説明

ビールの泡立て容器

【課題】ガスボンベなどの大掛かりな装置を必要とせず、クリーミーなビール泡を生成することができるビールの泡立て用具を提供する。
【解決手段】上面が開口したシリンダ容器10と、シリンダ容器10内を水密に上下動するヘッド部21を有して、ヘッド部21の中央には、上昇操作時に弁体が弁孔25から下方に離間してシリンダ容器10の注ぎ口51から注入されたビールをヘッド部21の下方空間に導入する一方、ヘッド部21の下降操作時には下方空間の加圧により弁体が上方に付勢されて閉弁する逆止弁26を設けると共に、逆止弁の弁孔25周囲には下方空間に導入されたビールをヘッド部21の下降操作時の加圧によりヘッド部21の上方に射出するビール射出孔27を複数設けたピストン20と、ヘッド部21の上方に設置され、ビール射出孔27から射出されるビールの衝突面33を有するドーナツ状の仕切り体30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビールを注いだグラス等に対して別途泡立てたビールの泡を盛り付ける容器に係り、容器内の微細な噴出口からビールを噴出して泡立てを行うビールの泡立て容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビールをグラスやジョッキに注いで飲む場合、泡を盛り付けることが味覚的にも視覚的にも好ましいとされるが、よりクリーミーな泡を生成するために、これまでミネラル水をビール液面に噴出するものや(特許文献1)、窒素ガスをビール中に噴出するもののほか(特許文献2)、密閉されたビール容器を一気に減圧し、キャビテーションによってビールを発泡させる装置(特許文献3)など、種々のものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−298461号公報
【特許文献2】特開2000−85894号公報
【特許文献3】特開2010−143625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のものは噴出したミネラル水がビールに混入することになり、ビールの成分や品質を維持する上で好ましくない。また、特許文献2のものは噴出する炭酸ガスや窒素ガスの圧縮ボンベが必要であり、手軽さに欠ける。これら問題を解決するためになされたのが特許文献3の装置であるが、この装置ではビール容器を一気に減圧するのにそれ相応の腕力が必要なことから、使用できる者が限定的であり、また、体力的に連続して何杯もの泡付けを行うことができないなど、実用性に問題がある。
【0005】
本発明は上述した課題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、ガスボンベなどの大掛かりな装置を必要とせず、誰もが手軽にクリーミーなビール泡を生成することができる用具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために本発明では、上面が開口したシリンダ容器と、このシリンダ容器内を水密に上下動するヘッド部を有して、当該ヘッド部の中央には、上昇操作時に弁体が弁孔から下方に離間して前記シリンダ容器の上面開口から注入されたビールを前記ヘッド部の下方空間に導入する一方、前記ヘッド部の下降操作時には前記下方空間の加圧により前記弁体が上方に付勢されて閉弁する逆止弁を設けると共に、この逆止弁の弁孔周囲には前記下方空間に導入されたビールを前記ヘッド部の下降操作時の加圧により前記ヘッド部の上方に射出するビール射出孔を複数設けたピストンと、前記ヘッド部の上方に設置され、前記ビール射出孔から射出されるビールの衝突面を有するドーナツ状の仕切り体とを備えるという手段を用いた。
【0007】
上記手段において、ビールを入れたシリンダ容器にピストンを押し込む操作(下降操作)を行うことで、ビールが加圧され射出孔から射出する。この射出中にビールは霧吹きのような状態となって泡立つのであるが、さらに、射出したビールが仕切り体のドーナツ板に衝突することで、よりきめ細かなビール泡が生成される。ドーナツ板は射出するビールがシリンダ容器の外に飛び散ることを防止する機能も果たしている。なお、生成されたビール泡は、別途ビールを注いだグラス等に移し替える。
【0008】
また、本発明ではヘッド部にビールの導入孔を形成し、この導入孔を弁孔として、自重で開弁する逆止弁を設けたので、ピストンを引き上げ操作(上昇操作)するだけで、シリンダ容器の上面開口から注入したビールをヘッド部の下方空間に移送することができる。つまり、ピストンをある程度押し下げた状態で上面開口からシリンダ容器にビールを入れ、その後、ピストンを引き上げれば、逆止弁が自重により開弁すると共に、ヘッド部の下方空間が負圧となって、ヘッド部の上にあるビールが導入孔を介して下方空間に吸引される。
【0009】
射出孔を上方に向かって徐々に縮径するように成形すれば、シリンダ容器内のビールを射出孔に導きやすく、また射出圧を大きくすることができて、よりクリーミーなビール泡を生成することができる。
【0010】
ピストンは押し棒によってヘッド部を上下摺動させる構成でもよいが、ヘッド部を安定して摺動させるために、ヘッド部を底として周壁を立ち上げた容器状であることが好ましい。
【0011】
また、ピストンの周壁の下部外周に大径の段差を設け、シリンダ容器の上部には中心孔周囲に前記段差が内側から係止して前記ピストンの上昇操作を規制する環状の抜け止めリングを着脱可能に設けることで、ピストンを引き上げる際に誤って抜けてしまうことを回避できる。
【0012】
容器状のピストンの場合はシリンダ容器内を摺動操作する際に力を入れにくいため、ピストンの周壁上部に、泡の注ぎ口を有するキャップを設けることが好ましい。
【0013】
なお、本発明においてビールとは、酒税法で定義されるビールや発泡酒の他、発泡性の醸造酒・リキュールなど、いわゆる第三のビールも含み、さらに、日本の法令に合致しない外国産であっても、社会通念上、ビールと認知されているものは含む。また、一般的に泡の粒径は小さいほうが風味がよく、消失しにくいという利点があるが、これはビールの温度や成分等によって異なるため、生成しようとする泡の粒径を限定するものではない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ヘッド部にビールの射出孔を設けたピストンを押し込むだけで、誰もが手軽にクリーミーなビール泡を生成することができる。また、ヘッド部に導入孔を形成し、この導入孔に逆止弁を設けることで、シリンダ容器からピストンを取り外さなくとも、ピストンを引き上げるだけでシリンダ容器にビールを充填することができる。しかも、ピストンの引き上げ操作によってビールが導入孔を通過する際に、ビールを予備発泡させることができ、その後、押し込み操作による射出工程と相まって、よりきめ細かなビール泡を得る可能性が高まる。さらに、射出孔を上方に向かって先細りに成形することで、わずかな力でビールを高圧に射出することができ、楽にクリーミーなビール泡を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第一実施形態に係るビール泡立て容器の断面図
【図2】同容器の逆止弁の分解断面図
【図3】同逆止弁の組立斜視図
【図4】同容器のピストンの平面図
【図5】同容器の仕切り体の平面図
【図6】同容器の組立手順を示す説明図
【図7】同容器の使用方法を示す説明図(ビールの注入工程)
【図8】同容器の使用方法を示す説明図(ビールの移送工程)
【図9】同容器の使用方法を示す説明図(ビールの泡立て工程)
【図10】同容器の使用方法を示す説明図(ビール泡の移し替え工程)
【図11】仕切り体の変形例を示す分解斜視図
【図12】同仕切り体を組み付けたピストンの断面図
【図13】本発明の第二実施形態に係るビール泡立て容器の断面図
【図14】同容器の使用手順を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1は第一の実施形態であり、10はシリンダ容器、20はシリンダ容器10内を上下に操作する容器状のピストン、30はピストン20の内部に設置した仕切り体、40はシリンダ容器10の上部に螺合したピストン20の抜け止めリング、50はピストン20の上部に螺合したキャップである。
【0017】
図1を中心に各部材の構成を詳述すると、まずシリンダ容器10は、下面を底板11によって閉塞する一方、上面を開口した有底筒状の容器であって、周壁12の上部外周面には抜け止めリング30を螺合する雄ネジ13を設けている。
【0018】
次にピストン20は、底板21の周囲から周壁22を立ち上げた容器状であって、周壁22を段差22aを介して大径下部22bと小径上部22cとで構成している。小径上部22cの上部外周面にはキャップ50が螺合する雄ネジ23を設けると共に、大径下部22bの外周にはシリンダ容器10の周壁12内部に水密に接するシールリング24を設けて、底板21がシリンダ容器10内を水密に摺動するように構成している。
【0019】
シールリング24によってピストン20のヘッド部として機能する底板21の中心には下面側を台形に穿孔して導入孔25を形成すると共に、この導入孔25を弁孔として逆止弁26を設けている。この逆止弁26は、図2・3に示すように、周囲にOリング26aを装着した断面台形状の弁体26bと、4つの羽根26cを十文字につないだ支持体26dとを連結して構成される。ここでは、支持体26dの軸部26eを弁体26bの上面に螺合して連結するようにしている。よって、この逆止弁26は、何の力も作用しないときは、弁体26bが自重によって下がり、導入孔25を開弁した状態となる。なお、Oリング26aは導入孔25に設けてもよく、さらにOリング26aを省略して、弁体26b全体またはその外周面を導入孔25の台形状部に弾性的に嵌入するゴムで成形してもよい。
【0020】
さらに、ピストン20の底板21において、導入孔25の周囲にはビールの射出孔27を上下貫通して設けている。この実施形態において射出孔27は、上方に向かって徐々に先細りとなるテーパ孔であり、図4に示すように、導入孔25の周囲に複数環状に設けている。ただし、射出孔27は上下同径に連続するストレートな孔であってもよい。
【0021】
仕切り体30は、ピストン20の内径と同径のドーナツ板31を天板として有する円筒状をなし、図5にも示すように、中心孔32の周囲をピストン20の射出孔27から射出されるビールの衝突面33としたものである。
【0022】
抜け止めリング40は、上面にピストン20の小径上部22cが挿通可能な中心孔41を有し、周壁の内周面にはシリンダ容器10の雄ネジ13と螺合する雌ネジ42を形成している。よって、抜け止めリング40の中心孔41周囲にピストン20の段差22aが内側から当接することによって、ピストン20の引き上げ位置を規制し、ピストン20が不用意にシリンダ容器10から抜け出さないようにしている。
【0023】
キャップ50は、注ぎ口51を形成した上面52から肩部53を介して筒胴部54を形成しており、筒胴部54の内周面にピストン20の雄ネジ23と螺合する雌ネジ55を設けている。
【0024】
上記の各パーツを組み立てて、本発明の泡立て容器となすには、図6に示すとおり、全てを分解した状態から(同図(a))、まずピストン20の導入孔25に上下分解された逆止弁26を連結して組み付け(同図(b))、このピストン20をシリンダ容器10に挿入した状態で抜け止めリング40をシリンダ容器10に螺合し(同図(c))、最後にピストン20にキャップ50を装着する。
【0025】
続いて、上記泡立て容器の使用方法を図7〜10に従って説明すると、まず初めに、ピストン20をシリンダ容器10の奥まで差し込んでおく(図7)。この状態では、ピストン20のヘッド部である底板21に設けた逆止弁26はシリンダ容器10の底板11と当接して上方に押し上げられ、導入孔25を閉弁している。そして、キャップ50の注ぎ口51からビールを注入すると、ビールBはピストン20内に貯留される。このとき注ぎ入れるビールBの量は、泡立てに必要な量でよく、目安としては実際にビールを飲もうとするグラス等の1/5〜1/4の量でよい。こうした適量を計るため、ピストン20の内周面には線などでマークMを設けておくことが好ましい。なお、ビールの注入時は、キャップ50を外しておく方が、マークMを確認しやすい。ただし、ピストン20は最初に奥まで下げておく必要はなく、図1に示すような中途の位置として、導入孔25を開弁した状態でビールを注入してもよい。
【0026】
適量のビールBを注ぎ終えたなら、図8に示すように、ピストン20を引き上げる。すると、ピストン20の底板21がシリンダ容器10の底板11から浮き上がり、逆止弁26が自重により開弁可能な状態となる。また、両底板11・21間に密閉の空間Kができるが、ピストン20の引き上げに伴って空間Kは負圧となるため、空間K側の吸引作用によってピストン20のビールBは導入孔25を介して空間Kに移動する。そして、ピストン20のビールB全部が空間Kに移送したことは、ピストン20の引き上げ重さが軽くなったり、音で認識できるため、その段階でピストン20の引き上げ操作を停めればよく、必ずしもピストン20を抜け止め規制位置まで引き上げる必要はない。なお、負圧の程度によっては射出孔27からも一部ビールBが空間Kに流入することがある。
【0027】
ピストン20の引き上げ操作の次は押し込み操作をする(図9)。このときキャップ50の肩部53を指で押し下げるようにすると、ピストン20を押し込み操作をしやすい。ピストン20を押し込み操作すると、ヘッド部(底板11+シールリング24)によって空間KのビールBに圧縮力が作用して加圧され、逆止弁26を閉弁して導入孔25を閉塞する一方、ビールBは導入孔25の周囲に設けた射出孔27から上方に向かって噴出する。そして、噴出したビールBはピストン底板21の上方に支持された仕切り体30のドーナツ板31に衝突し、発泡する。こうして生成されるビール泡Wは仕切り体30の内部に充満した後、中心孔32から外に溢出する。ピストン20の押し込み操作は、シリンダ容器10の奥まで完全に行うことが好ましい。注入したビール全部を泡立てるためである。
【0028】
最後に、図10から明らかなように、本容器を持ってキャップ50の注ぎ口51から別途グラスG等のビールにビール泡Wを注ぎ入れることによって、全ての作業が完了する。
【0029】
上述した作業の間、図7でビールBをピストン20に注入するとき、図8でビールBがピストン20からシリンダ容器10側に吸引されるときも、もちろんビールBは泡立つのであるが、そのときに生成されるビール泡は粒径が大きい。これを図9において射出孔27から仕切り体30に向けて噴射することで、本発明ではきめ細かなビール泡を生成することができるものである。
【0030】
図11・12は、仕切り体の変形例を示したもので、逆止弁26の上部構造である支持体26dの周囲にビールの衝突面33を形成すると共に、筒部を省略する代わりに軸部26eを伸ばして、逆止弁26が閉弁状態にあるとき前記衝突面33を図9と同じ高さ位置に支持するようにしたものである。
【0031】
図13は第二の実施形態を示したもので、本発明の最も基本となる構成を示したものである。つまり、この基本構成では、ピストン60を大幅に簡素化し、ヘッド部61と押し棒62のみで構成し、抜け止めリング40やキャップ50は割愛している。
【0032】
この第二実施形態では、ヘッド部61に導入孔や逆止弁がないため、図14に示すように、ピストン60をシリンダ容器10から抜き外して、適量のビールBをシリンダ容器70に注ぎ入れる(同図(a))。その後、ピストン60を押し込み操作することで、ヘッド部61の射出孔27から仕切り体30に向けてビールが噴射され(同図(b))、きめ細かなビール泡Wを生成することは上記第一実施形態と同様である。
【0033】
ところで、シリンダ容器その他の部材を透明の素材から成形すれば、泡の生成課程が外から見えるので、使用する者の遊び感覚も刺激することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の泡立て容器は、業務用として使用できるが、むしろ家庭用としてパーソナルユースに適しており、例えば、ビールメーカや量販店がビールをケース買いした個人客にノベルティ商品として提供するという利用方法がある。
【符号の説明】
【0035】
10 シリンダ容器
20 ピストン
21 底板(ヘッド部)
25 導入孔
26 逆止弁
27 射出孔
30 仕切り体
40 抜け止めリング
50 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口したシリンダ容器と、このシリンダ容器内を水密に上下動するヘッド部を有して、当該ヘッド部の中央には、上昇操作時に弁体が弁孔から下方に離間して前記シリンダ容器の上面開口から注入されたビールを前記ヘッド部の下方空間に導入する一方、前記ヘッド部の下降操作時には前記下方空間の加圧により前記弁体が上方に付勢されて閉弁する逆止弁を設けると共に、この逆止弁の弁孔周囲には前記下方空間に導入されたビールを前記ヘッド部の下降操作時の加圧により前記ヘッド部の上方に射出するビール射出孔を複数設けたピストンと、前記ヘッド部の上方に設置され、前記ビール射出孔から射出されるビールの衝突面を有するドーナツ状の仕切り体とを備えたことを特徴とするビールの泡立て容器。
【請求項2】
射出孔は上方に向かって徐々に縮径する請求項1記載のビール泡立て容器。
【請求項3】
ピストンはヘッド部を底として周壁を立ち上げた容器状である請求項1または2記載のビールの泡立て容器。
【請求項4】
ピストンの周壁の下部外周に大径の段差を設け、シリンダ容器の上部には中心孔周囲に前記段差が内側から当接して前記ピストンの上昇操作を規制する環状の抜け止めリングを着脱可能に設けた請求項3記載のビールの泡立て容器。
【請求項5】
ピストンの周壁上部に泡の注ぎ口を有するキャップを設けた請求項3または4記載のビールの泡立て容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−229048(P2012−229048A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99641(P2011−99641)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(509219073)株式会社リード (8)
【Fターム(参考)】