説明

ビーム用のフィルタ材料を製造するための複合物、フィルタ材料用の複合物を製造するための方法、ビームをフィルタリングするための材料、および当該材料を含むオプトエレクトロニクス構成素子

本発明は、ビーム用フィルタ材料を製造するための複合物に関しており、この複合物にはシリコーンと、このシリコーンに拡散される少なくとも1つの着色剤とが含まれている。この複合物は、400nmと700nmとの間の波長のビームに対して20%以下の相対透過率を有しており、850nmと1025nmとの間の波長のビームに対して50%以上の相対透過率を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに記載されているのは、請求項1に記載されたビーム用フィルタ材料を製造するための複合物である。
【0002】
この出願は、ドイツ連邦共和国特許出願第10 2009 031 915.8号に優先権を主張し、この文献の開示内容は参照によってこの出願に取り入れられるものとする。
【0003】
電磁ビームを用いて、例えば送信ユニットから受信ユニットに対して行われるデータ伝送における広く一般的な問題は、例えば、データ伝送に利用される波長領域に隣接する波長領域の電磁ビームにより、障害が発生することである。
【0004】
本発明の実施形態の1つの課題は、上記のような障害を低減するかまた完全に回避することである。
【0005】
この課題は、請求項1に記載されたビーム用フィルタ材料を製造するための複合物によって解決される。上記の複合物の別の実施形態と、ビームをフィルタリングするための材料と、この材料を含むオプトエレクトロニクス構成素子と、フィルタ材料用の複合物を製造するための方法は、別の請求項に記載されている。
【0006】
本発明の別の1つの実施形態は、ビーム用フィルタ材料を製造するための複合物に関しており、これにはシリコーンと、このシリコーンに拡散される少なくとも1つの着色料とが含まれており、この複合物は、400nmと700nmとの間の波長のビームに対して20%以下の相対透過率を有しており、また850nmと1025nmとの間の波長のビームに対して50%以上の相対透過率を有する。
【0007】
ここで上記の相対透過率は、700nmないし1100nmの波長領域において得られる最大透過値(100%)を基準としている。
【0008】
着色剤用のマトリクス材料としてシリコーンを使用することは、他の材料に比べて有利であることが判明している。したがってシリコーンは、例えばエポキシ樹脂に比べていくつかの技術的な利点を有するのである。したがって780ないし1400nmの赤外線スペクトルのビームに対して、すなわちデータ伝送が行われる波長領域のビームに対して高い透過率を有する、例えばシリコーンを作製することができる。さらにシリコーンは、エポキシドと比べて、例えばUV光に対して高い光学的安定性を有する。これによってシリコーンは、エポキシ樹脂に比べて格段に小さい経年変化傾向を有するのである。軟らかいシリコーンを使用することにより、例えばシリコーンが被着される上記の構成素子への熱機械ストレスが低減され、これによってこの構成素子の劣化および経年変化が低減される。シリコーンの別の利点は、これが広い定温度使用領域をカバーすることである。この定温度使用領域は、標準シリコーンに対して約−40ないし+150℃の範囲にあるが、特殊シリコーンを使用することにより、例えば−70ないし+200℃に拡張することができる。この特殊シリコーンは、例えば、蒸留によって清浄化することができ、これによって揮発性シリコーンの割合は、例えば2重量%以下になる。しかしながら温度使用領域は、例えば安定剤の添加または側基のフッ素化によって高めることも可能である。
【0009】
エポキシ樹脂とは異なり、シリコーンは、加工ないしは硬化時に湿気の影響を受けにくい。これにより、例えばシリコーンの加工は比較的容易に行うことができる。シリコーンは、エポキシドに比べて一層有利な低い水分率特性を有する。
【0010】
上記の着色剤を適切に選択することにより、400nmないし700nmの波長領域の大部分をフィルタ除去することができる。これに対して上記の複合物は、850nmないし1025nmの波長領域に対して50%以上の透過率を有する。ここで相対透過率に対する値は、上記の複合物が700nmないし1100nmの波長領域において有する最大透過値(100%)を基準にしている。したがって例えば上記の複合物によってビーム入射窓をコーティングすることにより、例えば850nmと1025nmとの間の波長領域の電磁ビームを検出しようとする検出器を、障害となるビームから、例えば昼光から保護することができるのである。
【0011】
上記の着色剤は、拡散されてシリコーンに存在している。したがって着色剤はシリコーンにおいて溶けている必要はなく、有利には溶けることなくシリコーン内に存在するのである。着色剤は、例えば着色剤粒子としてシリコーン内に存在する。これにより、着色剤は上記の複合物において拡散作用を有する。上記の着色剤がシリコーン内に溶けずに存在することにより、上記の複合物の極めて薄い層(0.1μm)は、わずかなフィルタ作用しか有しないのである。
【0012】
別の1つの実施形態では、上記の着色剤はシリコーンにおいて均一に分散している。
【0013】
シリコーンにおいて上記の着色剤が均一に一様に分布していることにより、上記の複合物の均一な光学的な印象が得られ、また同時にこのことは上記の複合物から形成される層がその全面積にわたって均一な吸収特性を有するという前提条件でもある。したがってこの均一な分布は、上記の複合物からこのような層を作製する際の再現性に対する前提条件でもあるのである。
【0014】
しかしながら均一な粒子分布は、上記の複合物が、必ずしもアグロメレートフリーおよび集合体フリーでなければならないことを意味してはいない。本発明による複合物における均一性とは、上記の着色剤粒子が、個別粒子およびアグロメレートまたはこれらの混合物になり得ることを意味している。これらは十分に大きな体積要素で均一に分散しているため、観察者により、視覚的および微視的に色の均一性が知覚される。照射光または透過光により、不均一性を確認することはできない。
【0015】
これによって上記の構成素子において欠陥のない光学的機能が得られる。上記の粒子の着色剤粒子成分ならびにサイズ、形状および分布は、オプトエレクトロニクスの送信素子の近距離場特性および遠距離場特性に、ないしはその検出器感度に直接の影響を及ぼす。
【0016】
上記の粒子分布の均一性ならびに粒子サイズは、光学顕微鏡によって求めることができる。このためには上記の複合物を、例えばガラスプレートに被着して、別のガラスプレートによってカバーすることができる。
【0017】
相応する均一な分布を得るためには、所定の一連の方法ステップが必要であり、これらのステップを上記の製造方法に関連して説明する。さらに粒子サイズが小さいことは有利である。
【0018】
しかしながら上記の着色剤が部分的に溶けて存在している実施形態も考えることができる。これは、例えば上記の着色剤がシロキサン含有の側基を有する場合である。これによって上記の着色剤はシリコーンと相互作用を及ぼすことができるため、シリコーンにおいて着色剤が溶けることになる。
【0019】
上記の複合物の別の1つの実施形態において、上記の着色剤は、シリコーンにおいて200μm以下のサイズを有する粒子として拡散されて存在している。
【0020】
この関連において個別粒子ないしは個別粒子アグロメレートは、粒子として理解すべきである。これは200μm以下とすべきであり、球形、球状の粒子または不規則な形状をしたいわゆる薄片または小板では、最大直径を意味し、分布曲線から得られる平均サイズを意味しない。針状の粒子ではこれに相応して上記のサイズは最大の針の長さである。これによれば上記のサイズは平均サイズではないので、上記の粒子サイズは、顕微鏡下で求められる。
【0021】
有利には上記の粒子は、上記の複合物において50μm以下のサイズである。
【0022】
小さな粒子を使用することにより、シリコーンにおいて着色剤を広範囲かつ均一に分布させることができる。これにより、一様な光学的印象が得られ、または上記の複合物から形成された層のより一定な吸収特性が得られるのである。
【0023】
本発明の別の1つの実施形態では、400nmないし700nmにおける波長領域におけるビームを吸収しかつより波長の長い可視領域のビームを放射しない着色剤を使用する。
【0024】
本発明の別の1つの実施形態では、上記の複合物には以下から選択される少なくとも1つの色素が含まれる。すなわち、溶媒黄色179,溶媒黄色93,溶媒黄色114,溶媒橙色60,溶媒橙色107,溶媒赤色179,溶媒赤色135,溶媒赤色111,溶媒赤色195,溶媒赤色52,溶媒紫色36,溶媒紫色13,溶媒青色97,溶媒青色104,溶媒緑色3,溶媒緑色28から選択された少なくとも1つの着色剤が含まれる。
【0025】
着色剤ないしは着色剤の組み合わせを適切に選択することによって可能になるのは、400nmないし700nmの全波長領域をフィルタ除去することである。
【0026】
上記の複合物の別の1つの実施形態において上記の複合物には、以下を含む3つのグループIないしIIIのうちのそれぞれ1つからの少なくとも1つの着色剤が含まれる。すなわち、
I) 溶媒黄色179,溶媒黄色93,溶媒黄色114,溶媒橙色60,溶媒橙色107,溶媒赤色179,溶媒赤色135,溶媒赤色111,溶媒赤色195,溶媒赤色52,
II) 溶媒紫色36,溶媒紫色13,溶媒青色97、溶媒青色104,
III) 溶媒緑色3,溶媒緑色28
のうちのそれぞれ1つからの少なくとも1つの着色剤が含まれるのである。
【0027】
以下の表では上で説明した材料に対し、相応するCAS番号を示す。すなわち
【表1】

である。
【0028】
上記の着色剤を相応に組み合わせることにより、鮮明な吸収エッジを得ることができる。このことが意味するのは、上記の吸収しようとする波長領域、すなわちフィルタで除去しようとする波長領域と、高い透過を得ようとする波長領域との間にただ1つの極めて狭い波長領域が存在することである。この狭い波長領域において、上記の複合物によって拡がるビームと比較して、上記の複合物の透過特性が有利には跳躍的に増大するように、すなわちできるだけ急峻に、有利には最大50nmで、殊に有利には最大20nmの波長領域で増大するようにする。この領域において上記の相対透過率を数倍にし、例えば2倍に、有利に3倍にする。
【0029】
さらに上記の組み合わせにより、フィルタ領域全体にわたって良好な吸収度を得ることができる。個々の着色剤は、1つの狭い波長領域だけに対して良好な吸収度を有することが多いが、これに対して、例えば400nmないし700nmの1つの領域に対する複数の着色剤を組み合わせることにより、極めて良好なフィルタ作用を得ることができる。したがって上記の相対透過率は、着色剤を適切に選択することにより、上記のような広い波長領域を通して10%以下に維持することができる。
【0030】
上記の複合物の別の1つの実施形態において、この複合物には、上でグループIないしIIIに列挙した着色剤の3つよりも多くの着色剤が含まれる。
【0031】
着色剤の数をさらに多くすることにより、上記のビームが吸収される波長領域ないしは吸収エッジの急峻さをさらに改善して調整することができ、これによってその使用目的をさらに良好に調整することができる。
【0032】
上記の有機着色剤の他に上記の複合物には、付加的な無機着色剤を含むことができ、例えば、ベルリン青などの遷移金属錯体、Cu,Zn,Co,Mg,Feを有するフタロシアニン、ならびに金属ドーピングないしコーティングされた(Mn,EuまたはナノAl,ナノAu,ナノAg,ナノTiN)ケイ酸塩、アルミン酸塩、フッ化物、酸化物およびガラスである。
【0033】
別の1つの実施形態において上記の着色剤にはPbおよびCdが含有されていない。
【0034】
別の1つの実施形態において着色剤は、例えばZnフタロシアニンまたはCuフタロシアニンなどの有機金属化合物である。
【0035】
別の1つの実施形態において上記の複合物は、2重量パーセント以下の着色剤濃度を有する。
【0036】
一層高い濃度は、700nm以上の範囲の電磁ビームの透過度を下げてしまう可能性があり、ひいては送信器ないしは受信器領域における所要の感度および光学的な機能を損なってしまう可能性がある。さらに一層高い濃度は、比較的長い保管期間において上記の複合物における均一な着色剤粒子分散を損なってしまう可能性がある。
【0037】
上記の複合物の別の1つの実施形態において上記のシリコーンは、60℃ないし180℃の領域において熱硬化可能である。上記のシリコーンは、有利には100℃ないし150℃の領域において熱硬化可能である。
【0038】
上記の着色剤粒子は、例えば、第1のシリコーン成分に組み込むことができ、またこの場合にこの着色剤粒子は第2のシリコーン成分と共に熱硬化可能である。
【0039】
上記の複合物の別の1つの実施形態において上記のシリコーンは、室温において100mPasないし100,000mPasの範囲の粘度を有する。上記のシリコーンは有利には室温において、1,000mPasないしは40,000mPasの範囲の粘度を有する。
【0040】
このような粘度を有するシリコーンの利点は、これが、高い保管安定性を有することである。すなわち、このシリコーンに分布させた着色材料は、比較的長い保管期間の後も、シリコーンにおいて同じ空間的な分布を有し続けて、例えば、極めて低い粘度を有するシリコーンの場合のようには大きくは沈降せずまた保管容器の底部に集まることはないのである。これに対して比較的粘度の高いシリコーンでは、加工時、例えば射出成形時に、粘性が高いことによってさまざま困難が生じてしまうことがある。
【0041】
上記の複合物の別の1つの実施形態において、上記の複合物には、ジアルキルシリコーンおよび/または芳香族シリコーンが含まれる。
【0042】
したがって上記のシリコーンは、1成分シリコーンすなわち純粋なシリコーンとすることができるが、2成分シリコーンとすることも可能である。ここでは上記のシリコーンが2つ以上の成分を含む実施形態も考えられる。芳香族シリコーンを添加することにより、例えばシリコーン混合物の屈折率を増大させ、したがって上記の複合物の屈折率を増大させることができる。
【0043】
2成分シリコーンでは、上記の着色剤粒子を例えばまず第1の成分に組み込むこともでき、つぎにこれを第2の成分と混ぜる。しかしながら上記の着色剤粒子は、2つの成分に組み込むことも可能である。
【0044】
例えば1つまたは複数のアルキルグループが芳香基によって置換されたシリコーンでは、ないしはジアルキルシリコーンブロックおよびアリールアルキル主鎖要素ないしはジアリール主鎖要素を有する領域からなるシリコーンブロックポリマでは、屈折率を変更することができる。さらに溶媒耐久性および浸透特性ならびに接着耐久性を改善することできる。硬度およびEモジュールを高めることも可能である。
【0045】
架橋すべきハイブリット二重結合機能およびC−C−二重結合機能は、例えばそれぞれの鎖端部においてまたは側基に存在することができる。
【0046】
上記の複合物の別の1つの実施形態において上記の複合物は、1.4ないし1.48の範囲の屈折率を有する。
【0047】
別の1つの実施形態において上記の複合物の屈折率は1.50よりも大きく、これによって上記の電磁ビームが上記のシリコーンの境界面においてチップに移行する際の結合損失を最小化することができる。
【0048】
1つの実施形態において上記の複合物は、1.50ないし1.57の範囲の屈折率を有する。
【0049】
上記の複合物の別の1つの実施形態において上記の複合物は、付加架橋性のシリコーンを有する。
【0050】
ここでこれは例えば2つの成分のシリコーンとすることができ、そのうちの1つは、C−C二重結合を有しており、また別の1つはハイブリッド形である。したがってこれらの2つの成分間にヒドロシリル化を行うことができる。この場合の利点は、架橋時に付加複製物が発生しないことである。
【0051】
上記の複合物の別の1つの実施形態において上記の複合物には溶媒が含まれない。
【0052】
上記の着色剤がシリコーンに直接拡散することができることにより、ここでは溶媒の添加を省略することができる。これによって可能になるのは、上記のシリコーンが上記の着色剤を溶かすために使用される溶媒によって腐食させられ得るか否かにかかわらずこのシリコーンを選択することができることである。同様に上記の複合物を別に使用する場合、例えば上記の複合物を透明の基板に被着する場合にも、溶媒とこの基板との間の両立性に注意する必要がないのである。
【0053】
さらに加工時の膨張および縮小現象ならびに危機的な作業場所濃度による健康に害を及ぼす従業員暴露および爆発保護手段を考慮する必要がないのである。
【0054】
上記の複合物の別の1つの実施形態においてこの複合物にはエポキシドが含まれていない。これによってこの複合物は、上でシリコーンとエポキシドとの比較において説明した欠点を有しない。
【0055】
上記の複合物の別の1つの実施形態においてこの複合物にはエポキシドが含まれていない。この複合物は付加的にさらに1つのディフューザを含むことができる。このディフューザ材料は、例えばCaF2,SiO2,BaSO4,CaCo3,Al2O3,TiO2,ZrO2,ZnOから選択することができる。このディフューザは、上記の複合物において電磁ビームに関する散乱作用を有しており、したがって上記の複合物におけるその散乱を増大させるのである。
【0056】
さらに上記の複合物は付加的にさらに例えば高熱ケイ酸などの濃縮剤を含むことができる。上記の濃縮剤を介して、例えば上記の複合物の粘度を調整し、吸収層の沈殿および凝集作用特性を最小化し、光学的な場における所望のフィルタ作用をより一層均一に形成し、また散乱作用を最適化することができる。
【0057】
ここでは上記の複合物の他に、上で説明した複合物を硬化させることによって得られる材料についても特許保護が請求される。
【0058】
この複合物は、例えば1つの構成部分または例えば透明基板上の1つの層に硬化させることができる。1つの実施形態において上記の層厚は、1μmないし2mmの範囲にあり、有利には10μmないし1mmの範囲にある。ここでこの層厚を薄く選択し過ぎると、上記の層によってフィルタ除去しようとするビームうちの高い割合がこの層を通過して到達することにもなり得る。この層厚を厚く選択し過ぎると、これによって例えば、この層によってフィルタ除去しようとしていない程度の上記の電磁ビームの大き過ぎる割合が、この層によって吸収されてしまうことになる。
【0059】
上記の層は、例えばピクセル点またはストライプなどのパターン構造を有することも可能である。層厚の異なる複数の面を形成することも可能である。
【0060】
上記の形成した層は、例えばチップ素子またはアレイ装置などの感光性の構成部分を保護するのに使用することも可能である。
【0061】
本発明では、上記の複合物に加えて、この複合物を製造する方法についても特許保護が請求される。
【0062】
フィルタ材料用の複合物を製造するための1変形実施形態において上記の方法は、つぎの方法ステップ、すなわち、シリコーンを供給するステップA)と、
シリコーンを加熱するステップB)と、
ステップB)のシリコーンに着色材料を混ぜて拡散を発生させるステップC)と、
ステップC)の拡散を混ぜて混合物を生じるステップD)と、
ステップD)の混合物を加熱するステップE)と、
ステップE)の混合物を拡散して、フィルタ材料用の複合物を生じさせるステップFとを有しており、ここで上記の複合物は、400nmと700nmとの間の波長のビームに対して20%以下の相対透過率を有しており、850nmと1025nmとの間の波長のビームに対して50%以上の相対透過率を有する。
【0063】
上記の着色剤は、方法ステップA)において、例えば粉末、顔料または顆粒として供給することができる。上記の出発材料は、有利には容器で供給され、ここでこの容器には、SおよびNを含有する表面汚染がない。
【0064】
方法ステップB)のシリコーンは、有利には35℃ないし40℃の範囲の温度で加熱される。これにより、引き続いて上記の着色剤を容易に組み込むことができる。
【0065】
方法ステップD)における拡散は、例えば攪拌装置、3本ロールミルにより、または有利には溶解機プレートにより、20℃ないし80℃の温度および200ないし800RPMで1ないし8時間内でまたは一晩かけて行われる。上記の混合物は、300ないし600RPMの溶解機プレートにより、またはPendraulik攪拌機によって混合することができる。これは、例えば1時間の時間にわたって行うことができる。
【0066】
方法ステップE)では、例えば60℃と80℃との間の温度において炉で加熱することができる。これは、例えば2時間の時間にわたって行うことができる。
【0067】
方法ステップF)の拡散は、例えば2時間の時間にわたって行うことができる。
【0068】
シリコーンにおける着色剤の分布をさらに改善するため、上記の複合物を1600RPMないし2000RPMでミキサにおいて混ぜ合わせることができる。このためには、例えばSpeedMixer(登録商標)を使用することができる。例えば、それぞれ2分間の2つのステップにおいて混ぜ合わせることができる。択一的または付加的には3本ローラスチェア(Dreiwalzenstuhl)を用いた処理によって均一化することもできる。
【0069】
まだ比較的大きな着色剤アグロメレートが上記の複合物に存在している場合、これらのアグロメレートは、例えばフィルタプロセスによって分離することが可能である。これにより、上記の濾材の均一性を増大させる。このためには濾材の硬化を損なうか硬化を起こさせない材料を上記の複合物に放出しない濾過剤を使用することができる。
【0070】
例えば、50μmよりも大きなすべての着色剤アグロメレートをフィルタ除去するフィルタを使用することができる。
【0071】
上記の複合物における粒子ないしは着色剤アグロメレートの最大サイズは、200μm、有利には50μm、殊に有利には20μmを上回らないようにする。
【0072】
方法ステップD)における拡散は、例えば、攪拌または拡散方法により、有利にはビードミル、高速溶解機(Ultra-Turrax)、ローラ方式またはミキサ(例えばSpeedMixer(R))を介して混ぜ合わせることができる。ここでは上記のミキサを2000RPMの速度に到達させる。
【0073】
ここでは相応の装置の速度を有利には選択して、混合ないしは拡散ステップにおいて加えられる機械的な剪断力により、上記の1つまたは複数のシリコーンの分子構造が鎖分解反応によって可能な限りに変化しないかないし損傷されないようにする。
【0074】
方法ステップD)における混合は、有利には20℃ないし80℃の範囲の温度で行われる。熱硬化可能な1成分シリコーン系において上記の混合温度は有利には40℃を上回らない。
【0075】
上記の方法の別の1変形実施形態においてF)の複合物は、1つの面に被着されるため、1つの層が形成される。これは、付加的な方法ステップG)において行われる。
【0076】
上記の被着の前に上記の複合物にさらに1つの硬化剤を添加することができる。
【0077】
この層は、横方向のパターンならびに位置選択的なフィルタ作用を有することができる。
【0078】
上記の形成される層は、有利には10μmないし2mmの層厚を有し、殊に有利には100μmないし1mmの層厚を有する。このような層厚によれば、十分な吸収度が得られ、その際に上記の層を通って到達させようとする電磁ビームの部分が過剰に吸収されることはない。
【0079】
方法ステップF)における上記の複合物は、例えば流体フェーズからなる方法ステップG)においてディスペンサまたはジェットによって被着することができる。かしながら、例えばスクリーン印刷、タンポン印刷、スピンコーティング、スタンプ技術、浸し塗りまたはローラなどの技術も使用可能である。上記のスクリーン印刷またはジェット技術によれば、固有の幾何学構造(点、線、面)を作製することも可能である。
【0080】
したがって、例えば、基板の部分領域だけを所期のようにコーティングすることもできる。
【0081】
被着した層の硬化は、例えば、60℃ないし180℃の温度において、有利には100℃ないし150℃の温度において行うことができる。これは、例えばインラインプロセスにおいて行うことができ、ここでは上記の層はまず150℃で15分間硬化され、引き続いて後硬化プロセスにおいて別個の炉において150℃でさらに1時間、後硬化されるか、別のステップ(バッチプロセス)において、例えば150℃で1時間にわたって後硬化される。
【0082】
別の1つの方法変形実施形態において、上記の層は、その全面積において同じ吸収特性を有する。これは上記のシリコーンにおいて着色材料を均一に分布させることによって達成することができる。このような着色材料の均一な分布は、上で説明した混合技術によって達成することが可能である。
【0083】
本発明では、上記の複合物を硬化させることによって得ることの可能な材料の他に、このような材料を含むオプトエレクトロニクス構成素子についても特許保護が請求される。
【0084】
本発明の1つの実施形態は、850nmないし1025nmの波長領域の波長の電磁ビームを放射または吸収するオプトエレクトロニクス構成素子に関する。ここでこの構成素子のビーム路には、上記の複合物を硬化することによって得られる材料を含む層または構成部分が含まれている。
【0085】
この層または構成部分により、500nmと700nmとの間の波長の電磁ビームを十分にフィルタ除去することができ、その際に上記のオプトエレクトロニクス構成素子によって放射または吸収されるこれらの波長の電磁ビームの大部分が上記のフィルタによってフィルタ除去されてしまうことはない。したがって、例えば、上記のオプトエレクトロニクス構成素子が検出器である場合、400nmないし700nmの波長領域の障害ビームはフィルタ除去されるため、このビームによってこの検出器に不所望の信号が形成されることはないのである。
【0086】
上記のオプトエレクトロニクス構成素子の別の1つの実施形態において、上記の層または構成部分は、昼光フィルタである。したがってこのフィルタにより、障害となる昼光から上記の放射または吸収光学素子を保護することができる。
【0087】
オプトエレクトロニクス構成素子において上記の粒子は、例えば散乱粒子としても機能し、したがって、例えば、光の吸収によって得られかつ反射作用による周囲ビームからの障害信号に対する保護が増大されるため、暗騒音ないしは信号雑音比がさらに改善され、ひいては検出器の良度がさらに改善される。これに相応し、送信器側において、着色剤添加および粒子形状に依存して粒子散乱によって近距離場および遠距離場が最適化されるのである。
【0088】
以下では図面および実施例に基づいて本発明の変化形態をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】波長(λ)に対して相対透過率(Srel)をそれぞれプロットした2つの透過スペクトル(a−c)を示す図である。
【図2】フォトダイオードとして構成されたオプトエレクトロニクス構成素子の1つの実施形態の概略側面図である。
【0090】
図1には、3つの透過スペクトルaないしcが線図で示されており、ここでは相対透過率(Srel)がそれぞれ400nmないし1100nmの波長(λ)にわたってパーセントで示されている。ここで100パーセントは、この波長領域において達成される最も高い透過率を示しており、この透過率は、各曲線に対して得られたものである。
【0091】
これらの測定に対し、ビーム源としてBentem社の構成されたモノクロメータを使用した。受信器として、既知の感度を有するチップを1つのケーシングにポッティングする。ポッティング材料として、それぞれ測定すべき材料を使用した。
【0092】
ここで曲線aは、着色材料を添加していない純粋なシリコーンに対する相対透過率の経過を示している。曲線aは、400nmから約950nmの波長領域において単調に増大し、近似的に直線的に、すなわち同じ傾きで増大している。約950nmにおいて相対透過率最大値に到達した後、この曲線は、引き続きの経過において急峻に放物線状に降下しており、これはこの曲線が1100nmの波長領域において相対透過率に対する値のちょうど20%に到達するまで続けられる。
【0093】
曲線bには、複合物Zbに対する相対透過率の経過が示されている。ここで複合物Zbには、2成分のシリコーン系(Shin Etsu KJR 9022 E1)が98.4の質量含有率の割合で、橙色の着色材が0.08の質量含有率の割合で、紫色の着色剤が0.53の質量含有率の割り当て、第1の緑色の着色剤が0.20の質量含有率の割合で、また第2の緑色の直食材が0.19の質量含有率の割合で含まれている。
【0094】
図1からわかるように複合物Zbは、400nmないし700nmの波長領域においてほとんど透過率を有しないのも同然である。750nmないし900nmの波長領域において曲線bは急峻に放物線状に増大し、約950nmの波長において相対透過率の最大値に到達する。この最大値を通過した後、この曲線は、曲線aに類似して放物線状に急峻に減少する。
【0095】
曲線cは、複合物Zcの相対透過率を示している。ここで複合物Zcには、2成分のシリコーン系(Shin Etsu KJR 9022 E1)が98.2の質量含有率の割合で、橙色の着色材が0.17の質量含有率の割合で、紫色の着色剤が1.06の質量含有率の割り当て、第1の緑色の着色剤が0.40の質量含有率の割合で、また第2の緑色の直食材が0.37の質量含有率の割合で含まれている。
【0096】
曲線cも同様に400nmないし700nmの波長領域について実質的に相対透過率を有しない。750ないし900nmの波長領域において曲線cは、曲線bと同様に急峻に増大しているが、この曲線cの経過は、高い波長の方にややシフトしている。この曲線cもほぼ950nmの波長においてその相対透過率の最大値に達しており、この最大値の後、他の2つの曲線と同様に急峻に放物線状に減少している。
【0097】
図1からわかるように、適切な着色剤の組み合わせを添加することにより、400ないし700nmの波長領域において極めて良好なフィルタ機能を達成することができる。このフィルタ機能は、純粋なシリコーンでは、曲線aからわかるように得ることできないものである。複合物Zbも複合物Zcも共に急峻な吸収エッジを有しており、このことは、約750nmないし900nmの領域における2つの曲線の急峻な増大部において識別することができる。したがって複合物ZbおよびZcは、例えば昼光フィルタとして極めて適している。これらの複合物は、例えばオプトエレクトロニクス構成素子に使用可能であり、これらの構成素子は、例えば900ないし1000nmの波長領域の電磁ビームで動作する。
【0098】
図2には、フォトダイオードとして構成されたオプトエレクトロニクス構成素子の1つの実施形態の概略側面図が示されている。このフォトダイオードには昼光フィルタ1が含まれており、この昼光フィルタは、本発明で説明したように作製された材料からなる。昼光フィルタ1ならびに第1電気コンタクト2は、高濃度にpドーピングされたゾーン7に配置されている。高濃度にpドーピングされたゾーン7はその側面も下側も、pドーピングされたゾーン6によって包囲されている。このゾーンそれ自体の側面および下側にもnドーピングされたゾーン5が続いている。このnドーピングされたゾーン5は、高濃度にnドーピングされたゾーン4に載置されており、このゾーンそれ自体は第2の電気コンタクト3に配置されている。上記の上面の縁部領域には、誘電体8が設けられている。昼光フィルタ1によって濾波されない1波長の電磁ビームが、昼光フィルタの表面に当たると、ここでは例えばフォトン9として示されたこの電磁ビームは、昼光フィルタ1を通過して、高濃度にpドーピングされたゾーン7を通ってpドーピングされたゾーン6に到達する。この場合、フォトン9のエネルギにより、電荷分離が発生して電子10と正孔11とになる。電子10ないしは正孔11は、この構成素子の第2の電子コンタクトないしは第1の電子コンタクトまで移動し得る。荷電担体が移動することにより、上記の構成素子に電流が流れる。昼光フィルタ1によって阻止できるのは、昼光の波長領域の電磁ビームが入射することによってフォトンがフォトダイオードの内部に到達し、そこで電荷の分離により、望ましくない電流がトリガされ、したがって望ましくない暗信号がフォトダイオードにおいてトリガされることである。
【0099】
本発明は、実施例に基づく説明に制限されるものではない。むしろ本発明には、あらゆる新規の特徴ならびにこれらの特徴のあらゆる組み合わせが含くまれており、これには殊に特許請求の範囲に記載した特徴のあらゆる組み合わせが含まれる。このことはそのような特徴または組み合わせ自体が、特許請求の範囲あるいは実施例に明示的には記載されていないにしてもあてはまるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーム用フィルタ材料を製造するための複合物において、
該複合物には、
− シリコーンと、
− 当該シリコーンに拡散されている少なくとも1つの着色材とが含まれており、
前記複合物は、400nmと700nmとの間の波長のビームに対して20%以下の相対透過率を有しており、
850nmないし1025nmの波長のビームに対して50%以上の相対透過率を有することを特徴とする、
ビーム用フィルタ材料を製造するための複合物。
【請求項2】
700nmと850nmとの間にある波長のビーム用の前記複合物は、700nmにおける20%以下から850nmにおける50%以上に増大する相対透過率を有する、
請求項1に記載の複合物。
【請求項3】
前記着色剤は前記シリコーンにおいて均一に分散している、
請求項1または2に記載の複合物。
【請求項4】
前記着色剤は、前記複合物において200μm以下の粒子として存在する、
請求項1から3までのいずれか1項に記載の複合物。
【請求項5】
前記複合物は、溶媒黄色179,溶媒黄色93,溶媒黄色114,溶媒橙色60,溶媒橙色107,溶媒赤色179,溶媒赤色135,溶媒赤色111,溶媒赤色195,溶媒赤色52,溶媒紫色36,溶媒紫色13,溶媒青色97,溶媒青色104,溶媒緑色3,溶媒緑色28から選択された少なくとも1つの着色剤からなる、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の複合物。
【請求項6】
前記複合物には、3つのグループIないしIII
I) 溶媒黄色179,溶媒黄色93,溶媒黄色114,溶媒橙色60,溶媒橙色107,溶媒赤色179,溶媒赤色135,溶媒赤色111,溶媒赤色195,溶媒赤色52,
II) 溶媒紫色36,溶媒紫色13,溶媒青色97、溶媒青色104,
III) 溶媒緑色3,溶媒緑色28
1つずつのグループからの少なくとも1つの着色剤が含まれる、
請求項5に記載の複合物。
【請求項7】
前記シリコーンは、60℃ないし180℃の領域において熱硬化可能である、
請求項1から6までのいずれか1項に記載の複合物。
【請求項8】
前記複合物には、ジアルキルシリコーンおよび/または芳香族シリコーンが含まれる、
請求項1から7までのいずれか1項に記載の複合物。
【請求項9】
前記複合物には溶媒が含まれていない、
請求項1から8までのいずれか1項に記載の複合物。
【請求項10】
ビームをフィルタリングするための材料において、
請求項1から9までのいずれか1項に記載の複合物を硬化することによって得られることを特徴とする、ビームをフィルタリングするための材料。
【請求項11】
フィルタ材料用の複合物を製造する方法において、
A) シリコーンを準備するステップと、
B) 当該シリコーンを加熱するステップと、
C) ステップB)のシリコーンに着色材料を混ぜて拡散を発生させるステップと、
D) ステップC)の拡散を混ぜて混合物を生じさせるステップと、
E) ステップD)の混合物を加熱するステップと、
F) ステップE)の混合物を拡散して、フィルタ材料用の複合物を生じさせるステップとが含まれており、
ここで前記複合物は、400nmと700nmとの間の波長のビームに対して20%以下の相対透過率を有しており、850nmと1025nmとの間の波長のビームに対して50%以上の相対透過率を有することを特徴とする、
フィルタ材料用の複合物を製造する方法。
【請求項12】
G) ステップF)の複合物を表面に被着して層を形成する付加的なステップを有する、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記層は、その全面積にわたって同じ吸収特性を有する、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
850nmないし1025nmの波長領域の波長の電磁ビームを放射するかまたは吸収するオプトエレクトロニクス構成素子において、
当該構成素子は、請求項10に記載された材料を含む構成部分または層を前記ビーム路に有することを特徴とする
オプトエレクトロニクス構成素子。
【請求項15】
前記層または前記構成部分は、昼光フィルタである、
請求項14に記載の構成素子。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−532353(P2012−532353A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518898(P2012−518898)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059288
【国際公開番号】WO2011/003788
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D−93055 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】