説明

フィラー

【課題】透明部材に用いられるフィラーにおいて、透明部材の光透過性を向上させることができるフィラーと、その製造方法を提供する。
【解決手段】セラミックス粒子からなるフィラーであって、該セラミックス粒子が、以下の要件(I)〜(V)を満たすフィラー。
(I)SiOの含有量が97.0重量%以上であり、
(II)X線回折スペクトルにおける相対バックグラウンド高さが3.0〜10.0であり、
(III)平均粒子径が0.01〜50μmであり、
(IV)真球度が0.95以上であり、
(V)屈折率が1.48〜1.60である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス粒子からなるフィラーと、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィラーは、プラスチック、ゴム、塗料、繊維、紙、ガラス、金属等の基材に添加されるものであり、基材の物性を改善し、加工性や最終製造物の機能の向上に寄与する。なかでもセラミックス粒子は、物理化学特性が安定であり、フィラーとして種々検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1及び2では、顆粒状シリカゲルや含水シリカを火炎溶融して得られる溶融球状シリカが開示されており、半導体の封止用樹脂組成物のフィラーとして使用できることが記載されている。
【0004】
特許文献3では、ポリオルガノシロキサン粒子を焼成して得られる透明樹脂組成物用シリカ系フィラーが開示されており、1.36〜1.40のブロードな屈折率をもつことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−145415号公報
【特許文献2】特開平2−145416号公報
【特許文献3】特開2007−84606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
汎用的な樹脂、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、アクリル、シリコーン等の樹脂は、1.48〜1.60の屈折率を持つ。これらの樹脂にフィラーが添加された基材を保護カバー、封止材等の透明部材に使用するには、光透過性を向上させる必要があるが、その場合、樹脂の屈折率とフィラーの屈折率をできるだけ近づけることが必要である。
【0007】
しかしながら、上記特許文献に開示されているシリカ粒子は、いずれも非晶質であり、その屈折率は、1.44以下であり、低いものである。
【0008】
本発明は、透明部材に用いられるフィラーにおいて、透明部材の光透過性を向上させることができるフィラーと、その製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のフィラーは、セラミックス粒子からなるフィラーであって、該セラミックス粒子が、以下の要件(I)〜(V)を満たすフィラーである。
(I)SiOの含有量が97.0重量%以上であり、
(II)X線回折スペクトルにおける相対バックグラウンド高さが3.0〜10.0であり、
(III)平均粒子径が0.01〜50μmであり、
(IV)真球度が0.95以上であり、
(V)屈折率が1.48〜1.60である。
【0010】
本発明のフィラーの製造方法は、上記要件(I)〜(V)を満たすフィラーの製造方法であって、火炎溶融法によって得られる非晶質シリカ粒子に、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物から選ばれる1種以上の金属化合物を添加し、熱処理する、フィラーの製造方法である。
【0011】
本発明における各種の物性値は、具体的には実施例に記載の測定方法で測定される値である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフィラーによれば、基材に添加して透明部材とした場合に、該透明部材の光透過性を向上させることができる。また、本発明のフィラーの製造方法によれば、上記本発明のフィラーを容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のフィラー(セラミックス粒子)の物性等について説明する。
【0014】
[SiOの含有量]
本発明に用いられるセラミックス粒子はSiOを主成分とするものである。SiOの含有量は、セラミックス粒子自身の着色を抑制し、フィラーが添加された基材の光透過性を向上させる観点、及び屈折率を所定の範囲に調整してフィラーが添加された基材の光透過性を向上させる観点から、97.0重量%以上であり、97.5重量%以上が好ましく、98.0重量%以上がより好ましい。また、屈折率を所定の範囲に調整して、フィラーが添加された基材の光透過性を向上させる観点から、100重量%未満が好ましく、99.9重量%以下がより好ましく、99.8重量%以下がさらに好ましい。
【0015】
また、Si以外の元素、例えばFe、Mn等の遷移金属元素の含有量は、セラミックス粒子自身の着色を低減し、フィラーが添加された基材の光透過性を向上させる観点から、150ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましく、80ppm以下がさらに好ましい。なお、Fe等の遷移金属元素は、原料のシリカに含まれたり、製造工程中に部材等から混入する場合もある。
【0016】
[X線回折スペクトルにおける相対バックグラウンド高さ]
本発明に用いられるセラミックス粒子の相対バックグラウンド高さは、フィラーの非晶質部分と結晶質部分の割合を表す。この値が高いほど非晶質部分の存在割合が大きく、小さいほど結晶質部分の存在割合が大きい。相対バックグラウンド高さは、屈折率を1.48以上にする観点、及びセラミックス粒子自身の硬さを向上させてフィラーが添加された基材の硬さを向上させる観点から、10.0以下であり、8.5以下が好ましく、7.0以下がより好ましい。また、セラミックス粒子自身の透明性を向上させる観点、及び成型時の金型の摩耗を抑制し、汚染を低減する観点から、3.0以上であり、3.5以上が好ましく、4.0以上がより好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、相対バックグラウンド高さは、3.0〜10.0であり、3.5〜8.5が好ましく、4.0〜7.0がより好ましい。相対バックグラウンド高さを上記範囲内に制御することに関しては、後述する製造方法において、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の添加量を増やすことによって、あるいは熱処理温度を高くすることや、熱処理時間を長くすることによって、相対バックグラウンド高さを小さくすることができる。
【0017】
[平均粒子径]
本発明に用いられるセラミックス粒子の平均粒子径は、セラミックス粒子の凝集・合一を抑制し、セラミックス粒子の粒度分布をあまり大きくしない観点、及びフィラーが添加された基材の強度を向上させる観点から、0.01μm以上であり、0.1μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、2.0μm以上がさらに好ましい。また、フィラーが添加された基材の光透過性を向上させる観点、及びフィラーが添加された基材の強度を向上させる観点から、50μm以下であり、20μm以下が好ましく、13μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、セラミックス粒子の平均粒子径は、0.01〜50μmであり、0.1〜20μmが好ましく、1.0〜13μmがより好ましく、2.0〜10μmがさらに好ましい。平均粒子径を上記範囲内に制御するには、後述する製造方法において、火炎中に投入する原料粒子の粒子径を調整すればよい。
【0018】
[真球度]
本発明に用いられるセラミックス粒子の真球度は、散乱を抑制し、フィラーが添加された基材の光透過性を向上させる観点、フィラーの基材への分散性を向上させ、基材へのフィラーの添加量を増大させる観点、及びフィラーの特性を基材に付与しやすくする観点から、0.95以上であり、0.96以上が好ましく、0.97以上がより好ましい。真球度を上記範囲内に制御することに関しては、後述する製造方法において、火炎温度を高くしたり、火炎内滞留時間を長くすることにより、真球度を高くすることができる。
【0019】
[屈折率]
本発明に用いられるセラミックス粒子の屈折率は、基材の屈折率に近似させ、フィラーが添加された基材の光透過性を向上させる観点から、1.48〜1.60であり、1.49〜1.59が好ましい。屈折率を上記範囲内に制御することに関しては、後述する製造方法において、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の添加量を多くすることによって、あるいは熱処理温度を高くしたり、熱処理時間を長くすることによって、屈折率を高くすることができる。
【0020】
[製造方法]
本発明に用いられるセラミックス粒子の製造方法は、上記物性が得られる限り特に限定されないが、上記物性を持つセラミックス粒子を容易に安定して製造できる観点、特にセラミックス粒子の真球度を向上させる観点から、火炎溶融法を採用することが好ましい。
【0021】
火炎溶融法は、シリカ源(出発原料)を火炎中で溶融して球状化する方法である。火炎溶融法によれば、通常、非晶質シリカ粒子が得られる。ここで、非晶質シリカ粒子とは、前記相対バックグラウンド高さが24以上のものをいう。出発原料となるシリカ源としては、珪石、珪砂、石英、クリストバライト、非晶質シリカ、長石、パイロフィライト、ヒュームドシリカ、ケイ酸エチル、シリカゾル等を使用することができる。好適な態様においては、出発原料を酸素等のキャリアガスに分散させ、下記火炎中に、投入する。
【0022】
用いる火炎は、プロパン、ブタン、メタン、液化天然ガス、LPG、重油、灯油、軽油、微粉炭等の燃料を酸素と燃焼させることによって発生させる。燃料の対酸素比は、完全燃焼の観点から容量比で1.01〜1.30が好ましい。高温の火炎を発生させる観点から、酸素・ガスバーナーを用いることが好ましい。特にバーナーの構造は限定するものではないが、特開平7−48118号公報、特開平11−132421号公報、特開2000−205523号公報、特開2000−346318号公報等に開示されているバーナーが例示できる。
【0023】
キャリアガス中の出発原料の濃度は、出発原料の充分な分散性を確保する観点から、0.1〜20kg/Nmが好ましく、0.2〜10kg/Nmがより好ましい。
【0024】
また、結晶化を促進して屈折率を調整する観点から、火炎溶融法によって得られた非晶質シリカ粒子をさらに熱処理しても良い。熱処理の温度は、火炎溶融法によって得られた粒子を溶融させない観点から1700℃以下が好ましく、1400℃以下がより好ましく、1100℃以下がさらに好ましい。また、結晶化を促進させて生産性を向上させる観点から、600℃以上が好ましく、800℃以上がより好ましく、1000℃以上がさらに好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、熱処理の温度は、600〜1700℃が好ましく、800〜1400℃がより好ましく、1000〜1100℃がさらに好ましい。熱処理時間は、熱処理温度と関係する。熱処理温度が高ければ、短い熱処理時間にて結晶化が促進され、屈折率を上げることができる。熱処理時間は、結晶化を促進させ、屈折率を向上させる観点から0.01時間以上が好ましく、0.5時間以上がより好ましい。また、生産性を向上させる観点から、100時間以下が好ましく、24時間以下がより好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、熱処理時間は、0.01〜100時間が好ましく、0.5〜24時間がより好ましい。
【0025】
また、上記熱処理工程において結晶化を促進させる観点から、非晶質シリカ粒子に、結晶化促進剤として、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物から選ばれる1種以上の金属化合物を添加して熱処理することが好ましい。上記金属化合物としては、水溶性の高いものが好ましく、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の塩化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩や酸化物、あるいはケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、アルミン酸マグネシウム等の複合酸化物等が挙げられる。なかでも、結晶化促進の観点から、上記金属化合物として硝酸カルシウムを用いることが好ましい。
【0026】
上記金属化合物の添加量は、非晶質シリカ粒子の結晶化を促進させ、融解、固着を抑制する観点から、非晶質シリカ粒子100重量部に対して、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の酸化物換算で0.10重量部以上が好ましく、0.15重量部以上がより好ましく、0.20重量部以上がさらに好ましい。また、不純物に起因するセラミックス粒子自身の透明性低下を抑制する観点、及びセラミックス粒子の真球度を向上させる観点から、3重量部以下が好ましく、2重量部以下がより好ましく、1.5重量部以下がさらに好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、上記金属化合物の添加量は、非晶質シリカ粒子100重量部に対して、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の酸化物換算で0.10〜3重量部が好ましく、0.15〜2重量部がより好ましく、0.20〜1.5重量部がさらに好ましい。
【0027】
セラミックス粒子中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の酸化物の含有量は、屈折率を高める観点から、0.10重量%以上が好ましく、0.15重量%以上がより好ましく、0.20重量%以上がさらに好ましい。また、不純物に起因するセラミックス粒子自身の透明性低下を抑制する観点、及びセラミックス粒子の真球度を向上させる観点から、2.9重量%以下が好ましく、2.0重量%以下がより好ましく、1.5重量%以下がさらに好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、セラミックス粒子中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の酸化物の含有量は、0.10〜2.9重量%が好ましく、0.15〜2.0重量%がより好ましく、0.20〜1.5重量%がさらに好ましい。
【0028】
本発明のフィラーを基材に添加することによって得られた透明部材は、保護カバー、封止材等に有用である。この場合、使用する基材は、透明な材料からなるものであれば特に制限はなく、ガラス、樹脂、透明液体等が使用できる。たとえばガラスであれば、ソーダ石灰ガラス等のアルカリガラスや硼珪酸ガラスが好適に用いられる。また、樹脂であれば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、あるいは紫外線硬化性樹脂等のエネルギー線硬化性樹脂等が使用でき、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース、ブチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。また、透明液体であれば、チョウジ油、シリコンオイル等が使用できる。
【0029】
上記列挙した基材のなかでも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドは、本発明のフィラーと組み合わせた場合に、光透過性をより向上させることができるため好ましい。
【0030】
透明部材の良好な光透過性を確保する観点から、基材の屈折率は、1.48〜1.60が好ましく、1.50〜1.58がより好ましく、1.52〜1.56がさらに好ましい。また、基材の屈折率とセラミックス粒子の屈折率の差(絶対値)は、フィラーが添加された基材の光透過性を向上させる観点から、0.05以下が好ましく、0.03以下がより好ましく、0.01以下がさらに好ましい。
【0031】
透明部材の良好な光透過性を確保する観点から、基材100重量部に対するフィラーの添加量は、好ましくは900重量部以下、より好ましくは500重量部以下、さらに好ましくは300重量部以下である。また、透明部材の機械的特性(強度、剛性、硬度)を向上させる観点から、基材100重量部に対するフィラーの添加量は、好ましくは25重量部以上、より好ましくは40重量部以上、さらに好ましくは60重量部以上である。すなわち、これらの観点を総合すると、基材100重量部に対するフィラーの添加量は、25〜900重量部が好ましく、40〜500重量部がより好ましく、60〜300重量部がさらに好ましい。
【0032】
本発明のフィラーを基材に添加する方法は特に限定されず、基材が樹脂の場合には、(a)混練機を用いて基材中にフィラーを練り込む方法、(b)基材樹脂の溶液、エマルジョン、ディスパージョンまたはサスペンジョンの中にフィラーを混合して、この混合物を成型する方法、(c)基材樹脂を合成する工程で基材樹脂のモノマー中にフィラーを添加し、重合する方法等の方法で添加することができる。汎用性の観点から、(a)の方法が好ましく、その場合、ボールミル、ローラーミル、ニーダー等の混練機を用いることができる。基材が透明液体の場合には、(d)攪拌機を用いて基材中にフィラーを混合する方法等で添加することができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における評価項目は下記のとおりに測定を行った。
【0034】
<SiOの含有量>
セラミックス粒子について、蛍光X線法(JIS R2216「耐火れんが及び耐火モルタルの蛍光X線分析法」)による元素分析を行って、Siの濃度を定量し、SiOに換算することによってSiOの含有量を求めた。
【0035】
<アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物の含有量>
セラミックス粒子について、蛍光X線法(JIS R2216「耐火れんが及び耐火モルタルの蛍光X線分析法」)による元素分析を行って、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の濃度を定量し、酸化物に換算することによってアルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物の含有量を求めた。
【0036】
<相対バックグラウンド高さ>
試料(セラミックス粒子)をガラス製ホルダーに充填し、リガク社製RINT2500を用いて、X線源にCuのKα線を使用して粉末X線回折スペクトルを測定し、得られた回折スペクトルを文献記載の方法(Abraham Savitzky et.al., Analytical Chemistry, 36(8), 1627(1964))において、ポイント数25の条件でスム−ジングを行った。その後、バックグラウンド部分を文献記載の方法(Sonneveld, E. J and Visser, J. W., J.Appl. Cryst. 8,1(1975))に従って、点数間隔40点、繰り返し回数32回の条件で抽出し、以下の式1に基づいて、セラミックス粒子のバックグラウンド高さFを算出した。次に、標準アルミナ(National Institute of Standard & Technology, Standard Reference Material 674a)をガラス製ホルダーに充填し、上記と同様に測定を行なって、標準アルミナのバックグラウンド高さAを求めた。そして、セラミックス粒子のバックグラウンド高さFを標準アルミナのバックグラウンド高さAで除して、得られた値を相対バックグラウンド高さとした。
【数1】

(但し、Nは2θ=10°〜35°の範囲で、CuのKα線を使用し粉末X線回折スペクトルを測定したときの測定点数で、その数は1501である。)
【0037】
<平均粒子径>
原料粒子及びセラミックス粒子について、堀場製作所社製LA−920によるレーザー回折/散乱法で、D50(体積基準の50%の中位粒径)を測定し、得られた値を平均粒子径とした。すなわち、超音波を印加しながら、イオン交換水中に粒子を分散させ、分散液の透過率が80〜90%の状態で平均粒子径を測定した。測定に際し、相対屈折率は用いなかった。
【0038】
<真球度>
セラミックス粒子について、キーエンス社製リアルサーフェースビュー顕微鏡VF−7800で観察し、得られたSEM像の粒子投影断面の面積及び該断面の周囲長を求め、次いで、〔粒子投影断面の面積と同じ面積の真円の円周長〕/〔粒子投影断面の周囲長〕を計算し、任意の50個のセラミックス粒子につき、それぞれ得られた値を平均して真球度を求めた。
【0039】
<屈折率>
セラミックス粒子及び基材の屈折率は、JIS K7142「プラスチックの屈折率測定方法」のうち、B法(顕微鏡を用いる液浸法(ベッケ線法))により求めた。但し、JIS K7142に記載の浸液に代えて、カーギル標準液((株)モリテックス製)を浸液として使用し、浸液の温度が15〜20℃の条件で測定した。顕微鏡は、偏光顕微鏡「オプチフォト」(ニコン社製)を使用した。
【0040】
(実施例1)
酸素をキャリアガスとして用い、LPG(プロパンガス)を対酸素比(容量比)1.1で燃焼させた火炎(約2000℃)中に、平均粒子径2.0μmの天然珪石粉砕物(純度99.9%)を投入し、平均粒子径2.2μmの非晶質シリカ粒子を得た。次いで、得られた非晶質シリカ粒子100重量部に対して、硝酸カルシウム四水和物4.2重量部(CaOとして1.00重量部)を添加し、エタノール中で30分間混合した。次いで、エタノールを除去した後、1100℃にて24時間熱処理し、フィラー(セラミックス粒子)を得た。
【0041】
(実施例2)
硝酸カルシウム四水和物の添加量を2.1重量部(CaOとして0.50重量部)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、フィラー(セラミックス粒子)を得た。
【0042】
(実施例3)
硝酸カルシウム四水和物の代わりに炭酸ナトリウムを1.7重量部(NaOとして1.00重量部)添加したこと以外は実施例1と同様の方法で、フィラー(セラミックス粒子)を得た。
【0043】
(実施例4)
酸素をキャリアガスとして用い、LPG(プロパンガス)を対酸素比(容量比)1.1で燃焼させた火炎(約2000℃)中に、平均粒子径5.2μmの天然珪石粉砕物(純度99.9%)を投入し、平均粒子径5.9μmの非晶質シリカ粒子を得た。次いで、得られた非晶質シリカ粒子100重量部に対して、炭酸カルシウム3.6重量部(CaOとして2.00重量部)を添加し、ボールミルを用いてエタノール中で30分間混合した。次いで、エタノールを除去した後、1400℃にて4時間熱処理し、フィラー(セラミックス粒子)を得た。
【0044】
(実施例5)
酸素をキャリアガスとして用い、LPG(プロパンガス)を対酸素比(容量比)1.1で燃焼させた火炎(約2000℃)中に、平均粒子径4.4μmの天然珪石粉砕物(純度99.9%)を投入し、平均粒子径4.9μmの非晶質シリカ粒子を得た。次いで、得られた非晶質シリカ粒子100重量部に対して、硝酸カルシウム四水和物0.8重量部(CaOとして0.20重量部)を添加し、ボールミルを用いて蒸留水中で30分間混合した。次いで、蒸留水を除去した後、1100℃にて24時間熱処理し、フィラー(セラミックス粒子)を得た。
【0045】
(実施例6)
酸素をキャリアガスとして用い、LPG(プロパンガス)を対酸素比(容量比)1.1で燃焼させた火炎(約2000℃)中に、平均粒子径8.5μmの天然珪石粉砕物(純度99.9%)を投入し、平均粒子径8.9μmの非晶質シリカ粒子を得た。次いで、得られた非晶質シリカ粒子100重量部に対して、硫酸マグネシウム1.8重量部(MgOとして0.60重量部)を添加し、ボールミルを用いて蒸留水中で30分間混合した。次いで、蒸留水を除去した後、1200℃にて24時間熱処理し、フィラー(セラミックス粒子)を得た。
【0046】
(実施例7)
硝酸カルシウム四水和物の代わりに炭酸カルシウム0.9重量部(CaOとして0.50重量部)を添加したこと以外は実施例1と同様の方法で、フィラー(セラミックス粒子)を得た。
【0047】
(実施例8)
酸素をキャリアガスとして用い、LPG(プロパンガス)を対酸素比(容量比)1.1で燃焼させた火炎(約2000℃)中に、平均粒子径0.4μmの天然珪石粉砕物(純度99.9%)を投入し、平均粒子径0.5μmの非晶質シリカ粒子を得た。得られた非晶質シリカ粒子を用いて、実施例2と同様に処理して、フィラー(セラミックス粒子)を得た。
【0048】
(実施例9)
酸素をキャリアガスとして用い、LPG(プロパンガス)を対酸素比(容量比)1.1で燃焼させた火炎(約2000℃)中に、平均粒子径35μmの天然珪石粉砕物(純度99.9%)を投入し、平均粒子径38μmの非晶質シリカ粒子を得た。得られた非晶質シリカ粒子を用いて、実施例2と同様に処理して、フィラー(セラミックス粒子)を得た。
【0049】
(比較例1)
結晶化促進剤を用いないで熱処理を行ったこと以外は実施例1と同様の方法で、フィラー(セラミックス粒子)を得た。
【0050】
(比較例2)
硝酸カルシウム四水和物の添加量を0.2重量部(CaOとして0.05重量部)としたこと以外は実施例1と同様の方法で、フィラー(セラミックス粒子)を得た。
【0051】
(比較例3)
硝酸カルシウム四水和物の添加量を21重量部(CaOとして5.0重量部)としたこと以外は実施例1と同様の方法で、フィラー(セラミックス粒子)を得た。
【0052】
(比較例4)
実施例1において、火炎溶融法にて得られた平均粒子径2.2μmの非晶質シリカ粒子を、熱処理を行なわずに、かつ、硝酸カルシウム四水和物を添加せずに、そのまま用いて各種評価を行った。
【0053】
得られた実施例及び比較例のフィラーについて、SiOの含有量、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物の含有量、相対バックグラウンド高さ、平均粒子径、真球度、屈折率を測定した。また、以下に示す方法にて光透過性を評価した。結果を表1に示す。
【0054】
<光透過性試験>
試料(フィラー)50重量部と、屈折率1.53のチョウジ油50重量部を、フーバーマーラー(ヨシミツ(株)製)を用いて、攪拌速度100回転/分、印加荷重2kg、攪拌時間3分の条件にて混合し、ガラス上に塗布して、厚み50μmの塗膜を形成した。次いで、HAZE MURAKAMI COLOR RESEARCH RAB社製HM150を用い、JIS K 7105の条件にて、塗膜の全透過率を測定し、以下の基準で判定した。
A:全透過率が95%以上
B:全透過率が90%以上、95%未満
C:全透過率が85%以上、90%未満
D:全透過率が85%未満
【0055】
【表1】

【0056】
表1に示すように、実施例1〜9の全透過率は90%以上であり光透過性が高かった。しかし、比較例1〜4の全透過率は85%未満であり実施例と比較すると光透過性は劣っていた。この結果から、本発明のフィラーによれば、透明部材の光透過性を向上できることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス粒子からなるフィラーであって、該セラミックス粒子が、以下の要件(I)〜(V)を満たすフィラー。
(I)SiOの含有量が97.0重量%以上であり、
(II)X線回折スペクトルにおける相対バックグラウンド高さが3.0〜10.0であり、
(III)平均粒子径が0.01〜50μmであり、
(IV)真球度が0.95以上であり、
(V)屈折率が1.48〜1.60である。
【請求項2】
前記セラミック粒子が、火炎溶融法によって得られる非晶質シリカ粒子に、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物から選ばれる1種以上の金属化合物を添加し、熱処理することによって得られる、請求項1記載のフィラー。
【請求項3】
前記セラミック粒子中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の酸化物の含有量が、0.10〜2.9重量%である、請求項1又は2記載のフィラー。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項記載のフィラーの製造方法であって、火炎溶融法によって得られる非晶質シリカ粒子に、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物から選ばれる1種以上の金属化合物を添加し、熱処理する、フィラーの製造方法。
【請求項5】
前記金属化合物の添加量が、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の酸化物換算で、前記非晶質シリカ粒子100重量部に対して0.10〜3重量部である請求項4記載のフィラーの製造方法。