説明

ファブリック漂白剤

【課題】家庭環境において変色したナイロンおよび/またはライクラ・ファブリックの白さを元の状態に回復させる製品を提供する。
【解決手段】ナイロンおよび/またはライクラ(ポリウレタン合成繊維)成分を含む家庭用のファブリック製品を漂白するための組成物であって、二酸化チオ尿素およびアルカリを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変色したファブリック製品、特に色あせによる変色または洗濯の繰り返しにより染料が積み重なったナイロンまたはナイロンを含むランジェリまたは下着ファブリックを漂白するための製品に関する。
【背景技術】
【0002】
何回にもわたり繰り返し洗濯されることにより白物ファブリック製品、特にランジェリにおいて、灰色または汚れた青い色合いに変色することが知られており、それは汚れているとして消費者によって注意される。この変色の原因は、同時に洗われる色のついた着色物から非常にゆるやかに脱色する色が大きな部分を占めており、それは非ファースト染料(non-fast dye)を含むことが我々の調査によって判明している。しばしば色物と白物とを選り分けて洗濯しようとするときに、消費者は、ライトブルーの製品と主に白物製品(しかし、わずかに着色)を白物の洗濯物のなかに含ませる。
【0003】
以前に、白物ファブリック上の大部分の変色が白物ファブリックに随伴するほこりの結果であると考えられていた。しかし、我々の調査によると、少量の遊離染料(loose dye)が洗濯中に色物から離れて白物に転移することが判明している。したがって、その色は、色物を繰り返し洗濯することにより積み重なる。この色は、特に白物と染料が相互に強い親和力を有する場合に、除去するのが困難である。
【0004】
変色は、大部分のファブリックに起こるが、ナイロンおよびライクラ(各々が非ファースト染料と強い親和力を有する)において特に問題となり、綿およびポリエステルにおいてより少ない程度にある。変色しはじめたナイロンおよび/またはライクラ(ポリウレタン合成繊維)を含むファブリックに対してこの失われた白さを回復させるのに有効に用いることができる製品はない。白物ランジェリは主にこれらの材料の組合せで作られていることから、時間の経過とともにこの形式の変色の傾向があり、ブルーまたはグレイに変わってくる。少量の洗濯物を機械内で洗濯するいくらかのケースでは、多量の非ファースト染料を含む特に青い物品からの染料がこの変色を急速に引き起こす。
【0005】
市場に出ている若干の製品は、まず第一番に漂白剤または染料スカベンジャーを使用して軽い着色品か又は白物品目を変色から非ファースト染料を防止しようとする。これらの製品の目的は、それが白物品目に染み付く前に、洗濯においていかなる遊離染料も拾い上げるということにある。あるいは、それが水中に遊離している間において、染料が軽い品目に付着する前に、それらは効果的に非ファースト染料を漂白することができる。これらの染料スカベンジャー製品は、既に以前に変色された品目を処理しない。
【0006】
着色(colour runs)を除去するように設計されて市場に出ている製品がある。しかし、これらの製品はある特定のファブリック・タイプに効果的なだけであり、ランジェリおよび下着の主要な構成要素であるナイロンおよびライクラにそれらは効果的ではない。これが時間の経過とともにゆっくり積み重なるので、グレイの変色の色がついた染料の進行からあることは、消費者によってよく理解されていない。
【0007】
工業的に、染料除去は、非常に厳しい条件下で操作される。還元剤は、色を除去するためファブリックを漂白するために、通常は腐肉性のソーダとともに、沸点で使用される。非常に時折ではあるが、塩素漂白剤を染料を剥ぎ取るために用いてもよいが、これは永久にファブリック材料の構造にダメージを与え、その後、白物ファブリックに黄色またはオレンジの色合いを有させることがあり得る。この変色は、ファブリックの化学的構造が変えられているので、処理することができない。
【0008】
薄めた塩素漂白溶液は、また、家庭で軽着色品目か又は白物品目を扱うために用いることがありえるが、しかし、再び、これは修復できない位にファブリックの化学的構造にダメージを与えうる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術の課題を解決しようとするものであって、その第1の目的は、家庭環境において変色したナイロンおよび/またはライクラ・ファブリックの白さを元の状態に回復させる製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、ナイロンおよび/またはライクラ構成要素を含む家庭のファブリックを白くするための組成物として、二酸化チオ尿素(フォルマミデスルフィニック酸:formamidesulphinic acid)およびアルカリを含む組成物が提供される。
【0011】
本発明は、従来の材料を用いて処理するのが困難であると認められるナイロンおよびライクラを白くするために最適である。本発明の組成物を用いて処理できる家庭の衣服のなかには、ナイロン要素を通常含むランジェリと下着の品目がある。
【0012】
二酸化チオ尿素は、還元剤として作用し、ファブリック重量の少なくとも2.5%の濃度、より好ましくは2.5〜10%の濃度、最も好ましくは6〜10%の濃度にある。驚くべきことに、二酸化チオ尿素は、これらの他の材料の非常により高い濃度が使われるときでも、硫化水素ナトリウムおよびソーダ・フォーマルハイデサルフォキシレート(sodium formalhydesulphoxylate)のような他の還元剤と比べて実質的に優れた結果を示した。
【0013】
アルカリは、好ましくはpH7.0以上、より好ましくはpH8.0以上、最も好ましくはpH8.5〜10.0の範囲を与える量に存在する。
【0014】
処理は、好ましくは40℃以上の温度、より好ましくは50〜65℃の範囲、最も好ましくはおよそ60℃で実施される。
【0015】
任意に、組成物は染料スカベンジャー成分を更に含む。これらの化合物は、染料転移抑制剤(DTI)としばしば称され、全てにおいて軽ファブリックに付着しようとすることから遊離染料のほとんど又は全部を妨害するために溶液中の遊離染料または非ファースト染料をピックアップする。これらの化合物は、既にファブリックに恒久的に染み付いた染料を通常は除去しない。染料スカベンジャーは、好ましくはポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)およびポリエステル繊維(4−ビニルピリジニウムN−酸化物)、最も好ましくはポリエステル繊維(4−ビニルピリジニウムN−酸化物)のリストから選択される。染料スカベンジャーは、好ましくはファブリック重量の0.2%以上の濃度に、より好ましくはほぼ0.4%の濃度に存在する。
【0016】
本発明は、またナイロンおよび/またはライクラ成分を含む家庭の白物ファブリック製品から変色を除去するための処理方法に及ぶ。本発明の方法においてファブリック製品は二酸化チオ尿素およびアルカリを含む組成物で処理される。好適な処理方法は物品を本発明の組成物の溶液に浸すステップを含み、水すすぎおよび従来の洗浄サイクルまで続く。上述の組成物の他の好適な特徴は本発明の処理方法に同等に向いている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、多くの異なる方法で実施することができ、その実施の形態は限定されない実施例の方法により更なる詳細にここで記述説明される。
【0018】
白物ナイロンのサンプルを染料の溶液に浸すことによって多様に異なる色染料で汚した。全サンプルにおいて、ナイロン1kg当たり0.05gの染料を水に溶かし、ファブリックを洗濯機サイクル内のこの溶液中で60℃で処理し、次いで該ファブリックを汚すための周囲温度で紡いで、乾燥した。処理されると、変色したサンプルの「白さ」をダタマスターV.2.3スペクトロフォトメーターを用いて測定した。これらの結果はデルタE(ΔE)または色強さの形であり、オリジナルの白物ファブリックは0.00の読み込みを生じる。低いΔE値は、より白物ファブリックであることを示す。
【0019】
C.I.Direct Red 81は、主要な染料として使用され、それが青い染料で処理されるよりも赤い染料で処理された視覚的影響を見るために容易であった。しかし、C.I.Direct Blue 251およびC.I.Direct Yellow 27を用いてもテストした。
【0020】
染められたサンプルを後述の条件下で種々の製品で処理した。その条件は、特に明記しない限り全ての実施例で同じとした。
【0021】
250gの汚れたファブリックを能動成分の示された量を含んだ7.5リットルの水のなかで処理した。反対に特に明記しない限り、初期pH9.9で処理した。初期の水は60℃であった。処理を30分間続けた。初期に溶液を攪拌し、それから30分間の処理全体にわたって溶液を時々攪拌した。溶液が処理中に冷えるように、30分間にわたり溶液を外部から加熱しなかった。
【0022】
処理溶液から取り出した後、ファブリック・サンプルを冷たい水道水ですすぎ、それから標準の洗剤を用いて40℃で通常の洗濯サイクルで洗濯した。以下の表において、「o.w.f.」は「ファブリックの重さで(on weight of fabric)」の省略形である。
【0023】
実施例1
pH9.9で二酸化チオ尿素の濃度の効果。
【0024】
サンプルは能動成分として二酸化チオ尿素の異なる濃度で処理した。その結果は以下の表1で与えられる。
【表1】

【0025】
これらの結果から、最低限2.5%o.w.f.の二酸化チオ尿素が、ナイロンの顕著な漂白を得るために望ましいということが判明した。さらに二酸化チオ尿素の濃度を増加させることは、パーフォーマンスを顕著に増加させないことが判明した。
【0026】
実施例2
二酸化チオ尿素のpHの効果。
【0027】
サンプルは、溶液中に存在するアルカリ濃度を変えることにより異なるpHで、10%o.w.f.の濃度の二酸化チオ尿素で処理した。その結果は以下の表2で与えられる。
【表2】

【0028】
これらの結果から、アルカリ条件下で、特におよそpH9.0でより効果的に処理されることが判明した。
【0029】
実施例3
温度の効果。
【0030】
サンプルを種々の温度の範囲で10%o.w.f.の濃度の二酸化チオ尿素で処理した。その結果は以下の表3で与えられる。
【表3】

【0031】
これらの結果から、およそ50℃の処理温度が少なくともナイロンの顕著な漂白を達成することに必要なことが分かる。より高い温度での処理はより大きい効果を生み出すが、家庭の処理がこれらのより高い温度で実施されることになっている場合、いくらかの注意が必要である。
【0032】
比較例1
硫化水素ナトリウムの濃度の効果。
【0033】
サンプルを同じ条件下で二酸化チオ尿素の代わりに能動成分として硫化水素ナトリウムで処理した。その結果を以下の表4に示す。
【表4】

【0034】
これらの結果からたとえ20%o.w.f.濃度の硫化水素ナトリウムであってさえも、ナイロンを2.5%o.w.f.濃度の二酸化チオ尿素で処理したときの白と同じ程度の白にならないことが分かった。
【0035】
比較例2
漂白剤としてのポリ(4-ビニルピリジウムN-酸化物)(染料転移抑制剤)の影響。
【0036】
サンプルを同じ条件下で二酸化チオ尿素の代わりに能動成分としてポリ(4-ビニルピリジウムN-酸化物)(以下にDTIと称する)で処理した。その結果を以下の表5に示す。
【表5】

【0037】
これらの結果から、いくらかの緩やかな漂白効果は認められるものの、DTIが0.2%o.w.f.を超える濃度であってもそれ自身が漂白剤としてほとんど効果を有しないことが判明した。
【0038】
実施例4
pH9.9での二酸化チオ尿素とDTIの組合せの効果。
【0039】
二酸化チオ尿素と染料転移抑制剤(DTI)の両方を含む組成物を上記の条件下でテストした。その結果を以下の表6に示す。
【表6】

【0040】
これらの結果から、還元剤(二酸化チオ尿素)と染料転移抑制剤との間に相乗効果があり、これらをそれぞれ単独で用いる場合に比べて予測できない顕著な効果を生じることが判明した。
【0041】
例えば、10%二酸化チオ尿素のときの表1からのΔE値(6.44)を表6からの10%二酸化チオ尿素と0.4%DTIのときのΔE値(4.60)と比べてみると、後者の組合せ化合物の処理後のほうがナイロンがより白くなることが分かった(4.6c.f.6.44)。
【0042】
比較例3
市販の入手可能な製品の比較
家庭クリーニングのための多くの市販の入手可能な製品を、ファブリックの白化要求または洗濯液からの着色の除去要求のいずれかの処理に適用し、変色を回避するテストを行い、本発明の製品で処理した結果と比較した。サンプルは上記と同じ方法により全て処理した。その結果を以下の表7に示す。
【表7】

【0043】
市販の製品がナイロンに効果的に働かないことは明白である。実に、硫化水素ナトリウムをベースとする最も有効な(グロ-ケア・レスキュー;Glo-Care Rescue)ものは、ナイロンの使用に適していない。本発明は、上記の表に示すようにナイロン(他のファブリックのなかの一つ)を白くする。
【0044】
実施例5
サンプルをC.I.Direct Red 81の代わりにC.I.Direct Blue 251を用いて変色させ、種々の化合物で処理した結果を以下の表8に示す。
【表8】

【0045】
これらの結果から、アルカリ性の条件下で二酸化チオ尿素を用いる処理がナイロンを顕著に白くすることが明らかである。次亜塩素酸ナトリウム(家庭塩素漂白剤)を用いる処理は、染料を除去するが、ナイロンの変色すなわち高い色強度を除去できない。上記したように、塩素の使用もファブリックの下地構造にダメージを与える。
【0046】
実施例6
サンプルをC.I.Direct Red 81の代わりにC.I.Direct Yellow 27で変色させ、種々の化合物で処理した結果を以下の表9に示す。
【表9】

【0047】
再び、アルカリ性の条件下で二酸化チオ尿素で処理するとナイロンが顕著に白くなることが、これらの結果から明らかである。また、二酸化チオ尿素は半分の濃度であっても硫化水素ナトリウムより顕著に良い性能を生じることも明らかである。さらに、二酸化チオ尿素にDTIを添加したほうが単独の二酸化チオ尿素よりさらに大きい効果を生じ、成分間の相乗作用が高まることが分かった。
【0048】
これらの実施例は本発明を限定するものではないが、上述した実験からの結果が白物ファブリックを変色させる染料に依存していないということが当業者において明らかである。したがって、本発明の組成物が、通常、ナイロンおよび/またはライクラ成分を含む白物ファブリックの家庭環境での処理に適用できることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナイロンおよび/またはライクラ成分を含む家庭用のファブリック製品を漂白するための組成物であって、二酸化チオ尿素およびアルカリを有することを特徴とする組成物。
【請求項2】
二酸化チオ尿素が少なくとも2.5%o.w.f.の濃度である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記二酸化チオ尿素が2.5および10%o.w.f.の範囲、好ましくは6および10%o.w.f.の範囲の濃度である請求項2記載の組成物。
【請求項4】
pHが7.0以上である請求項1乃至3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
前記pHが8.0以上、好ましくは8.5から10.0までの範囲である請求項4記載の組成物。
【請求項6】
40℃以上の初期温度で使用される請求項1乃至5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
前記初期温度が50〜65℃の範囲、好ましくは60℃である請求項6記載の組成物。
【請求項8】
さらに染料スカベンジャー成分を含有する請求項1乃至7のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
前記染料スカベンジャー成分がポリビニルピロリドンおよびポリ(4−ビニルピリジニウムN-酸化物)から選ばれる請求項8記載の組成物。
【請求項10】
前記染料スカベンジャー成分がポリ(4−ビニルピリジニウムN-酸化物)である請求項9記載の組成物。
【請求項11】
ポリ(4−ビニルピリジニウムN-酸化物)が0.2%o.w.f.以上の濃度、好ましくは0.4%o.w.f.以上の濃度である請求項10記載の組成物。
【請求項12】
上記請求項のいずれか1項記載のナイロンおよび/またはライクラ成分を含む家庭用白ファブリック品目から変色を除去するための処理方法。
【請求項13】
前記処理は、請求項1乃至11のいずれか1項の組成物の溶液に前記家庭用白ファブリック品目を浸し、引き続き水洗および従来の洗浄サイクルを行う工程を含む請求項12記載の方法。

【公表番号】特表2006−524733(P2006−524733A)
【公表日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505886(P2006−505886)
【出願日】平成16年1月27日(2004.1.27)
【国際出願番号】PCT/GB2004/000322
【国際公開番号】WO2004/096966
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(505396338)ダイロン、インターナショナル・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】