説明

ファイバ複合タイロッド用力伝達アセンブリ

【課題】複合ファイバタイロッド用の力伝達アセンブリの構成と製造する方法を提供する。
【解決手段】力伝達部材1を有する、複合ファイバタイロッド用の力伝達アセンブリで、その断面は少なくとも部分領域2でタイロッド12から反対方向に先細りとなっている。これにより、力伝達部材1は、タイロッド12の端部領域4にしっかりと取り付けられる。力伝達部材1は、タイロッド12を越えて伸びており、力を伝達するために中空形状を有する。本発明はさらに、複合ファイバタイロッド12用の力伝達アセンブリを製造する方法に関し、それは力伝達部材1を、タイロッド12から反対方向に先細りとなった力伝達部材12の部分領域2でタイロッド12にしっかりと取り付けることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力伝達部材と複合ファイバロッドを備えたタイロッド用の力伝達アセンブリであって、力伝達部材の部分領域にしっかりと手動で係合され、その部分領域が複合ファイバロッドから離れる方向に向けて先細りとなっているものに関する。
【0002】
本発明により提案された力伝達アセンブリを有するタイロッドは、クレーン構造の分野でラチス構造のタワーヘッドを固定するために利用できる。しかし、その適用は、ラチス構造のタワーヘッドを固定することに限定されるものでなく、複数のコンポーネント(部材)が軸方向の引張力を受けるとともにその力が複合ファイバ材料に伝達されるような種々の分野のクレーン構造に特に利用できる。
【0003】
複合ファイバ材料からなるロッドが従来のタイロッドに比べて有利な点は、それらが低重量であるにも拘わらず、大きな引張力を吸収できる、ということである。反対に、同一重量の複合ファイバ材料からなるタイロッドは、より大きな引張力を吸収できる。
【背景技術】
【0004】
DE 10 2006 039 565A1、DE 10 49 591 A1、およびDE 10 2004 021 144A1は、複合ファイバロッド用の力を伝達する手段を開示しており、そこでは、力を複合ファイバロッドに伝達するために、力伝達部材が接着剤を用いた連結材料及び/又は摩擦はめ合いによって、協働する複合ファイバロッドに連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】DE 10 2006 039 565A1
【特許文献2】DE 10 49 591 A1
【特許文献3】DE 10 2004 021 144A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、そのような力伝達アセンブリは、複合ファイバロッドに伝達されるべき力が所定の大きさまでの場合にのみ利用可能である。したがって、この種の力伝達アセンブリは、例えばクレーン構造のように非常に大きな力が発生する場所には不適当である。
【0007】
本発明の目的は、複合ファイバタイロッドに好適であって、それにより非常に大きな力をタイロッドに伝達できる力伝達アセンブリを提案することにある。そのタイロッドは、メンテナンス及び調整が不要であり、容易に製造できる。
【0008】
この目的は、請求項1の発明により実現できる。従属請求項の発明は、本発明の好適な実施形態である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明で提案された力伝達アセンブリは力伝達部材を有し、タイロッドに伝達された力がこの力伝達部材に作用する。そのような力は、タイロッドの長軸にほぼ平行に作用する。本発明で提案するように、力伝達部材の断面は、少なくとも力伝達部材の部分領域において、タイロッドから離れる方向に向けて先細りとなっている。そのために、力伝達部材は、部分領域を囲むタイロッドの端部領域にしっかりと嵌め合わされる。換言すれば、タイロッドに対向する部分領域の端部であって該端部を囲むタイロッドの端部領域に対向する領域は、タイロッドの端部領域を囲むタイロッドから反対側の部分領域端部よりも大きな断面を有する。したがって、タイロッド端部の先細り形状により、タイロッドから力伝達部材を引き出すことは困難である。このように力伝達部材とタイロッドの間に形成されたはめ合いにより、力伝達部材に作用する非常に大きな力はタイロッドに伝達される。タイロッドはまた、中空形状を有することから、上記部分領域で力伝達部材の周囲を完全に囲む。また、力伝達部材は、中空形状を有するタイロッドを越えて伸びているので、タイロッドに伝達されるべき力は力伝達部材に外側からタイロッドに作用する。したがって、伝達される力は、それぞれの部材を介してタイロッドを囲む中空形状の内側領域に向けられることがない。単一部材からなる力伝達部材が中空形状から伸びていることにより、構造的な弱点となって破断の可能性がある連結点を力伝達部材の間に設ける必要がなくなる。しかし、その力がタイロッドに伝達されて該タイロッドの中空形状の内側にある力伝達部材に作用することは概ね想像できることである。この場合、力伝達部材は、必ずしもタイロッドから伸出する必要がない。同様に、力伝達部材の部分領域は、周方向又は軸方向に関して、タイロッドによって完全に囲まれている必要がない。しかし、力伝達部材がその部分領域において少なくとも周方向に完全にタイロッドで囲まれている場合、そのようにすることが好ましい。これにより、力伝達部材は、あらゆる半径方向に関して、タイロッドにしっかりと連結される。
【0010】
少なくともタイロッドが力伝達部材を囲む領域であってタイロッドの外周上にある種の巻線(ワインディング)を有するか、または、タイロッドと力伝達部材が径方向に関して他方の上に配置されることが好ましい。この巻線は、別のファイバ複合層を設けることによって形成できる。ファイバ複合層の中でそのファイバが配置される方向は、タイロッドの長軸を横断する方向である。特に好ましいのは、巻線のファイバ配置方向が、長手方向に垂直であり且つ少なくとも力伝達部材の部分領域で周方向であることである。巻線の目的は、力伝達部材とタイロッドとの間のしっかりした連結に寄与することである。したがって、力伝達部材を引っ張ったときにロッドの先細り(テーパ)端部を拡大すること不可能である。何故ならば、周方向に作用する力が吸収されることにより、周方向の巻線によってタイロッドは広がることができなくなるからである。
【0011】
この点に関して、「軸方向」の表現は、該軸方向がタイロッドの長軸に平行な方向に伸びていることを意味するものと理解すべきである。
【0012】
他の好適な実施形態において、力伝達部材の部分領域とタイロッドは、回転方向に関して対称な横断面形状を有する。また、力伝達部材の部分領域の対称軸は、タイロッドの対称軸に一致している。タイロッドが回転方向に関して対称であることにより、非対称断面を有するタイロッドのよりも、ねじりモーメントが良く吸収される。タイロッドが円い形を有することの別の利点は、風力によって誘発されるタイロッド内の振動が防止されることである。タイロッドはまた、平坦な配置をもって力伝達部材に対して設けてあり、そのために、タイロッドと力伝達部材の間に直接的で且つ物理的な接触を生じる。相互接続部材を用いることなく、力伝達部材の部分領域でタイロッドが力伝達部材と直に接触するのが有利である。その理由は、力伝達部材に作用する力は、力の流れを不必要に歪めることなく(相互接続部を用いると該相互接続部を介して力の伝達方向が変えられる。)、タイロッドに直接伝達されるからである。しかし、他の層、例えばタイロッドを熱的又は機械的な影響から保護するための被覆や電気的に導電性又は絶縁性の被覆を、タイロッドの内部又はその上に設けてもよい。しかし、これらの被覆は、別体のものや連結部材に設けられるものでなく、タイロッドの一部とみなされる。
【0013】
力伝達部材の部分領域は、少なくとも所定領域で、タイロッドから離れる方向に向けて円錐形に先細り(テーパ)となっていてもよい。または、部分領域のテーパは、部分領域の長軸を横切って原則的に一定に伸びていてもよい。これにより、タイロッドのファイバはできるだけ真っ直ぐな線に沿って伸びる。その結果、力はロッドを真っ直ぐな線に沿って伝達し、力伝達アセンブリの荷重支持能力が向上する。
【0014】
他の好適な実施形態では、タイロッドの内面の横断勾配は、力伝達部材の部分領域で、軸方向に急に変化している。この実施形態では、タイロッドに対向する部分領域の端部領域で、横断面が急に変化している。そのように急に断面が変化する場合、特にタイロッドの内壁又は外壁がテーパ領域からタイロッド長軸にほぼ平行に伸びる領域に横断面勾配の変化があれば、横断面勾配のそのように急に変化によってクリア領域を定義でき、そこでは力が力伝達部材からタイロッドにしっかりした連結によって伝達される。
【0015】
タイロッドに対向する部分領域の端部をタイロッドの円筒コアで拘束することもできる。この場合、タイロッドの内壁において、力伝達部材の部分領域からタイロッドのコアまでの間に継ぎ目を無くすことができる。力伝達部材全体がタイロッドのコアに隣接する設計を選択することもできる。この場合、テーパの付いた部分領域は、タイロッドに対向する力伝達部材の端部に配置される。
【0016】
タイロッドは、巻回されたファイバ複合材から作ることが好ましい。例えば、荷重の大部分(すなわち、伝達される力)を吸収するファイバ複合層を巻回してもよい。しかし、
タイロッドを構成する複数の巻回ファイバ複合層も考えられる。例えば、巻回保護層は紫外線放射から保護し、または、力伝達部材とタイロッドのファイバ複合層との間の電気的接触を防止する。この巻回ファイバ複合層の利点は、安価な方法を用いてタイロッドを任意の形状に作ることができ、大断面及び壁厚の大きなタイロッドが得られる、ということである。力伝達部材のテーパがタイロッドの端部領域にあって、タイロッドの横断面テーパがそれに連結される場合、特に有利である。タイロッドの横断面は簡単に変更できるからである。タイロッドのテーパ端部は、荷重が作用すると細くなる。換言すれば、力伝達部材が引っ張られると、該テーパ端部が連結を強化する。通常、巻回タイロッドは、ファイバ複合材のファイバが配置される複数(最大で4つ又は2つ)の好ましい方向を有する。巻回タイロッドの正確な再現性は、FEM計算法を基礎として得ることができる。
【0017】
本発明で提案された力伝達アセンブリは、力伝達部材の周りを周方向に伸びるカラーを有し、これに対してタイロッドの周囲の巻線が軸方向に支持されている。このカラーは、例えば接着又は溶接によって力伝達部材に連結してもよいし、例えば、ねじのような位置決め要素を組み込んでもよい。この位置決め要素は、力伝達部材に設けることができる。これにより、ロッドとは反対側の力伝達部材の端部方向にロッド端部上で巻線がスリップするのを防止する。したがって、力伝達部材とタイロッドとの間に信頼性のあるしっかりした連結を維持できる。
【0018】
本発明で提案されているように、力伝達部材は、鉄系材料(例えば、鋼)から作ることができる。特に、力伝達部材の全体を鋼で作っても良い。タイロッドは、カーボンファイバ複合材料で作ることができる。この場合、カーボンファイバ複合材料が、力伝達部材を介してタイロッドに伝達されるすべての軸方向力を吸収する。したがって、カーボンファイバ複合材料の層は、ロッドの「支持層」を構成する。当然、タイロッドは、その他の要素(部材)、例えば、タイロッドの長軸と同軸に伸びるコアを有し、その周りにはタイロッドのファイバ複合層が配置され、及び/又は、タイロッドを紫外線放射又はタイロッドの周面に作用する機械的力から保護する、または異なる電気陰性度を有する部材を隣接させるための電気的絶縁層、若しくは例えば落雷による電気的エネルギを止めるための電気的導電層が配置される。特に、タイロッド又は力伝達部材は、以下の要素の一つ又は複数を組み込むことができる。
【0019】
例えば落雷によって生じる電気エネルギを止めるための銅系材料からなる層。このような層は、タイロッドの外周上に配置され、タイロッドのカーボンファイバ複合層の外周に直接位置させることが好ましい。
【0020】
紫外線放射から保護するグラスファイバ複合材料からなる第1の層。この場合、この層は、タイロッドの最外層に設けることが好ましい。
【0021】
タイロッドのカーボンファイバ複合層から力伝達部材を電気的に絶縁するためのグラスファイバ複合層を有する第2層。この場合、第2層は、タイロッドのカーボンファイバ複合層と力伝達部材の間の界面に配置するのが好ましい。これにより、接触腐食が効率良く防止される。この接触腐食は、鋼及びカーボンファイバ複合材料からなる力伝達部材の電気陰性度を違えることにより生じ得る。
【0022】
タイロッドの周面に作用する機械的な影響から保護するためのタイロッドの最外周(タイロッドの最外層の周面上)に配置された巻線。このような巻線は、少なくともタイロッドの端部領域の周面上で長手方向に螺旋状に伸びるグラスファイバ複合材料のストランドを有する。これにより、タイロッドの周面に衝撃が作用するのを効率よく防止できる。この衝撃は、タイロッドを損傷し、その層を剥がすことになる。この巻線はまた、タイロッド端部上の巻線の周面周りに伸びていてもよい。この場合、力伝達部材とタイロッドとの間にしっかりした連結を保証できる。
【0023】
本発明はまた、本発明によって提案された、タイロッド用の力伝達アセンブリを製造する方法に関する。
【0024】
本発明の提案によれば、その方法は、タイロッドから反対方向に向けて先細りとなった力伝達部材の部分領域において力伝達部材をタイロッドに頑丈に連結することを含む。
【0025】
本発明により提案された製造方法は、以下の工程の一つ又は複数を含むことが好ましい。
【0026】
力伝達部材が、細長い円筒形状を有するコアの一端に取り付けられる。そのために、センタリング部材を使用してもよい。センタリング部材により、力伝達部材が、コア上の唯一の特定位置に又は特定の位置若しくは特定の方向に取り付けられる。そのようなセンタリング部材はチューブであってもよい。このチューブは、コアと同軸に配置され、該コアから伸出し、その上に力伝達部材が中央孔(ボア)によって取り付けら玲留。
【0027】
タイロッドは、コアの周りであって、コアに取り付けられた力伝達部材の少なくとも一部の周りに、例えば巻回工程によって形成される。この点に関して、タイロッドは、本発明にしたがって、力伝達部材のテーパが付いた部分領域の少なくとも一部を横断して形成される。これにより、力伝達部材は、包装又は巻き取りによって、コアを組み込むタイロッドに既に連結されている。そこでの接続において、コアの周囲であって力伝達部材の周囲にタイロッドを形成する方法は、複数の別個の工程、例えば、タイロッドの主支持層を構成するカーボンファイバ複合層を巻構成するカーボンファイバ複合層を巻き、別個のグラスファイバ複合層を巻いて保護層又は隔離層を形成し、例えば銅からなる電気的導電層を形成することを含む。ファイバ複合層を形成するために別の方法(例えば、予め含浸されたファイバ複合材料の引き抜き成形、編組、編み(ニッティング)、又はマニアル包装)を採用してもよい。
【0028】
タイロッドが力伝達部材を囲むように径方向に配置される領域(力伝達部材のテーパ領域)は頑丈な連結を確保するために周方向に巻かれてもよい。この場合、複合ファイバ材料を用いて巻回してもよい。複合ファイバ材料が巻かれる場合、該巻層におけるファイバの方向は、できれば半径方向に伸ばされる。これにより、タイロッドが力伝達部材のテーパ部分領域にしっかりと保持される。これは、例えばFEMシミレーションによって行われ、たとえ周囲を径方向に伸びていないファイバを用いる場合であっても、タイロッドの十分に安定した巻線が得られる。
【0029】
個々のファイバ複合層を形成した後、予め容易された「プリプレグ」を使用する場合を除き、各層の巻線材料に母材を塗布して乾燥工程で硬化してもよい。この工程を素早く行うために、硬化処理を高温で行ってもよい。
【0030】
力伝達部材のテーパ部分領域を越えてタイロッドから反対側に伸びる巻材料は、例えば機械的にタイロッドから切り離すことができる。これにより、周方向に伸びるカラーは、力伝達部材上に取り付けられ、タイロッド端部の周方向巻線を所定位置に保持する。
【0031】
タイロッドの周面は、例えばタイロッドの周りに螺旋状に巻回されたグラスファイバ複合材料のストランドによって、機械的影響から保護される。物がタイロッドの周面に当たった場合、これはまずタイロッドの周囲に螺旋状に巻回されたストランドに接触する。そのため、その物とタイロッド周面の間には何ら物理的接触が生じない。
【0032】
力伝達アセンブリで端部が仕上げられたタイロッドは、試験荷重を加えて引っ張ることができる。本発明の好適な実施形態では、試験荷重は1800kNである。問題となるタイロッドの構造や寸法に応じて、それよりも小さな荷重又は大きな荷重を選択できる。
【0033】
添付図面に表された好適な実施形態を基礎として本発明を更に詳細に説明する。本発明は、そこに開示された全ての特徴を個別に又は組み合わせて組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る力伝達アセンブリを有するタイロッドの端部領域の軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
タイロッド12は、基本的に、図1において符号3で示されたカーボンファイバ複合層(CFC)を有する。グラスファイバ複合層10は、カーボンファイバ複合層3の内周面に配置されている。その目的は後述する。カーボンファイバ複合層3の外周に配置されているのは銅で作られた電気導電層8で、落雷によりタイロッドに伝えられた電気エネルギーが該誘電層によって捉えられる。電気導電層8の外周に配置されているのは、グラスファイバで作られた別の層9で、この層がタイロッド12をUV照射の影響から保護する。これらの層3,8,9及び10は、細長い円筒コア6の外周上に形成されており、タイロッド12の全長に亘って伸びている。ファイバ複合層3,9,及び10は、具体的に、巻回技術を用いて製造することができ、そのために、ファイバが伸びている方向に関して複数の好適な方向のみを有する。
【0036】
タイロッド12の左側端部4に設けられているのが力伝達部材1であり、タイロッド12に伝達されるべき力は該力伝達部材1を介して伝えられる。そのために、目の形をした力吸収手段が、力伝達部材1の左側端部に設けられている。力伝達部材1の右側端部に向かって、部分領域2の断面が次第に広くなっている。その結果、タイロッド12から見ると、部分領域2はタイロッド12から離れるにしたがって先細りになっている。このような状況にあることから、タイロッド12に対向するテーパ付部分領域2の端部2aがタイロッド12に対向する力伝達部材1の端部を構成しており、それはコア6に対して平らに横たわっている。端部2aにおいて、力伝達部材1の部分領域2は、コア6と同じ周(境界線)を有する。力伝達部材11は、同軸に伸びるプラスチックチューブ13によって、タイロッド12及びコア6と中心が同じにしてある。プラスチックチューブ13は、中空形状のコア6内周面上に配置されており、コア6を越えて伸びている。力伝達部材1は、プラスチックチューブ13の突出端部に嵌め合わせることができ、また、例えば接着剤などの連結材料によってコア6に連結できる。
【0037】
少なくとも部分領域2(該部分領域では、層8,9,及び10を有するタイロッド12が部分領域2の周囲に伸びている)において、タイロッド12には別のファイバ複合層5の周方向巻線が設けてある。このファイバ複合層のファイバは周方向に伸びている。この巻線5を所定の場所、すなわち、部分領域2に保つために、周方向に伸びるカラー7が力伝達部材1に設けてあり、これは連結材料によって力伝達部材1に接着されている。図1に示すように、グラスファイバストランド11の形をした保護層が設けてある。このグラスファイバストランドは、タイロッド12の外周上に螺旋形状に伸びている。
【0038】
カーボンファイバ複合材料3は、力伝達部材1の鉄系材料とは異なる電気陰性度を有するので、接触による腐食を防止するために電気的に絶縁性のグラスファイバ複合材料層10がカーボンファイバ複合材料3と力伝達部材1の間の境界(界面)3bに設けてある。
【0039】
本発明で提案されているように、力伝達装置(アセンブリ)は、プラスチックチューブ13を介してコア6の端部に力伝達部材1を嵌め、該プラスチックチューブ13及びコア6の両方に又はいずれか一方に接着して構成されている。プラスチックチューブ13は、部材の長さを決める手段としての役目を果たす。それはまた、コア6と協働して、軸方向及び径方向の圧力をタイロッド12に加えるという別の利点がある。タイロッド12の複数の層3,8,9,10は、コアの外周上及び力伝達部材1の部分領域2にある外周上に公知の巻回技術で順次形成され得る。力伝達部材1の左側領域の周囲に設けられた取手は、図示しないが、巻回動作の際にコア6と力電圧部材1を必要に応じて回転するために利用される。それぞれの層が設けられた後、タイロッド12と力伝達部材1との間の連結を確実に維持するために、外周巻線が部分領域2にあるタイロッド12の端部に設けられる。それぞれのファイバ複合層が硬化した後、部分領域2を越えて伸びるタイロッド12の材料が機械的に切断され、カラー7が力伝達部材1の上に押し込まれてそれに接着される。したがって、巻線5は、部分領域2上で所定の場所に、カラー7に対して支持された状態で、保持される。グラスファイバストランド11の形をした耐衝撃用の保護層が、タイロッド12の外周に螺旋状に巻かれる。
【0040】
動作中に力伝達部材1とタイロッド12との間で何らかのスリップが生じることが無いように、本発明で提案された力伝達アセンブリを有するタイロッド12は、1800kNの試験荷重で引っ張ることができ、タイロッド12の公称荷重は約1300kNである。
【0041】
このようなタイロッド12は、例えば、長さが12,000m、径が120mm、壁厚が10mmである。
【符号の説明】
【0042】
1:力伝達部材、2:部分領域、3、5、9、10:カーボンファイバ複合層、6:コア、7:カラー、8:導電層、12:タイロッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合ファイバタイロッド用の力伝達アセンブリであって、
上記アセンブリは力伝達部材(1)を有し、
上記力伝達部材(1)の断面は、少なくとも部分領域(2)において、上記タイロッド(12)から離れる方向に先細りとなっており、
上記力伝達部材(1)は、上記部分領域(2)を囲む上記タイロッド(12)の端部領域(4)と上記部分領域(2)にしっかりと取り付けられており、
上記力伝達部材(1)は、力を伝達するために、中空形状を有する上記タイロッド(12)を越えて伸びている、力伝達アセンブリ。
【請求項2】
上記力伝達部材(1)は、力伝達領域(14)が一体部品として設けられており、
上記力伝達領域(14)は、上記タイロッド(12)の中空形状の外側に配置されており、
上記先細りの部分領域(2)は上記タイロッド(12)の中空形状の内側に配置されている、請求項1の力伝達アセンブリ。
【請求項3】
上記タイロッド(12)には、少なくとも上記タイロッド(12)と上記力伝達部材(1)が径方向に重なり合って配置されている領域に巻線部を備えており、
上記ロッドは、特に、複合ファイバ材料(5)が巻かれており、
上記複合ファイバ材料(5)のファイバの方向は、周方向に伸びている、請求項1又は2の力伝達アセンブリ。
【請求項4】
上記力伝達部材(1)の上記部分領域(2)と上記タイロッド(12)の両方又はいずれか一方は、回転方向に関して対称な断面を有する、請求項1〜3のいずれかの力伝達アセンブリ。
【請求項5】
上記タイロッド(12)は、上記力伝達部材(1)、特に、上記力伝達部材(1)の上記部分領域(2)上に、平坦な状態で設けられている、請求項1〜4のいずれかの力伝達アセンブリ。
【請求項6】
上記力伝達部材(1)の上記部分領域(2)は、円錐状に先細りとなっている、請求項1〜5のいずれかの力伝達アセンブリ。
【請求項7】
上記タイロッド(12)の内周面(3a)の断面勾配は、上記部分領域(2)、特に、上記タイロッド(12)に対向する部分領域(2)の端部(2a)で、軸方向に急に変化している、請求項1〜6のいずれかの力伝達アセンブリ。
【請求項8】
上記タイロッド(12)に対向する上記部分領域(2)の端部(2a)に円筒コア(6)が隣接している、請求項1〜7のいずれかの力伝達アセンブリ。
【請求項9】
上記タイロッド(12)は、複数の好適な方向に伸びる複数のファイバを有する巻線ファイバ複合材を備えている、請求項1〜8のいずれかの力伝達アセンブリ。
【請求項10】
上記力伝達部材(1)の周囲に周方向に伸びるカラー(7)を有し、
上記カラーは、上記力伝達部材(1)に連結材で連結されており、
上記カラーに対して、上記ファイバ複合材(5)が上記軸方向に支持されている、請求項1〜9のいずれかの力伝達アセンブリ。
【請求項11】
上記力伝達部材(1)は鉄系材料、特に鋼で作られており、
上記タイロッド(12)はカーボンファイバ複合材で作られている、請求項1〜10のいずれかの力伝達アセンブリ。
【請求項12】
銅系材料からなり、上記タイロッド(12)の外周面に隣接して配置された層(8)と、
グラスファイバ複合材からなり、上記タイロッド(12)の外周面上に配置された第1層(9)と、
グラスファイバ複合材からなり、少なくとも上記力伝達部材(1)と上記タイロッド(12)の間の境界(3b)に配置された第2層(10)と、
グラスファイバ複合材からなるストランド(11)を有し、上記タイロッド(12)の外周面上に配置された巻線、のいずれか一つを有する請求項1〜11のいずれかの力伝達アセンブリ。
【請求項13】
タイロッド(12)から離れる方向に先細りとなった力伝達部材(1)の部分領域(2)でロッドにしっかりと取り付けられた力伝達部材(1)を有する複合ファイバタイロッド(12)用の力伝達アセンブリを製造する方法。
【請求項14】
中央に位置する連結チューブ(13)によってコア(6)の端部(4)に力伝達部材(1)を取り付ける工程と、
複合ファイバ材料を、コア(6)と力伝達部材(1)の少なくとも一部の周りに、中空形状を有するカーボンファイバ複合材を備えたタイロッド(12)までの範囲に、グラスファイバ複合材料及び/又は銅系材料の層(8,9,10)を有する複合ファイバ材料を巻回する工程と、
少なくとも、上記力伝達部材(1)を径方向に囲みながら上記タイロッド(12)の径方向に上記タイロッド(12)が配置されている領域において、上記タイロッド(12)上に複合ファイバ材料(5)を備えた巻線を設ける工程と、
上記巻線材料(3,5,8,9,10)を硬化する工程と、
上記部分領域(2)を越えて伸びる上記タイロッド(12)の巻線材料(3,5,8,9,10)を取り除く工程と、
上記力伝達部材(1)にカラー(7)を取り付ける工程と、
グラスファイバ複合材料のストランド(11)を上記タイロッド(12)の周りに螺旋状に巻回して保護層を形成する工程と、
1300kN、特に1700kNを越える試験荷重を加えて、力伝達アセンブリと共に上記タイロッド(12)を伸ばす工程の一つ又は複数を有する請求項13の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−139068(P2010−139068A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−258631(P2009−258631)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(507186322)マニトワック・クレーン・グループ・フランス・ソシエテ・パール・アクシオン・サンプリフィエ (12)
【氏名又は名称原語表記】Manitowoc Crane Group France SAS
【Fターム(参考)】