説明

フィルタープレス用ろ布およびこれを用いた産業廃棄物の処理方法

【課題】フィルタープレスに用いる新規なろ布構造に係るもので、当該ろ布をフィルタープレスに適用することにより、従来に比べて、ろ布の寿命を大幅に改善することができるろ布構造およびこれを用いた産業廃棄物の処理方法を提供する。
【解決手段】フィルタープレスに用いるろ布構造であって、特に、ろ布を構成する給液部材とろ布を係合する当布を、横長に構成したことを特徴とするものである。その結果、従来の方法に比べて、ろ布の寿命を大幅に向上させることができるという効果を奏するものである。また、ろ布を構成する給液部材が、両端に鍔を配設した円筒状の部材で構成されており、更に、前記鍔が外部に拡開したように構成されていることを特徴とするものである。その結果、ろ布、給液部材および当布の密着性を高めることができ、ろ過効率を高めることができるという効果を奏するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタープレスのろ布およびこれを用いた産業廃棄物の処理方法に関し、特に、フィルタープレスの寿命延長に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルタープレスは、水分の多い廃棄物スラリーの脱水装置として広く使用されている。フィルタープレスは、ろ布と呼ばれているろ過膜とこれらを圧縮する圧搾板および圧搾板を稼動させることができる油圧設備を具備している。
【0003】
図5は、従来のフィルタープレス用のろ布構造(特許文献1;特開2004−202317号)を表している。フィルタープレス用のろ布は、鉛直方向に複数配置されており、ろ布の中心部に設けた通孔10と呼ばれる開口部より、廃棄物スラリーが各ろ布に供給されるように構成されている。
【0004】
各ろ布4の中心部に設けた開口部には、同開口部の形状を保持するための給液板5と呼ばれる部品がろ布に装着されており、更に、給液板5とろ布4とは、更に当布11と呼ばれるろ布とは別の布を用いて、ろ布に装着されている。
【0005】
給液板5と当布11およびろ布4は、糸を用いてこれらの部品が縫合する形で装着されている。
前記したように、ろ布とろ布の間に補給された廃棄物スラリーは、図示しない圧搾板を介して圧縮力を受けたろ布の間に補給されたスラリーを脱水することができる。その結果、
ろ布には大きな応力が印加されるために、当布に対して部分的な引っ張りを受けて、当布やろ布の裂け目を生起する場合があり改善が求められていた。
【0006】
これらの点については、例えば、ろ布とろ布の間に介装させる圧搾板を上下方向に可動可能なように配設することにより、ろ布の破れや裂け目の発生を回避する技術が開示されている(特許文献2;特開2005−152897号)。しかしながら、これらの方法においても、当布やろ布の裂け目の発生を抑制することができない場合があり、改善が求められている。
【0007】
また、別の公報には、給液板をろ布に装着する当布との縫合方法を工夫することにより、ろ布と当布との縫合部との伸縮性を付与させることにより、ろ布の裂け目や破れを回避する技術も知られている(特許文献3;特開2000−140516号)。 しかしながら、これらの方法でもってしても、ろ布の破れや裂け目の発生を完全に回避することができない場合があり、改善が求められている。
【0008】
このように、廃棄物処理用のフィルタープレスに用いるろ布の寿命を効果的に延命することができるようなろ布構造が求められている。
【0009】
【特許文献1】特開2004−202317号
【特許文献2】特開2005−152897号
【特許文献3】特開2000−140516号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、フィルタープレスを用いた廃棄物処理に用いるろ布に対して、従来のろ布
に比べて、寿命の長いろ布構造およびこれを用いた効率的な産業廃棄物処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる実情に鑑み前記課題について、フィルタープレスに用いるろ布と給液板および当布との縫合方法や大きさ等を変えて、ろ布の穴開きや裂け目の発生について、種々試験を行い検討したところ、意外にも、前記ろ布と給液板との装着に使用する当布の形状と大きさを規定することにより、ろ布の破れや裂け目の発生を効果的に抑制することができると点を見出し、本願発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本願発明に係る廃棄物処理用のフィルタープレス用ろ布は、前記ろ布が、ろ過布と給液部材およびろ過布を係合する当布から構成されており、前記当布が横長に構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
本願発明に係る廃棄物処理用のフィルタープレス用ろ布は、上記給液部材が、鍔付の円筒状部品であって、前記鍔と円筒状部品との接合角が、鈍角に構成されていることを好ましい態様とするものである。
【0014】
本願発明に係る廃棄物処理用のフィルタープレス用ろ布は、上述ろ布の形状が、楕円もしくは長方形であることを好ましい態様とするものである。
【0015】
本願発明に係る廃棄物処理用のフィルタープレス用ろ布は、上述のろ布の外周部が、外側に折り返されていることを好ましい態様とするものである。
【0016】
本願発明に係る廃棄物処理用のフィルタープレス用ろ布は、上述の当布の面積が、ろ布の中心部に形成された孔の面積に対して5倍以上とすることを好ましい態様とするものである。
【0017】
本願発明に係る廃棄物処理用のフィルタープレス用ろ布は、当布が布で構成され、ろ布が樹脂で構成されていることを好ましい態様とするものである。
【0018】
本願発明に係る廃棄物処理方法は、上述のフィルタープレス用ろ布を、フィルタープレスに用いたことを特徴とするものである。
【0019】
本願発明に係る廃棄物処理方法は、上述の給液部材の当布を縫合する際に用いる糸がウエーブ状に加工されていることを好ましい態様とするものである。
【0020】
以上述べた特徴を有するろ布をフィルタープレスに用いることにより、ろ布の寿命を、従来のろ布に比べて、大幅に改善できるという効果を奏するものである。
【発明の効果】
【0021】
以上述べた本願発明に従えば、フィルタープレスの寿命を大幅に改善することができ、その結果、フィルタープレスの整備費用を削減することができ、最終的には、四塩化チタンの製造コスト低減に寄与するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の最良の実施形態について図面を参照しながら以下に説明する。
本願発明に係るフィルタープレス用ろ布は、産業廃棄物処理用のフィルタープレス用のろ布であって、上述のろ布が、ろ過布、給液部材、およびろ過布を係合する当布から構成されていることを特徴とするものである。
【0023】
図1は、本願発明に係るろ布Mの好ましい態様を表している。 上述したように、本願発明に係るろ布Mは、ろ過布1、当布2、給液部材3から構成されており、給液部材3は、ろ過布1の中心部に設けた開口部に装着した給液部材3とろ過布1を当布2により、縫合する形で両者を係合することが好ましい。
【0024】
前記のろ過布1の材質は、布のみならず、合成樹脂製の糸で織った布を用いることができる。本願発明においては、ろ過布1の材質は、合成樹脂製の糸で織った布を用いることが好ましい。前記のような合成樹脂製の布を使用することにより、汚泥を含むスラリーをろ過する際に印加される圧搾力に十分耐えることができ、その結果、ろ過布1の寿命を効果的に高めることができるという効果を奏すものである。
【0025】
本願発明では、ろ過布1の中心部には、給液部材3を装着することが好ましく、特に、上記給液部材3は、図2に示すような円筒状の部材であって、その両端部に、円板状の鍔3Aを形成させておくことが好ましい。
【0026】
また、上述の鍔3Aは、給液部材3の胴部3Bに対して、鈍角になるように構成することが好ましい。具体的には、図3に示した鍔3Aと胴部3Bのなす角を90°以上に構成することが好ましい。
図3のように鍔3Aを胴部3Bに対して鈍角になるように構成することにより、鍔3Aの両者から圧搾力を受けた際にも、鍔3Aは、ろ過布1に密着するような力が作用し、その結果、給液部材3とろ過布1との間に形成される隙間の形成を効果的に回避することができ、汚泥を含むスラリーの漏れを効果的に抑制することができるという効果を奏するものである。
【0027】
本願発明に係る上記給液部材3は、合成樹脂で構成することが好ましく、具体的には、PP(ポリプロピレン)で構成することが好ましい。PPは、耐酸性があり、しかも高い強度を有しているためチタン鉱石の塩素化工程で生成するような酸性の汚泥に対しても、腐食性を示し、長期に亘り使用することができるという効果を奏するものである。
【0028】
本願発明では、また、前記給液部材3とろ過布1とは、縫合する形で両者を係合することが好ましい。両者の縫合の際には、合成樹脂製の糸を使用することが好ましい。前記した合成樹脂製の糸を用いることにより、酸性の廃液や汚水と接触した場合にも、腐食や溶解の惧れがなく、長い期間に亘って、給液部材3とろ過布1との縫合状態を安定的に維持
することができるという効果を奏するものである。
【0029】
本願発明においては、また、給液部材3とろ過布1との縫合部位を覆うように、当布2とろ過布1を縫合しておくことが好ましい。前記のような当布2により縫合部位を補強することにより、給液部材3とろ過布1との縫合状態を更に、長期間、安定に維持することができるという効果を奏するものである。
【0030】
上述の当布3は、合成樹脂製の糸ではなく木綿のような布で構成することが好ましい。そのような当布3を用いることにより、ろ布Mの両側に印加された応力によるろ過布1の変形を効果的に対応することができるという効果を奏するものである。
【0031】
本願発明では、上述の当布2は横長に構成することが好ましい。 前記のように横長の当布2を用いることにより、従来使用してきた正方形状の当布に比べて、その寿命が格段に改善されるという効果を奏するものである。
【0032】
当布2の形状は横長であれば、特に形状に制限はなく、例えば、長方形であっても楕円形であっても良いが、本願発明においては、楕円形で構成することがより好ましいとされる。
【0033】
また、本願発明に係る当布2は、ろ過布1の中心部に設けた開口部1Aの面積に対して5倍以上の大きさの布を使用することが好ましく、更には、7倍以上、更には、10倍以上の大きさの布を使用することがより好ましいとされる。
【0034】
前記した大きさの当布2を使用することにより、ろ過布1に対して両側より圧縮力が印加された場合にも、当布2とろ過布1との縫合部位に、裂け目や破れの発生はなく、長期に亘りろ布の寿命を維持することができるという効果を奏するものである。
【0035】
本願発明に係る当布2とろ過布1との縫合に使用する糸の表面にはウエーブを形成させておくことが好ましい。前記のようなウエーブ処理を事前に行なっておくことにより、当布2と当布2との縫合部のほつれた緩みを効果的に回避することができるという効果を奏するものである。
【0036】
ここでいうウエーブ処理とは、上記縫糸の表面に波状の凹凸を設けることを特徴とするものである。前記ウエーブ処理を行うことにより、縫合部の緩みやほつれを効果的に回避することができるという効果を奏するものである。
【0037】
次に、本願発明に係るろ布Mを装着したフィルタープレスを用いた廃棄物スラリーの処理方法について、以下に述べる。
【0038】
図3は、本願発明に係るろ過布1を圧搾板5の間に組み込んだ状況を表している。圧搾板5に介装されたろ過布1は、圧搾板5の間に挟みこまれ、ろ過布1の中心部に設けた開口部より供給されたスラリー中の水分がろ過布1を通して分離除去することができる。
【0039】
圧搾が終了したろ過布1と別のろ過布1との間には、スラリー中に懸濁していた固形分で構成されたプレスケーキが形成される。一方、スラリーより脱水された水分は、ろ過布1と圧搾板5との間より外部に滲みだして系外に排出される。
【0040】
本願発明に係るろ過布1は、前記したように当布2の形状に工夫が盛り込まれているのみならず、当布2とろ過布1との縫合に使用される糸にも工夫がなされており、その結果、前記したように高い圧力の印加されるフィルタープレス装置において、スラリー中の水分を効率よく脱水させることができるという効果を奏するものである。
【0041】
本願発明においては、図4に示すようにろ過布1を圧搾板5に装着した際には、ろ過布1の両端部は、外側に折り曲げて使用することが好ましい。前記した折り曲げ構造をろ過布1の両端に設けることにより、ろ過布1同士が圧搾板5により押圧された場合にも、折り曲げ部を形成させておくことにより、ろ過布1の周辺部の破れを効果的に回避することができるという効果を奏するものである。
【0042】
以上、本願発明に係るろ布Mをフィルタープレスに適用することにより、長期に亘り、フィルタープレス作業を安定的に実施することができるという効果を奏するものである。
【実施例】
【0043】
[実施例1]
図1に示した樹脂製のろ布Mを使用し、長短比が5の楕円形の当布2を使用して、四塩化チタンの製造工程で発生した固形物を含むスラリーの脱水乾燥処理を計50バッチ行なったが、特ろ布Mの破れや裂け目の発生は確認されなかった。そこで、更に、スラリーの脱水乾燥処理を50バッチ実施したが、なおも、破れ裂け目の発生は確認されなかった。
その結果、本願発明に係るろ布は、表1に示すように160バッチまで使用することができた。
【表1】

[実施例2]
【0044】
図1に示したような樹脂製のろ布Mを使用し、ろ布Mの中心部に設けた開口部に対して長短比5の当布2の面積比を1、4、5、10と変更した際のろ布Mの寿命を測定した。
その結果、前記面積比を増加させるに伴い、当布2寿命も改善されることが判明した。また、当布2の長短比が5以上において、ろ布寿命の顕著な改善効果が確認された。
【表2】

[比較例1]
【0045】
実施例1において、長短比が1の当布2を用いた以外は、同じ条件下でろ布Mの寿命を測定した。 その結果、ろ布Mの寿命は、表1に記載のように実施例1に比べて、100/160に留まった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本願発明は、金属チタンの製造工程で発生した汚泥処理に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本願発明に係るろ布の全体図
【図2】本願発明に係る給液部材の全体図
【図3】本願発明に係る給液部材の断面図
【図4】本願発明に係るろ布と圧搾板との関係を表す図
【図5】公知文献に開示されているろ布の全体図
【符号の説明】
【0048】
1…ろ過布
1A…貫通孔
1B…縫合部位
2…当布
3…給液部材
3A…鍔
3B…胴部
3C…貫通孔
4…圧搾板
M…ろ布
θ…給液部材を構成する鍔の開度(°)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物処理用のフィルタープレス用ろ布であって、前記ろ布が、ろ過布と給液部材およびろ過布を係合する当布から構成されており、前記当布が横長に構成されていることを特徴とするフィルタープレス用ろ布。
【請求項2】
請求項1記載の給液部材が、鍔付の円筒状部品であって、前記鍔と円筒状部品との接合 角が、鈍角に構成されていることを特徴とするフィルタープレス用ろ布。
【請求項3】
請求項1記載の当布の形状が、楕円もしくは長方形であることを特徴とする請求項1記 載のフィルタープレス用ろ布。
【請求項4】
請求項1記載のろ布の外周部が、外側に折り返されていることを特徴とするフィルタープレス用ろ布。
【請求項5】
請求項1記載の当布の面積が、ろ布の中心部に形成された孔の面積に対して5倍以上 であることを特徴とする請求項1記載のフィルタープレス用ろ布。
【請求項6】
請求項1記載の当布が布で構成され、ろ布が樹脂で構成されていることを特徴とする フィルタープレス用ろ布。
【請求項7】
請求項1〜6記載のフィルタープレス用ろ布をフィルタープレスに用いたことを特徴 とする廃棄物処理方法。
【請求項8】
請求項1に記載の給液部材の当布を縫合する際に用いる糸がウエーブ状に加工されていることを特徴とする廃棄物処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−11278(P2012−11278A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147905(P2010−147905)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(390007227)東邦チタニウム株式会社 (191)
【Fターム(参考)】