説明

ピペットチップの収納方法

【課題】ピペッティング装置上の使用済みのピペットチップを収納する容器を小型化するためのピペットチップ収納方法を提供する。
【解決手段】ピペットチップを収納する方法において、ピペットチップを収納容器の導入部へ移動させる工程と、このピペットチップの少なくとも一部を切断する工程と、切断されたピペットチップを収納容器に取り込む工程と、取り込まれたピペットチップに次に取り込まれるピペットチップを積み重ねる工程とを有する収納方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペットチップを使用するピペットを備えた装置において、ピペットチップを収納する方法に関する。さらに詳しくは、使用済みのピペットチップをコンパクトに収納する方法およびその構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ピペッティング装置は公知であり、典型的には、比較的少量の所定量の液体を吸引し且つマイクロプレート、深穴ブロック等のようなプレートのウェル内へ所定量供給するために、研究所及び病院等で使用されている。ピペッティング装置を用いて供給される液体の例としては、血液、その他の生物学的試料、溶剤、試薬等がある。ピペッティング装置では、吸引する液体と接する箇所の洗浄の手間を省くため、ピペットチップを装着する形態のものは、一般的に用いられている。この形態の装置では、上記の液体の一部又は全部が、一般的には、一組のプレート又は液体のリザーバからピペッティング装置の吸引によってピペットチップを介して抜き取られ、ピペットチップ内に保持され、続けて他のプレートのウェル内へと供給される。
【0003】
ピペットチップを装着するピペッティング装置では、使用済みのピペットチップを収納するために、ピペットチップのラックと別個に置かれた廃棄容器を備えた構成の装置が広く使用されている。この構成の装置では、使用済みのピペットチップは廃棄容器に一時的に収納され、廃棄容器内にある程度溜まった時点でまとめて廃棄される。その際、廃棄容器は、コンタミネーション防止のために洗浄した後、再利用されるか、使用済みのピペットチップと共に廃棄されている。
【0004】
廃棄容器に関して、特許文献1ではピペッティング装置上に着脱可能で、汚染防止用のカバー等で覆うことが可能な廃棄箱が開示されている。また、特許文献2及び特許文献3では、使用後のピペットチップを収納する廃棄容器と溶液を採取するために使用するピペットチップを、複数個配列させることのできるカートリッジ部を一体的に備えた廃棄トレイ付きチップカートリッジが開示されている。
【0005】
また、特許文献4ではピペットを使用した自動分析装置が開示されている。
【特許文献1】特開2005−61957号公報
【特許文献2】特開平09−127128号公報
【特許文献3】特登録03569779号公報
【特許文献4】特開昭62−276466
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ピペッティング装置上の使用済みピペットチップの収納容器を小型化するためのピペットチップ収納方法、及びこの収納方法を用いるピペッティング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1の発明は、ピペットチップを収納する方法において、
(a)ピペットチップの少なくとも一部を切断する工程と、
(b)前記切断により得られるピペットチップの変形能を利用して、複数の前記切断されたピペットチップをより近接して重ね合わせる工程と、
(c)前記切断されたピペットチップを所定の収納域に収納する工程と、
を有することを特徴とするピペットチップの収納方法である。
【0008】
本発明に係る第2の発明は、ピペッティング装置において、
ピペットチップを着脱可能なピペットを備えたヘッドと、
該ヘッドを移動させるヘッド移動手段と、
ピペットチップ収納容器と、
前記ピペットチップの少なくとも一部を切断する手段と、
前記切断されたピペットチップを収納容器に収納する手段と、
前記切断により得られるピペットチップの変形能を利用して、複数の前記切断されたピペットチップをより近接して重ね合わせる手段と、
を有することを特徴とするピペッティング装置である。
【0009】
本発明にかかる第3の発明は、ピペットチップを着脱可能なピペットを備えたヘッドと、該ヘッドを移動させるヘッド移動手段と、を有するピペッティング装置に用いるピペットチップ収納容器において、
ピペットチップをそのノズル端から取り込む収納口と、該ピペットチップを切断する切断部と、該ピペットチップを先に収納されたピペッとチップに積み重ねて収納する収納部とを有し、
前記収納口と、前記切断部と、前記収納部と、を直列に接続して、前記ピペットチップがそのノズル端を先端とした状態を維持して移動可能な通路を形成したことを特徴とするピペットチップ収納容器である。
【0010】
本発明にかかる第4の発明は、反応容器を設置可能な反応ユニットと、検体処理用の試薬を収容する複数の凹部を有する試薬容器の設置台と、上記構成のピペッティング装置と、を有することを特徴とする生化学検査装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ピペッティング装置において、使用後のピペットチップを収納する容器を小型化することができる。また、決められた大きさの収納容器の場合、より多くのピペットチップを収納することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のピペットチップを収納する方法は、次の工程を有する。
(a)ピペットチップの少なくとも一部を切断する工程。
(b)切断により得られるピペットチップの変形能を利用して、複数の切断されたピペットチップをより近接して重ね合わせる工程。
(c)切断されたピペットチップを所定の収納域に収納する工程。
【0013】
工程(a)において、ピペットチップが切断される領域は、ピペットチップの側面であって、少なくともピペット装着口端の縁部が含まれる必要がある。また、ピペットチップの切断方向は長手方向(ピペットチップの流路方向)であることが好ましい。工程(a)による切断領域はピペットチップの側面全てであることが好ましいが、少なくとも一部切断されていればよい。これは重ね合わされる工程により、重ね合わされた外側のピペットチップがさらに裂け、最終的に側面全長に渡って切断されることが可能であるからである。また切断箇所は複数でなく一箇所であっても問題ない。このように切り離されることによりチップ側面を変形させることが可能となり、切り離されたピペットチップ側面を外側に開いて伸ばすこともできる。チップ側面を外側に開いて、内側に他のピペットチップを重ね合わせる方法を、切断された複数のピペットチップについて繰り返すことで、複数のピペットチップを重ねる合わせることができる。このように重ね合わせることで、単位体積あたりの収容できるピペットチップの数を増やすことができ、集積的な収納を可能とする。ここで、工程(b)と工程(c)の順序は前後してよい。つまり、複数の切断されたピペットチップを重ね合わせた後に所定の収納域に収納してもよいし、収納域に収納された後にピペットチップを重ね合わせてもよい。さらに一つの好ましい実施形態では、工程(b)と工程(c)とを同時に行うことができる。また、収納域は、収納されたピペットチップを保持する領域である。例えば、ピペットチップ長さ以上の高さを有し、導入部となる収納口を有する収納容器を収納域として好適に用いることができる。
【0014】
本発明のピペットチップの収納方法を用いるピペッティング装置は、
ピペットチップを着脱可能なピペットを備えたヘッドと、
ヘッドを移動させるヘッド移動手段と、
ピペットチップ収納容器と、
ピペットチップの一部を切断する手段と、切断されたピペットチップを前記収納容器に収納する手段と、切断により得られるピペットチップの変形能を利用して、複数の切断されたピペットチップをより近接して重ね合わせる手段と、を有する構成である。一つの実施形態では、ヘッド移動手段の操作により、ピペットに装着されたピペットチップを、ピペットチップ切断手段に押し付けてもよく、収納容器に収納してもよく、あるいは複数の切断されたピペットチップを近接して重ね合わせてもよい。
【0015】
本発明の収納方法の一実施形態では、次の工程を有する。
(1)ピペットチップを収納容器の導入部へ移動させる工程。
(2)ピペットチップの少なくとも一部を切断する工程。
(3)切断されたピペットチップを収納容器内に取り込む工程。
(4)前記収納容器内に取り込まれたピペットチップに、前記(1)乃至(3)の工程を経た別のピペットチップを先に収納されたピペットチップ内に次に収納されたピペットチップが挿入された状態で積み重ねる工程。ここで、ピペットチップの切断される領域はピペットチップの側面全てであることが好ましいが、少なくとも一部が切断されていればよい。これは重ね合わされる際に、積み重ねるチップに押されることにより、積み重ねられる側のチップの切断面が広がり(裂け)、これが繰り返されることにより、最終的に全て切断された状態で収容することができるからである。積み重ねられた側のチップの側面が全て切断されれば、積み重ねるチップは、積み重ねられる側のチップのピペット装着口まで積み重ねることが可能である。その場合、積み重ねた高さはほぼピペットチップの高さと同じになり、積み重ねた幅はほぼ(チップの外径+チップの厚み×(積み重ねた数−1)となる。このように収納容器に積み重ねることによりピペットチップの側面が全て切断されるためには、ピペット装着口端の縁部を含むピペットチップの側面が長手方向にピペットチップ全長の1/3以上切断されることが好ましい。
【0016】
工程(3)において、ピペットチップのノズル端(先端部)を下に、ピペットへの装着口側端部(基端部)を上にして前記収納容器に取り込まれる場合、ピペットチップが倒れたり、あるいは傾いたりしないように収納されることが好ましい。そのためには、少なくとも水平方向への動きが規制されていることが望ましい。また、最初に収納部に収納されたピペットチップはその位置に固定されていることが、後から段積みされるピペットチップを先に収納されたピペットチップに押し込む上で好ましい。
【0017】
本発明の収納方法は、次のような構成のピペッティング装置において好適に実施できる。すなわち、ピペットチップを着脱可能なピペットを備えたヘッドと、このヘッドを移動させるヘッド移動手段と、ピペットチップを切断する切断部と、切断されたピペットチップを収納するピペットチップ収納容器とを有するピペッティング装置である。この装置では、本発明の収納方法の工程(1)については、ヘッド移動手段によるヘッドの移動により、ヘッドに備えられたピペットが装着するピペットチップを収納容器の導入部に移動させることができる。収納方法の工程(2)については、例えば、ピペットチップ収納容器が切断部を備えている場合、ヘッド移動手段によるヘッドの移動により、ピペットチップが収納容器に備わる切断部に押されて、ピペットチップを切断することができる。それ以外にもピペッティング装置がヘッド移動手段と独立して、ピペットチップを切断部に押し付ける押付け手段を有し、これにより切断部に押し付けて切断してもよい。さらに別の切断方法として、ピペットチップが脱離されて収納容器に収納された後に、切断部をピペットチップに押し付けて切断してもよい。切断されたピペットチップは、自動的にピペットから脱離する場合もあるが、ピペットチップを脱離させるピペットチップ脱離手段をピペッティング装置が有し、これによりピペットチップを脱離してもよい。脱離手段として例えば図8に示す、リムーバー17を備えた機構がピペッティング装置本体に取り付けられ、ピペットが上昇することによりピペットチップを下に押し出して脱離することができる。この脱離は下記の収納容器を用いる場合は、ピペットチップが収納口で切断され収納部内に押し込まれた後に行うことができる。
さらに、本発明の収納方法の工程(4)については、ヘッドの移動により、ピペットを介して、収納容器内に取り込まれたピペットチップを先に取り込まれているピペットチップに押して積み重ねることができる。
【0018】
また、ピペッティング装置は、未使用のピペットチップを設置するためのピペットチップラックを有していてもよい。
【0019】
上記のピペッティング装置に配するピペットチップ収納容器として、ピペットチップを取り込む収納口と、ピペットチップを切断する切断部と、ピペットチップを積み重ねて収納する収納部とを、直列に接続してピペットチップの通路を形成した構成を有するものが好適に用いられる。
この通路を、ピペットチップがそのノズル端を先頭とした状態を維持して移動可能な広さで形成することで、切断部へのピペットチップの所定部の当接が可能となる。また、先に収納された切断済みピペットチップの装着口内への次に収納される切断済みピペットチップのノズル端からの挿入も可能となる。更に、この通路を直管状とし、その内壁面によりピペットチップの側面の位置を規制可能とする構造とすることでピペットチップの移動経路をほぼ直線状として、更に効果的な切断と積み重ねを行うことが可能となり、かつ収納容器のコンパクト化も達成できる。
【0020】
ここで、切断部はピペットチップのピペット装着口端の縁部を含んで長手方向に切断するような構成であることが好ましい。
【0021】
収納部を鉛直方向に伸びる筒状に設ける場合には、収納部はピペットチップの先端部を下に基端部を上にして取り込まれたピペットチップを倒さず保持し、かつ積み重ねて収納できる水平方向での広さを有していることが好ましい。例えば、収納部を筒状として、切断刃が設けられた収納口に接続することで、直管状の通路を形成し、この通路の断面をピペットチップの最大外径の部分の断面よりも僅かに大きくしておくことで上述のピペットチップの通路内での位置規制が容易となる。例えば、ピペットチップ最大外径部分と収納部断面は10mm乃至20mmの隙間を有するように設定することができる。
収納部を筒状として形成した場合の軸方向に交差する(例えば直交する)断面の形状は、三角形、四角形、五角形、六角形などの多角形、円形、楕円形などとすることができる。
【0022】
収納口は、ピペットチップの収納を容易とする形状を有していればよく、ピペットチップの最大外径よりも大きな直径の円形が好ましい。この場合、例えば、ピペットチップ最大外径部分と収納口との隙間を、1mm乃至10mmの範囲で設定することができる。また、収納口は、収納部よりも狭いことが好ましい。収納口が円形である場合は、収納部のピペットチップの移動方向に直行する断面よりも収納口を小さく設定する。例えば、収納部が、断面が正方形の筒状である場合には、収納口の直径を、収納部の断面の正方形の一辺の長さよりも僅かに小さくする。また断面が長方形であれば短辺の長さよりも収納口の直径を小さくする。このように収納口の径を収納部の仕切り幅よりも小さくすることにより、収納部内で積み重ねられたピペットチップの径が拡がり、収納口より大きくなることでチップが容器外に出ないようにすることができる。
【0023】
収納口を複数有する場合は、各収納口に対して、同様に倒れず、かつ積み重ねられる広さを有する収納部を仕切りにより収納口と同じ数で設けた構造が好ましい。
また、収納容器は、底部を開放自在な構成として、収納部内に段積みしたピペットチップを収納部がいっぱいとなった段階で収納部から抜き取り、収納容器を再利用する形態であってもよい。このような構成とする場合は、コンタミネーションを防止するために、定期的に洗浄、殺菌等の処置を施すことが望ましい。
【0024】
さらに本発明は、上記のような構成を有するピペッティング装置を備えた生化学検査装置も包含する。すなわち、本発明の生化学検査装置は、反応容器を設置可能な反応ユニットと、検体処理用の試薬を収容する複数の凹部を有する試薬容器の設置台と、上記構成のピペッティング装置とを有する構成である。この生化学検査装置は、検体を含む溶液を収容する検体容器を設置するための設置台を更に有していてもよい。この生化学検査装置は、核酸断片、DNA、オリゴヌクレオチドまたはタンパク質からなる群から選択された少なくとも1種を含む検体を用いた遺伝子検査に好適に利用できる。
【0025】
ピペットチップの一般的な形状は、基端部と先端部を有する長手の中空管状体であって、基端部にピペットとの装着口を有し、先端部に液体を吸引・排出する口を有する。ピペットチップの中空管状体は、例えば、円柱体、円錘体およびその一部、さらには求心方向に曲線的に傾斜した長手方向断面を持つ形状の管状体などで構成され、基端部から先端部に向かって径が小さくなっている。このような一般的な形状を有するピペットチップであれば、本発明の収納方法は適用することができ、よって、市販されているピペットチップであれば問題なく適用することができる。
また、材質としてPP(ポリプロピレン)が用いられた一般的なピペットチップに本発明の収納方法は好適に用いることができるが、シリコンなどでコーティング処理されたものや、そのほかの材質であっても問題ない。さらにフィルター付のチップであっても、本発明の方法が適用可能である。
【0026】
2つのピペットチップにおいて、一方のピペットチップの装着口に他方のピペットチップの先端部を挿入して重ねる場合、前者のピペットチップの装着口の内径と後者のピペットチップの外側面の径が同じとなる円周で接するまで挿入することができる。ピペットチップの側面の厚さ等にもよるが、例えばピペットチップが円錘形の形状よりも、基端部が円柱体を有する形状のほうが、重ならない領域が大きいため、本発明の収納方法による切断が有効となる。よって、本発明の収納方法は、どのような形状のピペットチップにも特に限定なく利用することができるが、特に円柱体部分を多く含む形状のピペットチップに好適に利用できる。
【実施例】
【0027】
以下、図面に基づいて本発明にかかる実施例について説明する。
(実施例1)
図1は本発明の実施例に係る容器の構造を説明する斜視図である。ピペットチップ収納容器は、ピペットチップを容器へ収納するための収納口(1)が設けられた収納口プレート(2)とピペットチップを積み重ねて収納する収納部(3)で構成されている。収納口(1)の内側にはピペットチップを切断するための刃がピペットチップの通路内へ突出して複数備えられた切断部(4)が設けられている。収納口プレート(2)は収納部(3)と着脱可能である。収納部(3)の内部は、ピペットチップが倒れずに積み重ねて収納できる広さで収納口(1)と同じ数に仕切壁により仕切れらている。また、ピペットチップ収納容器(16)の高さは、ピペットチップ収納容器の収納口への移動の際のピペットに装着したピぺットチップ先端が位置する高さより低くなっている。
【0028】
図2は本発明の実施例に係る容器の収納口及び切断部の斜視図、図3は収納口及び切断部の上面図である。本実施例では、収納口(1)の内側の切断部(4)は、刃の枚数を4枚で刃の長さが長い切断部と刃の枚数が4枚で刃の長さが半分の切断部、さらに、刃の枚数が2枚で刃の長さ半分の切断部3種類を示している。
【0029】
上記のピペットチップ収納容器により、ピペットチップを切断して積み重ねることで使用済みのピペットチップをコンパクトに収納することが可能である。また、ピペッティング装置上では使用済みのピペットチップの収納容器として小型化することが可能である。
【0030】
(実施例2)
図4は本発明の実施例に係るピペットチップを積み重ねて収納する手段を説明する斜視図である。ピペッティング装置はその用途に応じて、マイクロチューブからマイクロチューブへ、あるいはウェルプレートへ分注する場合、1つの検体を複数の容器(マイクロチューブやウェルプレートなど)に分注する場合など、多くのバリエーションがある。ここでは、マイクロチューブに含まれる検体溶液をウェルプレートに分注する装置を例に挙げて説明する。ピペット(5)をピペットチップラック(14)に設置されているピペットチップ(6)へ移動させる。ピペット(5)を降下させてピペットチップ(6)を装着する。この場合ピペット(5)は、不図示の機構によってX軸、Y軸、Z軸に可動である。また、不図示の機構によって検体溶液を吸引あるいは吐出が可能である。ピペット(5)を上昇させ、ピペットチップ(6)を装着したピペット(5)をマイクロチューブ設置容器に設置されているマイクロチューブ(13)へ移動させる。ピペット(5)を下降させ、マイクロチューブに含まれる検体溶液を吸引する。ピペット(5)を上昇させ、ウェルプレート(12)へ移動させる。ピペット(5)を下降させ、ピペットチップ(6)の検体溶液をウェルプレート内に吐出する。ピペット(5)を上昇させ、ピペットチップ(6)を廃棄するための収納容器(16)の収納口(1)へ移動させる(図5)。ピペット(5)を下降させ、ピペットチップ(6)を収納口(1)に備えられた切断部(4)により切断する(図6)。さらに、ピペット(5)を下降させ、切断したピペットチップ(6)を外し、収納容器(16)へ収納する。切断されたピペットチップ(6)は収納容器(16)内に固定され保持される。この際、ピペットチップを収納する容器の収納口の内径がピペットチップを収納する収納部の水平方向の断面よりも小さいことが望ましい。例えば、図1に示すような水平方向の断面が長方形の収納部の場合は、収納口の直径を、この長方形の短辺(仕切り幅)よりも短く設定する。そのように設定することで、収納されたピペットチップは収納部と仕切り壁によって、次のピペットチップを積重ねることができる状態に固定することができる。
【0031】
ピペットチップを積み重ねて収納する場合、再び使用したピペットチップ(6)を収納口(1)に備えられた切断部(4)により切断した後、さらに、ピペット(5)を下降させ、容器(16)へ収納する。以上により、切断されたピペットチップは容器(16)内で積み重ねられる。切断したピペットチップ(6)を外し、ピペット(5)を上昇させる。分注を繰り返し行う場合は、再びピペット(5)をピペットチップラック(14)に設置されているピペットチップ(6)へ移動させる。
【0032】
以上より、マイクロチューブに含まれる検体溶液をウェルプレートに繰返し分注した場合、使用したピペットチップは、容器中に積み重ねられることで、コンパクトに収納できるため、ピペッティング装置上でピペットチップ収納容器を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例に係るピペットチップ収納容器の構造を説明する斜視図である。
【図2】本発明の実施例に係る収納口及び切断部の斜視図である。
【図3】本発明の実施例に係る収納口及び切断部の上面図である。
【図4】本発明の実施例に係るピペットチップを積み重ねて収納する手段を説明する斜視図である。
【図5】本発明の実施例に係るピペットチップを収納する容器へ移動手段を示す図である。
【図6】本発明の実施例に係るピペットチップを切断する手段を示す図である。
【図7】本発明の実施例に係るピペットチップを積み重ねる手段を示す図である。
【図8】本発明の実施例に係るピペットチップをピペットから脱離するための機構の例を示す図である。(a)は脱離前の状態。(b)は脱離時の状態。
【符号の説明】
【0034】
1 収納口
2 収納口プレート
3 収納部
4 切断部
5 ピペット
6 ピペットチップ
11 ピペッティング装置
12 ウェルプレート
13 マイクロチューブ
14 ピペットチップラック
15 マイクロチューブ設置容器
16 ピペットチップ収納容器
17 リムーバー
18 ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペットチップを収納する方法において、
(a)ピペットチップの少なくとも一部を切断する工程と、
(b)前記切断により得られるピペットチップの変形能を利用して、複数の前記切断されたピペットチップをより近接して重ね合わせる工程と、
(c)前記切断されたピペットチップを所定の収納域に収納する工程と、
を有することを特徴とするピペットチップの収納方法。
【請求項2】
前記(b)および(c)の工程が、同時に行われる請求項1に記載のピペットチップの収納方法。
【請求項3】
ピペットチップを収納する方法において、
(1)ピペットチップを収納容器の導入部へ移動させる工程と、
(2)前記ピペットチップの少なくとも一部を切断する工程と、
(3)前記切断されたピペットチップをそのノズル先端から前記収納容器内に取り込む工程と、
(4)前記収納容器内に取り込まれたピペットチップに、前記(1)乃至(3)の工程を経た別のピペットチップを、先に収納されたピペットチップ内に次に収納されたピペットチップが挿入された状態で積み重ねる工程と、
を有することを特徴とするピペットチップの収納方法。
【請求項4】
ピペッティング装置において、
ピペットチップを着脱可能なピペットを備えたヘッドと、
該ヘッドを移動させるヘッド移動手段と、
ピペットチップ収納容器と、
前記ピペットチップの少なくとも一部を切断する手段と、
前記切断されたピペットチップを収納容器に収納する手段と、
前記切断により得られるピペットチップの変形能を利用して、複数の前記切断されたピペットチップをより近接して重ね合わせる手段と、
を有することを特徴とするピペッティング装置。
【請求項5】
ピペッティング装置において、
ピペットチップを着脱可能なピペットを備えたヘッドと、
該ヘッドを移動させるヘッド移動手段と、
ピペットチップ収納容器と、を有し、
前記収納容器が、ピペットチップをそのノズル端から取り込む収納口と、該ピペットチップを切断する切断部と、該ピペットチップを先に収納されたピペットチップに積み重ねて収納する収納部とを有し、
前記収納口と、前記切断部と、前記収納部と、を直列に接続して、前記ピペットチップがそのノズル端を先端とした状態を維持して移動可能な通路を形成したことを特徴とするピペッティング装置。
【請求項6】
前記ヘッドの移動により、前記ピペットに装着されたピペットチップが、前記収納容器の導入部へ移動することを特徴とする請求項5に記載のピペッティング装置。
【請求項7】
前記ヘッドの移動により、前記ピペットに装着されたピペットチップの前記切断部への押し付けにより前記切断が行われることを特徴とする請求項5または6に記載のピペッティング装置。
【請求項8】
前記ヘッドの移動により、前記ピペットが、前記収納容器内に取り込まれたピペットチップを、先に前記収納容器内に取り込まれたピペットチップに押し込んでこれらの積み重ねが可能となることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載のピペッティング装置。
【請求項9】
前記ピペットチップ収納容器が、該収納容器内に最初に取り込まれたピペットチップの固定手段を有することを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載のピペッティング装置。
【請求項10】
前記収納容器内に仕切りを設けて、ノズル端を下に装着口を上にして取り込まれたピペットチップを倒さず保持でき、かつ積み重ねて収納できる幅で、前記収納口と同じ数に仕切られた収納部を形成したことを特徴とする請求項5乃至9のいずれかに記載のピペッティング装置。
【請求項11】
前記収納容器が有する収納口が、前記収納部の仕切られた幅より狭いことを特徴とする請求項10に記載のピペッティング装置。
【請求項12】
ピペットチップを着脱可能なピペットを備えたヘッドと、該ヘッドを移動させるヘッド移動手段と、を有するピペッティング装置に用いるピペットチップ収納容器において、
ピペットチップをそのノズル端から取り込む収納口と、該ピペットチップを切断する切断部と、該ピペットチップを先に収納されたピペッとチップに積み重ねて収納する収納部とを有し、
前記収納口と、前記切断部と、前記収納部と、を直列に接続して、前記ピペットチップがそのノズル端を先端とした状態を維持して移動可能な通路を形成したことを特徴とするピペットチップ収納容器。
【請求項13】
前記切断部が、前記ヘッドの移動により、前記ピペットに装着されたピペットチップの該切断部への押し付けにより前記切断を行うことを特徴とする請求項12に記載のピペットチップ収納容器。
【請求項14】
前記ヘッドの移動により、前記ピペットが、前記収納容器内に取り込まれたピペットチップを、先に前記収納容器内に取り込まれたピペットチップに押し込んでこれらの積み重ねが可能となることを特徴とする請求項12または13に記載のピペットチップ収納容器。
【請求項15】
前記ピペットチップ収納容器が、該収納容器内に最初に取り込まれたピペットチップの固定手段を有することを特徴とする請求項12乃至14のいずれかに記載のピペットチップ収納容器。
【請求項16】
前記収納容器内に仕切りを設けて、ノズル端を下に装着口を上にして取り込まれたピペットチップを倒さず保持でき、かつ積み重ねて収納できる幅で、前記収納口と同じ数に仕切られた収納部を形成したことを特徴とする請求項12乃至15のいずれかに記載のピペットチップ収納容器。
【請求項17】
前記収納容器が有する収納口が、前記収納部の仕切られた幅より狭いことを特徴とする請求項16に記載のピペットチップ収納容器。
【請求項18】
反応容器を設置可能な反応ユニットと、
検体処理用の試薬を収容する複数の凹部を有する試薬容器の設置台と、
請求項4乃至11のいずれかに記載のピペッティング装置と、
を有することを特徴とする生化学検査装置。
【請求項19】
前記検体が、核酸断片、DNA、オリゴヌクレオチドまたはタンパク質からなる群から選択された少なくとも1種を含み、遺伝子検査に用いられることを特徴とする請求項18に記載の生化学検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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