説明

フィルタプレスにおける濾布下端の接続構造

【課題】濾布張り棒を使用することなく、濾布下端を簡単容易に袋とじして濾板表裏の濾過面上に濾布を緊張状態に保持する。
【解決手段】濾板1の表裏面を被覆する濾布2において、濾板下端1aより下方に配置される濾布下端の夫々に設けた突縁14と、一条のスリット17を側壁の長手方向全域に渡って穿設した筒体16とから成り、該筒体16内に各突縁14をスリット17を通して抜止め保持することにより濾布下端を袋綴じする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタープレスにおいて濾板の表裏面を被覆する濾布の各下端を接続する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルタープレスにおける各濾板には、その上端に横架した吊り下げ棒に濾布を二つ折りにして垂れ下げることにより、濾板表裏の濾過面の夫々を濾布にて被覆している。
そして、濾板表裏の濾布の各下端には筒状収納部が設けられ、該筒状収納部にこれより長い濾布張り棒を挿入し、筒状収納部両端より突出する濾布張り棒の濾板を介して対向する端部同士を紐又は針金などにより括り付けている。
この様に、濾布下端に取付けた濾板表裏の一対の濾布張り棒を突き合わせることにより、濾板各面上に濾布を緊張状態に保持し、主に濾過不良の発生を防止している(特許文献1の従来技術参照)。
【0003】
しかしながら、フィルタープレスには、複数枚の濾板が備えられており、濾板の夫々に上記の様に上方から垂れ下げられた各濾布下端の筒状収納部に濾布張り棒を挿入し、対となる濾布張り棒の各端部を紐等で括り付けねばならず、その着脱作業は甚だ面倒で、手間、時間を要していた。
かかる不具合を解消するため、特許文献1では、濾布下端に設けた筒状収容部における一方の開口部の上半部のみ以外を閉塞し、開口された上半部から濾布幅に略合致した長さの濾布張り棒を出し入れしてこれを下半部に収容し、濾布張り棒の筒状収容部からの脱落を防止すると共に、濾布張り棒端部の紐等による括り付けを不要とした濾布が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−108509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の濾布では、対となる濾布張り棒の括り付けを不要とするだけで、依然として1枚の濾板に対し2本の濾布張り棒を要すると共に、濾布下端に形成される筒状収納部は少なくとも濾布張り棒2本分のスペースを要し、更に筒状収容部への濾布張り棒の出し入れ作業は、両端開放の筒状収納部に比し極めて困難で手間隙を要している。
そこで、本発明では、濾布張り棒を使用することなく、濾布下端を簡単容易に袋とじして濾板表裏の濾過面上に濾布を緊張状態に保持できる様にした濾布下端の接続構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み、本発明のフィルタプレスにおける濾布下端の接続構造は、濾板の表裏面を被覆する濾布において、濾板下端より下方に配置される濾布下端の夫々に設けた突縁と、一条のスリットを側壁の長手方向全域に渡って穿設した筒体とから成り、該筒体内に各突縁をスリットを通して抜止め保持することにより濾布下端を袋綴じしたことを特徴とする。
又、濾布において濾板下端に相当する部位と突縁との間に排水穴を貫設したり、突縁は濾布の下端を折り返して縫製したことを特徴とする。
更に、筒体においてスリットを構成する側端の筒体内側に上記突縁が掛止可能な逆鉤を突設したり、筒体は複数本に分割形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
要するに本発明は、濾板の表裏面を被覆する濾布において、濾板下端より下方に配置される濾布下端の夫々に設けた突縁と、一条のスリットを側壁の長手方向全域に渡って穿設した筒体とから成り、該筒体内に各突縁をスリットを通して抜止め保持、即ち濾布下端に設けた各突縁を筒体内へこれの一端開口部からスライド挿入してスリットからの抜脱を阻止することにより、従来の様に濾布下端に筒状収容部を形成して該筒状収容部に濾布張り棒を挿入する必要もなく、簡単容易に濾布下端を袋綴じして濾板各面上に濾布を緊張状態に保持できる。
濾布下端の袋綴じの解除も、単に筒体を濾布に対しスライドさせて濾布から筒体を引き離すだけで成し得るので、従来に比し濾布下端の接続作業のみならず、その接続解除作業をも飛躍的に向上できる。
【0008】
濾布において濾板下端に相当する部位と突縁との間に排水穴を貫設したので、フィルタプレスの濾過中に濾板から流下する濾水が袋綴じされる濾布下端側に溜まることなく、水捌けを良好にし、濾布への負担を軽減できる。
【0009】
突縁は濾布の下端を折り返して縫製したので、突縁として濾布とは別材料品を用いる必要がなく、突縁形成の縫製自体も比較簡単に成し得るため、よりコストを低減できる。
【0010】
筒体においてスリットを構成する側端の筒体内側に上記突縁が掛止可能な逆鉤を突設したので、筒体内に配置した突縁をその内部により一層強固に保持できる。
【0011】
筒体は複数本に分割形成したので、濾布幅と同一長の長尺な一本の筒体を濾布下端にスライド装着するよりも、短尺な筒体の方が簡単に濾布下端にスライド装着及び離脱できるから、短尺な筒体が複数本であっても結果的に短時間で効率的にその取り付け及び取り外し作業を成し得る等その実用的効果甚だ大である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】濾布を被覆した濾板の正面図である。
【図2】図1の要部拡大縦断面図である。
【図3】接続前の濾布下端を示す要部拡大斜視図である。
【図4】濾布下端の接続状態を示す要部拡大斜視図である。
【図5】他の実施例を示す要部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の実施の一形態例を図面に基づいて説明する。
図に示す濾板1は、本発明に係る濾布2(図1では説明の便宜上、二点鎖線で示す。)を使用するものであって、フィルタープレスの長手方向で濾枠(図示せず)を介在する様に多数並列配置されるものにして、その表裏の濾過面(以下、単に表裏面と称する。)を面一の平面状と成した略正方形状に形成され、左右側面上方にはフィルタープレスの左右に平行配置したレール3上に走行可能に載置される支持アーム4を外方突設している。
【0014】
濾板1の中央には原液通過孔5を貫設すると共に、下方適所に複数の濾過排水路6を設け、表裏面の夫々には原液通過孔5に対応した透孔を中央に有する円形状の通水網板7を固着している。
【0015】
又、濾板1の上方には、濾布2を吊り下げる濾布吊り装置8を装備している。
濾布吊り装置8は、濾板1の上部左右に濾布吊りアーム9を外側方へ突設し、該濾布吊りアーム9の突端上部にガイド棒10を立設し、該ガイド棒10にコイル状のバネ材11を外嵌すると共に、ガイド棒10の上端を横棒12の端部に摺動自在に挿通し、これによりガイド棒10間に横棒12をバネ材11で以て弾圧的に上下動自在に架設支持している。
【0016】
そして、濾布吊り装置8の横棒12に濾布2を2つ折りに垂れ下げることにより、濾布2が濾板1の表裏面を被覆する様に成している。
尚、ガイド棒10間に架設された状態の横棒12において、ガイド棒10の挿通部位より内側には、濾布2の折り返し部に設けた鳩目(図示せず)に挿通して濾布2を位置決めするピン12aを上方突設している。
【0017】
濾布2は、濾板1とほぼ同幅に形成され、2つ折り状態で濾板1の上方から下方へ至る長さを有し、原液通過孔5との対応部位にはこれと略同径な透孔を設けており、濾布吊り装置8にて吊り下げられることにより、通水網板7の上から濾板1を被覆し、該濾板1の原液通過孔5に挿通したフランジ管13のフランジと原液通過孔5周縁部との間に濾布2の透孔周縁部を挟持している。
【0018】
濾布2において、濾板下端1aより下方に配置される濾布下端の夫々には外向きの突縁14を設けている。
突縁14は濾布2の下端を外側へ折り返して縫製している。
濾布2において濾板下端1aに相当する部位と突縁14との間には、幅方向で所定間隔置きに所定形状(図示例では円形)から成る複数の排水穴15を貫設している。
【0019】
そして、濾布吊り装置8の横棒12に2つ折りに垂れ下げられた濾布2は、その下端(突縁)14が筒体16にて接続される。
【0020】
筒体16は、プラスチック製、好ましくはポリプロピレン製にして、濾布2幅と同一長で両端が開口された断面円形状のパイプから成り、その側壁の長手方向全域(筒体16の一端から他端)に渡って一条のスリット17を穿設し、断面C型に形成される。
スリット17は、2つ折りに垂れ下げられた濾布2の各下端(濾布2の2枚分の厚みに相当)が挿通可能にして、且つ突縁14が掛止して挿通できない幅に設定されている。
【0021】
そして、濾板下端1aの下方に垂れ下げられた濾布下端の各突縁14を筒体16内にスリット17を通して抜止め保持することにより濾布下端を袋綴じする。
【0022】
即ち、濾布下端に設けた各突縁14の内側を重ね合わせ、その一端14a同士を筒体16の一端開口部16aに、突縁14の付け根の一端14bをスリット17の一端17aに対応させて、濾布2に対し筒体16をこれの一端16aが濾布2の一端2aから他端2bに一致するまでスライドさせ、各突縁14を筒体16内へ挿入してスリット17からの抜脱を阻止することにより、濾布下端を袋綴じして濾板1の表裏面上の夫々に濾布2を緊張状態に保持する(図1、3、4参照)。
【0023】
又、濾布下端の袋綴じの解除(筒体6の取り外し)も、単に筒体16を濾布2に対しスライドさせて濾布2から筒体16を引き離すだけで成し得る。
【0024】
尚、濾布2において濾板下端1aに相当する部位と突縁14との間に排水穴15を貫設したのは、フィルタプレスの濾過中に濾板1の濾過排水路6から流下する濾水が、袋綴じされる濾布下端側に溜まることなく、開口している左右端2a、2bからだけでなく、各排水穴15からも排水される様にして、水捌けを良好にし、濾布2の負担を軽減するためである。
【0025】
尚、筒体16は、上記の様に濾布2の幅と同一長の1本から成るのではなく、濾布2の幅より短く複数本に分割形成しても良く、この様に短くすることで濾布2に対する各筒体16のスライド挿脱作業が迅速にしてよりに簡単に行える。
【0026】
又、図5には、筒体16の別例を示す。この筒体16にあっては、スリット17を構成する側端17bの筒体16内側に上記突縁14が掛止可能な逆鉤(かえし)18を突設し、筒体16内に配置した突縁14をその内部により一層強固に保持する。
【0027】
本実施例にあっては、複式のフィルタープレスに用いる濾板1に2つ折りに垂れ下げられた濾布2下端の接続構造を示したが、本発明にあっては、濾枠を用いない単式のフィルタープレスの濾板にも当然ながら適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 濾板
1a 濾板下端
2 濾布
14 突縁
15 排水穴
16 筒体
17 スリット
17b 側端
18 逆鉤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾板の表裏面を被覆する濾布において、濾板下端より下方に配置される濾布下端の夫々に設けた突縁と、一条のスリットを側壁の長手方向全域に渡って穿設した筒体とから成り、該筒体内に各突縁をスリットを通して抜止め保持することにより濾布下端を袋綴じしたことを特徴とするフィルタプレスにおける濾布下端の接続構造。
【請求項2】
濾布において濾板下端に相当する部位と突縁との間に排水穴を貫設したことを特徴とする請求項1記載のフィルタプレスにおける濾布下端の接続構造。
【請求項3】
突縁は濾布の下端を折り返して縫製したことを特徴とする請求項1又は2記載のフィルタプレスにおける濾布下端の接続構造。
【請求項4】
筒体においてスリットを構成する側端の筒体内側に上記突縁が掛止可能な逆鉤を突設したことを特徴とする請求項1、2又は3記載のフィルタプレスにおける濾布下端の接続構造。
【請求項5】
筒体は複数本に分割形成したことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のフィルタプレスにおける濾布下端の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−52323(P2013−52323A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190442(P2011−190442)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000139805)株式会社伊藤製作所 (11)
【Fターム(参考)】