説明

ファイル

【課題】製造コストを抑制しつつ、綴じ込む書類の枚数に応じて背表紙の幅を調節し得るようにする。
【解決手段】留め具片にこの留め具片を二つ折りにするための折り目線4hを形成するとともに、この留め具片4に、調節折り目線4a及び背表紙折り目線4xを形成する。綴じ込む書類の枚数が少ない時は、背表紙3と裏表紙2との間に、留め具片4の全体が裏表紙2に沿って折り込まれるようにする。その一方で、書類の枚数が増えた時は、留め具片4を調節折り目線4aで折り曲げて、この留め具片4の背表紙3側の一部を、裏表紙2の背表紙側端縁5から突出させ、この留め具片4の突出した部分を、背表紙折り目線4xにそって折り曲げる。これによって、留め具片4の一部が背表紙3の一部となって、この背表紙3の幅を拡げることができる。このファイルはその構成が単純であり、ファイルの製造コストを抑制し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、綴じ込む書類の枚数に応じて、背表紙の厚みを変えることができるファイルに関する。
【背景技術】
【0002】
パンチ孔を穿孔した書類を留め具で綴じ込んで保管するファイルは、表表紙と、裏表紙と、その表表紙と裏表紙との間に立ち上がる背表紙とを備え、その背表紙と裏表紙との間に留め具片を介在させて、その留め具片を内側に折り込んで前記裏表紙の背表紙側端縁から内側に突出させた構成をしている。
【0003】
この綴じ込みに際し、前記書類の厚さが前記背表紙の幅よりも小さいときは前記書類をきちんと収納し得るが、その綴じ込み枚数が増えて、その書類の厚さが前記背表紙の幅よりも大きくなると、その厚さ方向に表表紙及び裏表紙が膨らんで見栄えが悪いとともに、ファイル自体や書類が傷みやすいという問題がある。この問題を解決すべく、綴じ込む書類の枚数(厚さ)に応じて、そのファイルの背表紙の厚みを自在に調節し得るファイルが開示されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平7−132696号公報
【0004】
このファイルは、表表紙と、背表紙と、裏表紙とを分離可能な別部材で構成し、背表紙にその幅方向に長い長孔を形成し、この長孔に固定金具のねじをねじ込んで、前記表表紙と前記裏表紙を、前記幅方向に調節自在に取り付けている。また前記固定金具は、筋交いの役目を有しており、この筋交いによって背表紙の強度を確保している(特許文献1の図6参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術に示すファイルの構成においては、各表紙が別部材であってそれらを連結する必要があるので、製造工程が煩雑となるとともに、前記別部材の連結強度を確保する筋交いを必要とするため、製造コストが上昇する問題がある。
【0006】
そこで、この発明は、製造コストを抑制しつつ、綴じ込む書類の枚数に応じて背表紙の幅を調節し得るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため、この発明は、背表紙と裏表紙との間に折り込んだ留め具片の一部を背表紙側に突出させて、この留め具片の一部を背表紙の一部とすることにより、綴じ込む書類の枚数に対応して、前記背表紙の幅を自在に調節し得るようにした。
【0008】
この発明の構成としては、連続する1枚のシートで構成され、表表紙と、裏表紙と、その表表紙と裏表紙との間に立ち上がる背表紙とを備え、その背表紙と裏表紙との間に留め具片を介在させて、その留め具片を内側に折り込んで前記裏表紙の背表紙側端縁から内側に突出させることにより、その留め具片に書類を綴じ込むための留め具を固定できるようにしたファイルにおいて、前記留め具片の前記留め具よりも内側に調節折り目線を形成し、その調節折り目線の位置により、前記留め具片の前記背表紙側端縁からの突出量を調節できるようにするとともに、前記留め具片の前記背表紙側端縁からの突出端側に背表紙折り目線を形成し、前記調節折り目線の位置に対応して、前記背表紙折り目線を折り曲げて、前記背表紙の幅を調節し得るようにすることができる。
【0009】
前記調節折り目線及び背表紙折り目線を、少なくとも1本ずつ形成することによって、前記背表紙の幅を調節する作用を発揮し得るが、それぞれ複数本ずつ形成することによって、前記幅を多段階に調節し得る。この調節折り目線及び背表紙折り目線を複数本ずつ形成する場合において、各折り目線同士の間隔は適宜決めることができるが、前記調節折り目線で前記留め具片を折り返した際の前記突出量に対応して、背表紙折り目線を形成するのが好ましい。このようにすることで、前記背表紙側端縁に合わせて前記留め具片を折り曲げることができ、背表紙幅をきっちりと決め得るからである。
【0010】
また、前記留め具は、内側に折り込んだ前記留め具片を裏表紙側から表表紙側に貫通する差込み部材を備えたものであって、前記留め具片を調節折り目線で折り込んだ際に、常に前記差込み部材が前記留め具片を貫通し得るように、その留め具片の表表紙側に、前記差込み部材が通る長孔を形成することもできる。
【0011】
この長孔を前記留め具片の引き出し方向に沿った形状とすることにより、書類に前記差込み部材を差し込んだままの状態で、この差込み部材を前記長孔内でスライドさせて、背表紙の幅を調節することができる。このため、背表紙の幅を変更する際に、既に綴じ込んである書類を一旦抜き取る必要がなく、その作業性が高い。
【発明の効果】
【0012】
この発明によると、綴じ込む書類の枚数に対応して、背表紙と裏表紙との間に折り込んだ留め具片の一部を背表紙側に突出させて、この留め具片の一部を背表紙の一部とすることとした。このため、簡便な構造でファイルの背表紙の幅を調節でき、製造コストを抑制し得るとともに、書類を綴じこんだ際の見栄えを良好なものとし得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図6にこの発明に係るファイルを示して説明する。このファイルは、連続する1枚のシートで構成され、表表紙1と、裏表紙2と、その表表紙1と裏表紙2との間に立ち上がる背表紙3とを備え、その背表紙3と裏表紙2との間に留め具片4を介在させて、その留め具片4を内側に折り込んで、裏表紙2の背表紙側端縁5からファイルの内側に突出させることにより、その留め具片4に書類を綴じ込むための留め具を固定できるようにしたものである。
【0014】
この留め具片4の裏表紙2側には固定孔6が形成され、この固定孔6に、2本の爪部を有する差込み部材7が固定されている。また、この留め具片4の表表紙1側には長孔8が形成され、この長孔8に前記爪部を通す。書類(図示せず)を綴じ込む際には、公知のファイルと同様に、書類に形成したパンチ孔に前記爪部を差込み、両爪部を係止部材9で係止して、前記書類が抜け落ちないようにする(図1及び図2参照)。
【0015】
このファイルの製造においては、まず、原紙を所定形状にカットし、表表紙1、背表紙3、留め具片4及び裏表紙2を区切る折り目線及び留め具片を2つ折りとするための折り目線4hを形成するとともに、この留め具片に、調節折り目線4a及び背表紙折り目線4xを形成する(図3(a)参照)。次に、各折り目線によって、留め具片4が、背表紙3と裏表紙2との間に折り込まれるように折り曲げる(図3(b)及び(c)中の矢印参照)。なお、図3においては、折り曲げ状態を分かりやすくするため、留め具片4と裏表紙2の間に、誇張して隙間を描いているが、実際には、これらの隙間が生じないように折り曲げるようにしてもよい。
【0016】
この留め具片4の上下辺にはテーパ10が形成されている。このテーパ10により、調節折り目線4aにおける折り曲げ長さが短くなるため、その折り曲げを容易に行うことができる。このため、後述する背表紙幅の変更作業をスムーズに行い得る。
【0017】
留め具片4に留め具(差込み部材7及び係止部材9)を設けて、背表紙3と裏表紙2との間に、留め具片4が折り込まれるように折り曲げると、この留め具片4の全体が裏表紙2に沿って収納される。この収納に伴って、差込み部材7の2本の爪部が長孔8の表表紙側にスライドする(図4参照)。
【0018】
このファイルに綴じ込む書類の枚数が増えた時は、留め具片4を調節折り目線4aで折り曲げて、この留め具片4の背表紙3側の一部を、裏表紙2の背表紙側端縁5から突出させる。さらに、この留め具片4の突出した部分を、背表紙折り目線4xにそって折り曲げる。これによって、留め具片4の一部が背表紙3の一部となって、この背表紙3の幅を拡げることができる。この突出に伴って、差込み部材7の2本の爪部が長孔8の裏表紙側にスライドする(図5参照)。
【0019】
この留め具片4の前記突出量は、留め具片4を2つ折りとするための折り目線4hと、調節折り目線4aとの間隔(以下、調節間隔という。)のちょうど2倍となる(図4(c)及び図5(c)参照)。このため、設計段階において、留め具片4と背表紙3との間の折り目線3aと、背表紙折り目線4xとの間隔を前記調節間隔の2倍としておくことによって、背表紙幅の調節をスムーズに行い得る。
【0020】
上述したファイルは、背表紙3の幅を2段階に調整し得る構成としたが、綴じ込む書類の枚数に対応して、背表紙3の幅を多段階に調整し得る構成とすることもできる。例えば、図6に示すように、留め具片4に調節折り目線4a、4b及び背表紙折り目線4x、4yをそれぞれ2本形成することによって、背表紙幅の調節を各折り目単位で行うことができる。
【0021】
つまり、図4(c)に示したような背表紙3が最小幅の場合を基準として、留め具片4を調節折り目線4aで折り曲げるとともに、背表紙折り目線4xで折り曲げることにより、留め具片4の、背表紙3と留め具片4の折り目線3aと、背表紙折り目線4xとの間に対応する部分を背表紙3の一部とし得る(図6(a)参照)。
さらに、留め具片4を調節折り目線4bで折り曲げるとともに、背表紙折り目線4yで折り曲げることにより、留め具片4の、背表紙折り目線4xと背表紙折り目線4yとの間に対応する部分も背表紙3の一部とし得る(図6(b)参照)。
【0022】
調節折り目線4a、4b及び背表紙折り目線4x、4yの本数は上述の実施形態に限定されない。この本数を増やすほど、綴じ込む書類の枚数に対応して、背表紙3の幅をきめ細かく調節し得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明に係るファイルの一実施形態を示す分解斜視図
【図2】同ファイルを示す斜視図
【図3】同ファイルを示し、(a)は展開図、(b)は平面図、(c)は要部平面図
【図4】同ファイルの背表紙幅を最小にした様子を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は要部平面図
【図5】同ファイルの背表紙幅を最大にした様子を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は要部平面図
【図6】この発明に係るファイルの他の実施形態を示す平面図であって、(a)は背表紙幅を最小幅より1段階拡げた様子、(b)は背表紙幅を最小幅より2段階拡げた様子
【符号の説明】
【0024】
1 表表紙
2 裏表紙
3 背表紙
3a 折り目線
4 留め具片
4a、4b 調節折り目線
4x、4y 背表紙折り目線
5 背表紙側端縁
6 固定孔
7 差込み部材
8 長孔
9 係止部材
10 テーパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続する1枚のシートで構成され、表表紙(1)と、裏表紙(2)と、その表表紙(1)と裏表紙(2)との間に立ち上がる背表紙(3)とを備え、その背表紙(3)と裏表紙(2)との間に留め具片(4)を介在させて、その留め具片(4)を内側に折り込んで前記裏表紙(2)の背表紙側端縁(5)から内側に突出させることにより、その留め具片(4)に書類を綴じ込むための留め具(7、9)を固定できるようにしたファイルにおいて、
前記留め具片(4)の前記留め具(7、9)よりも内側に調節折り目線(4a、4b)を形成し、その調節折り目線(4a、4b)の位置により、前記留め具片(4)の前記背表紙側端縁(5)からの突出量を調節できるようにするとともに、前記留め具片(4)の前記背表紙側端縁(5)からの突出端側に背表紙折り目線(4x、4y)を形成し、前記調節折り目線(4a、4b)の位置に対応して、前記背表紙折り目線(4x、4y)を折り曲げて、前記背表紙(3)の幅を調節し得るようにしたことを特徴とするファイル。
【請求項2】
前記留め具(4)は、内側に折り込んだ前記留め具片(4)を裏表紙(2)側から表表紙(1)側に貫通する差込み部材(7)を備えたものであって、前記留め具片(4)を調節折り目線(4a、4b)で折り込んだ際に、常に前記差込み部材(7)が前記留め具片(4)を貫通し得るように、その留め具片(4)の表表紙(1)側に、前記差込み部材(7)が通る長孔(8)を形成したことを特徴とする請求項1に記載のファイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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