説明

ビーズポリマーから溶媒を除去する方法

【課題】ビーズポリマーから溶媒を除去する方法を提供する。
【解決手段】ビーズポリマーが水溶性カルボン酸の添加を含む有機溶媒の蒸留に付される、ビーズポリマーから有機溶媒を除去する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビーズポリマーから有機溶媒を除去する方法に関する。該方法では、ビーズポリマーは、水溶性カルボン酸の添加を含む有機溶媒の蒸留に付される。本発明はさらに、有機溶媒の含有率が500ppm未満であるビーズポリマーと、そのほかにイオン交換体を調製するためのその使用と、に関する。本発明はさらに、ビーズポリマーから溶媒を除去するための親水性カルボン酸の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ビーズポリマーは、周知であり、たとえば、イオン交換体を調製するために使用される。ビーズポリマーの調製も、同様に公知であり、たとえば、ビニル系モノマーのビーズ重合によって実施可能である。ビーズ重合反応を有機溶媒(ポロゲン)の存在下で行う場合、生成物は、多孔性ビーズポリマーとして知られるものであり、これはポア構造を有する。
【0003】
当業者には公知のように、ポア構造は、架橋剤の含有率を変化させることにより、さらにはポロゲンの性質および量により、制御可能である。通常使用されるポロゲンは、4−メチル−2−ペンタノール、イソブタノール、メチルイソブチルケトン、トルエン、イソオクタン、またはイソドデカンなどの有機溶媒である。たとえば米国特許第4,382,124号明細書、米国特許第3,586,646号明細書、およびDE1113570B1を参照されたい。
【0004】
調製プロセスの後、一般的には、ポア構造を開放するためにポロゲンを除去しなければならない。いくつかの用途では、たとえば、飲食品工業や医薬品工業で多孔性ビーズポリマーを使用する場合には、毒性学に関連する理由により、ポロゲンの残留含有率は、最大でも非常に低い値であり、典型的には数ppmを超えることがは許されない。
【0005】
上述の用途向けにほとんど完全に除去しなければならない他の有機溶媒が存在する。その例は、残留量の未反応モノマー、ならびにイオン交換体を与えるために、基材樹脂を与えるために、および機能性吸着材を与えるために、多孔性ビーズポリマーおよび非多孔性ビーズポリマーを官能化する際に使用された残留量の有機溶媒である。
【0006】
ビーズポリマーから有機溶媒を除去するために種々の方法が使用される。
【0007】
共沸蒸留では、有機溶媒は、単に蒸留によりビーズポリマーの水性懸濁液から除去される。このプロセスは、有機溶媒がある程度の水溶性を有する場合にのみ機能し、一般的には、上述の用途に必要とされる低い残留値に対処しえない。
【0008】
他の選択肢として、有機溶媒を他の有機溶媒により抽出することが可能である。抽出剤が水溶性でない場合、結果的に、追加の工程でそれをビーズから除去しなければならない。それが水溶性である場合、ビーズを水で洗浄することによりそれを除去することが可能である。しかしながら、この場合、生成物は、除去しなければならない多量の汚染廃水であり、処理費用の増大を招く。さらに、この場合、有機溶媒の低残留含有率を達成できるという保証はない。
【0009】
また、ビーズポリマーのスチーム処理によって有機溶媒を除去することも可能である。しかしながら、スチームを用いるとビーズポリマー床中にスチームが凝縮するので技術的問題を抱えることになり、しかもすべてのビーズの均一処理を達成するために非常に時間のかかる操作が必要となる。さらに、多孔性ビーズポリマーの場合、ポリマー網状構造体の軟化点を超えると、強い熱応力によりビーズのポア構造が圧潰する可能性がある。
【0010】
揮発性低沸点有機溶媒を使用した場合、ビーズを乾燥させることにより有機溶媒を除去することも可能である。しかしながら、有機溶媒の低残留含有率を達成するために長い乾燥時間が必要であり、しかも大量の溶媒含有排出空気が発生するので、これを浄化しなければならない。
【0011】
EP1350809A1には、水溶性有機溶媒(エチレングリコール誘導体)の添加を含む蒸留により有機溶媒を除去する方法が記載されている。しかしながら、このプロセスの蒸留温度は、除去される有機溶媒の沸点よりも高くなければならず、その結果、エネルギー消費量が増大し、とくに官能基化されている場合にはビーズポリマーが損傷する可能性がある。
【特許文献1】米国特許第4,382,124号明細書
【特許文献2】米国特許第3,586,646号明細書
【特許文献3】DE1113570B1
【特許文献4】EP1350809A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このプロセスでは、500ppm未満の有機溶媒の残留レベルが確実に達成されるわけではない。したがって、本発明の目的は、ビーズポリマーから有機溶媒を除去するための非侵食的で低コストの環境に適合しうる方法を提供することである。
【0013】
本発明に係る方法により500ppm未満の含有率の有機溶媒を有するビーズポリマーを取得可能とすることが、本発明の意図するところである。本発明のさらなる目的は、内容説明および実施例から明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、ビーズポリマーが水溶性カルボン酸の添加を含む有機溶媒の蒸留に付される、ビーズポリマーから有機溶媒を除去する方法により達成される。
【0015】
本発明はさらに、有機溶媒の含有率が500ppm未満であるビーズポリマーを提供する。本発明はさらに、イオン交換体を調製するための、有機溶媒の含有率が500ppm未満であるビーズポリマーの使用を提供する。本発明はさらに、ビーズポリマーから有機溶媒を除去するための親水性カルボン酸の使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の目的では、有機溶媒は、飽和、不飽和、および/または芳香族でありうる。また、有機溶媒は、1〜30個の炭素原子、好ましくは1〜20個の炭素原子、とくに好ましくは1〜10個の炭素原子、および適切であれば1個以上のヘテロ原子を有する。
【0017】
本発明に係る方法によりとくに効果的に除去されうる有機溶媒は、20℃における水への溶解度が20重量%未満、好ましくは10重量%未満、特定的には5重量%未満である。本発明のとくに好ましい一実施形態によれば、0℃〜100℃、好ましくは10〜50℃の温度で液体である有機溶媒が除去される。有機溶媒の沸点が1barにおいて220℃未満、好ましくは180℃未満、とくに好ましくは150℃未満であることがとくに有利である。例としては、5〜12個の炭素原子を含有する線状および分枝状のアルカン、たとえば、イソドデカン、イソオクタン、オクタン、ヘプタン、ヘキサン、ペンタン;5〜12個の炭素原子を有するシクロアルカン、たとえば、シクロヘキサンおよびメチルシクロヘキサン;芳香族溶媒、たとえば、ベンゼン、トルエン、スチレン、メチルスチレン、α−メチルスチレン、エチルスチレン、エチルベンゼン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、およびナフタレン;水溶性でなく4〜15個の炭素原子を有するアルコール、たとえば、n−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、および4−メチル−2−ペンタノール;水溶性でないエステル、たとえば、エチルアセテート、n−ブチルアセテート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、ジオクチルフタレート、およびジブチルフタレート;脂肪族エーテル、たとえば、ジエチルエーテルおよびジブチルエーテル;水溶性でないケトン、たとえば、メチルイソブチルケトンおよびシクロヘキサノン;塩素化アルカン、たとえば、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、および1,2−ジクロロプロパン;さらには揮発性シリコーン、たとえば、ヘキサメチルジシロキサンおよびデカメチルテトラシロキサンが挙げられうるが、これらに限定されるものではない。本発明に係る方法はまた、当然ながら、上述の溶媒の混合物を除去することも可能である。
【0018】
ビーズポリマーの構造および調製については、当業者に公知である。ビーズポリマーは、通常、0.01μm〜2000μmの平均直径を有する固体丸形粒子である。好ましい調製方法は、1種以上のビニル系モノマーの使用を含む。例としては、次のビニル系モノマー:ビニル芳香族モノマー、たとえば、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ビニルナフタレン;アクリル系およびメタクリル系モノマー、たとえば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、およびメタクリロニトリル;ビニルエーテル、たとえば、エチルビニールエーテル、ブチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、およびジエチレングリコールジビニルエーテル;ビニルエステル、たとえば、ビニルアセテートおよびビニルプロピオネート、ならびにビニルシラン、たとえば、トリメトキシビニルシランおよびトリエトキシビニルシラン、さらには上述の化合物の混合物が挙げられうるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
本発明に係る方法は、多孔性ビーズポリマーから有機溶媒を除去するのにとくに好適である。本発明において、多孔性ビーズポリマーとは、ミクロポア、メソポア、およびマクロポアを構成するポア体積が、それぞれのタイプのポアに好適な試験法(ミクロポアおよびメソポアに対しては窒素吸着ポロシメトリー、メソポアおよびマクロポアに対しては水銀圧入ポロシメトリー)により決定したときに、少なくとも0.1cm/g、好ましくは少なくとも0.25cm/gであるビーズポリマーのことである。ミクロ多孔性、メソ多孔性、およびマクロ多孔性という用語については、技術文献に既に詳細に記述されている(たとえば、ザイドル(Seidl)ら著、高分子科学の進歩(Adv.Polym.Sci)、第5巻(1967年)、第113−213頁を参照されたい)。
【0020】
除去される有機溶媒の蒸留は、好ましくは、ビーズポリマーの水性分散物の状態で行われる。蒸留プロセスの開始時の分散物の固形分含有率は、有利には5重量%〜50重量%であるが、他の固形分含有率もまた可能である。分散物を攪拌可能な状態に保持することが有利である。
【0021】
分散物温度および蒸留操作を均一にするために、蒸留中、分散物は攪拌可能である。有利には、ビーズポリマーに機械的損傷を与えることなく反応器内容物の良好な混合が行われるように、容器のサイズおよび攪拌機の特性に応じて攪拌機回転速度を設定する。10〜250rpmの攪拌機回転速度が典型的である。
【0022】
本発明の好ましい一実施形態によれば、蒸留は、水溶性カルボン酸と、除去される有機溶媒と、適切であれば水と、で構成された存在する混合物の沸点において1barで行われる。本発明に係る方法の特定の特徴は、蒸留プロセス時に添加される水溶性カルボン酸の沸点が、除去される溶媒の沸点を超えることが絶対的に必要とされるわけではない点である。したがって、たとえば、ギ酸(1barの沸点102℃)の添加を含む蒸留によりトルエン(1atmの沸点118℃)を除去することが可能である。
【0023】
しかしながら、本発明に係る方法は、1barの圧力における蒸留に絶対的に限定されるわけではない。必要であれば、1barのときよりも低い温度において減圧下で蒸留を行うことも可能である。
【0024】
本発明において、水溶性カルボン酸とは、20℃における水への溶解度が少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、とくに好ましくは少なくとも20重量%であるものである。本発明によれば、とくに好適な水溶性カルボン酸は、20℃かつ1barで液体である。本発明の好ましい一実施形態によれば、水溶性カルボン酸として水溶性モノカルボン酸が使用される。ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、およびイソ酪酸が、とくに好適である。ギ酸、酢酸、およびプロピオン酸が好ましく、ギ酸がとくに好ましい。上述の酸の混合物を使用することも可能である。
【0025】
水溶性カルボン酸の使用量は、好ましくは少なくとも5重量%、とくに好ましくは少なくとも10重量%、特定的には少なくとも20重量%である。その使用量はさらに、いずれの場合も水性相の全量を基準にして、好ましくは多くとも90重量%、とくに好ましくは多くとも70重量%である。水溶性カルボン酸の濃度は、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間、とくに好ましくは少なくとも4時間の蒸留過程中、有利には上述の濃度範囲内にある。
【0026】
水溶性カルボン酸は、一度にまたは何度かに分けて添加可能である。水溶性カルボン酸は、好ましくは一度に添加される。蒸留の開始時に即時的に最初の仕込み物として部分量または全量の水溶性カルボン酸を使用することも可能である。水溶性カルボン酸の添加時の形態は、純物質または水溶液の形態でありうる。
【0027】
本発明に係る蒸留操作の終了時、ビーズポリマー中の有機溶媒の残留含有率は、いずれの場合も乾燥ビーズポリマーを基準にして、好ましくは500ppm未満、とくに好ましくは100ppm未満、特定的には20ppm未満、なかでもとくに好ましくは5ppm未満である。
【0028】
本発明に係る方法により調製されたビーズポリマーは、気体および/または液体、特定的には水および/または水溶液を精製する際に吸着材樹脂として優れた使用適性を有する。例を挙げると、吸着材樹脂は、特定の有機化合物、たとえば、塩素系溶媒、芳香族溶媒、フェノール類、および/または放臭物質を記載の液体および/または気体から選択的に除去する。
【0029】
本発明に係るビーズポリマーは、同様にクロマトグラフィーにおける分離手段としても優れた使用適性を有する。該ポリマーは、適切であれば官能化の後、生物学的活性化合物(活性成分)の溶液、たとえば、とくにバイオテクノロジーにおいてこの目的のために特別に培養された細胞培養物および/または微生物から得られるような溶液を精製するうえでとくに良好な適性を有する。こうした生物学的活性化合物として挙げられうる例は、抗生物質、たとえば、シクロスポリン、ペニシリン、テトラサイクリン、グリコペプチド、マクロライド、ポリペプチド、タンパク質、たとえば、インスリン、エリトロポイエチン、または凝固因子VIIIであるが、これらに限定されるものではない。生物学的活性化合物の溶液の精製はまた、たとえば、コレステロール、トキシン、および/または免疫複合体を血液から選択的に吸着することにより、血液および/または血漿のクロマトグラフィー精製(透析として知られる)を行うことをも包含する。
【0030】
本発明に係る方法により調製されたビーズポリマーはまた、イオン交換体の調製に対しても優れた適性を有する。該ポリマーは、有利には、当業者に公知の従来の官能化方法によりイオン交換体に変換される。
【0031】
強酸性陽イオン交換体を調製するために、本発明に係るビーズポリマーは、好ましくは、スルホン化される。この場合、好適なスルホン化剤は、硫酸、三酸化硫黄、およびクロロスルホン酸である。好ましいのは、90〜100%、とくに好ましくは96〜99%の濃度の硫酸である。スルホン化温度は、一般的には50〜200℃、好ましくは90〜130℃である。所望により、スルホン化時に膨潤剤を使用することが可能である。その例は、クロロベンゼン、ジクロロエタン、ジクロロプロパン、またはメチレンクロリドである。スルホン化の後、スルホン化生成物および残留酸で構成される反応混合物を室温まで冷却し、最初に漸減濃度の硫酸で、次に水で希釈する。所望により、精製のために、本発明に従って得られるH形の陽イオン交換体を70〜145℃、好ましくは105〜130℃の温度で脱イオン水により処理することが可能である。多くの用途では、陽イオン交換体を酸形からナトリウム形に変換することが有利である。この変換のために、10〜60%、好ましくは40〜50%の濃度を有する水酸化ナトリウム溶液が使用される。変換温度もまた、重要である。60〜120℃、好ましくは75〜100℃の変換温度は、イオン交換体ビーズに欠陥を生じることはなく、とくに有利な純度を与えることが判明した。
【0032】
本発明に係るビーズポリマーはまた、陰イオン交換体を調製するために使用することも可能である。この場合、好適な方法は、ビーズポリマーのハロアルキル化およびそれに続くアミノ化である。好ましいハロアルキル化剤は、クロロメチルメチルエーテルである。ジメチルアミンなどの第二級アミンと反応させることにより、ハロアルキル化ポリマーから弱塩基性陰イオン交換体を与えることが可能である。それに対応して、ハロアルキル化ポリマーを、トリメチルアミン、ジメチルイソプロピルアミン、またはジメチルアミノエタノールなどの第三級アミンと反応させると、強塩基性陰イオン交換体を与える。
【0033】
フタルイミド法として知られる方法を用いて、ビーズポリマーのアミドアルキル化により陰イオン交換体を調製することも可能である。アミドメチル化試薬を調製するために、たとえば、フタルイミドまたはフタルイミド誘導体を溶媒に溶解して、ホルマリンと混合する。次に、水の脱離により、それからビス(フタルイミド)エーテルを形成する。適切であれば、ビス(フタルイミド)エーテルをフタルイミドエステルに変換することが可能である。本発明の目的に合った好ましいフタルイミド誘導体は、フタルイミド自体またはメチルフタルイミドなどの置換型フタルイミドである。アミドメチル化試薬の調製で使用される溶媒は、ポリマーの膨潤に好適な不活性溶媒、好ましくは塩素化炭化水素、とくに好ましくはジクロロエタンまたはメチレンクロリドである。官能化する場合、プロセスの工程c)から得られる架橋ビーズポリマーをアミドメチル化剤と反応させる。その際に使用される触媒としては、オレウム、硫酸、または三酸化硫黄が挙げられる。この場合、反応温度は、20〜120℃、好ましくは50〜100℃である。100〜250℃、好ましくは120〜190℃の温度において、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水性またはアルコール性の溶液でアミドメチル化架橋ビーズポリマーを処理することにより、フタル酸基の開裂ひいてはアミノメチル基の放出を達成する。水酸化ナトリウム溶液の濃度は、10〜50重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲内である。最後に、得られたアミノメチル化ビーズポリマーをアルカリが含まれなくなるまで脱イオン水で洗浄する。プロセスのさらなる工程では、アルキル化剤との反応により、アミノメチル基を含有するビーズポリマーを陰イオン交換体に変換する。好ましくは、ロイカート・ヴァラッハ(Leuckart−Wallach)法によりアルキル化を行う。とくに良好な適性を有するロイカート・ヴァラッハ(Leuckart−Wallach)試薬は、還元剤としてのホルムアルデヒドとギ酸との組合せである。アルキル化反応は、20〜150℃、好ましくは40〜110℃の温度および大気圧〜6barの圧力で行われる。アルキル化の後、得られた弱塩基性陰イオン交換体を完全にまたはある程度まで四級化可能である。たとえば、メチルクロリドを用いて四級化を行うことが可能である。EP−A1078688には、たとえば、フタルイミド法による陰イオン交換体の調製についてさらに詳しく記載されている。
【0034】
キレート形成性樹脂も本発明に係るビーズポリマーから容易に調製可能である。たとえば、ハロアルキル化ポリマーをイミノ二酢酸と反応させると、イミノ二酢酸タイプのキレート形成性樹脂を与える。
【0035】
以下の節では、いくつかの実施例を用いて本発明に係る方法について説明する。これらの実施例は、単に指針としての役割を果たすにすぎず、以上に記載の本発明に係る方法を絶対的に限定するものではない。
【実施例】
【0036】
実施例1:単蒸留によるトルエンの除去(本発明に係らない)
ジビニルベンゼン(473g、工業品質、純度80%)、トルエン(720g)、およびtert−ブチル2−エチルペルオキソヘキサノエート(2.8g)で構成された混合物を懸濁重合することにより、ポロゲンを十分に含浸させたビーズポリマーを調製した。
【0037】
サーモスタット、攪拌機、および蒸留ブリッジを備えた4リットル攪拌反応器内で、480gの得られたビーズポリマーを1500mlの水と共に最初の仕込み物として使用し、反応器内の沸点が100℃に達して生成される残留留出物が水だけになるまで、蒸留を継続した。得られた留出物は、280mlのトルエンおよび760mlの水で構成された二相混合物であった。
【0038】
10mlのビーズポリマーを取り出して水で洗浄した。ガスクロマトグラフィーにより決定された残留トルエン含有率は、9800ppm(0.98%)であった。
【0039】
実施例2:ギ酸の添加を含むトルエンの除去(本発明に係る)
500mlのギ酸(水中濃度85%)を比較例1から得られた残留ビーズポリマーに添加し、この工程の留出物の量が750mlに達するまで蒸留を継続した。反応器内の温度は、104℃まで上昇した。
【0040】
10mlのビーズポリマーを取り出して水で洗浄した。ガスクロマトグラフィーにより決定されたビーズポリマー中のトルエンの残留含有率は、200ppmであった。
【0041】
300mlの水およびさらなる500mlのギ酸(水中濃度85%)を残留ビーズポリマーに添加し、さらなる750mlの液体を蒸留した。
【0042】
反応器内の液体を吸引により除去して1500mlの水で置き換え、これを再び吸引により除去した。80℃においてビーズを再び1500mlの水および45gの水酸化ナトリウムと2時間混合し、次に、溶出液のpHが8未満になるまで、吸引濾過漏斗中で水により洗浄した。
【0043】
ガスクロマトグラフィーにより決定されたビーズポリマー中のトルエンの残留含有率は、15ppm未満であった。イオン交換クロマトグラフィーにより決定されたナトリウムホルメートの残留含有率は、5ppm未満であった。
【0044】
実施例3:ギ酸の添加を含むトルエンの除去(本発明に係る)
ジビニルベンゼン(256kg、工業品質、純度80%)、トルエン(384kg)、およびtert−ブチル2−エチルペルオキソヘキサノエート(1.54kg)で構成された混合物を懸濁重合することにより、ポロゲンを十分に含浸させたビーズポリマーを調製した。
【0045】
ジャケット加熱および蒸留塔を備えたHC鋼製の1000リットル反応器内で、200リットルの得られたビーズポリマーを550リットルのギ酸(水中濃度32%)と共に最初の仕込み物として使用した。67kgのトルエンおよび400リットルの水性相が凝縮されるまで、蒸留を継続した。反応器内の温度は、106℃まで上昇した。
【0046】
500mlのビーズポリマーを取り出して水で洗浄した。ガスクロマトグラフィーにより決定されたビーズポリマー中のトルエンの残留含有率は、930ppmであった。
【0047】
25kgのギ酸(濃度98〜100%)および25リットルの水を反応器内容物に添加し、さらなる50リットルの留出物を除去した。次に、200リットルの水を添加し、再び200リットルの留出物を除去した。
【0048】
反応器内容物を吸引濾過漏斗に移し、187リットルの水で2回、134リットルの水酸化ナトリウム溶液(4重量%)で2回、200リットルの水で4回、フィルター上でビーズポリマーを洗浄した。
【0049】
ガスクロマトグラフィーにより決定されたビーズポリマー中のトルエンの残留含有率は、190ppmであった。
【0050】
実施例4:単蒸留によるMIBKの除去(本発明に係らない)
ジビニルベンゼン(240g、工業品質、純度80%)、スチレン(80g)、メチルイソブチルケトン(MIBK、480g)、およびジベンゾイルペルオキシド(3.2g、純度75%)で構成された混合物を懸濁重合することにより、ポロゲンを十分に含浸させたビーズポリマーを調製した。
【0051】
サーモスタット、攪拌機、および蒸留ブリッジを備えた4リットル攪拌反応器内で、624gの得られたビーズポリマーを1500mlの水と共に最初の仕込み物として使用し、反応器内の沸点が100℃に達して生成される残留留出物が水だけになるまで、蒸留を継続した。
【0052】
10mlのビーズポリマーを取り出して水で洗浄した。ガスクロマトグラフィーにより決定されたMIBKの残留含有率は、2%(2000ppm)であった。
【0053】
実施例5:ギ酸の添加を含むMIBKの除去(本発明に係る)
500mlのギ酸(水中濃度85%)を実施例1から得られた残留ビーズポリマーに添加し、この工程の留出物の量が750mlに達するまで蒸留を継続した。反応器内の温度は、104℃まで上昇した。
【0054】
10mlのビーズポリマーを取り出して水で洗浄した。ガスクロマトグラフィーにより決定されたビーズポリマー中のメチルイソブチルケトン(MIBK)の残留含有率は、75ppmであった。
【0055】
300mlの水およびさらなる500mlのギ酸(水中濃度85%)を残留ビーズポリマーに添加し、さらなる750mlの液体を蒸留した。
【0056】
反応器内の液体を吸引により除去して1500mlの水で置き換え、これを再び吸引により除去した。80℃においてビーズを再び1500mlの水および45gの水酸化ナトリウムと2時間混合し、次に、溶出液のpHが8未満になるまで、吸引濾過漏斗中で水により洗浄した。
【0057】
ガスクロマトグラフィーにより決定されたビーズポリマー中のMIBKの残留含有率は、15ppm未満であった。イオン交換クロマトグラフィーにより決定されたナトリウムホルメートの残留含有率は、7ppm未満であった。
【0058】
実施例6:ギ酸の添加を含むDCEの除去(本発明に係る)
WO2005/075530に係る33μmの平均ビーズ直径の単分散多孔性ビーズポリマーを、725.6gの単分散非架橋型ポリスチレンシードポリマー(平均ビーズ直径18μm)、5442gのジビニルベンゼン、544gのトルエン、および181gのtert−ブチル2−エチルペルオキソヘキサノエートから調製した。
【0059】
ビーズポリマーを単離し、真空中、80℃で24時間乾燥させた。
【0060】
シードポリマーに由来する可溶性ポリスチレンを除去するために、攪拌機、サーモスタット、および蒸留ブリッジを備えた4リットル反応器内で150gの乾燥ビーズポリマーを1500mlの1,2−ジクロロエタン(DCE)で3回抽出した。
【0061】
3回目の抽出操作の終了時、吸引によりDCEを除去し(一方、より低密度のビーズポリマーを浮揚させた)、1500mlの水および500mlのギ酸(水中濃度85%)を添加した。140mlのDCEおよび1100mlの水性相が凝縮されるまで、蒸留を継続した。
【0062】
ガスクロマトグラフィーにより決定されたビーズポリマー中の1,2−ジクロロエタンの残留含有率は、20ppm未満であった。
【0063】
内容説明のところで他の選択肢として挙げられている水溶性カルボン酸を使用したときにも、同等の結果が得られる。
【0064】
実施例7:プロピオン酸の添加を含むイソドデカンの除去(本発明に係る)
スチレン(872.2g)、ジビニルベンゼン(65.1g、工業品質、純度80%)、イソドデカン(工業品質、591g)、およびtert−ブチル2−エチルペルオキソヘキサノエート(5.73g)で構成された混合物を懸濁重合することにより、ポロゲンを十分に含浸させたビーズポリマーを調製した。
【0065】
サーモスタット、攪拌機、および蒸留ブリッジを備えた4リットル攪拌反応器内で、750gの得られたビーズポリマーを1500mlのプロピオン酸(水中濃度78%)と共に最初の仕込み物として使用し、生成される留出物が水だけになりイソドデカンを含まなくなるまで蒸留を継続した。
【0066】
次に、500mlのプロピオン酸(水中濃度78%)を添加し、この工程の留出物の量が500mlに達するまで蒸留を継続した。
【0067】
10mlのビーズポリマーを取り出して水で洗浄した。ガスクロマトグラフィーにより決定されたビーズポリマー中のイソドデカンの残留含有率は、200ppmであった。さらなる500mlのプロピオン酸(水中濃度78%)を残留ビーズポリマーに添加し、さらなる500mlの液体を蒸留した。
【0068】
もう一度、10mlのビーズポリマーを取り出して水で洗浄した。ガスクロマトグラフィーにより決定されたビーズポリマー中のイソドデカンの残留含有率は、75ppmであった。さらなる500mlのプロピオン酸(水中濃度78%)を残留ビーズポリマーに添加し、さらなる500mlの液体を蒸留した。
【0069】
反応器内の液体を吸引により除去して1500mlの水で置き換え、これを再び吸引により除去した。80℃においてビーズを再び1500mlの水および45gの水酸化ナトリウムと2時間混合し、次に、溶出液のpHが8未満になるまで、吸引濾過漏斗中で水により洗浄した。
【0070】
ガスクロマトグラフィーにより決定されたビーズポリマー中のイソドデカンの残留含有率は、20ppm未満であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
500ppm未満の残留含有率で有機溶媒を含むことを特徴とする、ビーズポリマー。
【請求項2】
ビーズポリマーから有機溶媒を除去する方法であって、ビーズポリマーを水溶性カルボン酸の添加を伴う有機溶媒の蒸留に付すことを特徴とする方法。
【請求項3】
前記蒸留過程中に、水性相中の前記水溶性カルボン酸の濃度を10重量%を超えるように調整することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記蒸留過程中に、前記水溶性カルボン酸を一度に添加することを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記水溶性カルボン酸の少なくとも一部分を前記蒸留の開始時に即座に最初の仕込み物として使用することを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、またはそれらの混合物を水溶性カルボン酸として使用することを特徴とする、請求項2〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ビーズポリマーを水性分散物の状態で蒸留に付すことを特徴とする、請求項2〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
20℃かつ1atmで液体であるモノカルボン酸を水溶性カルボン酸として使用することを特徴とする、請求項2〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
イオン交換体または吸着材樹脂の調製のための、請求項1に記載のビーズポリマーの使用。
【請求項10】
ビーズポリマーから疎水性溶媒を除去するための、親水性カルボン酸の使用。
【請求項11】
生物学的活性化合物の溶液を精製するための、請求項1に記載のビーズポリマーの使用。
【請求項12】
インスリン溶液を精製するための、請求項1に記載のビーズポリマーの使用。

【公開番号】特開2007−297631(P2007−297631A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122780(P2007−122780)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】