説明

ファンの制御方法及び送風機

【課題】適切な許容回転数でファンを制御可能なファンの制御方法及び送風機を提供する。
【解決手段】プロペラファンの一次の固有振動数f1を測定して回転数に換算し、この回転数をプロペラファンの羽根枚数で除算した値を固有振動回転数とし、プロペラファンの回転数を固有振動回転数未満に制御するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロペラファンの回転数を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
プロペラファンを回転させて空調部品等を冷却する送風機が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。この種のものは、ファンの破壊回転数を測定し、この破壊回転数を基準にファンの許容回転数を決定して、許容回転数未満でファンを回転させている。
【特許文献1】特開平5−223093号公報
【特許文献2】特開平7−139499号公報
【特許文献3】特開平9−151899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のものは、破壊回転数以下の回転数でもファンの割れが生じる場合があり、かかる不具合を回避する適切な許容回転数を設定するのが難しい場合があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、適切な許容回転数でファンを制御可能なファンの制御方法及び送風機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するため、本発明は、ファンの制御方法において、プロペラファンの一次の固有振動数を回転数に換算し、この回転数を前記プロペラファンの羽根枚数で除算した値を固有振動回転数とし、前記プロペラファンの回転数を、前記固有振動回転数未満に制御することを特徴とする。この構成によれば、プロペラファンが固有振動で振動する事態を避けてプロペラファンを回転制御することができる。
【0005】
上記構成において、前記プロペラファンの一次の固有振動数を、前記プロペラファンが回転停止した状態で測定することが好ましい。この構成によれば、プロペラファン回転時の一次の固有振動数を測定する場合に比して、一次の固有振動を容易に測定することができる。
【0006】
また、本発明は、送風機において、プロペラファンと、プロペラファンを回転駆動するファンモータと、ファンモータを制御する制御部とを備え、前記プロペラファンの一次の固有振動数を回転数に換算し、この回転数を前記プロペラファンの羽根枚数で除算した値を固有振動回転数とし、前記制御部は、前記ファンモータにより前記プロペラファンの回転数を前記固有振動回転数未満に制御することを特徴とする。この構成によれば、プロペラファンが固有振動で振動する事態を避けてプロペラファンが回転制御され、固有振動の影響によるファンの割れを確実に回避することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、プロペラファンの一次の固有振動数を回転数に換算し、この回転数を前記プロペラファンの羽根枚数で除算した値を固有振動回転数とし、前記プロペラファンの回転数を、前記固有振動回転数未満に制御するので、プロペラファンが固有振動で振
動する事態を避けてプロペラファンを回転制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳述する。
図1は、本発明の実施形態の一例を示す室外機10を示す図である。室外機10は、室外に配置され、室内の天井や壁に配置された室内機(不図示)と配管接続されて空気調和機を構成するものであり、空気調和機は、室外機10と室内機とで構成される冷媒回路に冷媒を流して冷房運転及び暖房運転を行う。室外機10は、冷房運転時には室外空気と熱交換して冷媒を凝縮させて外気に熱を放出し、暖房運転時には冷媒を蒸発させて外気から熱を取り込む。
【0009】
図2は室外機10の分解斜視図を示す。室外機10は、本体ケース11を備え、本体ケース11は、底板12、外板13、14、天板15及び前面パネル16を有し、上方から見て略L字型断面の熱交換器20が配設され、略箱形に形成されている。
【0010】
本体ケース11内は、仕切板17を介して熱交換室R1と機械室R2とに仕切られ、熱交換室R1には、上記熱交換器20と、ファンモータ21を支持する支持板18a、18bとが配設され、ファンモータ21の軸にはプロペラファン22が取り付けられる。本体ケース11のプロペラファン22に対向するパネル16には、開口部16aと開口部16aを覆うファンガード16bとが設けられ、ファンモータ21によりプロペラファン22が回転駆動されると、開口部16aから室外空気が吸い込まれて熱交換器20に向けて送風され、室外空気と熱交換器内の冷媒との間の熱交換を促す。
【0011】
機械室R2には、冷媒回路の一部を構成するコンプレッサ30、アキュムレータ31、ストレーナ32等が配管接続され、この配管の一端側が熱交換器20を介して室内機と配管接続されると共に配管の他端側が室内機に配管接続される。
また、機械室R2の上方空間には、仕切板17に取り付けられた取付板19が配設され、この取付板19には、制御部やファンモータ駆動部を構成する制御基板50等の種々の電装部品51が取り付けられる。また、コンプレッサ30を加熱するヒータ33も配設され、このヒータ33、ファンモータ21及びコンプレッサ30は制御基板50等と配線接続され、制御基板50の制御の下、各部品が駆動される。
【0012】
ところで、本実施形態では、プロペラファン22の許容回転数Zをプロペラファン22の一次の固有振動数f1から決定している。具体的には、図3に示すように、プロペラファン22の羽根(ブレード)の先端位置に加速度センサ60を取り付け、プロペラファン22が回転しない状態で、プラスティックハンマー40を用いてプロペラファン22に外部から衝撃を与え、加速度センサ60の検出結果から一次の固有振動数f1を取得する。
【0013】
図4は、加速度センサ60の検出結果から得たプロペラファン停止時の振動計測結果の一例を示している。この図は、横軸が振動数f[Hz]、縦軸が振幅Sを示しており、一次の固有振動数f1が45Hz、二次の固有振動数f2が50Hzである場合を示している。
そして、以下の式(1)により、プロペラファン22の固有振動回転数Xを算出し、式(2)に示すように、許容回転数Zを、固有振動回転数X未満の値に決定している。
【0014】
X[rpm]=f1[Hz]×60÷プロペラファンの羽根枚数・・式(1)
Z[rpm]<X[rpm]・・式(2)
【0015】
固有振動回転数Xは、式(1)に示すように、プロペラファン22の一次の固有振動数f1を回転数に換算し、この回転数をプロペラファン22の羽根枚数で除算することにより算出され、発明者らの実験等により、この固有振動回転数Xは、プロペラファン22の回転振動がピークとなる回転数TPに近似することが確認されている。
【0016】
図5はプロペラファン22の回転振動を実際に計測した場合の計測結果を示すものであり、横軸が回転数T[rpm]、縦軸が振幅Sを示している。この図に示すように、実測値では、回転振動がピークとなる回転数TPが793[rpm]であり、この値に、固有振動回転数Xの値(675[rpm])が比較的近似していることが判る。
従って、許容回転数Zを固有振動回転数X未満となるように、室外機10の制御基板50が、ファンモータ21によりプロペラファン22の回転数を制御することにより、プロペラファン22の回転振動がピークとならない範囲でプロペラファン22を回転制御でき、プロペラファン22の固有振動によるファンの割れ等を確実に回避することが可能になる。
【0017】
この場合、例えば、固有振動回転数Xを予め設定した安全率で除した値を許容回転数Zの上限値とする方法や、固有振動回転数XのY%(1〜99%の範囲の値、例えば99%)を許容回転数Zの上限値とする方法を適用すればよい。なお、破壊回転数と固有振動回転数Xとの両方に基づいて各回転数未満に許容回転数Zを設定してもよいことは勿論である。
【0018】
以上説明したように、本実施形態によれば、プロペラファン22の一次の固有振動数を回転数に換算し、この回転数をプロペラファン22の羽根枚数で除算することによって固有振動回転数Xを算出し、プロペラファン22を固有振動回転数X未満に制御することにより、プロペラファン22が固有振動で振動する事態を避けることが可能な許容回転数Zを設定することができる。従って、この許容回転数Z内でプロペラファン22を制御することにより、固有振動によるファンの割れを確実に回避することができる。
【0019】
しかも、本実施形態では、プロペラファン22の一次の固有振動数f1を、プロペラファン22を回転停止している状態で測定した値を使用するので、一次の固有振動数f1の測定が容易である。ここで、プロペラファン22を回転した場合の一次の固有振動数f1とみられる振動のピークを実際に測定した場合、プロペラファン22を回転停止している場合のピークより数Hz高くシフトするが、このシフト量を考慮して安全率を設定する等の方法を採用することにより、適切な許容回転数Zを設定することが可能である。
【0020】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更実施が可能である。例えば、上記実施形態では、4枚羽根のプロペラファン22に本発明を適用する場合について述べたが、これに限らず、2枚ファンや3枚ファン等の様々なプロペラファンに適用可能である。また、本発明は、室外機10に限らず、プロペラファンを回転駆動する送風機に広く適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る室外機を示す図である。
【図2】室外機の分解斜視図である。
【図3】プロペラファンの加速度センサ取付位置を示す図である。
【図4】プロペラファン停止時の振動計測結果を示す図である。
【図5】プロペラファンの回転振動を実際に計測した場合の計測結果を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
10 室外機
21 ファンモータ
22 プロペラファン
30 コンプレッサ
31 アキュムレータ
50 制御基盤(制御部)
60 加速度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペラファンの一次の固有振動数を回転数に換算し、この回転数を前記プロペラファンの羽根枚数で除算した値を固有振動回転数とし、前記プロペラファンの回転数を、前記固有振動回転数未満に制御することを特徴とするファンの制御方法。
【請求項2】
前記プロペラファンの一次の固有振動数を、前記プロペラファンが回転停止した状態で測定したことを特徴とする請求項1に記載のファンの制御方法。
【請求項3】
プロペラファンと、プロペラファンを回転駆動するファンモータと、ファンモータを制御する制御部とを備え、前記プロペラファンの一次の固有振動数を回転数に換算し、この回転数を前記プロペラファンの羽根枚数で除算した値を固有振動回転数とし、前記制御部は、前記ファンモータにより前記プロペラファンの回転数を前記固有振動回転数未満に制御することを特徴とする送風機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−309126(P2007−309126A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136549(P2006−136549)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】