説明

ビール樽用フィッテング装置及びこれを備えたビール樽

【課題】ビール樽に傾斜した状態で衝撃が加わっても、樽内のビールが漏れ出すのを防止できるビール樽用フィッテング装置及びこれを備えたビール樽を提供すること。
【解決手段】コイルバネ9は、複数の脚部11の段部13に当接されるコイルバネ上面に、コイルワイヤーの端部において凹となる部分を有する。フィッテング1は、段部13が形成された脚部11を本体部10の外周に、フィッテングの水平面からの傾きに対して少なくとも2本の脚部で応力を分散可能に等間隔で5本以上設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビール樽に装着され、樽内のビールの注出を制御するビール樽用フィッテング装置及びこれを備えたビール樽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビール樽の口金にガスバルブを取り付け、ガスバルブから下方に向けてチューブを延ばすと共に、チューブ内にフィッテングを摺動自在に装着し、フィッテングの下部に嵌合されたコイルバネによりフィッテングをガスバルブに向けて付勢し、常態ではフィッテングをガスバルブに接触させてビール流路を塞ぎ、上方からの押圧操作によりフィッテングをガスバルブから離してビール流路が開くようになっているビール樽用フィッテングが、特開昭54−113522号公報(特許文献1)、意匠登録第750791号公報(特許文献2)等に開示されている。
【0003】
一般的に、ビール樽に装着されるフィッテングは、端面が閉じた連続する円周面を有し、ガスバルブに接離自在に当接する本体部と、コイルバネを嵌合するために本体部から一体に延びる複数の脚部とを備えたカップ形のものであって、脚部の間にビールの流路となる複数の開口部が形成されている。そして、上記従来のビール樽用フィッテングでは、脚部を本体部の外周に等間隔で3本或いは4本形成していた。
【0004】
【特許文献1】特開昭54−113522号公報
【特許文献2】意匠登録第750791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ビール樽に傾けた状態で衝撃が加わると、フィッテングを水平面に対して傾けようとする力が働くが、従来のフィッテングでは、ビール樽の傾斜方向によっては、3本又は4本の脚部がコイルバネの内周面に圧接されながらも、この中の1本の脚部に集中荷重が加わる場合がある。一方、コイルバネの上面は、円周方向に亘ってほぼ全面が水平に加工されているが、螺旋状に成形されたコイルの形状特性から、コイルワイヤーの端部において、僅かな長さではあるが、上面が凹となる部分がある。そこで前記の集中荷重が加わる1本の脚部が、たまたま上記コイルバネの凹となっている部分に当接・嵌合されている場合、衝撃によりフィッティングが傾き、このためガスバルブとフィッティングとの間に一瞬隙間が開いて、樽内のビールが漏れ出す虞があった。
【0006】
本発明の目的は、ビール樽に傾斜した状態で衝撃が加わっても、樽内のビールが漏れ出す心配のないビール樽用フィッテング装置及びこれを備えたビール樽を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係るビール樽用フィッテング装置は、端面が閉じた連続する円周面を有する本体部と、該本体部から延びた複数の脚部とを備え、前記複数の脚部の中間に段部が形成されたフィッテングと、前記フィッテングをガスバルブに向けて付勢するコイルバネとを含み、前記フィッテングの前記複数の脚部が前記コイルバネの内部に挿入されると共に前記複数の脚部の段部によって前記フィッテングが前記コイルバネに係止されたビール樽用フィッテング装置であって、上記課題を解決するために、前記コイルバネは、前記複数の脚部の段部に当接されるコイルバネ上面に、コイルワイヤーの端部において凹となる部分を有するものであり、前記フィッテングは、前記段部が形成された脚部を前記本体部の外周に、フィッテングの水平面からの傾きに対して少なくとも2本の脚部で応力を分散可能に等間隔で5本以上設けたものであることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係るビール樽用フィッテング装置は、端面が閉じた連続する円周面を有する本体部と、該本体部から延びた複数の脚部とを備え、前記複数の脚部の中間に段部が形成されたフィッテングと、前記フィッテングをガスバルブに向けて付勢するコイルバネとを含み、前記フィッテングの前記複数の脚部が前記コイルバネの内部に挿入されると共に前記複数の脚部の段部によって前記フィッテングが前記コイルバネに係止されたビール樽用フィッテング装置であって、上記課題を解決するために、前記コイルバネは、前記複数の脚部の段部に当接されるコイルバネ上面に、コイルワイヤーの端部において凹となる部分を有するものであり、前記フィッテングは、前記複数の脚部を5本とし、かつ前記本体部の外周に等間隔で設けられたものであることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係るビール樽用フィッテング装置は、請求項1又は請求項2に係るビール樽用フィッテング装置において、前記少なくとも2本の脚部のうちの1つの脚部に当接する前記コイルバネの上面が凹となる部分となっていても、他の1つ脚部で応力を支えることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に係るビール樽用フィッテング装置は、請求項1乃至請求項3のうちの何れか1つに記載のビール樽用フィッテング装置において、前記複数の脚部の段部が嵌合する前記コイルバネの上面が全面水平に加工されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のうちの何れか1つに記載のビール樽用フィッテング装置を備えたビール樽である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ビール樽が傾斜した状態で落下して衝撃が加わっても、少なくとも2本の脚部が衝撃力に対抗するため、フィッテングが正常な位置から大きくずれて、ガスバルブとフィッテングとの間に隙間が開き、この隙間から樽内のビールがこぼれるのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示すように、ビール樽2は、その注出口に設けられたガスバルブ8と、ガスバルブ8からビール樽2の内部に延びてビールの流路を構成するチューブ6と、チューブ6内に摺動自在に収納されたフィッテング1と、フィッテング1をガスバルブ8に向けて付勢するコイルバネ9とを備える。ビール樽2の注出口には、口金3が取り付けられると共に、口金3の内周面に筒状の取付部材4が螺合されている。
【0014】
取付部材4の内周中間部には、上に行くに従って内側に傾斜する弁座5が周方向に沿って形成され、この弁座5の下方において取付部材4の内部に、円環状のガスバルブ8が弁座5に対して接離自在に設けられている。ガスバルブ8の下部には、チューブ6の上端が外嵌固定されると共に、これらのチューブ6及びガスバルブ8が、バネ7によって上方の弁座5に向けて付勢されている。そして、常態では、ガスバルブ8がバネ7の付勢力によって弁座5に圧接され、ガス流路が閉鎖している。また、ガスバルブ8の内周下端には、下に行くに従って外側に傾斜する弁座14が形成されている。
【0015】
チューブ6の内部には、オーステナイト系ステンレス鋼等の金属を素材とするフィッテング1が摺動可能に収納される。フィッテング1は鋳物製品として製造される従来タイプに加え、板体をプレス成形しても製造することができる。フィッテング1は板体をプレス成形した方が、製造コストが鋳物製品に比べて格段に廉価となり、好ましい。
【0016】
また、フィッテング1は、その下部に外嵌されたコイルバネ9によりガスバルブ8に向けて付勢され、常態では、ガスバルブ8の弁座14に圧接されて、ビールの流路が閉鎖されている。図1及び図2に示すように、フィッテング1は、ガスバルブ8の弁座14に当接可能なキャップ状の本体部10と、本体部10の外周に一体に、且つ、周方向に等間隔で形成された5本の脚部11とを有する。なお、本明細書においては、実施の形態として脚部11は5本のものを例示しているが、脚部11は5本に限定されるものではなく、5本以上であればよい。
【0017】
本体部10の頂部端面は、平坦面15が形成されて閉じており、平坦面15に続いて外方に凸に湾曲する肩部16が形成されて、連続した円周面となっている。脚部11は本体部10の肩部16から下方に向けて(ビール樽2の内部方向に)延び、脚部11の間にはビールの流路となる開口部12がそれぞれ形成されている。さらに、脚部11の中間部に段部13が形成され、この段部13より下方が表面側に僅かに凸に湾曲している。そして、段部13より先の小径部分がコイルバネ9の内部に挿入され、その段部13と湾曲によってコイルバネ9に係止されるようになっている。
【0018】
ビールを注出する場合は、取付部材4に装着された図示しないディスペンスヘッドを操作すると、ガスバルブ8が押し下げられて弁座5から離れ、この結果、ガス流路が開放されて、ガス圧によりビール液が加圧される。同時に、フィッテング1が押し下げられてガスバルブ8の弁座14から離れ、ガス圧によってチューブ6内を上昇したビールが、フィッテング1の開口部12及びフィッテング1とガスバルブ8との間隙を通過してディスペンスヘッド側に送り出される。操作を中断すると、コイルバネ9の付勢力によってフィッテング1が押し上げられ、フィッテング1の本体部10とガスバルブ8の弁座14とが接触して、ビールの流路が閉鎖される。
【0019】
運搬中等にビール樽2が傾いた状態で落ちると、水平面に対してフィッテング1の中心軸がずれようとする。すると、フィッテング1の脚部11の一部が、段部13の下方において、チューブ6によって規制されたコイルバネ9の内周上面に強い力で押圧される。ところが、フィッテング1の脚部11は本体部10の外周に等間隔で5本設けられているので、ビール樽2の傾き方向がどちらであっても、フィッテング1の少なくとも2本の脚部11に応力が伝わり、仮に1本の脚部11の段部13より下方において、コイルバネ9の上面との間に隙間があっても、他の1本によって応力を支えることになるので、フィッテング1が傾くのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るビール樽用フィッテング装置の使用状態の要部断面図である。
【図2】フィッテングの側面図である。
【図3】フィッテングの上面図である。
【図4】フィッテングの下面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 フィッテング
2 ビール樽
3 口金
4 取付部材
5 弁座
6 チューブ
7 バネ
8 ガスバルブ
9 コイルバネ
10 本体部
11 脚部
12 開口部
13 段部
14 弁座
15 平坦面
16 肩部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面が閉じた連続する円周面を有する本体部と、該本体部から延びた複数の脚部とを備え、前記複数の脚部の中間に段部が形成されたフィッテングと、前記フィッテングをガスバルブに向けて付勢するコイルバネとを含み、前記フィッテングの前記複数の脚部が前記コイルバネの内部に挿入されると共に前記複数の脚部の段部によって前記フィッテングが前記コイルバネに係止されたビール樽用フィッテング装置において、
前記コイルバネは、前記複数の脚部の段部に当接されるコイルバネ上面に、コイルワイヤーの端部において凹となる部分を有するものであり、前記フィッテングは、前記段部が形成された脚部を前記本体部の外周に、フィッテングの水平面からの傾きに対して少なくとも2本の脚部で応力を分散可能に等間隔で5本以上設けたものであることを特徴とするビール樽用フィッテング装置。
【請求項2】
端面が閉じた連続する円周面を有する本体部と、該本体部から延びた複数の脚部とを備え、前記複数の脚部の中間に段部が形成されたフィッテングと、前記フィッテングをガスバルブに向けて付勢するコイルバネとを含み、前記フィッテングの前記複数の脚部が前記コイルバネの内部に挿入されると共に前記複数の脚部の段部によって前記フィッテングが前記コイルバネに係止されたビール樽用フィッテング装置において、
前記コイルバネは、前記複数の脚部の段部に当接されるコイルバネ上面に、コイルワイヤーの端部において凹となる部分を有するものであり、前記フィッテングは、前記複数の脚部を5本とし、かつ前記本体部の外周に等間隔で設けられたものであることを特徴とするビール樽用フィッテング装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のビール樽用フィッテング装置において、前記少なくとも2本の脚部のうちの1つの脚部に当接する前記コイルバネの上面が凹となる部分となっていても、他の1つ脚部で応力を支えることを特徴とするビール樽用フィッテング装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうちの何れか1つに記載のビール樽用フィッテング装置において、前記複数の脚部の段部が嵌合する前記コイルバネの上面が全面水平に加工されていることを特徴とするビール樽用フィッテング装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のうちの何れか1つに記載のビール樽用フィッテング装置を備えたビール樽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−341931(P2006−341931A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−208533(P2006−208533)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【分割の表示】特願2000−75798(P2000−75798)の分割
【原出願日】平成12年3月17日(2000.3.17)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【出願人】(591036996)フジテクノ株式会社 (31)
【Fターム(参考)】