説明

ファームウェア変更方法、プログラム

【課題】記録メディアの設計の自由度を高めることができる昇華プリンタのファームウェア変更方法等を提供する。
【解決手段】制御部21は、メモリ34に記憶されているファームウェアのバージョンを取得し(S1)、記録メディア4のメディアコードを取得し(S2)、組合せファイル27のリストを取得し(S3)、取得されたリストに、取得メディアコードに対応したファームウェアのバージョンがあるか否かを判定し(S4)、S4の判定が肯定の場合、記憶部22に、取得メディアコードに対応したファームウェアのファイルがあるか否かを判定し(S5)、S5の判定が肯定の場合、取得ファームウェアバージョンが、取得メディアコードに対応しているか否かを判定し(S6)、S6の判定が否定の場合、記憶部22に記憶されている、取得メディアコードに対応したファームウェアのファイルを、メモリ34に書き込む(S7)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇華転写記録方式のプリンタ(以下、「昇華プリンタ」という。)のファームウェアを変更するファームウェア変更方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昇華プリンタでは、インクリボン及び受像紙(以下、両者を纏めて「記録メディア」という。)が各プリンタに合わせて設計され、特にファームウェアに合わせて設計されることが多い。ここで、ファームウェアとは、プリンタのハードウェアを制御するために、プリンタのメモリに書き込まれるソフトウェアプログラムのことである。従って、プリンタのメモリに特定のファームウェアが書き込まれ、市場に投入された昇華プリンタでは、専用の記録メディアを用いる必要がある。例えば、専用の記録メディアとは異なる別の記録メディアを用いると、インクリボンの色素が受像紙に融着したり、受像紙にプリントされた画像の色調が異常になったりする。
【0003】
つまり、品質を向上させた新しい記録メディアを開発しても、既に市場に投入された昇華プリンタでは、新しい記録メディアを使用できない、或いは使用できたとしても品質を保証することができないことになる。結局、市場に投入された昇華プリンタにおいて品質を保証するためには、旧バージョンの記録メディアと互換性がある記録メディアを設計するしかなく、現状では記録メディアの設計の自由度が極めて低い。そこで、記録メディアの設計の自由度を高めることが望まれている。
【0004】
例えば、特許文献1では、交換可能な消耗品を装着して動作する電子機器に、(a)自機に装着された消耗品の情報媒体から読み出したファームウェアのバージョン情報を保持する消耗品バージョン情報保持部と、(b)自機が現在使用するファームウェアのバージョン情報を保持する自機バージョン情報保持部と、(c)消耗品のバージョン情報と自機のバージョン情報を比較するバージョン情報比較部と、(d)消耗品のバージョン情報が自機のバージョン情報よりも新しい場合、ファームウェアの更新を促すメッセージを自機又は他機の情報表示部に表示させる更新メッセージ通知部を搭載することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−301866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の仕組みでは、消耗品のバージョン情報が自機のバージョン情報よりも新しい場合にファームウェアの更新を促すことから、ファームウェアが後方互換であることが前提条件となっている。ここで、後方互換とは、新しいバージョンの機能を設計する際、古いバージョンの機能を満たすように考慮されることを意味する。つまり、ファームウェアが後方互換であることは、記録メディアの設計において、古い仕様の記録メディアも考慮されることと同義であるから、記録メディアの設計の自由度は低いままである。
【0007】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、記録メディアの設計の自由度を高めることができる昇華プリンタのファームウェア変更方法等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために第1の発明は、昇華プリンタに接続され、昇華プリンタのファームウェアの各バージョンのファイルを記憶するコンピュータが実行する昇華プリンタのファームウェア変更方法であって、昇華プリンタのメモリに記憶されているファームウェアのバージョンを取得する第1ステップと、昇華プリンタに装着されている記録メディアのメディアコードを取得する第2ステップと、コンピュータの記憶部に記憶されている、メディアコードとファームウェアのバージョンとの適正な組合せを示す組合せファイルのリストを取得する第3ステップと、前記第3ステップによって取得されたリストに、前記第2ステップによって取得されたメディアコードに対応したファームウェアのバージョンがあるか否かを判定する第4ステップと、前記第4ステップの判定が肯定の場合、前記コンピュータの記憶部に、前記第2ステップによって取得されたメディアコードに対応したファームウェアのファイルがあるか否かを判定する第5ステップと、前記第5ステップの判定が肯定の場合、前記第1ステップによって取得されたファームウェアのバージョンが、前記第2ステップによって取得されたメディアコードに対応しているか否かを判定する第6ステップと、前記第6ステップの判定が否定の場合、前記コンピュータの記憶部に記憶されている、前記第2ステップによって取得されたメディアコードに対応したファームウェアのファイルを、昇華プリンタのメモリに書き込む第7ステップと、を含むことを特徴とするファームウェア変更方法である。第1の発明によって、記録メディアの設計の自由度を高めることができる。
【0009】
また、前記第5ステップの判定が否定の場合、昇華プリンタのメモリに記憶されているファームウェアのバージョンに対応する記録メディアに交換することを促すメッセージを表示することが望ましい。これによって、記録メディアの出荷に対して、コンピュータ側の更新が遅れていても、古い記録メディアでの運用が可能となる。
【0010】
また、昇華プリンタが起動されると、前記第1ステップから前記第7ステップまでを所定時間ごとに繰り返すことが望ましい。これによって、記録メディアの交換者は特別な操作を行う必要がなく、失敗することがない。
【0011】
また、昇華プリンタのメモリには、ファームウェアのファイルと対応付けて、昇華プリンタの解像度に応じた階調カーブを示す階調ファイルが記憶され、前記第5ステップでは、更に、コンピュータの記憶部に、前記第2ステップによって取得されたメディアコード及び昇華プリンタのサーマルヘッドに対応した前記階調ファイルがあるか否かを判定することが望ましい。これによって、記録メディアの仕様変更によって最も影響を受ける階調カーブを、ファームウェアのファイルとは独立して変更することができる。
【0012】
第2の発明は、昇華プリンタに接続され、昇華プリンタのファームウェアの各バージョンのファイルを記憶するコンピュータに、昇華プリンタのメモリに記憶されているファームウェアのバージョンを取得する第1ステップと、昇華プリンタに装着されている記録メディアのメディアコードを取得する第2ステップと、コンピュータの記憶部に記憶されている、メディアコードとファームウェアのバージョンとの適正な組合せを示す組合せファイルのリストを取得する第3ステップと、前記第3ステップによって取得されたリストに、前記第2ステップによって取得されたメディアコードに対応したファームウェアのバージョンがあるか否かを判定する第4ステップと、前記第4ステップの判定が肯定の場合、コンピュータの記憶部に、前記第2ステップによって取得されたメディアコードに対応したファームウェアのファイルがあるか否かを判定する第5ステップと、前記第5ステップの判定が肯定の場合、前記第1ステップによって取得されたファームウェアのバージョンが、前記第2ステップによって取得されたメディアコードに対応しているか否かを判定する第6ステップと、前記第6ステップの判定が否定の場合、コンピュータの記憶部に記憶されている、前記第2ステップによって取得されたメディアコードに対応したファームウェアのファイルを、昇華プリンタのメモリに書き込む第7ステップと、を実行させるためのプログラムである。第2の発明を、汎用のコンピュータにインストールすることによって、第1の発明のファームウェア変更方法を実行することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、記録メディアの設計の自由度を高めることができる昇華プリンタのファームウェア変更方法等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】プリントシステムの概要を示す図
【図2】組み合わせファイルの一例
【図3】ファームウェア変更プログラムに従ったコンピュータの処理の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の実施形態では、コンピュータと昇華プリンタが接続されて構成されるプリントシステムにおいて、コンピュータが昇華プリンタのファームウェアの変更処理を実行する。
【0016】
プリントシステムの一例としては、例えば、利用者が所有するコンピュータ読取可能な記憶媒体(以下、単に「記憶媒体」と省略する。)に記憶されている画像データのプリントを行う画像プリントシステムが挙げられる。画像プリントシステムでは、コンピュータが画像データ受付端末の役割を果たし、昇華プリンタがコンピュータから受信する画像データを受像紙にプリントする。特に、利用者がコンピュータを直接操作するセルフ型の画像プリントシステムは、家電量販店や食料品店などに設置されることが多い。このような場合、家電量販店や食料品店などの店員が記録メディアの交換などのメンテナンスを行う。家電量販店や食料品店などの店員は画像プリントシステムの専門家ではないため、ファームウェアの変更処理を手作業によって行うことは難しい。一方、本発明の実施の形態におけるファームウェア変更方法では、コンピュータが一連の処理を実行するので、セルフ型の画像プリントシステムにおける昇華プリンタのファームウェアを変更する場合に特に有効であると言える。
【0017】
図1は、プリントシステムの概要を示す図である。図1では、説明を分かり易くするため、ファームウェアの変更処理に関係するハードウェア、ソフトウェア及びデータファイルのみを表記している。当然ながら、前述したセルフ型の画像プリントシステムにおいても、図1に示すハードウェア、ソフトウェア及びデータファイルを含むように構成することによって、本発明の実施の形態におけるファームウェア変更方法を適用することができる。
【0018】
プリントシステム1は、少なくとも、コンピュータ2、昇華プリンタ3を備える。コンピュータ2と昇華プリンタ3は、データの送受信が可能なように接続されている。コンピュータ2には、必要に応じて、入力装置5、表示装置6、記憶媒体7、通信装置8等が、データの送受信が可能なように接続されている。
【0019】
コンピュータ2は、制御部21、記憶部22、インタフェース(以下、「I/F」と省略する。)23等のハードウェアを備える。また、コンピュータ2の記憶部22には、OS(Operating System)24、プリンタドライバ25、ファームウェア変更プログラム26等のプログラムが実行可能ファイルとして記憶されている。また、コンピュータ2の記憶部22には、組合せファイル27、ファームウェア群28、階調ファイル群29等のファイルが記憶されている。
【0020】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等から構成される。CPUは、記憶部22、ROM、記憶媒体7等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、各装置を駆動制御し、コンピュータ2が行う後述する処理を実現する。ROMは、不揮発性メモリであり、コンピュータ2のブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。RAMは、揮発性メモリであり、記憶部22、ROM、記憶媒体7等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部21が各種処理を行うために使用するワークエリアを備える。
【0021】
記憶部22は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等である。I/F23は、コンピュータ2に周辺機器(昇華プリンタ3、入力装置5、表示装置6、通信装置8等)を接続させるためのポートや記憶媒体7を読み書きするためのドライブなどである。コンピュータ2は、I/F23を介して周辺機器や記憶媒体7とのデータの送受信を行う。
【0022】
OS24は、制御部21に基本的な機能を実現させるためのプログラムである。プリンタドライバ25は、制御部21に昇華プリンタ3を制御させるためのプログラムである。ファームウェア変更プログラム26は、制御部21に図3に示す処理を実行させるためのプログラムである。これらのプログラムは、制御部21が実行可能なファイルとして記憶部22に記憶されている。
【0023】
組合せファイル27は、少なくとも、メディアコードとファームウェアのバージョンとの適正な組合せを示すファイルである。ファームウェア群28は、昇華プリンタ3のファームウェアの集合である。階調ファイル群29は、昇華プリンタ3の解像度に応じた階調カーブを示すファイルの集合である。これらの詳細は、図2を参照しながら後述する。
【0024】
昇華プリンタ3は、制御部31、プリント部32、読取部33、メモリ34、I/F35等のハードウェアを備える。メモリ34には、ファームウェア36、階調ファイル37等が記憶されている。また、昇華プリンタ3には、記録メディア4が装着される。
【0025】
制御部31は、CPU、ROM、RAM等から構成され、メモリ34に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、各装置を駆動制御し、昇華プリンタ3が行う後述する処理を実現する。
【0026】
プリント部32は、サーマルヘッド、プラテンローラ、グリップローラ、フィードローラ、用紙搬送モータ等から構成される。尚、プリント部32の詳細は、例えば、特開2006−315237号公報等に記載されている。本発明の実施の形態におけるファームウェア変更方法は、プリント部32の詳細の説明がなくても理解できるため、説明を省略する。
【0027】
読取部33は、RFIDタグ41に記録されているデータを読み取る。メモリ34は、EPPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性メモリである。メモリ34に記憶されているデータは、一般には昇華プリンタ3の工場出荷時に記憶されるが、本発明の実施の形態では、後述する図3の処理によってメモリ34に記憶されているデータを書き換えることがある。I/F35は、コンピュータ2のI/F23とデータの送受信を行う。
【0028】
ファームウェア36は、昇華プリンタ3が起動されると制御部31のRAM上にロードされ、プリント部32の動作を実現する為のプログラムである。階調ファイル37は、昇華プリンタ3が起動している間に参照されるファイルである。
【0029】
記録メディア4には、RFID(Radio Frequency
IDentification)タグ41が添付されている。RFIDタグ41には、記録メディア4を一意に識別するためのメディアコードが記憶されている。尚、RFIDタグ41の添付態様は、例えば、特開2003−303062号公報等に記載されている。本発明の実施の形態におけるファームウェア変更方法は、RFIDタグ41の添付態様の説明がなくても理解できるため、説明を省略する。
【0030】
図2は、組み合わせファイルの一例である。組合せファイル27は、少なくとも、メディアコードとファームウェアのバージョンとの適正な組合せを示している。また、組合せファイル27は、昇華プリンタ3によるプリント処理に必要なファイル(例えば階調ファイル)とメディアコード(或いはファームウェアのバージョン)との適正な組合せも示している。
【0031】
図2に例示する組合せファイル27のファイルフォーマットは、メディアコード51、ファームウェアファイル名52、ファームウェアバージョン53、階調カーブ(ヘッド解像度300dpi)54、階調カーブ(ヘッド解像度600dpi)55等の項目を有している。
【0032】
図2では、メディアコード51が「0001」のデータが3件存在しており、メディアコード51が「0001」の記録メディア4に対して、3つのファームウェアのバージョンが存在することを示している。同様に、メディアコード51が「0002」の記録メディア4に対して、2つのファームウェアのバージョンが存在することを示している。つまり、メディアコード51とファームウェアバージョン53は、1対多の関係となっている。
【0033】
ファームウェアファイル名52及びファームウェアバージョン53は、1対1の関係である。つまり、ファームウェアのバージョンごとに、ファームウェアの実体ファイルが存在する。
【0034】
階調カーブ(ヘッド解像度300dpi)54の項目には、ヘッド解像度が300dpiの昇華プリンタ3に対して、適正な階調カーブを示す階調ファイルのファイル名が登録される。同様に、階調カーブ(ヘッド解像度600dpi)55の項目には、ヘッド解像度が600dpiの昇華プリンタ3に対して、適正な階調カーブを示す階調ファイルのファイル名が登録される。
【0035】
ファームウェアバージョン53が「DS−RX1 01.00」と「DS−RX1 01.01」には、同一の階調ファイルのファイル名「XXXXX1_300_0100.cwd」が登録されている。同様に、ファームウェアバージョン53が「DS−RX1 02.00」と「DS−RX1 02.01」には、同一の階調ファイルのファイル名「XXXXX1_300_0200.cwd」が登録されている。つまり、マイナーチェンジのファームウェア同士では、同一の階調ファイルが対応付けられている。
【0036】
このように、図2に例示する組合せファイル27は、メディアコード、ファームウェアのバージョン、階調ファイルの3者の適正な組合せを示している。尚、当然ながら、図2に示す組合せファイル27は一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。前述した通り、組合せファイル27は、少なくとも、メディアコードとファームウェアのバージョンとの適正な組合せを示すファイルであれば良い。
【0037】
図1に示すように、組合せファイル27は、ファームウェア変更プログラム26と独立したファイルであることから、容易に差し替えが可能である。同様に、ファームウェア群28や階調ファイル群29も、ファームウェア変更プログラム26と独立したファイルであることから、容易に追加、変更、削除が可能である。尚、ファームウェア群28や階調ファイル群29が記憶されるフォルダは、特定のフォルダ名が付けられる。ファームウェア変更プログラム26には、ファームウェア群28や階調ファイル群29が、特定のフォルダ名のフォルダに記憶されているものとして、ファームウェアのファイルや階調ファイルを検索するようにコーディングされている。
【0038】
ここで、記録メディア4の設計に関係するファームウェアの変更点について説明する。記録メディア4の仕様変更によって最も影響を受ける点は、サーマルヘッドの通電パルス幅と、印画濃度(=受像紙にプリントされた画像の濃度)との関係である。なぜなら、サーマルヘッドの通電パルス幅と印画濃度との関係は、記録メディア4の材質等に依存するからである。
【0039】
また、一般に、昇華プリンタ3のファームウェアには、階調値に応じたサーマルヘッドの通電パルス幅が定義されている。階調値の取り得る範囲は、画像データがYMC各色8ビットの階調を持つ場合、YMC各色について256階調となる。
【0040】
つまり、以下の2つの関係によって、印画濃度が決まることになる。
(1)昇華プリンタ3に入力される画像データと、画像データの階調値に対応したサーマルヘッドの通電パルス幅
(2)サーマルヘッドの通電パルス幅と印画濃度(記録メディア4に依存)
【0041】
そこで、本発明の実施の形態では、(2)の関係を考慮して、(1)の関係を定義した階調カーブを、階調ファイル37として、昇華プリンタ3のメモリ34に記憶しておく。そして、記録メディア4の仕様変更によって、階調カーブの変更が必要な場合、本発明の実施の形態では、昇華プリンタ3のメモリ34に記憶されている階調ファイル37を書き換える。これによって、記録メディア4に合わせた適正なサーマルヘッドの通電パルス幅と印画濃度との関係を維持し、品質を保証することができる。
【0042】
また、記録メディア4の仕様変更によって影響を受ける他の点は、例えば、用紙搬送モータの単位時間当たりの回転数、記録メディア4の搬送時のテンション(張力)の度合、サーマルヘッドの移動速度などが考えられる。記録メディア4の仕様変更によって、これらの昇華プリンタ3の動作変更が必要な場合、本発明の実施の形態では、昇華プリンタ3のメモリ34に記憶されているファームウェア36を書き換える。これによって、記録メディア4に合わせた適正な昇華プリンタ3の動作を維持し、品質を保証することができる。
【0043】
以下では、ファームウェア36のみの変更、階調ファイル37のみの変更、ファームウェア36及び階調ファイル37の両方の変更、の3つのパターンを纏めて、「ファームウェアの変更」と表記することにする。
【0044】
図3は、ファームウェア変更プログラムに従ったコンピュータの処理の流れを示すフローチャートである。コンピュータ2の制御部21は、昇華プリンタ3が起動されると、ファームウェア変更プログラム26に従って、図3の処理を実行する。特に、図3の処理は、記録メディア4の交換時に必ず実行されることを想定している。
【0045】
コンピュータ2の制御部21は、昇華プリンタ3のメモリ34に記憶されているファームウェア36のバージョンを取得する(S1)。具体的には、制御部21は、昇華プリンタ3に対して、ファームウェア36のバージョンの問合せを行う。これに対して、昇華プリンタ3の制御部31は、メモリ34に記憶されているファームウェア36のバージョンを確認し、コンピュータ2に返答する。以下、S1において取得されたファームウェア36のバージョンを、「取得ファームウェアバージョン」と表記する。
【0046】
次に、制御部21は、記録メディア4のメディアコードを取得する(S2)。具体的には、制御部21は、昇華プリンタ3に対して、記録メディア4のメディアコードの問合せを行う。これに対して、昇華プリンタ3の制御部31は、読取部33を制御して、記録メディア4に添付されているRFIDタグ41のメディアコードを読み取り、コンピュータ2に返答する。以下、S2において取得された記録メディア4のメディアコードを、「取得メディアコード」と表記する。
【0047】
次に、制御部21は、記憶部22に記憶されている組合せファイル27のリストを取得する(S3)。具体的には、制御部21は、記憶部22に記憶されている組合せファイル27を開き、各データを組合せファイル27のリストとしてRAMに記憶する。
【0048】
次に、制御部21は、組合せファイル27のリストに、取得メディアコードに対応したファームウェアバージョンがあるか否かを判定する(S4)。S4の判定が肯定(S4のYES)の場合、制御部21はS5に進む。S4の判定が否定(S4のNO)の場合、制御部21はS8に進む。
【0049】
S5では、制御部21は、コンピュータ2の記憶部22に、取得メディアコードに対応したファームウェアファイルがあるか否かを判定する(S5)。S5の判定が肯定(S5のYES)の場合、制御部21はS6に進む。S5の判定が否定(S5のNO)の場合、制御部21はS9に進む。
【0050】
尚、階調ファイルがファームウェアのファイルと独立している場合、制御部21は、コンピュータ2の記憶部22に取得メディアコード及び昇華プリンタ3のサーマルヘッドに対応した階調ファイルがあるか否かも判定する。これによって、記録メディア4の仕様変更によって最も影響を受ける階調カーブを、ファームウェアのファイルとは独立して変更することができる。
【0051】
S6では、制御部21は、取得ファームウェアバージョンが、取得メディアコードに対応しているか否かを判定する(S6)。S6の判定が肯定(S6のYES)の場合、制御部21はS7に進む。S6の判定が否定(S6のNO)の場合、制御部21はS10に進む。
【0052】
ここで、図2に示すように、メディアコード51とファームウェアバージョン53が1対多の関係となっている場合、制御部21は、取得ファームウェアバージョンが、取得メディアコードに対応する最新のファームウェアバージョン53か否かを判定する。つまり、取得ファームウェアバージョンが、取得メディアコードに対応する最新のファームウェアバージョン53でなければ、制御部21はS10に進む。これによって、最新のファームウェアバージョン53への変更機会を喪失することがない。
【0053】
S7に進んだ場合、この時点では、取得ファームウェアバージョンと取得メディアコードが対応していることが確認されたことになる。そこで、コンピュータ2の制御部21は所定時間待機し(S7)、S1から処理を繰り返す。つまり、制御部21は、昇華プリンタ3が起動されると、図3に示す処理を所定時間ごとに繰り返す。所定時間は、記録メディア4の交換時間よりも短いことが望ましい。これは、前回と異なる記録メディア4に交換されたときに、少なくとも1回は、図3に示すS1〜S11の処理が実行される必要があるからである。このように、制御部21が図3に示す処理を所定時間ごとに繰り返していれば、記録メディア4の交換者は特別な操作を行う必要がなく、失敗することがない。
【0054】
S8に進んだ場合、取得メディアコード、すなわち昇華プリンタ3に装着されている記録メディア4のメディアコードに対応したファームウェアバージョンが、組合せファイル27に存在しないことが確認されたことになる。これは、組合せファイル27の内容に誤りがあるか、記録メディア4のRFIDタグ41に記憶されているデータに誤りがあるかのいずれかである。そこで、制御部21は、コンピュータ2の記憶部22に記憶されている組合せファイル27の更新と、昇華プリンタ3に装着されている記録メディア4の確認を促す旨のメッセージを表示装置6に表示する(S8)。
【0055】
尚、メッセージの確認者がプリントシステム1の専門家ではない場合も考慮して、制御部21は、別途、プリントシステム1の専門家への連絡手段を示すメッセージを表示装置6に表示しても良い。また、例えば、制御部21は、通信装置8を介して、プリントシステム1の専門家宛のメールアドレスにメールを送信するようにしても良い。プリントシステム1の専門家は、通信装置8を介したり、記憶媒体7を介したりして、最新の組合せファイル27、最新のファームウェア群28、最新の階調ファイル群29を、記憶部22に記憶させる。また、プリントシステム1の専門家は、記録メディア4のRFIDタグ41に記憶されているデータを確認する。
【0056】
S9に進んだ場合、取得メディアコードに対応したファームウェアに変更できない、或いは何らかの理由によって、ユーザ判断によって変更しないことが確認されたことになる。前者は、S5の判定が否定(S5のNO)の場合である。後者は、後述するS10の判定が否定(S10のNO)の場合である。そこで、制御部21は、取得ファームウェアバージョン、すなわち昇華プリンタ3のメモリ34に記憶されているファームウェア36に対応した記録メディア4への交換を促す旨のメッセージを表示装置6に表示する。これによって、記録メディア4の出荷に対して、コンピュータ2側の更新が遅れていても、古い記録メディア4での運用が可能となる。尚、制御部21は、昇華プリンタ3のメモリ34に記憶されているファームウェア36に対応した記録メディア4のメディアコードも表示装置6に表示することが望ましい。
【0057】
S10に進んだ場合、取得ファームウェアバージョンと取得メディアコードが対応していない(取得メディアコードに対して取得ファームウェアバージョンが最新ではない場合も含む。)ことが確認されたことになる。また、S5において、取得メディアコードに対応したファームウェアファイルが、コンピュータ2の記憶部22に記憶されていることも確認されたことになる。つまり、特別な理由がない限り、昇華プリンタ3のメモリ34に記憶されているファームウェア36を変更することが望ましい状況である。そこで、制御部21は、ファームウェアの変更承諾画面を表示装置6に表示し、入力装置5を介して、ファームウェアの変更承諾の指示がなされたか否かを判定する(S10)。S10の判定が肯定(S10のYES)の場合、制御部21はS11に進む。S10の判定が否定(S10のNO)の場合、制御部21はS9に進む。
【0058】
S11では、制御部21は、取得メディアコードに対応したファームウェアに変更する(S11)。具体的には、制御部21は、記憶部22の特定のフォルダを検索し、取得メディアコードに対応した最新のファームウェアのファイルを取得する。そして、制御部21は、昇華プリンタ3に最新のファームウェアのファイルを送信し、書き換えを指示する。これに対して、昇華プリンタ3は、受信した最新のファームウェアのファイルを、メモリ34のファームウェア36として、上書き更新する。
【0059】
S8、S9、S11のいずれが終了した場合も、制御部21はS7に進む。尚、制御部21は、S8及びS9の処理では、例えば、入力装置5を介して、メッセージ表示画面を閉じる等の指示がなされたときに、終了と判断する。また、制御部21は、S11の処理では、例えば、昇華プリンタ3からファームウェア36の書き換え終了の通知がなされたときに、終了と判断する。
【0060】
以上、本発明の実施の形態におけるファームウェア変更方法では、昇華プリンタ3に接続され、昇華プリンタ3のファームウェアの各バージョンのファイルを記憶するコンピュータ2が、少なくとも、
(1)昇華プリンタ3のメモリ34に記憶されているファームウェアのバージョンを取得する第1ステップ、
(2)昇華プリンタ3に装着されている記録メディア4のメディアコードを取得する第2ステップ、
(3)コンピュータ2の記憶部22に記憶されている、メディアコードとファームウェアのバージョンとの適正な組合せを示す組合せファイル27のリストを取得する第3ステップ、
(4)第3ステップによって取得されたリストに、第2ステップによって取得されたメディアコードに対応したファームウェアのバージョンがあるか否かを判定する第4ステップ、
(5)第4ステップの判定が肯定の場合、コンピュータ2の記憶部22に、第2ステップによって取得されたメディアコードに対応したファームウェアのファイルがあるか否かを判定する第5ステップ、
(6)第5ステップの判定が肯定の場合、第1ステップによって取得されたファームウェアのバージョンが、第2ステップによって取得されたメディアコードに対応しているか否かを判定する第6ステップ、
(7)第6ステップの判定が否定の場合、コンピュータ2の記憶部22に記憶されている、第2ステップによって取得されたメディアコードに対応したファームウェアのファイルを、昇華プリンタ3のメモリ34に書き込む第7ステップ、
を実行する。
【0061】
これによって、古い仕様の記録メディア4から新しい仕様の記録メディア4に交換された場合であっても、新しい仕様の記録メディア4から古い仕様の記録メディア4に交換された場合であっても、昇華プリンタ3のメモリ34には、記録メディア4に対応するファームウェアのファイルが書き込まれるので、ファームウェア36が後方互換であることが前提条件とならない。つまり、旧バージョンの記録メディア4と互換性がない記録メディア4を設計しても良く、記録メディア4の設計の自由度を高めることができる。
【0062】
尚、前述の説明では、記録メディア4のメディアコードの識別手段として、RFIDタグ41を利用するものとしたが、本発明の実施の形態はこの例に限定されない。例えば、メディアコードの識別手段としては、バーコード(2次元バーコードを含む。)を利用したり、入力装置5を介した入力データを利用したりすることが考えられる。そして、コンピュータ2の制御部21は、図3のS2において、メディアコードの識別手段に合わせて記録メディア4のメディアコードを取得すれば良い。
【0063】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係るファームウェア変更方法等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0064】
1………プリントシステム
2………コンピュータ
3………昇華プリンタ
4………記録メディア
5………入力装置
6………表示装置
7………記憶媒体
8………通信装置
21………制御部
22………記憶部
23………I/F
24………OS
25………プリンタドライバ
26………ファームウェア変更プログラム
27………組合せファイル
28………ファームウェア群
29………階調ファイル群
31………制御部
32………プリント部
33………読取部
34………メモリ
35………I/F
36………ファームウェア
37………階調ファイル
41………RFIDタグ
51………メディアコード
52………ファームウェアファイル名
53………ファームウェアバージョン
54………階調カーブ(ヘッド解像度300dpi)
55………階調カーブ(ヘッド解像度600dpi)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇華プリンタに接続され、昇華プリンタのファームウェアの各バージョンのファイルを記憶するコンピュータが実行する昇華プリンタのファームウェア変更方法であって、
昇華プリンタのメモリに記憶されているファームウェアのバージョンを取得する第1ステップと、
昇華プリンタに装着されている記録メディアのメディアコードを取得する第2ステップと、
コンピュータの記憶部に記憶されている、メディアコードとファームウェアのバージョンとの適正な組合せを示す組合せファイルのリストを取得する第3ステップと、
前記第3ステップによって取得されたリストに、前記第2ステップによって取得されたメディアコードに対応したファームウェアのバージョンがあるか否かを判定する第4ステップと、
前記第4ステップの判定が肯定の場合、前記コンピュータの記憶部に、前記第2ステップによって取得されたメディアコードに対応したファームウェアのファイルがあるか否かを判定する第5ステップと、
前記第5ステップの判定が肯定の場合、前記第1ステップによって取得されたファームウェアのバージョンが、前記第2ステップによって取得されたメディアコードに対応しているか否かを判定する第6ステップと、
前記第6ステップの判定が否定の場合、前記コンピュータの記憶部に記憶されている、前記第2ステップによって取得されたメディアコードに対応したファームウェアのファイルを、昇華プリンタのメモリに書き込む第7ステップと、
を含むことを特徴とするファームウェア変更方法。
【請求項2】
前記第5ステップの判定が否定の場合、昇華プリンタのメモリに記憶されているファームウェアのバージョンに対応する記録メディアに交換することを促すメッセージを表示する
ことを特徴とする請求項1に記載のファームウェア変更方法。
【請求項3】
昇華プリンタが起動されると、前記第1ステップから前記第7ステップまでを所定時間ごとに繰り返す
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のファームウェア変更方法。
【請求項4】
昇華プリンタのメモリには、ファームウェアのファイルと対応付けて、昇華プリンタの解像度に応じた階調カーブを示す階調ファイルが記憶され、
前記第5ステップでは、更に、コンピュータの記憶部に、前記第2ステップによって取得されたメディアコード及び昇華プリンタのサーマルヘッドに対応した前記階調ファイルがあるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のファームウェア変更方法。
【請求項5】
昇華プリンタに接続され、昇華プリンタのファームウェアの各バージョンのファイルを記憶するコンピュータに、
昇華プリンタのメモリに記憶されているファームウェアのバージョンを取得する第1ステップと、
昇華プリンタに装着されている記録メディアのメディアコードを取得する第2ステップと、
コンピュータの記憶部に記憶されている、メディアコードとファームウェアのバージョンとの適正な組合せを示す組合せファイルのリストを取得する第3ステップと、
前記第3ステップによって取得されたリストに、前記第2ステップによって取得されたメディアコードに対応したファームウェアのバージョンがあるか否かを判定する第4ステップと、
前記第4ステップの判定が肯定の場合、コンピュータの記憶部に、前記第2ステップによって取得されたメディアコードに対応したファームウェアのファイルがあるか否かを判定する第5ステップと、
前記第5ステップの判定が肯定の場合、前記第1ステップによって取得されたファームウェアのバージョンが、前記第2ステップによって取得されたメディアコードに対応しているか否かを判定する第6ステップと、
前記第6ステップの判定が否定の場合、コンピュータの記憶部に記憶されている、前記第2ステップによって取得されたメディアコードに対応したファームウェアのファイルを、昇華プリンタのメモリに書き込む第7ステップと、
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−25371(P2013−25371A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156687(P2011−156687)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】