説明

ビノレルビンを含むソフトカプセルのための経口製薬組成物及び治療方法

【課題】ソフトカプセル含有物に適した液体充填組成物の開発は困難であると分かっている。ソフトカプセルとの組み合わせで使用できるカプセル充填組成物では、活性成分は溶媒混合物において溶解形態で存在する必要がある。
【解決手段】a)ビノレルビンまたは製薬学的に許容可能なその塩;b)エタノール;c)水;d)グリセロール;及びe)ポリエチレングリコール;を含む、ソフトカプセル投与量形態のための液体充填組成物として適当な液体経口製薬組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガンを治療するための経口的に投与可能な製薬組成物の分野に関する。特に本発明は、製薬学的に活性な成分としてビンカアルカロイドのビノレルビンを含む経口投与形態に関する。
【背景技術】
【0002】
ビノレルビンまたは3',4'-ジデヒドロ-4'-デオキシ-C'-ノルビンカロイコブラスチンは、チューブリン重合を阻害することによって細胞増殖抑制効果を示すビンカアルカロイド誘導体化合物である。ビノレルビンはG2+M期で有糸分裂を阻害する。ビノレルビン、及び酒石酸塩形態を含むその製薬学的な塩の形態は、抗新生物剤及び抗有糸分裂剤として両者とも知られており、非小細胞肺ガン及び転移性乳ガンの治療において使用されている。
【0003】
ビノレルビンは、静脈内点滴または注射を通じて全身性の経路によって化学療法剤の一部としてガン患者に広く投与されている。前記薬剤は各種の経路によって投与できるが、増大した生体利用性と関連しているため、静脈内経路がビノレルビンの最も一般的に使用されている投与形態の一つである。酒石酸ビノレルビンは、Plantes et Industrie, Gaillac, Franceで現在製造されている。
【0004】
ビノレルビンを含むソフトカプセル投与量形態を含む経口投与量形態は、前記薬剤の経口投与経路のために研究されている。ガンの治療のために液体形態のビノレルビンを輸送するためのソフトカプセル投与量形態の使用の可能性は、Rowinsky等, "Pharmacokinetic, Bioavailability, and Feasibility Study of Oral Vinorelbine in Patients with Solid Tumors," J. Clin. Oncol., Vo. 12(9)(1994年9月), pp. 1754-63; Zhou等, "Relative Bioavailability of Two Oral Formulations of Navelbine in Cancer Patients," Biopharmaceutics & Drug Disposition, Vol. 15 (1994), pp. 577-86;及びJassem等, "A Multicenter Randomized Phase II Study of Oral vs. Intravenous Vinorelbine in Advances Non-small-cell Lung Cancer Patients," Annals of Oncology, Vol. 12 (2001) p. 1375-81において研究されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Rowinsky等, "Pharmacokinetic, Bioavailability, and Feasibility Study of Oral Vinorelbine in Patients with Solid Tumors," J. Clin. Oncol., Vo. 12(9)(1994年9月), pp. 1754-63
【非特許文献2】Zhou等, "Relative Bioavailability of Two Oral Formulations of Navelbine in Cancer Patients," Biopharmaceutics & Drug Disposition, Vol. 15 (1994), pp. 577-86
【非特許文献3】Jassem等, "A Multicenter Randomized Phase II Study of Oral vs. Intravenous Vinorelbine in Advances Non-small-cell Lung Cancer Patients," Annals of Oncology, Vol. 12 (2001) p. 1375-81
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
言うまでもなく、ソフトカプセル含有物に適した液体充填組成物の開発は困難であると分かっている。ソフトカプセルとの組み合わせで使用できるカプセル充填組成物では、活性成分は溶媒混合物において溶解形態で存在する必要がある。更に全体として充填組成物は、カプセル材料と化学的に適合的でなければならず、且つ一度カプセル化された場合に前記材料の分解を避けなければならず、並びに活性成分に対して不活性で、またはそれとの負の要因の化学的相互作用を減少しなければならない。有用である目的では、活性成分の生物学的活性は有意に減少してはならない。従って、開発の試みは、これらの特徴の全てで均衡を保ちながら、活性成分の化学的性質を維持するように実施できる。
【0007】
製薬分野では、活性成分としてビノレルビンを含む経口投与可能な投与量形態についての必要性が存在している。さらに、可溶性及び安定性を改良し、有効な消化後の生体利用性を有する、ビノレルビンを含むカプセル充填製剤についての必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ソフトカプセル中のカプセル化に適した、活性成分としてビノレルビンを含む製薬組成物、及びその経口投与によるガンの治療方法に関する。従って本発明は、
a)ビノレルビンまたは製薬学的に許容可能なその塩;
b)エタノール
c)水
d)グリセロール;及び
e)ポリエチレングリコール
を含む、ソフトカプセル投与量形態のための液体充填組成物を提供する。
【0009】
好ましい実施態様では、ビノレルビンの酒石酸塩形態が組成物中で使用される。また更に好ましい実施態様では、充填物をカプセル化するためのソフトカプセル組成物は、ブタ及びウシのゼラチンの混合物を含む。
【0010】
本発明は更に、
a)製薬学的に有効量のビノレルビンまたは製薬学的に許容可能なその塩;
b)エタノール;
c)水;
d)グリセロール;及び
e)ポリエチレングリコール;
を含む、ソフトカプセルでカプセル化された製薬組成物を、治療の必要のある患者に経口的に投与することを含むガンの治療方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ビノレルビンに関する用語「製薬学的に許容可能な塩」は、活性成分であるビノレルビンが、経口投与に適した塩形態で製薬組成物中に存在することを示すように意味する。ビノレルビン及び他のビンカアルカノイド誘導体のような化合物について有用であることが当該技術分野で知られている各種の塩形態が使用できる。
【0012】
ビノレルビンに関する用語「製薬学的な有効量」は、活性成分としてのビノレルビンの投与量が、所望の製薬学的効果を提供する最小濃度以上で、企図される治療に対する全体として最低の患者の耐性体制レベルのような患者に毒性であると測定される量である一方で、患者の応答において変化を伴う量で存在することを示すように意味する。ビノレルビンについての製薬学的有効性は、in vivoでの前記薬剤の抗新生物活性と抗有糸分裂活性の提示に基づいて測定できる。
【0013】
本発明は、ソフトカプセル投与量形態内へのカプセル化に適したビノレルビンを含む、改良された経口投与可能な製薬組成物を含む。活性成分としてビノレルビンを含む液体充填組成物は、経口投与のための増大した溶解性と生体利用性を提供する一方で、ソフトカプセル材料内へのにカプセル化のために適した態様で各種の成分の化学的特性の均衡をとるように製剤化できることが発見されている。
【0014】
本発明の充填組成物の調製のためのビノレルビン及びその塩形態は、天然の開始材料からの有機合成によって調製でき、または市販の供給源から直接得ることができる。
【0015】
本発明の製薬組成物で使用できる、ビノレルビンの量、特に製薬学的に有効量のビノレルビンまたは製薬学的に許容可能なその塩は、活性成分の量及び濃度が、経口摂取に適した全体の投与量形態容量を可能にする充填組成物内で可溶化できる範囲で変化できる。本発明の製薬組成物は、ソフトカプセル当たり約5mgから約100mgの間、好ましくは約20mgから約80mgの間の範囲の量で存在する、ビノレルビンのベース量を含むことができる。パーセンテージの容量に換算すると、本発明の組成物は好ましくは、全充填組成物重量の約14重量%から約18重量%の範囲の製薬学的に有効量で酒石酸ビノレルビンを含むことができる。
【0016】
エタノールは、本発明の充填組成物中にポリエチレングリコールと共に共溶媒として存在し、ビノレルビンの安定性及び溶解性、並びにカプセル殻部の安定性にとって重要である。本発明の充填組成物中のエタノール及びポリエチレングリコールの量及び割合は、許容可能なソフトカプセルの調製にとって臨界的であることができる。エタノールを有する組成物を含むカプセルの貯蔵の間で、エタノールは典型的に液体充填組成物から蒸発する傾向を有し、カプセルに対して「陥入」効果を引き起こす。好ましくは、本発明の充填組成物で使用されるエタノールの量は比較的低い。かくしてエタノールは、充填組成物の全重量の約0.3%から約7.5%の範囲の量で存在する。好ましくはエタノールは、全組成物重量の約1.6%から約5%の量で存在する。
【0017】
本発明の組成物における水:エタノールの重量比は、約2:1から約3:1であることができる。好ましくは水:エタノールの重量比は、約2.3:1から約2.7:1、より好ましくは2.5:1である。水の、好ましくは精製水の組成物の含量は、充填組成物の全重量の約1%から約15%の量を含む。
【0018】
本発明に係る組成物は、グリセロール、ソルビトール、及びプロピレングリコール、並びにその混合物を更に含むことができる。本発明の組成物で使用されるグリセロール、ソルビトール、及び/またはプロピレングリコールの全量は、組成物の全重量の約0.1%から約20%、好ましくは約0.2%から約12%の範囲であることができる。さらにより好ましくは実施態様では、全グリセロール、ソルビトール、及び/またはプロピレングリコールは、全充填物重量の約0.8%から1.4%の間の量で存在する。
【0019】
本発明で使用できるポリエチレングリコールの形態は、約200から約600ドルトンの範囲の平均分子量を有する液体形態のポリエチレングリコールである。好ましい実施態様では、約300から約400の平均分子量を有するポリエチレングリコールが使用され、最も好ましくは400である。ポリエチレングリコールは、全組成物の約66重量%から約78重量%の範囲の量で、本発明の組成物中に存在できる。
【0020】
更に最も好ましい実施態様では、ソフトカプセル材料は、2:1から1:2の重量比でブタとウシのゼラチンの混合物を含む。以下の実施例では、全てのパーセンテージは、他に記載がなければ重量パーセンテージである。
【実施例】
【0021】
ソフトカプセルビノレルビン製剤
実施例1:ソフトカプセルのためのビノレルビン製剤
酒石酸ビノレルビンを、Becomixミキサーまたは同等物を使用して、賦形剤:精製水、エタノール、グリセロール、及びポリエチレングリコール400の混合物中に溶解する。別法としては、酒石酸ビノレルビンを第一に精製水とエタノール中に溶解し、第二にゆっくりとグリセロールとポリエチレングリコール400を添加することよりなる。
【0022】
以下のソフトカプセル充填製剤を、本発明に従って調製した。それは本発明のためのベストモードの操作である。
製剤1
成分: 量:
酒石酸ビノレルビン 15.8%
エタノール 2.9%
精製水 7.1%
グリセロール 1.1%
ポリエチレングリコール400 73.1%
全量 100.0%
【0023】
ソフトカプセル殻部は、製薬ソフトカプセル投与量形態での使用に適したいずれかのポリマーまたはポリマー混合物からなることができる。各種のそのようなソフトカプセル材料が使用でき、当業者に周知である。例えば米国特許第6,340,473号参照。使用できるソフトカプセル殻部材料は、米国特許第6,340,473号に記載のものを含むがそれに制限されない。カプセル殻部材料は更に、グリセロール、ソルビトール、及びプロピレングリコールのような可塑剤を含むことができる。更なる実施態様では、カプセル殻部材料は更に、脆化阻害剤を含むことができる。一つのそのような阻害剤組成物は欧州特許第121,321号に記載されており、その全内容は参考としてここに取り込まれる。脆化阻害剤が殻部材料で使用される場合、他のポリアルコールをソルビトール及びソルビタン混合物と同時に組み合わせることができる。このように組み合わせることができるポリアルコールの例は、水素化ポリサッカリドを含む。一つの実施態様では、カプセル化材料は、カプセル殻部の全重量に対して約4から約25重量%の間、好ましくは約9から約15重量%の間のソルビトール/ソルビタン混合物を含む。
【0024】
ゼラチンがカプセル材料として使用される場合、ブタとウシのゼラチンの混合物が好ましい。更により好ましい実施態様では、カプセル殻部はウシのゼラチンの各部に対して2部のブタのゼラチンを含む。着色剤及び潤滑剤のような他の添加剤が、同様にカプセル材料中で使用できる。
【0025】
本発明の製薬組成物は、従来の製薬組成物製造方法及び装置を使用して調製できる。本発明の製薬組成物を含むソフトカプセルは更に、同様に従来のソフトカプセルのカプセル化及び製造の方法及び装置を使用して調製できる。カプセル化方法は、当業者に周知である。
【0026】
実施例2:エタノール含量、及び水含量とエタノール含量との間の割合についての比較データ
充填組成物中の各種の量のエタノールを使用して、二つの充填組成物を調製した。製剤1と製剤2を以下の同じ方法で調製した。第一に酒石酸ビノレルビンを精製水とエタノールの混合物中に溶解し、第二にグリセロールとポリエチレングリコール400をゆっくりと添加して混合し、均一な混合物を得た。評価された充填組成物は以下の通りであった:
【表1】

【0027】
比較のため、製剤中のエタノール濃度において7重量%の差異が存在するように製剤を調製した。製剤1は約2.5:1の水:エタノール含量比を有し、製剤2の水:エタノール比は約0.6:1であった。次いで充填組成物を、2部のブタのゼラチンと1部のウシのゼラチンとを含む混合物からなるカプセル材料中にカプセル化した。
【0028】
50ccアンプルガラスに実装された製剤2を含む20カプセルの100パーセントについて、18ヶ月の貯蔵の後に陥入が観察された。この「陥入」現象は、充填組成物からのエタノールの蒸発によるものであった。この結果は、本発明の充填組成物中に存在するエタノール含量及び水とエタノールの比の両者が、製薬組成物及びカプセル材料の両者の所望の特性を提供するために重要であることを示す。
【0029】
実施例3:ソフトカプセルビノレルビン製剤の比較データ
ビノレルビンを含む5種の液体充填組成物を調製し、溶解特性について評価した。比較される各製剤は、同量の活性な酒石酸ビノレルビンを含む一方で、他の成分の存在及び量が変化するように調製された。各製剤について、50gから100gの充填物が、実験室スケールのディスクミキサーを使用して、各種の成分に薬剤物質を取り込ませることによって調製された。各充填調製物の透明度を視覚的にチェックすることによって溶解度を評価した。組成物成分と各々の量は、以下の表2にまとめられている:
【表2】

【0030】
この実験から得られる結果は、以下の表3にまとめられている:
【表3】

【0031】
製剤3及び製剤4ではビノレルビンは完全には溶解されなかったため、それらは更なる評価を継続しなかった。製剤5は高粘度によりそれをカプセル化装置にポンピングできないため廃棄した。カプセル材料との良好な適合性を保存する目的で、好ましくは液体充填組成物はポリエチレングリコール400を含むべきであるため、製剤2は製剤6より好ましかった。更に製剤6中の高いパーセンテージのエタノールは、許容可能でない陥入現象を導き得た。
【0032】
この結果は、製剤中のビノレルビンの所望の溶解度を提供するために、水とエタノールとがポリエチレングリコールとともに存在し、特定の量/比で存在することが必要であることを示す。
【0033】
本発明の製剤は、溶解したビノレルビンの濃度を増大する一方で、同時に水とエタノールの両者の存在を最小化する。データから観察できるように、20mgのビノレルビンが10mgの水中に完全には溶解せず、10mgのエタノール中に20mgの量のビノレルビンを溶解する試みは粘性産物を生ずる。驚くべきことに、20mgのビノレルビンを、ビノレルビンの沈殿を観察することなく、ポリエチレングリコールの添加の前に、6.20mgの水と10.30mgのエタノールのみからなる混合物に溶解できることが発見された。かくして本発明の製剤は特に、ソフトカプセル投与量形態に適している。
【0034】
実施例4:ビノレルビン安定性データ
1)内部エポキシワニスを有するアルミニウムボトルからなる容器中のパウダー形態のビノレルビン(活性な製薬成分)の安定性、及び2)ブリスター包装に実装したソフトカプセルのために充填組成物に溶解されたビノレルビンの安定性を、貯蔵後の不純物含量と発色の測定によって評価した。
【0035】
不純物含量は、3、6、9、12、18、及び24ヶ月で測定された活性なビノレルビンの存在を定量するHPLC法によって測定した。使用されたHPLCクロマトグラフィー法は、自動インジェクターと267nmに設定された可変的波長UV検出器を機能的に備えたものを含んだ。カラムは150mmの長さと3.9mmの直径を有するステンレススチールであり、オクタデシルシリルシリカゲル-300Å-粒子、5μmを充填した。移動相は、+40℃の温度自動調節されたカラム温度で、1ml/分の移動相流動速度で、デカンスルホン酸ナトリウム(1.2217g)、リン酸バッファー0.05M(pH=4.2)380ml、及びメタノール(620ml)を使用して実施された。
【0036】
各バッチを5℃+/-3℃で分析時間の間貯蔵した。いくつかのバッチ(ビノレルビンパウダーについて3のバッチ、20mgソフトカプセルについて3のバッチ、30mgソフトカプセルについて4のバッチ、40mgソフトカプセルについて3のバッチ、80mgソフトカプセルについて3のバッチ)について、各所定の分析時間での結果の平均と初期時間(t0)での結果の平均との間の差異から平均偏差を計算した。
【0037】
その結果が以下の表にまとめられている:
【表4】

【0038】
この結果から観察できるように、ソフトカプセル中に溶解したビノレルビンを含む液体充填組成物は、12、18、及び24ヶ月の期間で、かなり低いパーセンテージの不純物の値を示した。この結果は、本発明の液体ビノレルビン製剤が、パウダー形態の薬剤と比較して、増大した貯蔵寿命を有することを示す。
【0039】
実施例5:発色の比較
発色の比較もまた、実施例4に示された各サンプル及び対応する期間について評価した。この実験では、純粋なパウダー形態のビノレルビンを、本発明のソフトカプセルにカプセル化されたビノレルビン液体充填組成物(製剤1)と比較した。発色は、ビノレルビンベースで10mg/mlと表される水性ビノレルビンの、420nmでの紫外線吸収によって5℃+/-3℃で測定した。発色データは、クロマトグラフィー処理されない酸化不純物としてのビノレルビンの分解産物を示す。いくつかのバッチ(ビノレルビンパウダーについて3のバッチ、20mgソフトカプセルについて3のバッチ、30mgソフトカプセルについて4のバッチ、40mgソフトカプセルについて3のバッチ、80mgソフトカプセルについて3のバッチ)について、各所定の分析時間での結果の平均と初期時間(t0)での結果の平均との間の差異から平均偏差を計算した。
【0040】
その結果が以下の表にまとめられている
【表5】

【0041】
この結果から観察できるように、液体ビノレルビン組成物は、貯蔵安定性の指標としての発色を使用した場合、6、12、18、及び24ヶ月の分析時間で、経時的に高い純度を示す。
【0042】
実施例6:カプセル材料の比較データ
同一の充填組成物を含む2種のカプセルタイプの複数のサンプルを調製し、カプセルの脆弱性について試験した。
【0043】
2種のカプセルの組成は以下に示されるとおりである:
【表6】

【0044】
ソフトカプセルを、5℃+/-3度の温度で2年間貯蔵した。それぞれの10のカプセルを、動力測定プライヤーを使用して実施する破砕試験にかけ、平均力価を各試験から計算した。カプセル1についての平均力価は160Nであり、カプセル2についての平均力価は98Nであった。それゆえカプセル2は、カプセル1と比較して高い脆弱性を示した。
【0045】
前記データから観察できるように、カプセル材料組成物自体は、同一の充填組成物がその中にカプセル化される場合でさえ、投与量形態の構造的強度に影響し得る。ゼラチンソースとしてブタとウシのゼラチンの混合物を含むカプセル1は、ゼラチンソースとしてウシのゼラチン単独を含むカプセル2と比較して、破砕力に対する増大した耐性を示した。
【0046】
ビノレルビンを含むソフトカプセルを使用する治療方法
本発明に従って調製されたビノレルビンを含むソフトカプセルの経口投与を、ガン細胞増殖を阻害することによるビノレルビンに応答性のガンを治療するために使用できる。チューブリン重合を阻害することによるビノレルビンの抗新生物効果及び抗有糸分裂効果は、本発明によって実施できる経口投与経路による薬剤物質の全身性の生体利用性と結び付けて実現される。
【0047】
産業上の利用可能性
本発明は、ビノレルビンの投与、並びにその関連する抗新生物効果及び抗有糸分裂効果が有益であり得るガン患者の化学療法で使用できる。本発明は特に、経口投与が静脈内投与経路より所望または好ましい場合に有用である。
【0048】
本願で引用された各特許及び文献は、それぞれの全内容が参考として個々的に取り込まれるように、参考として取り込まれる。本発明は、各種の特徴的且つ好ましい実施態様及び方法を参考にして、前記記載されている。しかしながら、そのような実施態様及び方法の合理的な変更及び変形が、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の精神または範囲のいずれかから有意に離れることなく実施できることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ビノレルビンまたは製薬学的に許容可能なその塩;
b)エタノール;
c)水;
d)グリセロール;及び
e)ポリエチレングリコール;
を含む、ソフトカプセル投与量形態のための液体充填組成物として適当な液体経口製薬組成物。
【請求項2】
前記ソフトカプセル投与量形態がソフトゼラチンカプセルである、請求項1に記載の製薬組成物。
【請求項3】
前記ゼラチンがブタとウシのゼラチンの混合物である、請求項2に記載の製薬組成物。
【請求項4】
前記ビノレルビンの製薬学的に許容可能な塩が酒石酸ビノレルビンである、請求項1に記載の製薬組成物。
【請求項5】
前記ポリエチレングリコールが200から600の範囲の平均分子量を有する、請求項1に記載の製薬組成物。
【請求項6】
前記ポリエチレングリコールがポリエチレングリコール400である、請求項5に記載の製薬組成物。
【請求項7】
a)カプセル当たり5mgから100mgの範囲の量で存在する酒石酸ビノレルビン;
b)充填組成物の全重量の0.3重量%から7.5重量%の範囲の量で存在するエタノール;
c)充填組成物の全重量の1重量%から15重量%の範囲の量で存在する水;
d)充填組成物の全重量の0.1重量%から20重量%の範囲の量で存在するグリセロール;
e)充填組成物の全重量の66重量%から78重量%の範囲の量で存在するポリエチレングリコール400;
を含む、請求項1に記載の製薬組成物。
【請求項8】
a)カプセル当たり5mgから100mgの範囲の量で存在する酒石酸ビノレルビン;
b)充填組成物の全重量の1.6重量%から5重量%の範囲の量で存在するエタノール;
c)充填組成物の全重量の1重量%から15重量%の範囲の量で存在する水;
d)充填組成物の全重量の0.2重量%から12重量%の範囲の量で存在するグリセロール;
e)充填組成物の全重量の66重量%から78重量%の範囲の量で存在するポリエチレングリコール400;
を含む、請求項7に記載の製薬組成物。
【請求項9】
組成物中の水:エタノールの重量比が2:1から3:1の範囲である、請求項8に記載の製薬組成物。
【請求項10】
組成物中の水:エタノールの重量比が2.3:1から2.7:1の範囲である、請求項10に記載の製薬組成物。
【請求項11】
組成物中の水:エタノールの重量比が2.5:1である、請求項9に記載の製薬組成物。
【請求項12】
a)製薬学的に有効量のビノレルビンまたは製薬学的に許容可能なその塩;
b)エタノール;
c)水;
d)グリセロール;及び
e)ポリエチレングリコール;
を含む、ソフトカプセルにカプセル化された製薬組成物であって、ガンの治療の必要のある患者に経口的に投与される、ガンを治療するための製薬組成物。

【公開番号】特開2010−280739(P2010−280739A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221628(P2010−221628)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【分割の表示】特願2004−508741(P2004−508741)の分割
【原出願日】平成15年5月28日(2003.5.28)
【出願人】(501477831)アール.ピー. シェーラー テクノロジーズ エルエルシー (23)