説明

ピリミジン誘導体の調製プロセス

式(I)の5−置換4−アミノ−2−メチルピリミジン[式中、RはCONHまたはCNである]、およびその酸付加塩の調製プロセスであって、式HNCH=C(R)CNの化合物(II)とアセトイミド酸メチルエステルまたはその酸付加塩を反応させること、および望むなら、式(I)の化合物を酸付加塩に転換することを特徴とするプロセス、ならびにPOCIを用いた処理による式(II)の化合物[式中、RはCONHである]から式(II)の化合物[式中、RはCNである]への転換。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ピリミジン誘導体の調製に関する。さらに正確には、本発明は、次式
【化1】



[式中、RはCONHまたはCNである]
の5−置換4−アミノ−2−メチルピリミジンおよびその酸付加塩の調製に関する。
【0002】
式Iの化合物およびその酸付加塩は、チアゾールおよびピリミジンを含むビタミンB(チアミン)の調製プロセスにおける公知の化合物および中間体である。チアミンの1つの一般合成手法は、チアゾールビルディングブロックおよびピリミジンビルディングブロックの別個の合成と、その後に続くそれらの縮合反応である。この方法は、最初にウィリアムズ(Williams,R.R.)らによって報告された(J.Am.Chem.Soc.、58巻、1504頁[1936年])。代替の一般方法は、予備形成されたピリミジン中間体上にチアゾール環を構築する。現在、すべての工業生産プロセスでは、重要な中間体である4−アミノ−5−アミノメチル−2−メチルピリミジン(別名Greweジアミン)経由で進行するこの手法が使用される。アミノメチル側鎖は、3−クロロ−5−ヒドロキシペンタン−2−オン、3−メルカプトケトン、またはそれらの対応するアセテートによって伸長され、チアゾール環へと環化される。
【0003】
通例この手法では、ピリミジン環の構築には、マロノニトリルが出発材料として使用される。マロノニトリルはやはり、アンモニアをアクリロニトリルに添加し、β−アミノプロピオニトリルを、気相中、分子状酸素および金属触媒の存在下に高温で酸化的脱水素化反応にかけることによって得ることができる(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、5版、27A巻、515〜517頁)。
【0004】
マロノニトリルは、ビタミンBを工業的に合成する上で非常にコストのかかる出発材料であるので、それに代わるより適切なものを見い出すことが目的であった。この課題は、環化において、式HH CH=C(R) CNの化合物(II)[式中、RはCONHまたはCNである]を式HC C(=NH) OCHのアセトイミド酸メチルエステル(III)と共に使用して、ビタミンBの4−アミノ−2−メチルピリミジン環を形成することによって克服された。
【0005】
したがって、本発明は、次式の5−置換4−アミノ−2−メチルピリミジン
【化2】



[式中、RはCONHまたはCNである]、
およびその酸付加塩の調製プロセスであって、HN CH=C(R)−CNの化合物(II)とアセトイミド酸メチルエステル(HC C(=NH) O CH)またはその酸付加塩を反応させること、および望むなら、式Iの化合物を酸付加塩に転換させることを特徴とするプロセスに関する。
【0006】
反応は、溶媒なしで、または溶液として実施することができる。この反応は、好ましくは1〜8個のC原子、より好ましくは1〜4個のC原子を有する脂肪族アルコールなどの不活性極性溶媒中、−10〜100℃、好ましくは0〜60℃の範囲の温度、1〜10バール、好ましくは1〜5バールの圧力で、望むなら不活性ガス下で実施されることが好都合である。通常、反応は、12時間後から24時間後までに完了する。
【0007】
式(I)の化合物と有機酸または無機酸との酸付加塩は、反応が対応する酸性条件下で実施された場合または反応後に対応する酸が添加された場合に得られる。好ましい酸付加塩は、ハロゲン化水素酸との塩である。塩酸塩が最も好ましい。
【0008】
出発材料の3−アミノ−2−シアノアクリルアミドは、公知の材料であり、例えば米国特許第3,487,083号明細書に記載のようにホルムアミジンおよびシアノアセトイミドから得ることができる。
【0009】
アセトイミド酸メチルエステルも市販の公知化合物であり、例えば欧州特許出願公開第1 840 118A1号明細書に記載のように調製することができる。
【0010】
POClを用いた4−アミノ−2−メチル−5−ピリミジンカルボキサミドの分子内脱水による4−アミノ−2−メチル−5−ピリミジンカルボニトリルへの変換は、例えば収率が最高50%でしかないもののJ.Chem.Soc.1937年、364頁(トッド(Todd)ら)から公知である。反応条件を変化させることによってこの反応の収率を向上させる発明者ら自身の実験は、失敗した。一方、POClを用いた3−アミノ−2−シアノアクリルアミドから2−アミノメチレン−マロノニトリルへの分子内脱水については、今まで文献に記載されていなかったが、収率79.4%、純度42.6%で実現した。その結果は、特にCOClを用いて、脱水を実現しなかったので、驚くべきものである。
【0011】
したがって、この反応も本発明の一部分である。
【0012】
脱水反応は、溶液として、好ましくはジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、またはジメトキシエタンなどの極性溶媒中、−10℃〜100℃、好ましくは0〜60℃の範囲の温度、1〜10バール、好ましくは1〜5バールの範囲の圧力下で、好ましくは塩基、例えばピリジンまたはNR(式中、RはC1〜4アルキルである)などの芳香族または脂肪族アミン、最も好ましくはトリエチルアミンの存在下で実施されることが好都合である。通常、反応は、12時間後から24時間後までに完了する。
【0013】
2−アミノメチレン−マロノニトリルの4−アミノ−2−メチル−5−シアノピリミジンへの環化は、本発明の反応条件下、アセトイミド酸メチルエステルを用いると収率60%、純度64.8%で実現されるが、アセトイミジンを用いると環化は実現しないということを指摘するのは興味深く、化合物IIの化合物Iへの環化において、アセトイミジンとアセトイミド酸メチルエステルを等価であるとみなすことはできないと示唆される。
【0014】
以下の実施例によって、本発明をさらに詳細に説明する。
【0015】
[実施例1]
アセトアミド酸メチルエステル塩酸塩1.85g(95.0%、16.07ミリモル)および3−アミノ−2−シアノ−アクリルアミド(68.7%、12.36ミリモル)2.0gを、メタノール20mlに懸濁した。NaOMe2.89g(30%、16.07ミリモル)を添加し、懸濁液を、24時間撹拌下45℃に加熱した。変換は観察されなかった。次いで、反応混合物を3.5時間撹拌下、70℃に加熱した。NaOMeメタノール(30%)1.15mlを添加した後、撹拌下70℃に加熱することを3時間継続した。反応混合物を濾過し、濾過ケーキを30ミリバール/50℃で乾燥した。4−アミノ−2−メチル−5−ピリミジンカルボキサミドの収量は2.25g(純度30.1%)であった。母液を30ミリバール/50℃で濃縮すると、さらに1.0gの生成物(純度12.3%)が得られた。全収率:42.5%.
【0016】
[実施例2]
3−アミノ−2−シアノ−アクリルアミド0.6Og(82.2%、4.44ミリモル)とジメトキシエタン20mlの混合物に、トリエチルアミン0.56g(99.5%、5.52ミリモル)を室温で添加した。POCl0.56g(98.0%、3.55ミリモル)を滴下した。懸濁液は黄色になり、5時間後に、揮発性の/揮発性物質をすべて、30ミリバール/42℃で除去した。2−アミノメチレン−マロノニトリル780mgが得られた。収率:79.4%;純度42.6%。NaOH(28%)水溶液中の生成物をジクロロメタンで抽出することにより、より高い純度に到達することができる。
【0017】
[実施例3]
NaOMeメタノール溶液27.97g(13.72ミリモル、2.7%)を、アセトイミド酸メチルエステル塩酸塩1.58g(95.0%、13.72ミリモル)および2−アミノメチレン−マロノニトリル1.43g(68.7%、10.55ミリモル)に添加し、混合物を、アルゴン下、室温で5時間撹拌した。4−アミノ−2−メチル−5−ピリミジンカルボニトリルは、塩化ナトリウムを添加し、0℃に冷却したときでさえ沈澱せず、ワークアップは、揮発性物質をすべて、30ミリバール/48℃で除去することによって実現した。残留する固体を水に懸濁し、濾過した。濾過ケーキを乾燥し、NMRで分析した。ピリミジンカルボニトリルの収量:1.33g(60.0%、純度64.8%)。
【0018】
[実施例4]
3−アミノ−2−シアノアクリルアミド0.68g(82.2%、5.03ミリモル)とジメトキシエタン10mlの混合物に、トリエチルアミン0.63g(99.5%、6.26ミリモル)を添加した。次いで、POCl0.63g(98.0%、4.02ミリモル)を滴下し、その際に懸濁液は茶色がかった色になった。室温で2時間撹拌した後、まだ20%の出発材料が残存していた。さらにPOCl(0.17ml)を滴下した。3時間後、揮発性物質をすべて、30ミリバール、40℃で除去した。残留する固体残渣をメタノール10mlに溶解し、アセトイミド酸メチルエステル塩酸塩0.75g(95.0%、6.54ミリモル)を添加した。次いで、NaOMeメタノール溶液13.33g(2.7%、6.54ミリモル)を添加し、混合物を45℃で18時間撹拌した。2−アミノメチレン−マロノニトリルのみ認められ、ピリミジンカルボニトリルは認められなかった。
【0019】
[実施例5]
イソプロパノール10ml中2−アミノメチレン−マロノニトリル0.41g(4.44ミリモル)の混合物に、アセトアミジンイソプロパノール溶液2.74g(9.9%、4.66ミリモル)をゆっくりと添加した。懸濁液を室温で4時間撹拌した後、ピリミジンカルボニトリルは反応混合物中に検出されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式
【化1】



[式中、RはCONHまたはCNである]
の5−置換4−アミノ−2−メチルピリミジンおよびその酸付加塩の調製プロセスであって、式HN CH=C(R)−CNの化合物(II)とアセトイミド酸メチルエステルまたはその酸付加塩を反応させること、および望むなら、式Iの化合物を酸付加塩に転換することを特徴とするプロセス。
【請求項2】
出発材料2−アミノメチレン−マロノニトリルが、POClを用いた3−アミノ−2−シアノアクリルアミドの脱水により得られる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
2−アミノメチレン−マロノニトリルの調製プロセスであって、3−アミノ−2−シアノアクリルアミドがPOClで脱水されることを特徴とするプロセス。

【公表番号】特表2012−523392(P2012−523392A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504016(P2012−504016)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054629
【国際公開番号】WO2010/115950
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】