説明

ビピリジン類の製造方法

【課題】式(2):
【化1】


(式中、Rはアルキル基、カルボキシル基又は−COMで示される基を表わす。ここで、Mはアルカリ金属を表わす。)で示される二置換ビピリジン類を収率よく製造する方法を提供すること。
【解決手段】反応溶媒として水溶性の非プロトン性溶媒と水とを用い、パラジウム触媒、ヒドラジン類および塩基の存在下で式(1):
【化2】


(式中、Xはハロゲン原子を表わし、Rはアルキル基、シアノ基、カルボキシル基又は−COMで示される基を表わす。Mはアルカリ金属を表わす。)で示されるハロゲノピリジン類をカップリング反応せしめることを特徴とする(2)で示される二置換ビピリジン類の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(2):
【0002】
【化1】

(式中、Rはアルキル基、カルボキシル基又はCOMで示される基を表わす。ここで、Mはアルカリ金属を表わす。)で示される二置換ビピリジン類(以下、二置換ビピリジン類(2)という。)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンに代表される二置換ビピリジン類(2)は、色素増感太陽電池用色素材料として有用な化合物である(例えば特許文献1〜3参照。)。
【0004】
従来、二置換ビピリジン類(2)の製造方法の一つとして、4−クロロ−2−メチルピリジン等のハロゲノピリジン類を、水溶媒中、メタノール、ヒドラジン類、パラジウム触媒及び水酸化ナトリウムの存在下にカップリング反応せしめる方法が知られている(例えば特許文献4参照)。しかし、かかる製造方法は収率が20%〜25%程度と低く、工業的な製法としては十分満足し得るものとは言えない。
【0005】
【特許文献1】特開平6−279474号公報
【特許文献2】特開2000−100482号公報
【特許文献3】特開2001−247546号公報
【特許文献4】特公昭56−32310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、収率よく二置換ビピリジン類(2)を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が上記課題を解決するため、前記従来方法の低収率である要因がメタノールにあると推察して、還元剤にヒドラジン類のみを用いて検討したが、反応が殆ど進行しなかった。そこで、さらに鋭意検討した結果、反応溶媒として水溶性の非プロトン性溶媒と水とを用い、還元剤としてヒドラジン類を用いると、意外にも反応が容易に進行し、収率よく二置換ビピリジン類(2)が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、反応溶媒として水溶性の非プロトン性溶媒と水とを用い、パラジウム触媒、ヒドラジン類及び塩基の存在下で式(1):
【0009】
【化2】

(式中、Xはハロゲン原子を表わし、Rはアルキル基、シアノ基、カルボキシル基又はCOMで示される基を表わす。Mはアルカリ金属を表わす。)で示されるハロゲノピリジン類(以下、ハロゲノピリジン類(1)という。)をカップリング反応せしめることを特徴とする二置換ビピリジン類(2)の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、色素増感太陽電池用色素材料として有用な二置換ビピリジン類(2)を収率よく製造することができるため、工業的に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
式(1)中、Rはアルキル基、シアノ基、カルボキシル基又はCOMで示される基を表わす。アルキル基としては、例えば炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が例示される。Mはアルカリ金属原子を表わし、例えばリチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等が挙げられ、ナトリウム原子又はカリウム原子が好ましい。
【0012】
式(2)中、R’はアルキル基、カルボキシル基又はCOMで示される基を表わす。アルキル基としては、例えば炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が例示される。Mはアルカリ金属原子を表わし、例えばリチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等が挙げられ、ナトリウム原子又はカリウム原子が好ましい。
【0013】
式(1)及び式(2)中、Xはハロゲン原子を表し、具体的には、例えば塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0014】
かかるハロゲノピリジン類(1)としては、例えば2−クロロ−4−メチルピリジン、2−ブロモ−4−メチルピリジン、2−ヨード−4−メチルピリジン、2−クロロ−4−エチルピリジン、2−ブロモ−4−エチルピリジン、2−ヨード−4−エチルピリジン、2−クロロ−4−ブチルピリジン、2−ブロモ−4−ブチルピリジン、2−ヨード−4−ブチルピリジン、2−クロロ−4−シアノピリジン、2−ブロモ−4−シアノピリジン、2−ヨード−4−シアノピリジン、2−クロロピリジン−4−カルボン酸、2−ブロモピリジン−4−カルボン酸、2−ヨードピリジン−4−カルボン酸、2−クロロピリジン−4−カルボン酸ナトリウム、2−ブロモピリジン−4−カルボン酸ナトリウム、2−ヨードピリジン−4−カルボン酸ナトリウム、2−クロロピリジン−4−カルボン酸カリウム、2−ブロモピリジン−4−カルボン酸カリウム、2−ヨードピリジン−4−カルボン酸カリウム、2−クロロ−3−メチルピリジン、2−ブロモ−3−メチルピリジン、2−ヨード−3−メチルピリジン、2−クロロ−3−エチルピリジン、2−ブロモ−3−エチルピリジン、2−ヨード−3−エチルピリジン、2−クロロ−3−ブチルピリジン、2−ブロモ−3−ブチルピリジン、2−ヨード−3−ブチルピリジン、2−クロロ−3−シアノピリジン、2−ブロモ−3−シアノピリジン、2−ヨード−3−シアノピリジン、2−クロロピリジン−3−カルボン酸、2−ブロモピリジン−3−カルボン酸、2−ヨードピリジン−3−カルボン酸、2−クロロピリジン−3−カルボン酸ナトリウム、2−ブロモピリジン−3−カルボン酸ナトリウム、2−ヨードピリジン−3−カルボン酸ナトリウム、2−クロロピリジン−3−カルボン酸カリウム、2−ブロモピリジン−3−カルボン酸カリウム、2−ヨードピリジン−3−カルボン酸カリウム、4−クロロ−3−メチルピリジン、4−ブロモ−3−メチルピリジン、4−ヨード−3−メチルピリジン、4−クロロ−3−エチルピリジン、4−ブロモ−3−エチルピリジン、4−ヨード−3−エチルピリジン、4−クロロ−3−ブチルピリジン、4−ブロモ−3−ブチルピリジン、4−ヨード−3−ブチルピリジン、4−クロロ−3−シアノピリジン、4−ブロモ−3−シアノピリジン、4−ヨード−3−シアノピリジン、4−クロロピリジン−3−カルボン酸、4−ブロモピリジン−3−カルボン酸、4−ヨードピリジン−3−カルボン酸、4−クロロピリジン−3−カルボン酸ナトリウム、4−ブロモピリジン−3−カルボン酸ナトリウム、4−ヨードピリジン−3−カルボン酸ナトリウム、4−クロロピリジン−3−カルボン酸カリウム、4−ブロモピリジン−4−カルボン酸カリウム、4−ヨードピリジン−3−カルボン酸カリウム、4−クロロ−2−メチルピリジン、4−ブロモ−2−メチルピリジン、4−ヨード−2−メチルピリジン、4−クロロ−2−エチルピリジン、4−ブロモ−2−エチルピリジン、4−ヨード−2−エチルピリジン、4−クロロ−2−ブチルピリジン、4−ブロモ−2−ブチルピリジン、4−ヨード−2−ブチルピリジン、4−クロロ−2−シアノピリジン、4−ブロモ−2−シアノピリジン、4−ヨード−2−シアノピリジン、4−クロロピリジン−2−カルボン酸、4−ブロモピリジン−2−カルボン酸、4−ヨードピリジン−2−カルボン酸、4−クロロピリジン−2−カルボン酸ナトリウム、4−ブロモピリジン−2−カルボン酸ナトリウム、4−ヨードピリジン−2−カルボン酸ナトリウム、4−クロロピリジン−2−カルボン酸カリウム、4−ブロモピリジン−2−カルボン酸カリウム、4−ヨードピリジン−2−カルボン酸カリウム等が挙げられる。
【0015】
かかるハロゲノピリジン類(1)は、フリー体を用いてもよいし、塩酸塩等の酸付加塩を用いてもよい。
【0016】
二置換ビピリジン類(2)の具体例としては、4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、4,4’−ジエチル−2,2’−ビピリジン、5,5’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン、5,5’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、5,5’−ジエチル−2,2’−ビピリジン、6,6’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン、6,6’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、6,6’−ジエチル−2,2’−ビピリジン、5,5’−ジカルボキシ−3,3’−ビピリジン、5,5’−ジメチル−3,3’−ビピリジン、5,5’−ジエチル−3,3’−ビピリジン、6,6’−ジカルボキシ−3,3’−ビピリジン、6,6’−ジメチル−3,3’−ビピリジン、6,6’−ジエチル−3,3’−ビピリジン、2,2’−ジカルボキシ−4,4’−ビピリジン、2,2’−ジメチル−4,4’−ビピリジン、2,2’−ジエチル−4,4’−ビピリジン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ビピリジン、3,3’−ジメチル−4,4’−ビピリジン、3,3’−ジエチル−4,4’−ビピリジン等が挙げられる。
【0017】
塩基としては、例えばアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩等の無機塩基が挙げられ、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物が好ましく、なかでもアルカリ金属水酸化物が特に好ましい。アルカリ金属水酸化物としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。アルカリ金属炭酸塩としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等が挙げられる。アルカリ金属炭酸水素塩としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属水酸化物としては、例えば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。アルカリ土類金属炭酸塩としては、例えば炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。かかる塩基は、単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。また、そのまま使用してもよいし、水等の溶媒に溶解もしくは懸濁させて用いてもよい。
【0018】
かかる塩基の使用量は、ハロゲノピリジン類(1)に対して、通常0.5〜5モル倍、好ましくは0.8〜4モル倍、より好ましくは1〜3モル倍である。なお、ハロゲノピリジン類(1)や後述のヒドラジン類としてそれらの酸付加塩を使用する場合は、該酸付加塩の中和に要する量を考慮し、塩基の使用量を決めればよい。
【0019】
ヒドラジン類としては、例えばヒドラジン、メチルヒドラジン、フェニルヒドラジン等が挙げられ、ヒドラジンが好ましい。かかるヒドラジン類として、例えば抱水ヒドラジン等の水和物を用いてもよいし、塩酸塩等の酸付加塩を用いてもよい。
【0020】
かかるヒドラジン類の使用量は、ハロゲノピリジン類(1)に対して、通常0.2〜2モル倍、好ましくは0.2〜1.5モル倍である。
【0021】
パラジウム触媒としては特に限定されないが、通常アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボン(例えば、活性炭等)等の担体にパラジウム金属が担持されたものが用いられ、好ましくはカーボンに担持されたパラジウム触媒である。パラジウムの担体への担持量としては、通常0.5〜30重量%である。かかるパラジウム触媒は、例えば公知の方法により調製したものを用いてもよいし、市販されているものを用いてもよい。また、乾燥品を用いてもよいし、水等で湿潤した含水品を用いてもよい。安全面から、水等で湿潤した含水品を用いることが好ましい。
【0022】
本発明においては、還元剤としてヒドラジン類のみを用いているため、ハロゲノピリジン類(1)に対するパラジウム触媒の使用量が、パラジウム金属換算で、0.01〜1重量%程度でも十分に反応が進行し、反応速度の点から、0.05〜0.8重量%の範囲が好ましく、0.08〜0.5重量%の範囲がより好ましい。
【0023】
本発明の製造方法に用いる反応溶媒は、水溶性の非プロトン性溶媒と水である。水溶性の非プロトン性溶媒としては、具体的には、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒等が挙げられ、好ましくはエーテル系溶媒及びアミド系溶媒であり、特に好ましくはエーテル系溶媒である。
【0024】
かかる反応溶媒の使用量は、ハロゲノピリジン類(1)に対して、通常3〜20重量倍、好ましくは4〜10重量倍、特に好ましくは5〜8重量倍である。前記反応溶媒中の水の濃度は、通常5〜85重量%、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは15〜75重量%である。
【0025】
本発明のカップリング反応は、通常常圧条件下でも十分に反応が進行し、ハロゲノピリジン類(1)、パラジウム触媒、塩基、ヒドラジン類及び水溶性の非プロトン性溶媒と水との混合溶媒を接触、混合させることにより実施される。また、通常窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で反応が実施される。
【0026】
反応温度は、通常10〜100℃の範囲、好ましくは20〜80℃の範囲である。
【0027】
反応終了後、例えば反応液と酸とを混合して酸性化処理することにより、目的とする二置換ビピリジン類(2)を結晶化せしめることができ、結晶化した二置換ビピリジン類(2)は、例えば濾過等の通常の分離手段により分離することができる。
【0028】
原料であるハロゲノピリジン類(1)は、通常市販されているものが用いられるが、ハロゲノピリジン類(1)として式(3):
【0029】
【化3】

(式中、X及びMは上記と同一の意味を表わす。)
で示されるハロゲノピリジンカルボン酸塩類(以下、ハロゲノピリジンカルボン酸塩類(3)という。)を用いるときは、式(4):
【0030】
【化4】

(式中、Xは上記と同一の意味を表わす。)
で示されるハロゲノシアノピリジン類(以下、ハロゲノシアノピリジン類(4)という。)を加水分解処理することにより、ハロゲノピリジンカルボン酸塩類(3)を得、得られたハロゲノピリジンカルボン酸塩類(3)をカップリング反応せしめてもよい。
【0031】
ハロゲノシアノピリジン類(4)の加水分解処理は、通常ハロゲノシアノピリジン類(4)、塩基及び水を接触、混合することにより実施され、その混合順序は特に制限されない。塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、例えば炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩等が挙げられ、アルカリ金属水酸化物が好適である。塩基の使用量は、ハロゲノシアノピリジン類(4)に対して、通常0.8〜2モル倍、好ましくは0.9〜1.5モル倍である。水の使用量は、ハロゲノシアノピリジン類(4)に対して、通常1〜10重量倍、好ましくは1.5〜5重量倍である。
【0032】
加水分解処理温度は、通常0〜100℃、好ましくは30〜80℃である。
【0033】
有機溶媒の存在下に加水分解処理を行ってもよく、かかる有機溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒等が挙げられ、その使用量は特に制限されないが、あまり多すぎても容積効率が悪くなるため、実用的には、ハロゲノシアノピリジン類(4)に対して、通常1〜10重量倍である。
【0034】
加水分解処理終了後、ハロゲノピリジンカルボン酸塩類(3)を含む処理液をそのまま上記カップリング反応に用いてもよいし、前記処理液からハロゲノピリジンカルボン酸塩類(3)を取り出した後、上記カップリング反応に用いてもよく、ハロゲノピリジンカルボン酸塩類(3)を含む処理液をそのまま上記カップリング反応に用いることが好ましい。また、有機溶媒の存在下に加水分解処理を行った場合であって、前記処理液が有機層と水層に分離しているときは、分液処理し、得られるハロゲノピリジンカルボン酸塩類(3)を含む水層を、そのままもしくは前記水層からハロゲノピリジンカルボン酸塩類(3)を取り出した後、上記カップリング反応に用いることが好ましい。この場合も、得られるハロゲノピリジンカルボン酸塩類(3)を含む水層をそのままカップリング反応に用いることがより好ましい。
【0035】
また、加水分解反応の進行に伴って、アンモニアが副生し、副生したアンモニアの一部は前記処理液もしくは水層中に溶解するが、かかるアンモニアが溶解した処理液もしくは水層をそのまま上記カップリング反応に用いてもよいし、処理液もしくは水層からアンモニアを除去した後、カップリング反応に用いてもよい。より収率よく二置換ビピリジン類(2)を得るためには、溶解しているアンモニアを除去した後カップリング反応に用いることが好ましく、カップリング反応に用いるパラジウム触媒のパラジウム金属に対して、アンモニアを除去した後の処理液もしくは水層中のアンモニア量が、好ましくは50モル倍以下、より好ましくは5モル倍以下、さらに好ましくは2モル倍以下となるよう、アンモニアの除去操作を行えばよい。
【0036】
前記処理液もしくは水層からアンモニアを除去する方法としては、例えば処理液もしくは水層を攪拌しながら加熱する方法が挙げられ、例えば窒素ガス、アルゴンガス、空気等の気体を処理液もしくは水層中に吹き込みながら加熱してもよい。処理液もしくは水層を攪拌しながら加熱する方法の加熱温度としては、通常30〜150℃、好ましくは60〜120℃、より好ましくは80〜110℃であり、目的とするアンモニア量に応じて、加熱温度、加熱時間、攪拌回転数、気体の吹き込み量等が適宜選択される。
【0037】
ハロゲノピリジンカルボン酸塩類(3)を含む処理液もしくは水層を上記カップリング反応に用いる場合、その処理液もしくは水層に、パラジウム触媒、ヒドラジン類、塩基、水溶性の非プロトン性溶媒及び水を加え、カップリング反応を実施すればよい。処理液もしくは水層中には水が含まれているため、含まれている水の量に応じて、加える水の量を決めればよい。また、水溶性の非プロトン性溶媒の存在下に加水分解処理を行った場合には、処理液もしくは水層中に水溶性の非プロトン性溶媒が含まれているため、含まれる水溶性の非プロトン性溶媒の量に応じて、加える水溶性の非プロトン性溶媒の量を決めればよい。また、加水分解処理に用いた塩基の量によっては、処理液もしくは水層中に塩基が残存している場合があり、かかる残存する塩基の量に応じて、加える塩基の量を決めればよい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。分析には、高速液体クロマトグラフィー(以下、LCと略記する。)法を用いた。
【0039】
実施例1
水酸化カリウム(純度:85重量%)44.2g、水300g及びジエチレングリコールジメチルエーテル158.0gからなる混合溶液に、パラジウム触媒(パラジウム担持量;5重量%,水50重量%含有品)2.5g、ヒドラジン・一水和物の水溶液(含量:80重量%)7.5g及び2−クロロピリジン−4−カルボン酸50gを加え、窒素雰囲気下、内温65℃で21時間攪拌、反応させた。反応終了後、反応液を冷却し、パラジウム触媒を濾別した。得られた濾液をLC分析したところ、4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン27.0gが含まれていた。収率:69.8%。
【0040】
実施例2
実施例1のジエチレングリコールジメチルエーテルをジメチルホルムアミドに代え、反応時間を6時間とした以外は実施例1と同様にして行い、4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンが含まれている濾液を得た。得られた濾液をLC分析したところ、4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン24.3gが含まれていた。収率:62.8%。
【0041】
実施例3
実施例1のジエチレングリコールジメチルエーテルを1,4−ジオキサンに代え、反応時間を5時間とした以外は実施例1と同様にして行い、4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンが含まれている濾液を得た。得られた濾液をLC分析したところ、4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン27.3gが含まれていた。収率:70.4%。
【0042】
比較例1
実施例1のジエチレングリコールジメチルエーテルを用いない以外は、実施例1と同様にして行い、濾液を得た。当該濾液をLC分析したところ、得られた濾液中には4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンは含まれていなかった。
【0043】
実施例4
2−クロロ−4−シアノピリジン50gをトルエン100.7gに溶液したトルエン溶液を、水酸化カリウム(純度:85重量%)23.4gを水150gに溶解した水酸化カリウム水溶液中へ、内温60℃で2.5時間かけて滴下し、同温度で2時間攪拌、保持して、加水分解処理を行った。処理終了後、処理液を分液処理し、2−クロロピリジン−4−カルボン酸カリウムを含む水層を得た。該水層を内温100℃に昇温し、攪拌しながら、窒素ガスを吹き込み、同温度で4時間保持し、該水層中に溶解しているアンモニアの除去操作を行い、2−クロロピリジン−4−カルボン酸カリウムを含む水層211.3gを得た。該水層をイオンクロマトグラフィー分析したところ、該水層中に残存するアンモニア量は、後述のカップリング反応で使用したパラジウム金属に対して、0.001モル倍であった。
【0044】
窒素雰囲気下、ジエチレングリコールジメチルエーテル84.4g、ヒドラジン・一水和物(含量:80重量%)6.01gからなる混合溶液に、パラジウム触媒(パラジウム担持量;5重量%,水50重量%含有品)2.0g、及び上記で得たアンモニア除去操作後の2−クロロピリジン−4−カルボン酸カリウムを含む水層156.1gを17℃で1時間かけて滴下後、1時間保持した。その後、65℃まで昇温し、21%水酸化カリウム水溶液76.6gを1時間で滴下後、17時間攪拌、反応させた。反応終了後、冷却し、パラジウム触媒を濾別した。得られた濾液をLC分析したところ、4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン23.8gが含まれていた。収率:79.2%。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応溶媒として水溶性の非プロトン性溶媒と水とを用い、パラジウム触媒、ヒドラジン類および塩基の存在下で式(1):
【化1】

(式中、Xはハロゲン原子を表わし、Rはアルキル基、シアノ基、カルボキシル基または−COMで示される基を表わす。Mはアルカリ金属を表わす。)
で示されるハロゲノピリジン類をカップリング反応せしめることを特徴とする式(2):
【化2】

(式中、R’はアルキル基、カルボキシル基または−COMで示される基を表わす。Mはアルカリ金属を表わす。)で示される二置換ビピリジン類の製造方法。
【請求項2】
パラジウム触媒の使用量が、パラジウム金属換算で、式(1)で示される2−ハロゲノピリジン類に対して、0.01〜1重量%である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
水溶性の非プロトン性溶媒がエーテル系溶媒又はアミド系溶媒である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
式(1)で示されるハロゲノピリジン類が式(3):
【化3】

(式中、XおよびMは上記と同一の意味を表わす。)
で示されるハロゲノピリジンカルボン酸塩類であって、これを式(4):
【化4】

(式中、Xは上記と同一の意味を表わす。)
で示されるハロゲノシアノピリジン類の加水分解処理で得ることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
式(4)で示されるハロゲノシアノピリジン類を加水分解処理した後、その処理液からハロゲノピリジンカルボン酸塩類を分離することなくカップリング反応に用いる請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
処理液が、アンモニア除去してパラジウム触媒のパラジウム金属に対するアンモニアの残存量を50モル倍以下としたものである、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
式(1)で示されるハロゲノピリジン類が式(5):

(式中、R及びXは前記と同じ。)で示される2−ハロゲノピリジン類である請求項1に記載の製造方法。

【公開番号】特開2006−240997(P2006−240997A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−54810(P2005−54810)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000167646)広栄化学工業株式会社 (114)
【Fターム(参考)】