説明

ピルファープルーフキャップ

【課題】TEバンドにおけるいたずら防止機能とペットボトル容器からの離脱機能を併せ持つ合成樹脂製のピルファープルーフキャップの提供を図る。
【解決手段】ペットボトル容器の口頚ネジ部に螺合されるキャップ本体と、該キャップ本体のスカート部の下端に破断ブリッジを介して連結されるTEバンドと、から成る合成樹脂製のピルファープルーフキャップにおいて、TEバンドは、リング状のバンドの一部を切断して略C字状のバンドに形成する分割部を設け、キャップ本体からTEバンドが分離される際に発生する円周方向に働く開栓応力に対しては、係合面と被係合面との係合状態が維持されると共に、ペットボトル容器の落とし込み溝からTEバンドを取り外す際の中心から外方向に働く分離応力に対しては、係合面と被係合面との係合状態を容易に解除できる構成を採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッパーエビネンスバンドにおけるいたずら防止機能とペットボトル容器からの離脱機能を併せ持つ合成樹脂製のピルファープルーフキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
1995年に制定された容器包装リサイクル法により、飲料業界の1L未満の飲料用ペットボトルの自主規制が1996年に解除され、小型容量のペットボトル飲料が広く普及し流通するようになった。
【0003】
そのペットボトル飲料の普及に伴ってペットボトル容器の中に除草剤や液体洗剤を混入させるいたずら事件が発生し、その防止手段としてタッパーエビネンス(いたずら防止)機能を備えたピルファープルーフキャップが開発され、今日に至っている。
【0004】
ピルファープルーフキャップのいたずら防止機能は、キャップ本体を反時計回りに回すとキャップ本体とタッパーエビネンスバンド(以下TEバンドと呼ぶ)を繋ぐ破断ブリッジが千切れ、略1回りしたところでキャップ本体とTEバンドが完全に切り離される機能と、該TEバンドが切り離される同時にペットボトル容器の口頚部の密栓状態が解除される二つの機能を備えているものである。係るピルファープルーフキャップには、開封後もTEバンドがキャップ本体に繋がっている一体型(ラチェット式)タイプと、開封後はTEバンドがキャップ本体から完全に分離される分離型タイプの二つのタイプがある。
【0005】
一体型タイプのピルファープルーフキャップとしては、例えば、「ラチェット式螺子キャップ」(特許文献1)などの技術が提案されている。しかし、該提案は破断性、分離性、及びリサイクル性には優れるものの、外観美観性、リキャップ性、防犯性、安全性、及び分別廃棄性には問題があり、特に環境問題や製造物責任法(PL法)の観点から、現在では合成樹脂製のピルファープルーフキャップに使用されることが少なくなってきているという現状にある。
【0006】
他方、分離型タイプのピルファープルーフキャップとしては、外観美観性、リキャップ性、防犯性、安全性、及び分離性に優れており、現在のペットボトルキャップのほとんどに採用されるようになった。しかし、分離型タイプのピルファープルーフキャップは、TEバンドが使用済みのペットボトル容器に装着されたままの状態となることから、分別廃棄性、リサイクル性に問題点が残るものであり、特に「簡易洗浄」と、「ラベルの剥離」と、「キャップの分離」と言う容器リサイクル法に定められた排出者の義務を負うことができないでいるものである。
【0007】
そこで、係るTEバンドを分割して脱着可能とすることが考えられるが、分割構造とするには以下に示す問題点を解決しなければならない。
(1)ペットボトル容器の口頚部がTEバンドの分割部の切り込みの間から露出することによってTEバンドが破壊された不良品と見られて商品価値を下げる外観美観性を損なうおそれの問題。
(2)キャップの開栓時において、TEバンドが円周方向に伸びて拡張し、落とし込み溝の上段フランジを乗り越えてTEバンドがキャップ本体から破断しないという破断性の問題。
(3)TEバンドがリキャップ時にキャップ本体に連なっていて、リキャップ作業がやり辛いリキャップ性の問題。
(4)TEバンドの分割部の切込みを悪意的に細工することができない防犯性の問題。
(5)TEバンドを幼児が飲み込む危険や、キャップ本体に繋がったバンドの先端で目を刺したり、指を切る危険がない安全性の問題。
(6)TEバンドをペットボトル容器本体から道具などを用いることなく簡単に分離することができる分離性の問題。
(7)TEバンドの安易な投げ捨て行為や、分別収集作業における人件費の負担を軽減することができる分別廃棄性の問題。
(8)ペットボトル容器とキャップが完全に分離されるリサイクル処理コストの抑制と、マテリアルリサイクルの品質向上を図るリサイクル性向上の問題。
【0008】
このような問題に鑑み、従来より、上記の分離型タイプのピルファープルーフキャップの問題点を解決しようとする提案が種々なされている。その構造を大別すると、TEバンドにスリットを入れて分断したものと、TEバンドにスリットを入れて弱化ブリッジで繋いだものに別けることができる。
【0009】
TEバンドにスリットを入れて分断したものとしては、例えば、「容器蓋」(特許文献2)や、「ピルファープルーフ特性を有する合成樹脂製容器蓋」(特許文献3)が提案されている。
【0010】
しかしながら、それらの「容器蓋」ならびに「ピルファープルーフ特性を有する合成樹脂製容器蓋」の提案は、TEバンドのスリットが完全に分離しているため、分離性、リキャップ性、分別廃棄性、及びリサイクル性に優れるが、外観美観性、破断性、防犯性、及び安全性には問題が残るものであった。
【0011】
また、TEバンドにスリットを入れて弱化ブリッジで繋いだものとしては、例えば、「ピルファープルーフキャップ」(特許文献4)が提案されている。
【0012】
しかしながら、係る「ピルファープルーフキャップ」の提案は、TEバンドのスリット下端が弱化ブリッジで繋いであるため、破断性、リキャップ性、防犯性、及び安全性には優れるが、外観美観性、分離性、分別廃棄性、及びリサイクル性には問題が残るものであった。
【0013】
また、キャップ本体の緩み止め防止機能を向上させた「瓶及びキャップ」の技術が提案されている(特許文献5参照)。
【0014】
係る技術は本願発明とは課題が大きく相違しており、また、分離応力の向きや分離に関する記載も示唆もないが、一見すると、当該文献の図1、図5、図10にはTEバンドを分割した構成が記載されている。しかしながら、係る技術は、TEバンドによってキャップ本体の緩みを防止する技術であり、本願発明とは課題及び解決手段を大きく異にするものである。また、係る技術によると、弾性による変形量を許容するための範囲を制限する手段としては、分割部に隙間が形成されることが必須条件であって、その結果、分割部には工具等でいたずらされる可能性がある隙間が生じるものであり、係る隙間の存在は、TEバンドそもそもの目的であるタッパーエビネンス機能を低下させてしまうという大きな問題を残すものであった。
【0015】
以上のように従来のピルファープルーフキャップの何れの提案も、TEバンドにおける外観美観性、破断性、リキャップ性、防犯性、安全性、分離性、分別廃棄性、及びリサイクル性の全てを満たすことができないものであり、特に致命的な問題点は、TEバンドにスリットを入れて分断したものにおいては、TEバンドが開栓時に円周方向に伸びて拡張し、落とし込み溝の上段フランジを乗り越えてTEバンドが千切れない状態になる破断性問題と、ペットボトル容器の口頚部が分割部の切り込みの間から露出して商品価値を下げる外観美観性の問題と、スリットを意図的に細工することができる防犯性の問題が指摘される。他方、TEバンドにスリットを入れて弱化ブリッジで繋いだものにおいては、TEバンドをペットボトル容器本体から道具などを用いなくては切り離すことができない分離性の問題が指摘されるものであり、その破断性、外観美観性、防犯性、及び分離性の問題を全て解決できるピルファープルーフキャップは、現在においても提供されてはいないものである。
【0016】
本願発明者は、合成樹脂製のピルファープルーフキャップのTEバンドにおける上記の全ての問題点を解決するために、開栓応力と分離応力の向きの相違に着目し、キャップ本体からTEバンドが切り離される際に発生する円周方向に働く開栓応力に対しては、係合面と被係合面の係合状態を維持し、容器の落とし込み溝からTEバンドを取り外す際の中心から外方向に働く分離応力に対しては、係合面と被係合面の係合状態が解除することができる構成のTEバンドを採用することができれば、TEバンドのTE性と分別廃棄の分離性を併せ持つことができるのではないかとの着想の下、本出願における「ピルファープルーフキャップ」の提案に至ったものである。なお、本書面中における係合面とは、前記開栓応力により引張応力を加える側の面形状をいい、被係合面とは、該開栓応力により引張応力を加えられる側の面形状をいうものとる。また、係合面と被係合面とは隙間を設けない接触状態にあるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2007-45485号公報
【特許文献2】特開平6-156516号公報
【特許文献3】特開昭57-28767号公報
【特許文献4】特開2003-54597号公報
【特許文献5】特開2002−120852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は上記問題点に鑑み、TEバンドにおけるいたずら防止機能とペットボトル容器からの離脱機能を併せ持つ合成樹脂製のピルファープルーフキャップの提供を図る。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は上記目的を達成するためになされるもので、ペットボトル容器の口頚ネジ部に螺合されるキャップ本体と、該キャップ本体のスカート部の下端に破断ブリッジを介して連結されるTEバンドと、から成る合成樹脂製のピルファープルーフキャップにおいて、前記TEバンドは、リング状のバンドの一部を切断して略C字状のバンドに形成する分割部を設けて成り、前記分割部の一端には、他端を係合する係合面を少なくとも1以上設け、該他端には、前記係合面によって係合される被係合面を少なくとも1以上設けて成り、前記キャップ本体から前記TEバンドが分離される際に発生する円周方向に働く開栓応力に対しては、前記係合面と前記被係合面との係合状態が維持されると共に、前記ペットボトル容器の落とし込み溝から前記TEバンドを取り外す際の中心から外方向に働く分離応力に対しては、前記係合面と前記被係合面との係合状態が解除される構成を採用した。
【0020】
また本発明は、前記TEバンドの分割部の周辺に係合状態の安全性を確認するための目印を設けた構成を採用した。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るピルファープルーフキャップによれば、分割部の一端には、他端を係合する係合面を少なくとも1以上設けられ、該他端には、係合面によって係合される被係合面を少なくとも1以上設けられていることによって、キャップ本体からTEバンドが分離される際に発生する円周方向に働く開栓応力に対しては、係合面と被係合面との係合状態が維持する構造のTEバンドを備えたことによって、破断性、外観美観性、防犯性、及び分離性の確保ができるという優れた効果を奏する。
【0022】
また本発明に係るピルファープルーフキャップによれば、ペットボトル容器の落とし込み溝からTEバンドを取り外す際の中心から外方向に働く分離応力に対しては、係合面と被係合面との係合状態を容易に解除できることから、道具などを使用することなく簡単にTEバンドを分離することができるという優れた効果を奏する。
【0023】
また本発明に係るピルファープルーフキャップによれば、ペットボトル容器とTEバンドが業務用ならびに家庭用と共に完全に分離することができるため、リサイクル性の能率向上、再生コストの削減、分別作業における人件費の削減、リサイクル処理コストの抑制、及びマテリアルリサイクルの品質向上も図れるという優れた効果を奏する。
【0024】
また本発明に係るピルファープルーフキャップによれば、分割部の形状が意図的に形成される幾何学形状であるため、外観美観性と安全性を同時に備えるTEバンドの提供ができるという優れた効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るピルファープルーフキャップの全体の形状を示す説明図である。(実施例1)
【図2】本発明に係るピルファープルーフキャップの使用状態を示す説明図である。
【図3】本発明に係るピルファープルーフキャップの作用状態を示す説明図である。
【図4】本発明に係るピルファープルーフキャップの係合面の実施例を示す説明図である。(実施例2)
【図5】本発明に係るピルファープルーフキャップの別の係合面の実施例を示す説明図である。(実施例3)
【図6】本発明に係るピルファープルーフキャップの使用手順を示す説明図である。
【図7】本発明に係るピルファープルーフキャップの安全性を確認する目印を示す説明図である。(実施例4)
【図8】本発明に係るピルファープルーフキャップのいたずら行為を示す説明図である。
【図9】本発明に係るピルファープルーフキャップの従来の実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のピルファープルーフキャップは、リング状のTEバンドの一部を切断して略C字状のバンドに形成する分割部を設け、キャップ本体からTEバンドが分離される際に発生する円周方向に働く開栓応力に対しては、係合面と被係合面との係合状態が維持されると共に、ペットボトル容器の落とし込み溝からTEバンドを取り外す際の中心から外方向に働く分離応力に対しては、係合面と被係合面との係合状態を容易に解除できる構成を採用したことを最大の特徴とするものである。以下、本発明を実施するための実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
本発明に係るピルファープルーフキャップにおけるTEバンドの分割部の係合面ならびに被係合面の形状は、下記に述べる実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、即ち、開栓応力と分離応力との関係における分割部の係合状態として、同一の作用効果を発揮できる形状及び寸法の範囲内で変更することができるものである。
【実施例1】
【0028】
図1は、本発明に係るピルファープルーフキャップの全体の形状を示す説明図である。
図1(a)はピルファープルーフキャップ1の全体斜視図を示し、図1(b)はピルファープルーフキャップ1の底面図を示す。
本発明におけるピルファープルーフキャップ1は、ペットボトル容器30の口頚ネジ部31に螺合されるキャップ本体10と、該キャップ本体10のスカート部11の下端に破断ブリッジ12を介して連結されるTEバンド20と、から成る合成樹脂製のピルファープルーフキャップ1であって、TEバンド20は、リング状のバンドの一部を切断して略C字状のバンドに形成する分割部21を設けて構成される。
【0029】
図1(c)はTEバンド20の分割部21の要部拡大図を示す。
分割部21の一端22には、他端23を係合する係合面24を少なくとも1以上設け、該他端23には、係合面24によって係合される被係合面25を少なくとも1以上設けて成り、図3に示すような、キャップ本体10からTEバンド20が切り離される際に発生する円周方向に働く開栓応力Wに対しては、係合面24と被係合面25との係合状態が維持されると共に、ペットボトル容器30の落とし込み溝32からTEバンド20を取り外す際の中心から外方向に働く分離応力Rに対しては、係合面24と被係合面25との係合状態が解除されるものである。
【0030】
キャップ本体10は、ペットボトル容器30の口頚ネジ部31に螺合されるポリプロピレン樹脂製等の密閉キャップで、スカート部11にはスベリ止め用の複数本のナール線が施され、下端には、破断ブリッジ12によって切り離されるフラップ13が内設されたTEバンド20が連結されている。天面内側には、TEバンド20が切り離される同時にキャップ本体10内部のパッキンとペットボトル容器30の口頚上部との密栓状態が音と共に解除されることでペットボトル容器30の内部に外気が入り込み、飲料水の液面が下がる従来技術のいたずら防止機能を備えることができるものである。なお、キャップ色は基本的には白色をしているが、高温度帯用ではオレンジ色、冷凍温度帯用ではブルー色が施されているのが一般的である。
【0031】
TEバンド20は、リング状のバンドの一部を切断して略C字状のバンドに形成する分割部21を設けて成り、キャップ本体10と同じくポリプロピレン樹脂製でキャップ本体10に対してやや肉厚のテーパ状の平滑面を形成してキャップ本体10の下端に破断ブリッジ12を介して連結されるもので、キャップ本体10を反時計回りに回すとキャップ本体10とTEバンド20を繋ぐ破断ブリッジ12が千切れ、略1回り程回り切ったところでキャップ本体10とTEバンド20が完全に切り離される機能を有している。
【0032】
分割部21の一端22には、他端23を係合する係合面24を少なくとも1以上設け、該他端23には、係合面24によって係合される被係合面25を少なくとも1以上設けて構成されるものである。加工方法は、射出成形加工またはカッター切断加工によるものが一般的であるが、その加工方法に関しては特に限定するものではない。また分割部21がTEバンド20の内側に設けられているフラップ13がペットボトル容器30の上段フランジ33に係止する位置より下方に設けられているため、開栓時にTEバンド20が伸びて拡張することで上段フランジ33に乗り上げたりすることがない構造で構成するものである。
【0033】
ペットボトル容器30は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製等の190ml〜4L容量までの無色透明なペットボトル等であって、形状は、従来型ならびに炭酸用の凸半球型ペットボトルと、炭酸用の丸型ペットボトルと、無炭酸用の角型ペットボトルがある。部品構成は、ピルファープルーフキャップ1をペットボトル容器30の口頚ネジ部31で螺合し、該口頚ネジ部31の下方部に設けられる上段フランジ33と下段フランジ34で形成される落とし込み溝32にTEバンド20が収納されて構成される。
【0034】
図2は、本発明に係るピルファープルーフキャップの使用状態を示す説明図である。
ピルファープルーフキャップ1の開封状態を図を基に説明すると、キャップ本体10を反時計回りに回すとキャップ本体10とTEバンド20が、120〜180度程一緒に回り、180度付近からキャップ本体10とTEバンド20を繋ぐ破断ブリッジ12が「メリメリ」と言う音を立てながら離れ始め、略270度超える辺り(破断後にリークを開始する角度をLB角度と言う)から「ブチッ」と言う音と共に破断ブリッジ12が千切れ、略270〜360度程回り切ったところでキャップ本体10とTEバンド20が完全に切り離される機能と、該TEバンド20が切り離される同時にキャップ本体10の天面内部のパッキンとペットボトル容器30の口頚上部との密栓状態が「シュポ!」と言う音と共に解除されることでペットボトル容器30の内部に外気が入り込み、充填される飲料水の液面が下がって開封される機能を備えるものである。
【0035】
図3は、本発明に係るピルファープルーフキャップの作用状態を示す説明図である。
図3(a)は、TEバンド20の円周方向の開栓応力Wに対する説明図を示す。
分割部21の一端22には、他端23を係合する係合面24を少なくとも1以上設け、該他端23には、係合面24によって係合される被係合面25を少なくとも1以上設けて成キャップ本体10からTEバンド20が切り離される際に発生する円周方向に働く開栓応力Wに対しては、係合面24と被係合面25との係合状態が維持されるものである。
【0036】
図3(b)は、TEバンド20の外方向に働く分離応力Rに対する説明図を示す。
分割部21の一端22には、他端23を係合する係合面24を少なくとも1以上設け、該他端23には、係合面24によって係合される被係合面25を少なくとも1以上設けて成り、ペットボトル容器30の落とし込み溝32からTEバンド20を取り外す際の中心から外方向に働く分離応力Rに対しては、係合面24と被係合面25との係合状態が解除されるものである。
【実施例2】
【0037】
図4は、本発明に係るピルファープルーフキャップの係合面の実施例を示す説明図であり、図4(a)〜(d)の各図は、分割部21を構成する係合面24ならびに被係合面25の形状を例示したものである。いずれの形状も、キャップ本体10からTEバンド20が切り離される際に発生する円周方向に働く開栓応力Wに対しては、係合面24ならびに被係合面25との係合状態が嵌め込み構造によって強力に維持されるものである。また、図4に例示した形状は該開栓応力Wを2箇所以上に分散させている。以下、其々の形状を採用した場合の作用効果について説明する。
【0038】
図4(a)は、極めてシンプルな三角形構造により係合される構成の係合面形状を示したものであり、係合面24ならびに被係合面25を形成する辺数が極めて少ないことから加工が容易なものである。係る形状を採用した場合において、円周方向に開栓応力Wが作用すると、係合面24及び被係合面25を介して、係合面24側のTEバンド20及び被係合面25側のTEバンド20の其々に引張応力を加えると共に、該円周方向に対する垂直方向(以下、単に垂直方向という。)の応力として、係合面24側のTEバンド20には上下方向への圧縮応力と、被係合面25側のTEバンド20には中心方向への圧縮応力とが、其々働く構成となる。従って、分割部21の係合面24側のTEバンド20の上下における最小幅部となる鋭角部には、引張応力のみならず、これを起点として開口しようとするモーメントも生じるため、これに耐え得る耐曲げ応力も考慮し、素材の強度等から寸法ならびに形状が決定されるものである。
【0039】
図4(b)は、極めてシンプルな円形構造の係合面形状を示したものであり、係合面24ならびに被係合面25を円形の曲面で形成することで集中荷重の発生を防ぎ、クラックの発生を抑制して破断性を向上させるものである。また、分割部21の製造段階で形成した切込みであって、後から故意に細工されたものではないと容易に認識できる形状であり、ペットボトル飲料等を購入する際の安心感にも寄与する。係る形状を採用した場合は、係合面24は開栓応力Wにより被係合面25の円周方向には引張応力を加えると共に、垂直方向に対しては被係合面25に圧縮応力を加える構造となる。なお、鋭角部を有しないため応力分布がなだらかであり、前記図4(a)と比較するとクラック発生の抑制効果が高い。但し、前記モーメントについては前記図4(a)と同様、分割部21の係合面24側のTEバンド20の上下における幅が最小となる部分には、引張応力のみならず、これを起点として開口しようとするモーメントに耐え得る耐曲げ応力も考慮し、素材の強度等から寸法ならびに形状が決定されるものである。
【0040】
図4(c)は、係合面24と被係合面25の係合面が垂直方向に接触面を形成する形状を例示したものである。係る形状を採用した場合において、円周方向に開栓応力Wが作用すると、係合面24及び被係合面25を介して、係合面24側のTEバンド20及び被係合面25側のTEバンド20の其々最小幅部に引張応力が働く構成である。従って、係合面24側のTEバンド20及び被係合面25側のTEバンド20の其々の幅が最小となる部分には、該引張応力に耐え得る耐引張荷重を考慮し、素材の強度等から寸法ならびに形状が決定されるものである。
【0041】
図4(d)は、円形構造の係合面24ならびに被係合面25が連続して形成して係合される係合面形状を示したものであり、前記図4(b)と同様に、係合面24ならびに被係合面25を円形の曲面で形成することで集中荷重の発生を防ぎ、クラックの発生を抑制して破断性を向上させるものである。また、分割部21の製造段階で形成した切込みであって、後から故意に細工されたものではないと容易に認識できる形状であり、ペットボトル飲料等を購入する際の安心感にも寄与する。係る形状を採用した場合は、係合面24は開栓応力Wにより被係合面25の円周方向には引張応力を加えると共に、垂直方向に対しては被係合面25に圧縮応力を加える構造となる。なお、鋭角部を有しないため応力分布がなだらかであり、前記図4(a)と比較するとクラック発生の抑制効果が高い。但し、前記モーメントについては前記図4(a)と同様、分割部21の係合面24側のTEバンド20の上下における幅が最小となる部分には、引張応力のみならず、これを起点として開口しようとするモーメントに耐え得る耐曲げ応力も考慮し、素材の強度等から寸法ならびに形状を決定されるものである。なお、係る形状では円周方向に働く開栓応力Wを3箇所に分散して破断し難い構造としている点、及び開口しようとする曲げ応力を被係止面25側のTEバンド20にも同様に働かせている点で、前記図4(a)〜(c)とその構成を異にしている。
【実施例3】
【0042】
図5は、本発明に係るピルファープルーフキャップの別の係合面の実施例を示す説明図である。図5(a)及び図5(b)の各図に示した係合面形状において特徴的なのは、キャップ本体10からTEバンド20が切り離される際に発生する円周方向の開栓応力Wが係合面24及び被係合面25に作用すると、垂直方向に向かう圧縮応力とモーメントによる回転方向が対向関係となる点である。即ち、係合面24側のTEバンド20により被係合面25側のTEバンド20が引っ張られると、図5に示すように係合面が傾斜しているため、TEバンド20一端22は円周方向の開栓応力Wが傾斜角分だけ下方に向かうベクトルとなり、多端23は、逆に上方へ向かうベクトルとなり、相互に対等且つ対向の応力が中心方向に働くため、離れにくくなる作用を生じる構成の相互食込状傾斜面形状とした点である。以下、其々の形状を採用した場合の作用効果について説明する。なお、図5に例示した形状は、該開栓応力を1箇所のみの構成とした場合を例示しているが、2箇所以上として応力を分散させてもよい。
【0043】
図5(a)は、分割部21の切込みを、相互食込状傾斜面形状にする場合において、最もシンプルな三辺構造により前記作用効果を発揮させることが可能となる係合面形状を示したものである。係合面24ならびに被係合面25を形成する辺数が極めて少ないことから分割部21の加工を容易なものとするものである。
【0044】
図5(b)は、前記図5(a)と同様に、分割部21の切込みを相互食込状傾斜面形状としつつ、クランク状の屈曲形状を形成して、TEバンド20の垂直方向における最小幅部を分布させることで、耐引張荷重の向上を図るものである。
【0045】
図6は、本発明に係るピルファープルーフキャップの使用手順を示す説明図である。
(1)ペットボトル容器30がピルファープルーフキャップ1によって密封されている。
(2)キャップ本体10を反時計回りに回すとTEバンド20の破断ブリッジ12が千切れて切り離される同時に、キャップ本体10内部のパッキンとペットボトル容器30の口頚上部との密栓状態が解除され、開封することによってキャップ本体10が外される。この時、TEバンド20の分割部21には円周方向に開栓応力Wが働くが、キャップ本体10とTEバンド20は破断されるまで半時計方向に同時に回転する。
(3)TEバンド20がペットボトル容器30の口頚ネジ部31の下方部に設けられる上段フランジ33と下段フランジ34で形成される落とし込み溝32に分割部21が係合された状態で落とし込まれ、収納される。
(4)TEバンド20の分割部21を指先で軽く中心から外方向に分離応力Rをかけて引いてやると、TEバンド20はペットボトル容器30の落とし込み溝32から自然に外れる。
(5)TEバンド20をペットボトル容器30から離脱させる。
(6)終了
【0046】
以上のように、道具や大きな分離応力Rを必要とすることなく、TEバンド20をペットボトル容器30から容易に離脱させることができるものである。
【実施例4】
【0047】
図7は、本発明に係るピルファープルーフキャップの安全性を確認する目印を示す説明図である。TEバンド20の分割部21の周辺に係合状態の安全性を目視するための目印29を設けることによって、製造段階で形成した切込みであるか否かを確認できると同時に、使用するユーザーに安心感を与える構成とするものである。例えば、図7(a)は、分割部21の切込みの両側にドットホール29aを設けてその領域内に設けられた切込みの安全性を視認させる方法を示し、図7(b)は、分割部21の切込みの周辺エリアを色分けして切込みの安全性を視認させる方法を示し、図7(c)は、分割部21の切込み自体に面取りを設けたり、切込み自体を色付けして目立たせる方法を採ることもできるものである。
【0048】
図8は、本発明に係るピルファープルーフキャップのいたずら行為を示す説明図である。
図8(a)は正常な状態を示しており、TEバンド20がペットボトル容器30の上段フランジ33と下段フランジ34で形成される落とし込み溝32に落とし込まれ、収納されている。
【0049】
図8(b)はいたずら行為をしようとする状態を示す。いたずら行為をしようとする場合、分割部21の切込みの係合面24ならびに被係合面25の付け根28をカッターKなどで細工しようとすると、係合面24を形成する舌片26が根元から脱落して溝27が繰り抜かれた状態になり、さらに付け根28にカッターKの切れ目が入ることにより、いたずら行為の痕跡が明確に視認できる状態となり、結果的にいたずら行為の防止が図れるものである。
【0050】
図9は、本発明に係るピルファープルーフキャップの従来の実施例を示す説明図である。
図9(a)〜(d)の各図は、従来のスリット40の実施例を示すものである。
TEバンド20にスリット40を入れて分断したもので、TEバンド20のスリット40が円周方向に完全に分離しているため、外観美観性、破断性、防犯性、及び安全性に問題があるものであった。
【0051】
図9(e)は、従来のスリット40の別の実施例を示すものである。
TEバンド20のスリット40の上端が弱化ブリッジ41で繋いであるものである。
この状態の弱化ブリッジ41は、キャップ本体10の回転によって千切れることができないばかりか極小または極細の弱化ブリッジ41であっても、材質の強度が極めて高いことから工具等を使用しなければ破断することができないため、破断性及び分離性に問題があるものであった。また、キャップ本体10のスカート部11の下端部がキャッピング時に末広がりに拡張してしまう可能性もあるものである。
【0052】
図9(f)は、従来のスリット40の別の実施例を示すものである。
TEバンド20のスリット40の上端が弱化ブリッジ41で繋いであるものである。
この状態の弱化ブリッジ41は、キャップ本体10の回転によって千切れることができないばかりか極小または極細の弱化ブリッジ41であっても、材質の強度が極めて高いことから工具等を使用しなければ破断することができないため、分離性に問題があるものである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のピルファープルーフキャップは、ペットボトル飲料容器のTE性を有するキャップを実施例として説明しているが、飲料用のピルファープルーフキャップ以外、例えば食品容器用、医療容器用、および工業用容器用のピルファープルーフキャップとしても広く利用することができるもので、本発明のピルファープルーフキャップの産業上の利用可能性は大とするものと解する。
【符号の説明】
【0054】
1 ピルファープルーフキャップ
10 キャップ本体
11 スカート部
12 破断ブリッジ
13 フラップ
20 TEバンド
21 分割部
22 一端
23 他端
24 係合面
25 被係合面
26 舌片
27 溝
28 係合面の付け根
29 目印
29aドットホール
30 ペットボトル容器
31 口頚ネジ部
32 落とし込み溝
33 上段フランジ
34 下段フランジ
40 スリット
41 弱化ブリッジ
W 開栓応力
R 分離応力
K カッター


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペットボトル容器の口頚ネジ部に螺合されるキャップ本体と、
該キャップ本体のスカート部の下端に破断ブリッジを介して連結されるTEバンドと、
から成る合成樹脂製のピルファープルーフキャップにおいて、
前記TEバンドは、リング状のバンドの一部を切断して略C字状のバンドに形成する分割部を設けて成り、
前記分割部の一端には、他端を係合する係合面を少なくとも1以上設け、
該他端には、前記係合面によって係合される被係合面を少なくとも1以上設けて成り、
前記キャップ本体から前記TEバンドが分離される際に発生する円周方向に働く開栓応力に対しては、前記係合面と前記被係合面との係合状態が維持されると共に、
前記ペットボトル容器の落とし込み溝から前記TEバンドを取り外す際の中心から外方向に働く分離応力に対しては、前記係合面と前記被係合面との係合状態が解除されることを特徴とするピルファープルーフキャップ。
【請求項2】
前記TEバンドの分割部の周辺に、係合状態の安全性を確認するための目印を設けたことを特徴とする請求項1記載のピルファープルーフキャップ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−254809(P2012−254809A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128751(P2011−128751)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【特許番号】特許第5007893号(P5007893)
【特許公報発行日】平成24年8月22日(2012.8.22)
【出願人】(597116252)
【Fターム(参考)】