説明

ビデオカメラ

【課題】 箱形筐体の内部に映像を処理する回路部を備えたビデオカメラについて、回路部からの熱を筐体外部へ効率よく放熱させる。
【解決手段】 ビデオカメラの筐体側面を成すサイドパネル2,3に、回路部5,6を伝熱部材7,8を介して取り付け、回路部5,6で発生する熱を筐体の側面から外部へ放熱する。これにより、下から上へ流れる自然対流Fを利用して、放熱効率を高める。また、筐体を、左右同一形状の2つのサイドパネルを組み付けた構造として、1種類のサイドパネルで筐体を構成できるようにして部品の種類を削減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視カメラや産業用カメラなどとして利用されるビデオカメラに関し、特に、映像を処理する回路部の発熱を、箱形筐体の外部へ効率的に放熱するビデオカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
監視カメラなどとして利用されるビデオカメラは、長時間にわたって動作することから、カメラ筐体に内蔵されている回路部の発熱を外部へ放熱する必要性が高い。
このため、従来から、ビデオカメラには放熱構造が採用されており、回路部の発熱をカメラ筐体の外部へ放熱するようにしている。
【0003】
図7及び図8には、従来のビデオカメラの放熱構造を示してある。
このビデオカメラの外殻を成す筐体は、フロントフレームASSY20、ダイカスト製のボトムフレーム21、板金製のトップカバー22、ダイカスト製のリヤフレーム23を組み立てた構成となっており、全体として箱形を成している。
このビデオカメラ筐体の内部には、映像を処理する回路を実装した基板24,25が設けられており、下側の基板24は熱伝導効率の良い部材26を介してボトムフレーム21に取り付けられ、上側の基板25は熱伝導効率の良い部材27を介してトップカバー22に取り付けられている。
【0004】
上記の構造により、下側の基板24で発生した熱は熱伝導部材26を介してボトムフレーム21に伝導されて放熱され、上側の基板25で発生した熱は熱伝導部材27を介してトップカバー22に伝導されて放熱される。
【0005】
なお、特許文献1には、ビデオカメラなどに用いられる固体撮像素子について、固体撮像素子に熱伝導部材をバネで付勢して密着させることで、固体撮像素子で発生した熱を熱伝導部材を介してカメラ筐体の外部へ放熱させる放熱構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−65348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来のビデオカメラは、発熱体である基板24,25が上下に並行に配置され、下側の基板24の熱はボトムフレーム21から放熱し、上側の基板25の熱はトップカバー22から放熱する放熱構造であったため、上下の基板24,25の間に熱が籠もってしまうとともに、下側のボトムフレーム21と上側のトップカバー22とから放熱されることになって、下から上へと流れる熱の自然対流Fによる冷却効果が十分に得られず、総じて放熱効率が悪いという課題があった。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたもので、箱形筐体の内部に映像を処理する回路部を備えたビデオカメラについて、回路部からの熱を筐体外部へ効率よく放熱させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るビデオカメラは、筐体の側面を成すサイドパネルに、発熱部となる回路部を伝熱構造により取り付けた構造である。
これによって、上下に並行に配置されていた回路部(上記の例では、基板24,25)を左右に配置することができ、これら回路部の間に熱が籠もらないようにすることができる。しかも、回路部からの熱は筐体の側面を成すサイドパネルから放熱されることとなるため、下から上へと流れる熱の自然対流Fを阻害することなく十分に利用して、優れた冷却効果が得られる。
【0010】
なお、伝熱構造は、熱伝導効率の良い部材を介して回路部とサイドパネルとを密着させて取り付ける構造の他、例えば、回路部とサイドパネルとを直接密着させて取り付ける構造であってもよく、要は、回路部からの熱をサイドパネルへ効率的に伝導できる構造であればよい。
【0011】
ここで、上記従来のビデオカメラでは、発熱体(上側基板27)の熱を板金製のトップカバー22から放熱しているが、トップカバー22は板金製作によるため、放熱面となる表面積を増大させるために自由な形状とすることが制作上困難であり、また、熱伝導性に優れた材料を選択することも困難であり、高精細化に伴う内部発熱体の増大に対応できないという課題があった。
これに対して、本発明は、ダイカスト製法や押し出し成型製法など、溶融状態の材料を型によって成型する方法によりサイドパネルを製作するようにしてもよく、これにより、サイドパネルを、放熱面積の大きな形状のものとしたり、或いは、アルミなどの熱伝導性の優れた材料で形成して、サイドパネルからの放熱効率をより向上させることができる。
【0012】
また、上記従来のビデオカメラでは、ボトムフレーム21はダイカスト製法により形成し、トップカバー22は板金加工により形成し、これらは互いに形状の異なる部品であったため、その分、筐体を組み立てるために用意する部品の種類が増大してコスト増大を招くという課題があった。
これに対して、本発明は、筐体の左右の側面を成す一対のサイドパネルを同一な形状としてもよく、これにより、左右のサイドパネルを共用化して、筐体を組み立てるために用意する部品の種類を削減し、コストを削減することができる。
【0013】
更には、本発明は、左右のサイドパネルを同一な形状とすることに加えて、筐体の底面及び上面を成す部分(上記従来例でしましたボトムフレーム21及びトップカバー22に相当する部分)を左右対称に2分割にして、それぞれ左右のサイドパネルに一体的に成型し、筐体を左右に半割構造とするようにしてもよく、これにより、更に部品の種類や点数を削減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、箱形筐体に内蔵された回路部の熱をサイドパネルから放熱させるようにしたため、ビデオカメラの動作によって内部に発生する熱を効率よく外部へ放熱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るビデオカメラを分解した状態で示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るビデオカメラを横断面で示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るサイドパネルを示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るサイドパネルを表面、後端、裏面、前端からそれぞれ見て示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るビ左右のサイドパネルの組付けを説明する横断面図である。
【図6】図5中の30部及び31部をそれぞれ拡大して示す図である。
【図7】従来のビデオカメラを分解した状態で示す斜視図である。
【図8】従来のビデオカメラを横断面で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を、図1乃至図6に示す一実施形態により具体的に説明する。
本発明に係るビデオカメラは、レンズなどを組み付けたフロントフレームASSY1、同一形状を成す左右一対のサイドパネル2とサイドパネル3、リヤフレーム4を組み立てることにより構成される筐体を有しており、筐体は全体として箱形を成している。
この筐体の内部には、映像を処理する回路を実装した基板5,6が設けられており、これら基板5及び6から発生した熱はサイドパネル2及びとサイドパネル3から外部へ放熱される構造となっている。
【0017】
一方の基板5は熱伝導シートなどの熱伝導効率の良い部材7を介して一方のサイドパネル2にネジ止めで取り付けられ、他方の基板6は熱伝導シートなどの熱伝導効率の良い部材8を介して他方のサイドパネル3にネジ止めで取り付けられている。
したがって、基板5,6は立てた状態で間隔をもって互いに対向し、図1中右側の基板5は右側のサイドパネル2に熱伝導部材7を介して密着して取り付けられ、図1中左側の基板6は左側のサイドパネル3に熱伝導部材8を介して密着して取り付けられている。すなわち、発熱体である回路部を実装した基板5,6は、筐体の側面を成すサイドパネル2,3にそれぞれ伝熱構造により取り付けられている。
【0018】
図3に示すように、同一形状のサイドパネル2,3は、それぞれ、筐体の側面を成す板部aの上下両側縁から、筐体の底面及び上面を成す一対の板部bを張り出して設けた、断面コ字状であり、左右のサイドパネル2,3を互いの板部bの先端を付け合わせて組み付けることにより、内部に基板5,6を収容する空間をもった筒状体が組み立てられる。
すなわち、左右のサイドパネル2,3の板部bが組み付けることにより、箱形筐体の底面及び上面が形成される。
【0019】
そして、各板部bの先端には段部cが形成されており、図5及び図6に示すように、各サイドパネル2,3における段部cは一方が出っ張りで他方が引っ込みの形状で、且つ、左右のサイドパネル2,3間では出っ張り形状の段部cと引っ込み形状の段部cとが対応して組み合わさるようになっている。
すなわち、図5に示すように、1種類の形状のサイドパネルを2個用意して、一方を180度向きを変えて他方と段部cを突き合わせて組み付けることで、筐体の両側面と底面及び上面が形成される。
【0020】
図1に示すように、左右のサイドパネル2,3を組み付けた筒状体の先端にフロントフレームASSY1がネジ止めにより取り付けられ、この筒状体の後端にリヤフレーム4がネジ止めにより取り付けられて、箱形の筐体が組み立てられる。
すなわち、筐体の底面及び上面を成す部分を左右対称の板部bに2分割にして、これら板部bをそれぞれ左右の板部aに一体的に成型し、筐体を中心から左右対称に半割構造としている。
【0021】
また、サイドパネル(2又は3)をその表面、後端、裏面、前端からそれぞれ見た構造を表す図4に示すように、サイドパネルの後端にはリヤフレーム4をネジ止めするためのネジ穴9が上下の隅に2つ(左右のサイドパネルでは四隅に4つ)設けられ、サイドパネルの前端にはフロントフレームASSY1をネジ止めするためのネジ穴10が上下の隅に2つ(左右のサイドパネルでは四隅に4つ)設けられている。
【0022】
ネジ穴9,9の間隔Aとネジ穴10,10の間隔Bは等しく設定されており、更には、筐体を左右対称に半割にする中心線とネジ穴9との間隔Cと、当該中心線とネジ穴10との間隔Dとは等しく設定されており、これによって、左右のサイドパネル2,3を組み合わせて成る筒状体の前端と後端には、同じ個数のネジ穴が同じ位置関係で配置されている。なお、これらネジ穴9,10は同径同ピッチであり、同種のネジが螺合する。
【0023】
したがって、左右のサイドパネル2,3を組み合わせて成る筒状体に対して、その前端と後端のいずれの側からもフロントフレームASSY1とリヤフレーム4をネジ止めすることができる。なお、図示の例では、フロントフレームASSY1は2本のネジでサイドパネル2,3に取り付けているが、残りのネジ穴は使用しないだけで、フロントフレームASSY1の取り付けに支障はない。
【0024】
また、サイドパネル2,3の板部aの外表面には放熱フィン11が設けられており、これによって、筐体側面の面積を増大させて放熱効率を向上させている。この放熱フィン11は、基板5,6が熱伝導部材7,8を介して密着する位置に対応する位置に設けられており、基板5,6で発生した熱が熱伝導部材7,8を伝導して放熱フィン11から効率よく放熱されるようになっている。
【0025】
本実施形態では、サイドパネル2,3は放熱効率の良い材料(例えば、アルミ)でダイカスト製法や押し出し成型により制作されており、このように金型成形で製作することにより、放熱効率を良くするフィンの形状やデザイン性を良くする形状を容易且つ自由に形成することができる。
また、金型成形で製作することにより、サイドパネルを、筐体側面を成す板部aから筐体の底面及び上面を成す一対の板部bを張り出して設けた断面コ字状に形成することも容易となる。
【0026】
本実施形態に係るビデオカメラは、次のようにして組み立てられる。
まず、左右のサイドパネル2,3の内側にそれぞれ基板5,6を熱伝導部材7,8を介在させて密着して取り付ける。
なお、基板5,6間の電気的接続はフラットケーブル、ボードトゥボードコネクタなどの接続手段12を使用することにより、組立時の引っ掛かりや断線を防ぐことができる。
【0027】
そして、左右のサイドパネル2,3を互いの段部cを付け合せて組み付けて筒状体とし、この筒状体の先端及び後端にフロントフレームASSY1とリヤフレーム4をネジ止めする。
この組み立てにおいて、左右のサイドパネル2,3は、上記のように形状もネジ穴も同一であるので、1種類のサイドパネルを2個用意するだけで、これらサイドパネルをサイドパネル2,3として筒状体を組み立て、この筒状体にフロントフレームASSY1とリヤフレーム4をネジ止めすることができる。
【0028】
したがって、1種類のサイドパネルを左右のサイドパネルとして共用化することができ、これによって、コストが削減される。
更に、サイドパネルを板部aから一対の板部bを一体的に張り出して設けた部材とし、筐体を左右に半割構造としているので、従来のように筐体の底面や上面を成す部材を用意する必要がなくなり、更に部品の種類や点数が削減される。
【0029】
このようにして組み立てたビデオカメラは、筐体の内部に設けられた基板5,6が立てた状態で互いに間隔をもって配置されており、しかも、各基板5,6が伝熱構造により筐体の側面(板部a)に接しているため、各基板5,6で発生した熱が、基板間に籠もることなく、筐体の側面(本例では、主に放熱フィン11)から外部へ放熱される。
そして、図2に示すように、筐体内部の熱は筐体の側面から外部へ放熱されるため、放熱された熱が下から上へと流れる自然対流Fによって絶えず上方へ流れて効率よく冷却されることとから、総じて優れた放熱効率が得られる。
【符号の説明】
【0030】
1:フロントフレームASSY、 2,3:サイドパネル、
4:リヤフレーム、 5,6:基板(発熱体)、
7,8:熱伝導部材、 9,10:ネジ穴、
11:放熱フィン、 a:筐体の側面を成す板部、
b:筐体の底面及び上面を成す板部、 c:段部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱形筐体の内部に映像を処理する回路部を備えたビデオカメラにおいて、
筐体の側面を成すサイドパネルに、前記回路部を伝熱構造により取り付けたことを特徴とするビデオカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−169875(P2012−169875A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29272(P2011−29272)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】