ビーム搬送装置
【課題】トランスファプレス装置から取り外したビームをフィンガ交換作業が容易に行える位置まで搬送することのできるビーム搬送装置を提供する。
【解決手段】トランスファプレス装置の近傍の第一停車位置と該第一停車位置よりもトランスファプレス装置から遠い第二停車位置との間を移動可能な台車3に、当該台車が前記第一停車位置に停車しているときにトランスファプレス装置の外部に位置する後退位置とトランスファプレス装置の内部に位置する前進位置との間をビーム30を保持して移動可能なビーム受け4を設ける。
【解決手段】トランスファプレス装置の近傍の第一停車位置と該第一停車位置よりもトランスファプレス装置から遠い第二停車位置との間を移動可能な台車3に、当該台車が前記第一停車位置に停車しているときにトランスファプレス装置の外部に位置する後退位置とトランスファプレス装置の内部に位置する前進位置との間をビーム30を保持して移動可能なビーム受け4を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスファプレス装置におけるフィンガ交換や金型交換の際、当該装置外へのビームの搬送及び当該装置内へのビームの搬入に使用するビーム搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
順次供給されてくる素材に多工程のプロセス加工を施すトランスファプレス装置(以下、「プレス装置」という。)は、平行に設けられた2本のビームに素材を保持するフィンガが互いに向き合わせて取り付けられており、2本のビームの動作によりフィンガにクランプされた素材が各工程の金型間を移動して、各工程で素材に所定の加工が施されるようになっている。このようなプレス装置では、加工方法や素材の大きさ、形状の違い等により金型交換やフィンガ交換を行う。その交換の仕方には、下記の二通りの方法があった。
【0003】
一つは、金型及びビームをこれらを取り付けたダイホルダーごとフィンガのクランプ方向に取り出し、さらにプレス装置外でビームをダイホルダー付属のビーム受けから外して、フィンガ交換または金型交換を行う方法である。
【0004】
もう一つは、プレス装置のビーム長手方向一端部からビームのみをプレス装置外へ取り出し、フィンガ交換はプレス装置の外部で行い、金型交換はプレス装置内部で行う方法である(例えば、特許文献1、2)。
【特許文献1】特公昭57−46929号公報
【特許文献2】実開昭62−20731号公報
【0005】
特許文献1に記載のものは、ビーム(フィードバー)の長手方向に沿って移動可能なスライドプレートに結合装置を介してビームの一端が着脱自在に連結されており、ビームとスライドプレートの連結を解除することにより、ビームをプレス装置の外部に取り出すようになっている。
【0006】
一方、特許文献2に記載のものは、ビーム(トランスファバー)が、駆動ユニット及び従動ユニットに取り付けられた端部ビームと、フィンガが取り付けられた中間ビームとに分割可能に構成され、フィンガ交換時には、中間ビームを一方の端部ビームから分割し、中間ビームと他方の端部ビームだけをプレス装置の外部に取り出すようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1、2は、いずれもビームの下面にラックが取り付けられ、このラックに噛み合うピニオンを手動もしくは電動で回転させることにより、ビームを搬送させるようになっている。ピニオンはプレス装置の固定位置に設けられているので、ビームの長さ分以上にビームを搬送させることができず、ビーム全体をプレス装置の外部に取り出すことが不可能である。このため、フィンガ交換作業をプレス装置の近傍で行わなければならなかった。特許文献2の図1に図示されているように、このフィンガを交換する位置には機器類が多くあり、作業が困難であった。
【0008】
そこで本発明は、プレス装置から取り外したビームを、フィンガ交換作業を容易に行える位置まで搬送することのできるビーム搬送装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明中、請求項1に記載のビーム搬送装置は、加工用素材を保持する複数対のフィンガが取り付けられたビームをトランスファプレス装置から装置外へ搬出する際や、トランスファプレス装置に取り付けるビームを当該装置内に搬入する際に使用するビーム搬送装置であって、トランスファプレス装置のビームの端部近傍の第一停車位置と該第一停車位置よりもトランスファプレス装置から遠い第二停車位置との間を移動可能な台車に、当該台車が前記第一停車位置に停車しているときにトランスファプレス装置の外部に位置する後退位置とトランスファプレス装置の内部に位置する前進位置との間を、ビームを保持して移動可能なビーム受けを設けたことを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項2に記載のビーム搬送装置は、加工用素材を保持する複数対のフィンガが取り付けられた中間ビームと、該中間ビームの両端部に着脱可能に連結された端部ビームとで構成されるビームを備えたトランスファプレス装置に設けられ、前記中間ビームを装置外へ搬出したり搬入したりする際に使用されるビーム搬送装置であって、前記中間ビームを一方の取り出し側へ移動させる移動手段と、該中間ビームの移動時に取り出し側の端部ビームを水平状態に保持して上方へ持ち上げる昇降装置とを設けたことを特徴としている。前記端部ビームの昇降装置としては、取り出し側の端部ビームの中間部に筒体が外嵌され、該筒体がトランスファプレス装置の昇降装置に回動自在に軸支されるとともに、該筒体の回動を規制する規制手段が設けられているものが好ましい。
【0011】
フィンガ交換時には、次に示す順でビームを搬送する。台車を第一停車位置に停車させた状態でビーム受けを前進位置まで移動させる。そのビーム受けにビームを載せる。ビームを載せたビーム受けを後退位置まで移動させる。台車を第二停車位置まで移動する。これにより、ビームがトランスファプレス装置から離れた第二停車位置に取り出される。フィンガ交換したビームをトランスファプレス装置へ搬入する場合は、上記と逆の動作を行う。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載のビーム搬送装置は、ビームをトランスファプレス装置から離れた第二停車位置に取り出すことができるので、フィンガの交換作業を安全かつ能率的に行えるとともに、フィンガの交換作業を行う位置をフィンガやビームの保管場所の近くに設定することにより、作業の短縮化を図れるようになった。この搬出装置は、全体が一体で形成された1本もののビームに対しても、複数の部材に分割された分割式のビームに対しても適用できる。
【0013】
請求項2に記載のビーム搬出装置は、フィンガが取り付けられた中間ビームを取り出す際に、該取り出し側の端部ビームを水平状態で持ち上げることができるので、中間ビーム取り出しの邪魔にならず、中間ビームを円滑に取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の一実施例の正面図、図2はその平面図、図3は図1のA−A断面図である。このビーム搬送装置1は、左右一対のレール2,2上を前後(図1、図2における左右方向)に走行する台車3と、該台車に対して前後に移動可能なビーム受け4とからなっている。
【0015】
台車3は、レール2,2に転動自在に係合する各一対の駆動輪(前輪)5,5及び従動輪(後輪)6,6を備えた四輪車両で、走行用モータ7の出力軸に取り付けたプーリ8と駆動輪の車軸5aに取り付けたプーリ9とに伝動ベルト10を掛けて、モータ7の駆動力で走行させるようにしている。一方の従動輪6の近傍には、アクチュエータ11aによって下方に突出させる位置決めピン11が設けられている。この位置決めピン11は、レール上の第一停車位置P1及び第二停車位置P2に台車3が停車するとき、下方に突出してレール2に形成された穴(図示せず)に挿入されて台車3の移動を規制するようになっている。
【0016】
台車3の上部は、ビーム受け4を摺動自在に支持するベッド13になっている。このベッド13は、前後方向の2本の走行路13a,13aを複数の連結フレーム13b,…で連結した構成で、各走行路13aの上面にはそれぞれ2本のH型レール14,14が平行に敷設されている。
【0017】
また、台車3の後部には、ビーム受け4の移動装置15が設けられている。この移動装置15は、図4及び図5に示すように、駆動ケース16内のスプロケット17に巻き掛けたローラチェーン18の一端をビーム受け4の底部にブラケット19を介して連結してあり、ビーム受け移動用モータ20でスプロケット17を回転させてローラチェーン18を駆動することによりビーム受け4を移動させるようにしている。なお、モータ20の回転力は図示しない減速装置を介してスプロケット17に伝達される。
【0018】
前記ローラチェーン18は、チェーンの両側にローラが設けられた市販のものを使用することができる。ローラチェーン18を案内するガイド21は、ローラチェーン18のローラ18a,18aが転動自在に嵌合する一対の溝型鋼からなり、前記連結フレーム13b,…により下側から支持されている。また、駆動ケース16内に配置されるガイド21の後部21aは図4に示す形状になっていて、ローラチェーン18をスプロケット17に約半周だけ掛け、ローラチェーン18のビーム受け4に連結されている側は前方に案内し、反対側は少しだけ斜め下向き前方に案内し、その先は下方に垂下させている。
【0019】
ビーム受け4は、前記ベッド13の走行路13a,13aに対応する一対の摺動部4a,4aと、両摺動部の後部を互いに連結する連結プレート4bとで構成されている。一対の摺動部4a,4aの間隔(中心間距離)は、後述する一対のビームのアンクランプ時における最大間隔(中心間距離)rと同一になっている。各摺動部4aの底面後部には、前記H型レール14に摺動自在に嵌合するスライドガイド23が、1本のHレールに付き前後2箇所ずつ計4箇所に取り付けられている。スライドガイド23としては、特許第2607993号公報に記載されている構成のもの(例えば、商品名「ボールリテーナTM入りLMガイド」)が好適である。
【0020】
連結プレート4bの裏面中央部には、前記ブラケット19が下向きに突出させて取り付けられている。また、各摺動部4aの上面前部には、後述する中間ビームに形成されている長穴32に嵌合するピン24が前後2箇所に設けられている。さらに、各摺動部4aの上面後部には中間ビームの搬出・搬入作業時に当該中間ビームを下から支えるローラ25が設けられている。
【0021】
ビーム搬送装置1は以上の構成である。ここで、このビーム搬送装置1が適用されるトランスファプレス装置のビームについて説明する。ビーム30は、図78、9に図示されているように、中間ビーム30aと左右の端部ビーム、すなわち、右固定ビーム30b、及び左固定ビーム30cからなり、それぞれが分離可能に連結されている。このようなビーム30が平行に2本設けられている。それぞれの中間ビーム30aには、図2に示すように、素材をクランプするためのフィンガ31が複数個互いに向き合わせて取り付けられている。また、中間ビーム30aの上面には、前記ピン24が嵌合する有効長さhの長穴32が前後2箇所に形成されている。
【0022】
中間ビーム30aと右固定ビーム30b、及び中間ビーム30aと左固定ビーム30cの連結部は、図10〜12に示す構成になっている。図は中間ビーム30aと右固定ビーム30bの連結部のみを表しているが、中間ビーム30aと左固定ビーム30cの連結部も同じ構成である。固定ビーム30bの端部には油圧シリンダ34が内蔵されており、そのピストン35のロッド35aが中間ビーム30a側に突出している。ピストンロッド35aの先端部には、大径のロッドヘッド35bが形成されている。ピストン35は、スプリング36により図における右方に付勢されている。一方、中間ビーム30aの端部には、図13に示すような上下に開口する箱型の連結体37が設けられている。この連結体37の端面には上端から中央部にかけて縦溝37aが形成されているとともに、両側部と下部に切欠き37b,…が形成されている。
【0023】
図10の状態は、連結体37の縦溝37aにピストンロッド35aが上から嵌り込み、ロッドヘッド35bが連結体37の中空部に位置している。その状態で、給排油口34aから油圧シリンダ34に油が供給されると、ピストン35が右方に摺動して、ロッドヘッド35bが連結体37の右内壁面37cに強く押し付けられる。これにより、中間ビーム30aと固定ビーム30bとが堅固に連結する。このとき、固定ビーム30bの端面に形成されている凸部が切欠き37b,…に係合して、両ビーム30a,30bがずれないようになっている。
【0024】
図10の状態で、給排油口34bから油圧シリンダ34に油が供給されると、図11に示すように、ピストン35が左方に摺動して、ロッドヘッド35bが連結体37の左内壁面37dを押し、中間ビーム30aを左方に移動させる。
【0025】
図11の状態から、給排油口34bからの油の供給を停止すると、図12に示すように、スプリング36の弾発力によりピストン35は少しだけ右方へ戻り、ロッドヘッド35bが連結体37の左内壁面37dから離れる。これにより、中間ビーム30aと固定ビーム30bとが完全に分離する。
【0026】
ビーム30は右昇降装置と左昇降装置とからなるトランスファプレス装置に付設のビーム昇降装置により昇降させられるようになっている。右側の端部ビームすなわち右固定ビーム30bには筒体(摺動筒)40が摺動自在に嵌合しており、その摺動筒40と右昇降装置の吊下げステー41とが支点42により回動自在に連結されている。また、左側の端部ビームすなわち左固定ビーム30cの端部に左昇降装置の吊下げステー43が支点44により回動自在に連結されている。このように、少なくとも片方の固定ビームをトランスファプレス装置の昇降装置に回動自在に取り付けることにより、左右の昇降装置の同期性が多少ずれたとしても、そのずれを吸収して、ビーム30を水平姿勢に保ったまま昇降させることができる。
【0027】
図14は右固定ビーム取付部の構成を示している。符合45は右昇降装置の吊下げステー41に取り付けられたシリンダ45で、そのピストンロッドの下端部に凸部45aが形成されている。摺動筒40に固定したブラケット46には、上記凸部45aが嵌合する穴46aが形成されている。上記シリンダ45を伸長させてブラケット46を固定することにより、端部ビームに外嵌された筒体(摺動筒40)の回動が規制され、端部ビームが水平状態で保持される。一方、左固定ビーム30cの下方には、該左固定ビームを支点44回りに回動させる回動シリンダ47が設けられている。
【0028】
以下、このビーム搬送装置の動作を説明する。図6は、ビーム搬送装置1が第二停車位置P2で待機している状態を表している。このとき、位置決めピン11がレール2の穴に挿入されて、台車3が移動しないようになっている。また、ビーム受け4は、後退位置P3に位置している。
【0029】
図7は、プレス作業が終了したときのビームの状態を表している。このときの両ビームの間隔は、アンクランプ状態の最大幅rになっている。金型もしくはフィンガを交換する場合は、プレス装置に設けられた搬出自動起動ボタンをONにすることにより、以下に示す一連の動作が自動的に行われる。
【0030】
最初に、ビーム昇降装置が同時に作動し、図7において2点鎖線で示すように、ビーム30をプレス作業時の位置からαだけ上昇させる。αは、中間ビーム30aを載置したビーム搬送装置1が上昇したビームに接触せず走行できるだけの高さである。
【0031】
ビーム30が上昇すると、アクチュエータ11aが作動して位置決めピン11がレール2の穴から抜けて、台車3が走行可能となる。そして、走行用モータ7が起動して、台車3が第一停車位置P1に向けて走行を開始する。第一停車位置P1に到達すると、台車3が走行停止するとともに、位置決めピン11がレールの穴に挿入されて台車3が移動しないように固定される。
【0032】
次いで、ビーム受け移動用モータ20が起動し、ビーム受け4が後退位置P3から前進位置P4に向けてベッド13上を移動する。ビーム受け4が前進位置P4までくると、移動停止する。このとき、ビーム受け4のピン24は、中間ビーム30aの長穴32の後端部直下に位置している。続いて、ビーム昇降装置が作動してビーム30がαだけ下降し、ピン24が長穴32に嵌合する。これにて、ビーム30がビーム受け4の摺動部4a,4aの上に載置される。図8がこの状態を表している。
【0033】
ビーム30がビーム受け4の摺動部4a,4aの上に載置されると、ビーム30が中間ビーム30a、右固定ビーム30b、及び左固定ビーム30cに分割される。中間ビーム30aと左固定ビーム30cとを分割する際、左固定ビーム30cは支点44を中心に回動するのを可能にするために、両ビーム30a,30cの間に隙間hが生じるように、左固定ビーム30cのピストンロッド35aが中間ビーム30aを右方に押す。同様に、右固定ビーム30bのピストンロッド35aも突出し、中間ビーム30aに対し右固定ビーム30bがhだけ右方に押される(図11参照)。結果的に、右固定ビーム30bは、下面をローラ25に支持されながら摺動筒40内を2hだけ右方へ移動する。これにより、穴46aが凸部45aの真下に位置するようになる。長穴32の有効長さがhであるので、長穴32とピン24の嵌合関係を保ちながら、中間ビーム30aはビーム受け4の摺動部4a,4a上を移動することが可能である。
【0034】
ビーム30の分割が完了すると、連結シリンダ45が突出作動して、凸部45aが穴46aに嵌合する。さらに、ビーム昇降装置が作動して、両固定ビーム30b,30cが上昇する。右固定ビーム30bは、水平状態を保ちながらαだけ上昇して、中間ビーム30aから分離する。一方、左固定ビーム30cは、回動シリンダ47が突出作動することにより、支点44を中心に上方に回動して、中間ビーム30aから分離する。図9がこの状態を表している。
【0035】
両固定ビーム30b,30cを中間ビーム30aから分離した後、ビーム受け駆動用モータ20が起動して、ビーム受け4が前進位置P4から後退位置P3へ移動する。次いで、アクチュエータ11aが作動して位置決めピン11がレール2の穴から抜ける。そして、走行用モータ20が起動して台車3が第二停車位置P2まで走行し、そこで停車する。停車後、位置決めピン11がレール2の穴に挿入され、台車3の移動が規制される。これにて、ビーム搬出作業が終了する。
【0036】
また、中間ビーム30aをプレス装置に搬入する場合は、長穴32の左端部にピン24が挿入された状態に中間ビーム30aをビーム受け4に載置してから、搬入自動起動ボタンをONにする。これにより、以下に示す一連の動作が自動的に行われる。
【0037】
最初に、右固定ビーム30b及び左固定ビーム30cを、プレス作業時の位置からαだけ上昇した位置に水平状態に保持する。その状態で、ビーム搬送装置1が第一停車位置P1まで走行する。停車後、中間ビーム30aを載せたビーム受け4が前進位置P4まで移動する。この時点で、中間ビーム30aと両固定ビーム30b,30cとの間には隙間がhだけ開いている。
【0038】
次に、両固定ビーム30b,30cがα下降し、該固定ビーム側の油圧シリンダ34のピストンロッド35aが中間ビーム側連結体37の縦溝37aに嵌り込む。連結シリンダ45は後退作動して凸部45aが長穴46aから抜ける。そして、固定ビーム30b,30cの油圧シリンダ34が収縮作動して、中間ビーム30aと固定ビーム30b,30cとが連結固定される。その際、中間ビーム30aは、長穴32とピン24との嵌合関係を保ちながら、左方へ距離hだけ移動する。また、右固定ビーム30bは、中間ビーム30aの移動距離hと、連結前の隙間hとの合計である距離2hだけ左方へ移動する。
【0039】
中間ビーム30aと固定ビーム30b,30cとが連結されたビーム30は、ビーム昇降装置によりαだけ上昇する。中間ビーム30aをトランスファプレス装置に引き渡したビーム搬送装置1は、ビーム受け4を後退位置P3へ戻すとともに、第二停車位置P2まで走行する。これにて、ビーム搬入作業が終了する。
【産業上の利用可能性】
【0040】
上記実施形態では、ビーム搬送装置1の車体を溝型鋼等の鋼材を組み合わせて構成しているが、台車3に対しビーム受け4が移動可能な構成であればこれに限定しない。ビーム受け4の移動方法としては、実施形態のローラチェーンを用いた構成に代えて、ベルトを用いた構成としてもよい。また、リニアモータを用い、ビーム受けが台車に対し浮上して移動するようにしてもよい。ビーム受け4の案内手段についても、他の公知技術を採用することが可能である。
【0041】
また、上記実施形態では台車3が直線のレール上を走行する構成としたが、レールを曲線状にしてもよく、或いはレールを無くしてもよい。さらに、この実施形態では、ビームを3分割し、フィンガが取り付けられている中間ビームのみを搬入、搬出する構成としたが、ビームを分割せずにトランスファプレス装置に取り付けられる状態のまま搬入、搬出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】ビーム搬送装置の正面図である。
【図2】ビーム搬送装置の平面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】図2のB−B断面図である。
【図5】図3のC部拡大図である。
【図6】ビーム搬出作業の動作を示す図その1である。
【図7】ビーム搬出作業の動作を示す図その2である。
【図8】ビーム搬出作業の動作を示す図その3である。
【図9】ビーム搬出作業の動作を示す図その4である。
【図10】ビーム分割部の1状態を示す断面図である。
【図11】ビーム分割部の異なる状態を示す断面図である。
【図12】ビーム分割部のさらに異なる状態を示す断面図である。
【図13】連結体の斜視図である。
【図14】図9のD−D断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 ビーム搬送装置
2 レール
3 台車
4 ビーム受け
30 ビーム
30a 中間ビーム
30b 右固定ビーム(右端部ビーム)
30c 左固定ビーム(左端部ビーム)
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスファプレス装置におけるフィンガ交換や金型交換の際、当該装置外へのビームの搬送及び当該装置内へのビームの搬入に使用するビーム搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
順次供給されてくる素材に多工程のプロセス加工を施すトランスファプレス装置(以下、「プレス装置」という。)は、平行に設けられた2本のビームに素材を保持するフィンガが互いに向き合わせて取り付けられており、2本のビームの動作によりフィンガにクランプされた素材が各工程の金型間を移動して、各工程で素材に所定の加工が施されるようになっている。このようなプレス装置では、加工方法や素材の大きさ、形状の違い等により金型交換やフィンガ交換を行う。その交換の仕方には、下記の二通りの方法があった。
【0003】
一つは、金型及びビームをこれらを取り付けたダイホルダーごとフィンガのクランプ方向に取り出し、さらにプレス装置外でビームをダイホルダー付属のビーム受けから外して、フィンガ交換または金型交換を行う方法である。
【0004】
もう一つは、プレス装置のビーム長手方向一端部からビームのみをプレス装置外へ取り出し、フィンガ交換はプレス装置の外部で行い、金型交換はプレス装置内部で行う方法である(例えば、特許文献1、2)。
【特許文献1】特公昭57−46929号公報
【特許文献2】実開昭62−20731号公報
【0005】
特許文献1に記載のものは、ビーム(フィードバー)の長手方向に沿って移動可能なスライドプレートに結合装置を介してビームの一端が着脱自在に連結されており、ビームとスライドプレートの連結を解除することにより、ビームをプレス装置の外部に取り出すようになっている。
【0006】
一方、特許文献2に記載のものは、ビーム(トランスファバー)が、駆動ユニット及び従動ユニットに取り付けられた端部ビームと、フィンガが取り付けられた中間ビームとに分割可能に構成され、フィンガ交換時には、中間ビームを一方の端部ビームから分割し、中間ビームと他方の端部ビームだけをプレス装置の外部に取り出すようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1、2は、いずれもビームの下面にラックが取り付けられ、このラックに噛み合うピニオンを手動もしくは電動で回転させることにより、ビームを搬送させるようになっている。ピニオンはプレス装置の固定位置に設けられているので、ビームの長さ分以上にビームを搬送させることができず、ビーム全体をプレス装置の外部に取り出すことが不可能である。このため、フィンガ交換作業をプレス装置の近傍で行わなければならなかった。特許文献2の図1に図示されているように、このフィンガを交換する位置には機器類が多くあり、作業が困難であった。
【0008】
そこで本発明は、プレス装置から取り外したビームを、フィンガ交換作業を容易に行える位置まで搬送することのできるビーム搬送装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明中、請求項1に記載のビーム搬送装置は、加工用素材を保持する複数対のフィンガが取り付けられたビームをトランスファプレス装置から装置外へ搬出する際や、トランスファプレス装置に取り付けるビームを当該装置内に搬入する際に使用するビーム搬送装置であって、トランスファプレス装置のビームの端部近傍の第一停車位置と該第一停車位置よりもトランスファプレス装置から遠い第二停車位置との間を移動可能な台車に、当該台車が前記第一停車位置に停車しているときにトランスファプレス装置の外部に位置する後退位置とトランスファプレス装置の内部に位置する前進位置との間を、ビームを保持して移動可能なビーム受けを設けたことを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項2に記載のビーム搬送装置は、加工用素材を保持する複数対のフィンガが取り付けられた中間ビームと、該中間ビームの両端部に着脱可能に連結された端部ビームとで構成されるビームを備えたトランスファプレス装置に設けられ、前記中間ビームを装置外へ搬出したり搬入したりする際に使用されるビーム搬送装置であって、前記中間ビームを一方の取り出し側へ移動させる移動手段と、該中間ビームの移動時に取り出し側の端部ビームを水平状態に保持して上方へ持ち上げる昇降装置とを設けたことを特徴としている。前記端部ビームの昇降装置としては、取り出し側の端部ビームの中間部に筒体が外嵌され、該筒体がトランスファプレス装置の昇降装置に回動自在に軸支されるとともに、該筒体の回動を規制する規制手段が設けられているものが好ましい。
【0011】
フィンガ交換時には、次に示す順でビームを搬送する。台車を第一停車位置に停車させた状態でビーム受けを前進位置まで移動させる。そのビーム受けにビームを載せる。ビームを載せたビーム受けを後退位置まで移動させる。台車を第二停車位置まで移動する。これにより、ビームがトランスファプレス装置から離れた第二停車位置に取り出される。フィンガ交換したビームをトランスファプレス装置へ搬入する場合は、上記と逆の動作を行う。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載のビーム搬送装置は、ビームをトランスファプレス装置から離れた第二停車位置に取り出すことができるので、フィンガの交換作業を安全かつ能率的に行えるとともに、フィンガの交換作業を行う位置をフィンガやビームの保管場所の近くに設定することにより、作業の短縮化を図れるようになった。この搬出装置は、全体が一体で形成された1本もののビームに対しても、複数の部材に分割された分割式のビームに対しても適用できる。
【0013】
請求項2に記載のビーム搬出装置は、フィンガが取り付けられた中間ビームを取り出す際に、該取り出し側の端部ビームを水平状態で持ち上げることができるので、中間ビーム取り出しの邪魔にならず、中間ビームを円滑に取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の一実施例の正面図、図2はその平面図、図3は図1のA−A断面図である。このビーム搬送装置1は、左右一対のレール2,2上を前後(図1、図2における左右方向)に走行する台車3と、該台車に対して前後に移動可能なビーム受け4とからなっている。
【0015】
台車3は、レール2,2に転動自在に係合する各一対の駆動輪(前輪)5,5及び従動輪(後輪)6,6を備えた四輪車両で、走行用モータ7の出力軸に取り付けたプーリ8と駆動輪の車軸5aに取り付けたプーリ9とに伝動ベルト10を掛けて、モータ7の駆動力で走行させるようにしている。一方の従動輪6の近傍には、アクチュエータ11aによって下方に突出させる位置決めピン11が設けられている。この位置決めピン11は、レール上の第一停車位置P1及び第二停車位置P2に台車3が停車するとき、下方に突出してレール2に形成された穴(図示せず)に挿入されて台車3の移動を規制するようになっている。
【0016】
台車3の上部は、ビーム受け4を摺動自在に支持するベッド13になっている。このベッド13は、前後方向の2本の走行路13a,13aを複数の連結フレーム13b,…で連結した構成で、各走行路13aの上面にはそれぞれ2本のH型レール14,14が平行に敷設されている。
【0017】
また、台車3の後部には、ビーム受け4の移動装置15が設けられている。この移動装置15は、図4及び図5に示すように、駆動ケース16内のスプロケット17に巻き掛けたローラチェーン18の一端をビーム受け4の底部にブラケット19を介して連結してあり、ビーム受け移動用モータ20でスプロケット17を回転させてローラチェーン18を駆動することによりビーム受け4を移動させるようにしている。なお、モータ20の回転力は図示しない減速装置を介してスプロケット17に伝達される。
【0018】
前記ローラチェーン18は、チェーンの両側にローラが設けられた市販のものを使用することができる。ローラチェーン18を案内するガイド21は、ローラチェーン18のローラ18a,18aが転動自在に嵌合する一対の溝型鋼からなり、前記連結フレーム13b,…により下側から支持されている。また、駆動ケース16内に配置されるガイド21の後部21aは図4に示す形状になっていて、ローラチェーン18をスプロケット17に約半周だけ掛け、ローラチェーン18のビーム受け4に連結されている側は前方に案内し、反対側は少しだけ斜め下向き前方に案内し、その先は下方に垂下させている。
【0019】
ビーム受け4は、前記ベッド13の走行路13a,13aに対応する一対の摺動部4a,4aと、両摺動部の後部を互いに連結する連結プレート4bとで構成されている。一対の摺動部4a,4aの間隔(中心間距離)は、後述する一対のビームのアンクランプ時における最大間隔(中心間距離)rと同一になっている。各摺動部4aの底面後部には、前記H型レール14に摺動自在に嵌合するスライドガイド23が、1本のHレールに付き前後2箇所ずつ計4箇所に取り付けられている。スライドガイド23としては、特許第2607993号公報に記載されている構成のもの(例えば、商品名「ボールリテーナTM入りLMガイド」)が好適である。
【0020】
連結プレート4bの裏面中央部には、前記ブラケット19が下向きに突出させて取り付けられている。また、各摺動部4aの上面前部には、後述する中間ビームに形成されている長穴32に嵌合するピン24が前後2箇所に設けられている。さらに、各摺動部4aの上面後部には中間ビームの搬出・搬入作業時に当該中間ビームを下から支えるローラ25が設けられている。
【0021】
ビーム搬送装置1は以上の構成である。ここで、このビーム搬送装置1が適用されるトランスファプレス装置のビームについて説明する。ビーム30は、図78、9に図示されているように、中間ビーム30aと左右の端部ビーム、すなわち、右固定ビーム30b、及び左固定ビーム30cからなり、それぞれが分離可能に連結されている。このようなビーム30が平行に2本設けられている。それぞれの中間ビーム30aには、図2に示すように、素材をクランプするためのフィンガ31が複数個互いに向き合わせて取り付けられている。また、中間ビーム30aの上面には、前記ピン24が嵌合する有効長さhの長穴32が前後2箇所に形成されている。
【0022】
中間ビーム30aと右固定ビーム30b、及び中間ビーム30aと左固定ビーム30cの連結部は、図10〜12に示す構成になっている。図は中間ビーム30aと右固定ビーム30bの連結部のみを表しているが、中間ビーム30aと左固定ビーム30cの連結部も同じ構成である。固定ビーム30bの端部には油圧シリンダ34が内蔵されており、そのピストン35のロッド35aが中間ビーム30a側に突出している。ピストンロッド35aの先端部には、大径のロッドヘッド35bが形成されている。ピストン35は、スプリング36により図における右方に付勢されている。一方、中間ビーム30aの端部には、図13に示すような上下に開口する箱型の連結体37が設けられている。この連結体37の端面には上端から中央部にかけて縦溝37aが形成されているとともに、両側部と下部に切欠き37b,…が形成されている。
【0023】
図10の状態は、連結体37の縦溝37aにピストンロッド35aが上から嵌り込み、ロッドヘッド35bが連結体37の中空部に位置している。その状態で、給排油口34aから油圧シリンダ34に油が供給されると、ピストン35が右方に摺動して、ロッドヘッド35bが連結体37の右内壁面37cに強く押し付けられる。これにより、中間ビーム30aと固定ビーム30bとが堅固に連結する。このとき、固定ビーム30bの端面に形成されている凸部が切欠き37b,…に係合して、両ビーム30a,30bがずれないようになっている。
【0024】
図10の状態で、給排油口34bから油圧シリンダ34に油が供給されると、図11に示すように、ピストン35が左方に摺動して、ロッドヘッド35bが連結体37の左内壁面37dを押し、中間ビーム30aを左方に移動させる。
【0025】
図11の状態から、給排油口34bからの油の供給を停止すると、図12に示すように、スプリング36の弾発力によりピストン35は少しだけ右方へ戻り、ロッドヘッド35bが連結体37の左内壁面37dから離れる。これにより、中間ビーム30aと固定ビーム30bとが完全に分離する。
【0026】
ビーム30は右昇降装置と左昇降装置とからなるトランスファプレス装置に付設のビーム昇降装置により昇降させられるようになっている。右側の端部ビームすなわち右固定ビーム30bには筒体(摺動筒)40が摺動自在に嵌合しており、その摺動筒40と右昇降装置の吊下げステー41とが支点42により回動自在に連結されている。また、左側の端部ビームすなわち左固定ビーム30cの端部に左昇降装置の吊下げステー43が支点44により回動自在に連結されている。このように、少なくとも片方の固定ビームをトランスファプレス装置の昇降装置に回動自在に取り付けることにより、左右の昇降装置の同期性が多少ずれたとしても、そのずれを吸収して、ビーム30を水平姿勢に保ったまま昇降させることができる。
【0027】
図14は右固定ビーム取付部の構成を示している。符合45は右昇降装置の吊下げステー41に取り付けられたシリンダ45で、そのピストンロッドの下端部に凸部45aが形成されている。摺動筒40に固定したブラケット46には、上記凸部45aが嵌合する穴46aが形成されている。上記シリンダ45を伸長させてブラケット46を固定することにより、端部ビームに外嵌された筒体(摺動筒40)の回動が規制され、端部ビームが水平状態で保持される。一方、左固定ビーム30cの下方には、該左固定ビームを支点44回りに回動させる回動シリンダ47が設けられている。
【0028】
以下、このビーム搬送装置の動作を説明する。図6は、ビーム搬送装置1が第二停車位置P2で待機している状態を表している。このとき、位置決めピン11がレール2の穴に挿入されて、台車3が移動しないようになっている。また、ビーム受け4は、後退位置P3に位置している。
【0029】
図7は、プレス作業が終了したときのビームの状態を表している。このときの両ビームの間隔は、アンクランプ状態の最大幅rになっている。金型もしくはフィンガを交換する場合は、プレス装置に設けられた搬出自動起動ボタンをONにすることにより、以下に示す一連の動作が自動的に行われる。
【0030】
最初に、ビーム昇降装置が同時に作動し、図7において2点鎖線で示すように、ビーム30をプレス作業時の位置からαだけ上昇させる。αは、中間ビーム30aを載置したビーム搬送装置1が上昇したビームに接触せず走行できるだけの高さである。
【0031】
ビーム30が上昇すると、アクチュエータ11aが作動して位置決めピン11がレール2の穴から抜けて、台車3が走行可能となる。そして、走行用モータ7が起動して、台車3が第一停車位置P1に向けて走行を開始する。第一停車位置P1に到達すると、台車3が走行停止するとともに、位置決めピン11がレールの穴に挿入されて台車3が移動しないように固定される。
【0032】
次いで、ビーム受け移動用モータ20が起動し、ビーム受け4が後退位置P3から前進位置P4に向けてベッド13上を移動する。ビーム受け4が前進位置P4までくると、移動停止する。このとき、ビーム受け4のピン24は、中間ビーム30aの長穴32の後端部直下に位置している。続いて、ビーム昇降装置が作動してビーム30がαだけ下降し、ピン24が長穴32に嵌合する。これにて、ビーム30がビーム受け4の摺動部4a,4aの上に載置される。図8がこの状態を表している。
【0033】
ビーム30がビーム受け4の摺動部4a,4aの上に載置されると、ビーム30が中間ビーム30a、右固定ビーム30b、及び左固定ビーム30cに分割される。中間ビーム30aと左固定ビーム30cとを分割する際、左固定ビーム30cは支点44を中心に回動するのを可能にするために、両ビーム30a,30cの間に隙間hが生じるように、左固定ビーム30cのピストンロッド35aが中間ビーム30aを右方に押す。同様に、右固定ビーム30bのピストンロッド35aも突出し、中間ビーム30aに対し右固定ビーム30bがhだけ右方に押される(図11参照)。結果的に、右固定ビーム30bは、下面をローラ25に支持されながら摺動筒40内を2hだけ右方へ移動する。これにより、穴46aが凸部45aの真下に位置するようになる。長穴32の有効長さがhであるので、長穴32とピン24の嵌合関係を保ちながら、中間ビーム30aはビーム受け4の摺動部4a,4a上を移動することが可能である。
【0034】
ビーム30の分割が完了すると、連結シリンダ45が突出作動して、凸部45aが穴46aに嵌合する。さらに、ビーム昇降装置が作動して、両固定ビーム30b,30cが上昇する。右固定ビーム30bは、水平状態を保ちながらαだけ上昇して、中間ビーム30aから分離する。一方、左固定ビーム30cは、回動シリンダ47が突出作動することにより、支点44を中心に上方に回動して、中間ビーム30aから分離する。図9がこの状態を表している。
【0035】
両固定ビーム30b,30cを中間ビーム30aから分離した後、ビーム受け駆動用モータ20が起動して、ビーム受け4が前進位置P4から後退位置P3へ移動する。次いで、アクチュエータ11aが作動して位置決めピン11がレール2の穴から抜ける。そして、走行用モータ20が起動して台車3が第二停車位置P2まで走行し、そこで停車する。停車後、位置決めピン11がレール2の穴に挿入され、台車3の移動が規制される。これにて、ビーム搬出作業が終了する。
【0036】
また、中間ビーム30aをプレス装置に搬入する場合は、長穴32の左端部にピン24が挿入された状態に中間ビーム30aをビーム受け4に載置してから、搬入自動起動ボタンをONにする。これにより、以下に示す一連の動作が自動的に行われる。
【0037】
最初に、右固定ビーム30b及び左固定ビーム30cを、プレス作業時の位置からαだけ上昇した位置に水平状態に保持する。その状態で、ビーム搬送装置1が第一停車位置P1まで走行する。停車後、中間ビーム30aを載せたビーム受け4が前進位置P4まで移動する。この時点で、中間ビーム30aと両固定ビーム30b,30cとの間には隙間がhだけ開いている。
【0038】
次に、両固定ビーム30b,30cがα下降し、該固定ビーム側の油圧シリンダ34のピストンロッド35aが中間ビーム側連結体37の縦溝37aに嵌り込む。連結シリンダ45は後退作動して凸部45aが長穴46aから抜ける。そして、固定ビーム30b,30cの油圧シリンダ34が収縮作動して、中間ビーム30aと固定ビーム30b,30cとが連結固定される。その際、中間ビーム30aは、長穴32とピン24との嵌合関係を保ちながら、左方へ距離hだけ移動する。また、右固定ビーム30bは、中間ビーム30aの移動距離hと、連結前の隙間hとの合計である距離2hだけ左方へ移動する。
【0039】
中間ビーム30aと固定ビーム30b,30cとが連結されたビーム30は、ビーム昇降装置によりαだけ上昇する。中間ビーム30aをトランスファプレス装置に引き渡したビーム搬送装置1は、ビーム受け4を後退位置P3へ戻すとともに、第二停車位置P2まで走行する。これにて、ビーム搬入作業が終了する。
【産業上の利用可能性】
【0040】
上記実施形態では、ビーム搬送装置1の車体を溝型鋼等の鋼材を組み合わせて構成しているが、台車3に対しビーム受け4が移動可能な構成であればこれに限定しない。ビーム受け4の移動方法としては、実施形態のローラチェーンを用いた構成に代えて、ベルトを用いた構成としてもよい。また、リニアモータを用い、ビーム受けが台車に対し浮上して移動するようにしてもよい。ビーム受け4の案内手段についても、他の公知技術を採用することが可能である。
【0041】
また、上記実施形態では台車3が直線のレール上を走行する構成としたが、レールを曲線状にしてもよく、或いはレールを無くしてもよい。さらに、この実施形態では、ビームを3分割し、フィンガが取り付けられている中間ビームのみを搬入、搬出する構成としたが、ビームを分割せずにトランスファプレス装置に取り付けられる状態のまま搬入、搬出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】ビーム搬送装置の正面図である。
【図2】ビーム搬送装置の平面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】図2のB−B断面図である。
【図5】図3のC部拡大図である。
【図6】ビーム搬出作業の動作を示す図その1である。
【図7】ビーム搬出作業の動作を示す図その2である。
【図8】ビーム搬出作業の動作を示す図その3である。
【図9】ビーム搬出作業の動作を示す図その4である。
【図10】ビーム分割部の1状態を示す断面図である。
【図11】ビーム分割部の異なる状態を示す断面図である。
【図12】ビーム分割部のさらに異なる状態を示す断面図である。
【図13】連結体の斜視図である。
【図14】図9のD−D断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 ビーム搬送装置
2 レール
3 台車
4 ビーム受け
30 ビーム
30a 中間ビーム
30b 右固定ビーム(右端部ビーム)
30c 左固定ビーム(左端部ビーム)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工用素材を保持する複数対のフィンガが取り付けられたビームをトランスファプレス装置から装置外へ搬出する際や、トランスファプレス装置に取り付けるビームを当該装置内に搬入する際に使用するビーム搬送装置であって、トランスファプレス装置のビームの端部近傍の第一停車位置と該第一停車位置よりもトランスファプレス装置から遠い第二停車位置との間を移動可能な台車に、当該台車が前記第一停車位置に停車しているときにトランスファプレス装置の外部に位置する後退位置とトランスファプレス装置の内部に位置する前進位置との間をビームを保持して移動可能なビーム受けを設けたことを特徴とするビーム搬送装置。
【請求項2】
加工用素材を保持する複数対のフィンガが取り付けられた中間ビームと、該中間ビームの両端部に着脱可能に連結された端部ビームとで構成されるビームを備えたトランスファプレス装置に設けられ、前記中間ビームを装置外へ搬出したり搬入したりする際に使用されるビーム搬送装置であって、前記中間ビームを一方の取り出し側へ移動させる移動手段と、該中間ビームの移動時に取り出し側の端部ビームを水平状態に保持して上方へ持ち上げる昇降装置とを設けたことを特徴とするビーム搬送装置。
【請求項3】
前記取り出し側の端部ビームの中間部に筒体が外嵌され、該筒体がトランスファプレス装置の昇降装置に回動自在に軸支されるとともに、該筒体の回動を規制する規制手段が設けられている請求項2に記載のビーム搬送装置。
【請求項1】
加工用素材を保持する複数対のフィンガが取り付けられたビームをトランスファプレス装置から装置外へ搬出する際や、トランスファプレス装置に取り付けるビームを当該装置内に搬入する際に使用するビーム搬送装置であって、トランスファプレス装置のビームの端部近傍の第一停車位置と該第一停車位置よりもトランスファプレス装置から遠い第二停車位置との間を移動可能な台車に、当該台車が前記第一停車位置に停車しているときにトランスファプレス装置の外部に位置する後退位置とトランスファプレス装置の内部に位置する前進位置との間をビームを保持して移動可能なビーム受けを設けたことを特徴とするビーム搬送装置。
【請求項2】
加工用素材を保持する複数対のフィンガが取り付けられた中間ビームと、該中間ビームの両端部に着脱可能に連結された端部ビームとで構成されるビームを備えたトランスファプレス装置に設けられ、前記中間ビームを装置外へ搬出したり搬入したりする際に使用されるビーム搬送装置であって、前記中間ビームを一方の取り出し側へ移動させる移動手段と、該中間ビームの移動時に取り出し側の端部ビームを水平状態に保持して上方へ持ち上げる昇降装置とを設けたことを特徴とするビーム搬送装置。
【請求項3】
前記取り出し側の端部ビームの中間部に筒体が外嵌され、該筒体がトランスファプレス装置の昇降装置に回動自在に軸支されるとともに、該筒体の回動を規制する規制手段が設けられている請求項2に記載のビーム搬送装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−181619(P2006−181619A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−380004(P2004−380004)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
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