説明

ビットパターンドメディアを用いた磁気記録装置

【課題】ビットパターンドメディアのビット担体に対して磁気ヘッドの記録・再生タイミングを制御することが可能な磁気記録装置を提供する。
【解決手段】磁性体からなるビット担体15が磁気記録媒体上に複数配置されるビットパターンドメディア10を用いた磁気記録装置は、磁気ヘッド20と検出部30とタイミング制御部40とからなる。磁気ヘッド20は、ビット担体15に対して情報の記録・再生を行う。検出部30は、磁気ヘッド20によりビット担体15に記録・再生を行なう前に、そのビット担体15の配置位置を検出して相関信号を出力する。タイミング制御部40は、検出部30により出力される相関信号を用いて、磁気ヘッド20のビット担体15に対する記録・再生のタイミングを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビットパターンドメディアを用いた磁気記録装置に関し、特に、ビット担体に同期して磁気ヘッドの記録・再生タイミングを制御する磁気記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報社会においてデジタル化が加速し、大容量の記録装置の要求は益々高まっている。磁気記録装置として現在実用化されているものは、その磁気記録媒体として強磁性多結晶薄膜を有するものが用いられている。これは、グラニュラータイプとも呼ばれるものであり、高い一軸磁気異方性を持つ複数の磁性粒子からなる強磁性多結晶薄膜が媒体に設けられており、記録した情報の1ビットの中に磁性粒子が複数含まれているものである。記録密度が増加していくと、1ビットに含まれる磁性粒子の数が減るため磁束も減少し、ノイズが増加することになる。これまでは磁性粒子のサイズを小さくすることで高密度化を進めてきていたが、粒子サイズをこれ以上小さくすると、磁気情報を保持するエネルギが不足してしまい、室温程度の熱エネルギであっても情報が消えてしまうことになる。
【0003】
そこで、高密度化を進めるための一つの方法として、高い磁気安定性を有する記録材料を使うことも研究されている。しかしながら、磁性粒子の安定性が高いと、従来の磁気ヘッドでの記録が不可能になるという問題もある。このため、磁気ヘッドにより記録を行う前に、熱(光)により一時的に磁性粒子の保磁力を低下させて記録を行う光アシスト型の磁気記録装置も提案されている。
【0004】
また、高密度化を進めるための他の方法として、ディスクリートトラックメディアを用いた磁気記録装置が提案されている。高密度化が進むに連れて、磁気ヘッド側面から発生する磁界による隣接トラックへのサイドトラック記録の影響やクロストークの影響が問題となってくる。これらの影響を抑制・低減するために考えられたのがディスクリートトラックメディアである。ディスクリートトラックメディアでは、磁気記録層が溝により分離されている。即ち、トラック間に溝があり、磁気的且つ物理的に分離されているので、トラック間で磁化の乱れはなく、サイドトラック記録等の影響が抑制できるものである。
【0005】
さらに、より高密度化を目指すべく、トラック長手方向についても磁気記録層を分離して、1つの磁性粒子を1ビットとして記録するビットパターンドメディアが提案された。これは、1つの磁性粒子ごとに物理的に磁性層が分離されており、ビット担体として磁性体を均等にトラック長手方向に配置した構造である。これにより、トラック間だけでなくビット間でのサイドライトやクロストークも抑制することが可能となる。
【0006】
ここで、特許文献1には、光アシスト型の磁気記録装置において、光源からの光スポットを所定の位置に照射するように、光源からの反射光を利用してフォーカシングやトラッキングの制御を行うものが開示されている。また、特許文献1には、磁気記録媒体として、記録トラックの長手方向と交叉する方向に関してランド・アンド・グルーブの凹凸が形成された構成(ディスクリートトラックメディア)のものを用いることができると開示されており、この場合にも反射光を検出することで磁気ヘッドの磁界印加のトラッキングサーボ信号を得ることが可能であるとしている。
【0007】
また、特許文献2には、ビットパターンドメディアを用いた磁気記録装置において、磁気記録媒体のスピンドルモータの回転ムラを補償するための技術が開示されている。これは、クロック信号を発生するためのクロック情報トラックを円周状に磁気記録媒体に設け、これをトリガーとして用いて記録・再生を行うことで、回転ムラがあっても記録・再生のタイミングをビット担体と同期が取れるものであるとしている。
【0008】
【特許文献1】特開2006−134513号公報
【特許文献2】特開2007−207385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ビットパターンドメディアに対して記録・再生を行う場合には、1つの磁性粒子が1ビットとなるビット担体となるため、磁気ヘッドによる記録・再生のタイミングがビット担体と同期が取れている必要がある。しかしながら、ビットパターンドメディアの場合、高度なプロセスを用いて磁気記録媒体上に磁性粒子が配置されるが、製造誤差等により、ビット担体の配置にランダムな部分、即ち、ビット担体の位置ずれが存在し得る。このようなビット担体の位置ずれがあると、記録・再生のタイミングにずれが生じることになる。このタイミングずれ(位相ずれ)については、高速に回転する磁気記録媒体上にビット担体が配置される構造のビットパターンドメディアにおいては特に大きな問題となる。
【0010】
しかしながら、例えば特許文献1に開示の技術では、ディスクリートトラックメディアについては触れられているがビットパターンドメディアについては一切触れられておらず、また、同技術ではトラッキングサーボ信号を得ることで磁気記録媒体の放線方向(トラック幅方向)の位置ずれ補償は可能かもしれないが、ディスクリートトラックメディアに関しては、トラック長手方向に対して所定のタイミングで一連の磁性層に記録・再生が行われるだけであり、そもそもトラック長手方向の位相補償(同期)は行う必要がないものであった。
【0011】
また、特許文献2に開示の技術では、磁気記録媒体の回転ムラを補償するための技術であり、ビット担体の配置位置については位置ずれが生じていないことが前提となっている技術である。さらに、回転ムラを検出するために、クロック情報トラックを別途設けたものであるが、このクロック情報トラック自体についても位置ずれが生じていないことが前提となっている。したがって、回転ムラによる位相補償が行えたとしても、ビット担体の配置のずれが存在した場合には、同期を取ることができなかった。
【0012】
したがって、ビットパターンドメディアを用いた磁気記録装置において、ビット担体の配置ずれがあったとしても同期を取って記録・再生が可能な磁気記録装置の開発が望まれていた。
【0013】
本発明は、斯かる実情に鑑み、ビットパターンドメディアのビット担体に対して磁気ヘッドの記録・再生タイミングを制御することが可能な磁気記録装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した本発明の目的を達成するために、本発明によるビットパターンドメディアを用いた磁気記録装置は、磁性体からなるビット担体が磁気記録媒体上に複数配置されるビットパターンドメディアと、ビット担体に対して情報の記録・再生を行う磁気ヘッドと、磁気ヘッドによりビット担体に記録・再生を行なう前に、そのビット担体の配置位置を検出して相関信号を出力する検出部と、検出部により出力される相関信号を用いて、磁気ヘッドのビット担体に対する記録・再生のタイミングを制御するタイミング制御部と、を具備するものである。
【0015】
ここで、検出部は、ビット担体の配置位置に起因する物理的現象変化を検出するものであれば良い。
【0016】
また、検出部は、ビット担体に対する光強度変化、静電容量変化、磁気変化、渦電流変化、音波反射時間変化の少なくとも何れかに起因する物理的現象変化を検出するものであれば良い。
【0017】
さらに、検出部は、プラズモンアンテナを具備するものであっても良い。
【0018】
また、検出部は、プラズモンアンテナのアンテナ後端ラインの電界強度の変化を検出するものであっても良い。
【0019】
また、タイミング制御部は、磁気ヘッドの記録・再生を行うためのクロック信号として相関信号を用いれば良い。
【0020】
さらに、磁気記録媒体の放線方向に対する磁気ヘッドの位置制御を行うためのトラッキング制御部を具備するものであっても良い。
【0021】
ここで、検出部は、該検出部を磁気記録媒体の放線方向に振動させながら物理的現象変化を検出しても良い。
【発明の効果】
【0022】
本発明の磁気記録装置には、ビットパターンドメディアのビット担体に位置ずれがあったとしても、それに同期して磁気ヘッドの記録・再生タイミングを制御可能であるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図示例と共に説明する。図1は、本発明のビットパターンドメディアを用いた磁気記録装置の構成を説明するための概略斜視図である。図示のように、本発明の磁気記録装置は、ビットパターンドメディア10と磁気ヘッド20と検出部30とタイミング制御部40とから主に構成されるものである。
【0024】
磁気記録媒体として用いられるビットパターンドメディア10は、磁性体からなるビット担体(記録担体)15が磁気記録媒体上に複数配置されている。ビット担体15は、例えば半導体製造プロセス等により1ビットが1ビット担体に対応するように形成されるものであり、例えば図1の一部拡大図に示されるように、磁性層に凹凸を形成することでビット担体となる磁性領域とそれ以外の領域である非磁性領域に分離されたものである。なお、本発明の磁気記録装置では、物理的に凹凸を設けて形成されたビットパターンドメディアに限定されず、1ビット1ビット担体となるように構成された媒体であれば、如何なる構造であっても良い。例えば組成や膜構造を変化させて磁気的に分離された媒体等でも構わない。
【0025】
磁気ヘッド20は、ビット担体15に対する情報の記録・再生を行うものである。磁気ヘッド20は、水平磁気記録方式でも垂直磁気記録方式でも構わず、従来の又は今後開発されるべきあらゆる磁気ヘッドが適用可能である。
【0026】
検出部30は、磁気ヘッド20によりビット担体15に記録・再生を行なう前に、そのビット担体15の配置位置を検出するものである。即ち、検出部30は、記録・再生を行おうとするビット担体15の配置位置を、記録・再生を行う前に予め検出しておくためのものである。ビット担体15は高精度なプロセスにより製造されるが、記録密度を高めるためにビット担体15の配置ピッチが例えば25nmピッチというように微細になるにつれ、製造誤差による配置位置のずれの影響が無視できなくなってくる。検出部30は、このずれを補償するためにビット担体の配置位置を検出すべく設けられたものであり、ビット担体の配置位置を検出し、これに基づきこの配置位置に応じた相関信号を出力するものである。
【0027】
ビット担体の配置位置を検出する手法は種々のものが利用できる。一例としては、ビット担体の配置位置に起因する物理的現象変化を検出するものが挙げられる。物理的現象変化としては、例えばビット担体15に対する光強度変化、静電容量変化、磁気変化、渦電流変化、音波反射時間変化等が挙げられる。例えば、ビット担体15に対して光を照射すると、ビット担体15の配置位置によってその近接場光強度が変化するので、これを検出する。また、静電容量を検出する場合には、ビット担体15の配置位置によって金属板間の静電容量が変化することを利用する。同様に、磁気の変化を磁気センサで検出したり、金属板に生じる渦電流の変化を検出したり、超音波等を照射して反射波の返ってくる時間を計測することで硬度の変化を検出したりすることで、ビット担体の配置位置を検出することが可能である。
【0028】
より具体的には、例えば検出部30は、プラズモンアンテナを具備するものとすることが可能である。プラズモンアンテナは、金属表面上に誘起される表面プラズモンを利用したものであり、光微小スポットを形成可能なものである。プラズモンアンテナの電極は種々の形状があり、蝶ネクタイ型や三角形型等の電極に一様交流磁界を印加すると、中心部分に局所磁界ができることを利用し、表面プラズモンの共鳴効果を利用して強い局所光スポットを形成できる。図2に、プラズモンアンテナとビット担体との位置関係に対する電界強度分布の変化のシミュレーション結果を示す。シミュレーションにおける解析条件は以下の通りである。まず、プラズモンアンテナ31として、アンテナ長が400mnのPtからなるものを用いた。また、ビット担体15は30nmの球状のものを45nmピッチで配置した。なお、シミュレーションではビット担体としてPtを用いたが、Co−Cr合金等の磁性体が用いられても良い。そして、プラズモンアンテナ31の光源として、図中x方向に1V/mの電界を持つ直線偏光ガウス分布の円光源を用いた。このような条件の下、アンテナ最表面(先端)の位置の電界強度分布をシミュレーションした。ここで、ビット担体15の直上、即ち、ビット担体15の中心とプラズモンアンテナ31の先端とが一致した位置をx=0とし、そこからx方向にアンテナを移動させた。なお、実際の磁気記録装置においては、磁気記録媒体が回転することでビット担体側が−x方向に移動している。
【0029】
図2のシミュレーション結果のグラフから分かるように、アンテナ先端がビット担体の直上にあるときに電界強度分布にピークが見られる。したがって、ビット担体ごとにこのピークを検出すること、即ち、ビット担体の配置位置に起因する物理的現象を検出することで、ビット担体の配置位置、より具体的には、ビット担体のトラック長手方向のピッチ変動を検出することができる。そして、検出部30は、この配置位置の変化を相関信号として出力すれば良い。
【0030】
また、図2のグラフでは、プラズモンアンテナの先端における電界強度分布を示したが、プラズモンアンテナのアンテナ後端ラインの電界強度の変化を検出して相関信号を出力するようにしても良い。以下の表1に、プラズモンアンテナのアンテナ後端ラインの端部とアンテナ後端ラインの中心部における電界強度値を示す。なお、シミュレーションにおける解析条件は図2を用いて説明した解析条件と同様である。
【表1】

【0031】
プラズモンアンテナは、これとオーバーラップするビット担体の影響を受けて近接場光強度が変化する。表1に示されるように、プラズモンアンテナのアンテナ後端ラインの端部とアンテナ後端ラインの中心部とでは、得られる近接場光強度が異なるため、これらの2つの電界強度値を組み合わせて用いてビット担体の配置位置に起因する物理的現象を検出するようにしても良い。
【0032】
このようにして得られた相関信号を用いて、タイミング制御部40は、磁気ヘッド20のビット担体15に対する記録・再生のタイミングを制御する。即ち、ビット担体15の位置を検出した上でその配置位置にタイミングを合わせて磁気ヘッド20の記録・再生を行うように構成している。タイミング制御部40は、磁気ヘッド20の記録・再生タイミングを決定するクロック信号を出力するように構成されれば良く、このクロック信号として、ビット担体の配置位置の変化に対応する相関信号を用いることで、ビット担体の配置位置を検出し、これをクロック信号としてそのまま用いることが可能となる。したがって、例えば45nmピッチで配置されているべきビット担体が、製造誤差により個々のビット担体間の距離が44nmや46nmに変化したとしても、磁気ヘッドによる記録・再生前にこの配置位置の変化を検出部で検出し、正確にビット担体に対してタイミングを合わせて記録・再生を行うことが可能となる。なお、磁気記録媒体の回転速度と磁気ヘッド・検出部間の距離との関係により、所定のタイミングだけ遅延させたクロック信号を出力して記録・再生を行えば良い。
【0033】
以下、図3を用いて磁気ヘッド20と検出部30との位置関係を説明する。図3は、ビットパターンドメディアの概略断面図とそれに対する磁気ヘッドと検出部との位置関係を示した概念図である。図示の通り、ビット担体15に対して、磁気ヘッド20に先行して検出部30を配置し、磁気ヘッド20による記録・再生の前に予め検出部30により記録・再生すべき先行するビット担体15の配置位置を検出するように構成されている。即ち、数ビットから数十ビット先行するビット担体の配置位置を検出した上で、このビット担体の配置位置に同期してこのビット担体が磁気ヘッド20直下に来たところで記録・再生を行うようにタイミングを決定する。ここで、本発明の磁気記録装置では、磁気ヘッド20の記録・再生タイミングを決定するクロック信号を制御するのみ、即ち、信号制御のみで、記録・再生のタイミングがビット担体と位相同期可能であるため、機械的に磁気ヘッドを制御するのと比べてタイムラグも問題となり難い。
【0034】
以上、説明したように、本発明の磁気記録装置によれば、ビットパターンドメディアのビット担体の配置位置を直接検出してその検出信号を記録・再生のクロック信号として用いているため、これに位置ずれが生じたとしても、ビット担体の位相補償が可能となるため、位置ずれに同期して記録・生成を行うことが可能となり、大幅にビット誤り率を向上させることが可能となる。
【0035】
さらに、本発明の磁気記録装置によれば、ビット担体の位置ずれ補償だけでなく、回転ムラの補償も同時に行っていることになる。即ち、回転ムラがあったとしても、これについてもビット担体の位置ずれとして検出されるため、回転ムラに対してもその影響を受けなくなる。なお、先行するビット担体の配置位置の検出後、実際に記録・再生するまでの時間遅れの間についての変動については、実用上無視することが可能である。これは、磁気記録媒体は1分間に1万回転程度の回転速度で回転しており、磁気記録媒体の慣性モーメントにより、回転ムラについては数ヘルツオーダの変動周期となるためである。したがって、数ビットから数十ビット先行するビット担体の配置位置を検出していれば、上述のような回転ムラに十分対応することが可能である。
【0036】
また、上述の図示例では磁気ヘッドと検出部は別体として構成されているものを示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、磁気ヘッドとプラズモンアンテナを積層して一体のものとして構成しても良い。このように積層した構成の場合、磁気ヘッドとプラズモンアンテナの距離は、例えば約1μm程度から場合によっては約100nm程度とすることが可能である。例えば25nmピッチでビット担体が配置されるとすると、4ビット〜40ビット先行するビット担体を検出することになる。磁気ヘッドと検出部との距離が近ければ近いほど、急峻な回転変動等にも対応可能となるためより好ましい。なお、磁気ヘッドとプラズモンアンテナを一体とした場合には、磁気ヘッドを動かすアクチュエータアーム上に検出部も配置されることから、磁気ヘッドの移動による検出部の相関信号の変動を相殺するよう処理することが好ましい。
【0037】
さらに、磁気ヘッドにより記録・再生を行うべきビット担体と、検出部が検出しているビット担体とが同じビット担体となるよう、即ち、磁気ヘッドと検出部が同じ位置を見るように構成しても良い。検出部による相関信号をダイレクトにクロック信号として用いて、ビット担体が検出されたところで、このビット担体に記録・再生を行うようにする。例えば、磁気ヘッドを記録・再生のためだけでなく検出部としてビット担体からの漏れ磁界を検出するように構成する。磁気ヘッドでビット担体からの漏れ磁界の絶対値を検出し、ピークとなったところでそのまま磁気ヘッドにより記録・再生を行うようにする。なお、ピーク検出から記録・再生動作までの遅れ時間によっては、記録・再生すべきビット担体が移動してしまっている可能性があるが、漏れ磁界を検出しだしたところからピークの位置を予測して記録・再生動作を行うこと等により、タイミング制御を行うことも可能である。
【0038】
また、本発明の磁気記録装置は、磁気記録媒体の放線方向に対する磁気ヘッドの位置制御を行うように構成しても良い。ビットパターンドメディアにおいては、ビット担体の製造誤差はトラック長手方向のピッチ変動だけでなく、放線方向、即ち、トラック幅方向の変動も生じ得る。したがって、検出部では、ビット担体のトラック長手方向のピッチ変動だけでなく、トラック幅方向の配置位置も検出するように構成しても良い。そして、検出されたトラック幅方向の配置位置に応じて、トラッキング制御部により磁気ヘッドの位置制御を行う。ここで、トラッキング制御の手法については、従来の又は今後開発されるべきあらゆる手法が適用可能である。また、トラック幅方向の配置位置検出の手法についても、従来の又は今後開発されるべきあらゆる手法が適用可能である。例えば、本発明の磁気記録装置の検出部を、磁気記録媒体の放線方向に高周波振動させながら物理的現象変化を検出することで、放線方向の配置位置も検出するように構成することも可能である。なお、ビット担体のトラック幅方向の位置ずれを検出できるように、検出部を振動させる幅は、少なくともトラック幅以上であることが好ましい。放線方向に振動させながらビット担体の配置位置に起因する物理的現象を検出すると、トラック長手方向のピッチ変動だけでなく、トラック幅方向の配置位置の変動による変化も検出することが可能となる。これにより、タイミング制御部による記録・再生タイミング制御と、トラッキング制御部による磁気ヘッドの位置制御を同時に行うことが可能となる。
【0039】
なお、本発明のビットパターンドメディアを用いた磁気記録装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明のビットパターンドメディアを用いた磁気記録装置の構成を説明するための概略斜視図である。
【図2】図2は、プラズモンアンテナとビット担体との位置関係に対する電界強度分布の変化のシミュレーション結果である。
【図3】図3は、ビットパターンドメディアの概略断面図とそれに対する磁気ヘッドと検出部との位置関係を示した概念図である。
【符号の説明】
【0041】
10 ビットパターンドメディア
15 ビット担体
20 磁気ヘッド
30 検出部
31 プラズモンアンテナ
40 タイミング制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体からなるビット担体が磁気記録媒体上に複数配置されるビットパターンドメディアと、
ビット担体に対して情報の記録・再生を行う磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドによりビット担体に記録・再生を行なう前に、そのビット担体の配置位置を検出して相関信号を出力する検出部と、
前記検出部により出力される相関信号を用いて、前記磁気ヘッドのビット担体に対する記録・再生のタイミングを制御するタイミング制御部と、
を具備することを特徴とする磁気記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気記録装置において、前記検出部は、ビット担体の配置位置に起因する物理的現象変化を検出することを特徴とする磁気記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の磁気記録装置において、前記検出部は、ビット担体に対する光強度変化、静電容量変化、磁気変化、渦電流変化、音波反射時間変化の少なくとも何れかに起因する物理的現象変化を検出することを特徴とする磁気記録装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の磁気記録装置において、前記検出部は、プラズモンアンテナを具備することを特徴とする磁気記録装置。
【請求項5】
請求項4に記載の磁気記録装置において、前記検出部は、前記プラズモンアンテナのアンテナ後端ラインの電界強度の変化を検出することを特徴とする磁気記録装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れかに記載の磁気記録装置において、前記タイミング制御部は、前記磁気ヘッドの記録・再生を行うためのクロック信号として相関信号を用いることを特徴とする磁気記録装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れかに記載の磁気記録装置であって、さらに、磁気記録媒体の放線方向に対する前記磁気ヘッドの位置制御を行うためのトラッキング制御部を具備することを特徴とする磁気記録装置。
【請求項8】
請求項7に記載の磁気記録装置において、前記検出部は、該検出部を磁気記録媒体の放線方向に振動させながら物理的現象変化を検出することを特徴とする磁気記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−163816(P2009−163816A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341557(P2007−341557)
【出願日】平成19年12月29日(2007.12.29)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】