説明

ピペリジノン化合物の製造法および製造中間体

【課題】 フェニル酢酸アルキルを原料にして、不安定な中間体を経由することなく3−フェニル−4−ピペリジノン化合物を製造することができる簡便な製造法の提供。
【解決手段】 式(I):
【化1】


[式中、R1は水素原子または保護基を示す。]で表される化合物の塩酸塩またはp−トルエンスルホン酸塩、およびその製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペリジノン化合物の製造法およびその製造中間体に関する。さらに詳しくは、フェニル酢酸アルキルを原料にして、不安定な中間体を経由することなく3−フェニル−4−ピペリジノン化合物を製造する方法に関する。本発明により、医薬、農薬、あるいは多くの汎用化学品の製造中間体としての3−フェニル−4−ピペリジノン化合物の簡便な製造法を提供する。
【背景技術】
【0002】
3−フェニル−4−ピペリジノン化合物としては、これまでに0.5シュウ酸塩およびフリー体としてのみ知られている。
例えば、特許文献1には、下記の反応式による合成法が記載されている。
【0003】
【化1】

【0004】
この方法では、フェニル酢酸エチルを出発原料にしてシュウ酸ジエチルと反応させて得た2−オキソ−3−フェニルスクシン酸ジエチルナトリウム塩とホルムアルデヒドからアトロピン酸エチルを合成した後に、β−アラニンメチルエステルと反応させ、3−アミノ−N−(2−メトキシカルボニルエチル)−2−フェニルプロピオン酸エチルを得て、さらに閉環させて3−フェニル−4−ピペリジノンをフリー体として得ている。さらに、これに、シュウ酸を加えて3−フェニル−4−ピペリジノンの0.5シュウ酸塩を得ている。
特許文献1では、さらに、β−アラニンメチルエステルの代わりにN−メチル−β−アラニンエチルエステルを用いることによって、1−メチル−3−フェニル−4−ピペリジノンのフリー体を油状物として得ている。
しかしながら、これらの製法の場合には、2−オキソ−3−フェニルスクシン酸ジエチルナトリウム塩およびアトロピン酸エチルが不安定な化合物であるという問題点、3−フェニル−4−ピペリジノン化合物のフリー体の安定性がよくないという問題点、製造の工程数が多く操作が煩雑であるという問題点、および閉環反応の際に取り扱いが困難である水素化ナトリウムを用いているという問題点が存在した。
【0005】
上記の3−フェニル−4−ピペリジノン化合物からは、種々の3−フェニル−4−置換ピペリジン化合物に容易に導くことができる。
例えば、特許文献1によると、3−フェニル−4−ピペリジノン化合物を還元反応により3−フェニル−4−ピペリジノール化合物に変換後、フルオロベンゼン化合物と水素化ナトリウムと反応させて3−フェニル−4−フェノキシピペリジン化合物を合成し、および/または3−フェニル−4−ピペリジノール化合物とN−フェニルチオフタルイミドとトリ−n−ブチルホスフィンとを反応させて3−フェニル−4−フェニルチオピペリジン化合物を合成している。
【特許文献1】米国特許第4,312,876号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のごとく、公知の3−フェニル−4−ピペリジノン化合物を製造する方法の課題としては、不安定な中間体を経由しない合成経路を適用することが望ましく、また取り扱いが困難な試薬を用いない方がより望ましい。
本発明の目的は、医薬、農薬、あるいは多くの汎用化学品の製造中間体として有用な種々の3−フェニル−4−ピペリジノン化合物を、効率よく製造することである。
すなわち、本発明の1つの目的は、製造法を変更することにより不安定な中間体を経由することなく、3−フェニル−4−ピペリジノン化合物を製造可能にすることである。
また、本発明のもう1つの目的は、取り扱いが困難である水素化ナトリウムの代替試薬を利用可能にすることである。
さらには、3−フェニル−4−ピペリジノン化合物を安定な塩として提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、一つ目の課題に対しては、中間体としてエナミノ化合物を経由する合成経路を確立することにより、3−フェニル−4−ピペリジノン化合物を安定な収率および品質で製造できることを見出した。
また二つ目の課題に対しては、ナトリウムtert-ブトキシドを室温以下で反応させることで水素化ナトリウムの代替試薬として利用できることを見出した。
かかる知見に基づき、さらに検討を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、
[1] 式(I):
【0009】
【化2】

【0010】
[式中、R1は水素原子または保護基を示す。]で表される化合物の塩酸塩またはp−トルエンスルホン酸塩;
[2] 3−フェニルピペリジン−4−オン塩酸塩またはp-トルエンスルホン酸塩の結晶;
[3] 式(II):
【0011】
【化3】

【0012】
[式中、R1は水素原子または保護基を、R2およびR3はそれぞれ同一または異なって置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物またはその塩を
式(III):
R4−OA (III)
[式中、R4は低級アルキル基を、Aはアルカリ金属を示す。]で表される塩基で閉環反応に付することを特徴とする
式(I):
【0013】
【化4】

【0014】
[式中、R1は水素原子または保護基を示す。]で表される化合物またはその塩の製造法;
[4] 式(II):
【0015】
【化5】

【0016】
[式中、R1は水素原子または保護基を、R2およびR3はそれぞれ同一または異なって置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物のリン酸塩;
[5] 3−(2−エトキシカルボニルエチルアミノ)−2−フェニルプロピオン酸エチルリン酸塩の結晶;
[6] 式(IV):
【0017】
【化6】

【0018】
[式中、R1は水素原子または保護基を、R2およびR3はそれぞれ同一または異なって置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で示される化合物またはその塩を、還元反応に付すことを特徴とする
式(II):
【0019】
【化7】

【0020】
[式中、R1は水素原子または保護基を、R2およびR3はそれぞれ同一または異なって置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物またはその塩の製造法;
[7] 式(IV):
【0021】
【化8】

【0022】
[式中、R1は水素原子または保護基を、R2およびR3はそれぞれ同一または異なって置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物またはその塩;
[8] 式(V):
【0023】
【化9】

【0024】
[式中、R2は置換されていてもよい低級アルキル基を、R5およびR5’はそれぞれ同一または異なって置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物またはその塩を
式(VI):
R2’(R1)NCHCHCOR3 (VI)
[式中、R1およびR2’はそれぞれ同一または異なって水素原子または保護基を、R3は置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物またはその塩と反応させることを特徴とする、[7]記載の化合物またはその塩の製造法;
[9] 式(II):
【0025】
【化10】

【0026】
[式中、R1は水素原子または保護基を、R2およびR3はそれぞれ同一または異なって置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物またはその塩が、
式(IV):
【0027】
【化11】

【0028】
[式中、R1は水素原子または保護基を、R2およびR3はそれぞれ同一または異なって置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で示される化合物またはその塩を、還元反応に付し得られた化合物またはその塩であることを特徴とする[3]記載の製造法;
[10] 式(II):
【0029】
【化12】

[式中、R1は水素原子または保護基を、R2およびR3はそれぞれ同一または異なって置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物またはその塩が
式(V):
【0030】
【化13】

【0031】
[式中、R2は置換されていてもよい低級アルキル基を、R5およびR5’はそれぞれ同一または異なって置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物またはその塩を
式(VI):
R2’(R1)NCHCHCOR3 (VI)
[式中、R1およびR2’はそれぞれ同一または異なって水素原子または保護基を、R3は置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物またはその塩と反応させ得られた
式(IV):
【0032】
【化14】

【0033】
[式中、R1は水素原子または保護基を、R2およびR3はそれぞれ同一または異なって置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物またはその塩を還元反応に付し得られた化合物またはその塩であることを特徴とする、[3]記載の製造法;
[11] 式(V):
【0034】
【化15】

【0035】
[式中、R2は置換されていてもよい低級アルキル基を、R5およびR5’はそれぞれ同一または異なって置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物またはその塩が
式(VII):
【0036】
【化16】

【0037】
[式中、R2は置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物と
式(VIII):
R5(R5’)NCH(OR6)OR6’ (VIII)
[式中、R5、R5’およびR6、R6’はそれぞれ同一または異なって置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物またはその塩とを反応させて得られた化合物またはその塩であることを特徴とする、[8]記載の製造法;
に関する。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、ピペリジノン化合物の製造における従来の課題を解決し、医薬、農薬などとして有用な製造中間体が効率良く得られる。また本発明により得られる化合物またはその塩は、例えばうつ病、アレルギー等を治療及び又は予防するための化合物またはその塩の製造原料として有用である。より具体的には例えば米国特許第4,216,218号に開示されるうつ病、アレルギー等を治療及び又は予防するための下記化合物またはその塩の製造原料として有用である。
【0039】
【化17】

【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の内容を詳細に説明する。
【0041】
本明細書において、式中のR1は水素原子または保護基を示す。保護基としては、置換されていてもよい低級アルキル基、アシル基または置換されていてもよいシリル基などが例示できる。
【0042】
上記「置換されていてもよい低級アルキル基」のうち「低級アルキル基」としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−メチルプロピル、n−ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルプロピル等のC1-6アルキル等を用いることができる。このなかでも上記低級アルキル基としてはC1-4アルキル基が好ましく、更にメチル、エチルであることが好ましい。
【0043】
「置換されていてもよい低級アルキル基」の置換基としては、例えば(1)ハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、(2)ニトロ、(3)シアノ、(4)ハロゲン原子を有していてもよいC1−6アルキル(例、メチル、クロロメチル、ジフルオロメチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、エチル、2−ブロモエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、プロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、イソプロピル、ブチル、4,4,4−トリフルオロブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、5,5,5−トリフルオロペンチル、ヘキシル、6,6,6−トリフルオロヘキシル等)、(5)ハロゲン原子を有していてもよいC2−6アルケニル(例、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、sec-ブテニル、3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル、4,4,4−トリフルオロ−1−ブテニル等)、(6)ハロゲン原子を有していてもよいC2−6アルキニル(例、エチニル、プロパルギル、ブチニル、1−ヘキシニル、3,3,3−トリフルオロ−1−プロピニル、4,4,4−トリフルオロ−1−ブチニル等) (7)C3−6シクロアルキル(例、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)、(8)C6−14アリール(例、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニリル、2−アンスリル等)、(9)C7−16アラルキル(例、ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル、2,2−ジフェニルエチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル等)、(10)ヒドロキシ、(11)C1−6アルコキシ(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等)、(12)C6−14アリールオキシ(例、フェニルオキシ、ナフチルオキシ等)、(13)メルカプト、(14)C1−6アルキルチオ(例、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ等)、(15) C6−14アリールチオ(例、フェニルチオ、ナフチルチオ等)、(16)アミノ、(17)モノ−C1−6アルキルアミノ(例、メチルアミノ、エチルアミノ等)、(18)モノ−C6−14アリールアミノ(例、フェニルアミノ、1−ナフチルアミノ、2−ナフチルアミノ等)、(19)ジ−C1−6アルキルアミノ(例、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ等)、(20)ジ−C6−14アリールアミノ(例、ジフェニルアミノ等)、(21)ホルミル、(22)C1−6アルキル−カルボニル(例、アセチル、プロピオニル等)、(23)C6−14アリール−カルボニル(例、ベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル等)、(24)カルボキシ、(25)C1−6アルコキシ−カルボニル(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル等)、(26)C6−14アリールオキシ−カルボニル(例、フェノキシカルボニル等)、(27)カルバモイル、(28)チオカルバモイル、(29)モノ−C1−6アルキル−カルバモイル(例、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル等)、(30)ジ−C1−6アルキル−カルバモイル(例、ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、エチルメチルカルバモイル等)、(31)C6−14アリール−カルバモイル(例、フェニルカルバモイル、1−ナフチルカルバモイル、2−ナフチルカルバモイル等)、(32)C1−6アルキルスルホニル(例、メチルスルホニル、エチルスルホニル等)、(33)C6−14アリールスルホニル(例、フェニルスルホニル、1−ナフチルスルホニル、2−ナフチルスルホニル等)、(34)C1−6アルキルスルフィニル(例、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル等)、(35)C6−14アリールスルフィニル(例、フェニルスルフィニル、1−ナフチルスルフィニル、2−ナフチルスルフィニル等)、(36)ホルミルアミノ、(37)C1−6アルキル−カルボニルアミノ(例、アセチルアミノ等)、(38)C6−14アリール−カルボニルアミノ(例、ベンゾイルアミノ、ナフトイルアミノ等)、(39)C1−6アルコキシ−カルボニルアミノ(例、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、プロポキシカルボニルアミノ、ブトキシカルボニルアミノ等)、(40)C1−6アルキルスルホニルアミノ(例、メチルスルホニルアミノ、エチルスルホニルアミノ等)、(41)C6−14アリールスルホニルアミノ(例、フェニルスルホニルアミノ、2−ナフチルスルホニルアミノ、1−ナフチルスルホニルアミノ等)、(42)C1−6アルキル−カルボニルオキシ(例、アセトキシ、プロピオニルオキシ等)、(43)C6−14アリール−カルボニルオキシ(例、ベンゾイルオキシ、ナフチルカルボニルオキシ等)、(44)C1−6アルコキシ−カルボニルオキシ(例、メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、プロポキシカルボニルオキシ、ブトキシカルボニルオキシ等)、(45)モノ−C1−6アルキル−カルバモイルオキシ(例、メチルカルバモイルオキシ、エチルカルバモイルオキシ等)、(46)ジ−C1−6アルキル−カルバモイルオキシ(例、ジメチルカルバモイルオキシ、ジエチルカルバモイルオキシ等)、(47)C6−14アリール−カルバモイルオキシ(例、フェニルカルバモイルオキシ、ナフチルカルバモイルオキシ等)、(48)1個の窒素原子と炭素原子以外に、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる1または2種のヘテロ原子を1ないし4個含んでいてもよい5ないし7員飽和環状アミノ(例、ピロリジン−1−イル、ピペリジノ、ピペラジン−1−イル、モルホリノ、チオモルホリノ、ヘキサヒドロアゼピン−1−イル等)、(49)炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる1または2種のヘテロ原子を1ないし4個含む5ないし10員芳香族複素環基(例、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−キノリル、3−キノリル、4−キノリル、5−キノリル、8−キノリル、1−イソキノリル、3−イソキノリル、4−イソキノリル、5−イソキノリル、1−インドリル、2−インドリル、3−インドリル、2−ベンゾチアゾリル、2−ベンゾ[b]チエニル、3−ベンゾ[b]チエニル、2−ベンゾ[b]フラニル、3−ベンゾ[b]フラニル等)、 (50)オキソ等が挙げられる。該「置換されていてもよい低級アルキル基」の「低級アルキル基」が上記「置換基」を有する場合には、上記の置換基を、低級アルキル基の置換可能な位置に1ないし5個、好ましくは1ないし3個有していてもよく、置換基数が2個以上の場合は各置換基は同一または異なっていてもよい。
【0044】
上記アシル基としては、例えば、−(C=O)−R’’、−(C=S)−R’’、−SO−R’’、−SO−R’’、−(C=O)NR’’R’’’、−(C=O)O−R’’、−(C=S)O−R’’、−(C=S)NR’’R’’’(R’’は水素原子または置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、R’’’は水素原子または低級アルキル基を示す。)などが挙げられる。これらの具体例としてはエステル化もしくはアミド化されてもよいカルボキシル基、エステル化もしくはアミド化されてもよいスルホニル基などが挙げられる。
【0045】
R’’で示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「炭化水素基」としては、例えば、脂肪族炭化水素基、単環式飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基等が挙げられ、炭素数1ないし16個のものが好ましい。具体的には、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基およびアリール基等が用いられる。
【0046】
「アルキル基」は、例えば低級アルキル基等が好ましく、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチルおよびtert-ブチル、ペンチル、ヘキシル等のC1-6アルキル基等が汎用される。
【0047】
「アルケニル基」は、例えば低級アルケニル基等が好ましく、例えばビニル、1−プロペニル、アリル、イソプロペニル、ブテニルおよびイソブテニル等のC2-6アルケニル基等が汎用される。
【0048】
「アルキニル基」は、例えば低級アルキニル基等が好ましく、例えばエチニル、プロパルギルおよび1−プロピニル等のC2-6アルキニル基等が汎用される。
【0049】
「シクロアルキル基」は、例えば低級シクロアルキル基等が好ましく、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシル等のC3-6シクロアルキル基等が汎用される。
【0050】
「アリール基」は、例えばフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニリルおよび2−アンスリル等のC6-14アリール基等が好ましく、例えばフェニル基等が汎用される。
【0051】
「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「炭化水素基」が有していてもよい「置換基」としては、上記「置換基を有していてもよい低級アルキル基」で例示した「置換基」等が挙げられる。該「置換されていてもよい炭化水素基」の「炭化水素基」が上記「置換基」を有する場合には、上記の置換基を、炭化水素基の置換可能な位置に1ないし5個、好ましくは1ないし3個有していてもよく、置換基数が2個以上の場合は各置換基は同一または異なっていてもよい。
【0052】
R’’’で示される低級アルキル基としては、R1の「置換されていてもよい低級アルキル基」で例示した低級アルキル基等が挙げられる。
【0053】
上記「置換されていてもよいシリル基」としては、式−SiR10(式中、R、RおよびR10はそれぞれ同一または異なって、置換されていてもよい炭化水素基を示す)で表される基が挙げられる。
8、R9およびR10で表される「置換されていてもよい炭化水素基」としては、上記R’’で表される「置換されていてもよい炭化水素基」と同様のものが挙げられる。
置換されていてもよいシリル基として具体的には、例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。
【0054】
本明細書において、式中のR2、R3、R5、R5’、R6およびR6’で示される「置換されていてもよい低級アルキル基」としては、R1で例示した「置換されていてもよい低級アルキル基」などが挙げられる。
【0055】
本明細書において、式中のR2’は、水素原子または保護基を示す。保護基としては、R1で例示した保護基が挙げられる。
【0056】
本明細書において、式中のR4は、低級アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどのC1−6アルキル基など)を示す。
【0057】
本明細書において、式中のAは、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなど)を示す。
R1としては水素原子が好ましい。R2,R3としては、メチル、エチルなどのC1−6アルキル基が好ましく、特にエチルが好ましい。R2’としては水素原子が好ましい。R4としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、tert-ブチルなどのC1−6アルキル基が好ましく、特にtert-ブチルが好ましい。Aとしてはナトリウムが好ましい。R5,R5’、R6,R6’としてはメチル、エチルなどのC1−6アルキル基が好ましく、特にメチルが好ましい。
【0058】
次に本発明の一般的実施方法を例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
本発明化合物は、公知の有機化学合成方法を適宜使用することにより製造することができるが、好適には以下の本発明方法で効率的に製造することができる。
【0060】
[製造法]
【0061】
【化18】

【0062】
[工程(a-1)→(a-2)]
化合物(a-1)をR5(R5’)NCH(OR6)OR6'と反応させると化合物(a-2)を得ることが出来る。
【0063】
本反応に用いられる溶媒としては反応に影響をおよぼさない限り特に制限はないが、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピペリドン等のアミド類、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ギ酸、酢酸等の有機酸類等が挙げられ、中でも上記のアミド類が好ましい。これらは一種又は二種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。または本反応を無溶媒で行ってもよい。
【0064】
本反応における溶媒の使用量は、化合物(a-1)に対して0〜50重量倍、好ましくは0〜20重量倍、特に好ましくは0〜10重量倍である。
【0065】
本反応で用いられるR5(R5’)NCH(OR6)OR6'の使用量は、原料化合物(a-1)に対して1〜10倍モル、好ましくは1〜3倍モルである。
【0066】
反応温度は通常0〜200℃、好ましくは50〜150℃であり、より好ましくは80〜150℃であり、さらに好ましくは100〜150℃、さらにより好ましくは120〜140℃である。反応時間は通常1時間から100時間程度である。
【0067】
[工程(a-2)→(a-3)]
化合物(a-2)をR2'(R1)NCH2CH2CO2R3と反応させると化合物(a-3)を得ることが出来る。
【0068】
本反応に用いられる溶媒としては反応に影響をおよぼさない限り特に制限はないが、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、へキサン、ペンタン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等の脂肪族ハロゲン炭化水素類、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール等のアルコール類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピペリドン等のアミド類、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ギ酸、酢酸等の有機酸類、水等が挙げられ、中でも上記のアルコール類、アミド類、有機酸類、水等が好ましく、特に中でも上記のアミド類が好ましい。これらは一種又は二種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
【0069】
本反応における溶媒の使用量は、化合物(a-2)に対して0〜100重量倍、好ましくは2〜50重量倍、特に好ましくは5〜20重量倍である。
【0070】
本反応で用いられるR2'(R1)NCH2CH2CO2R3の使用量は、原料化合物(a-2)に対して1〜10倍モル、好ましくは1〜3倍モルである。
【0071】
反応温度は通常0〜200℃、好ましくは20〜150℃であり、より好ましくは50〜100℃であり、さらに好ましくは60〜80℃である。反応時間は通常1時間から50時間程度である。
【0072】
[工程(a-1)→(a-2)→(a-3)]
化合物(a-1)をR5(R5’)NCH(OR6)OR6'と反応させた後に、R2'(R1)NCH2CH2CO2R3と反応させるとワンポットにて化合物(a-3)を得ることが出来る。
【0073】
本反応に用いられる溶媒としては反応に影響をおよぼさない限り特に制限はないが、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピペリドン等のアミド類、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ギ酸、酢酸等の有機酸類等が挙げられ、中でも上記のアミド類が好ましい。これらは一種又は二種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
【0074】
本反応における溶媒の使用量は、化合物(a-1)に対して0〜100重量倍、好ましくは2〜50重量倍、特に好ましくは5〜20重量倍である。
【0075】
化合物(a-1)から化合物(a-2)を得る反応で用いられるR5(R5’)NCH(OR6)OR6'の使用量は、原料化合物(a-1)に対して1〜10倍モル、好ましくは1〜3倍モルである。反応温度は通常0〜200℃、好ましくは50〜150℃であり、より好ましくは80〜150℃であり、さらに好ましくは100〜150℃、さらにより好ましくは120〜140℃である。反応時間は通常1時間から100時間程度である。
【0076】
引き続いて、化合物(a-2)から化合物(a-3)を得る反応で用いられるR2'(R1)NCH2CH2CO2R3の使用量は、原料化合物(a-1)に対して1〜10倍モル、好ましくは1〜3倍モルである。反応温度は通常0〜200℃、好ましくは20〜150℃であり、より好ましくは50〜100℃であり、さらに好ましくは60〜80℃である。反応時間は通常1時間から50時間程度である。
【0077】
[工程(a-3)→(a-4)]
化合物(a-3)を還元剤と反応させると化合物(a-4)を得ることが出来る。
【0078】
本反応に用いられる溶媒としては反応に影響をおよぼさない限り特に制限はないが、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、へキサン、ペンタン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等の脂肪族ハロゲン炭化水素類、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール等のアルコール類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピペリドン等のアミド類、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ギ酸、酢酸等の有機酸類、水等が挙げられ、中でも上記のアルコール類、アミド類、有機酸類、水等が好ましい。これらは一種又は二種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
【0079】
本反応における溶媒の使用量は、化合物(a-3)に対して0〜100重量倍、好ましくは2〜50重量倍、特に好ましくは5〜20重量倍である。
【0080】
本反応で用いられる還元剤としては、テトラヒドロホウ酸ナトリウム、シアノトリヒドロホウ酸ナトリウム、トリアセトキシヒドロホウ酸ナトリウム等が好ましく、その使用量は、原料化合物(a-3)に対して1〜20倍モル、好ましくは2〜10倍モルである。
【0081】
本反応で使用する溶媒と還元剤の組み合わせとしては、アミド類と有機酸類との混合溶媒と、テトラヒドロホウ酸ナトリウムあるいはトリアセトキシヒドロホウ酸ナトリウム等との組み合わせが好ましい。
【0082】
反応温度は通常0〜200℃、好ましくは10〜150℃であり、より好ましくは20〜100℃であり、さらに好ましくは30〜50℃である。反応時間は通常1時間から20時間程度である。
【0083】
[工程(a-1)→(a-2)→(a-3)→(a-4)]
化合物(a-1)をR5(R5’)NCH(OR6)OR6'と反応させた後に、R2'(R1)NCH2CH2CO2R3と反応させ、その後に還元するとワンポットにて化合物(a-4)を得ることが出来る。
【0084】
本反応に用いられる溶媒としては反応に影響をおよぼさない限り特に制限はないが、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピペリドン等のアミド類、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ギ酸、酢酸等の有機酸類等が挙げられ、中でも上記のアミド類が好ましい。これらは一種又は二種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
【0085】
本反応における溶媒の使用量は、化合物(a-1)に対して0〜100重量倍、好ましくは2〜50重量倍、特に好ましくは5〜20重量倍である。
【0086】
化合物(a-1)から化合物(a-2)を得る反応で用いられるR5(R5’)NCH(OR6)OR6'の使用量は、原料化合物(a-1)に対して1〜10倍モル、好ましくは1〜3倍モルである。反応温度は通常0〜200℃、好ましくは50〜150℃であり、より好ましくは80〜150℃であり、さらに好ましくは100〜150℃、さらにより好ましくは120〜140℃である。反応時間は通常1時間から100時間程度である。
【0087】
引き続いて、化合物(a-2)から化合物(a-3)を得る反応で用いられるR2'(R1)NCH2CH2CO2R3の使用量は、原料化合物(a-1)に対して1〜10倍モル、好ましくは1〜3倍モルである。反応温度は通常0〜200℃、好ましくは20〜150℃であり、より好ましくは50〜100℃であり、さらに好ましくは60〜80℃である。反応時間は通常1時間から50時間程度である。
【0088】
さらに引き続いて、化合物(a-3)から化合物(a-4)を得る反応で用いられる還元剤としては、テトラヒドロホウ酸ナトリウム、トリアセトキシヒドロホウ酸ナトリウム等が好ましく、その使用量は、原料化合物(a-1)に対して1〜20倍モル、好ましくは2〜10倍モルである。反応温度は通常0〜200℃、好ましくは10〜150℃であり、より好ましくは20〜100℃であり、さらに好ましくは30〜50℃である。反応時間は通常1時間から20時間程度である。
【0089】
[工程(a-1)→(a-2)→(a-3)→(a-4)→(a-5)]
前記[工程(a-1)→(a-2)→(a-3)→(a-4)]の後に、りん酸塩化して化合物(a-5)を得ることが出来る。
【0090】
りん酸塩化に用いられる溶媒としては反応に影響をおよぼさない限り特に制限はないが、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、へキサン、ペンタン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等の脂肪族ハロゲン炭化水素類、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール等のアルコール類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピペリドン等のアミド類、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ギ酸、酢酸等の有機酸類、水等が挙げられ、中でも上記のエステル類、エーテル類、アルコール類等が好ましく、特に中でも上記のアルコール類が好ましい。これらは一種又は二種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
【0091】
本反応における溶媒の使用量は、化合物(a-1)に対して0〜100重量倍、好ましくは1〜50重量倍、特に好ましくは2〜20重量倍である。
【0092】
本反応で用いられるりん酸の使用量は、原料化合物(a-1)に対して1〜10倍モル、好ましくは1〜3倍モルである。
【0093】
反応温度は通常0〜150℃、好ましくは0〜100℃であり、より好ましくは0〜50℃である。反応時間は通常1時間から50時間程度である。
【0094】
[工程(a-4)又は(a-5)→(a-6)→(a-7)→(a-8)又は(a-9)]
化合物(a-4)あるいは化合物(a-5)をR4―OAと反応させると化合物(a-6)を経由して脱炭酸の後に化合物(a-7)を得ることが出来る。
【0095】
本反応に用いられる溶媒としては反応に影響をおよぼさない限り特に制限はないが、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、へキサン、ペンタン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等の脂肪族ハロゲン炭化水素類、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール等のアルコール類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピペリドン等のアミド類、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ギ酸、酢酸等の有機酸類、水等が挙げられ、中でも上記の芳香族炭化水素類、エーテル類、アルコール類、有機酸類、水等が好ましい。これらは一種又は二種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
【0096】
本反応における溶媒の使用量は、化合物(a-4)あるいは(a-5)に対して0〜100重量倍、好ましくは2〜50重量倍、特に好ましくは2〜20重量倍である。
【0097】
本反応において用いられるR4―OAとしては、例えば、C1-6のアルコールのアルカリ金属塩、好ましくは、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、リチウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド等、特に好ましくは、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシドが挙げられる。
【0098】
本反応で用いられるR4―OAの使用量は、原料化合物(a-4)あるいは(a-5)に対して1〜20倍モル、好ましくは1.5〜10倍モルである。
【0099】
反応温度は通常0〜150℃、好ましくは0〜100℃であり、より好ましくは0〜80℃である。反応時間は通常1時間から50時間程度である。
【0100】
化合物(a-7)を得た後に、塩酸塩化することにより化合物(a-8)を得ることが出来る。
【0101】
塩酸塩化に用いられる溶媒としては反応に影響をおよぼさない限り特に制限はないが、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、へキサン、ペンタン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等の脂肪族ハロゲン炭化水素類、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール等のアルコール類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピペリドン等のアミド類、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ギ酸、酢酸等の有機酸類、水等が挙げられ、中でも上記のエステル類、エーテル類、アルコール類等が好ましく、特に中でも上記のエステル類、アルコール類が好ましい。これらは一種又は二種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
【0102】
本反応における溶媒の使用量は、化合物(a-4)あるいは化合物(a-5)に対して0〜100重量倍、好ましくは1〜80重量倍、特に好ましくは2〜50重量倍である。
【0103】
本反応で用いられる塩酸は非水が好ましく、その使用量は化合物(a-4)あるいは化合物(a-5)に対して1〜10倍モル、好ましくは1〜3倍モルである。反応温度は通常0〜150℃、好ましくは20〜100℃であり、より好ましくは20〜80℃である。反応時間は通常1時間から50時間程度である。
【0104】
また、化合物(a-7)を得た後に、p-トルエンスルホン酸塩化することにより化合物(a-9)を得ることが出来る。
【0105】
p-トルエンスルホン酸塩化に用いられる溶媒としては反応に影響をおよぼさない限り特に制限はないが、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、へキサン、ペンタン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等の脂肪族ハロゲン炭化水素類、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール等のアルコール類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピペリドン等のアミド類、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ギ酸、酢酸等の有機酸類、水等が挙げられ、中でも上記のエステル類、エーテル類、アルコール類等が好ましく、特に中でも上記のエステル類、アルコール類が好ましい。これらは一種又は二種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
【0106】
本反応における溶媒の使用量は、化合物(a-4)あるいは化合物(a-5)に対して0〜100重量倍、好ましくは1〜80重量倍、特に好ましくは2〜50重量倍である。
【0107】
本反応で用いられるp-トルエンスルホン酸は非水が好ましく、その使用量は化合物(a-4)あるいは化合物(a-5)に対して1〜10倍モル、好ましくは1〜3倍モルである。反応温度は通常0〜150℃、好ましくは0〜100℃であり、より好ましくは0〜50℃である。反応時間は通常1時間から50時間程度である。
【実施例】
【0108】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0109】
各実施例のスキームは以下のとおりである。
実施例1
【0110】
【化19】



【0111】
実施例2
【0112】
【化20】



【0113】
実施例3
【0114】
【化21】



【0115】
実施例4
【0116】
【化22】



【0117】
実施例5
【0118】
【化23】



【0119】
実施例6、実施例10
【0120】
【化24】

【0121】
実施例7
【0122】
【化25】



【0123】
実施例8、実施例11
【0124】
【化26】



【0125】
実施例9
【0126】
【化27】



【0127】
実施例12
【0128】
【化28】



【0129】
実施例1
3−ジメチルアミノ−2−フェニルアクリル酸エチルの合成
フェニル酢酸エチル1.64g(10mmol)に、ジメチルホルムアミドジメチルアセタール2mL(15mmol)及びジメチルホルムアミド10mLを加えた。外浴140℃で6時間攪拌した後に、反応液を減圧下濃縮した。酢酸エチルを加えて共沸濃縮後、減圧下乾燥して橙色油状物の3−ジメチルアミノ−2−フェニルアクリル酸エチル2.18gを得た。
【0130】
1HNMR(300MHz,CDCl3中):δ 1.19(t,3H),2.67(s,6H),4.12(q,2H),7.17−7.30(m,5H),7.55(s,1H).
【0131】
実施例2
3−(2−エトキシカルボニルエチルアミノ)−2−フェニルアクリル酸エチルの合成
3−ジメチルアミノ−2−フェニルアクリル酸2.14g(10mmol)に、ベータアラニンエチルエステル塩酸塩2.30g(15mmol)及びジメチルホルムアミド20mLを加えた。外浴80℃で1時間攪拌した後に、酢酸エチル40mLを加えた。2N塩酸10mLで2回、水10mLで2回洗浄した。減圧下濃縮し、酢酸エチルを加えて共沸濃縮後、減圧下乾燥して黄色油状物の3−(2−エトキシカルボニルエチルアミノ)−2−フェニルアクリル酸エチル2.54gを得た。
【0132】
実施例3
3−(2−エトキシカルボニルエチルアミノ)−2−フェニルアクリル酸エチルの合成
フェニル酢酸エチル1.64g(10mmol)に、ジメチルホルムアミドジメチルアセタール2mL(15mmol)及びジメチルホルムアミド10mLを加えた。外浴140℃で6時間攪拌した後に、反応液に、ベータアラニンエチルエステル塩酸塩2.30g(15mmol)及びジメチルホルムアミド10mLを加えた。外浴80℃で1時間攪拌した後に、酢酸エチル40mLを加えた。2N塩酸10mLで2回、水10mLで2回洗浄した。減圧下濃縮し、酢酸エチルを加えて共沸濃縮後、減圧下乾燥して黄色油状物の3−(2−エトキシカルボニルエチルアミノ)−2−フェニルアクリル酸エチル2.69gを得た。
【0133】
実施例4
3−(2−エトキシカルボニルエチルアミノ)−2−フェニルプロピオン酸エチルの合成
3−(2−エトキシカルボニルエチルアミノ)−2−フェニルアクリル酸エチル291mg(1mmol)に、ジメチルホルムアミド-酢酸(1:1)4mLを加えた。氷冷下、テトラヒドロホウ酸ナトリウム227mg(6mmol)を発泡に注意してゆっくりと添加した。室温で1時間攪拌後、酢酸エチル10mLを加えた。氷冷下、2N水酸化ナトリウム20mLを発泡に注意してゆっくりと添加した。有機層を水5mLで2回洗浄した。減圧下濃縮し、酢酸エチルを加えて共沸濃縮後、減圧下乾燥して淡黄色油状物の3−(2−エトキシカルボニルエチルアミノ)−2−フェニルプロピオン酸エチル285mgを得た。
【0134】
1HNMR(300MHz,CDCl3中):δ 1.18−1.28(m,6H),2.46(t,2H),2.90(t,2H),2.91(dd,1H),3.27(dd,1H),3.78(dd,1H),4.07−4.20(m,4H),7.24−7.35(m,5H).
【0135】
実施例5
3−(2−エトキシカルボニルエチルアミノ)−2−フェニルプロピオン酸エチルの合成
フェニル酢酸エチル1.64g(10mmol)に、ジメチルホルムアミドジメチルアセタール2mL(15mmol)及びジメチルホルムアミド20mLを加えた。外浴140℃で6時間攪拌した後に、反応液に、ベータアラニンエチルエステル塩酸塩2.30g(15mmol)を加え、外浴80℃で3時間攪拌した。氷冷下、酢酸20mLを加え、テトラヒドロホウ酸ナトリウム2.27g(60mmol)を発泡に注意して20分かけて添加した。室温で1時間攪拌後、酢酸エチル40mLを加えた。氷冷下、6N水酸化ナトリウム60mLを発泡に注意してゆっくりと添加した。有機層を水20mLで3回洗浄した。減圧下濃縮し、酢酸エチルを加えて共沸濃縮後、減圧下乾燥して黄色油状物の3−(2−エトキシカルボニルエチルアミノ)−2−フェニルプロピオン酸エチル2.72gを得た。
【0136】
実施例6
3−(2−エトキシカルボニルエチルアミノ)−2−フェニルプロピオン酸エチル りん酸塩の合成
フェニル酢酸エチル50g(305mmol)に、ジメチルホルムアミドジメチルアセタール40g(335mmol)及びジメチルホルムアミド400mLを加えた。外浴140℃で6時間攪拌した後に、反応液に、ベータアラニンエチルエステル塩酸塩51.5g(335mmol)を加え、外浴80℃で2時間攪拌した。氷冷下、酢酸400mLを加え、25℃でトリアセトキシヒドロホウ酸ナトリウム232.7g(1.098mol)を約15分かけて添加した。50℃で2時間攪拌後、酢酸エチル800mLを加えた。氷冷下、5N水酸化ナトリウム2Lを発泡に注意してゆっくりと添加した。分液後、有機層を水800mLで2回洗浄後濃縮した。イソプロパノール200mLに溶解した後、リン酸30.0g(305mmol)を加えた。室温で2時間、氷冷下1時間攪拌した後、析出結晶を減圧下濾取し、イソプロパノール25mLで2回洗浄した。50℃で6時間乾燥して白色結晶の3−(2−エトキシカルボニルエチルアミノ)−2−フェニルプロピオン酸エチル りん酸塩62.4gを得た。
【0137】
1HNMR(300MHz,DMSO−d中):δ 1.11−1.21(m,6H),2.74−2.85(m,2H),3.14−3.24(m,3H),3.39−3.46(m,1H),4.05−4.18(m,4H),4.26−4.30(m,1H),7.15−7.29(m,9H).
元素分析値:C16H26NO8P
実測値 C:48.88; H:6.58; N:3.33; P:7.61
計算値 C:49.10; H:6.70; N:3.58; P:7.91
【0138】
実施例7
3−フェニルピペリジン−4−オン 塩酸塩の合成
3−(2−エトキシカルボニルエチルアミノ)−2−フェニルプロピオン酸エチル2g(6.8mmol)にテトラヒドロフラン20mLを加えた。水素化ナトリウム(60%)0.82g(20.4mmol)を加え、外浴80℃で3時間攪拌した。反応液を氷冷後、水20mLを発泡に注意してゆっくりと添加した。酢酸エチル20mLで2回抽出後、有機層を水20mLで2回洗浄し、減圧下濃縮した。濃縮残渣に酢酸10mL、塩酸10mLを加え、外浴140℃で3時間還流した。反応液を減圧下濃縮し、エタノール−酢酸エチルの混液で共沸濃縮した。濃縮残渣にエタノール−酢酸エチル(1:9)50mLを加え、外浴100℃で30分還流した。冷却し析出結晶を減圧下濾取し、酢酸エチル10mLで2回洗浄した。50℃で減圧下乾燥して、白色結晶の3−フェニルピペリジン−4−オン 塩酸塩0.97gを得た。
【0139】
1HNMR(300MHz,DMSO−d中):δ 2.53(d,2H),2.96−3.07(m,1H),3.52(dt,1H),3.62(d,2H),4.23(t,1H),7.20−7.22(m,2H),7.28−7.39(m,3H),9.90(brs,2H).
【0140】
実施例8
3−フェニルピペリジン−4−オン 塩酸塩の合成
3−(2−エトキシカルボニルエチルアミノ)−2−フェニルプロピオン酸エチル りん酸塩3.3g(8.5mmol)をテトラヒドロフラン330mLに懸濁し、氷冷下ナトリウムtert-ブトキシド4.5g(46.8mmol)を添加した。氷冷下30分攪拌後、室温で3時間攪拌した。水44mLを添加し、80℃で5時間攪拌後冷却した。酢酸エチル44mLを添加し、抽出、水層を酢酸エチル22mLで振り戻し、有機層を合わせた。得られた茶褐色溶液を40−50℃で濃縮した後、エタノール20mLに溶解し40−50℃で濃縮乾固する操作を2回行った。濃縮残渣をエタノール6.7mL、酢酸エチル30mLに溶解した後、室温で4N塩酸/酢酸エチル溶液を2.1mL(8.5mmol)滴下した。80℃で4時間加熱し、晶出した後放冷し、氷冷下1時間攪拌した後、析出結晶を減圧下濾取し、酢酸エチル 5mLで2回洗浄した。6時間真空乾燥を行い、微黄色結晶の3−フェニルピペリジン−4−オン 塩酸塩0.78gを得た。
【0141】
実施例9
3−フェニルピペリジン−4−オン p-トルエンスルホン酸塩の合成
3−(2−エトキシカルボニルエチルアミノ)−2−フェニルプロピオン酸エチル りん酸塩3g(7.67mmol)をテトラヒドロフラン20mLに懸濁、氷冷下ナトリウムtert-ブトキシド4.1g(42.2mmol)を添加した。氷冷下30分攪拌後、室温で3時間攪拌した。水40mLを添加し、80℃で5時間攪拌後冷却した。酢酸エチル30mLを添加し抽出、水層を酢酸エチル20mLで振り戻し、有機層を合わせて濃縮した。得られた茶褐色油状物を酢酸エチル30mLに溶解した後、室温でパラトルエンスルホン酸一水和物1.46g(7.67mmol)を添加し、攪拌、晶出した。常温で1時間、氷冷下1時間攪拌した後、析出結晶を減圧下濾取し、酢酸エチル5mLで2回洗浄した。50℃で6時間真空乾燥を行い、図1の粉末X線回折図(CuKα1, 40KV, 40mA)に示すような白色結晶の3−フェニルピペリジン−4−オン p-トルエンスルホン酸塩1.2gを得た。
【0142】
1HNMR(300MHz,DMSO−d中):δ 2.29(s,3H),2.50−2.51(m,2H),2.84−2.96(m,1H),3.43−3.67(m,3H),4.05−4.11(m,1H),7.11−7.14(m,2H),7.19−7.22(m,2H),7.28−7.38(m,3H),7.48−7.51(m,2H),9.20(brs,2H).
元素分析値:C18H21NO4S・1/3H2O
実測値 C:61.25; H:6.15; N:3.73; S:9.11
計算値 C:61.17; H:6.18; N:3.96; S:9.07
【0143】
実施例10
3−(2−エトキシカルボニルエチルアミノ)−2−フェニルプロピオン酸エチル りん酸塩の合成
フェニル酢酸エチル2.5g(15.2mmol)に、ジメチルホルムアミドジメチルアセタール4g(33.5mmol)及びジメチルホルムアミド20mLを加えた。反応容器を130℃付近まで加熱し600〜700mmHgに減圧し還流するまで調整した後に、液体を留去しながら6時間反応した(1時間ごとに留去した液体と同体積のジメチルホルムアミドジメチルアセタールを反応溶液に追加した)。反応終了後、溶媒の留去が見られなくなるまで減圧濃縮した残渣に反応液に、ジメチルホルムアミド20mLを加え再び溶媒の留去が見られなくなるまで減圧濃縮した。残渣をジメチルホルムアミド20mLに溶解し、ベータアラニンエチルエステル塩酸塩2.6g(16.8mmol)を加え、75℃で2時間攪拌した。20〜30℃に冷却し、酢酸20mLを加え、窒素雰囲気下、0〜10℃でトリアセトキシヒドロホウ酸ナトリウム11.6g(54.7mmol)を添加した。50℃で2時間攪拌後、酢酸エチル40mLを加えた。氷冷下、5N水酸化ナトリウム100mLを発泡に注意してゆっくりと添加した。分液後、有機層を水40mLで2回洗浄し、濃縮した。イソプロパノール10mLに溶解した後、リン酸1.94g(16.7mmol)を加えた。種晶を添加して室温で2時間、氷冷下1時間攪拌した後、析出結晶を減圧下濾取しイソプロパノール2.5mLで2回洗浄した。60℃で8時間以上乾燥して図2の粉末X線回折図(CuKα1, 40KV, 40mA)に示すような白色結晶の3−(2−エトキシカルボニルエチルアミノ)−2−フェニルプロピオン酸エチル りん酸塩3.7gを得た。
【0144】
実施例11
3−フェニルピペリジン−4−オン 塩酸塩の合成
3−(2−エトキシカルボニルエチルアミノ)−2−フェニルプロピオン酸エチル りん酸塩4.6g(11.8mmol)をテトラヒドロフラン31mLに懸濁し、0〜10℃でナトリウムtert-ブトキシド6.2g(64.7mmol)を添加した。同温で30分攪拌後、室温で3時間攪拌した。水62mLを添加し、63℃で反応が終了するまで5時間攪拌後冷却した。酢酸エチル46mLを添加し、抽出、水層を酢酸エチル31mLで振り戻し、有機層を合わせた。得られた茶褐色溶液を減圧濃縮した後、エタノール25mLに溶解し、濃縮乾固する操作を2回行った。濃縮残渣をエタノール2.5mL、酢酸エチル20mLに溶解した後、室温で4N塩酸/酢酸エチル溶液を2.9mL滴下した。75℃で4時間加熱し晶出した後放冷し、5℃付近で1時間攪拌した後、析出結晶を減圧下濾取し、酢酸エチル 14mLで洗浄した。60℃で8時間以上真空乾燥を行い、図3の粉末X線回折図(CuKα1, 40KV, 40mA)に示すような微黄色結晶の3−フェニルピペリジン−4−オン 塩酸塩1.2gを得た。
【0145】
実施例12
3−フェニルピペリジン−4−オン 塩酸塩の合成
3−(2−エトキシカルボニルエチルアミノ)−2−フェニルプロピオン酸エチル りん酸塩260.0g(0.664mol)を水2080mLに室温で溶解した。トルエン1040mLを加え、室温で攪拌しながら炭酸水素ナトリウム195.2g(2.32mol)を徐々に添加した。室温で10分間攪拌後、トルエン層と水層に分液した。トルエン層を水520mLで2回洗浄した。トルエン層を減圧濃縮し、濃縮物にトルエン520mLを加え、再度減圧濃縮した。更に濃縮残渣にトルエン260mLを加え、再度減圧濃縮した。
濃縮物をテトラヒドロフラン580mLに溶解し、氷冷下で攪拌しながらナトリウム tert-ブトキシド 95.7g(0.996mol)を、内温を8℃以下に保ちながら分割添加した。氷冷下で2時間攪拌後、反応液に酢酸180mLを徐々に添加した。更に濃塩酸360mL及び水144mLを加え、内温が98〜100℃になるまで反応液中からテトラヒドロフランを常圧下で加熱留去した。反応液を加熱還流下(内温98〜100℃)で3時間攪拌後、室温まで冷却した。
反応液に水850mL及び酢酸エチル850mLを加え、30%水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応液のpHを10(±0.5)に調節した。有機層(酢酸エチル層(1))と水層に分液し、水層を酢酸エチル850mLで抽出し、有機層(酢酸エチル層(2))と水層に分液した。更に水層を酢酸エチル430mLで抽出し、有機層(酢酸エチル層(3))と水層に分液した。有機層(酢酸エチル層(1)+(2)+(3))を一緒にした後、活性炭7gを加え、室温で20分間攪拌し、活性炭を濾去後、濾液を減圧濃縮した。濃縮物にエタノール200mLを加え、再度減圧濃縮した。濃縮残渣に酢酸エチル183mL及びエタノール183mLを加え、室温で攪拌しながら、4N塩化水素/酢酸エチル溶液183mLを滴下した。室温で一晩攪拌し、氷冷下で1時間攪拌熟成した。析出した結晶を濾取し、結晶を酢酸エチル200mL×2で洗浄した。減圧乾燥後、淡黄白色結晶の3−フェニルピペリジン−4−オン 塩酸塩109.45gを得た(収率77.9%)。
【産業上の利用可能性】
【0146】
上述したように、本発明の製造法で得られる化合物またはその塩は、例えばうつ病、アレルギー等を治療及び又は予防するための化合物またはその塩の製造原料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】図1は、3−フェニルピペリジン−4−オン p-トルエンスルホン酸塩の結晶の粉末X線回折図である。
【図2】図2は、3−(2−エトキシカルボニルエチルアミノ)−2−フェニルプロピオン酸エチル りん酸塩の結晶の粉末X線回折図である。
【図3】図3は、3−フェニルピペリジン−4−オン 塩酸塩の結晶の粉末X線回折図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、R1は水素原子または保護基を示す。]で表される化合物の塩酸塩またはp−トルエンスルホン酸塩。
【請求項2】
3−フェニルピペリジン−4−オン塩酸塩またはp-トルエンスルホン酸塩の結晶。
【請求項3】
式(II):
【化2】

[式中、R1は水素原子または保護基を、R2およびR3はそれぞれ同一または異なって置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物またはその塩を
式(III):
R4−OA (III)
[式中、R4は低級アルキル基を、Aはアルカリ金属を示す。]で表される塩基で閉環反応に付することを特徴とする
式(I):
【化3】

[式中、R1は水素原子または保護基を示す。]で表される化合物またはその塩の製造法。
【請求項4】
式(II):
【化4】

[式中、R1は水素原子または保護基を、R2およびR3はそれぞれ同一または異なって置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物のリン酸塩。
【請求項5】
3−(2−エトキシカルボニルエチルアミノ)−2−フェニルプロピオン酸エチルリン酸塩の結晶。
【請求項6】
式(IV):
【化5】

[式中、R1は水素原子または保護基を、R2およびR3はそれぞれ同一または異なって置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で示される化合物またはその塩を、還元反応に付すことを特徴とする
式(II):
【化6】

[式中、R1は水素原子または保護基を、R2およびR3はそれぞれ同一または異なって置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物またはその塩の製造法。
【請求項7】
式(IV):
【化7】

[式中、R1は水素原子または保護基を、R2およびR3はそれぞれ同一または異なって置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物またはその塩。
【請求項8】
式(V):
【化8】

[式中、R2は置換されていてもよい低級アルキル基を、R5およびR5’はそれぞれ同一または異なって置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物またはその塩を
式(VI):
R2’(R1)NCHCHCOR3 (VI)
[式中、R1およびR2’はそれぞれ同一または異なって水素原子または保護基を、R3は置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物またはその塩と反応させることを特徴とする、請求項7記載の化合物またはその塩の製造法。
【請求項9】
式(II):
【化9】

[式中、R1は水素原子または保護基を、R2およびR3はそれぞれ同一または異なって置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物またはその塩が、
式(IV):
【化10】

[式中、R1は水素原子または保護基を、R2およびR3はそれぞれ同一または異なって置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で示される化合物またはその塩を、還元反応に付し得られた化合物またはその塩であることを特徴とする請求項3記載の製造法。
【請求項10】
式(II):
【化11】

[式中、R1は水素原子または保護基を、R2およびR3はそれぞれ同一または異なって置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物またはその塩が
式(V):
【化12】

[式中、R2は置換されていてもよい低級アルキル基を、R5およびR5’はそれぞれ同一または異なって置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物またはその塩を
式(VI):
R2’(R1)NCHCHCOR3 (VI)
[式中、R1およびR2’はそれぞれ同一または異なって水素原子または保護基を、R3は置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物またはその塩と反応させ得られた
式(IV):
【化13】

[式中、R1は水素原子または保護基を、R2およびR3はそれぞれ同一または異なって置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物またはその塩を還元反応に付し得られた化合物またはその塩であることを特徴とする、請求項3記載の製造法。
【請求項11】
式(V):
【化14】

[式中、R2は置換されていてもよい低級アルキル基を、R5およびR5’はそれぞれ同一または異なって置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物またはその塩が
式(VII):
【化15】

[式中、R2は置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物と
式(VIII):
R5(R5’)NCH(OR6)OR6’ (VIII)
[式中、R5、R5’およびR6、R6’はそれぞれ同一または異なって置換されていてもよい低級アルキル基を示す。]で表される化合物またはその塩とを反応させて得られた化合物またはその塩であることを特徴とする、請求項8記載の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−257079(P2006−257079A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−39406(P2006−39406)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【Fターム(参考)】