説明

ファスナー付き収納袋とその製造方法

【課題】内部に大きな内圧が生じても、開口部を強固に閉止して密封状態を保持しておくことができるファスナー付き収納袋を提供する。
【解決手段】合成樹脂シートよりなる表側シート片2とこの表側シート片2よりも長い裏側シート片3との両側端縁部と下端縁部とを融着することによって偏平な袋主体1を形成し、表側シート片2の上端から突出した裏側シート片3の上端部表面に横長長方形状の封止片4の中央部を融着して、袋主体1の開口部内に挿入した封止片4の下端部と表側シート片2の上端部との対向面に互いに咬合する雌雄ファスナー7、8を取付けると共に、裏側シート片3の上端から上方に突出した封止片4の上半部表面に剥離紙によって被覆された粘着剤層9を層着し、この封止片4の上半部を上記融着部から折り返して表側シート片2の上端部と封止片4の下半部間に上記粘着剤層9を貼着するように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口部に設けたファスナーを閉止させることによって内容物を密封状態に収納しておくことができる合成樹脂製のファスナー付き収納袋とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、口部をスライドファスナーによって開閉自在に密閉することができる合成樹脂製袋が広く知られており、例えば、特許文献1には、耐熱温度が高い合成樹脂フィルムと低融点の合成樹脂フィルムとの積層体からなる袋体の口部における前後に対向した内面に互いに咬合する凸条と凹条とを備えた雌雄ファスナー部材を取付けてなる合成樹脂製袋が記載されている。
【0003】
さらに、上記雌雄ファスナー部材は、上記低融点の合成樹脂フィルムと同じ材料からなる帯状基材の表面に上記耐熱温度が高い合成樹脂フィルムと同じ材料からなる凸条又は凹条を一体に設けてなり、これらの雌雄ファスナー部材の帯状基材を上記一枚の積層体の両端部における低融点の合成樹脂フィルム面に熱融着させると共にこの積層体を低融点の合成樹脂フィルム面が内面となるように袋状に折り曲げて、その両側端部を熱融着することにより、口部を上記雌雄ファスナー部材によって開閉自在に構成した上記合成樹脂製袋を製造する方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、柔軟で非通気性の合成樹脂シートよりなる偏平な袋主体における表面側シート部の上端縁部の裏面に雌雄いずれか一方のファスナーを取付けると共に袋主体における裏面側シート部を表面側シート部の上端、即ち、袋主体の上端開口部から一定長さ、上方に突出させてこの突出部を二つ折り状に折り返すことによってこの折り返し部の下端部(先端部)を袋主体の上端開口部内に挿入状態に介在させ、該下端部の表面に上記ファスナーの凹条又は凸条に咬合する凸条又は凹条を有するファスナーを取付けてこれらのファスナーの凹凸条の咬合により袋主体の開口部を開閉自在に閉止させるように構成していると共に上記折り返し部の両側端縁部を袋主体の両側端縁部と同様に融着させることによって、折り返し部の対向面間に、袋主体の開口端部内において下向に開口した空隙室を形成してなる合成樹脂製袋が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−105213号公報
【特許文献2】特開2010−195459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記前者の方法によって製造された合成樹脂製袋によれば、その口部を開閉する上記雌雄ファスナー部材を、袋の口部における前後に対向する内面に直接、相対した状態で取付けられているために、袋の内面に該袋を膨脹させようとする内圧が作用した場合には、その内圧が雌雄ファスナー部材の凸条と凹条とを互いに引き離そうとする方向に働いて凸条と凹条との咬合が解かれ、袋主体の口部が開いて内容物が外部に排出される虞れがあるといった問題点が生じる。
【0007】
上記のような問題は、例えば、袋を航空機等によって空輸する場合においても発生するものであり、機内の低圧雰囲気よりも袋の内圧が高くなってその内圧により袋が膨脹し、雌雄ファスナー部材の凸条と凹条との咬合が解かれる事態が生じる。この際、合成樹脂製袋を感染性物質(病原体/検体)の輸送用医療袋として使用した場合には安全性において大きな問題点が生じることになる。
【0008】
また、上記合成樹脂製袋を、液体或いは粉粒状物等の内容物の収納用袋として使用した場合においても、この袋を積み重ねると、その口部に該口部を拡開させようとする液圧等の内圧が作用して上記同様に雌雄ファスナー部材の凸条と凹条との咬合が解かれて口部が開口し、内容物が流出するといった問題点が発生する。
【0009】
一方、後者の合成樹脂袋によれば、雌雄ファスナーを袋主体の表面側シートの上端縁部と裏面側シートから上方に突設している折り返し部の折り返し下端縁部との対向面に設けていると共に、折り返し部の対向面間で形成している下向きに開口した空隙室をこれらの雌雄ファスナーの咬合部の背面側を通じて袋主体内に連通させているので、袋主体が膨脹すると、上記空隙室も一体に膨脹して、雌雄ファスナーを咬合させた状態で袋主体の表面側シートと共に膨脹する方向に移動させることになり、そのため、内圧が雌雄ファスナーの咬合力よりも小さい場合には雌雄ファスナーによって袋主体を密閉した状態に保持ことができる。
【0010】
しかしながら、この合成樹脂袋においても袋主体内の膨張圧等の圧力が大きくなると、袋主体が上記空隙室よりも大きく膨張しようとして表面側シート部の上端縁部の裏面に取付けているファスナーが、空隙室を形成している折り返し部の折り返し下端縁部の表面に取付けているファスナーから外れようとする作用力が増大してこれらの雌雄ファスナーの咬合が解かれる虞れが生じ易くなり、安全且つ確実に収納物を収納しておくことが困難であるいった問題点がある。
【0011】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、袋に大きな膨張圧等の内圧が生じても、開口部を安定した状態で強固に密封しておくことができると共に簡単且つ確実にこのような密封構造にすることができるファスナー付き収納袋を提供するにある。さらに、本発明のもう一つの目的として、このようなファスナー付き収納袋を容易に且つ正確に多量生産することができる製造方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明のファスナー付き収納袋は、請求項1に記載したように、柔軟な合成樹脂シートからなる表裏シート片の対向する両側端縁部と下端縁部とを融着することによって偏平状の袋主体を形成していると共に、この袋主体の上端開口部を互いに係脱自在に咬合した雌雄ファスナーによって開閉自在に密閉するように構成しているファスナー付き収納袋において、上記裏側シート片から上方に向かってこの裏側シート片と同一幅を有する横長長方形状の封止片を突設していると共に、この封止片の上下長さ方向の中間部を折り目部としてこの折り目部から封止片の上半部を袋主体の上端開口部に向かって折り返した際に、この上半部を上記雌雄ファスナーを設けている袋主体の上端開口部における表側シート片の上端部表面から封止片の下半部における袋主体の開口端から突出した表面に亘って被覆しえる大きさに形成してあり、この上半部の表面に剥離紙によって被覆された粘着剤層を全幅に亘って層着していることを特徴とする。
【0013】
このように構成したファスナー付き収納袋において、請求項2に係る発明は、袋主体における上記裏側シート片の上端部を袋主体の開口端から上方に突出させて、この突出端部の表面に封止片の上下端間の中央部裏面を融着してこの融着部を封止片の折り目部に形成していると共に、封止片の下半部における下端部を袋主体の上端開口部内に挿入してこの下端部の表面とこの表面に対向する表側シート片の上端部裏面とに互いに咬合する雌雄ファスナーを取付けていると共に上記融着部から封止片の下端に至る該封止片の下半部の両側端縁部を裏側シート片の上端部における両側端縁部に表側シート片の上端両側端縁部と共に融着してこの下半部の裏面と裏側シート片の上端部表面との対向面間に下向きに開口した空隙室を形成していることを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に係る発明は、上記ファスナー付き収納袋の製造方法であって、裏面上端部に雌雄ファスナーの一方を取付けている一定幅と長さを有する柔軟な合成樹脂シートよりなる表側シート片と、この表側シート片と同一幅を有し、且つ、長さが長い柔軟な合成樹脂シートよりなる裏側シート片と、これらの表裏シート片と同一幅を有すると共に長さが短く且つその下半部における表面の長さ方向の中央部に上記雌雄ファスナーの他方を取付けている柔軟な合成樹脂シートよりなる封止片とからなり、上記裏側シート片に表側シート片をその下端を裏側シート片の下端に揃えた状態で重ね合わせると共に封止片に設けているファスナーを表側シート片に設けているファスナーに咬合させた状態にしてこの封止片の下半部を裏側シート片の表面上端部に重ね合わせ、この状態にして裏側シート片の両側端縁部と封止片の下半部の両側端縁部及び表側シート片の両側端縁部を全長に亘って一体に融着させると共に表側シート片と裏側シート片との下端縁部どうしを融着することにより偏平な袋主体を形成し、さらに、裏側シート片の上端縁部表面を封止片の長さ方向の中間部に全幅に亘って融着することにより、封止片の上半部を裏側シート片の上端縁から上方に突出させると共に封止片の下半部と裏側シート片の上端部との対向面間に下向きに開口した空隙室を形成し、この袋主体の形成後、又は、形成前に裏側シート片の上端から突出する封止片の上半部表面に剥離紙によって被覆された粘着剤層を層着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、上端開口部を係脱自在に咬合した雌雄ファスナーによって開閉するように構成している表裏シート片からなる袋主体において、裏側シート片の上端から上方に向かって横長長方形状の封止片を突設し、この封止片を折り返えすことによってその表面に層着している粘着剤層を袋主体の表側シート片の上端部表面に貼着して袋主体の上記雌雄ファスナーによって閉止されている上端開口部を封止するように構成しているので、この封止片によって、ファスナーが不測に咬合を解くのを確実に防止することができて袋主体内の収納物を安全に収納しておくことができるのは勿論、上記折り目部を封止片の上下長さ方向の中間部に設けていると共に、この折り目部から封止片の上半部を袋主体の上端開口部に向かって折り返した際に、この上半部の表面を該表面に層着している粘着剤層を介して上記雌雄ファスナーを設けている袋主体の上端開口部における表側シート片の上端部表面から封止片の下半部における袋主体の開口端から突出した表面に亘って貼着させることができる。
【0016】
従って、袋主体内に膨脹圧等の大きな圧力が発生して袋主体の開口部における表側シート片側に設けているファスナーがこのファスナーと咬合している袋主体の開口部裏面側に設けているファスナーから外れようとする方向に作用しても、封止片がその上半部表面に層着している粘着剤層を、表側シート片の表面上端部から裏側シート片と一体の該封止片の下半部における袋主体の開口端から突出した表面に亘って貼着させているから、封止片の下半部表面に貼着した粘着剤層の貼着力によって上記ファスナーが外れようとする作用力を強固に支持させることができ、袋主体内に比較的大きな内圧が発生しても、袋主体の開口部を雌雄ファスナーと封止片とによって確実に密閉しておくことができる。
【0017】
さらに、請求項2に係る発明によれば、袋主体における上記裏側シート片の上端部を袋主体の開口端から上方に突出させ、この突出端部の表面に封止片の上下端間の中央部裏面を融着してこの融着部を封止片の折り目部としているので、融着部による剛直性によって別に折り目を形成することなくこの融着部から封止片の上半部を折り返して雌雄ファスナーによって閉止されている袋主体の上端開口部を簡単且つ正確に密封することができる。
【0018】
その上、上記封止片の下半部における下端部を袋主体の上端開口部内に挿入してこの下端部の表面とこの表面に対向する表側シート片の上端部裏面とに互いに咬合する雌雄ファスナーを取付けているので、袋主体内に膨脹圧等の圧力が発生した場合には、雌雄ファスナーをそれぞれ取付けている表側シート片の上端部と封止片の下半部とを互いに雌雄ファスナーによって一体に結合させた状態にして袋主体の裏側シート片から離間させることができ、従って、膨脹圧等の内圧が発生しても雌雄ファスナーを強固に咬合した状態に保持することができるばかりでなく、上記融着部から封止片の下端に至る該封止片の下半部の両側端縁部を裏側シート片の上端部における両側端縁部に表側シート片の上端両側端縁部と共に融着してこの下半部の裏面と裏側シート片の上端部表面との対向面間に下向きに開口した空隙室を形成しているので、内圧がこの空隙室内にも作用して空隙室を形成している封止片の下半部の裏面を表側シート片側に押圧し、封止片に取付けている封止片を表側シート片に取付けている封止片に積極的に押し付けた状態にして袋主体の開口端を確実に密封することができる。
【0019】
また、上記ファスナー付き収納袋の製造方法によれば、請求項3に記載したように、裏面上端部に雌雄ファスナーの一方を取付けている一定幅と長さを有する柔軟な合成樹脂シートよりなる表側シート片と、この表側シート片と同一幅を有し、且つ、長さが長い柔軟な合成樹脂シートよりなる裏側シート片と、これらの表裏シート片と同一幅を有すると共に長さが短く且つその下半部における表面の長さ方向の中央部に上記雌雄ファスナーの他方を取付けている柔軟な合成樹脂シートよりなる封止片とからなり、上記裏側シート片に表側シート片をその下端を裏側シート片の下端に揃えた状態で重ね合わせると共に封止片に設けているファスナーを表側シート片に設けているファスナーに咬合させた状態にしてこの封止片の下半部を裏側シート片の表面上端部に重ね合わせ、この状態にして裏側シート片の両側端縁部と封止片の下半部の両側端縁部及び表側シート片の両側端縁部を全長に亘って一体に融着させると共に表側シート片と裏側シート片との下端縁部どうしを融着することにより偏平な袋主体を形成するので、予め、表側シート片の裏面上端部に取付けているファスナーと、封止片の下半部の中央部表面に取付けているファスナーとを咬合させた状態にしておくことによって、封止片の配設位置と雌雄ファスナーの咬合位置とを簡単且つ正確に設定した状態にすることができると共に、この封止片を取り付けた表側シート片の下端縁部と裏側シート片の下端縁部とを重ね合わせてこれらの下端縁部どうしと共に、裏側シート片の両側端縁部と封止片の下半部の両側端縁部及び表側シート片の両側端縁部とを全長に亘って一体に融着させるので、上記ファスナー付き収納袋を正確に且つ能率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明ファスナー付き収納袋の斜視図。
【図2】その縦断側面図。
【図3】袋主体の要部の簡略縦断側面図。
【図4】剥離紙を剥離している状態の斜視図。
【図5】封止片によって密封した状態の斜視図。
【図6】その要部の簡略縦断側面図。
【図7】製造方法を説明するための分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1〜図3において、ファスナー付き収納袋Aの袋主体1は、柔軟で非通気性の合成樹脂シートからなる一定幅と一定長さを有する縦長長方形状の表側シート片2と、この表側シート片1と同一幅を有し、且つ、長さが表面シート片1よりも数cm程度長い縦長長方形状の裏側シート片3とを重ね合わせてその両側端縁部と下端縁部とを融着11、12することによって偏平袋状に形成されてあり、上記裏側シート片3はその上端部を表側シート片2の上端に対して上方に突出させている。即ち、表側シート片2の上端部裏面とこの上端部裏面に対向する裏側シート片3の表面との対向面間によって形成された袋主体1の開口部から裏側シート片3の上端部を上方に突出させている。なお、裏側シート片3は表側シート片2と同じ柔軟で非通気性の合成樹脂シートから形成されている。
【0022】
さらに、表裏シート片2、3と同じ柔軟で非通気性の合成樹脂シートによって、これらの表裏シート片2、3と同一幅で且つ長さが幅よりも短い横長長方形状の封止片4を形成し、この封止片4の下半部4bを裏側シート片3の上端部表面に重ね合わせ、且つ、この下半部4bの下端部を袋主体の上端開口部内に挿入して表側シート片2の上端部裏面にその挿入部の表面を対向させた状態にして封止片4の上半部4aと下半部4bとの境界部分である該封止片4の上下端間の長さ方向の中央部を袋主体1の開口部から上方に突出している上記裏側シート片3の上端縁部の表面に全幅に亘って融着13していると共に、この融着部13から下端までの封止片4の下半部4bの両側端縁部を裏側シート片3の上端部における両側端縁部に表側シート片2の上端部における両側端縁部と共に融着11' することによって、封止片4の下半部4bと裏側シート片3の上端部との対向面間で下向きに開口した空隙室5を形成してあり、上記裏側シート片3の上端部と封止片4の長さ方向の中央部との融着部13を封止片4を表側シート片2の表面側に向かって折り返すための折り目部6としている。
【0023】
上記表側シート片2の上端部裏面とこの上端部裏面とに対向する上記封止片4の下半部4bにおける下端部、即ち、袋主体1の上端開口部内に挿入している下端部とに全幅に亘って互いに咬合する凹条7aと凸条8aをそれぞれ形成してなる横長帯状の雌雄ファスナー7、8を融着することによって取付けてあり、これらの雌雄ファスナー7、8の両端部を上記袋主体1の両側端縁部に上記融着11’によって一体に融着されている。なお、表側シート片2の上端部裏面に上記雌雄ファスナー8、9のいずれか一方のファスナーを、この裏面に対向する封止片4の下端部に他方のファスナーを取付けておけばよい。
【0024】
一方、袋主体1の裏側シート片3の上端から上方に突出している封止片4の上半部4aの表面に上記雌雄ファスナー7、8の縦幅よりも3〜4倍程度の縦幅でもって全幅に亘って層着された粘着剤層9を設けていると共に、この粘着剤層9を剥離紙10によって剥離可能に被覆してあり、封止片4の上半部4aを上記折り目部6から折り返した際に、この粘着剤層9を裏面に雌雄ファスナー8、9のいずれかを設けている表側シート片2の上端部表面から袋主体1の上端開口部から上方に突出している封止片4の下半部4b表面に亘って貼着するように構成している。
【0025】
袋主体1を構成した表裏シート片2、3と上記封止片4とを形成している柔軟で非通気性を有する合成樹脂シートとしては、熱融着可能であれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン等の熱溶着性を有する低融点の熱可塑性の合成樹脂フィルムと、この合成樹脂フィルムよりも高融点で高強度のナイロンからなる高融点合成樹脂フィルムとをラミネートしてなる合成樹脂シートが使用され、袋主体1の内面を形成する表側シート片2の裏面側と裏側シート片3の表面側にはナイロンよりも低融点の上記合成樹脂フィルムを配し、袋の外面を形成する表側シート片2の表面と裏側シート片3の裏面側には上記高融点の合成樹脂フィルムを配しておく。また、封止片4はファスナーを取付けている面側をナイロンよりも低融点の上記合成樹脂フィルムによって形成しておく。
【0026】
また、上記雌雄ファスナー7、8は、上記低融点の合成樹脂フィルムと同一材料よりなる横長帯状基材の片面における幅方向の中央部に、上記凹条7a、凸条8aをそれぞれ全長に亘って一体に固着してなるもので、表側シート片2における低融点の合成樹脂フィルムの上端部裏面と封止片4における低融点の合成樹脂フィルムの下端部表面とにそれぞれの横長帯状基材を融着することによって取り付けている。
【0027】
次に、このように構成したファスナー付き収納袋Aの製造方法を述べると、上記合成樹脂シートによって、図6に示すように、一定幅を有する縦長長方形状の表側シート片2と、この表側シート片2と同一幅で且つ長さが数cm程度長い縦長長方形状の裏側シート片3と、これらの表裏シート片2、3と同一幅で且つ長さが幅よりも短い横長長方形状の封止片4を形成すると共に、予め、表側シート片2の裏面上端部と封止片4の表面下端部とに全幅に亘って雌雄ファスナー7、8の一方と他方とをそれぞれ融着することによって取付けておく。なお、以下の説明においては、表側シート片2側に雄ファスナー8を、封止片4側の雌ファスナー7を取付けたことにする。
【0028】
しかるのち、上記表側シート片2の上端部裏面に取付けている雄ファスナー8を封止片4の下端部表面に取付けている雌ファスナー7に咬合させることにより、表側シート片2の上端部に封止片4を接続した状態にして、この表側シート片2の下端を裏側シート片3の下端に揃えて表側シート片2を裏側シート片3の表面上に重ね合わせることにより、封止片4の下半部4bを裏側シート片3の上端部表面に重ね合わせ,且つ、上半部4aを裏側シート片3の上端から上方に突出させた状態にする。
【0029】
この状態にして裏側シート片3の両側端縁部と、この裏側シート片3上に重ねている表側シート片2の両側端縁部及び封止片4の下半部4bの両側端縁部を裏側シート片3の全長に亘って融着11すると共に表側シート片2と裏側シート片3との下端縁どうしを融着12することによって上端開口部内に袋主体1の下半部4bの下端部を挿入させている偏平な袋主体1を形成し、さらに、裏側シート片3の上端縁部の表面に重ねている封止片4の長さ方向の中間部、即ち、上半部4aと下半部4bとの境界部を全幅に亘って融着13することにより、この融着部13と上記両側融着部11、11とで囲まれた裏側シート片3の上端部表面と、この上端部表面に対して遊離している封止片4の下半部裏面との間の隙間を下向きに開口した空隙室5に形成する。
【0030】
さらに、袋主体1における裏側シート片3の上端から上方に突出した封止片4の上半部4aの表面に一定の縦幅を有する粘着剤層9を全幅に亘って層着し、この粘着剤層9を剥離紙10によって被覆する。なお、この剥離紙10によって被覆された粘着剤層9は、袋主体1の形成に先立って予め、封止片4の上半部4a表面に設けておいてもよい。こうして、ファスナー付き収納袋Aを製造することができる。
【0031】
このように構成したファスナー付き収納袋は、使用に際して、まず、互いに咬合している雌雄ファスナー7、8の咬合を解除して袋主体1の上端開口部を開き、この袋主体1内に物品等の収納物(図示せず)を収納する。この際、封止片4は袋主体1の開口端部内から上方に向かって突出しているので、この封止片4の表面が収納時のガイド面としての機能を奏して、封止片4の表面上を滑らすようにして収納物を袋主体1内に円滑且つ確実に収納することができる。
【0032】
次いで、図4に示すにように、剥離紙10を剥離したのち、表側シート片2の上端から上方に位置する裏側シート片3の上端部との融着部13によって形成された折り目部6から封止片4の上半部4aを下方に折り返して図5、図6に示すように、この上半部4aの表面に装着している粘着剤層9の上下方向の一半部を雌雄ファスナーを設けている袋主体の上端開口部における表側シート片2の上端部表面に貼着すると共に他半部を袋主体1の開口端における表側シート片2の上端から突出している該封止片4の下半部表面に貼着することによって袋主体1を封止片4により密封する。
【0033】
このように袋主体1内に収納物を収納して雌雄ファスナー7、8により袋主体1の開口端を密閉すると共にその上から封止片4により密閉した状態において、この袋主体1内に袋の積み重ね荷重等による膨脹圧や、外気との気圧差による膨脹圧などの内圧が発生した場合、袋主体1を形成している表裏シート片2、3が互いにその対向面を離間させながら袋主体1が膨脹して表側シート片2の上端部裏面に取り付けている雄ファスナー8が封止片4の下端部表面に取付けている雌ファスナー7から外れようとする方向に移動しようとするが、封止片4の下半部4bが裏側シート片3の表面から遊離していてこの下半部4bと裏側シート片3の上端部対向面間に形成している空隙室5内にも上記内圧が作用して封止片4の下半部4bを表側シート片2と一体的に膨脹方向に移動し、雌雄ファスナー7、8も咬合した状態で一体的に膨脹方向に移動して強固に咬合した状態を維持し、確実に密閉しておくことができる。
【0034】
さらに、表側シート片2に作用する内圧が封止片4に作用する内圧よりも大きくなった場合等のように、表側シート片2側に取付けている雄ファスナー8が封止片4側に取り付けている雌ファスナー7から外れようとしても、折り目部6から下方に折り返している封止片4の上半部4aに層着した粘着剤層9が、表側シート片2の上端部表面から封止片4の下半部4b表面にかけて貼着しているので、表側シート片2の上端部と封止片4の下端部とが封止片4の折り返し上半部に装着している粘着剤層9を介して一体化して表側シート片2側に取付けている雄ファスナー8が封止片4側に取り付けている雌ファスナー7から外れるのを強固に阻止することができる。
【符号の説明】
【0035】
A ファスナー付き収納袋
1 袋主体
2 表側シート片
3 裏側シート片
4 封止片
5 空隙室
6 折り目部
7、8 雌雄ファスナー
9 粘着剤層
10 剥離紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟な合成樹脂シートからなる表裏シート片の対向する両側端縁部と下端縁部とを融着することによって偏平状の袋主体を形成していると共に、この袋主体の上端開口部を互いに係脱自在に咬合した雌雄ファスナーによって開閉自在に密閉するように構成しているファスナー付き収納袋において、上記裏側シート片から上方に向かってこの裏側シート片と同一幅を有する横長長方形状の封止片を突設していると共に、この封止片の上下長さ方向の中間部を折り目部としてこの折り目部から封止片の上半部を袋主体の上端開口部に向かって折り返した際に、この上半部を上記雌雄ファスナーを設けている袋主体の上端開口部における表側シート片の上端部表面から封止片の下半部における袋主体の開口端から突出した表面に亘って被覆しえる大きさに形成してあり、この上半部の表面に剥離紙によって被覆された粘着剤層を全幅に亘って層着していることを特徴とするファスナー付き収納袋。
【請求項2】
裏側シート片の上端部を袋主体の開口端から上方に突出させて、この突出端部の表面に封止片の上下端間の中央部裏面を融着してこの融着部を封止片の折り目部に形成していると共に、封止片の下半部における下端部を袋主体の上端開口部内に挿入してこの下端部の表面とこの表面に対向する表側シート片の上端部裏面とに互いに咬合する雌雄ファスナーを取付けていると共に上記融着部から封止片の下端に至る該封止片の下半部の両側端縁部を裏側シート片の上端部における両側端縁部に表側シート片の上端両側端縁部と共に融着してこの下半部の裏面と裏側シート片の上端部表面との対向面間に下向きに開口した空隙室を形成していることを特徴とする請求項1に記載のファスナー付き収納袋。
【請求項3】
裏面上端部に雌雄ファスナーの一方を取付けている一定幅と長さを有する柔軟な合成樹脂シートよりなる表側シート片と、この表側シート片と同一幅を有し、且つ、長さが長い柔軟な合成樹脂シートよりなる裏側シート片と、これらの表裏シート片と同一幅を有すると共に長さが短く且つその下半部における表面の長さ方向の中央部に上記雌雄ファスナーの他方を取付けている柔軟な合成樹脂シートよりなる封止片とからなり、上記裏側シート片に表側シート片をその下端を裏側シート片の下端に揃えた状態で重ね合わせると共に封止片に設けているファスナーを表側シート片に設けているファスナーに咬合させた状態にしてこの封止片の下半部を裏側シート片の表面上端部に重ね合わせ、この状態にして裏側シート片の両側端縁部と封止片の下半部の両側端縁部及び表側シート片の両側端縁部を全長に亘って一体に融着させると共に表側シート片と裏側シート片との下端縁部どうしを融着することにより偏平な袋主体を形成し、さらに、裏側シート片の上端縁部表面を封止片の長さ方向の中間部に全幅に亘って融着することにより、封止片の上半部を裏側シート片の上端縁から上方に突出させると共に封止片の下半部と裏側シート片の上端部との対向面間に下向きに開口した空隙室を形成し、この袋主体の形成後、又は、形成前に裏側シート片の上端から突出する封止片の上半部4a表面に剥離紙によって被覆された粘着剤層を層着することを特徴とするファスナー付き収納袋の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−76774(P2012−76774A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222543(P2010−222543)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(596111276)積水フイルム株式会社 (133)
【Fターム(参考)】