化またはビタミンD摂取量の継続的変化に応答して長期にわたって相当に変化する場合がある。健康な個体の間で、ビタミンDホルモンの通常濃度に関して著しい差異が普通に観察され、若干の個体は、ほぼ20pg/mL程度の低い、他の者はほぼ70pg/mL程度の高い安定した濃度を有する。この広い通常範囲のため、医療専門家は、血清中総1,25−ジヒドロキシビタミンDに関する実験室での孤立的測定値を解釈する上での困難性を有し;25pg/mLの値は、ある個体にとっては正常値に、あるいは別の個体では相対的欠乏症に相当する可能性がある。
【0025】
一時的に低い血中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度は、副甲状腺を刺激して、PTHを短時間分泌させるが、正常な血中ビタミンDホルモン濃度に戻ると終了する。対照的に、慢性的に低い血中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度は、副甲状腺を絶えず刺激してPTHを分泌させ、二次性副甲状腺機能亢進症として知られる障害をもたらす。慢性的に低いホルモン濃度は、また、腸でのカルシウム吸収を低下させ、血中カルシウム濃度の低下(低カルシウム血症)に至らしめ、このことがさらにPTH分泌を刺激する。絶えず刺激される副甲状腺は、ますます過形成となり、ついにはビタミンDホルモンによる調節に対する抵抗性を発現する。早期の発見および治療がないと、二次性副甲状腺機能亢進症は、累進的に重症度を増し、骨粗鬆症および腎性骨ジストロフィーを含む弱体化していく代謝性骨疾患を引き起こす。
【0026】
慢性的に低い血中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度は、CKDにおいて普通に発生する事態である、必要とされるビタミンDホルモンの供給量を産生するための腎CYP27B1の不足が存在する場合に発生する。腎CYP27B1の活性は、機能するネフロンの減少により糸球体濾過値(GFR)がほぼ60mL/分/1.73m2未満に降下すると減退する。末期腎疾患(ESRD)において、腎臓が完全に衰え、生存のために血液透析が必要とされる場合、腎CYP27B1は、まったく存在しないようになることが多い。任意の残存CYP27B1は、食事性リンの不十分な腎排泄によって引き起こされる高い血清中リン(高リン血症)によって大きく阻害される。
【0027】
慢性的に低い血中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度は、また、ビタミンDプロホルモンの欠乏のため発生する。なぜなら、腎でのホルモン産生は、必要とされる前駆体がないと進行できないからである。プロホルモンの産生は、しばしば「ビタミンD不足」、「ビタミンD欠乏症」または「低ビタミンD症」などの用語で説明される状態である、コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールが供給不足である場合に著しく低下する。したがって、血中25−ヒドロキシビタミンD濃度の測定は、ヘルスケアー専門家の間で是認されたビタミンDの状態を監視するための方法になっている。最近の研究は、大部分のCKD患者が低い血中25−ヒドロキシビタミンD濃度を有すること、およびビタミンD不足および欠乏症の有病率はCKDが進行するにつれて増大することを報告している。
【0028】
結果として、慢性的に低い血中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度を最も発生し易い個体は、CKDを有する者である。ほとんどのCKD患者は、典型的には、低下した腎CYP27B1濃度をおよび25−ヒドロキシビタミンDプロホルモンの不足を有する。驚くべきことではないが、ほとんどのCKD患者は、二次性副甲状腺機能亢進症を発症する。残念ながら、CKDにおける二次性副甲状腺機能亢進症の早期の発見および治療は、まれであり、ましてや予防は稀有である。
【0029】
米国腎臓財団(The National Kidney Foundation)(NKF)は、最近、Kidney Disease Outcomes Quality Initiative(K/DOQI)の慢性腎臓病における骨代謝および骨疾患の臨床実践ガイドライン(Clinical Practice Guidelines for Bone Metabolism and Disease in Chronic Kidney Disease)を発表することによって、二次性副甲状腺機能亢進症の早期の発見および治療に対する必要性に関する医療界の注意に焦点をあわせている(Am.J.Kidney Dis.42:S1〜S202、2003)。K/DOQIガイドラインは、二次性副甲状腺機能亢進症の主な病因を慢性的に低い血中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度と認め、CKDのステージ3〜5において、ステージ3では35〜70pg/mL(3.85〜7.7ピコモル/Lに等価)、ステージ4では70〜110pg/mL(7.7〜12.1ピコモル/Lに等価)、ステージ5では150〜300pg/mL(16.5〜33.0ピコモル/Lに等価)であるステージに特異的なPTH目標範囲に比較して高められた血中PTH濃度について規則的にスクリーニングを行うことを推奨した(K/DOQIガイドラインNo.1で規定)。スクリーニングによりiPTH値がCKDのステージ3および4に対して目標とされる範囲を超えていることが明らかになった場合に、ガイドラインは、ビタミンD不足または欠乏症の可能性を発見するために、血清中総25−ヒドロキシビタミンDの追跡評価を推奨した。30ng/mL未満の25−ヒドロキシビタミンDが観察された場合、推奨される介入は、経口で投与されるエルゴカルシフェロールを使用するビタミンD充足療法(repletion therapy)であった。30ng/mLを超える25−ヒドロキシビタミンDが観察されたなら、推奨される介入は、既知の経口または静脈内ビタミンDホルモンもしくは類似体を使用する、ビタミンDホルモン補充療法であった。ガイドラインは、ビタミンDホルモン補充製品のための包装挿入物中の食品医薬品庁により要求された警告書と一致して、ビタミンD充足およびビタミンDホルモン補充療法の同時適用を推奨しなかった。
【0030】
NKFのK/DOQIガイドラインは、ビタミンDの十分量を≧30ng/mLの血清中25−ヒドロキシビタミンD濃度と規定した。16〜30ng/mLの血清中25−ヒドロキシビタミンDと規定された「ビタミンD不足」を有する患者に対して推奨されるビタミンD充足療法は、1カ月につき50,000IUの経口ビタミンD2を6カ月間と規定し、毎月1回の投与、または1日につきほぼ1,600IUの分割投与のどちらかで与えられた。「ビタミンD欠乏症」を有する患者のための推奨される充足療法は、より集中的であり、5〜15ng/mLの血清中25−ヒドロキシビタミンDとして規定される「軽度」の欠乏症の場合、ガイドラインは、1週につき50,000IUの経口ビタミンD2を4週間、続いて、1カ月につき50,000IUをさらに5カ月間を推奨し;5ng/mL未満の血清中25−ヒドロキシビタミンDとして規定される「重症」欠乏症の場合、ガイドラインは、50,000IU/週の経口ビタミンD2を12週間、続いて、50,000IU/月をさらに3カ月間を推奨した。1週につき50,000IUの投与量は、1日につき7,000IUにほぼ相当する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0031】
本開示の一態様は、該製剤を摂取する対象の消化管中でのビタミンD化合物の制御放出のための、固体または半固体のワックス状医薬製剤を提供する。該製剤は、ワックス状制御放出性担体物質、類脂質性物質(lipoidic agent)、ビタミンD化合物のための油性ビヒクル、およびビタミンD化合物を含む。該製剤は、その中に組み込まれるビタミンD化合物の制御放出を提供する。該製剤は、好ましくは、崩壊剤を含まないか、あるいは実質的に含まない。
【0032】
別の態様において、本発明は、(a)薬理学上活性のある量のビタミンD化合物、および(b)本明細書中で説明されるように、Cmaxを低下させ、かつ/またはTmaxを遅延させ、かつ/またはCmax24hr/C24hrを低下させるために、剤形からのビタミンD化合物の放出速度を制御する放出調節剤を含有する、ビタミンD化合物の制御放出性剤形を提供する。好ましくは、Cmaxを低下させ、かつ同時にTmaxを遅延(増大)させる。このような制御放出性剤形は、排出半減期の増大および/または毒性の低減および/または効力の向上という利点(例えば、即放性剤形(immediate release dosage form)に比較して、低減された投与量のビタミンD化合物を投与して、またはより低頻度で投与して、同様の治療効果を達成する能力)を示す。いくつかの実施形態において、放出調節剤には、ワックス状制御放出性担体物質、類脂質性物質、およびビタミンD化合物のための油性ビヒクルが含まれる。任意選択で、本発明の放出調節剤および剤形は、崩壊剤を含まないか、あるいは実質的に含まなくてもよい。
【0033】
したがって、本発明の一実施形態は、ある投与区間におけるビタミンD化合物の最大血清中濃度(Cmax)が、ボーラスIV注射および/または同等の即放性経口剤形によって投与される同量のビタミンD化合物によるCmaxと比較して低下するように、患者にある量のビタミンD化合物を投与する方法である。同様に、本発明は、患者に投与した場合に、ボーラスIV注射および/または同等の即放性経口剤形によって投与される同量のビタミンD化合物によるCmaxよりも小さなCmaxをもたらす、ある量のビタミンD化合物を含有する制御放出性剤形を提供する。例えば、その低下は、好ましくは、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%である。
【0034】
本発明の別の実施形態は、ある投与区間における血清中ビタミンD化合物濃度の最大変化が、ボーラスIV注射および/または同等の即放性経口剤形によって投与される同量のビタミンD化合物と比較して縮小するように、患者にある量のビタミンD化合物を投与する方法である。同様に、本発明は、患者に投与した場合に、ボーラスIV注射および/または同等の即放性経口剤形によって投与される同量のビタミンD化合物よりも小さな、ある投与区間における血清中ビタミンD化合物濃度の最大変化をもたらす、ある量のビタミンD化合物を含有する制御放出性剤形を提供する。例えば、その縮小は、好ましくは、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%である。
【0035】
本発明のさらに別の実施態様は、ビタミンD化合物の投与後24時間以内における血清中最大濃度の投与24時間後濃度に対する比率(Cmax24hr/C24hr)が、ボーラスIV注射および/または同等の即放性経口剤形によって投与される同量のビタミンD化合物と比較して低下するように、患者にある量のビタミンD化合物を投与する方法である。同様に、本発明は、患者に投与した場合に、ボーラスIV注射および/または同等の即放性経口剤形によって投与される同量のビタミンD化合物よりも小さなCmax24hr/C24hrをもたらす、ある量のビタミンD化合物を含有する制御放出性経口剤形を提供する。例えば、その低下は、好ましくは、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%である。
【0036】
本発明のさらに別の実施形態は、ビタミンD化合物の排出半減期(t1/2)が、ボーラスIV注射および/または同等の即放性経口剤形によって投与される同量のビタミンD化合物によるt1/2と比較して増大するように、患者にある量のビタミンD化合物を投与する方法である。同様に、本発明は、患者に投与した場合に、ボーラスIV注射および/または同等の即放性経口剤形によって投与される同量のビタミンD化合物によるt1/2を超えるビタミンD化合物のt1/2をもたらす、ある量のビタミンD化合物を含有する制御放出性剤形を提供する。例えば、その増大は、好ましくは、少なくとも25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%または300%である。
【0037】
本発明のさらなる実施形態は、投与に続くある投与区間において血漿中ビタミンD化合物濃度がその最大値に到達する時間(Tmax)が、ボーラスIV注射および/または同等の即放性経口剤形によって投与される同量のビタミンD化合物によるTmaxと比較して増大するように、患者にある量のビタミンD化合物を投与する方法である。同様に、本発明は、患者に投与した場合に、ボーラスIV注射および/または同等の即放性経口剤形によって投与される同量のビタミンD化合物のそれを超えるTmaxをもたらす、ある量のビタミンD化合物を含有する制御放出性剤形を提供する。例えば、その増大は、好ましくは、少なくとも25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、500%または1000%である。
【0038】
各種実施形態において、組成物は、キロミクロンを介するリンパ系中への吸収よりも血流中への吸収を直接的に促進することによって含有されるビタミンD化合物の生物学的利用能を有意に増大させること;上部小腸の腸細胞中での異化を低減することによって含有されるビタミンD化合物の生物学的利用能を有意に増大させること;十二指腸上での含有されるビタミンD化合物の望ましくない初回通過効果を有意に低下させること;血中ビタミンD化合物濃度の有害な超生理学的急増の発生を有意に回避すること;血中ビタミンD化合物濃度の最適濃度未満への低下を有意に予防すること;血中ビタミンD化合物濃度を最適濃度まで有意に戻すこと;血中ビタミンD化合物濃度をこのような最適濃度に有意に維持すること;ビタミンD代謝の混乱、ならびに関連するPTH、カルシウムおよびリンの恒常性の異常を有意に低減すること;およびビタミンDの充足および補充に付随する高カルシウム尿症、高カルシウム血症、高リン血症、およびビタミンDの毒性を含む深刻な副作用の危険を有意に低減することなどの1種または複数の利点と関連していると思われる。前記利点の1種または複数は、独立にまたは組み合わせて認められる可能性がある。
【0039】
本明細書に記載の組成物および方法に関して、好ましいステップ、好ましい成分、その好ましい組成範囲、および前述の好ましい組合せは、本明細書中で提供される各種実施例から選択できる。
【0040】
さらなる態様および利点も、当業者にとっては、以下の詳細な説明を図面と関連させて検討することから明らかであろう。組成物および方法は、各種形態での実施形態が可能であるが、以下の説明には、具体的実施形態を含める。その開示は、例示であり、本発明を本明細書に記載の具体的実施形態に限定することを意図しないと理解されたい。
【0041】
本発明の理解をさらに容易にするために、ここに27の図面を添付する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例1による25−ヒドロキシビタミンD3を含有する経口投与製剤を投与された被験対象群の投与後最初の24時間にわたる血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の変化をプロットした図である。
【図2】実施例1による25−ヒドロキシビタミンD3を含有する経口投与製剤を投与された被験対象群の投与後最初の24時間にわたる血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の変化をプロットした図である。
【図3】実施例1による25−ヒドロキシビタミンD3を含有する経口投与製剤を投与された被験対象群の投与後最初の24時間にわたる血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の変化をプロットした図である。
【図4】実施例1による25−ヒドロキシビタミンD3を含有する経口投与製剤を投与された被験対象群の投与後最初の24時間にわたる血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の変化をプロットした図である。
【図5】実施例1による25−ヒドロキシビタミンD3を含有する経口投与製剤を投与された被験対象群の投与後最初の24時間にわたる血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の変化をプロットした図である。
【図6】実施例1による25−ヒドロキシビタミンD3を含有する経口投与製剤を投与された被験対象群の投与後最初の24時間にわたる血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の変化をプロットした図である。
【図7】実施例1による25−ヒドロキシビタミンD3を含有する経口投与製剤を投与された被験対象群の投与後最初の24時間にわたる血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の変化をプロットした図である。さらに、図7は、即放性製剤および制御放出性製剤に関するデータを重ねて対比して示す。
【図8】実施例1による25−ヒドロキシビタミンD3を含有する経口投与製剤を投与された被験対象群の投与後最初の24時間にわたる血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の変化をプロットした図である。
【図9】本発明による群7の制御放出性製剤に関して、実施例1の研究期間にわたる血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の変化をプロットした図である。群9は従来技術による即放性製剤であり、群10は静脈内投与である。
【図10】本発明による群7の制御放出性製剤に関して、実施例1の研究期間にわたる血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の変化をプロットした図である。群9は従来技術による即放性製剤であり、群10は静脈内投与である。
【図11】本発明による群7の制御放出性製剤に関して、実施例1の研究期間にわたる血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の変化をプロットした図である。群9は従来技術による即放性製剤であり、群10は静脈内投与である。
【図12】実施例1のそれぞれ群7および群9に関する図9および図10のデータを重ねてプロットした図である。
【図13】25−ヒドロキシビタミンD3の実施例2による調節および即放性経口製剤を投与されたミニブタに関する平均薬物動態プロフィールを示す図である。
【図14】25−ヒドロキシビタミンD3の実施例2による調節および即放性経口製剤を投与されたミニブタに関する平均薬物動態プロフィールを示す図である。
【図15】25−ヒドロキシビタミンD3の実施例2による調節および即放性経口製剤を投与されたミニブタに関する平均薬物動態プロフィールを示す図である。
【図16】25−ヒドロキシビタミンD3の実施例2による調節および即放性経口製剤を投与されたミニブタに関する平均薬物動態プロフィールを示す図である。
【図17】25−ヒドロキシビタミンD3の実施例2による調節および即放性経口製剤を投与されたミニブタに関する平均薬物動態プロフィールを示す図である。
【図18】25−ヒドロキシビタミンD3の実施例2による調節および即放性経口製剤を投与されたミニブタに関する平均薬物動態プロフィールを示す図である。
【図19】25−ヒドロキシビタミンD3の実施例2による250μgのMR製剤およびIR製剤に関する薬物動態プロフィールを比較して示した図である。
【図20】実施例3により25−ヒドロキシビタミンD3を投与した後の群1〜3のミニブタに関する平均未補正血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度対時間のプロフィールを示す図である。
【図21】実施例3による群1から3に関する平均ベースライン補正後血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度対時間のプロフィールを示す図である。
【図22】実施例3による群1から3に関する平均ベースライン補正後血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度対時間のプロフィールを示す図である。
【図23】実施例3による群1から3に関する平均ベースライン補正後血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度対時間のプロフィールを示す図である。
【図24】実施例3の群1の動物に関する投与前から21日目までの副甲状腺ホルモン濃度の平均変動を示す図である。
【図25】実施例3の群2の動物に関する投与前から21日目までの副甲状腺ホルモン濃度の平均変動を示す図である。
【図26】実施例4による25−ヒドロキシビタミンD3調節放出性カプセルを投与された群1〜群5のビーグル犬に関する平均血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度対時間のプロフィールを示す図である。
【図27】実施例2による250μgカプセルに関する溶解放出プロフィールを示す図であり、プロフィールは、24時間の時点で25−ヒドロキシビタミンD3の約72%の平均放出を示した。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本明細書中で使用する場合、用語「ビタミンDの毒性」は、悪心、嘔吐、多尿症、高カルシウム尿症、高カルシウム血症および高リン血症の1つまたは複数を含む、過剰に高められた血中ビタミンD濃度で悪化する副作用を指すことを意味する。
【0044】
「ビタミンD不足および欠乏症」は、一般に、30ng/mL未満の血清中25−ヒドロキシビタミンD濃度を有することと定義される(参照により本明細書に組み込まれる、米国腎臓財団のガイドライン、NKF、Am.J.Kidney Dis.42:S1〜S202(2003)を参照のこと)。
【0045】
本明細書中で使用する場合、用語「高カルシウム血症」は、10.2mg/dLを超える補正後血清中カルシウム濃度を有する患者の状態を指す。ヒトの正常な補正後血清中カルシウム濃度は、約8.6〜10.2mg/dLである。
【0046】
本明細書中で使用する場合、用語「高リン血症」は、4.6mg/dLを超える血清中リン濃度を有し、正常な腎機能またはステージ3〜4のCKDを有する患者の状態を指す。ステージ5のCKDを有する患者において、高リン血症は、該患者が5.5mg/dLを超える血清中濃度を有する場合に見出される。ヒトにおける血清中リンの正常値は、2.5〜4.5mg/dLである。
【0047】
本明細書中で使用する場合、用語「血漿中iPTHの過剰抑制」は、15pg/mL未満の血漿中iPTH濃度を有し、正常な腎機能、またはステージ1〜3のCKDを有する患者の状態を指す。ステージ4のCKDを有する患者において、血漿中iPTHの過剰抑制は、該患者が、30pg/mL未満の血漿中iPTH濃度を有する場合に見出される。ステージ5のCKDを有する患者において、血漿中iPTHの過剰抑制は、該患者が、100pg/mL未満の血漿中iPTH濃度を有する場合に見出される。
【0048】
本明細書中で使用する場合、用語「ビタミンDホルモン補充療法」は、患者に、有効な量の1,25−ジヒドロキシビタミンD3および/または1,25−ジヒドロキシビタミンD2などの活性ビタミンDホルモンを、細胞内VDRを実質的に占拠できるビタミンDとまたはビタミンDの他の代謝産物および類似体と任意選択で一緒に投与することを指す。
【0049】
本明細書中で使用する場合、ビタミンDの血清中または血中濃度に関して、用語「実質的に一定」は、制御放出性(後で定義する)製剤の放出プロフィールが、少なくとも4時間、12時間、1日、2日、3日、4日、または5日間から任意に選択される期間にわたって、単位投与量の投与後にほぼ10nモル/Lを超える血清中または血中総コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロール濃度の増加を含むべきではないことを意味する。25−ヒドロキシビタミンDプロホルモンの血清中または血中濃度に関して、用語「実質的に一定」は、後に詳述するように投与された任意の製剤の放出プロフィールが、単位投与量の投与後にほぼ3ng/mLを超える血清中または血中総25−ヒドロキシビタミンD濃度の一時的増加を含むべきではないことを意味する。血清中または血中活性ビタミンDホルモン濃度に関して、用語「実質的に一定」は、好ましくは、制御放出性製剤の放出プロフィールが、好ましくは少なくとも30分、または4時間などから任意に選択される期間にわたって、それぞれ単位投与量の投与後にほぼ75pg/mLを超える血清中または血中総1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度の増加を含むべきではないことを意味する。
【0050】
本明細書中で使用する場合、用語「制御放出(controlled release)」、「持続放出(sustained release)」、および「調節放出(modified release)」は、互換的に使用され、投与されたビタミンD化合物の即放とは別な仕方での放出を指す。用語「制御放出」および「調節放出」は、任意選択で遅延放出特性を含む。例えば、遅延放出型の制御放出性製剤は、即放性製剤に関するCmaxを超える時点のCmaxによって特徴付けられる。別の例として、投与されたビタミンD(コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロール)および/または25−ヒドロキシビタミンD化合物の放出は、好ましくは、血清中または血中総25−ヒドロキシビタミンD濃度が、長時間、例えば、4〜24時間、またはさらにより長く、投与前濃度を超えて維持されるか、あるいは高められるような速度でなされる。別の例として、維持放出型の制御放出性製剤は、血清中または血中総1,25−ジヒドロキシビタミンD化合物濃度が、長期間、例えば20〜40分、1〜15時間、またはさらにより長く、投与前濃度を超えて維持されるか、あるいは高められるような速度での放出によって特徴付けられる。
【0051】
「超生理学的」は、ビタミンDの管腔内、細胞内および血中濃度に関して、ビタミンDの供給が十分な対象、動物またはヒト患者においてビタミンDの栄養補給を少なくとも30日間絶った場合に、実験室測定によって任意の24時間の過程にわたって観察される一般的な安定濃度を著しく超えるビタミンD化合物の総濃度を指す。「有害な超生理学的急増」は、心血管の続発症の可能性を伴う、カルシウムおよびリンの代謝に対する局所的有害効果、ビタミンDの肝臓内25−ヒドロキシル化の阻害、ビタミンDと25−ヒドロキシビタミンDとの両方の異化増大、高カルシウム尿症、高カルシウム血症および/または高リン血症につながる過剰な腎臓外ホルモン産生などの有害効果を誘発する、局所または血清中ビタミンD化合物濃度を指す。
【0052】
本明細書中で使用する場合、用語「副甲状腺機能亢進症」は、原発性副甲状腺機能亢進症、二次性副甲状腺機能亢進症、および慢性腎臓病(ステージ3、4または5)に続く副甲状腺機能亢進症を指す。
【0053】
用語「対象」には、本明細書中で使用する場合、一般に、ヒト、哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ネズミ、ヒツジ、ウマ、ウシ、ヤギ)、獣医学的動物および動物園動物が含まれる。
【0054】
また、本明細書中で列挙される任意の数値は、低い方の数値から高い方の数値までのすべての値を含み、換言すれば、列挙された最低値から最高値の間の数値のすべての可能な組合せが、本出願中で明白に指定されていると考えるべきであることが、具体的に理解される。例えば、濃度範囲または有益な効果の範囲が1%〜50%と指定されているなら、2%〜40%、10%〜30%、または1%〜3%などの値は、本明細書中で明白に列挙されていると解釈される。これらは、具体的に解釈されるものの単なる例である。
【0055】
即放性経口製剤での25−ヒドロキシビタミンD3の投与が、ビタミンD栄養補給の代替法として試みられてきた。後に放棄されたこの取り組みは、現在使用されるビタミンDサプリメントと同様の問題を引き起こした。具体的には、それは、血中および細胞内25−ヒドロキシビタミンD濃度の急増またはスパイクを引き起こした。いずれか特定の理論によって拘束されることを意図するものではないが、血中および細胞内25−ヒドロキシビタミンD濃度の急増またはスパイクは、(a)血清中ビタミンD結合タンパク質(DBP)からビタミンDホルモンの競合的排除、および排除されたホルモンのVDR含有組織への過剰な送達、および(b)一緒になって、カルシウムおよびリン代謝の局所的逸脱につながった、ビタミンDホルモンの一時的に過剰な腎臓内および腎臓外産生を促進すると思われる。さらに、血中25−ヒドロキシビタミンD濃度のこれらの急増は、腎臓およびその他の組織中での24−および/または26−ヒドロキシル化、ビタミンDプロホルモンの肝臓内産生の下向き調節、ビタミンD不足または欠乏症の効率的な充足を不必要に妨害することによるビタミンDと25−ヒドロキシビタミンDとの両方の異化、ならびにVDRへの直接結合により仲介されるカルシウムおよびリンの恒常性のさらなる局所的逸脱を促進すると思われる。重要なことに、25−ヒドロキシビタミンD3の即放は、実質的には、血清中DBPに結合されるよりもキロミクロンでの肝臓への輸送を含む機構を介するその腸内吸収を促進すると思われる。25−ヒドロキシビタミンDの、キロミクロンを介した肝臓への送達は、その異化の可能性を有意に増加させると思われる。
【0056】
本開示の一態様は、該製剤を摂取する対象の消化管中でのビタミンD化合物の制御放出のための、固体または半固体のワックス状医薬製剤を提供する。該製剤は、ワックス状制御放出性担体物質、類脂質性物質、ビタミンD化合物のための油性ビヒクル、およびビタミンD化合物を含有する。該製剤は、その中に組み込まれるビタミンD化合物の制御放出を提供する。該製剤は、崩壊剤を含まないか、あるいは本質的に含まない。
【0057】
ワックス状制御放出性担体は、室温で固体または半固体、および体温で固体、半固体または液体、好ましくは体温で半固体または液体である製剤を提供する。使用するのに適した担体の例には、合成ワックス、微結晶ワックス、パラフィンワックス、カルナウバワックスおよび蜜蝋などのワックス;ポリエトキシル化ヒマシ油誘導体、水素化植物油、モノ−、ジ−またはトリベヘン酸グリセリル:ステアリルアルコール、セチルアルコールおよびポリエチレングリコールなどの長鎖アルコール;ならびにこれらの任意の混合物が含まれる。硬質パラフィンワックスなどの非消化性ワックス状物質が好ましい。
【0058】
ワックス状担体は、好ましくは、任意の付加的な被覆または殻を除く製剤の総質量を基準にして、製剤の約5wt%を超える量で存在する。例えば、ワックス状担体は、製剤の5wt%超、製剤の10wt%超、製剤の15wt%超、製剤の20wt%超、および製剤の25wt%超を構成することができる。ワックス状担体は、好ましくは、50wt%未満、40wt%未満、35wt%未満、または30wt%未満の量で存在する。適切な範囲には、5wt%〜35wt%、15wt%〜35wt%、および20wt%〜30wt%が含まれる。例には、15wt%、16wt%、17wt%、18wt%、19wt%、20wt%、21wt%、22wt%、23wt%、24wt%、25wt%、26wt%、27wt%、28wt%、29wt%および30wt%が含まれる。
【0059】
類脂質性物質は、被治療対象の消化管中での製剤からのビタミンD化合物の放出を提供する。いずれか特定の作用理論に拘束されることを意図するものではないが、類脂質性物質は、胃腸液中で油性ビヒクルのマイクロエマルジョンを創り出すこと;該製剤が胃および/または腸の粘膜層と相互作用するように、例えば生体接着特性による長期胃内停留を提供すること;ならびにビタミンD化合物の吸収を増強することなどの1つまたは複数の好ましい機能を提供することができると思われる。しかし、作用機構にかかわらず、本発明は、いずれか特定の作用方式によって限定されるものではない。
【0060】
類脂質性物質成分は、好ましくは、該分子またはイオンが、親水性部分と親油性部分の両方を含む両親媒性物質である。これらの成分は、親水性/親油性バランス学説(「HLB学説」)を基準にした数値によって規定することができる。HLB尺度は、0からほぼ20までに及ぶ数値尺度であり、数値が小さいほど、より親油性かつ疎水性の物質を意味し、数値が大きいほど、より親水性かつ疎油性の物質を意味する。化合物の水に対する、または油性物質に対する親和性は、実験的に測定され、HLB値を割り振られる。本明細書中で採用される疎水性担体のHLBは、好ましくは、約13〜約18の範囲である。
【0061】
医薬として許容し得る各種の類脂質性物質を、製剤中に組み込むことができる。製剤中に存在する類脂質性物質の量は、好ましくは、少なくとも5wt%、少なくとも15wt%、少なくとも35wt%、少なくとも40wt%、または少なくとも45wt%である。適切な範囲には、約5wt%〜約60wt%、約20wt%〜約60wt%、および約40wt%〜約50wt%が含まれる。
【0062】
一実施形態において、類脂質性物質は、7未満のHLBを有する親油性乳化剤であり、混合脂肪酸モノグリセリド;混合脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸モノ−およびジグリセリドの混合物;親油性ポリグリセロールエステル;モノオレイン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、およびジパルミチン酸グリセリルを含むグリセロールエステル;脂肪酸のグリセリル−ラクトエステル;モノパルミチン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、およびモノオレイン酸プロピレングリコールを含むプロピレングリコールエステル;モノステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンを含むソルビタンエステル;ステアリン酸、パルミチン酸、およびオレイン酸を含む脂肪酸およびそれらの石鹸;ならびにこれらの混合物;モノオレイン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、およびジパルミチン酸グリセリル;脂肪酸のグリセリル−ラクトエステル;モノパルミチン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、およびモノオレイン酸プロピレングリコールを含むプロピレングリコールエステル;モノステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンを含むソルビタンエステル;ステアリン酸、パルミチン酸、およびオレイン酸をはじめとする脂肪酸およびそれらの石鹸;ならびにこれらの混合物からなる群から選択されるメンバーを含む。
【0063】
好ましい類脂質性物質は、グリセリドおよびその誘導体から選択される。好ましいグリセリドは、中鎖または長鎖グリセリド、カプリロカプロイルマクロゴールグリセリド、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0064】
好ましい中鎖グリセリドには、限定はされないが、中鎖モノグリセリド、中鎖ジグリセリド、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリド、モノラウリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、(カプリル酸/カプリン酸)グリセリド、モノカプリル酸グリセリル、モノジカプリル酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/リノール酸)グリセリド、およびトリ(カプリル酸/カプリン酸/コハク酸)グリセリドが含まれる。
【0065】
製剤を製造するには、低い融点を有するモノグリセリドが好ましい。好ましいモノグリセリドには、限定はされないが、モノステアリン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノカプリル酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリルなどが含まれ、好ましくはモノステアリン酸グリセリル(GMS)である。GMSは、天然の乳化剤である。それは、油溶性であるが、水にわずかに溶ける。GMSは、3.8のHLB値を有する。別の好ましいモノグリセリドが、モノオレイン酸グリセリル(GMO)である。GMOも、天然の乳化剤であり、油溶性であるが、水にわずかに溶け、3.8のHLB値を有する。
【0066】
別の実施形態において、グリセリドは、カプリロカプロイルマクロゴールグリセリド類から選択される吸収増強剤である。採用できるカプリロカプロイルマクロゴールグリセリドには、限定はされないが、ポリグリコール化グリセリドまたはPEG化グリセリドとしても知られる、ポリエチレングリコシル化グリセリドが含まれる。組成物中で採用できるPEG化グリセリドには、限定はされないが、モノグリセリドとジグリセリドとトリグリセリドとの混合物;ポリエチレングリコールのモノエステルおよびジエステル;ポリエチレングリコシル化アーモンド油グリセリド;ポリエチレングリコシル化コーン油グリセリド;ならびにポリエチレングリコシル化トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリドが含まれる。吸収増強剤は、好ましくは、13〜18、より好ましくは13〜15のHLB値を有する。
【0067】
1つの好ましい吸収増強剤は、GELUCIREの商品名で知られており、米国ニュージャージー州ParamusのGattefosse Corporationから市販されている。GELUCIREは、グリセロールの脂肪酸エステルおよびポリグリコール化グリセリドとしても知られているPEGエステルのファミリーである周知の賦形剤である。GELUCIREは、持続放出性医薬組成物の調製を含む各種応用で使用される。GELUCIRE化合物は、両親媒性であり、融点、HLB、および各種溶媒への溶解度などの多様な物理的特性の求めに応じることのできる不活性で半固体のワックス状材料である。それらは、本質的に界面活性を有し、水性媒体中に分散または可溶化され、ミセル、顕微鏡的小球または小胞を形成する。それらは、それらの融点/HLB値によって識別される。融点は、摂氏で表現される。異なるグレードのGELUCIRE賦形剤の1つまたは混合物を選択して、融点および/またはHLB値に関して所望される特性を達成することができる。好ましいGELUCIRE組成物は、融点が44℃でHLBが14の半固体ワックス状材料であるGELUCIRE44/14である。
【0068】
別の好ましいポリグリコール化グリセリド系吸収増強剤が、カプリロカプロイルマクロゴール−8−グリセリド(CAS No.85536−07−8および84963−88−2)である。これは、グリセロールおよびPEG400の中鎖脂肪酸(C8〜C10)とのモノ−、ジ−およびトリエステルの混合物であり、例えば、米国ニュージャージー州ParamusのGattefosse CorporationによってLABRASOLの商品名で上市されている。LABRASOLは、14のHLB値を有し、次の質量組成:C8〜C10モノグリセリドをほぼ4%;C8〜C10ジグリセリドをほぼ17%;C8〜C10トリグリセリドをほぼ6%;PEG400のC8〜C10モノエステルをほぼ14%;PEG400のC8〜C10ジエステルをほぼ36%;遊離PEG400をほぼ20%;遊離グリセロールをほぼ3%:を有する。
【0069】
好ましくは、類脂質性物質には、7未満のHLBを有する親油性乳化剤、および13〜18のHLB値を好ましくは有する吸収増強剤の混合物が含まれる。親油性乳化剤は、約20wt%〜約50wt%、好ましくは約30wt%〜約40wt%の範囲の量で存在するのが好ましく、吸収増強剤は、約5〜約20wt%、好ましくは約8〜約15wt%の量で存在するのが好ましい。
【0070】
低融点の多くの固体類脂質性組成物は、該組成物中に医薬として活性な成分を該活性成分のそれぞれの融点を約0℃〜約50℃上回る温度で組み込み、次いで溶融物(溶液および/または分散液)を動物性または植物性ゼラチンカプセル中に充填する手段を提供する。溶融物は、室温まで冷却するとカプセル内部で固化する。
【0071】
油性成分は、ビタミンD化合物のためのビヒクル、好ましくは主要ビヒクルとして役立つ。任意の医薬として許容し得るオイルを使用できる。例には、動物性(例えば、魚)、植物性(例えば、ダイズ)、およびミネラルオイルが含まれる。オイルは、好ましくは使用されるビタミンD化合物を容易に溶解する。好ましい油性成分には、ミネラルオイル、特に流動パラフィンなどの非消化性オイル、およびスクアレンが含まれる。オイルビヒクルは、好ましくは、製剤の約10wt%〜約50wt%、より好ましくは約15wt%〜約45wt%、約20wt%〜約40wt%、または約15wt%〜約25wt%を構成する。1つの好ましい実施形態において、流動パラフィンは、次のパラメーター:約0.88〜0.89の比重;約64〜約70cSt(40℃)の動粘度;424の分子量;約59の%パラフィン系炭化水素;および−24℃の流動点の1つまたは複数によって特徴付けることができる。ビタミンD化合物の所望される放出速度を達成するために、ワックス状成分と油性成分との比率を最適化することができる。したがって、より重質のオイル成分を使用するなら、比較的少量のワックス状成分を使用することができ、より軽質のオイル成分を使用するなら、比較的多量のワックス状成分を使用できる。
【0072】
本明細書に記載の製剤中へ組み込むためには、予防的および/または療的使用に適した任意のビタミンD化合物、およびそれらの組合せが考えられる。ビタミンD、25−ヒドロキシビタミンD、1,25−ジヒドロキシビタミンD、およびビタミンDの他の代謝産物および類似体も、医薬組成物中の活性成分として有用である。具体例には、限定はされないが、ビタミンD3(コレカルシフェロール)、ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)、25−ヒドロキシビタミンD3、25−ヒドロキシビタミンD2、1α,25−ジヒドロキシビタミンD3、1α,25−ジヒドロキシビタミンD2、1α,25−ジヒドロキシビタミンD4、および1,25−ジヒドロキシ−19−ノル−ビタミンD2および1α−ヒドロキシビタミンD3を含むビタミンD類似体(すべてのヒドロキシおよびジヒドロキシ形態を含む)が含まれる。実施形態の一類型において、ビタミンD化合物は、25−ヒドロキシビタミンD3と25−ヒドロキシビタミンD2との組合せなどの1種または複数のヒドロキシ形態を含む。いくつかの実施形態において、ビタミンD化合物は、治療上有効な量(例えば、ビタミンD不足症および/または二次性甲状腺機能亢進症を予防または治療するのに有効な量)で投与される。
【0073】
開示の一態様には、コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールの制御放出性製剤を構成する組成物、ならびにこのような製剤を投与(一実施形態では高投与量で)して、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロールおよび25−ヒドロキシビタミンDの管腔内、細胞内および血中濃度の有害な超生理学的急増ならびにその結果なしに、かつビタミンDの栄養補給に付随する深刻な副作用、すなわちビタミンDの毒性なしに、25−ヒドロキシビタミンD不足および欠乏症を今まで得ることのできなかったレベルの効率で治療する方法が含まれる。
【0074】
制御放出性組成物は、ULまたはそれを超える濃度のコレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールを含むように設計され、制御された、好ましくはコレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールの実質的に一定な放出を長期にわたってもたらすような方式で調製される。どちらかの前駆体の管腔内、血中または細胞内濃度を高めると、プロホルモンの産生が増加する。さらに、組成物は、任意選択でヒトまたは動物の消化管の回腸中への遅延放出用に設計することができる。実施形態の一類型において、組成物は、体中コレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールの実質的に一定な濃度およびより持続的な血中濃度を確実にすると考えられる。コレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールの長期にわたる徐放出または安定放出を提供することによって、血中、管腔内および細胞内ビタミンD濃度のスパイク、すなわち有害な超生理学的濃度は、軽減または排除される。
【0075】
ビタミンD3を5,000IUを超えるまたは7,500IUを超える、または10,000IUを超える投与量で含有する組成物が考えられる。コレカルシフェロールとエルゴカルシフェロールとの組合せを少なくとも1,500IU(合わせて)、または少なくとも2,000、2,500、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、7,500、8,000、9,000、10,000、11,000、12,000または12,500IUの単位投与量で含有する組成物が考えられる。200,000IU未満、または100,000または75,000または50,000IU未満のような単位投与量も考えられる。
【0076】
本発明は、また、投与量を、1日1回、1日おきに1回、1週間に3回、1週間に2回、毎週1回、または2週間毎に1回の間隔で投薬できることを考えている。各時点で服用された累積投与量は、1,500IU(コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールを別個にまたは合わせて)、または少なくとも2,000、2,500、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、7,500、8,000、9,000、10,000、11,000、12,000または12,500IUでよい。このような200,000IU、または100,000または75,000または50,000IU未満の投与量も考えられる。このような投与量は、成人のヒトで採用するのに好ましい。
【0077】
コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールは、任意の比率、例えば、9:1〜1:9で含めることができる。限定はされないが、1:1の、1:1を超えるコレカルシフェロール:エルゴカルシフェロール、および1:1未満のコレカルシフェロール:エルゴカルシフェロールを含む比率が、各種実施形態において有用であると考えられる。
【0078】
例えば、単回単位投与量のカプセル中および/または1日当たり投与量中、1,500IUのコレカルシフェロールと1,500IUのエルゴカルシフェロールとの組合せが考えられる。また、単回単位投与量のカプセル中および/または1日当たり投与量中、1,000IUのコレカルシフェロールと1,000IUのエルゴカルシフェロールとの組合せ、単回単位投与量のカプセル中および/または1日当たり投与量中、2,000IUのコレカルシフェロールと2,000IUのエルゴカルシフェロールとの組合せが考えられる。このような単位投与量カプセルの初期投与計画は、例えば、単回単位投与量のカプセル中、1,500IUのコレカルシフェロールと1,500IUのエルゴカルシフェロールとの組合せについて下表1中で詳述するように、血清中25(OH)D(ng/mL)[nmol/L]ベースライン濃度に基づくことができる。
【0079】
【表1】
【0080】
25(OH)Dの血清中濃度を30ng/mL以上に維持するために、1つのこのようなカプセルを、成人患者に1日毎に投与できる。
【0081】
本発明には、また、25−ヒドロキシビタミンD2および/または25−ヒドロキシビタミンD3(「25−ヒドロキシビタミンD2/25−ヒドロキシビタミンD3」)の経口製剤を構成する組成物、およびこのような製剤を投与して、25−ヒドロキシビタミンDの管腔内、細胞内および血中濃度の超生理学的急増ならびにその結果なしに;投与された25−ヒドロキシビタミンDの実質的に高められた異化を引き起こさないで;かつビタミンDの栄養補給に付随する深刻な副作用、すなわちビタミンDの毒性を引き起こさないで、25−ヒドロキシビタミンDの不足および欠乏症を治療する方法が含まれる。
【0082】
本発明による経口投与を意図した制御放出性組成物は、好ましくは、単位投与量につき1〜1000μgの濃度の25−ヒドロキシビタミンD2/25−ヒドロキシビタミンD3を含有するように設計され、任意選択で、ヒトまたは動物の消化管の回腸中への長期にわたる、25−ヒドロキシビタミンD2/25−ヒドロキシビタミンD3の制御されたまたは実質的に一定の放出をもたらすような方式で調製される。好ましい投与量は、単位投与量につき1〜1000μg、1〜600μg、1〜400μg、1〜200μg、1〜100μg、5〜90μg、30〜80μg、20〜60μg、30〜60μg、35〜50μg、5〜50μg、および10〜25μg、例えば、20μg、25μg、30μg、40μg、50μg、60μg、70μg、80μg、90μg、および100μgを含む。組成物は、DBPでの輸送を介する25−ヒドロキシビタミンDの実質的に増大した吸収、およびキロミクロンでの輸送を介する減少した吸収を提供できる。組成物は、25−ヒドロキシビタミンDの投与後24時間中の実質的に一定な血中濃度の維持を提供できる。25−ヒドロキシビタミンD2/25−ヒドロキシビタミンD3の徐放出、維持放出および直接放出、および(キロミクロンよりもむしろ)循環DBPに優先的な吸収を提供することによって、血中、管腔内および細胞内25−ヒドロキシビタミンD濃度のスパイクすなわち超生理学的濃度および関連する望ましくない異化を軽減または排除できる。さらに、徐放出および維持放出を提供することによって、血清中25−ヒドロキシビタミンD濃度を、増大させ、かつ即放性経口製剤の投与によるよりもより予想された通りに維持し、一貫した投与量および頻繁な患者モニタリングの必要性の低減または排除を可能にする。
【0083】
1つの好ましい部類の実施形態において、調節放出性製剤は、投与後の最初の24時間以内にビタミンD化合物の少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%を、例えば約72%を放出する。
【0084】
有利には、他の治療薬と一緒に25−ヒドロキシビタミンD2、25−ヒドロキシビタミンD3またはこれらの組合せを、上述の実施形態により1日につき1〜100μgの投与量で経口または静脈内で投与することができ、好ましい投与量は、1日につき5〜50μg、例えば約10〜25μgである。好ましい投与量は、血清中25−ヒドロキシビタミンD3の約1〜3ng/mLの平均上昇を提供する。
【0085】
実施形態において、該方法は、本明細書に記載の製剤を投与して、血中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度を上昇させ、また、好ましくは、長期間、例えば少なくとも1カ月間、少なくとも3カ月間、少なくとも6カ月間、またはそれ以上にわたって25pg/mL、30pg/mL、またはそれ以上、例えば25〜65pg/mLに維持することを含むと考えられる。
【0086】
一態様において、ヒト患者の血清中副甲状腺ホルモンを低下させる、または低下したまま維持する方法は、1,25−ジヒドロキシビタミンD2などの有効量の活性ビタミンDホルモンを本明細書中の開示により前記患者に、好ましくはPTH濃度を少なくとも30%低下させる量を、あるいは血清中PTH濃度をCKDステージについての目標範囲(例えば、ステージ3では35〜70pg/mL(3.85〜7.7pmol/Lに相当)、ステージ4では70〜110pg/mL(7.7〜12.1pmol/Lに相当)、ステージ5では150〜300pg/mL(16.5〜33.0pmol;/Lに相当))(K/DOQIガイドラインNo.1に規定)まで低減するのに必要とされる量を投与して、血清中副甲状腺ホルモン濃度を低下させる、または低下した濃度を維持することを含む。
【0087】
別の態様において、該方法は、慢性腎臓病(ステージ3、4または5)に続く副甲状腺機能亢進症を患う患者に、1,25−ジヒドロキシビタミンD2などの有効量の活性ビタミンDホルモンを本明細書中の開示により投与して、血清中PTH濃度を低下させることを含む。
【0088】
経口投与の場合の1,25−ジヒドロキシビタミンDの投与量は、一般に、1週につき約0.1μg〜100μg、好ましくは1週につき約0.7μg〜約70μgであり、該投与量は、毎日の投与または他の周期的投与に、例えば血液透析と同時に投与する場合には週3回に分割できる。例示的実施形態では、1日につき約1、2、3、4、5、6、7、8または9μgに相当する経口投与量が考えられる。
【0089】
一般に、1,25−ジヒドロキシビタミンD化合物は、単位投与量につき約0.1μg〜約10μg、例えば、約1μg〜約4μg、約2μg〜約10μg、または約3μg〜約5μgを含有する単位剤形によって投与される。
【0090】
本明細書に記載の1,25−ジヒドロキシビタミンD2などのビタミンDホルモンの投与は、また、前以て決めたビタミンDホルモン投与量の患者への効率的かつ予想可能な送達を可能にする。活性ビタミンDホルモンの一時的かつ定量的な利用能は、肝臓での活性化またはその他の代謝に依存しない。したがって、任意選択でまたは好ましくは前述のような副作用を回避または低減しながら、同等の効果を達成するために、他の手段による送達に比較してより少ない投与量が可能であると考えられる。
【0091】
本明細書に記載の投与量は、本明細書に記載の任意の治療方法に対して考えられる。具体的症例におけるビタミンD化合物の実際の好ましい量は、処方される個々の組成物、適用方式、および治療される個々の場所により異なることが認識される。投与量は、通常の考察を利用して、例えば、ホルモンおよび既知薬の特異的活性の通例的比較によって、例えば、適切な通常の薬理学的プロトコールによって決定することができる。
【0092】
各個々の患者に対する具体的投与量は、広範な種類の因子、例えば、年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事、投与の時期および方式、排泄速度、併用される医薬、および療法が適用される個々の障害の重症度によって左右される場合がある。
【0093】
ビタミンDの栄養補給を必要とする患者には、健康な対象、およびビタミンDの不足または欠乏症の危険がある対象、例えば、ステージ1、2、3、4または5のCKDを有する対象;ビタミンD強化ミルクを飲まない乳児、子供および成人(例えば、乳糖不耐症の対象、牛乳アレルギーを有する対象、牛乳を摂取しないベジタリアン、および母乳栄養乳児);くる病を有する対象;黒い皮膚を有する対象(例えば、米国で、15〜49歳のアフリカ系アメリカ人女性の42%は、ビタミンD欠乏であるが、白人女性では4%である);高齢者(ビタミンDを合成する能力が低下し、また、より屋内に留まりそうな人);施設に収容された成人(屋内に留まりやすい人、アルツハイマー病または精神病を有する対象を含む);露出する皮膚のすべてを覆う対象(特定の宗教または文化のメンバーなど);日焼け止めを常用する対象(例えば、8の日光保護係数(Sun Protection Factor)(SPF)を有する日焼け止めを塗布すると、ビタミンDの産生が95%低下し、より大きなSPF値はビタミンDをさらに減少させる可能性がある);脂肪吸収不全症候群を有する対象(限定はされないが、嚢胞精線維症、胆汁鬱滞性肝疾患、その他の肝疾患、胆嚢疾患、膵臓酵素欠乏症、クローン病、炎症性腸疾患;スプルーまたはセリアック病、または胃および/または腸の部分または全部の外科的除去を含む);炎症性腸疾患を有する対象;クローン病を有する対象;小腸切除を受けた対象;歯肉疾患を有する対象;フェニトイン、フォスフェニトイン、フェノバルビタール、カルバマゼピンおよびリファンピンをはじめとするビタミンDの異化を増大させる薬物を摂取している対象;コレスチラミン、コレスチポール、オルリスタット、ミネラルオイル、および脂肪代替物をはじめとするビタミンDの吸収を低下させる医薬を摂取している対象;ケトコナゾールをはじめとするビタミンDの活性化を阻害する医薬を摂取している対象;コルチコステロイドをはじめとするカルシウム吸収を低下させる医薬を摂取している対象;肥満を有する対象(体脂肪貯蔵部に蓄えられたビタミンDは生物学的に利用されにくい);骨粗鬆症を有する対象;および/または閉経後女性が含まれる。ビタミンDの食事摂取基準(Dietary Reference Intakes)に関する医学研究所(Institute of Medicine)の報告によれば、食品摂取データは、若年および高齢女性の両方にとってのビタミンDの中位摂取量が現推奨量よりも低いことを示唆しており;データは、若年および高齢女性の50%超がビタミンDの推奨量を摂取していないことを示唆している。
【0094】
本明細書に記載の本発明の方法から任意選択で除外されるのは、腎性骨ジストロフィー(骨軟化症および嚢胞性線維性骨炎を含む)を患う対象の治療処置である。
【0095】
他の態様において、本発明の組成物および方法は、ビタミンDに応答する疾患、すなわち、ビタミンD、25−ヒドロキシビタミンDまたは活性ビタミンD(例えば、1,25−ジヒドロキシビタミンD)が疾患の開始または進行を予防するか、あるいは疾患の徴候または症状を減弱する疾患の予防または治療処置に有用である。このようなビタミンDに応答する疾患には、癌(例えば、乳房、肺、皮膚、黒色腫、結腸、結腸直腸、直腸、前立腺および骨の癌)が含まれる。1,25−ジヒドロキシビタミンDは、いくつかの細胞に関してインビトロで細胞分化を誘導し、かつ/または細胞増殖を阻害することが観察されている。ビタミンDに応答する疾患には、また、自己免疫疾患、例えば、I型糖尿病、多発性硬化症、リウマチ様関節炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、強皮症、線維症、グレーブス病、橋本病、急性または慢性の移植拒絶、急性または慢性の移植片対宿主病、炎症性腸疾患、クローン病、全身性紅斑性狼瘡、シェーグレン症候群、湿疹および乾癬、皮膚炎(アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎および/または慢性皮膚炎を含む)が含まれる。ビタミンDに応答する疾患には、また、他の炎症性疾患、例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患、多嚢胞性腎疾患、多嚢胞性卵巣症候群、膵炎、腎炎、肝炎、および/または感染症が含まれる。ビタミンDに応答する疾患には、高血圧および心血管疾患が含まれることも報告されている。したがって、本発明は、心血管疾患の危険があるまたは該疾患を患う対象、例えば、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、心筋梗塞、心筋虚血、脳虚血、脳卒中、鬱血性心不全、心筋症、肥満またはその他の体重障害、脂質障害(例えば、高脂血症、糖尿病付随性異脂肪血症および混合性異脂肪血症、低アルファリポタンパク血症、高グリセリド血症、高コレステロール血症および低HDL(高密度リポタンパク)を含む異脂肪血症)、代謝性障害(例えば、メタボリック症候群、II型糖尿病、I型糖尿病、高インスリン血症、耐糖能障害、インスリン抵抗性、神経障害、腎障害、網膜症、糖尿病性足部潰瘍および白内障を含む糖尿病性合併症)、および/または血栓症を有する対象の予防または治療処置を考えている。
【0096】
ビタミンD化合物の濃度調節から利益を得ることのできる疾患には、限定はされないが、(i)副甲状腺に関して−副甲状腺機能低下症、偽性副甲状腺機能低下症、二次性副甲状腺機能亢進症;(ii)膵臓に関して−糖尿病;(iii)甲状腺に関して−髄様癌;(iv)皮膚に関して−乾癬、創傷治癒;(v)肺に関して−サルコイドーシスおよび結核症;(vi)腎臓に関して−慢性腎臓病、低リン血症性VDRR、ビタミンD依存性くる病;(vii)骨に関して−抗痙攣治療、小孔性線維形成不全症、嚢胞性線維性骨炎、骨軟化症、骨粗鬆症、骨減少症、骨硬化症、腎性骨ジストロフィー、くる病;(viii)腸に関して−グルココルチコイド拮抗、特発性高カルシウム血症、吸収不良症候群、脂肪便、熱帯性スプルー;および(ix)自己免疫障害が含まれる。
【0097】
本発明の実施形態において、ビタミンD化合物の濃度調節から利益を得る疾患は、癌、皮膚科学的障害(例えば、乾癬)、副甲状腺障害(例えば、副甲状腺機能亢進症および二次性副甲状腺機能亢進症)、骨障害(例えば、骨粗鬆症)および自己免疫障害から選択される。
【0098】
製剤は、当業者に周知の方法によって調製できる。典型的には、医薬として許容し得るワックス、類脂質性物質およびオイルを、必要なら溶融して流動性液体を準備し、それによって均一混合物を得るのをより容易にする。このようにして得られた液状担体に、無水エタノールなどのアルコールに例えば溶解されたビタミンD化合物を添加し、成分を混合して均一混合物を準備する。混合物を、冷却、貯蔵し、その後、充填ゼラチンカプセルなどの単位剤形に分割できる。
【0099】
1つの好ましい方法では、オイルビヒクルの一部、固体ワックスおよび親油性乳化剤を比較的高い温度(例えば65℃)まで加熱、混合した後に吸収増強剤を添加し、続いて均一になるまでさらに混合し、次いで中間的に高められた温度(例えば、50℃〜55℃)まで冷却する。別の容器中で、酸化防止保存剤および残りのオイルビヒクルを、混合し、中間的に高められた温度(例えば50℃)まで加熱し、次いでワックス混合物と合わせ、均一溶液が得られるまで混合する。次に、ビタミンD化合物のアルコール溶液を、均一ワックス溶液と合わせ、均一溶液が得られるまで混合し、好ましくはカプセル中に充填し、次いで室温まで冷却する。別の好ましい方法では、オイルビヒクルの一部、固体ワックスおよび親油性乳化剤を55℃〜60℃の温度で加熱、混合した後、吸収増強剤を添加し、続いて均質になるまでさらに混合する。別の容器中で、酸化防止保存剤および残りのオイルビヒクルを、混合し、55℃〜60℃の温度まで加熱し、次いでワックス混合物と合わせ、均一溶液が得られるまで混合する。次に、ビタミンD化合物のアルコール溶液を、均一ワックス状溶液と合わせ、均一溶液が得られるまで混合し、好ましくはカプセル中に充填し、次いで室温まで冷却する。
【0100】
製剤は、好ましくは、治療を必要とする患者に投与するのに先立ってカプセル中に充填される。このようなカプセルは、硬質または軟質でよいが、軟質カプセルが好ましい。標準的なカプセル充填機を使用し、製剤を溶融することおよび軟質カプセルの殻中に射出充填することなどによって、製剤をゼラチンカプセル中に充填することができる。
【0101】
製剤ならびにその使用および製造方法は、特記しない限り、さらに後に記載されるさらなる任意選択の要素、特徴およびステップの1つまたは複数の任意の組合せを含む実施形態を包含すると考えられる。
【0102】
したがって、実施形態の一類型において、製剤は、さらに、酸化防止剤などの保存剤を含む。ブチル化ヒドロキシルトルエン(BHT)が好ましい。
【0103】
実施形態の別の類型において、ビタミンD化合物は、1種または複数の他の治療薬と組み合わせて投与される。
【0104】
ビタミンD化合物を1種または複数の他の治療薬と組み合わせて投与する場合、投与される組合せにおける化合物のそれぞれの比率は、扱われる個々の疾患状態によって左右される。例えば、25−ヒドロキシビタミンD2および/または25−ヒドロキシビタミンD3を、1種または複数のカルシウム塩(カルシウムサプリメントまたは食事性リン酸塩結合剤として意図された)、ビスホスホネート、カルシウム擬似薬、ニコチン酸、鉄、リン酸塩結合剤、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロール、活性ビタミンDステロール、血糖および高血圧調節薬、各種抗悪性腫瘍薬、ならびにビタミンD薬を分解できるCYP24および他のシトクロムP450酵素の阻害薬と共に経口で投与することを選択できる。さらに、25−ヒドロキシビタミンD2および/または25−ヒドロキシビタミンD3を、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロール、活性ビタミンDステロール、血糖および高血圧調節薬、各種抗悪性腫瘍薬、ならびにビタミンD薬を分解できるCYP24および他のシトクロムP450酵素の阻害薬と共に静脈内で投与することを選択できる。実際、当業者に周知であるように、所望される目的が病態の治療的処置である場合には、より高投与量の本発明化合物が使用され、一方、予防目的に対しては、より低い投与量が一般には使用され、任意の所定の症例において投与される具体的投与量は、投与される具体的化合物、治療すべき疾患、対象の状態、および薬物の活性または対象の応答を変更する可能性のある他の関連する医学的事実に従って調節されると解される。
【0105】
前に説明したように、製剤は、好ましくはゼラチンカプセル中に充填されるが、製剤のままの形態、または腸溶性被覆などの1つまたは複数の表面被覆層を有する形態で投与することもできる。また、製剤を圧縮して錠剤とすることができると考えられ、このような場合には、1種または複数の錠剤圧縮用賦形剤を含めることができる。
【0106】
本明細書に記載の組成物および方法において、好ましいステップ、好ましい成分、その好ましい組成範囲、およびこれらの好ましい組合せは、本明細書中で提供される種々の具体的実施例から選択できる。例えば、好ましい製剤は、例えば、約0.1wt%(例えば、0.12wt%)の25−ヒドロキシビタミンD(例えば、25−ヒドロキシビタミンD3)、約2wt%(例えば2.32wt%)のエタノール、約10wt%(例えば9.75wt%)のGELUCIRE44/14、約27wt%(例えば27.51wt%)の硬質パラフィン、約38wt%(例えば37.85wt%)のGMS、約22wt%(例えば22.43wt%)のミネラルオイル、および任意選択で少量の保存剤(例えば、0.02wt%のBHT)を含有する。この製剤の変形体は、約20%の硬質パラフィンおよび約29%のミネラルオイルを含有する。
【0107】
さらに別の好ましいカプセルの実施形態、および50μgの実施形態のための仕様を下表2に示す。
【表2】
【実施例】
【0108】
以下の実施例では、具体的な製剤とそれらの調製方法を例示する。実施例は、例示のために提供され、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【0109】
(実施例1)
調節放出性製剤
下表3に従って、確認された成分を示した量で均一に混合すること、およびその混合物を硬質ゼラチンカプセル中に充填することによって、9種の経口ビタミンD製剤を調製した。製剤9は、従来技術による即放性製剤であり、ここで、MIGLYOL812Nは、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリドの商品名であり、米国ニュージャージー州CranfordのCONDEA Chemie GmbHから入手できる。製剤を、ユカタンミニブタ(約10kg)の群に250μgの25−ヒドロキシビタミンD3に相当する単回投与で投与した。各群は5頭の動物を含んでいた。5頭のユカタンミニブタからなる第10群には、250μgに相当する25−ヒドロキシビタミンD3を静脈内注射で投与した。
【0110】
【表3】
【0111】
投与前、ならびに投与後0.5、1、2、4、6、8、12、24、48、96、168、240、336、432、504、576および672時間の時点で血液を採取した。血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度を、液体クロマトグラフィー/質量分光法/質量分光法(LC MS/MS)で分析した。
【0112】
図1〜図8には、群1〜8に関する最初の24時間にわたる血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の変化を表示する。さらに、図7には、群7と共に群9の即放性対照に関するデータも表示する。濃度プロフィールは、本発明による群7の製剤が、(a)最初の24時間にわたって血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の漸増的かつ継続的上昇をもたらし、かつ(b)25−ヒドロキシビタミンD3濃度の急増を回避したことを示している。
【0113】
図9〜図11には、それぞれ群7、9および10についての検討期間にわたる血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の変化を表示する。図12には、それぞれ群7および9に対する図9および10のデータを重ねて表示する。
【0114】
濃度プロフィールは、本発明による群7の製剤が、血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の漸増的上昇をもたらし、25−ヒドロキシビタミンD3濃度の急増を回避し、長期にわたって血清中25−ヒドロキシビタミンD3の継続的増加をもたらしたことを示している。
【0115】
120分間にわたる同製剤のインビトロ溶出試験(溶出媒体:Ctab/NaH2PO4緩衝液、pH6.8中の0.056リパーゼ)は、インビボでのデータに概略的には一致する結果を示した(例えば、製剤2および7は、%溶出のより緩やかで不十分な上昇を示すのに、即放性対照は、30分以内に100%の放出を示した)。
【0116】
下表4のデータは、本発明による群7の製剤を投与することによって試験対象中に生じた各種薬物動態パラメーターを、従来技術による群9の即放性製剤および群10のIV注射投与と比較して示す。該データは、本発明による群7の製剤が、濃度スパイクを回避し、即放性剤形および静脈内注射に比べてはるかに遅い時点で最大濃度を呈示し、かつ同種の即放性剤形に比べてより長いクリアランス半減期を呈示したことを立証している。本発明による群7の製剤は、投与された25−ヒドロキシビタミンD3の全身循環からの、群9と比較してより遅い排除をもたらした。
【0117】
本発明の群7の製剤としてミニブタ(約10kg)に投与された250μgの25−ヒドロキシビタミンD3の単回投与は、血清中25−ヒドロキシビタミンD3のほぼ40ng/mLの上昇をもたらした。50μgの25−ヒドロキシビタミンD3のヒト(約60kg)への単回投与は、血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度を約1.4ng/mL程度増加させると予想される。
【0118】
【表4】
【0119】
群1〜6および8の製剤に関するCmax、Tmax、および生物学的利用能の比較データを下表5に示す。
【0120】
【表5】
【0121】
(実施例2)
ミニブタでの経口カプセルの薬物動態研究
本研究の目的は、a)25−ヒドロキシビタミンD3の250μg調節放出性(MR)カプセル×1錠、b)250μgMRカプセル×2錠、c)250μgMRカプセル×4錠、d)1000μgMRカプセル×1錠、e)25−ヒドロキシビタミンD3の250μg即放性(IR)カプセル×1錠、およびf)3日連続で250μgMRカプセル×1錠を投与した後の、雄性ユカタンブタ(体重約45kg)における25−ヒドロキシビタミンD3の全身性吸収を評価することとした。
【0122】
MR製剤は、上記実施例1の群7の製剤をベースにして調製した。1000μgMRカプセルの場合には、エタノールを相対的に減らすことによって、25−ヒドロキシビタミンD3をより高い濃度に調整した。
【0123】
IR製剤を調製するには、25−ヒドロキシビタミンD3(0.12%wt/wt;カプセル当たり250μg)を、米国薬局方エタノール(2.32%wt/wt;可溶化剤)に溶解し、米国薬局方コーン油(97.54%wt/wt;主要ビヒクル)およびブチル化ヒドロキシトルエン(0.02%wt/wt;酸化防止剤)と混合した。コーン油溶液(205mg)をサイズが0号の2ピース硬質ゼラチンカプセル中に充填した。
【0124】
群当たり8頭の雄性ユカタンミニブタに、それぞれ下表6中の投与計画に基づいた投与量を投与した。初回投与に先立って、ならびに初回投与の0.5、1、2、4、6、8、10、12、24、48、72および96時間後に動物から血液を採取した。群6の動物には、それぞれ24時間および48時間の血液検体を採取した直後に2回目および3回目の投与量を投与した。採取したすべての検体中の25−ヒドロキシビタミンD3を分析した。群1および群5の動物から、次の時点、すなわち、投与前、ならびに初回投与の0.5、1、2、4、6、8、10、12、24、48、72および96時間後に採取した検体中のイオン性カルシウムおよび総カルシウムを測定した。
【0125】
【表6】
【0126】
ブタの血清中の25−ヒドロキシビタミンD3を、固相抽出(SPE)を利用し、タンデム質量分光検出を備えた高速液体クロマトグラフィー(LC−MS/MS)を用いて分析した。血清検体は、ベースラインを補正して、薬物動態の解析から25−ヒドロキシビタミンD3の内因性濃度を除外した。これを達成するために、各動物の投与前25−ヒドロキシビタミンD3濃度を、その各投与後濃度から控除した。1ng/mL(定量下限界)に満たない血清検体は、値を0とした。
【0127】
薬物動態パラメーターを表7に記す。
【表7】
【0128】
投与量で正規化した群1〜3に関する薬物動態パラメーターを表8に記す。
【表8】
【0129】
1、2および4錠のカプセル(250μgMRカプセル)を投与された群の場合、投与量の関数としての曝露の増加が存在した。1×250μgおよび2×250μgの投与量では、投与量に比例する曝露が生じたが、2×250μgと4×250μgの投与量の間では、比例にはわずかに至らない曝露が観察された。最大濃度に到達する平均時間(Tmax)は、25.5〜30.5時間であった。
【0130】
単一カプセル(1×1000μg)による曝露と4カプセル(4×250μg)による曝露との比較は、複数カプセルで投与された動物でのより高い曝露を示した。平均Tmaxなどの投与量に依存しないパラメーターは、両方の投与戦略に対して同様であった。
【0131】
25−ヒドロキシビタミンD3の調節放出性(MR)製剤(群1)とIR製剤(群5)との比較は、MR製剤が血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度のスパイクを回避することを示した。IR製剤と比較したMR製剤の相対的生物学的利用能はほぼ77%であった。MR製剤を服用した動物は、IR製剤を服用した動物(Tmax=5.75時間)と比較して有意な遅延を示す26.5時間の平均Tmaxを示した。
【0132】
1、2および3日目に1×250μgのMRカプセルを服用した動物での曝露を評価した。投与後24時間のベースラインを超える25−ヒドロキシビタミンD3濃度の平均増加は、1、2および3回目の投与後にそれぞれ17.3、31.5および43.9ng/mLであった。
【0133】
図13〜図18は、それぞれ群1〜6の動物に対する平均薬物動態プロフィールを示す。図19は、25−ヒドロキシビタミンD3の250μgMR製剤および250μgIR製剤に対する薬物動態プロフィールの比較を示す。
【0134】
(実施例3)
ミニブタでの経口カプセルによる全身曝露研究
本研究の目的は、十分なビタミンD摂取量を含む食餌で飼育された健常雄性ユカタンブタ(約50〜60kgの体重)における、1日当たり、次のもの、a)25−ヒドロキシビタミンD3の25μg即放性(IR)カプセル(群1)、b)25−ヒドロキシビタミンD3の25μg調節放出性(MR)カプセル(群2)、およびc)25−ヒドロキシビタミンD3の125μgMRカプセル(群3)を21日間投与した後の、25−ヒドロキシビタミンD3全身濃度の増加を評価することとした。
【0135】
MR製剤は、上記実施例1の群7の製剤をベースにして調製した。25−ヒドロキシビタミンD3濃度の相違は、エタノールを相対的に変化させて調整した。
【0136】
IR製剤を調製するには、25−ヒドロキシビタミンD3(0.12%wt/wt;カプセル当たり250μg)を、米国薬局方エタノール(2.32%wt/wt;可溶化剤)に溶解し、米国薬局方コーン油(97.54%wt/wt;主要ビヒクル)およびブチル化ヒドロキシトルエン(0.02%wt/wt;酸化防止剤)と混合した。コーン油溶液(205mg)をサイズが0号の2ピース硬質ゼラチンカプセル中に充填した。
【0137】
群当たり8頭の雄性ユカタンミニブタに、下表9中の投与計画に基づいた1日当たり投与量をそれぞれ投与した。
【0138】
【表9】
【0139】
血液は、動物から初回投与前に、および前回投与の24時間後に次の投与に先立って毎日採取した。血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度は、固相抽出(SPE)を利用し、タンデム質量分光検出を備えた高速液体クロマトグラフィー(LC−MS/MS)を用いて分析した。次の時点、すなわち、投与前(0日目)、および最終回投与(21日目)の24時間後に動物から採取された検体中の血清中総カルシウムを測定した。
【0140】
3群のすべてにおいて、投与前の平均血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度は、ほぼ26ng/mLであった。21回の投与後に、血清中25−ヒドロキシビタミンD3の増加が、すべての動物で観察された。25μgのMRまたはIRカプセルの反復投与に続いて、血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度は、30ng/mLを超える濃度まで増加し、ほぼ17〜18日目にそれぞれほぼ45および55ng/mLで安定状態になり始めた。単回投与量を投与すると、血清中25−ヒドロキシビタミンD3の増加は、2つの投与計画の間で類似していた(3.84対4.18ng/mL)。一方、投与終了の時点で、その増加は、IR製剤を投与された動物の方がほぼ60%大きかった。この発見は、MRカプセルによる生物学的利用能は、単回投与後のIRのそれに類似しているが、MRカプセルは、全身性25−ヒドロキシビタミンD3を徐々に増加させることのできる25−ヒドロキシビタミンD3の反復投与法を提供することを示している。
【0141】
125μgMRカプセルを投与された動物は、より高い血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度を示した。5倍量の投与(25μgに対して125μgのMRカプセル)は、単回および反復投与の後に25−ヒドロキシビタミンD3のほぼ5倍の増加をもたらした。この発見は、MRカプセルによる曝露が、25〜125μgの範囲で投与量に比例することを示している。
【0142】
血清中カルシウム濃度に対するIRおよびMRカプセル投与の効果を調べた。IRまたはMRのどちらかを21回投与した後に、血清中カルシウム濃度は、投与前のベースライン濃度から変化しなかった、この発見は、25−ヒドロキシビタミンD3のMRカプセルを利用して、血清中カルシウムの増加をもたらすことなしに、血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度を100ng/mLを超えるまで増加させることができることを示している。
【0143】
群1〜3に関する平均未補正血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度対時間のプロフィールを図20に例示する。群1〜3に関する平均ベースライン補正後血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度対時間のプロフィールをそれぞれ図21、図22および図23に例示する。
【0144】
図24は、群1の動物に関する投与前から21日目までの副甲状腺ホルモン平均濃度の変化を示し、図25は、群2の動物に関する投与前から21日目までの副甲状腺ホルモン平均濃度の変化を示す。即放性およびMR製剤は、両方とも血清中25−ヒドロキシビタミンD3を上昇させるが、即放性製剤は、PTHの望ましくない薬理学的減少をもたらす。MR製剤は、PTHの超生理学的急性低下をもたらさず、著しく上昇する25−ヒドロキシビタミンD3濃度に対する生理学的適応と関連すると思われる緩慢なPTHの低下を可能にする。MR製剤は、PTHの望ましくない薬理学的低下に関連する安全上の懸念なしに、より高い血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の達成を可能にするはずである。
【0145】
(実施例4)
ビーグル犬での経口カプセルの薬物動態研究
25−ヒドロキシビタミンD3の調節放出性カプセルを、ビーグル犬(10kg)に13週間連続して毎日投与した。該MR製剤は、上記実施例1の群7の製剤をベースにして調製した。25−ヒドロキシビタミンD3濃度の相違は、エタノールを相対的に変化させて調整した。
【0146】
カプセルは、経口で下表10に示す通りに投与した。
【表10】
【0147】
初回投与の前、および初回投与に続く13週(92日)までの特定の時点で、イヌから採血した。血清を作製し、液体クロマトグラフィータンデム質量分光法を利用して、血清中の25−ヒドロキシビタミンD3を分析した。
【0148】
群1〜5に関する平均血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度対時間のプロフィールを、図26に例示する。
【0149】
(実施例5)
溶出による放出
図27は、上記実施例2による250μgカプセルに関する溶出放出プロフィールを示し、該プロフィールは、24時間の時点で25−ヒドロキシビタミンD3の約72%の平均放出を示した。上記のように、好ましくは、調節放出性製剤は、最初の24時間で薬物の約80%を放出する。
【0150】
(実施例6)
ビタミンD不足の健康成人男性志願者での効力研究
血清中25−ヒドロキシビタミンDを最適濃度(>30ng/mL)まで戻す上での3種の異なるビタミンD製剤の有効性を、ビタミンD不足と診断された健康な非肥満男性での23日間の研究で調べた。製剤の1つ(製剤#1)は、30μgの25−ヒドロキシビタミンD3を含有する、上記実施例1の群7に記載のように調製された軟質ゼラチンカプセルである。第2の製剤(製剤#2)は、中鎖トリグリセリドのオイルに溶解された50,000IUのエルゴカルシフェロールを含有する同一外観の即放性軟質ゼラチンカプセルである。第3の製剤(製剤#3)は、中鎖トリグリセリドのオイルに溶解された50,000IUのコレカルシフェロールを含有するやはり同一外観の即放性軟質ゼラチンカプセルである。この研究には、全部で100名の健康な白色人種およびアフリカ系アメリカ人男性が参加し、そのすべては、30〜45歳であり、15〜29ng/mL(両端を含む)の血清中25−ヒドロキシビタミンD濃度を有する。すべての対象は、研究開始前の60日間および続いて研究終了までの他のビタミンDサプリメントの摂取、および特に問題となるほどの日光曝露を絶つ。研究の1日および2日目に、血清中25−ヒドロキシビタミンDの治療前ベースライン値を確立するため、すべての対象から早朝空腹時血液検体を集める。3日目の朝に、対象からさらなる空腹時血液検体(t=0)を集め、対象を、4つの治療群の1つにランダムに割り振り、朝食前に1つの試験カプセルを投与する。すなわち、群#1の対象には、製剤#1の1カプセルをそれぞれ服用させ、群#2および群#3の対象には、それぞれ、製剤#2または製剤#3の1カプセルをそれぞれ服用させる。群#4の対象には、そっくりのプラセボカプセルを服用させる。群#1の対象には、4日目から22日目までの朝に製剤#1のさらなるカプセルを朝食前にそれぞれ服用させるが、群#2、#3および#4の対象には、さらなるカプセルを服用させない。4、5、6、10、17および23日目(または、投与開始後1、2、3、7、14および20日目)に、治療群に無関係に各対象から早朝空腹時血液検体を採血する。すべての採取した血液を、25−ヒドロキシビタミンDの含有濃度について分析し、データを、ベースライン値の補正を行った後に治療群によって解析する。対象は、4つのすべての治療群において、1〜3日目に採血された空腹時血液検体の分析をベースにしてほぼ16〜18ng/mLの平均ベースライン血清中25−ヒドロキシビタミンD濃度を示す。群#4の対象(対照群)は、研究過程にわたって平均血清中25−ヒドロキシビタミンDの有意な変化を示さない。群#1の対象は、23日目までに少なくとも30ng/mLに到達する着実に増加する平均血清中25−ヒドロキシビタミンDを示す。極めて対照的に、群#2の対象は、投与後の最初の数日間、29ng/mLの最大値に到達する平均血清中25−ヒドロキシビタミンDの著しい増加を示し、その後急速に降下する。研究終了まで、群#2の血清中25−ヒドロキシビタミンDは、ベースラインに比べて有意に低い。群#3の対象は、投与後の最初の2週間を通して平均血清中25−ヒドロキシビタミンDの持続的増加を示し、その後、緩慢ではあるが漸進的な減少が起こる。研究終了まで、平均血清中25−ヒドロキシビタミンDは、30ng/mL未満であり、治療前ベースラインに比べてほぼ11ng/mLだけ高い。本研究によるデータは、本明細書に記載のように製剤化され、1日30μgの投与量で20日間投与される600μgの25−ヒドロキシビタミンD3の投与は、25−ジドロキシビタミンDの低い血清中濃度を最適濃度まで戻す上で、NKFおよび経口ビタミンD補充療法に関する他の指導的専門家によって現在推奨されているような、単回投与で投与される50,000IUのエルゴカルシフェロールまたはコレカルシフェロールのどちらかの即放性製剤に比べて実質上より効果的であることを立証している。
【0151】
(実施例7)
ステージ4のCKD、およびビタミンDの不足に付随する二次性副甲状腺機能亢進症を有する患者での効力研究
血清中総25−ヒドロキシビタミンDを最適濃度(>30ng/mL)まで戻す上での経口即放性および調節放出性25−ヒドロキシビタミンD3の有効性を、ステージ4のCKD、およびビタミンDの不足に付随する二次性副甲状腺機能亢進症を有する成人の男性および女性患者での6カ月間の研究で調べる。研究では2種の製剤を使用する。製剤の1つ(製剤#1)は、調節放出性製剤中に40μgの25−ヒドロキシビタミンD3を含有する軟質ゼラチンカプセルである。第2の製剤(製剤#2)は、即放性製剤中に40μgの25−ヒドロキシビタミンD3を含有する軟質ゼラチンカプセルである。本研究には、全部で100名の対象が参加し、そのすべては、30〜70歳であり、15〜29ng/mL(両端を含む)の血清中25−ヒドロキシビタミンD濃度、および登録時点で最新のK/DOQIガイドライン中に発表されている目標濃度を超える血清中全分子副甲状腺ホルモン(iPTH)濃度を有する。すべての対象は、研究開始前の60日間および続いて研究終了までの他のビタミンDサプリメントの摂取、ならびに特に問題となるほどの総曝露を絶つ。すべての対象は、製剤#1または製剤#2のどちらかの2カプセルで毎日の投与を開始する。血清中総25−ヒドロキシビタミンDを隔週間隔で測定し、血清中iPTHを3カ月置きの間隔で測定する。1カ月後、両製剤の1日当たり投与量を、血清中総25−ヒドロキシビタミンDが50〜90ng/mLである患者では変えないで維持し、血清中総25−ヒドロキシビタミンDが50ng/mL未満である患者では1カプセルだけ増やし、血清中総25−ヒドロキシビタミンDが90ng/mLを超える患者では1日1カプセルだけ減らす。血清中総25−ヒドロキシビタミンDを50〜90ng/mLに維持するために、1日当たり投与量のさらなる調整を行う。製剤#1および#2の投与は、両方とも、高カルシウム血症、高カルシウム尿症および高リン血症を発症しないとの条件で期限を決めずに継続されるが、その場合には、投与量の適切な調整がなされる。6カ月後、対象の血清中総25−ヒドロキシビタミンD濃度は、製剤#1を用いる治療で50〜90ng/mLで安定したままであることが見出され、血清中iPTHは、K/DOQIガイドライン中に発表されている目標と一致した濃度で安定したままであることが見出される。高カルシウム血症、高カルシウム尿症および高リン血症の発症は、いったん安定した投与が達成されると稀である。対照的に、6カ月後、対象の血清中総25−ヒドロキシビタミンD濃度は、製剤#2を用いる治療で50〜90ng/mLで安定したままであることが見出されず、血清中iPTHは、K/DOQIガイドライン中に発表されている目標と一致した濃度に到達しない。高カルシウム血症、高カルシウム尿症および高リン血症の発症は、実在する。
【0152】
この研究によるデータは、25−ヒドロキシビタミンD3の調節放出性製剤が、カルシウムおよびPTHの代謝に関連する許容できない副作用を引き起こさないで、血清中25−ヒドロキシビタミンDを増加させるのに効果的であることを立証している。
【0153】
これまでの説明は、明瞭な理解のためにのみ与えられ、本発明の範囲内での修正は、当業者にとって明らかである可能性があるので、その説明から不必要な限定を推測すべきではない。
【0154】
明細書の全体を通して、組成物が成分または材料を含むと記載される場合、特記しない限り、該組成物は、また、列挙した成分または材料の任意の組合せから本質的に構成され得るか、構成され得ると考えられる。
【0155】
本明細書中で開示される方法、およびその個々のステップの実施は、手で、および/または電子装置の助けを用いて実施できる。該方法は、特定の実施形態に関して説明されるが、当業者は、該方法と関連した行為を実施する他の方法を使用できることを容易に認識するであろう。例えば、各種ステップの順序は、特記しない限り、該方法の範囲または精神から逸脱しないで変更できる。さらに、個々のステップのいくつかを、組み合わせ、削除し、あるいは付加的ステップにさらに再分割することができる。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
米国特許法第119条第(e)項により2007年4月25日出願の米国特許仮出願第60/913853号の利益をこれによって請求する。
【0002】
本開示は、概して、制御放出性医薬組成物に関する。より詳細には、本発明は、ビタミンD化合物を経口で送達するための制御放出性製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロール(まとめて「ビタミンD」と呼ばれる)は、ビタミンDプロホルモンのための脂溶性セコステロイド前駆体である。25−ヒドロキシビタミンD2および25−ヒドロキシビタミンD3(本明細書中では合わせて「25−ヒドロキシビタミンD」と呼ぶ)として知られるビタミンD代謝産物は、血流中のカルシウムおよびリンの正常濃度を維持することに寄与するビタミンDホルモンのための脂溶性ステロイドプロホルモンである。
【0004】
コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールは、通常、ヒトの血液中に安定的な低い濃度で存在する。栄養補強されていない食事は、たとえビタミンDで補強された食品を含むものでさえビタミンD含有量が低く、食後に血中ビタミンD濃度の何らかの増加が起こるにしても、それは微々たるものである。ヒトにおけるビタミンD供給のほとんどすべては、強化食品、日光曝露から、または食事性サプリメントに由来し、後者の供給源は、ますます重要になりつつある。血中ビタミンD濃度は、日光曝露後であっても徐々に上昇するだけである。なぜなら、皮膚の7−デヒドロキシコレステロールは、UV照射によってプレビタミンD3に変えられ、該プレビタミンD3は、皮膚中で数日にわたるコレカルシフェロールへの熱転化を受けた後、血液中に循環するからである。対照的に、現在利用できるようなサプリメントは、管腔内、血中および細胞内ビタミンD濃度の投与量に比例した著しい増加を引き起こす。
【0005】
コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールは、両方とも、人体の肝臓中に主として存在する酵素によって代謝されてプロホルモンになる。コレカルシフェロールは、代謝されてプロホルモン、25−ヒドロキシビタミンD3になり、エルゴカルシフェロールは、代謝されて2種のプロホルモン、25−ヒドロキシビタミンD2および24(S)−ヒドロキシビタミンD2になる。コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールは、また、腸細胞などのいくつかの細胞中で、肝臓中に見出されるものと同一またはそれに類似した酵素によって代謝されて肝臓外プロホルモンになる場合がある。どちらの前駆体の濃度上昇もプロホルモンの産生を高め、同様に、前駆体濃度の低下は、ホルモン産生を低下させる。コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロール(「コレカルシフェロール/エルゴカルシフェロール」)の血中濃度の急増は、細胞内ビタミンD濃度を一時的に高め、プロホルモンの産生を加速し、細胞内および血中プロホルモン濃度を上昇させることができる。コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールの血中濃度の急増は、また、プロホルモンを産生する酵素を飽和して、過剰なビタミンDを代謝させるかあるいは脂肪組織中での長期貯蔵へ切り替えることができる。脂肪組織中に貯蔵されたビタミンDは、将来におけるプロホルモンへの転化にあまり利用できない。現在の経口サプリメントを摂取した後の管腔内ビタミンD濃度の急増は、局所腸細胞中のビタミンDおよびプロホルモン濃度を直接的に押し上げ、それによって、小腸中でのカルシウムおよびリンの代謝に関する「初回通過」効果を発揮することができる。
【0006】
ビタミンDプロホルモンは、腎臓中でさらに代謝されて強力なホルモンになる。プロホルモン、25−ヒドロキシビタミンD3は、代謝されてホルモン、1α,25−ジヒドロキシビタミンD3(またはカルシトリオール)になり、同様に25−ヒドロキシビタミンD2および24(S)−ヒドロキシビタミンD2は、代謝されてそれぞれ1α,25−ジヒドロキシビタミンD2および1α,24(S)−ジヒドロキシビタミンD2として知られるホルモンとなる。プロホルモンからのこれらのホルモンの産生は、腎臓外の、必要な酵素(群)を含む細胞中で行われる場合もある。
【0007】
血中または細胞内プロホルモン濃度の急増は、過剰な腎臓外ホルモン産生を促進し、カルシウムおよびリン代謝に関する局所的有害作用につながる場合がある。このような急増は、また、その後の補給性ビタミンDからの肝臓でのプロホルモン産生を阻害し、腎臓およびその他の組織中でのビタミンDおよび25−ヒドロキシビタミンDの両方の代謝を促進する場合がある。
【0008】
血中ビタミンDホルモン濃度は、健康な個体では1日を通して一定のままであるのが一般的であるが、日光曝露の季節的変化またはビタミンD摂取の継続的変化に応じて、長期にわたって相当に変化する場合がある。通常、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロールおよび3種のビタミンDプロホルモンの血中濃度も、日光曝露および非栄養補給日常食から継続的で十分なビタミンDを与えられるなら、1日を通して一定である。しかし、コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールの血中濃度は、現在利用可能なビタミンDサプリメントの、特に、ビタミンD欠乏症、くる病または骨軟化症を予防するのに必要とされる量を大きく超える投与量での投与後に、著しく増大する場合がある。
【0009】
ビタミンDホルモンは、ヒトの健康において、細胞内ビタミンD受容体(VDR)によって仲介される重要な役割を有する。特に、ビタミンDホルモンは、小腸による食事性カルシウムの吸収、および腎臓によるカルシウムの再吸収を制御することによって血中カルシウム濃度を調節する。過剰なホルモン濃度は、異常に高められた尿中カルシウム(高カルシウム尿症)、血中カルシウム(高カルシウム血症)および血中リン(高リン血症)につながる場合がある。ビタミンDホルモンは、また、細胞の分化および増殖の調節、副甲状腺による副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌、および正常な骨形成および骨代謝に関与する。さらに、ビタミンDホルモンは、筋骨格、免疫およびレニン−アンジオテンシン系を正常に機能させるのに必要とされる。ビタミンDホルモンに関するその他多くの役割は、ほとんどあらゆるヒト組織中で報告されている細胞内VDRの存在に基づいて仮定され、説明されている。
【0010】
二次性副甲状腺機能亢進症は、主としてビタミンD欠乏症のため発症する障害である。それは、異常に高められた血中PTH濃度によって特徴付けられ、早期の発見および治療が欠如すると、副甲状腺過形成および一連の代謝性骨疾患が付随するようになる。それは、慢性腎臓病(CDK)の広く知られた合併症であり、CKDが進行するにつれて発生率が上昇する。二次性副甲状腺機能亢進症は、健康な腎臓を有する個体でも、十分なビタミンDの供給を妨げる環境、文化または食事因子によって発症する場合がある。
【0011】
二次性副甲状腺機能亢進症およびCKDでのその発生に関して、25−ヒドロキシビタミンD3および25−ヒドロキシビタミンD2からビタミンDホルモン類(まとめて「1,25−ジヒドロキシビタミンD」)を合成するための主な部位である、隣接ネフロンの進行性細胞喪失が存在する。さらに、ネフロンの機能喪失は、Dホルモンを産生するための反応を触媒する酵素である腎臓の25−ヒドロキシビタミンD−1α−ヒドロキシラーゼの活性を低下させる過剰なリンの保持につながる。これら2つの事象は、ビタミンDの供給が十分であるのに中度から重度のCKDを有する患者において普通に見出される1,25−ジヒドロキシビタミンDの低い血清中濃度を説明する。
【0012】
血清中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度の低下は、直接および間接的機構によって、増大した、そして最終的には過剰なPTH分泌を引き起こす。生じる副甲状腺機能亢進症は、著しく増大した骨代謝回転、およびその続発症である腎性骨ジストロフィーにつながり、該ジストロフィーには、嚢胞性線維性骨炎、骨軟化症、骨粗鬆症、骨外性石灰化、および関連障害、例えば、骨痛、関節周囲炎症およびMockerberg硬化症などのその他各種疾患を含めることができる。血清中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度の低下は、また、筋力低下、および骨格変形を伴う発育遅滞(最も多くは小児患者で認められる)を引き起こす場合がある。
【0013】
血中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度は、PTHを含むフィードバック機構によって精密に調節される。腎臓の1α−ヒドロキシラーゼ(またはCYP27B1)は、PTHによって刺激され、1,25−ジヒドロキシビタミンDによって阻害される。血中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度が降下すると、副甲状腺は、細胞内ビタミンD受容体を介してこの変化を感知して、PTHを分泌する。分泌されたPTHは、腎臓のCYP27B1の発現を刺激し、それによって、ビタミンDホルモンの産生を増大させる。血中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度が再び上昇するにつれて、副甲状腺は、さらなるPTHの分泌を減衰させる。血中PTH濃度が降下するにつれて、ビタミンDホルモンの腎臓での産生が減少する。血中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度の上昇は、また、CYP27B1によるさらなるビタミンDホルモンの産生を直接的に阻害する。
【0014】
サルコイドーシスなどのいくつかの障害において、またはビタミンDホルモン補充療法でのボーラス投与の結果として発生し得るような、血中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度が過剰に高くなる状況で、PTHの分泌は異常に抑制され得る。PTH分泌の過剰抑制は、カルシウム恒常性の撹乱を引き起こす、または悪化させる場合がある。副甲状腺および腎CYP27B1は、血中ビタミンDホルモン濃度の変化に鋭敏であり、その結果、血清中1,25−ジヒドロキシビタミンDは、任意の24時間中に20%未満で上下させて厳重に制御される。ビタミンDホルモンの腎臓での産生と対照的に、腎臓外での産生は、精密なフィードバック制御下にない。
【0015】
1,25−ジヒドロキシビタミンDおよび基質25−ヒドロキシビタミンDプロホルモンの血中濃度、ならびにそれらの調節は、また、1α−ヒドロキシビタミンD2および19−ノル−1,25−ジヒドロキシビタミンD2などのビタミンDホルモン類似体によって影響される場合がある。
【0016】
特定組織に対するビタミンDホルモンの作用は、それらのホルモンがそれらの組織中の細胞内VDRに結合(または占有)する程度によって左右される。コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールは、ビタミンDホルモンのそれに比べて少なくとも100分の1であると見積もられるVDRに対する親和性を有する。結果として、生理学的濃度のコレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールは、前以てビタミンDホルモンへ代謝されないと、あったとしてもわずかな生物学的作用しか発揮しない。しかし、正常に比べて10〜1,000倍高い範囲の超生理学的濃度のコレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールは、VDRを十分に占拠し、ビタミンDホルモンに似た作用を発揮できる。同様に、プロホルモン、25−ヒドロキシビタミンD2および25−ヒドロキシビタミンD3は、VDRに対して、ビタミンDホルモンのそれに比べて、やはり少なくとも100分の1であると見積もられる本質的に同一の親和性を有する。結果として、生理学的濃度の25−ヒドロキシビタミンD2および25−ヒドロキシビタミンD3は、前以てビタミンDホルモンへ代謝されないと、あったとしてもわずかな生物学的作用しか有さない。しかし、正常に比べて10〜1,000倍高い範囲の超生理学的濃度の25−ヒドロキシビタミンD2および25−ヒドロキシビタミンD3は、VDRを十分に占拠し、ビタミンDホルモンに似た作用を発揮できる。
【0017】
ビタミンDプロホルモンの産生は、ビタミンD不足またはビタミンD欠乏症(あるいは、ビタミンD不足症)などの状態のように、ビタミンDが供給不足である場合に減退する。ビタミンDプロホルモンの低い産生は、25−ヒドロキシビタミンDの低い血中濃度につながる。不十分なビタミンD供給は、日光にめったに曝露されない、慢性的に不十分なビタミンD摂取を有する、または脂溶性ビタミン(ビタミンDなど)の腸での吸収を低下させる状態を有する個体で発生することが多い。最近、北部地方に住むほとんどの個体は、不十分なビタミンD供給を有することが報告されている。未治療で放置すると、不十分なビタミンD供給は、くる病および骨軟化症を含む深刻な骨障害を引き起こす場合がある。
【0018】
米国科学アカデミーの医学研究所(IOM)は、健康な個体に対するビタミンDの適正摂取量(AI)は、個体の年齢および性別に応じて1日につき200〜600IUの範囲であると結論付けている。参照により本明細書に組み込まれる、食事摂取基準の科学的評価に関する常任委員会、「食事摂取基準:カルシウム、リン、マグネシウム、ビタミンD、およびフッ素」、Washington、DC:National Academy Press(1997)を参照されたい。ビタミンDのAIは、主として、ビタミンD欠乏症、くる病または骨軟化症を予防するのに十分な血清中25−ヒドロキシビタミンD濃度(または少なくとも11ng/mL)に基づいて制定された。IOMは、また、より高い投与量が、高カルシウム尿症、高カルシウム血症、ならびに心不整脈、発作、および全身性の血管とその他軟組織の石灰化を含む関連続発症のリスク増加に関連しているという証拠に基づいて、1日につき2,000IUのビタミンDに関する最大許容摂取量濃度(UL)を確立した。
【0019】
現在利用可能な経口ビタミンDサプリメントは、最適な血中25−ヒドロキシビタミンD濃度を達成しかつ維持するための理想からかけ離れている。これらの調合物は、典型的には、400IU〜5,000IUのビタミンD3または50,000IUのビタミンD2を含有し、消化管での急速または即放用に製剤化される。ビタミンDの充足にしばしば必要とされるような慢性的高投与量で投与する場合、これらの製品は、下記に要約する重要でしばしば厳しい制約を有する。
【0020】
高投与量の即放性ビタミンDサプリメントは、血中ビタミンD濃度の著しい急増を引き起こし、それによって、(a)脂肪組織中へのビタミンDの貯蔵(このことは、貯蔵されたビタミンDが後程の肝臓での25−ヒドロキシビタミンDへの転化にあまり利用できないので、望ましくない)、(b)肝臓でのビタミンDの代謝産物への異化(このことは、24−および/または26−ヒドロキシル化により血中25−ヒドロキシビタミンD濃度を上昇させるのにあまり有用でないか、あるいはもはや有用ではない)、および(c)ビタミンDの過剰な細胞内24−または25−ヒドロキシル化(このことは、高カルシウム尿症、高カルシウム血症および高リン血症のリスク増大につながる)を促進する。
【0021】
高投与量の即放性ビタミンDサプリメントは、また、血中および細胞内25−ヒドロキシビタミンD濃度の急増またはスパイクを引き起こし、それによって、(a)ビタミンDホルモンの過剰な腎臓外産生(カルシウムおよびリン恒常性の局所的異常、ならびに高カルシウム尿症、高カルシウム血症および高リン血症のリスク増大につながる)、(b)腎臓およびその他の組織中での24−および/または26−ヒドロキシル化によるビタミンDおよび25−ヒドロキシビタミンDの両方の異化加速、(c)肝臓でのビタミンDプロホルモン産生の下向き調節(ビタミンDの不足または欠乏の効率的な充足を不必要に妨害する)、および(d)VDRへの直接結合によって仲介されるカルシウムおよびリン恒常性の局所的異常を促進する。
【0022】
さらに、高投与量の即放性ビタミンDサプリメントは、例えば十二指腸の管腔中でビタミンDの超生理学的な薬理学的濃度を引き起こし、(a)腸細胞での25−ヒドロキシル化、およびカルシウムおよびリンの腸吸収の局所性刺激(高カルシウム尿症、高カルシウム血症および高リン血症のリスク増大につながる)、(b)局所腸細胞中での24−および/または26−ヒドロキシル化によるビタミンDの異化(全身性生物学的利用能の減少を引き起こす)、および(c)主としてキロミクロンによる吸収(肝臓での異化増大につながる)を促進する。
【0023】
特定の個体では、ULを超えるビタミンDの栄養補給がしばしば必要とされるが、現在利用可能な経口ビタミンDサプリメントは、血中25−ヒドロキシビタミンD濃度を最適濃度で維持するのに十分には適合せず、高投与量の即放性ビタミンD化合物を投与することの問題性が生じる。
【0024】
健康な個体では、血中ビタミンDホルモン濃度も、一般には1日を通して一定なままであるが、日光曝露の季節的変化またはビタミンD摂取量の継続的変化に応答して長期にわたって相当に変化する場合がある。健康な個体の間で、ビタミンDホルモンの通常濃度に関して著しい差異が普通に観察され、若干の個体は、ほぼ20pg/mL程度の低い、他の者はほぼ70pg/mL程度の高い安定した濃度を有する。この広い通常範囲のため、医療専門家は、血清中総1,25−ジヒドロキシビタミンDに関する実験室での孤立的測定値を解釈する上での困難性を有し;25pg/mLの値は、ある個体にとっては正常値に、あるいは別の個体では相対的欠乏症に相当する可能性がある。
【0025】
一時的に低い血中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度は、副甲状腺を刺激して、PTHを短時間分泌させるが、正常な血中ビタミンDホルモン濃度に戻ると終了する。対照的に、慢性的に低い血中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度は、副甲状腺を絶えず刺激してPTHを分泌させ、二次性副甲状腺機能亢進症として知られる障害をもたらす。慢性的に低いホルモン濃度は、また、腸でのカルシウム吸収を低下させ、血中カルシウム濃度の低下(低カルシウム血症)に至らしめ、このことがさらにPTH分泌を刺激する。絶えず刺激される副甲状腺は、ますます過形成となり、ついにはビタミンDホルモンによる調節に対する抵抗性を発現する。早期の発見および治療がないと、二次性副甲状腺機能亢進症は、累進的に重症度を増し、骨粗鬆症および腎性骨ジストロフィーを含む弱体化していく代謝性骨疾患を引き起こす。
【0026】
慢性的に低い血中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度は、CKDにおいて普通に発生する事態である、必要とされるビタミンDホルモンの供給量を産生するための腎CYP27B1の不足が存在する場合に発生する。腎CYP27B1の活性は、機能するネフロンの減少により糸球体濾過値(GFR)がほぼ60mL/分/1.73m2未満に降下すると減退する。末期腎疾患(ESRD)において、腎臓が完全に衰え、生存のために血液透析が必要とされる場合、腎CYP27B1は、まったく存在しないようになることが多い。任意の残存CYP27B1は、食事性リンの不十分な腎排泄によって引き起こされる高い血清中リン(高リン血症)によって大きく阻害される。
【0027】
慢性的に低い血中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度は、また、ビタミンDプロホルモンの欠乏のため発生する。なぜなら、腎でのホルモン産生は、必要とされる前駆体がないと進行できないからである。プロホルモンの産生は、しばしば「ビタミンD不足」、「ビタミンD欠乏症」または「低ビタミンD症」などの用語で説明される状態である、コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールが供給不足である場合に著しく低下する。したがって、血中25−ヒドロキシビタミンD濃度の測定は、ヘルスケアー専門家の間で是認されたビタミンDの状態を監視するための方法になっている。最近の研究は、大部分のCKD患者が低い血中25−ヒドロキシビタミンD濃度を有すること、およびビタミンD不足および欠乏症の有病率はCKDが進行するにつれて増大することを報告している。
【0028】
結果として、慢性的に低い血中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度を最も発生し易い個体は、CKDを有する者である。ほとんどのCKD患者は、典型的には、低下した腎CYP27B1濃度をおよび25−ヒドロキシビタミンDプロホルモンの不足を有する。驚くべきことではないが、ほとんどのCKD患者は、二次性副甲状腺機能亢進症を発症する。残念ながら、CKDにおける二次性副甲状腺機能亢進症の早期の発見および治療は、まれであり、ましてや予防は稀有である。
【0029】
米国腎臓財団(The National Kidney Foundation)(NKF)は、最近、Kidney Disease Outcomes Quality Initiative(K/DOQI)の慢性腎臓病における骨代謝および骨疾患の臨床実践ガイドライン(Clinical Practice Guidelines for Bone Metabolism and Disease in Chronic Kidney Disease)を発表することによって、二次性副甲状腺機能亢進症の早期の発見および治療に対する必要性に関する医療界の注意に焦点をあわせている(Am.J.Kidney Dis.42:S1〜S202、2003)。K/DOQIガイドラインは、二次性副甲状腺機能亢進症の主な病因を慢性的に低い血中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度と認め、CKDのステージ3〜5において、ステージ3では35〜70pg/mL(3.85〜7.7ピコモル/Lに等価)、ステージ4では70〜110pg/mL(7.7〜12.1ピコモル/Lに等価)、ステージ5では150〜300pg/mL(16.5〜33.0ピコモル/Lに等価)であるステージに特異的なPTH目標範囲に比較して高められた血中PTH濃度について規則的にスクリーニングを行うことを推奨した(K/DOQIガイドラインNo.1で規定)。スクリーニングによりiPTH値がCKDのステージ3および4に対して目標とされる範囲を超えていることが明らかになった場合に、ガイドラインは、ビタミンD不足または欠乏症の可能性を発見するために、血清中総25−ヒドロキシビタミンDの追跡評価を推奨した。30ng/mL未満の25−ヒドロキシビタミンDが観察された場合、推奨される介入は、経口で投与されるエルゴカルシフェロールを使用するビタミンD充足療法(repletion therapy)であった。30ng/mLを超える25−ヒドロキシビタミンDが観察されたなら、推奨される介入は、既知の経口または静脈内ビタミンDホルモンもしくは類似体を使用する、ビタミンDホルモン補充療法であった。ガイドラインは、ビタミンDホルモン補充製品のための包装挿入物中の食品医薬品庁により要求された警告書と一致して、ビタミンD充足およびビタミンDホルモン補充療法の同時適用を推奨しなかった。
【0030】
NKFのK/DOQIガイドラインは、ビタミンDの十分量を≧30ng/mLの血清中25−ヒドロキシビタミンD濃度と規定した。16〜30ng/mLの血清中25−ヒドロキシビタミンDと規定された「ビタミンD不足」を有する患者に対して推奨されるビタミンD充足療法は、1カ月につき50,000IUの経口ビタミンD2を6カ月間と規定し、毎月1回の投与、または1日につきほぼ1,600IUの分割投与のどちらかで与えられた。「ビタミンD欠乏症」を有する患者のための推奨される充足療法は、より集中的であり、5〜15ng/mLの血清中25−ヒドロキシビタミンDとして規定される「軽度」の欠乏症の場合、ガイドラインは、1週につき50,000IUの経口ビタミンD2を4週間、続いて、1カ月につき50,000IUをさらに5カ月間を推奨し;5ng/mL未満の血清中25−ヒドロキシビタミンDとして規定される「重症」欠乏症の場合、ガイドラインは、50,000IU/週の経口ビタミンD2を12週間、続いて、50,000IU/月をさらに3カ月間を推奨した。1週につき50,000IUの投与量は、1日につき7,000IUにほぼ相当する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0031】
本開示の一態様は、該製剤を摂取する対象の消化管中でのビタミンD化合物の制御放出のための、固体または半固体のワックス状医薬製剤を提供する。該製剤は、ワックス状制御放出性担体物質、類脂質性物質(lipoidic agent)、ビタミンD化合物のための油性ビヒクル、およびビタミンD化合物を含む。該製剤は、その中に組み込まれるビタミンD化合物の制御放出を提供する。該製剤は、好ましくは、崩壊剤を含まないか、あるいは実質的に含まない。
【0032】
別の態様において、本発明は、(a)薬理学上活性のある量のビタミンD化合物、および(b)本明細書中で説明されるように、Cmaxを低下させ、かつ/またはTmaxを遅延させ、かつ/またはCmax24hr/C24hrを低下させるために、剤形からのビタミンD化合物の放出速度を制御する放出調節剤を含有する、ビタミンD化合物の制御放出性剤形を提供する。好ましくは、Cmaxを低下させ、かつ同時にTmaxを遅延(増大)させる。このような制御放出性剤形は、排出半減期の増大および/または毒性の低減および/または効力の向上という利点(例えば、即放性剤形(immediate release dosage form)に比較して、低減された投与量のビタミンD化合物を投与して、またはより低頻度で投与して、同様の治療効果を達成する能力)を示す。いくつかの実施形態において、放出調節剤には、ワックス状制御放出性担体物質、類脂質性物質、およびビタミンD化合物のための油性ビヒクルが含まれる。任意選択で、本発明の放出調節剤および剤形は、崩壊剤を含まないか、あるいは実質的に含まなくてもよい。
【0033】
したがって、本発明の一実施形態は、ある投与区間におけるビタミンD化合物の最大血清中濃度(Cmax)が、ボーラスIV注射および/または同等の即放性経口剤形によって投与される同量のビタミンD化合物によるCmaxと比較して低下するように、患者にある量のビタミンD化合物を投与する方法である。同様に、本発明は、患者に投与した場合に、ボーラスIV注射および/または同等の即放性経口剤形によって投与される同量のビタミンD化合物によるCmaxよりも小さなCmaxをもたらす、ある量のビタミンD化合物を含有する制御放出性剤形を提供する。例えば、その低下は、好ましくは、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%である。
【0034】
本発明の別の実施形態は、ある投与区間における血清中ビタミンD化合物濃度の最大変化が、ボーラスIV注射および/または同等の即放性経口剤形によって投与される同量のビタミンD化合物と比較して縮小するように、患者にある量のビタミンD化合物を投与する方法である。同様に、本発明は、患者に投与した場合に、ボーラスIV注射および/または同等の即放性経口剤形によって投与される同量のビタミンD化合物よりも小さな、ある投与区間における血清中ビタミンD化合物濃度の最大変化をもたらす、ある量のビタミンD化合物を含有する制御放出性剤形を提供する。例えば、その縮小は、好ましくは、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%である。
【0035】
本発明のさらに別の実施態様は、ビタミンD化合物の投与後24時間以内における血清中最大濃度の投与24時間後濃度に対する比率(Cmax24hr/C24hr)が、ボーラスIV注射および/または同等の即放性経口剤形によって投与される同量のビタミンD化合物と比較して低下するように、患者にある量のビタミンD化合物を投与する方法である。同様に、本発明は、患者に投与した場合に、ボーラスIV注射および/または同等の即放性経口剤形によって投与される同量のビタミンD化合物よりも小さなCmax24hr/C24hrをもたらす、ある量のビタミンD化合物を含有する制御放出性経口剤形を提供する。例えば、その低下は、好ましくは、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%である。
【0036】
本発明のさらに別の実施形態は、ビタミンD化合物の排出半減期(t1/2)が、ボーラスIV注射および/または同等の即放性経口剤形によって投与される同量のビタミンD化合物によるt1/2と比較して増大するように、患者にある量のビタミンD化合物を投与する方法である。同様に、本発明は、患者に投与した場合に、ボーラスIV注射および/または同等の即放性経口剤形によって投与される同量のビタミンD化合物によるt1/2を超えるビタミンD化合物のt1/2をもたらす、ある量のビタミンD化合物を含有する制御放出性剤形を提供する。例えば、その増大は、好ましくは、少なくとも25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%または300%である。
【0037】
本発明のさらなる実施形態は、投与に続くある投与区間において血漿中ビタミンD化合物濃度がその最大値に到達する時間(Tmax)が、ボーラスIV注射および/または同等の即放性経口剤形によって投与される同量のビタミンD化合物によるTmaxと比較して増大するように、患者にある量のビタミンD化合物を投与する方法である。同様に、本発明は、患者に投与した場合に、ボーラスIV注射および/または同等の即放性経口剤形によって投与される同量のビタミンD化合物のそれを超えるTmaxをもたらす、ある量のビタミンD化合物を含有する制御放出性剤形を提供する。例えば、その増大は、好ましくは、少なくとも25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、500%または1000%である。
【0038】
各種実施形態において、組成物は、キロミクロンを介するリンパ系中への吸収よりも血流中への吸収を直接的に促進することによって含有されるビタミンD化合物の生物学的利用能を有意に増大させること;上部小腸の腸細胞中での異化を低減することによって含有されるビタミンD化合物の生物学的利用能を有意に増大させること;十二指腸上での含有されるビタミンD化合物の望ましくない初回通過効果を有意に低下させること;血中ビタミンD化合物濃度の有害な超生理学的急増の発生を有意に回避すること;血中ビタミンD化合物濃度の最適濃度未満への低下を有意に予防すること;血中ビタミンD化合物濃度を最適濃度まで有意に戻すこと;血中ビタミンD化合物濃度をこのような最適濃度に有意に維持すること;ビタミンD代謝の混乱、ならびに関連するPTH、カルシウムおよびリンの恒常性の異常を有意に低減すること;およびビタミンDの充足および補充に付随する高カルシウム尿症、高カルシウム血症、高リン血症、およびビタミンDの毒性を含む深刻な副作用の危険を有意に低減することなどの1種または複数の利点と関連していると思われる。前記利点の1種または複数は、独立にまたは組み合わせて認められる可能性がある。
【0039】
本明細書に記載の組成物および方法に関して、好ましいステップ、好ましい成分、その好ましい組成範囲、および前述の好ましい組合せは、本明細書中で提供される各種実施例から選択できる。
【0040】
さらなる態様および利点も、当業者にとっては、以下の詳細な説明を図面と関連させて検討することから明らかであろう。組成物および方法は、各種形態での実施形態が可能であるが、以下の説明には、具体的実施形態を含める。その開示は、例示であり、本発明を本明細書に記載の具体的実施形態に限定することを意図しないと理解されたい。
【0041】
本発明の理解をさらに容易にするために、ここに27の図面を添付する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例1による25−ヒドロキシビタミンD3を含有する経口投与製剤を投与された被験対象群の投与後最初の24時間にわたる血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の変化をプロットした図である。
【図2】実施例1による25−ヒドロキシビタミンD3を含有する経口投与製剤を投与された被験対象群の投与後最初の24時間にわたる血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の変化をプロットした図である。
【図3】実施例1による25−ヒドロキシビタミンD3を含有する経口投与製剤を投与された被験対象群の投与後最初の24時間にわたる血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の変化をプロットした図である。
【図4】実施例1による25−ヒドロキシビタミンD3を含有する経口投与製剤を投与された被験対象群の投与後最初の24時間にわたる血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の変化をプロットした図である。
【図5】実施例1による25−ヒドロキシビタミンD3を含有する経口投与製剤を投与された被験対象群の投与後最初の24時間にわたる血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の変化をプロットした図である。
【図6】実施例1による25−ヒドロキシビタミンD3を含有する経口投与製剤を投与された被験対象群の投与後最初の24時間にわたる血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の変化をプロットした図である。
【図7】実施例1による25−ヒドロキシビタミンD3を含有する経口投与製剤を投与された被験対象群の投与後最初の24時間にわたる血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の変化をプロットした図である。さらに、図7は、即放性製剤および制御放出性製剤に関するデータを重ねて対比して示す。
【図8】実施例1による25−ヒドロキシビタミンD3を含有する経口投与製剤を投与された被験対象群の投与後最初の24時間にわたる血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の変化をプロットした図である。
【図9】本発明による群7の制御放出性製剤に関して、実施例1の研究期間にわたる血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の変化をプロットした図である。群9は従来技術による即放性製剤であり、群10は静脈内投与である。
【図10】本発明による群7の制御放出性製剤に関して、実施例1の研究期間にわたる血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の変化をプロットした図である。群9は従来技術による即放性製剤であり、群10は静脈内投与である。
【図11】本発明による群7の制御放出性製剤に関して、実施例1の研究期間にわたる血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の変化をプロットした図である。群9は従来技術による即放性製剤であり、群10は静脈内投与である。
【図12】実施例1のそれぞれ群7および群9に関する図9および図10のデータを重ねてプロットした図である。
【図13】25−ヒドロキシビタミンD3の実施例2による調節および即放性経口製剤を投与されたミニブタに関する平均薬物動態プロフィールを示す図である。
【図14】25−ヒドロキシビタミンD3の実施例2による調節および即放性経口製剤を投与されたミニブタに関する平均薬物動態プロフィールを示す図である。
【図15】25−ヒドロキシビタミンD3の実施例2による調節および即放性経口製剤を投与されたミニブタに関する平均薬物動態プロフィールを示す図である。
【図16】25−ヒドロキシビタミンD3の実施例2による調節および即放性経口製剤を投与されたミニブタに関する平均薬物動態プロフィールを示す図である。
【図17】25−ヒドロキシビタミンD3の実施例2による調節および即放性経口製剤を投与されたミニブタに関する平均薬物動態プロフィールを示す図である。
【図18】25−ヒドロキシビタミンD3の実施例2による調節および即放性経口製剤を投与されたミニブタに関する平均薬物動態プロフィールを示す図である。
【図19】25−ヒドロキシビタミンD3の実施例2による250μgのMR製剤およびIR製剤に関する薬物動態プロフィールを比較して示した図である。
【図20】実施例3により25−ヒドロキシビタミンD3を投与した後の群1〜3のミニブタに関する平均未補正血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度対時間のプロフィールを示す図である。
【図21】実施例3による群1から3に関する平均ベースライン補正後血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度対時間のプロフィールを示す図である。
【図22】実施例3による群1から3に関する平均ベースライン補正後血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度対時間のプロフィールを示す図である。
【図23】実施例3による群1から3に関する平均ベースライン補正後血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度対時間のプロフィールを示す図である。
【図24】実施例3の群1の動物に関する投与前から21日目までの副甲状腺ホルモン濃度の平均変動を示す図である。
【図25】実施例3の群2の動物に関する投与前から21日目までの副甲状腺ホルモン濃度の平均変動を示す図である。
【図26】実施例4による25−ヒドロキシビタミンD3調節放出性カプセルを投与された群1〜群5のビーグル犬に関する平均血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度対時間のプロフィールを示す図である。
【図27】実施例2による250μgカプセルに関する溶解放出プロフィールを示す図であり、プロフィールは、24時間の時点で25−ヒドロキシビタミンD3の約72%の平均放出を示した。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本明細書中で使用する場合、用語「ビタミンDの毒性」は、悪心、嘔吐、多尿症、高カルシウム尿症、高カルシウム血症および高リン血症の1つまたは複数を含む、過剰に高められた血中ビタミンD濃度で悪化する副作用を指すことを意味する。
【0044】
「ビタミンD不足および欠乏症」は、一般に、30ng/mL未満の血清中25−ヒドロキシビタミンD濃度を有することと定義される(参照により本明細書に組み込まれる、米国腎臓財団のガイドライン、NKF、Am.J.Kidney Dis.42:S1〜S202(2003)を参照のこと)。
【0045】
本明細書中で使用する場合、用語「高カルシウム血症」は、10.2mg/dLを超える補正後血清中カルシウム濃度を有する患者の状態を指す。ヒトの正常な補正後血清中カルシウム濃度は、約8.6〜10.2mg/dLである。
【0046】
本明細書中で使用する場合、用語「高リン血症」は、4.6mg/dLを超える血清中リン濃度を有し、正常な腎機能またはステージ3〜4のCKDを有する患者の状態を指す。ステージ5のCKDを有する患者において、高リン血症は、該患者が5.5mg/dLを超える血清中濃度を有する場合に見出される。ヒトにおける血清中リンの正常値は、2.5〜4.5mg/dLである。
【0047】
本明細書中で使用する場合、用語「血漿中iPTHの過剰抑制」は、15pg/mL未満の血漿中iPTH濃度を有し、正常な腎機能、またはステージ1〜3のCKDを有する患者の状態を指す。ステージ4のCKDを有する患者において、血漿中iPTHの過剰抑制は、該患者が、30pg/mL未満の血漿中iPTH濃度を有する場合に見出される。ステージ5のCKDを有する患者において、血漿中iPTHの過剰抑制は、該患者が、100pg/mL未満の血漿中iPTH濃度を有する場合に見出される。
【0048】
本明細書中で使用する場合、用語「ビタミンDホルモン補充療法」は、患者に、有効な量の1,25−ジヒドロキシビタミンD3および/または1,25−ジヒドロキシビタミンD2などの活性ビタミンDホルモンを、細胞内VDRを実質的に占拠できるビタミンDとまたはビタミンDの他の代謝産物および類似体と任意選択で一緒に投与することを指す。
【0049】
本明細書中で使用する場合、ビタミンDの血清中または血中濃度に関して、用語「実質的に一定」は、制御放出性(後で定義する)製剤の放出プロフィールが、少なくとも4時間、12時間、1日、2日、3日、4日、または5日間から任意に選択される期間にわたって、単位投与量の投与後にほぼ10nモル/Lを超える血清中または血中総コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロール濃度の増加を含むべきではないことを意味する。25−ヒドロキシビタミンDプロホルモンの血清中または血中濃度に関して、用語「実質的に一定」は、後に詳述するように投与された任意の製剤の放出プロフィールが、単位投与量の投与後にほぼ3ng/mLを超える血清中または血中総25−ヒドロキシビタミンD濃度の一時的増加を含むべきではないことを意味する。血清中または血中活性ビタミンDホルモン濃度に関して、用語「実質的に一定」は、好ましくは、制御放出性製剤の放出プロフィールが、好ましくは少なくとも30分、または4時間などから任意に選択される期間にわたって、それぞれ単位投与量の投与後にほぼ75pg/mLを超える血清中または血中総1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度の増加を含むべきではないことを意味する。
【0050】
本明細書中で使用する場合、用語「制御放出(controlled release)」、「持続放出(sustained release)」、および「調節放出(modified release)」は、互換的に使用され、投与されたビタミンD化合物の即放とは別な仕方での放出を指す。用語「制御放出」および「調節放出」は、任意選択で遅延放出特性を含む。例えば、遅延放出型の制御放出性製剤は、即放性製剤に関するCmaxを超える時点のCmaxによって特徴付けられる。別の例として、投与されたビタミンD(コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロール)および/または25−ヒドロキシビタミンD化合物の放出は、好ましくは、血清中または血中総25−ヒドロキシビタミンD濃度が、長時間、例えば、4〜24時間、またはさらにより長く、投与前濃度を超えて維持されるか、あるいは高められるような速度でなされる。別の例として、維持放出型の制御放出性製剤は、血清中または血中総1,25−ジヒドロキシビタミンD化合物濃度が、長期間、例えば20〜40分、1〜15時間、またはさらにより長く、投与前濃度を超えて維持されるか、あるいは高められるような速度での放出によって特徴付けられる。
【0051】
「超生理学的」は、ビタミンDの管腔内、細胞内および血中濃度に関して、ビタミンDの供給が十分な対象、動物またはヒト患者においてビタミンDの栄養補給を少なくとも30日間絶った場合に、実験室測定によって任意の24時間の過程にわたって観察される一般的な安定濃度を著しく超えるビタミンD化合物の総濃度を指す。「有害な超生理学的急増」は、心血管の続発症の可能性を伴う、カルシウムおよびリンの代謝に対する局所的有害効果、ビタミンDの肝臓内25−ヒドロキシル化の阻害、ビタミンDと25−ヒドロキシビタミンDとの両方の異化増大、高カルシウム尿症、高カルシウム血症および/または高リン血症につながる過剰な腎臓外ホルモン産生などの有害効果を誘発する、局所または血清中ビタミンD化合物濃度を指す。
【0052】
本明細書中で使用する場合、用語「副甲状腺機能亢進症」は、原発性副甲状腺機能亢進症、二次性副甲状腺機能亢進症、および慢性腎臓病(ステージ3、4または5)に続く副甲状腺機能亢進症を指す。
【0053】
用語「対象」には、本明細書中で使用する場合、一般に、ヒト、哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ネズミ、ヒツジ、ウマ、ウシ、ヤギ)、獣医学的動物および動物園動物が含まれる。
【0054】
また、本明細書中で列挙される任意の数値は、低い方の数値から高い方の数値までのすべての値を含み、換言すれば、列挙された最低値から最高値の間の数値のすべての可能な組合せが、本出願中で明白に指定されていると考えるべきであることが、具体的に理解される。例えば、濃度範囲または有益な効果の範囲が1%〜50%と指定されているなら、2%〜40%、10%〜30%、または1%〜3%などの値は、本明細書中で明白に列挙されていると解釈される。これらは、具体的に解釈されるものの単なる例である。
【0055】
即放性経口製剤での25−ヒドロキシビタミンD3の投与が、ビタミンD栄養補給の代替法として試みられてきた。後に放棄されたこの取り組みは、現在使用されるビタミンDサプリメントと同様の問題を引き起こした。具体的には、それは、血中および細胞内25−ヒドロキシビタミンD濃度の急増またはスパイクを引き起こした。いずれか特定の理論によって拘束されることを意図するものではないが、血中および細胞内25−ヒドロキシビタミンD濃度の急増またはスパイクは、(a)血清中ビタミンD結合タンパク質(DBP)からビタミンDホルモンの競合的排除、および排除されたホルモンのVDR含有組織への過剰な送達、および(b)一緒になって、カルシウムおよびリン代謝の局所的逸脱につながった、ビタミンDホルモンの一時的に過剰な腎臓内および腎臓外産生を促進すると思われる。さらに、血中25−ヒドロキシビタミンD濃度のこれらの急増は、腎臓およびその他の組織中での24−および/または26−ヒドロキシル化、ビタミンDプロホルモンの肝臓内産生の下向き調節、ビタミンD不足または欠乏症の効率的な充足を不必要に妨害することによるビタミンDと25−ヒドロキシビタミンDとの両方の異化、ならびにVDRへの直接結合により仲介されるカルシウムおよびリンの恒常性のさらなる局所的逸脱を促進すると思われる。重要なことに、25−ヒドロキシビタミンD3の即放は、実質的には、血清中DBPに結合されるよりもキロミクロンでの肝臓への輸送を含む機構を介するその腸内吸収を促進すると思われる。25−ヒドロキシビタミンDの、キロミクロンを介した肝臓への送達は、その異化の可能性を有意に増加させると思われる。
【0056】
本開示の一態様は、該製剤を摂取する対象の消化管中でのビタミンD化合物の制御放出のための、固体または半固体のワックス状医薬製剤を提供する。該製剤は、ワックス状制御放出性担体物質、類脂質性物質、ビタミンD化合物のための油性ビヒクル、およびビタミンD化合物を含有する。該製剤は、その中に組み込まれるビタミンD化合物の制御放出を提供する。該製剤は、崩壊剤を含まないか、あるいは本質的に含まない。
【0057】
ワックス状制御放出性担体は、室温で固体または半固体、および体温で固体、半固体または液体、好ましくは体温で半固体または液体である製剤を提供する。使用するのに適した担体の例には、合成ワックス、微結晶ワックス、パラフィンワックス、カルナウバワックスおよび蜜蝋などのワックス;ポリエトキシル化ヒマシ油誘導体、水素化植物油、モノ−、ジ−またはトリベヘン酸グリセリル:ステアリルアルコール、セチルアルコールおよびポリエチレングリコールなどの長鎖アルコール;ならびにこれらの任意の混合物が含まれる。硬質パラフィンワックスなどの非消化性ワックス状物質が好ましい。
【0058】
ワックス状担体は、好ましくは、任意の付加的な被覆または殻を除く製剤の総質量を基準にして、製剤の約5wt%を超える量で存在する。例えば、ワックス状担体は、製剤の5wt%超、製剤の10wt%超、製剤の15wt%超、製剤の20wt%超、および製剤の25wt%超を構成することができる。ワックス状担体は、好ましくは、50wt%未満、40wt%未満、35wt%未満、または30wt%未満の量で存在する。適切な範囲には、5wt%〜35wt%、15wt%〜35wt%、および20wt%〜30wt%が含まれる。例には、15wt%、16wt%、17wt%、18wt%、19wt%、20wt%、21wt%、22wt%、23wt%、24wt%、25wt%、26wt%、27wt%、28wt%、29wt%および30wt%が含まれる。
【0059】
類脂質性物質は、被治療対象の消化管中での製剤からのビタミンD化合物の放出を提供する。いずれか特定の作用理論に拘束されることを意図するものではないが、類脂質性物質は、胃腸液中で油性ビヒクルのマイクロエマルジョンを創り出すこと;該製剤が胃および/または腸の粘膜層と相互作用するように、例えば生体接着特性による長期胃内停留を提供すること;ならびにビタミンD化合物の吸収を増強することなどの1つまたは複数の好ましい機能を提供することができると思われる。しかし、作用機構にかかわらず、本発明は、いずれか特定の作用方式によって限定されるものではない。
【0060】
類脂質性物質成分は、好ましくは、該分子またはイオンが、親水性部分と親油性部分の両方を含む両親媒性物質である。これらの成分は、親水性/親油性バランス学説(「HLB学説」)を基準にした数値によって規定することができる。HLB尺度は、0からほぼ20までに及ぶ数値尺度であり、数値が小さいほど、より親油性かつ疎水性の物質を意味し、数値が大きいほど、より親水性かつ疎油性の物質を意味する。化合物の水に対する、または油性物質に対する親和性は、実験的に測定され、HLB値を割り振られる。本明細書中で採用される疎水性担体のHLBは、好ましくは、約13〜約18の範囲である。
【0061】
医薬として許容し得る各種の類脂質性物質を、製剤中に組み込むことができる。製剤中に存在する類脂質性物質の量は、好ましくは、少なくとも5wt%、少なくとも15wt%、少なくとも35wt%、少なくとも40wt%、または少なくとも45wt%である。適切な範囲には、約5wt%〜約60wt%、約20wt%〜約60wt%、および約40wt%〜約50wt%が含まれる。
【0062】
一実施形態において、類脂質性物質は、7未満のHLBを有する親油性乳化剤であり、混合脂肪酸モノグリセリド;混合脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸モノ−およびジグリセリドの混合物;親油性ポリグリセロールエステル;モノオレイン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、およびジパルミチン酸グリセリルを含むグリセロールエステル;脂肪酸のグリセリル−ラクトエステル;モノパルミチン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、およびモノオレイン酸プロピレングリコールを含むプロピレングリコールエステル;モノステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンを含むソルビタンエステル;ステアリン酸、パルミチン酸、およびオレイン酸を含む脂肪酸およびそれらの石鹸;ならびにこれらの混合物;モノオレイン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、およびジパルミチン酸グリセリル;脂肪酸のグリセリル−ラクトエステル;モノパルミチン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、およびモノオレイン酸プロピレングリコールを含むプロピレングリコールエステル;モノステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンを含むソルビタンエステル;ステアリン酸、パルミチン酸、およびオレイン酸をはじめとする脂肪酸およびそれらの石鹸;ならびにこれらの混合物からなる群から選択されるメンバーを含む。
【0063】
好ましい類脂質性物質は、グリセリドおよびその誘導体から選択される。好ましいグリセリドは、中鎖または長鎖グリセリド、カプリロカプロイルマクロゴールグリセリド、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0064】
好ましい中鎖グリセリドには、限定はされないが、中鎖モノグリセリド、中鎖ジグリセリド、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリド、モノラウリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、(カプリル酸/カプリン酸)グリセリド、モノカプリル酸グリセリル、モノジカプリル酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/リノール酸)グリセリド、およびトリ(カプリル酸/カプリン酸/コハク酸)グリセリドが含まれる。
【0065】
製剤を製造するには、低い融点を有するモノグリセリドが好ましい。好ましいモノグリセリドには、限定はされないが、モノステアリン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノカプリル酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリルなどが含まれ、好ましくはモノステアリン酸グリセリル(GMS)である。GMSは、天然の乳化剤である。それは、油溶性であるが、水にわずかに溶ける。GMSは、3.8のHLB値を有する。別の好ましいモノグリセリドが、モノオレイン酸グリセリル(GMO)である。GMOも、天然の乳化剤であり、油溶性であるが、水にわずかに溶け、3.8のHLB値を有する。
【0066】
別の実施形態において、グリセリドは、カプリロカプロイルマクロゴールグリセリド類から選択される吸収増強剤である。採用できるカプリロカプロイルマクロゴールグリセリドには、限定はされないが、ポリグリコール化グリセリドまたはPEG化グリセリドとしても知られる、ポリエチレングリコシル化グリセリドが含まれる。組成物中で採用できるPEG化グリセリドには、限定はされないが、モノグリセリドとジグリセリドとトリグリセリドとの混合物;ポリエチレングリコールのモノエステルおよびジエステル;ポリエチレングリコシル化アーモンド油グリセリド;ポリエチレングリコシル化コーン油グリセリド;ならびにポリエチレングリコシル化トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリドが含まれる。吸収増強剤は、好ましくは、13〜18、より好ましくは13〜15のHLB値を有する。
【0067】
1つの好ましい吸収増強剤は、GELUCIREの商品名で知られており、米国ニュージャージー州ParamusのGattefosse Corporationから市販されている。GELUCIREは、グリセロールの脂肪酸エステルおよびポリグリコール化グリセリドとしても知られているPEGエステルのファミリーである周知の賦形剤である。GELUCIREは、持続放出性医薬組成物の調製を含む各種応用で使用される。GELUCIRE化合物は、両親媒性であり、融点、HLB、および各種溶媒への溶解度などの多様な物理的特性の求めに応じることのできる不活性で半固体のワックス状材料である。それらは、本質的に界面活性を有し、水性媒体中に分散または可溶化され、ミセル、顕微鏡的小球または小胞を形成する。それらは、それらの融点/HLB値によって識別される。融点は、摂氏で表現される。異なるグレードのGELUCIRE賦形剤の1つまたは混合物を選択して、融点および/またはHLB値に関して所望される特性を達成することができる。好ましいGELUCIRE組成物は、融点が44℃でHLBが14の半固体ワックス状材料であるGELUCIRE44/14である。
【0068】
別の好ましいポリグリコール化グリセリド系吸収増強剤が、カプリロカプロイルマクロゴール−8−グリセリド(CAS No.85536−07−8および84963−88−2)である。これは、グリセロールおよびPEG400の中鎖脂肪酸(C8〜C10)とのモノ−、ジ−およびトリエステルの混合物であり、例えば、米国ニュージャージー州ParamusのGattefosse CorporationによってLABRASOLの商品名で上市されている。LABRASOLは、14のHLB値を有し、次の質量組成:C8〜C10モノグリセリドをほぼ4%;C8〜C10ジグリセリドをほぼ17%;C8〜C10トリグリセリドをほぼ6%;PEG400のC8〜C10モノエステルをほぼ14%;PEG400のC8〜C10ジエステルをほぼ36%;遊離PEG400をほぼ20%;遊離グリセロールをほぼ3%:を有する。
【0069】
好ましくは、類脂質性物質には、7未満のHLBを有する親油性乳化剤、および13〜18のHLB値を好ましくは有する吸収増強剤の混合物が含まれる。親油性乳化剤は、約20wt%〜約50wt%、好ましくは約30wt%〜約40wt%の範囲の量で存在するのが好ましく、吸収増強剤は、約5〜約20wt%、好ましくは約8〜約15wt%の量で存在するのが好ましい。
【0070】
低融点の多くの固体類脂質性組成物は、該組成物中に医薬として活性な成分を該活性成分のそれぞれの融点を約0℃〜約50℃上回る温度で組み込み、次いで溶融物(溶液および/または分散液)を動物性または植物性ゼラチンカプセル中に充填する手段を提供する。溶融物は、室温まで冷却するとカプセル内部で固化する。
【0071】
油性成分は、ビタミンD化合物のためのビヒクル、好ましくは主要ビヒクルとして役立つ。任意の医薬として許容し得るオイルを使用できる。例には、動物性(例えば、魚)、植物性(例えば、ダイズ)、およびミネラルオイルが含まれる。オイルは、好ましくは使用されるビタミンD化合物を容易に溶解する。好ましい油性成分には、ミネラルオイル、特に流動パラフィンなどの非消化性オイル、およびスクアレンが含まれる。オイルビヒクルは、好ましくは、製剤の約10wt%〜約50wt%、より好ましくは約15wt%〜約45wt%、約20wt%〜約40wt%、または約15wt%〜約25wt%を構成する。1つの好ましい実施形態において、流動パラフィンは、次のパラメーター:約0.88〜0.89の比重;約64〜約70cSt(40℃)の動粘度;424の分子量;約59の%パラフィン系炭化水素;および−24℃の流動点の1つまたは複数によって特徴付けることができる。ビタミンD化合物の所望される放出速度を達成するために、ワックス状成分と油性成分との比率を最適化することができる。したがって、より重質のオイル成分を使用するなら、比較的少量のワックス状成分を使用することができ、より軽質のオイル成分を使用するなら、比較的多量のワックス状成分を使用できる。
【0072】
本明細書に記載の製剤中へ組み込むためには、予防的および/または療的使用に適した任意のビタミンD化合物、およびそれらの組合せが考えられる。ビタミンD、25−ヒドロキシビタミンD、1,25−ジヒドロキシビタミンD、およびビタミンDの他の代謝産物および類似体も、医薬組成物中の活性成分として有用である。具体例には、限定はされないが、ビタミンD3(コレカルシフェロール)、ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)、25−ヒドロキシビタミンD3、25−ヒドロキシビタミンD2、1α,25−ジヒドロキシビタミンD3、1α,25−ジヒドロキシビタミンD2、1α,25−ジヒドロキシビタミンD4、および1,25−ジヒドロキシ−19−ノル−ビタミンD2および1α−ヒドロキシビタミンD3を含むビタミンD類似体(すべてのヒドロキシおよびジヒドロキシ形態を含む)が含まれる。実施形態の一類型において、ビタミンD化合物は、25−ヒドロキシビタミンD3と25−ヒドロキシビタミンD2との組合せなどの1種または複数のヒドロキシ形態を含む。いくつかの実施形態において、ビタミンD化合物は、治療上有効な量(例えば、ビタミンD不足症および/または二次性甲状腺機能亢進症を予防または治療するのに有効な量)で投与される。
【0073】
開示の一態様には、コレカルシフェロールおよび/またはエルゴカルシフェロールの制御放出性製剤を構成する組成物、ならびにこのような製剤を投与(一実施形態では高投与量で)して、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロールおよび25−ヒドロキシビタミンDの管腔内、細胞内および血中濃度の有害な超生理学的急増ならびにその結果なしに、かつビタミンDの栄養補給に付随する深刻な副作用、すなわちビタミンDの毒性なしに、25−ヒドロキシビタミンD不足および欠乏症を今まで得ることのできなかったレベルの効率で治療する方法が含まれる。
【0074】
制御放出性組成物は、ULまたはそれを超える濃度のコレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールを含むように設計され、制御された、好ましくはコレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールの実質的に一定な放出を長期にわたってもたらすような方式で調製される。どちらかの前駆体の管腔内、血中または細胞内濃度を高めると、プロホルモンの産生が増加する。さらに、組成物は、任意選択でヒトまたは動物の消化管の回腸中への遅延放出用に設計することができる。実施形態の一類型において、組成物は、体中コレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールの実質的に一定な濃度およびより持続的な血中濃度を確実にすると考えられる。コレカルシフェロール/エルゴカルシフェロールの長期にわたる徐放出または安定放出を提供することによって、血中、管腔内および細胞内ビタミンD濃度のスパイク、すなわち有害な超生理学的濃度は、軽減または排除される。
【0075】
ビタミンD3を5,000IUを超えるまたは7,500IUを超える、または10,000IUを超える投与量で含有する組成物が考えられる。コレカルシフェロールとエルゴカルシフェロールとの組合せを少なくとも1,500IU(合わせて)、または少なくとも2,000、2,500、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、7,500、8,000、9,000、10,000、11,000、12,000または12,500IUの単位投与量で含有する組成物が考えられる。200,000IU未満、または100,000または75,000または50,000IU未満のような単位投与量も考えられる。
【0076】
本発明は、また、投与量を、1日1回、1日おきに1回、1週間に3回、1週間に2回、毎週1回、または2週間毎に1回の間隔で投薬できることを考えている。各時点で服用された累積投与量は、1,500IU(コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールを別個にまたは合わせて)、または少なくとも2,000、2,500、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、7,500、8,000、9,000、10,000、11,000、12,000または12,500IUでよい。このような200,000IU、または100,000または75,000または50,000IU未満の投与量も考えられる。このような投与量は、成人のヒトで採用するのに好ましい。
【0077】
コレカルシフェロールおよびエルゴカルシフェロールは、任意の比率、例えば、9:1〜1:9で含めることができる。限定はされないが、1:1の、1:1を超えるコレカルシフェロール:エルゴカルシフェロール、および1:1未満のコレカルシフェロール:エルゴカルシフェロールを含む比率が、各種実施形態において有用であると考えられる。
【0078】
例えば、単回単位投与量のカプセル中および/または1日当たり投与量中、1,500IUのコレカルシフェロールと1,500IUのエルゴカルシフェロールとの組合せが考えられる。また、単回単位投与量のカプセル中および/または1日当たり投与量中、1,000IUのコレカルシフェロールと1,000IUのエルゴカルシフェロールとの組合せ、単回単位投与量のカプセル中および/または1日当たり投与量中、2,000IUのコレカルシフェロールと2,000IUのエルゴカルシフェロールとの組合せが考えられる。このような単位投与量カプセルの初期投与計画は、例えば、単回単位投与量のカプセル中、1,500IUのコレカルシフェロールと1,500IUのエルゴカルシフェロールとの組合せについて下表1中で詳述するように、血清中25(OH)D(ng/mL)[nmol/L]ベースライン濃度に基づくことができる。
【0079】
【表1】
【0080】
25(OH)Dの血清中濃度を30ng/mL以上に維持するために、1つのこのようなカプセルを、成人患者に1日毎に投与できる。
【0081】
本発明には、また、25−ヒドロキシビタミンD2および/または25−ヒドロキシビタミンD3(「25−ヒドロキシビタミンD2/25−ヒドロキシビタミンD3」)の経口製剤を構成する組成物、およびこのような製剤を投与して、25−ヒドロキシビタミンDの管腔内、細胞内および血中濃度の超生理学的急増ならびにその結果なしに;投与された25−ヒドロキシビタミンDの実質的に高められた異化を引き起こさないで;かつビタミンDの栄養補給に付随する深刻な副作用、すなわちビタミンDの毒性を引き起こさないで、25−ヒドロキシビタミンDの不足および欠乏症を治療する方法が含まれる。
【0082】
本発明による経口投与を意図した制御放出性組成物は、好ましくは、単位投与量につき1〜1000μgの濃度の25−ヒドロキシビタミンD2/25−ヒドロキシビタミンD3を含有するように設計され、任意選択で、ヒトまたは動物の消化管の回腸中への長期にわたる、25−ヒドロキシビタミンD2/25−ヒドロキシビタミンD3の制御されたまたは実質的に一定の放出をもたらすような方式で調製される。好ましい投与量は、単位投与量につき1〜1000μg、1〜600μg、1〜400μg、1〜200μg、1〜100μg、5〜90μg、30〜80μg、20〜60μg、30〜60μg、35〜50μg、5〜50μg、および10〜25μg、例えば、20μg、25μg、30μg、40μg、50μg、60μg、70μg、80μg、90μg、および100μgを含む。組成物は、DBPでの輸送を介する25−ヒドロキシビタミンDの実質的に増大した吸収、およびキロミクロンでの輸送を介する減少した吸収を提供できる。組成物は、25−ヒドロキシビタミンDの投与後24時間中の実質的に一定な血中濃度の維持を提供できる。25−ヒドロキシビタミンD2/25−ヒドロキシビタミンD3の徐放出、維持放出および直接放出、および(キロミクロンよりもむしろ)循環DBPに優先的な吸収を提供することによって、血中、管腔内および細胞内25−ヒドロキシビタミンD濃度のスパイクすなわち超生理学的濃度および関連する望ましくない異化を軽減または排除できる。さらに、徐放出および維持放出を提供することによって、血清中25−ヒドロキシビタミンD濃度を、増大させ、かつ即放性経口製剤の投与によるよりもより予想された通りに維持し、一貫した投与量および頻繁な患者モニタリングの必要性の低減または排除を可能にする。
【0083】
1つの好ましい部類の実施形態において、調節放出性製剤は、投与後の最初の24時間以内にビタミンD化合物の少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%を、例えば約72%を放出する。
【0084】
有利には、他の治療薬と一緒に25−ヒドロキシビタミンD2、25−ヒドロキシビタミンD3またはこれらの組合せを、上述の実施形態により1日につき1〜100μgの投与量で経口または静脈内で投与することができ、好ましい投与量は、1日につき5〜50μg、例えば約10〜25μgである。好ましい投与量は、血清中25−ヒドロキシビタミンD3の約1〜3ng/mLの平均上昇を提供する。
【0085】
実施形態において、該方法は、本明細書に記載の製剤を投与して、血中1,25−ジヒドロキシビタミンD濃度を上昇させ、また、好ましくは、長期間、例えば少なくとも1カ月間、少なくとも3カ月間、少なくとも6カ月間、またはそれ以上にわたって25pg/mL、30pg/mL、またはそれ以上、例えば25〜65pg/mLに維持することを含むと考えられる。
【0086】
一態様において、ヒト患者の血清中副甲状腺ホルモンを低下させる、または低下したまま維持する方法は、1,25−ジヒドロキシビタミンD2などの有効量の活性ビタミンDホルモンを本明細書中の開示により前記患者に、好ましくはPTH濃度を少なくとも30%低下させる量を、あるいは血清中PTH濃度をCKDステージについての目標範囲(例えば、ステージ3では35〜70pg/mL(3.85〜7.7pmol/Lに相当)、ステージ4では70〜110pg/mL(7.7〜12.1pmol/Lに相当)、ステージ5では150〜300pg/mL(16.5〜33.0pmol;/Lに相当))(K/DOQIガイドラインNo.1に規定)まで低減するのに必要とされる量を投与して、血清中副甲状腺ホルモン濃度を低下させる、または低下した濃度を維持することを含む。
【0087】
別の態様において、該方法は、慢性腎臓病(ステージ3、4または5)に続く副甲状腺機能亢進症を患う患者に、1,25−ジヒドロキシビタミンD2などの有効量の活性ビタミンDホルモンを本明細書中の開示により投与して、血清中PTH濃度を低下させることを含む。
【0088】
経口投与の場合の1,25−ジヒドロキシビタミンDの投与量は、一般に、1週につき約0.1μg〜100μg、好ましくは1週につき約0.7μg〜約70μgであり、該投与量は、毎日の投与または他の周期的投与に、例えば血液透析と同時に投与する場合には週3回に分割できる。例示的実施形態では、1日につき約1、2、3、4、5、6、7、8または9μgに相当する経口投与量が考えられる。
【0089】
一般に、1,25−ジヒドロキシビタミンD化合物は、単位投与量につき約0.1μg〜約10μg、例えば、約1μg〜約4μg、約2μg〜約10μg、または約3μg〜約5μgを含有する単位剤形によって投与される。
【0090】
本明細書に記載の1,25−ジヒドロキシビタミンD2などのビタミンDホルモンの投与は、また、前以て決めたビタミンDホルモン投与量の患者への効率的かつ予想可能な送達を可能にする。活性ビタミンDホルモンの一時的かつ定量的な利用能は、肝臓での活性化またはその他の代謝に依存しない。したがって、任意選択でまたは好ましくは前述のような副作用を回避または低減しながら、同等の効果を達成するために、他の手段による送達に比較してより少ない投与量が可能であると考えられる。
【0091】
本明細書に記載の投与量は、本明細書に記載の任意の治療方法に対して考えられる。具体的症例におけるビタミンD化合物の実際の好ましい量は、処方される個々の組成物、適用方式、および治療される個々の場所により異なることが認識される。投与量は、通常の考察を利用して、例えば、ホルモンおよび既知薬の特異的活性の通例的比較によって、例えば、適切な通常の薬理学的プロトコールによって決定することができる。
【0092】
各個々の患者に対する具体的投与量は、広範な種類の因子、例えば、年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事、投与の時期および方式、排泄速度、併用される医薬、および療法が適用される個々の障害の重症度によって左右される場合がある。
【0093】
ビタミンDの栄養補給を必要とする患者には、健康な対象、およびビタミンDの不足または欠乏症の危険がある対象、例えば、ステージ1、2、3、4または5のCKDを有する対象;ビタミンD強化ミルクを飲まない乳児、子供および成人(例えば、乳糖不耐症の対象、牛乳アレルギーを有する対象、牛乳を摂取しないベジタリアン、および母乳栄養乳児);くる病を有する対象;黒い皮膚を有する対象(例えば、米国で、15〜49歳のアフリカ系アメリカ人女性の42%は、ビタミンD欠乏であるが、白人女性では4%である);高齢者(ビタミンDを合成する能力が低下し、また、より屋内に留まりそうな人);施設に収容された成人(屋内に留まりやすい人、アルツハイマー病または精神病を有する対象を含む);露出する皮膚のすべてを覆う対象(特定の宗教または文化のメンバーなど);日焼け止めを常用する対象(例えば、8の日光保護係数(Sun Protection Factor)(SPF)を有する日焼け止めを塗布すると、ビタミンDの産生が95%低下し、より大きなSPF値はビタミンDをさらに減少させる可能性がある);脂肪吸収不全症候群を有する対象(限定はされないが、嚢胞精線維症、胆汁鬱滞性肝疾患、その他の肝疾患、胆嚢疾患、膵臓酵素欠乏症、クローン病、炎症性腸疾患;スプルーまたはセリアック病、または胃および/または腸の部分または全部の外科的除去を含む);炎症性腸疾患を有する対象;クローン病を有する対象;小腸切除を受けた対象;歯肉疾患を有する対象;フェニトイン、フォスフェニトイン、フェノバルビタール、カルバマゼピンおよびリファンピンをはじめとするビタミンDの異化を増大させる薬物を摂取している対象;コレスチラミン、コレスチポール、オルリスタット、ミネラルオイル、および脂肪代替物をはじめとするビタミンDの吸収を低下させる医薬を摂取している対象;ケトコナゾールをはじめとするビタミンDの活性化を阻害する医薬を摂取している対象;コルチコステロイドをはじめとするカルシウム吸収を低下させる医薬を摂取している対象;肥満を有する対象(体脂肪貯蔵部に蓄えられたビタミンDは生物学的に利用されにくい);骨粗鬆症を有する対象;および/または閉経後女性が含まれる。ビタミンDの食事摂取基準(Dietary Reference Intakes)に関する医学研究所(Institute of Medicine)の報告によれば、食品摂取データは、若年および高齢女性の両方にとってのビタミンDの中位摂取量が現推奨量よりも低いことを示唆しており;データは、若年および高齢女性の50%超がビタミンDの推奨量を摂取していないことを示唆している。
【0094】
本明細書に記載の本発明の方法から任意選択で除外されるのは、腎性骨ジストロフィー(骨軟化症および嚢胞性線維性骨炎を含む)を患う対象の治療処置である。
【0095】
他の態様において、本発明の組成物および方法は、ビタミンDに応答する疾患、すなわち、ビタミンD、25−ヒドロキシビタミンDまたは活性ビタミンD(例えば、1,25−ジヒドロキシビタミンD)が疾患の開始または進行を予防するか、あるいは疾患の徴候または症状を減弱する疾患の予防または治療処置に有用である。このようなビタミンDに応答する疾患には、癌(例えば、乳房、肺、皮膚、黒色腫、結腸、結腸直腸、直腸、前立腺および骨の癌)が含まれる。1,25−ジヒドロキシビタミンDは、いくつかの細胞に関してインビトロで細胞分化を誘導し、かつ/または細胞増殖を阻害することが観察されている。ビタミンDに応答する疾患には、また、自己免疫疾患、例えば、I型糖尿病、多発性硬化症、リウマチ様関節炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、強皮症、線維症、グレーブス病、橋本病、急性または慢性の移植拒絶、急性または慢性の移植片対宿主病、炎症性腸疾患、クローン病、全身性紅斑性狼瘡、シェーグレン症候群、湿疹および乾癬、皮膚炎(アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎および/または慢性皮膚炎を含む)が含まれる。ビタミンDに応答する疾患には、また、他の炎症性疾患、例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患、多嚢胞性腎疾患、多嚢胞性卵巣症候群、膵炎、腎炎、肝炎、および/または感染症が含まれる。ビタミンDに応答する疾患には、高血圧および心血管疾患が含まれることも報告されている。したがって、本発明は、心血管疾患の危険があるまたは該疾患を患う対象、例えば、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、心筋梗塞、心筋虚血、脳虚血、脳卒中、鬱血性心不全、心筋症、肥満またはその他の体重障害、脂質障害(例えば、高脂血症、糖尿病付随性異脂肪血症および混合性異脂肪血症、低アルファリポタンパク血症、高グリセリド血症、高コレステロール血症および低HDL(高密度リポタンパク)を含む異脂肪血症)、代謝性障害(例えば、メタボリック症候群、II型糖尿病、I型糖尿病、高インスリン血症、耐糖能障害、インスリン抵抗性、神経障害、腎障害、網膜症、糖尿病性足部潰瘍および白内障を含む糖尿病性合併症)、および/または血栓症を有する対象の予防または治療処置を考えている。
【0096】
ビタミンD化合物の濃度調節から利益を得ることのできる疾患には、限定はされないが、(i)副甲状腺に関して−副甲状腺機能低下症、偽性副甲状腺機能低下症、二次性副甲状腺機能亢進症;(ii)膵臓に関して−糖尿病;(iii)甲状腺に関して−髄様癌;(iv)皮膚に関して−乾癬、創傷治癒;(v)肺に関して−サルコイドーシスおよび結核症;(vi)腎臓に関して−慢性腎臓病、低リン血症性VDRR、ビタミンD依存性くる病;(vii)骨に関して−抗痙攣治療、小孔性線維形成不全症、嚢胞性線維性骨炎、骨軟化症、骨粗鬆症、骨減少症、骨硬化症、腎性骨ジストロフィー、くる病;(viii)腸に関して−グルココルチコイド拮抗、特発性高カルシウム血症、吸収不良症候群、脂肪便、熱帯性スプルー;および(ix)自己免疫障害が含まれる。
【0097】
本発明の実施形態において、ビタミンD化合物の濃度調節から利益を得る疾患は、癌、皮膚科学的障害(例えば、乾癬)、副甲状腺障害(例えば、副甲状腺機能亢進症および二次性副甲状腺機能亢進症)、骨障害(例えば、骨粗鬆症)および自己免疫障害から選択される。
【0098】
製剤は、当業者に周知の方法によって調製できる。典型的には、医薬として許容し得るワックス、類脂質性物質およびオイルを、必要なら溶融して流動性液体を準備し、それによって均一混合物を得るのをより容易にする。このようにして得られた液状担体に、無水エタノールなどのアルコールに例えば溶解されたビタミンD化合物を添加し、成分を混合して均一混合物を準備する。混合物を、冷却、貯蔵し、その後、充填ゼラチンカプセルなどの単位剤形に分割できる。
【0099】
1つの好ましい方法では、オイルビヒクルの一部、固体ワックスおよび親油性乳化剤を比較的高い温度(例えば65℃)まで加熱、混合した後に吸収増強剤を添加し、続いて均一になるまでさらに混合し、次いで中間的に高められた温度(例えば、50℃〜55℃)まで冷却する。別の容器中で、酸化防止保存剤および残りのオイルビヒクルを、混合し、中間的に高められた温度(例えば50℃)まで加熱し、次いでワックス混合物と合わせ、均一溶液が得られるまで混合する。次に、ビタミンD化合物のアルコール溶液を、均一ワックス溶液と合わせ、均一溶液が得られるまで混合し、好ましくはカプセル中に充填し、次いで室温まで冷却する。別の好ましい方法では、オイルビヒクルの一部、固体ワックスおよび親油性乳化剤を55℃〜60℃の温度で加熱、混合した後、吸収増強剤を添加し、続いて均質になるまでさらに混合する。別の容器中で、酸化防止保存剤および残りのオイルビヒクルを、混合し、55℃〜60℃の温度まで加熱し、次いでワックス混合物と合わせ、均一溶液が得られるまで混合する。次に、ビタミンD化合物のアルコール溶液を、均一ワックス状溶液と合わせ、均一溶液が得られるまで混合し、好ましくはカプセル中に充填し、次いで室温まで冷却する。
【0100】
製剤は、好ましくは、治療を必要とする患者に投与するのに先立ってカプセル中に充填される。このようなカプセルは、硬質または軟質でよいが、軟質カプセルが好ましい。標準的なカプセル充填機を使用し、製剤を溶融することおよび軟質カプセルの殻中に射出充填することなどによって、製剤をゼラチンカプセル中に充填することができる。
【0101】
製剤ならびにその使用および製造方法は、特記しない限り、さらに後に記載されるさらなる任意選択の要素、特徴およびステップの1つまたは複数の任意の組合せを含む実施形態を包含すると考えられる。
【0102】
したがって、実施形態の一類型において、製剤は、さらに、酸化防止剤などの保存剤を含む。ブチル化ヒドロキシルトルエン(BHT)が好ましい。
【0103】
実施形態の別の類型において、ビタミンD化合物は、1種または複数の他の治療薬と組み合わせて投与される。
【0104】
ビタミンD化合物を1種または複数の他の治療薬と組み合わせて投与する場合、投与される組合せにおける化合物のそれぞれの比率は、扱われる個々の疾患状態によって左右される。例えば、25−ヒドロキシビタミンD2および/または25−ヒドロキシビタミンD3を、1種または複数のカルシウム塩(カルシウムサプリメントまたは食事性リン酸塩結合剤として意図された)、ビスホスホネート、カルシウム擬似薬、ニコチン酸、鉄、リン酸塩結合剤、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロール、活性ビタミンDステロール、血糖および高血圧調節薬、各種抗悪性腫瘍薬、ならびにビタミンD薬を分解できるCYP24および他のシトクロムP450酵素の阻害薬と共に経口で投与することを選択できる。さらに、25−ヒドロキシビタミンD2および/または25−ヒドロキシビタミンD3を、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロール、活性ビタミンDステロール、血糖および高血圧調節薬、各種抗悪性腫瘍薬、ならびにビタミンD薬を分解できるCYP24および他のシトクロムP450酵素の阻害薬と共に静脈内で投与することを選択できる。実際、当業者に周知であるように、所望される目的が病態の治療的処置である場合には、より高投与量の本発明化合物が使用され、一方、予防目的に対しては、より低い投与量が一般には使用され、任意の所定の症例において投与される具体的投与量は、投与される具体的化合物、治療すべき疾患、対象の状態、および薬物の活性または対象の応答を変更する可能性のある他の関連する医学的事実に従って調節されると解される。
【0105】
前に説明したように、製剤は、好ましくはゼラチンカプセル中に充填されるが、製剤のままの形態、または腸溶性被覆などの1つまたは複数の表面被覆層を有する形態で投与することもできる。また、製剤を圧縮して錠剤とすることができると考えられ、このような場合には、1種または複数の錠剤圧縮用賦形剤を含めることができる。
【0106】
本明細書に記載の組成物および方法において、好ましいステップ、好ましい成分、その好ましい組成範囲、およびこれらの好ましい組合せは、本明細書中で提供される種々の具体的実施例から選択できる。例えば、好ましい製剤は、例えば、約0.1wt%(例えば、0.12wt%)の25−ヒドロキシビタミンD(例えば、25−ヒドロキシビタミンD3)、約2wt%(例えば2.32wt%)のエタノール、約10wt%(例えば9.75wt%)のGELUCIRE44/14、約27wt%(例えば27.51wt%)の硬質パラフィン、約38wt%(例えば37.85wt%)のGMS、約22wt%(例えば22.43wt%)のミネラルオイル、および任意選択で少量の保存剤(例えば、0.02wt%のBHT)を含有する。この製剤の変形体は、約20%の硬質パラフィンおよび約29%のミネラルオイルを含有する。
【0107】
さらに別の好ましいカプセルの実施形態、および50μgの実施形態のための仕様を下表2に示す。
【表2】
【実施例】
【0108】
以下の実施例では、具体的な製剤とそれらの調製方法を例示する。実施例は、例示のために提供され、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【0109】
(実施例1)
調節放出性製剤
下表3に従って、確認された成分を示した量で均一に混合すること、およびその混合物を硬質ゼラチンカプセル中に充填することによって、9種の経口ビタミンD製剤を調製した。製剤9は、従来技術による即放性製剤であり、ここで、MIGLYOL812Nは、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリドの商品名であり、米国ニュージャージー州CranfordのCONDEA Chemie GmbHから入手できる。製剤を、ユカタンミニブタ(約10kg)の群に250μgの25−ヒドロキシビタミンD3に相当する単回投与で投与した。各群は5頭の動物を含んでいた。5頭のユカタンミニブタからなる第10群には、250μgに相当する25−ヒドロキシビタミンD3を静脈内注射で投与した。
【0110】
【表3】
【0111】
投与前、ならびに投与後0.5、1、2、4、6、8、12、24、48、96、168、240、336、432、504、576および672時間の時点で血液を採取した。血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度を、液体クロマトグラフィー/質量分光法/質量分光法(LC MS/MS)で分析した。
【0112】
図1〜図8には、群1〜8に関する最初の24時間にわたる血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の変化を表示する。さらに、図7には、群7と共に群9の即放性対照に関するデータも表示する。濃度プロフィールは、本発明による群7の製剤が、(a)最初の24時間にわたって血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の漸増的かつ継続的上昇をもたらし、かつ(b)25−ヒドロキシビタミンD3濃度の急増を回避したことを示している。
【0113】
図9〜図11には、それぞれ群7、9および10についての検討期間にわたる血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の変化を表示する。図12には、それぞれ群7および9に対する図9および10のデータを重ねて表示する。
【0114】
濃度プロフィールは、本発明による群7の製剤が、血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の漸増的上昇をもたらし、25−ヒドロキシビタミンD3濃度の急増を回避し、長期にわたって血清中25−ヒドロキシビタミンD3の継続的増加をもたらしたことを示している。
【0115】
120分間にわたる同製剤のインビトロ溶出試験(溶出媒体:Ctab/NaH2PO4緩衝液、pH6.8中の0.056リパーゼ)は、インビボでのデータに概略的には一致する結果を示した(例えば、製剤2および7は、%溶出のより緩やかで不十分な上昇を示すのに、即放性対照は、30分以内に100%の放出を示した)。
【0116】
下表4のデータは、本発明による群7の製剤を投与することによって試験対象中に生じた各種薬物動態パラメーターを、従来技術による群9の即放性製剤および群10のIV注射投与と比較して示す。該データは、本発明による群7の製剤が、濃度スパイクを回避し、即放性剤形および静脈内注射に比べてはるかに遅い時点で最大濃度を呈示し、かつ同種の即放性剤形に比べてより長いクリアランス半減期を呈示したことを立証している。本発明による群7の製剤は、投与された25−ヒドロキシビタミンD3の全身循環からの、群9と比較してより遅い排除をもたらした。
【0117】
本発明の群7の製剤としてミニブタ(約10kg)に投与された250μgの25−ヒドロキシビタミンD3の単回投与は、血清中25−ヒドロキシビタミンD3のほぼ40ng/mLの上昇をもたらした。50μgの25−ヒドロキシビタミンD3のヒト(約60kg)への単回投与は、血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度を約1.4ng/mL程度増加させると予想される。
【0118】
【表4】
【0119】
群1〜6および8の製剤に関するCmax、Tmax、および生物学的利用能の比較データを下表5に示す。
【0120】
【表5】
【0121】
(実施例2)
ミニブタでの経口カプセルの薬物動態研究
本研究の目的は、a)25−ヒドロキシビタミンD3の250μg調節放出性(MR)カプセル×1錠、b)250μgMRカプセル×2錠、c)250μgMRカプセル×4錠、d)1000μgMRカプセル×1錠、e)25−ヒドロキシビタミンD3の250μg即放性(IR)カプセル×1錠、およびf)3日連続で250μgMRカプセル×1錠を投与した後の、雄性ユカタンブタ(体重約45kg)における25−ヒドロキシビタミンD3の全身性吸収を評価することとした。
【0122】
MR製剤は、上記実施例1の群7の製剤をベースにして調製した。1000μgMRカプセルの場合には、エタノールを相対的に減らすことによって、25−ヒドロキシビタミンD3をより高い濃度に調整した。
【0123】
IR製剤を調製するには、25−ヒドロキシビタミンD3(0.12%wt/wt;カプセル当たり250μg)を、米国薬局方エタノール(2.32%wt/wt;可溶化剤)に溶解し、米国薬局方コーン油(97.54%wt/wt;主要ビヒクル)およびブチル化ヒドロキシトルエン(0.02%wt/wt;酸化防止剤)と混合した。コーン油溶液(205mg)をサイズが0号の2ピース硬質ゼラチンカプセル中に充填した。
【0124】
群当たり8頭の雄性ユカタンミニブタに、それぞれ下表6中の投与計画に基づいた投与量を投与した。初回投与に先立って、ならびに初回投与の0.5、1、2、4、6、8、10、12、24、48、72および96時間後に動物から血液を採取した。群6の動物には、それぞれ24時間および48時間の血液検体を採取した直後に2回目および3回目の投与量を投与した。採取したすべての検体中の25−ヒドロキシビタミンD3を分析した。群1および群5の動物から、次の時点、すなわち、投与前、ならびに初回投与の0.5、1、2、4、6、8、10、12、24、48、72および96時間後に採取した検体中のイオン性カルシウムおよび総カルシウムを測定した。
【0125】
【表6】
【0126】
ブタの血清中の25−ヒドロキシビタミンD3を、固相抽出(SPE)を利用し、タンデム質量分光検出を備えた高速液体クロマトグラフィー(LC−MS/MS)を用いて分析した。血清検体は、ベースラインを補正して、薬物動態の解析から25−ヒドロキシビタミンD3の内因性濃度を除外した。これを達成するために、各動物の投与前25−ヒドロキシビタミンD3濃度を、その各投与後濃度から控除した。1ng/mL(定量下限界)に満たない血清検体は、値を0とした。
【0127】
薬物動態パラメーターを表7に記す。
【表7】
【0128】
投与量で正規化した群1〜3に関する薬物動態パラメーターを表8に記す。
【表8】
【0129】
1、2および4錠のカプセル(250μgMRカプセル)を投与された群の場合、投与量の関数としての曝露の増加が存在した。1×250μgおよび2×250μgの投与量では、投与量に比例する曝露が生じたが、2×250μgと4×250μgの投与量の間では、比例にはわずかに至らない曝露が観察された。最大濃度に到達する平均時間(Tmax)は、25.5〜30.5時間であった。
【0130】
単一カプセル(1×1000μg)による曝露と4カプセル(4×250μg)による曝露との比較は、複数カプセルで投与された動物でのより高い曝露を示した。平均Tmaxなどの投与量に依存しないパラメーターは、両方の投与戦略に対して同様であった。
【0131】
25−ヒドロキシビタミンD3の調節放出性(MR)製剤(群1)とIR製剤(群5)との比較は、MR製剤が血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度のスパイクを回避することを示した。IR製剤と比較したMR製剤の相対的生物学的利用能はほぼ77%であった。MR製剤を服用した動物は、IR製剤を服用した動物(Tmax=5.75時間)と比較して有意な遅延を示す26.5時間の平均Tmaxを示した。
【0132】
1、2および3日目に1×250μgのMRカプセルを服用した動物での曝露を評価した。投与後24時間のベースラインを超える25−ヒドロキシビタミンD3濃度の平均増加は、1、2および3回目の投与後にそれぞれ17.3、31.5および43.9ng/mLであった。
【0133】
図13〜図18は、それぞれ群1〜6の動物に対する平均薬物動態プロフィールを示す。図19は、25−ヒドロキシビタミンD3の250μgMR製剤および250μgIR製剤に対する薬物動態プロフィールの比較を示す。
【0134】
(実施例3)
ミニブタでの経口カプセルによる全身曝露研究
本研究の目的は、十分なビタミンD摂取量を含む食餌で飼育された健常雄性ユカタンブタ(約50〜60kgの体重)における、1日当たり、次のもの、a)25−ヒドロキシビタミンD3の25μg即放性(IR)カプセル(群1)、b)25−ヒドロキシビタミンD3の25μg調節放出性(MR)カプセル(群2)、およびc)25−ヒドロキシビタミンD3の125μgMRカプセル(群3)を21日間投与した後の、25−ヒドロキシビタミンD3全身濃度の増加を評価することとした。
【0135】
MR製剤は、上記実施例1の群7の製剤をベースにして調製した。25−ヒドロキシビタミンD3濃度の相違は、エタノールを相対的に変化させて調整した。
【0136】
IR製剤を調製するには、25−ヒドロキシビタミンD3(0.12%wt/wt;カプセル当たり250μg)を、米国薬局方エタノール(2.32%wt/wt;可溶化剤)に溶解し、米国薬局方コーン油(97.54%wt/wt;主要ビヒクル)およびブチル化ヒドロキシトルエン(0.02%wt/wt;酸化防止剤)と混合した。コーン油溶液(205mg)をサイズが0号の2ピース硬質ゼラチンカプセル中に充填した。
【0137】
群当たり8頭の雄性ユカタンミニブタに、下表9中の投与計画に基づいた1日当たり投与量をそれぞれ投与した。
【0138】
【表9】
【0139】
血液は、動物から初回投与前に、および前回投与の24時間後に次の投与に先立って毎日採取した。血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度は、固相抽出(SPE)を利用し、タンデム質量分光検出を備えた高速液体クロマトグラフィー(LC−MS/MS)を用いて分析した。次の時点、すなわち、投与前(0日目)、および最終回投与(21日目)の24時間後に動物から採取された検体中の血清中総カルシウムを測定した。
【0140】
3群のすべてにおいて、投与前の平均血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度は、ほぼ26ng/mLであった。21回の投与後に、血清中25−ヒドロキシビタミンD3の増加が、すべての動物で観察された。25μgのMRまたはIRカプセルの反復投与に続いて、血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度は、30ng/mLを超える濃度まで増加し、ほぼ17〜18日目にそれぞれほぼ45および55ng/mLで安定状態になり始めた。単回投与量を投与すると、血清中25−ヒドロキシビタミンD3の増加は、2つの投与計画の間で類似していた(3.84対4.18ng/mL)。一方、投与終了の時点で、その増加は、IR製剤を投与された動物の方がほぼ60%大きかった。この発見は、MRカプセルによる生物学的利用能は、単回投与後のIRのそれに類似しているが、MRカプセルは、全身性25−ヒドロキシビタミンD3を徐々に増加させることのできる25−ヒドロキシビタミンD3の反復投与法を提供することを示している。
【0141】
125μgMRカプセルを投与された動物は、より高い血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度を示した。5倍量の投与(25μgに対して125μgのMRカプセル)は、単回および反復投与の後に25−ヒドロキシビタミンD3のほぼ5倍の増加をもたらした。この発見は、MRカプセルによる曝露が、25〜125μgの範囲で投与量に比例することを示している。
【0142】
血清中カルシウム濃度に対するIRおよびMRカプセル投与の効果を調べた。IRまたはMRのどちらかを21回投与した後に、血清中カルシウム濃度は、投与前のベースライン濃度から変化しなかった、この発見は、25−ヒドロキシビタミンD3のMRカプセルを利用して、血清中カルシウムの増加をもたらすことなしに、血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度を100ng/mLを超えるまで増加させることができることを示している。
【0143】
群1〜3に関する平均未補正血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度対時間のプロフィールを図20に例示する。群1〜3に関する平均ベースライン補正後血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度対時間のプロフィールをそれぞれ図21、図22および図23に例示する。
【0144】
図24は、群1の動物に関する投与前から21日目までの副甲状腺ホルモン平均濃度の変化を示し、図25は、群2の動物に関する投与前から21日目までの副甲状腺ホルモン平均濃度の変化を示す。即放性およびMR製剤は、両方とも血清中25−ヒドロキシビタミンD3を上昇させるが、即放性製剤は、PTHの望ましくない薬理学的減少をもたらす。MR製剤は、PTHの超生理学的急性低下をもたらさず、著しく上昇する25−ヒドロキシビタミンD3濃度に対する生理学的適応と関連すると思われる緩慢なPTHの低下を可能にする。MR製剤は、PTHの望ましくない薬理学的低下に関連する安全上の懸念なしに、より高い血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度の達成を可能にするはずである。
【0145】
(実施例4)
ビーグル犬での経口カプセルの薬物動態研究
25−ヒドロキシビタミンD3の調節放出性カプセルを、ビーグル犬(10kg)に13週間連続して毎日投与した。該MR製剤は、上記実施例1の群7の製剤をベースにして調製した。25−ヒドロキシビタミンD3濃度の相違は、エタノールを相対的に変化させて調整した。
【0146】
カプセルは、経口で下表10に示す通りに投与した。
【表10】
【0147】
初回投与の前、および初回投与に続く13週(92日)までの特定の時点で、イヌから採血した。血清を作製し、液体クロマトグラフィータンデム質量分光法を利用して、血清中の25−ヒドロキシビタミンD3を分析した。
【0148】
群1〜5に関する平均血清中25−ヒドロキシビタミンD3濃度対時間のプロフィールを、図26に例示する。
【0149】
(実施例5)
溶出による放出
図27は、上記実施例2による250μgカプセルに関する溶出放出プロフィールを示し、該プロフィールは、24時間の時点で25−ヒドロキシビタミンD3の約72%の平均放出を示した。上記のように、好ましくは、調節放出性製剤は、最初の24時間で薬物の約80%を放出する。
【0150】
(実施例6)
ビタミンD不足の健康成人男性志願者での効力研究
血清中25−ヒドロキシビタミンDを最適濃度(>30ng/mL)まで戻す上での3種の異なるビタミンD製剤の有効性を、ビタミンD不足と診断された健康な非肥満男性での23日間の研究で調べた。製剤の1つ(製剤#1)は、30μgの25−ヒドロキシビタミンD3を含有する、上記実施例1の群7に記載のように調製された軟質ゼラチンカプセルである。第2の製剤(製剤#2)は、中鎖トリグリセリドのオイルに溶解された50,000IUのエルゴカルシフェロールを含有する同一外観の即放性軟質ゼラチンカプセルである。第3の製剤(製剤#3)は、中鎖トリグリセリドのオイルに溶解された50,000IUのコレカルシフェロールを含有するやはり同一外観の即放性軟質ゼラチンカプセルである。この研究には、全部で100名の健康な白色人種およびアフリカ系アメリカ人男性が参加し、そのすべては、30〜45歳であり、15〜29ng/mL(両端を含む)の血清中25−ヒドロキシビタミンD濃度を有する。すべての対象は、研究開始前の60日間および続いて研究終了までの他のビタミンDサプリメントの摂取、および特に問題となるほどの日光曝露を絶つ。研究の1日および2日目に、血清中25−ヒドロキシビタミンDの治療前ベースライン値を確立するため、すべての対象から早朝空腹時血液検体を集める。3日目の朝に、対象からさらなる空腹時血液検体(t=0)を集め、対象を、4つの治療群の1つにランダムに割り振り、朝食前に1つの試験カプセルを投与する。すなわち、群#1の対象には、製剤#1の1カプセルをそれぞれ服用させ、群#2および群#3の対象には、それぞれ、製剤#2または製剤#3の1カプセルをそれぞれ服用させる。群#4の対象には、そっくりのプラセボカプセルを服用させる。群#1の対象には、4日目から22日目までの朝に製剤#1のさらなるカプセルを朝食前にそれぞれ服用させるが、群#2、#3および#4の対象には、さらなるカプセルを服用させない。4、5、6、10、17および23日目(または、投与開始後1、2、3、7、14および20日目)に、治療群に無関係に各対象から早朝空腹時血液検体を採血する。すべての採取した血液を、25−ヒドロキシビタミンDの含有濃度について分析し、データを、ベースライン値の補正を行った後に治療群によって解析する。対象は、4つのすべての治療群において、1〜3日目に採血された空腹時血液検体の分析をベースにしてほぼ16〜18ng/mLの平均ベースライン血清中25−ヒドロキシビタミンD濃度を示す。群#4の対象(対照群)は、研究過程にわたって平均血清中25−ヒドロキシビタミンDの有意な変化を示さない。群#1の対象は、23日目までに少なくとも30ng/mLに到達する着実に増加する平均血清中25−ヒドロキシビタミンDを示す。極めて対照的に、群#2の対象は、投与後の最初の数日間、29ng/mLの最大値に到達する平均血清中25−ヒドロキシビタミンDの著しい増加を示し、その後急速に降下する。研究終了まで、群#2の血清中25−ヒドロキシビタミンDは、ベースラインに比べて有意に低い。群#3の対象は、投与後の最初の2週間を通して平均血清中25−ヒドロキシビタミンDの持続的増加を示し、その後、緩慢ではあるが漸進的な減少が起こる。研究終了まで、平均血清中25−ヒドロキシビタミンDは、30ng/mL未満であり、治療前ベースラインに比べてほぼ11ng/mLだけ高い。本研究によるデータは、本明細書に記載のように製剤化され、1日30μgの投与量で20日間投与される600μgの25−ヒドロキシビタミンD3の投与は、25−ジドロキシビタミンDの低い血清中濃度を最適濃度まで戻す上で、NKFおよび経口ビタミンD補充療法に関する他の指導的専門家によって現在推奨されているような、単回投与で投与される50,000IUのエルゴカルシフェロールまたはコレカルシフェロールのどちらかの即放性製剤に比べて実質上より効果的であることを立証している。
【0151】
(実施例7)
ステージ4のCKD、およびビタミンDの不足に付随する二次性副甲状腺機能亢進症を有する患者での効力研究
血清中総25−ヒドロキシビタミンDを最適濃度(>30ng/mL)まで戻す上での経口即放性および調節放出性25−ヒドロキシビタミンD3の有効性を、ステージ4のCKD、およびビタミンDの不足に付随する二次性副甲状腺機能亢進症を有する成人の男性および女性患者での6カ月間の研究で調べる。研究では2種の製剤を使用する。製剤の1つ(製剤#1)は、調節放出性製剤中に40μgの25−ヒドロキシビタミンD3を含有する軟質ゼラチンカプセルである。第2の製剤(製剤#2)は、即放性製剤中に40μgの25−ヒドロキシビタミンD3を含有する軟質ゼラチンカプセルである。本研究には、全部で100名の対象が参加し、そのすべては、30〜70歳であり、15〜29ng/mL(両端を含む)の血清中25−ヒドロキシビタミンD濃度、および登録時点で最新のK/DOQIガイドライン中に発表されている目標濃度を超える血清中全分子副甲状腺ホルモン(iPTH)濃度を有する。すべての対象は、研究開始前の60日間および続いて研究終了までの他のビタミンDサプリメントの摂取、ならびに特に問題となるほどの総曝露を絶つ。すべての対象は、製剤#1または製剤#2のどちらかの2カプセルで毎日の投与を開始する。血清中総25−ヒドロキシビタミンDを隔週間隔で測定し、血清中iPTHを3カ月置きの間隔で測定する。1カ月後、両製剤の1日当たり投与量を、血清中総25−ヒドロキシビタミンDが50〜90ng/mLである患者では変えないで維持し、血清中総25−ヒドロキシビタミンDが50ng/mL未満である患者では1カプセルだけ増やし、血清中総25−ヒドロキシビタミンDが90ng/mLを超える患者では1日1カプセルだけ減らす。血清中総25−ヒドロキシビタミンDを50〜90ng/mLに維持するために、1日当たり投与量のさらなる調整を行う。製剤#1および#2の投与は、両方とも、高カルシウム血症、高カルシウム尿症および高リン血症を発症しないとの条件で期限を決めずに継続されるが、その場合には、投与量の適切な調整がなされる。6カ月後、対象の血清中総25−ヒドロキシビタミンD濃度は、製剤#1を用いる治療で50〜90ng/mLで安定したままであることが見出され、血清中iPTHは、K/DOQIガイドライン中に発表されている目標と一致した濃度で安定したままであることが見出される。高カルシウム血症、高カルシウム尿症および高リン血症の発症は、いったん安定した投与が達成されると稀である。対照的に、6カ月後、対象の血清中総25−ヒドロキシビタミンD濃度は、製剤#2を用いる治療で50〜90ng/mLで安定したままであることが見出されず、血清中iPTHは、K/DOQIガイドライン中に発表されている目標と一致した濃度に到達しない。高カルシウム血症、高カルシウム尿症および高リン血症の発症は、実在する。
【0152】
この研究によるデータは、25−ヒドロキシビタミンD3の調節放出性製剤が、カルシウムおよびPTHの代謝に関連する許容できない副作用を引き起こさないで、血清中25−ヒドロキシビタミンDを増加させるのに効果的であることを立証している。
【0153】
これまでの説明は、明瞭な理解のためにのみ与えられ、本発明の範囲内での修正は、当業者にとって明らかである可能性があるので、その説明から不必要な限定を推測すべきではない。
【0154】
明細書の全体を通して、組成物が成分または材料を含むと記載される場合、特記しない限り、該組成物は、また、列挙した成分または材料の任意の組合せから本質的に構成され得るか、構成され得ると考えられる。
【0155】
本明細書中で開示される方法、およびその個々のステップの実施は、手で、および/または電子装置の助けを用いて実施できる。該方法は、特定の実施形態に関して説明されるが、当業者は、該方法と関連した行為を実施する他の方法を使用できることを容易に認識するであろう。例えば、各種ステップの順序は、特記しない限り、該方法の範囲または精神から逸脱しないで変更できる。さらに、個々のステップのいくつかを、組み合わせ、削除し、あるいは付加的ステップにさらに再分割することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製剤を摂取する対象の消化管中でのビタミンD化合物の制御放出のための製剤であって、ワックス状制御放出性担体物質、類脂質性物質、ビタミンD化合物用油性ビヒクル、およびビタミンD化合物を含む固体または半固体のワックス状混合物を含有する製剤。
【請求項2】
前記混合物が、室温で固体または半固体、体温で固体、半固体または液体である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記混合物が、室温で固体または半固体、体温で半固体または液体である、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項4】
前記ワックス状制御放出性担体物質が、非消化性ワックスを含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項5】
前記非消化性ワックスが、パラフィンワックスを含む、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
前記ワックス状制御放出性担体物質が、5wt%〜35wt%の範囲の量で存在する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項7】
前記ワックス状制御放出性担体物質が、5wt%〜30wt%の範囲の量で存在する、請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
前記類脂質性物質が、約13〜約18の範囲のHLBを有する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項9】
前記類脂質性物質が、7未満のHLBを有する乳化剤である、請求項1から8までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項10】
前記類脂質性物質が、混合脂肪酸モノグリセリド;混合脂肪酸ジグリセリド;脂肪酸のモノグリセリドとジグリセリドとの混合物;親油性ポリグリセロールエステル;モノオレイン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリルおよびジパルミチン酸グリセリルを含めたグリセロールエステル;脂肪酸のグリセリル−ラクトエステル;モノパルミチン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコールおよびモノオレイン酸プロピレングリコールを含めたプロピレングリコールエステル;モノステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンを含めたソルビタンエステル;ステアリン酸、パルミチン酸およびオレイン酸を含めた脂肪酸およびそれらの石鹸;ならびにこれらの混合物;モノオレイン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリルおよびジパルミチン酸グリセリル;脂肪酸のグリセリル−ラクトエステル;モノパルミチン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコールおよびモノオレイン酸プロピレングリコールを含めたプロピレングリコールエステル;モノステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンを含めたソルビタンエステル;ステアリン酸、パルミチン酸およびオレイン酸を含めた脂肪酸およびそれらの石鹸;ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
前記類脂質性物質が、グリセリドおよびその誘導体から選択される、請求項1から10までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項12】
前記類脂質性物質が、カプリロカプロイルマクロゴールグリセリドから選択される、請求項1から11までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項13】
前記類脂質性物質が、ポリグリコール化グリセリドを含む、請求項1から12までのいずれか1項に記載に製剤。
【請求項14】
前記ポリグリコール化グリセリドが、約44℃の融点および約14のHLBを特徴とする、請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
前記類脂質性物質が、カプリロカプロイルマクロゴール−8−グリセリドを含む、請求項1から14までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項16】
前記類脂質性物質が、7未満のHLBを有する親油性乳化剤と好ましくは13〜18のHLB値を有する吸収増強剤との混合物を含む、請求項1から15までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項17】
前記類脂質性物質が、5wt%〜60wt%の範囲の量で存在する、請求項1から16までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項18】
前記類脂質性物質が、20wt%〜60wt%の範囲の量で存在する、請求項17に記載の製剤。
【請求項19】
前記油性ビヒクルが、非消化性オイルを含む、請求項1から18までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項20】
前記油性ビヒクルが、ミネラルオイル、スクアレン、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項19に記載の製剤。
【請求項21】
前記油性ビヒクルが、製剤の約10wt%〜約50wt%を構成する、請求項1から20までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項22】
前記油性ビヒクルが、製剤の約20wt%〜約45wt%を構成する、請求項21に記載の製剤。
【請求項23】
ビタミンD化合物の制御放出性経口投与製剤であって、薬理学的に活性な量のビタミンD化合物、ならびに(a)ボーラスIV注射によって投与される等価量のビタミンD化合物、および(b)有効量の放出調節剤を除外した同様の剤形のどちらかまたは両方と比較して、投与間隔内でのビタミンD化合物の最大血清中濃度(Cmax)を低下させるように、かつ/またはビタミンD化合物の血漿中濃度が投与後の投与間隔内でその最大値に到達する時間(Tmax)を増大させるように、かつ/または投与後24時間以内でのビタミンD化合物の最大血清中濃度の投与24時間後濃度に対する比率(Cmax24hr/C24hr)を低下させるように、剤形からのビタミンD化合物の放出速度を調節するのに有効な量の放出調節剤を含有する制御放出性経口投与製剤。
【請求項24】
前記剤形が、低下したCmaxおよび増大したTmaxの両方を特徴とする、請求項23に記載の製剤。
【請求項25】
Cmaxの前記低下が、少なくとも20%である、請求項23または24に記載の製剤。
【請求項26】
Cmaxの前記低下が、少なくとも30%である、請求項25に記載の製剤。
【請求項27】
Cmaxの前記低下が、少なくとも40%である、請求項26に記載の製剤。
【請求項28】
Cmaxの前記低下が、少なくとも50%である、請求項27に記載の製剤。
【請求項29】
Cmaxの前記低下が、少なくとも60%である、請求項28に記載の製剤。
【請求項30】
Cmaxの前記低下が、少なくとも70%である、請求項29に記載の製剤。
【請求項31】
Cmaxの前記低下が、少なくとも80%である、請求項30に記載の製剤。
【請求項32】
Cmax24hr/C24hrの前記低下が、少なくとも20%である、請求項23または24に記載の製剤。
【請求項33】
Cmax24hr/C24hrの前記低下が、少なくとも30%である、請求項32に記載の製剤。
【請求項34】
Cmax24hr/C24hrの前記低下が、少なくとも40%である、請求項33に記載の製剤。
【請求項35】
Cmax24hr/C24hrの前記低下が、少なくとも50%である、請求項34に記載の製剤。
【請求項36】
Cmax24hr/C24hrの前記低下が、少なくとも60%である、請求項35に記載の製剤。
【請求項37】
Cmax24hr/C24hrの前記低下が、少なくとも70%である、請求項36に記載の製剤。
【請求項38】
Cmax24hr/C24hrの前記低下が、少なくとも80%である、請求項37に記載の製剤。
【請求項39】
前記ビタミンD化合物が、25−ヒドロキシビタミンD3を含む、請求項1から38までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項40】
単位投与量当たり1μg〜100μgの範囲の量で存在する25−ヒドロキシビタミンD3を含有する、請求項39に記載の製剤。
【請求項41】
単位投与量当たり5μg〜90μgの範囲の量で存在する25−ヒドロキシビタミンD3を含有する、請求項40に記載の製剤。
【請求項42】
単位投与量当たり30μg〜80μgの範囲の量で存在する25−ヒドロキシビタミンD3を含有する、請求項41に記載の製剤。
【請求項43】
単位投与量当たり30μg〜60μgの範囲の量で存在する25−ヒドロキシビタミンD3を含有する、請求項42に記載の製剤。
【請求項44】
単位投与量当たり20μg〜60μgの範囲の量で存在する25−ヒドロキシビタミンD3を含有する、請求項43に記載の製剤。
【請求項45】
単位投与量当たり35μg〜50μgの範囲の量で存在する25−ヒドロキシビタミンD3を含有する、請求項44に記載の製剤。
【請求項46】
単位投与量当たり40μgの量で存在する25−ヒドロキシビタミンD3を含有する、請求項40に記載の製剤。
【請求項47】
崩壊剤を本質的に含有しない、請求項1から46までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項48】
投与間隔内でのビタミンD化合物の最大血清中濃度(Cmax)が、ボーラスIV注射および/または即放性経口剤形によって投与される等価量のビタミンD化合物に対するCmaxと比較して低下するような制御放出によって患者にビタミンD化合物を投与する方法。
【請求項49】
前記低下が、少なくとも20%である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
ビタミンD化合物の投与後24時間以内での最大血清中濃度の投与24時間後濃度に対する比率(Cmax24hr/C24hr)が、ボーラスIV注射および/または即放性経口剤形によって投与される等価量のビタミンD化合物に比較して低下するような制御放出によって患者にビタミンD化合物を投与する方法。
【請求項51】
前記低下が、少なくとも20%である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
ビタミンD化合物の排出半減期(t1/2)が、ボーラスIV注射および/または相当する即放性経口剤形によって投与される等価量のビタミンD化合物に対するt1/2に比較して増大するような制御放出によって患者にビタミンD化合物を投与する方法。
【請求項53】
前記増大が、少なくとも25%である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
ビタミンD化合物の血漿中濃度が、投与後の投与間隔内でその最大値に到達する時間(Tmax)が、ボーラスIV注射および/または相当する即放性経口剤形によって投与される等価量のビタミンD化合物に対するTmaxに比較して増大するような制御放出によって患者にビタミンD化合物を投与する方法。
【請求項55】
前記縮小が、少なくとも25%である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記ビタミンD化合物が、25−ヒドロキシビタミンD3を含む、請求項48から55までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
25−ヒドロキシビタミンD3を1日につき1〜100μgの範囲の量でヒト患者に長期間投与することを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記長期間が、少なくとも1カ月である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記ヒト患者のビタミンDが欠乏している、請求項48から58までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
患者の血清中25(OH)D濃度を少なくとも30ng/mLまで上昇させるために、ヒト患者に25−ヒドロキシビタミンD3を投与することを含む、請求項48から59までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記ヒト患者のビタミンDが充足している、請求項48から58までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
患者の血清中25(OH)D濃度が30ng/mL未満に降下することを予防するために、ヒト患者に25−ヒドロキシビタミンD3を投与することを含む、請求項48から61までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記ヒト患者が、ビタミンD欠乏症に付随した二次性副甲状腺機能亢進症を有する、請求項48から60までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記ヒト患者に25−ヒドロキシビタミンD3を投与して患者の血清中25(OH)D濃度を少なくとも30ng/mLまで上昇させることによってヒト患者の高められたPTHを低下させることを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項1】
製剤を摂取する対象の消化管中でのビタミンD化合物の制御放出のための製剤であって、ワックス状制御放出性担体物質、類脂質性物質、ビタミンD化合物用油性ビヒクル、およびビタミンD化合物を含む固体または半固体のワックス状混合物を含有する製剤。
【請求項2】
前記混合物が、室温で固体または半固体、体温で固体、半固体または液体である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記混合物が、室温で固体または半固体、体温で半固体または液体である、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項4】
前記ワックス状制御放出性担体物質が、非消化性ワックスを含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項5】
前記非消化性ワックスが、パラフィンワックスを含む、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
前記ワックス状制御放出性担体物質が、5wt%〜35wt%の範囲の量で存在する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項7】
前記ワックス状制御放出性担体物質が、5wt%〜30wt%の範囲の量で存在する、請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
前記類脂質性物質が、約13〜約18の範囲のHLBを有する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項9】
前記類脂質性物質が、7未満のHLBを有する乳化剤である、請求項1から8までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項10】
前記類脂質性物質が、混合脂肪酸モノグリセリド;混合脂肪酸ジグリセリド;脂肪酸のモノグリセリドとジグリセリドとの混合物;親油性ポリグリセロールエステル;モノオレイン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリルおよびジパルミチン酸グリセリルを含めたグリセロールエステル;脂肪酸のグリセリル−ラクトエステル;モノパルミチン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコールおよびモノオレイン酸プロピレングリコールを含めたプロピレングリコールエステル;モノステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンを含めたソルビタンエステル;ステアリン酸、パルミチン酸およびオレイン酸を含めた脂肪酸およびそれらの石鹸;ならびにこれらの混合物;モノオレイン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリルおよびジパルミチン酸グリセリル;脂肪酸のグリセリル−ラクトエステル;モノパルミチン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコールおよびモノオレイン酸プロピレングリコールを含めたプロピレングリコールエステル;モノステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンを含めたソルビタンエステル;ステアリン酸、パルミチン酸およびオレイン酸を含めた脂肪酸およびそれらの石鹸;ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
前記類脂質性物質が、グリセリドおよびその誘導体から選択される、請求項1から10までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項12】
前記類脂質性物質が、カプリロカプロイルマクロゴールグリセリドから選択される、請求項1から11までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項13】
前記類脂質性物質が、ポリグリコール化グリセリドを含む、請求項1から12までのいずれか1項に記載に製剤。
【請求項14】
前記ポリグリコール化グリセリドが、約44℃の融点および約14のHLBを特徴とする、請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
前記類脂質性物質が、カプリロカプロイルマクロゴール−8−グリセリドを含む、請求項1から14までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項16】
前記類脂質性物質が、7未満のHLBを有する親油性乳化剤と好ましくは13〜18のHLB値を有する吸収増強剤との混合物を含む、請求項1から15までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項17】
前記類脂質性物質が、5wt%〜60wt%の範囲の量で存在する、請求項1から16までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項18】
前記類脂質性物質が、20wt%〜60wt%の範囲の量で存在する、請求項17に記載の製剤。
【請求項19】
前記油性ビヒクルが、非消化性オイルを含む、請求項1から18までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項20】
前記油性ビヒクルが、ミネラルオイル、スクアレン、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項19に記載の製剤。
【請求項21】
前記油性ビヒクルが、製剤の約10wt%〜約50wt%を構成する、請求項1から20までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項22】
前記油性ビヒクルが、製剤の約20wt%〜約45wt%を構成する、請求項21に記載の製剤。
【請求項23】
ビタミンD化合物の制御放出性経口投与製剤であって、薬理学的に活性な量のビタミンD化合物、ならびに(a)ボーラスIV注射によって投与される等価量のビタミンD化合物、および(b)有効量の放出調節剤を除外した同様の剤形のどちらかまたは両方と比較して、投与間隔内でのビタミンD化合物の最大血清中濃度(Cmax)を低下させるように、かつ/またはビタミンD化合物の血漿中濃度が投与後の投与間隔内でその最大値に到達する時間(Tmax)を増大させるように、かつ/または投与後24時間以内でのビタミンD化合物の最大血清中濃度の投与24時間後濃度に対する比率(Cmax24hr/C24hr)を低下させるように、剤形からのビタミンD化合物の放出速度を調節するのに有効な量の放出調節剤を含有する制御放出性経口投与製剤。
【請求項24】
前記剤形が、低下したCmaxおよび増大したTmaxの両方を特徴とする、請求項23に記載の製剤。
【請求項25】
Cmaxの前記低下が、少なくとも20%である、請求項23または24に記載の製剤。
【請求項26】
Cmaxの前記低下が、少なくとも30%である、請求項25に記載の製剤。
【請求項27】
Cmaxの前記低下が、少なくとも40%である、請求項26に記載の製剤。
【請求項28】
Cmaxの前記低下が、少なくとも50%である、請求項27に記載の製剤。
【請求項29】
Cmaxの前記低下が、少なくとも60%である、請求項28に記載の製剤。
【請求項30】
Cmaxの前記低下が、少なくとも70%である、請求項29に記載の製剤。
【請求項31】
Cmaxの前記低下が、少なくとも80%である、請求項30に記載の製剤。
【請求項32】
Cmax24hr/C24hrの前記低下が、少なくとも20%である、請求項23または24に記載の製剤。
【請求項33】
Cmax24hr/C24hrの前記低下が、少なくとも30%である、請求項32に記載の製剤。
【請求項34】
Cmax24hr/C24hrの前記低下が、少なくとも40%である、請求項33に記載の製剤。
【請求項35】
Cmax24hr/C24hrの前記低下が、少なくとも50%である、請求項34に記載の製剤。
【請求項36】
Cmax24hr/C24hrの前記低下が、少なくとも60%である、請求項35に記載の製剤。
【請求項37】
Cmax24hr/C24hrの前記低下が、少なくとも70%である、請求項36に記載の製剤。
【請求項38】
Cmax24hr/C24hrの前記低下が、少なくとも80%である、請求項37に記載の製剤。
【請求項39】
前記ビタミンD化合物が、25−ヒドロキシビタミンD3を含む、請求項1から38までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項40】
単位投与量当たり1μg〜100μgの範囲の量で存在する25−ヒドロキシビタミンD3を含有する、請求項39に記載の製剤。
【請求項41】
単位投与量当たり5μg〜90μgの範囲の量で存在する25−ヒドロキシビタミンD3を含有する、請求項40に記載の製剤。
【請求項42】
単位投与量当たり30μg〜80μgの範囲の量で存在する25−ヒドロキシビタミンD3を含有する、請求項41に記載の製剤。
【請求項43】
単位投与量当たり30μg〜60μgの範囲の量で存在する25−ヒドロキシビタミンD3を含有する、請求項42に記載の製剤。
【請求項44】
単位投与量当たり20μg〜60μgの範囲の量で存在する25−ヒドロキシビタミンD3を含有する、請求項43に記載の製剤。
【請求項45】
単位投与量当たり35μg〜50μgの範囲の量で存在する25−ヒドロキシビタミンD3を含有する、請求項44に記載の製剤。
【請求項46】
単位投与量当たり40μgの量で存在する25−ヒドロキシビタミンD3を含有する、請求項40に記載の製剤。
【請求項47】
崩壊剤を本質的に含有しない、請求項1から46までのいずれか1項に記載の製剤。
【請求項48】
投与間隔内でのビタミンD化合物の最大血清中濃度(Cmax)が、ボーラスIV注射および/または即放性経口剤形によって投与される等価量のビタミンD化合物に対するCmaxと比較して低下するような制御放出によって患者にビタミンD化合物を投与する方法。
【請求項49】
前記低下が、少なくとも20%である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
ビタミンD化合物の投与後24時間以内での最大血清中濃度の投与24時間後濃度に対する比率(Cmax24hr/C24hr)が、ボーラスIV注射および/または即放性経口剤形によって投与される等価量のビタミンD化合物に比較して低下するような制御放出によって患者にビタミンD化合物を投与する方法。
【請求項51】
前記低下が、少なくとも20%である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
ビタミンD化合物の排出半減期(t1/2)が、ボーラスIV注射および/または相当する即放性経口剤形によって投与される等価量のビタミンD化合物に対するt1/2に比較して増大するような制御放出によって患者にビタミンD化合物を投与する方法。
【請求項53】
前記増大が、少なくとも25%である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
ビタミンD化合物の血漿中濃度が、投与後の投与間隔内でその最大値に到達する時間(Tmax)が、ボーラスIV注射および/または相当する即放性経口剤形によって投与される等価量のビタミンD化合物に対するTmaxに比較して増大するような制御放出によって患者にビタミンD化合物を投与する方法。
【請求項55】
前記縮小が、少なくとも25%である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記ビタミンD化合物が、25−ヒドロキシビタミンD3を含む、請求項48から55までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
25−ヒドロキシビタミンD3を1日につき1〜100μgの範囲の量でヒト患者に長期間投与することを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記長期間が、少なくとも1カ月である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記ヒト患者のビタミンDが欠乏している、請求項48から58までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
患者の血清中25(OH)D濃度を少なくとも30ng/mLまで上昇させるために、ヒト患者に25−ヒドロキシビタミンD3を投与することを含む、請求項48から59までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記ヒト患者のビタミンDが充足している、請求項48から58までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
患者の血清中25(OH)D濃度が30ng/mL未満に降下することを予防するために、ヒト患者に25−ヒドロキシビタミンD3を投与することを含む、請求項48から61までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記ヒト患者が、ビタミンD欠乏症に付随した二次性副甲状腺機能亢進症を有する、請求項48から60までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記ヒト患者に25−ヒドロキシビタミンD3を投与して患者の血清中25(OH)D濃度を少なくとも30ng/mLまで上昇させることによってヒト患者の高められたPTHを低下させることを含む、請求項63に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図15】
【図16】
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【図18】
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【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公表番号】特表2010−525078(P2010−525078A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506520(P2010−506520)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/061579
【国際公開番号】WO2008/134512
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(508372445)シトクロマ インコーポレイテッド (8)
【出願人】(509295387)プロヴェンティヴ セラピュティックス リミテッド ライアビリティ カンパニー (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/061579
【国際公開番号】WO2008/134512
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(508372445)シトクロマ インコーポレイテッド (8)
【出願人】(509295387)プロヴェンティヴ セラピュティックス リミテッド ライアビリティ カンパニー (3)
【Fターム(参考)】
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