ビーズ織り具
【課題】単純な構成で、経糸を張り渡すことができ、糸巻き作業が不要であるビーズ織り具を提供する。
【解決手段】ビーズ織り具1は、両縁部10a,10bを互いに近付けるように断面略U字形状に湾曲されたプレート部材10を備えている。このプレート部材10は、一本の保持糸30が前後左右のスリット17に掛けられて複数回巻き付けられることにより、湾曲状態が保持されている。両縁部10a,10bには、経糸40を掛ける糸掛け部15,16が形成されている。両縁部10a,10bの近傍には取付孔11,12,13,14が設けられている。これら取付孔11〜14に爪楊枝21,22,23,24が挿通される。一方の縁部10aに設けられた取付孔11,12に挿入された爪楊枝21,22と、他方の縁部10bに設けられた取付孔13,14に挿入された爪楊枝23,24との間に一本の糸が複数回往復することにより、経糸40が張り渡される。
【解決手段】ビーズ織り具1は、両縁部10a,10bを互いに近付けるように断面略U字形状に湾曲されたプレート部材10を備えている。このプレート部材10は、一本の保持糸30が前後左右のスリット17に掛けられて複数回巻き付けられることにより、湾曲状態が保持されている。両縁部10a,10bには、経糸40を掛ける糸掛け部15,16が形成されている。両縁部10a,10bの近傍には取付孔11,12,13,14が設けられている。これら取付孔11〜14に爪楊枝21,22,23,24が挿通される。一方の縁部10aに設けられた取付孔11,12に挿入された爪楊枝21,22と、他方の縁部10bに設けられた取付孔13,14に挿入された爪楊枝23,24との間に一本の糸が複数回往復することにより、経糸40が張り渡される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のビーズで生地を織り成す際に用いられるビーズ織り具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数のビーズで生地を織り成す際に経糸を張り渡すためのビーズ織り具が提供されている。例えば特許文献1に記載のビーズ織り具は、前後上部に突起を有する左右の側板が平行に配され、この左右の側板の間に糸巻き棒が回動自在に取り付けられている。糸巻き棒には糸止め棒孔が形成され、この糸止め棒孔に糸止め棒が差し込まれている。また側板の前後の突起には左右に渡る螺旋ばねと目数尺度つきの保持棒とが固定されている。このようなビーズ織り具においては、経糸を前後の糸止め棒間に複数回往復させて掛け渡し、糸巻き棒を回転させて巻き取ることで経糸を張る。
【特許文献1】実開平6−6469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記構成のビーズ織り具は、経糸を張るために回動自在な糸巻き棒等の巻き取り機構が必要であるため、複雑な構造となっていた。また、経糸の巻き取り作業が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、板厚方向に撓むことができかつ湾曲させた状態において平らな形状に戻ろうとする反発弾性を生じるプレート部材を有し、前記プレート部材は、該プレート部材を湾曲させた状態においてビーズ織りのための経糸を支持して前記プレート部材の両縁部間に張り渡す糸掛け部を有し、前記プレート部材の両縁部を互いに近づけるように該プレート部材を湾曲させた状態で、前記両縁部間に前記経糸を張り渡すようにしたことを特徴とするものである。
【0005】
請求項2に記載の発明は、上記に加え、前記プレート部材の両縁部付近には、それぞれロッド部材を挿入可能な取付孔が形成され、該プレート部材を湾曲させた状態においてビーズ織りのための経糸を前記それぞれのロッド部材間に複数回往復させて前記両縁部間に張り渡すことを特徴とするものである。
【0006】
請求項3に記載の発明は、上記に加え、前記プレート部材は、該プレート部材を湾曲させた状態において該プレート部材の湾曲形状を保持するための糸を巻付けることのできる保持部を有することを特徴とするものである。
【0007】
請求項4に記載の発明の要旨は、上記に加え、前記プレート部材が文房具の合成樹脂製の下敷きであることを特徴とするものである。
【0008】
請求項5に記載の発明は、請求項2の発明に加え、前記ロッド部材が爪楊枝であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、たとえば合成樹脂製の文房具の下敷きのように板厚方向に撓むことができかつ湾曲させた状態において平らな形状に戻ろうとする反発弾性を生じるプレート部材を用いたことにより、プレート部材の反発弾性力によって経糸を引っ張ることができ、糸巻き棒等の巻き取り機構及び巻き取り作業が不要となり、簡単な構成でかつ部品数の少ないビーズ織り具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の第1の実施形態について説明する。なお、各図において説明のために、切欠き部15a…16kやビーズ60等を大きく描いている。
【0011】
図1及び図2に示すように、本実施形態にかかるビーズ織り具1は、板厚方向に撓み変形可能なプレート部材10を備えている。プレート部材10は合成樹脂からなり、平面視長方形の薄い板状に成型されている。プレート部材10は、湾曲させた状態において平らな形状に戻ろうとする反発弾性を生じる。プレート部材10として、例えば縦250mm×横180mm×厚み1mm程度に構成された文房具の下敷きを用いることができる。
【0012】
プレート部材10の前縁部10a及び後縁部10bの近傍には、ロッド部材の一例である爪楊枝21,22,23,24を挿入可能な取付孔11,12,13,14が形成されている。取付孔11,12,13,14は、爪楊枝21,22,23,24が挿入された際に途中で止まるように構成されている。
【0013】
両縁部10a,10bにおける左右方向中央には、プレート部材10を湾曲させた状態において張り渡される経糸40を支持する糸掛け部15,16が設けられている。それぞれの糸掛け部15,16には経糸40を位置決めするために多数のV字状の切欠き15a,15b…15k,16a,16b…16kが等間隔に形成されている。切欠き15a,15b…15k,16a,16b…16kの数は織り成す生地の幅方向におけるビーズ60の数より多く構成されている。また、切欠き15a,15b…15k,16a,16b…16kは深さが3〜5mm程度であり、約2ミリ程度の間隔で並設されている。
【0014】
両縁部10a,10bの左右端部には保持部の一例として、プレート部材10の湾曲形状を保持するための保持糸30を掛けることのできるスリット17が形成されている。
【0015】
上記のように構成されたプレート部材10は、両縁部10a,10b間が互いに近付くように断面略U字形状に湾曲され、一本の保持糸30が前後左右のスリット17に掛けられてプレート部材10に複数回巻きつけられることによりその湾曲形状が保持されている。このとき、プレート部材10が元の平らな形状に戻ろうとする反発弾性力が生じ、保持糸30に作用している。また、取付孔11,12,13,14にはそれぞれ爪楊枝21,22,23,24がプレート部材10の外方から挿通され、固定されている。
【0016】
本実施形態にかかるビーズ織り具1においては、図3乃至図5に示されるように、一本の糸が爪楊枝21,22と爪楊枝23,24との間に複数回往復させられることにより、経糸40が両縁部10a,10b間に張り渡される。ここで経糸40を張り渡す手順について説明する。
【0017】
まず、経糸40の一端を、前縁部10aの左寄りの爪楊枝21に結び、あるいはプレート部材10に貼る等により、固定する。ついで経糸40を、前縁部10aの左端の切欠き15a及び後縁部10bの左端の切欠き16aに通し、後方へ移動させ、後縁部10bの左寄りの爪楊枝23に掛ける。
【0018】
ついで経糸40を、後縁部10bの左から二番目の切欠き16b及び前縁部10aの左から二番目の切欠き15bに通し、前方に移動させ、前縁部10aの左寄りの爪楊枝21に掛ける。以降同様にして経糸40を右方向にずらしつつ爪楊枝21,22と爪楊枝23,24との間に複数回往復させる。なお、中央より左においては、左寄りの爪楊枝21と爪楊枝23との間に掛け渡し、中央より右においては、右寄りの爪楊枝22と爪楊枝24との間に掛け渡す。経糸40を必要な回数往復させた後、その他端を一端と同様に固定する。
【0019】
ついで保持糸30を緩め、あるいは取り外す。これにより、保持糸30に作用していた両縁部10a,10bが互いに遠ざかりプレート部材10が平らな形状に戻ろうとする反発弾性力が経糸40に作用するようになる。以上により、経糸40が前後方向に引っ張られ、等間隔かつ平行に張り渡される。一方で、経糸40の上下左右には作業用の空間が確保される。
【0020】
以下、図6乃至図15を参照して、経糸40が張り渡されたビーズ織り具1を用いて生地を織り成す手順の一例について説明する。なお、図6乃至図11では説明のために一列のビーズ60の数を4個として示している。
【0021】
まず、左端の経糸40に一本の糸を結びつけて緯糸50を設定する(図6)。この緯糸50を、針70を用いて一列分のビーズ60に挿通させる。このとき、左に位置させるビーズから順番に挿通させる。ついで、針70を経糸40の下の作業空間にくぐらせながら右に移動させる(図7)。一列分のビーズ60が経糸40の下で経糸40に直交して並ぶように支持しつつ、ビーズ60を下から指で押し上げ、一粒ずつ経糸40の間に配置する(図8)。
【0022】
ついで、各ビーズ60の通し孔61の内部かつ経糸40の上方に、右から左に向けて、針70を挿通させることにより緯糸50を通す(図9)。こうして一列分のビーズ60が経糸40及び緯糸50に支持されて所定の位置に固定される(図10)。さらに、緯糸50に2列目のビーズ60を挿通し、上記と同様にして一列目の後方に2列目を形成する(図11)。以上の動作を繰り返し図12乃至図15のように前から後に向けて一列ずつ作成し、増やしていくことで生地が織り成される。
【0023】
生地を織り成した後、生地が形成された経糸40を糸掛け部15,16から外し、生地の前後に余っている経糸40を左端から順に前後に交互に引っ張ることにより引き締めていく。経糸40の端部を通し孔61に通す等して始末することで生地が完成する。
【0024】
本実施形態にかかるビーズ織り具1によれば、プレート部材10の反発弾性力により常に経糸40の張力を維持できるため、回動自在な糸巻き棒等の巻き取り機構や巻き取り作業が不要となり簡単な構成で部品数を少なくすることができる。したがって低コスト化及び作業時間の短縮化が図れる。
【0025】
また上記従来技術においては、経糸40を前後方向において支持しかつ経糸40のビーズ60を位置させる部分の上下左右方向に作業空間を形成するために、凸部のある側板(前記特許文献1における符号1,2)や保持棒(前記特許文献1における符号11)等の多数の部材や成型工程を用いていたが、本実施形態にかかるビーズ織り具1は人間の力で湾曲できる薄いプレート部材10を断面略U字状に湾曲させたことにより、単純かつ軽量に構成することが可能となる。
【0026】
さらに、上記従来技術においては経糸を位置決めするために螺旋ばねを取付けていたが、本実施形態にかかるビーズ織り具1によれば、プレート部材10に切欠き15a…16kを形成することで、新たな部材を用いることなく位置決めが可能となる。したがって、部材数が削減でき、単純かつ軽量に構成することができる。
【0027】
下敷きや爪楊枝等市販の部材を利用することができるため製造コストをより低く抑えることができる。またプレート部材10に用いた合成樹脂製の下敷きは加工しやすいため、取付孔11等を例えば錐を使って簡単に形成することができる。したがって、使用者が織り成す生地の幅に応じて適当な場所に必要な数だけ簡単に取付孔を形成することができる。さらに、保持糸30を取り外すことでプレート部材10が平らな形状に戻るため携帯や収納に便利である。
【0028】
なお本発明を実施するにあたり、各構成部材の形態や、生地を織り成す手順等、この発明の構成要素を発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更して実施できることは言うまでもない。
【0029】
上記実施形態においては、糸掛け部15,16に、経糸40を位置決めするための複数の切欠き15a,15b…15k,16a,16b…16kを構成したが、図16に示すビーズ織り具2のように、切欠き15a,15b…15k,16a,16b…16kの代わりとして、糸掛け部15,16にセロテープ(登録商標)や両面接着テープ等で接着部18を形成してもよい。この場合、経糸40を接着部18に所定の間隔で接着しながら往復させることで接着部18の接着性により経糸40のずれを防止することができる。したがって切欠き15a,15b…15k,16a,16b…16kを形成しなくても経糸40を所定の位置に張り渡すことができる。
【0030】
上記実施形態では経糸40を設定した後に保持糸30を緩める構成を例示したが、経糸40を掛け渡す際にプレート部材10をさらに湾曲させ、あるいは経糸40を引っ張りながら往復させることで反発弾性力が経糸40にかかるようにしてもよい。この構成によれば、保持糸30を緩めあるいは取り外す必要がなく、繰り返し使用する場合に便利である。
【0031】
また、保持糸30を巻きつける代わりに、セロテープ(登録商標)等の接着テープで両縁部10a,10b間を所定の距離に設定して湾曲状態を保持することもできる。さらに、金属板や木の板等でプレート部材10を構成してもよいし、ロッド部材として爪楊枝21,22,23,24の他に画鋲等別の部材を用いることもできる。
【0032】
上記実施形態において、両縁部10a,10b間に経糸40を掛け渡す際に、プレート部材10に挿通固定された爪楊枝21,22,23,24間に掛ける構成としたが、両縁部10a,10bの糸掛け部15,16に多数の切り込みを所定の間隔で形成し、その切り込みに掛けながら経糸を往復させる構成としても良い。すなわち、経糸を、多数の切り込みに掛けつつ端から順番に複数回往復させると、経糸が支持されると同時に位置決めも行われる。したがって、切り込みのみで、上記実施形態における爪楊枝21,22,23,24及び多数の15a,15b…15k,16a,16b…16kの両方の機能を果たすことができるため、より単純な構造とすることができ、経糸の張り渡しも容易となる。
【0033】
さらに、図17に示すように、上記各実施形態におけるプレート部材10の両縁部10a,10bを含む四辺に目盛り19を設けても良い。目盛り19はそれぞれ四辺から2cm程度の位置に設けられている。目盛り19は1mm間隔で、5mm毎に大きく記されている。さらに1cm毎に数字が付されている。このような構成により、織り成す生地の大きさを容易に測ることができる。また、切欠き15a,15b…15k,16a,16b…16kを形成する際にも正確かつ容易に所定の位置に等間隔に施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1の実施形態にかかるプレート部材の斜視図。
【図2】第1の実施形態にかかるビーズ織り具の斜視図。
【図3】経糸を張り渡した状態におけるビーズ織り具の斜視図。
【図4】経糸を張り渡した状態におけるビーズ織り具の側面図。
【図5】経糸を張り渡した状態におけるビーズ織り具の正面図。
【図6】緯糸を設定する工程を示す斜視図。
【図7】緯糸に1列目のビーズを通す工程を示す斜視図。
【図8】経糸の間に1列目のビーズを配置する工程を示す斜視図。
【図9】配置されたビーズに緯糸を通す工程を示す斜視図。
【図10】1列目のビーズを織る工程を示す斜視図。
【図11】2列目のビーズを織る工程を示す斜視図。
【図12】緯糸に4列目のビーズを通す工程を示す斜視図。
【図13】4列目のビーズを織る工程を示す斜視図。
【図14】緯糸に5列目のビーズを通す工程を示す斜視図。
【図15】5列目のビーズを織る工程を示す斜視図。
【図16】他の実施形態を示すビーズ織り具の正面図。
【図17】他の実施形態を示すプレート部材の斜視図。
【符号の説明】
【0035】
1,2…ビーズ織り具
10…プレート部材
10a…前縁部
10b…後縁部
11,12,13,14…取付孔
15,16…糸掛け部
15a,15b…15k,16a,16b…16k…切欠き
17…スリット(保持部)
18…接着部
19…目盛り
21,22,23,24…爪楊枝(ロッド部材)
30…保持糸(糸)
40…経糸
50…緯糸
60…ビーズ
61…通し孔
70…針
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のビーズで生地を織り成す際に用いられるビーズ織り具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数のビーズで生地を織り成す際に経糸を張り渡すためのビーズ織り具が提供されている。例えば特許文献1に記載のビーズ織り具は、前後上部に突起を有する左右の側板が平行に配され、この左右の側板の間に糸巻き棒が回動自在に取り付けられている。糸巻き棒には糸止め棒孔が形成され、この糸止め棒孔に糸止め棒が差し込まれている。また側板の前後の突起には左右に渡る螺旋ばねと目数尺度つきの保持棒とが固定されている。このようなビーズ織り具においては、経糸を前後の糸止め棒間に複数回往復させて掛け渡し、糸巻き棒を回転させて巻き取ることで経糸を張る。
【特許文献1】実開平6−6469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記構成のビーズ織り具は、経糸を張るために回動自在な糸巻き棒等の巻き取り機構が必要であるため、複雑な構造となっていた。また、経糸の巻き取り作業が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、板厚方向に撓むことができかつ湾曲させた状態において平らな形状に戻ろうとする反発弾性を生じるプレート部材を有し、前記プレート部材は、該プレート部材を湾曲させた状態においてビーズ織りのための経糸を支持して前記プレート部材の両縁部間に張り渡す糸掛け部を有し、前記プレート部材の両縁部を互いに近づけるように該プレート部材を湾曲させた状態で、前記両縁部間に前記経糸を張り渡すようにしたことを特徴とするものである。
【0005】
請求項2に記載の発明は、上記に加え、前記プレート部材の両縁部付近には、それぞれロッド部材を挿入可能な取付孔が形成され、該プレート部材を湾曲させた状態においてビーズ織りのための経糸を前記それぞれのロッド部材間に複数回往復させて前記両縁部間に張り渡すことを特徴とするものである。
【0006】
請求項3に記載の発明は、上記に加え、前記プレート部材は、該プレート部材を湾曲させた状態において該プレート部材の湾曲形状を保持するための糸を巻付けることのできる保持部を有することを特徴とするものである。
【0007】
請求項4に記載の発明の要旨は、上記に加え、前記プレート部材が文房具の合成樹脂製の下敷きであることを特徴とするものである。
【0008】
請求項5に記載の発明は、請求項2の発明に加え、前記ロッド部材が爪楊枝であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、たとえば合成樹脂製の文房具の下敷きのように板厚方向に撓むことができかつ湾曲させた状態において平らな形状に戻ろうとする反発弾性を生じるプレート部材を用いたことにより、プレート部材の反発弾性力によって経糸を引っ張ることができ、糸巻き棒等の巻き取り機構及び巻き取り作業が不要となり、簡単な構成でかつ部品数の少ないビーズ織り具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の第1の実施形態について説明する。なお、各図において説明のために、切欠き部15a…16kやビーズ60等を大きく描いている。
【0011】
図1及び図2に示すように、本実施形態にかかるビーズ織り具1は、板厚方向に撓み変形可能なプレート部材10を備えている。プレート部材10は合成樹脂からなり、平面視長方形の薄い板状に成型されている。プレート部材10は、湾曲させた状態において平らな形状に戻ろうとする反発弾性を生じる。プレート部材10として、例えば縦250mm×横180mm×厚み1mm程度に構成された文房具の下敷きを用いることができる。
【0012】
プレート部材10の前縁部10a及び後縁部10bの近傍には、ロッド部材の一例である爪楊枝21,22,23,24を挿入可能な取付孔11,12,13,14が形成されている。取付孔11,12,13,14は、爪楊枝21,22,23,24が挿入された際に途中で止まるように構成されている。
【0013】
両縁部10a,10bにおける左右方向中央には、プレート部材10を湾曲させた状態において張り渡される経糸40を支持する糸掛け部15,16が設けられている。それぞれの糸掛け部15,16には経糸40を位置決めするために多数のV字状の切欠き15a,15b…15k,16a,16b…16kが等間隔に形成されている。切欠き15a,15b…15k,16a,16b…16kの数は織り成す生地の幅方向におけるビーズ60の数より多く構成されている。また、切欠き15a,15b…15k,16a,16b…16kは深さが3〜5mm程度であり、約2ミリ程度の間隔で並設されている。
【0014】
両縁部10a,10bの左右端部には保持部の一例として、プレート部材10の湾曲形状を保持するための保持糸30を掛けることのできるスリット17が形成されている。
【0015】
上記のように構成されたプレート部材10は、両縁部10a,10b間が互いに近付くように断面略U字形状に湾曲され、一本の保持糸30が前後左右のスリット17に掛けられてプレート部材10に複数回巻きつけられることによりその湾曲形状が保持されている。このとき、プレート部材10が元の平らな形状に戻ろうとする反発弾性力が生じ、保持糸30に作用している。また、取付孔11,12,13,14にはそれぞれ爪楊枝21,22,23,24がプレート部材10の外方から挿通され、固定されている。
【0016】
本実施形態にかかるビーズ織り具1においては、図3乃至図5に示されるように、一本の糸が爪楊枝21,22と爪楊枝23,24との間に複数回往復させられることにより、経糸40が両縁部10a,10b間に張り渡される。ここで経糸40を張り渡す手順について説明する。
【0017】
まず、経糸40の一端を、前縁部10aの左寄りの爪楊枝21に結び、あるいはプレート部材10に貼る等により、固定する。ついで経糸40を、前縁部10aの左端の切欠き15a及び後縁部10bの左端の切欠き16aに通し、後方へ移動させ、後縁部10bの左寄りの爪楊枝23に掛ける。
【0018】
ついで経糸40を、後縁部10bの左から二番目の切欠き16b及び前縁部10aの左から二番目の切欠き15bに通し、前方に移動させ、前縁部10aの左寄りの爪楊枝21に掛ける。以降同様にして経糸40を右方向にずらしつつ爪楊枝21,22と爪楊枝23,24との間に複数回往復させる。なお、中央より左においては、左寄りの爪楊枝21と爪楊枝23との間に掛け渡し、中央より右においては、右寄りの爪楊枝22と爪楊枝24との間に掛け渡す。経糸40を必要な回数往復させた後、その他端を一端と同様に固定する。
【0019】
ついで保持糸30を緩め、あるいは取り外す。これにより、保持糸30に作用していた両縁部10a,10bが互いに遠ざかりプレート部材10が平らな形状に戻ろうとする反発弾性力が経糸40に作用するようになる。以上により、経糸40が前後方向に引っ張られ、等間隔かつ平行に張り渡される。一方で、経糸40の上下左右には作業用の空間が確保される。
【0020】
以下、図6乃至図15を参照して、経糸40が張り渡されたビーズ織り具1を用いて生地を織り成す手順の一例について説明する。なお、図6乃至図11では説明のために一列のビーズ60の数を4個として示している。
【0021】
まず、左端の経糸40に一本の糸を結びつけて緯糸50を設定する(図6)。この緯糸50を、針70を用いて一列分のビーズ60に挿通させる。このとき、左に位置させるビーズから順番に挿通させる。ついで、針70を経糸40の下の作業空間にくぐらせながら右に移動させる(図7)。一列分のビーズ60が経糸40の下で経糸40に直交して並ぶように支持しつつ、ビーズ60を下から指で押し上げ、一粒ずつ経糸40の間に配置する(図8)。
【0022】
ついで、各ビーズ60の通し孔61の内部かつ経糸40の上方に、右から左に向けて、針70を挿通させることにより緯糸50を通す(図9)。こうして一列分のビーズ60が経糸40及び緯糸50に支持されて所定の位置に固定される(図10)。さらに、緯糸50に2列目のビーズ60を挿通し、上記と同様にして一列目の後方に2列目を形成する(図11)。以上の動作を繰り返し図12乃至図15のように前から後に向けて一列ずつ作成し、増やしていくことで生地が織り成される。
【0023】
生地を織り成した後、生地が形成された経糸40を糸掛け部15,16から外し、生地の前後に余っている経糸40を左端から順に前後に交互に引っ張ることにより引き締めていく。経糸40の端部を通し孔61に通す等して始末することで生地が完成する。
【0024】
本実施形態にかかるビーズ織り具1によれば、プレート部材10の反発弾性力により常に経糸40の張力を維持できるため、回動自在な糸巻き棒等の巻き取り機構や巻き取り作業が不要となり簡単な構成で部品数を少なくすることができる。したがって低コスト化及び作業時間の短縮化が図れる。
【0025】
また上記従来技術においては、経糸40を前後方向において支持しかつ経糸40のビーズ60を位置させる部分の上下左右方向に作業空間を形成するために、凸部のある側板(前記特許文献1における符号1,2)や保持棒(前記特許文献1における符号11)等の多数の部材や成型工程を用いていたが、本実施形態にかかるビーズ織り具1は人間の力で湾曲できる薄いプレート部材10を断面略U字状に湾曲させたことにより、単純かつ軽量に構成することが可能となる。
【0026】
さらに、上記従来技術においては経糸を位置決めするために螺旋ばねを取付けていたが、本実施形態にかかるビーズ織り具1によれば、プレート部材10に切欠き15a…16kを形成することで、新たな部材を用いることなく位置決めが可能となる。したがって、部材数が削減でき、単純かつ軽量に構成することができる。
【0027】
下敷きや爪楊枝等市販の部材を利用することができるため製造コストをより低く抑えることができる。またプレート部材10に用いた合成樹脂製の下敷きは加工しやすいため、取付孔11等を例えば錐を使って簡単に形成することができる。したがって、使用者が織り成す生地の幅に応じて適当な場所に必要な数だけ簡単に取付孔を形成することができる。さらに、保持糸30を取り外すことでプレート部材10が平らな形状に戻るため携帯や収納に便利である。
【0028】
なお本発明を実施するにあたり、各構成部材の形態や、生地を織り成す手順等、この発明の構成要素を発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更して実施できることは言うまでもない。
【0029】
上記実施形態においては、糸掛け部15,16に、経糸40を位置決めするための複数の切欠き15a,15b…15k,16a,16b…16kを構成したが、図16に示すビーズ織り具2のように、切欠き15a,15b…15k,16a,16b…16kの代わりとして、糸掛け部15,16にセロテープ(登録商標)や両面接着テープ等で接着部18を形成してもよい。この場合、経糸40を接着部18に所定の間隔で接着しながら往復させることで接着部18の接着性により経糸40のずれを防止することができる。したがって切欠き15a,15b…15k,16a,16b…16kを形成しなくても経糸40を所定の位置に張り渡すことができる。
【0030】
上記実施形態では経糸40を設定した後に保持糸30を緩める構成を例示したが、経糸40を掛け渡す際にプレート部材10をさらに湾曲させ、あるいは経糸40を引っ張りながら往復させることで反発弾性力が経糸40にかかるようにしてもよい。この構成によれば、保持糸30を緩めあるいは取り外す必要がなく、繰り返し使用する場合に便利である。
【0031】
また、保持糸30を巻きつける代わりに、セロテープ(登録商標)等の接着テープで両縁部10a,10b間を所定の距離に設定して湾曲状態を保持することもできる。さらに、金属板や木の板等でプレート部材10を構成してもよいし、ロッド部材として爪楊枝21,22,23,24の他に画鋲等別の部材を用いることもできる。
【0032】
上記実施形態において、両縁部10a,10b間に経糸40を掛け渡す際に、プレート部材10に挿通固定された爪楊枝21,22,23,24間に掛ける構成としたが、両縁部10a,10bの糸掛け部15,16に多数の切り込みを所定の間隔で形成し、その切り込みに掛けながら経糸を往復させる構成としても良い。すなわち、経糸を、多数の切り込みに掛けつつ端から順番に複数回往復させると、経糸が支持されると同時に位置決めも行われる。したがって、切り込みのみで、上記実施形態における爪楊枝21,22,23,24及び多数の15a,15b…15k,16a,16b…16kの両方の機能を果たすことができるため、より単純な構造とすることができ、経糸の張り渡しも容易となる。
【0033】
さらに、図17に示すように、上記各実施形態におけるプレート部材10の両縁部10a,10bを含む四辺に目盛り19を設けても良い。目盛り19はそれぞれ四辺から2cm程度の位置に設けられている。目盛り19は1mm間隔で、5mm毎に大きく記されている。さらに1cm毎に数字が付されている。このような構成により、織り成す生地の大きさを容易に測ることができる。また、切欠き15a,15b…15k,16a,16b…16kを形成する際にも正確かつ容易に所定の位置に等間隔に施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1の実施形態にかかるプレート部材の斜視図。
【図2】第1の実施形態にかかるビーズ織り具の斜視図。
【図3】経糸を張り渡した状態におけるビーズ織り具の斜視図。
【図4】経糸を張り渡した状態におけるビーズ織り具の側面図。
【図5】経糸を張り渡した状態におけるビーズ織り具の正面図。
【図6】緯糸を設定する工程を示す斜視図。
【図7】緯糸に1列目のビーズを通す工程を示す斜視図。
【図8】経糸の間に1列目のビーズを配置する工程を示す斜視図。
【図9】配置されたビーズに緯糸を通す工程を示す斜視図。
【図10】1列目のビーズを織る工程を示す斜視図。
【図11】2列目のビーズを織る工程を示す斜視図。
【図12】緯糸に4列目のビーズを通す工程を示す斜視図。
【図13】4列目のビーズを織る工程を示す斜視図。
【図14】緯糸に5列目のビーズを通す工程を示す斜視図。
【図15】5列目のビーズを織る工程を示す斜視図。
【図16】他の実施形態を示すビーズ織り具の正面図。
【図17】他の実施形態を示すプレート部材の斜視図。
【符号の説明】
【0035】
1,2…ビーズ織り具
10…プレート部材
10a…前縁部
10b…後縁部
11,12,13,14…取付孔
15,16…糸掛け部
15a,15b…15k,16a,16b…16k…切欠き
17…スリット(保持部)
18…接着部
19…目盛り
21,22,23,24…爪楊枝(ロッド部材)
30…保持糸(糸)
40…経糸
50…緯糸
60…ビーズ
61…通し孔
70…針
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板厚方向に撓むことができかつ湾曲させた状態において平らな形状に戻ろうとする反発弾性を生じるプレート部材を有し、
前記プレート部材は、
該プレート部材を湾曲させた状態においてビーズ織りのための経糸を支持して前記プレート部材の両縁部間に張り渡す糸掛け部を有し、前記プレート部材の両縁部を互いに近づけるように該プレート部材を湾曲させた状態で、前記両縁部間に前記経糸を張り渡すようにしたことを特徴とするビーズ織り具。
【請求項2】
前記プレート部材の両縁部付近には、それぞれロッド部材を挿入可能な取付孔が形成され、
該プレート部材を湾曲させた状態においてビーズ織りのための経糸を前記それぞれのロッド部材間に複数回往復させて前記両縁部間に張り渡すことを特徴とする請求項1に記載のビーズ織り具。
【請求項3】
前記プレート部材は、該プレート部材を湾曲させた状態において該プレート部材の湾曲形状を保持するための糸を巻付けることのできる保持部を有することを特徴とする請求項1または2に記載のビーズ織り具。
【請求項4】
前記プレート部材が文房具の合成樹脂製の下敷きであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のビーズ織り具。
【請求項5】
前記ロッド部材が爪楊枝であることを特徴とする請求項2に記載のビーズ織り具。
【請求項1】
板厚方向に撓むことができかつ湾曲させた状態において平らな形状に戻ろうとする反発弾性を生じるプレート部材を有し、
前記プレート部材は、
該プレート部材を湾曲させた状態においてビーズ織りのための経糸を支持して前記プレート部材の両縁部間に張り渡す糸掛け部を有し、前記プレート部材の両縁部を互いに近づけるように該プレート部材を湾曲させた状態で、前記両縁部間に前記経糸を張り渡すようにしたことを特徴とするビーズ織り具。
【請求項2】
前記プレート部材の両縁部付近には、それぞれロッド部材を挿入可能な取付孔が形成され、
該プレート部材を湾曲させた状態においてビーズ織りのための経糸を前記それぞれのロッド部材間に複数回往復させて前記両縁部間に張り渡すことを特徴とする請求項1に記載のビーズ織り具。
【請求項3】
前記プレート部材は、該プレート部材を湾曲させた状態において該プレート部材の湾曲形状を保持するための糸を巻付けることのできる保持部を有することを特徴とする請求項1または2に記載のビーズ織り具。
【請求項4】
前記プレート部材が文房具の合成樹脂製の下敷きであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のビーズ織り具。
【請求項5】
前記ロッド部材が爪楊枝であることを特徴とする請求項2に記載のビーズ織り具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−63692(P2007−63692A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249499(P2005−249499)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(500219906)有限会社 サコタカコ (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(500219906)有限会社 サコタカコ (1)
【Fターム(参考)】
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