説明

フィルタープレス脱水装置とその制御方法

【課題】スラリーを加圧しながら脱水すると、瀘布に接する部分に密度が高い脱水ケーキ34の壁ができてしまう。この壁は水を通しにくいため、その後の脱水に時間がかかる。
【解決手段】液送ポンプ18により、脱水瀘盤の軸孔を通じて、2枚の瀘布間にスラリーを速やかに注入する。この間、真空ポンプ26により水を吸引しているので、2枚の瀘布間に密度の低い多孔性の脱水ケーキ34ができる。その後、加圧ポンプ20で加圧しながらスラリーを供給すると、次第に密度が高く十分に脱水された脱水ケーキ34が得られる。多孔性の脱水ケーキが先に出来るためその後の加圧工程で水が抜けやすく、当初から加圧して脱水するよりも、効率良く含水率の低い脱水ケーキ34が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する脱水瀘盤に挟まれた2枚の瀘布間に効率良くスラリーを圧入して、スラリーを脱水して脱水ケーキを得るフィルタープレス脱水装置とその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脱水瀘盤の瀘布間にスラリーを送入し、各脱水瀘盤を油圧シリンダーで圧縮し、スラリーに含まれた水を真空ポンプで吸引して脱水する構造のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−62209号公報
【特許文献2】特開2001−70711号公報
【特許文献3】特開2001−79311号公報
【特許文献4】特開2001−79312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
上記の特許文献の装置は、多量の水分を含むスラリーから水分を分離してコンパクトな脱水ケーキを得ることができる。このスラリーが食品製造過程で排出された残渣であれば、脱水ケーキは家畜の飼料になる。あるいは、畑の肥料として利用できる。体積も重量も大幅に縮減するので運搬等のコストが低減できる。
しかしながら、スラリーの成分によっては、水分を分離するための瀘布が目詰まりを起こして、脱水に時間がかかったり、十分に脱水された断水ケーキが得られなくなるという問題があった。
上記の課題を解決するために、本発明は、より脱水性能を高めて生産速度を上げ、さらに、これまでよりも多種のスラリーについて脱水を可能にしたフィルタープレス脱水装置とその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
〈構成1〉
隣接する板状の脱水瀘盤に挟まれた2枚の瀘布間に、前記脱水瀘盤を貫通する軸孔を通じて、液送ポンプによりスラリーを送り込むとともに、前記脱水瀘盤に接続された真空ポンプにより、前記2枚の瀘布を介して前記脱水瀘盤側に前記スラリーに含まれた水を吸引し、前記液送ポンプにより送り込まれた前記スラリーが前記2枚の瀘布間を満たして、前記液送ポンプの液送負荷が上昇した後に、前記液送ポンプよりも液送圧力の高い加圧ポンプを駆動して、前記2枚の瀘布間にさらに前記スラリーを設定された時間だけ加圧しながら供給するとともに、前記真空ポンプにより前記2枚の瀘布を介して前記脱水瀘盤側に前記スラリーに含まれた水を吸引し続けて、前記2枚の瀘布間に脱水されたスラリーによる脱水ケーキを得た後に、前記2枚の瀘布間から前記脱水ケーキを取り出すことを特徴とするフィルタープレス脱水装置の制御方法。
【0006】
〈構成2〉
構成1に記載のフィルタープレス脱水装置とその制御方法において、前記2枚の瀘布間から前記脱水ケーキを取り出す前に、前記脱水瀘盤の軸孔に滞留した前記スラリーを、前記脱水ケーキと分離して排出することを特徴とするフィルタープレス脱水装置の制御方法。
【0007】
〈構成3〉
構成2に記載のフィルタープレス脱水装置とその制御方法において、前記脱水瀘盤の軸孔に滞留した前記スラリーを、前記加圧ポンプを駆動して、当該加圧ポンプ側に吸引して排出することを特徴とするフィルタープレス脱水装置とその制御方法。
【0008】
〈構成4〉
平板状であって、両方の面には周縁部を残して脱水ケーキを保持するための凹陥部が設けられ、前記両方の面を垂直に貫通する軸孔を備え、前記凹陥部の底面に溝状の排水路が形成され、前記排水路に一端を開口させて前記周縁部に他端を開口させた接続管とを備えた複数枚の脱水瀘盤と、隣接する前記脱水瀘盤に挟まれた少なくとも2枚の瀘布と、前記瀘布を間に挟んだ前記複数の脱水瀘盤を、前記軸孔を連通させた状態で相互に密着させるようにして保持するプレス装置と、前記脱水瀘盤の軸孔を通じて、前記2枚の瀘布間にスラリーを送り込む液送ポンプと、同様に前記2枚の瀘布間にスラリーを送り込むものであって、前記液送ポンプよりも液送圧力の高い加圧ポンプと、前記脱水瀘盤の接続管に接続されて、前記2枚の瀘布を介して前記排水路側に前記スラリーに含まれた水を吸引する真空ポンプと、装置全体の動作を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記プレス装置で、前記瀘布を間に挟んだ前記複数の脱水瀘盤を相互に密着させるように加圧して保持させた状態で、前記液送ポンプを駆動して、この液送ポンプにより送り込まれた前記スラリーが前記2枚の瀘布間を満たして、前記液送ポンプの液送負荷が上昇した後に、前記加圧ポンプを駆動して、前記2枚の瀘布間にさらに前記スラリーを設定された時間だけ加圧しながら供給するとともに、前記液送ポンプを駆動すると同時に、前記真空ポンプにより前記2枚の瀘布を介して前記脱水瀘盤側に前記スラリーに含まれた水の吸引を開始して、前記設定された時間の経過後、前記真空ポンプを停止し、前記加圧ポンプを停止して、前記2枚の瀘布間から前記脱水ケーキを取り出すように制御することを特徴とするフィルタープレス脱水装置。
【0009】
〈構成5〉
構成4に記載のフィルタープレス脱水装置とその制御方法において、前記制御装置は、前記加圧ポンプを駆動して、前記脱水瀘盤の軸孔に負圧を与えて、前記脱水瀘盤の軸孔に滞留した前記スラリーを排出するように制御することを特徴とするフィルタープレス脱水装置。
【発明の効果】
【0010】
〈構成1の効果〉
液送ポンプにより、脱水瀘盤の軸孔を通じて、2枚の瀘布間にスラリーを速やかに注入する。この間、真空ポンプにより水を吸引しているので、2枚の瀘布間に密度の低い多孔性の脱水ケーキができる。その後、加圧ポンプで加圧しながらスラリーを供給すると、次第に密度が高く十分に脱水された脱水ケーキが得られる。多孔性の脱水ケーキが先に出来るためその後の加圧工程で水が抜けやすく、当初から加圧して脱水するよりも、効率良く含水率の低い脱水ケーキが得られる。
当初から加圧しながら脱水すると、瀘布に接する部分に密度が高い脱水ケーキの壁ができてしまう。この壁は水を通しにくいため、その後スラリーを加圧して供給しても、目的の厚さの脱水ケーキを得るまでに時間がかかる。
〈構成2の効果〉
脱水瀘盤の軸孔に残ったスラリーは十分に脱水されておらず、脱水ケーキを取り出すときに、脱水ケーキと共に排出されると、脱水ケーキの含水率を高めてしまう。そこで、脱水ケーキを取り出す前に排出する。
〈構成3の効果〉
加圧ポンプを駆動して、加圧ポンプ側に吸引すれば、比較的簡単に脱水瀘盤の軸孔に残ったスラリーを排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1のフィルタープレス脱水装置の概略構成図である。
【図2】脱水機のユニットの構造を示す分解斜視図である。
【図3】2組のユニットを密着させた状態を示す縦断面図である。
【図4】脱水瀘盤の凹陥部の底部に形成された島状突起の拡大斜視図である。
【図5】多数のユニットとプレス装置との関係を示す斜視図である。
【図6】ユニットに組み込まれる瀘布の具体的例を示す説明図である。
【図7】制御装置の制御動作例説明図である。
【図8】脱水ケーキ離脱直前の制御装置の制御動作例説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は実施例1のフィルタープレス脱水装置の概略構成図である。
このフィルタープレス脱水装置は、プラント12から処理対象のスラリーを受け入れる凝集槽14と、脱水処理の準備ができたスラリーを保持するスラリー槽16とを備える。凝集槽14は、スラリーに凝集剤を混入して水分を分離しやすいように処理する槽である。スラリー槽16に蓄積したスラリーを凝集槽14に戻して凝集剤を混入し、再びスラリー槽16に戻すことができる。脱水処理するべきスラリーが瀘布の目よりも小さい微粒子を多く含む場合に、微粒子を凝集させることができる。
【0014】
スラリーは、スラリー槽16から液送ポンプ18または加圧ポンプ20により、脱水機22に送り込まれる。いずれもスラリーを脱水機22に送り込むためのものである。しかしながら、加圧ポンプ20は液送ポンプ18よりも液送圧力が高い。液送ポンプ18は空の状態の脱水機22に可能な限り高速でスラリーを供給する機能を持つ。加圧ポンプ20は、脱水の進んだ脱水ケーキ34にさらに例えば、毎平方センチメートルあたり20〜50キログラムといった高い圧力を加えてスラリーを供給し、脱水ケーキ34を圧縮して密度の高い脱水ケーキ34を得る機能を持つ。
【0015】
脱水機22の構成は図4で詳細を説明するような、多数のユニット58を保持しており、プレス装置24で挟んで加圧した状態でスラリーを供給する。真空ポンプ26は脱水機22の各ユニット58から強制的に水分を抜き取るためのものである。抜き取られた水分は排水タンク30に蓄積され、その後、排水設備32で廃棄処理されたり、再利用に供される。コンプレッサ28は、上記のユニット58から脱水ケーキ34を一気に剥離させるためのものである。なお、これらの装置を一定の手順で動作させるために制御装置33が設けられている。その動作は後で説明する。
【0016】
図2は脱水機のユニットの構造を示す分解斜視図である。
一つのユニット58は、図2の左側から順に、瀘布36とパンチングメタル40と脱水瀘盤42とパンチングメタル40と瀘布36とを重ね合わせたものである。両側の瀘布36は連結筒38で連結されている。脱水瀘盤42は、鉄等の金属製であって、この実施例では円板状をしている。平板状であれば、多角形のものであっても構わない。脱水瀘盤42の両方の面には周縁部を残して凹陥部43が設けられており、皿状の面を形成している。
【0017】
この凹陥部43の底面をパンチングメタル40が覆うように配置される。パンチングメタル40に瀘布36が密着する。パンチングメタル40は瀘布36を平坦な状態で支持するためのもので、多数の透孔を有する金属板等により構成される。透孔は水分を瀘布36から排水路44の方向に通過させる。瀘布36が皿状の面に密着すると、後で図3で説明するような脱水ケーキを保持するための空間が形成される。
【0018】
脱水瀘盤42の両方の面を垂直に貫通するように、瀘布36とパンチングメタル40と脱水瀘盤42に、軸孔48が設けられている。脱水瀘盤42が円板状のものなら軸孔48は中心にあることが好ましい。しかし、中心以外の部分にあっても複数あっても構わない。脱水瀘盤42の凹陥部43の底面には、多数の島状突起46が設けられている。その結果、これらの島状突起46の間に溝状の排水路44が形成されている。
【0019】
また、この排水路44に一端を開口させて、脱水瀘盤42の周縁部に他端を開口させた接続管50が設けられている。島状突起46と接続管50との関係は、後で、図3と図4を用いて説明する。接続管50には、真空ポンプ26やコンプレッサ28が接続される。図のような部品を組み立てて複数のユニットを重ね合わせるように配置する。
【0020】
図3は2組のユニットを密着させた状態を示す縦断面図である。
隣接する脱水瀘盤42に、それぞれ2枚の瀘布36が挟まれる。瀘布36を間に挟んだ複数の脱水瀘盤42は、軸孔48を連通させた状態で相互に密着させるようにして保持される。脱水瀘盤42の凹陥部43にパンチングメタル40を落とし込むと、脱水瀘盤42の周辺縁部とパンチングメタル40の表面によって、浅い皿状の窪みができる。
【0021】
2枚の脱水瀘盤42によって円板状の空間ができるから、ここに瀘布36を密着させ、軸孔48を通じて瀘布36の間にスラリーを圧入する。スラリーに含まれた水分は、瀘布36の目、パンチングメタル40の透孔を通過し、島状突起46の間の排水路44に達する。
【0022】
脱水瀘盤42の周辺縁部には、接続管50が突出している。接続管50の一端は排水路44に開口している。従って、接続管50に真空ポンプ26を接続すると、排水路44から水分が吸引される。スラリーは円板状の空間に連続的に供給される。なお、瀘布36の縁は脱水瀘盤42の周辺縁部にクリップバンド52を用いて固定される。また、隣接する脱水瀘盤42が当接する周縁部には、シールゴムリング54が設けられており、脱水ケーキが形成される円板状の空間を密閉している。
【0023】
図4は脱水瀘盤の凹陥部の底部に形成された島状突起の拡大斜視図である。
図のように、脱水瀘盤42の凹陥部43の底部には、多数の島状突起46が形成されている。これらによって、パンチングメタル40が支持され、島状突起46とパンチングメタル40により囲まれた排水路44が確保される。排水路44の一部には、接続管50(図)の一端の開口51が設けられている。この開口51から水分を吸引してスラリーの脱水ができる。
【0024】
また、脱水ケーキ34が出来た後に、図3に示した各脱水瀘盤42を相互に切り離しても、脱水ケーキ34は瀘布36に貼り付いて簡単には離脱しない。そこで、開口51からコンプレッサ28を使用して加圧空気を吹き込む。これにより、瀘布36が膨らんで脱水ケーキ34が空気の圧力で瀘布36から離脱して落下する。
【0025】
図5は、多数のユニットとプレス装置との関係を示す斜視図である。
図2に示した各ユニット58の組立が終わると、スラリーの脱水準備が完了する。脱水瀘盤42の両袖部分にアーム62が設けられている。このアーム62をガイドレール64に乗せているから、各ユニット58はその軸孔48の軸方向に自在に移動する。プレス装置24は、重なり合った複数のユニット58に高い圧力をかけてこれらを密着させる。圧入されるスラリーが脱水瀘盤42の周縁部から漏出しないようにするためである。
【0026】
脱水処理が終了すると、プレス装置24が各ユニット58を密着させる力を開放する。ここで、コンプレッサ28(図1)から接続管50を通じて加圧空気が吹き込まれる。これにより、瀘布36が膨らみ、瀘布36に挟まれた脱水ケーキ34が瀘布36から離脱して下方に落下する。この機能は特許文献3に紹介されている。
【実施例2】
【0027】
図6はユニットに組み込まれる瀘布の具体的例を示す説明図である。
瀘布36は、脱水瀘盤42の両面を覆うように取り付けられる。また、スラリーは脱水瀘盤42の軸孔48を通じて供給されるが、このとき軸孔48側から脱水瀘盤42の排水路44に直接スラリーが流れ込まないようにする必要がある。そこで、図6(a)に示すように、脱水瀘盤42の両面を覆う瀘布36は、左フィルタ部66と右フィルタ部68とその間を繋ぐ連結筒38とを一体に接続した構成のものにする。
【0028】
即ち、左フィルタ部66と右フィルタ部68とは、板状の脱水瀘盤42の両面に形成された排水用溝を覆い、周縁が脱水瀘盤42の周縁部に達する形状を有する。また、脱水瀘盤42に設けられた軸孔48と対応する部分に貫通孔を有する。連結筒38は、脱水瀘盤42に設けられた軸孔48を貫通するように配置される。連結筒38の一端は左フィルタ部66に接続され、他端は右フィルタ部68に接続されている。これらは隙間無く連続して一体化される。瀘布36は、全体として丈夫なプラスチック繊維の織布等により構成される。脱水処理をするスラリーの性質により、瀘布36の目の粗さや繊維の材質等が選定される。
【0029】
瀘布36を脱水瀘盤42に装着するときは、例えば、図6(b)に示すように左フィルタ部66を潰す。そして、左フィルタ部66を引っ張って、図6(c)に示すように脱水瀘盤42の軸孔48をくぐり抜けさせる。その後、左フィルタ部66を元の形に戻す。左フィルタ部66と右フィルタ部68の脱水瀘盤42の外周側に突き出した周縁は、図3で示したように、クリップバンド52により固定される。瀘布36は消耗品であるからこのようにして交換できれば、作業性がきわめて良い。
【実施例3】
【0030】
図7は制御装置の制御動作例説明図である。
図1に示した制御装置33は次のように動作する。まず、図5に示した状態でプレス装置24を起動し、瀘布36を間に挟んだ複数の脱水瀘盤42を相互に密着させるように加圧して保持する。次に、液送ポンプ18を駆動して、スラリー槽16からスラリーを脱水機22に送り込む。同時に、真空ポンプ26を起動して、脱水機から水分を抜き取るように動作させる。
【0031】
液送ポンプ18により送り込まれたスラリーは、2枚の瀘布間を満たす。同時に水分が2枚の瀘布間から抜き取られる。その結果2枚の瀘布間に脱水ケーキが少しずつ生成される。2枚の瀘布間に空間が無くなってくると、液送ポンプ18の液送負荷が上昇する。ここで、液送ポンプ18を止めて加圧ポンプ20を起動する。
【0032】
水分の少ない脱水ケーキを得るには、高圧でスラリーを供給して脱水ケーキを潰しながら搾ることが必要である。そのために使用する加圧ポンプ20は、スラリーを高速で供給するのは難しい。そこで、2枚の瀘布間に十分に空間がある間は、スラリーを高速で供給できる液送ポンプ18を使用して生産性を上げる。
【0033】
一方、高圧でスラリーを供給して脱水ケーキを潰しながら搾るためには、例えば、特許文献1に記載されたような特殊なポンプを使用するとよい。ここで、さらに重要な問題がある。生産速度に問題がないとして、当初から加圧ポンプ20を用いて加圧しながら脱水処理をすると、図7(a)に示すように、瀘布36に接する部分に密度が高い脱水ケーキ34の壁ができてしまう。この壁は水を通し難いため、その後スラリーを加圧して供給しても、目的の厚さの脱水ケーキ34を得るまでに時間がかかるという問題がある。
【0034】
これに対して、液送ポンプ18を用いてスラリーを供給し、2枚の瀘布間に空間が無くなって液送ポンプ18の液送負荷が上昇してきたときには、図7の(b)に示すように2枚の瀘布36間に密度の低い多孔性の脱水ケーキ34ができる。その後、加圧ポンプ20で加圧しながらスラリーを供給すると、次第に密度が高く十分に脱水された脱水ケーキ34が得られる。多孔性の脱水ケーキ34が先に出来るためその後の加圧工程で水が抜けやすく、当初から加圧して脱水するよりも、効率良く含水率の低い脱水ケーキ34が得られるという効果がある。
【0035】
タイマー等により設定された時間の経過後、真空ポンプ26を停止し、加圧ポンプ20を停止し、プレス装置24を開放する。その後、コンプレッサ28を起動して、脱水ケーキ34をユニットから離脱させて脱水ケーキ34を取り出す。図1に示した制御装置33は以上のように装置各部を制御する。
【実施例4】
【0036】
図8は、脱水ケーキ離脱直前の制御装置の制御動作例説明図である。
図8に示すように、瀘布36の軸孔48からスラリーが圧入されると、瀘布36の間の空間に脱水ケーキが形成される。軸孔48からは連続的に高い圧力でスラリーが供給されるが、最終的に軸孔48の部分に残ったスラリーは十分に脱水されない場合が多い。スラリーの種類によるが、脱水ケーキ34を取り出すときに、軸孔48の部分に残ったスラリーが脱水ケーキ34と共に排出されると、脱水ケーキ34の含水率を高めてしまう。
【0037】
そこで、脱水ケーキ34を取り出す前に、軸孔48の部分に残ったスラリーを強制的に排出する。これには、例えば、加圧ポンプ20を逆転させたり、弁の開閉を制御して、スラリーを加圧ポンプ20側に吸引する。軸孔48の部分以外は既に固化しているので、軸孔48の部分のみが加圧ポンプ20側に吸い取られる。その結果、軸孔48の部分に孔の空いた脱水ケーキ34が得られる。以上のような一連の制御を制御装置33が行うことにより、連続的に昼夜運転でスラリーの脱水処理が可能になる。
【0038】
上記のように高い圧力で圧縮しながら脱水をした脱水ケーキは、例えば、含水率30%というように水分が少ないので、さらに加熱乾燥をする場合のエネルギーコストを十分に削減することができる。また、これ以上脱水する必要の無い脱水ケーキを得ることもできる。
【0039】
また、圧縮と真空吸引とを併用することにより、例えば、3〜10分程度で、厚さ30mm直径数十センチメートルの脱水ケーキを10枚もそれ以上も一挙に生成できる。これにより大量のスラリーを濃縮減量して、廃棄したり、あるいは他の用途に転用することができる。脱水ケーキは運搬も保管も容易で、管理経費の大幅節減が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の装置は、様々な産業、例えば、下水汚泥、屎尿消化汚泥、樹脂工場廃液、写真廃液、冶金工場廃液、農業工場廃液、飲料工場廃液、水産工場廃液、家畜の糞尿廃液、土木工事廃液等の泥状の汚泥(これらをスラリーと総称した)から水分を除去して、板状の脱水ケーキを製造するために広く利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
12 プラント
14 凝集槽
16 スラリー槽
18 液送ポンプ
20 加圧ポンプ
22 脱水機
24 プレス装置
26 真空ポンプ
28 コンプレッサ
30 排水タンク
32 排水設備
33 制御装置
34 脱水ケーキ
36 瀘布
38 連結筒
40 パンチングメタル
42 脱水瀘盤
43 凹陥部
44 排水路
46 島状突起
48 軸孔
50 接続管
51 開口
52 クリップバンド
54 シールゴムリング
58 ユニット
62 アーム
64 ガイドレール
66 左フィルタ部
68 右フィルタ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する板状の脱水瀘盤に挟まれた2枚の瀘布間に、前記脱水瀘盤を貫通する軸孔を通じて、液送ポンプによりスラリーを送り込むとともに、前記脱水瀘盤に接続された真空ポンプにより、前記2枚の瀘布を介して前記脱水瀘盤側に前記スラリーに含まれた水を吸引し、前記液送ポンプにより送り込まれた前記スラリーが前記2枚の瀘布間を満たして、前記液送ポンプの液送負荷が上昇した後に、前記液送ポンプよりも液送圧力の高い加圧ポンプを駆動して、前記2枚の瀘布間にさらに前記スラリーを設定された時間だけ加圧しながら供給するとともに、前記真空ポンプにより前記2枚の瀘布を介して前記脱水瀘盤側に前記スラリーに含まれた水を吸引し続けて、前記2枚の瀘布間に脱水されたスラリーによる脱水ケーキを得た後に、前記2枚の瀘布間から前記脱水ケーキを取り出すことを特徴とするフィルタープレス脱水装置の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルタープレス脱水装置とその制御方法において、
前記2枚の瀘布間から前記脱水ケーキを取り出す前に、前記脱水瀘盤の軸孔に滞留した前記スラリーを、前記脱水ケーキと分離して排出することを特徴とするフィルタープレス脱水装置の制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載のフィルタープレス脱水装置とその制御方法において、
前記脱水瀘盤の軸孔に滞留した前記スラリーを、前記加圧ポンプを駆動して、当該加圧ポンプ側に吸引して排出することを特徴とするフィルタープレス脱水装置とその制御方法。
【請求項4】
平板状であって、両方の面には周縁部を残して脱水ケーキを保持するための凹陥部が設けられ、前記両方の面を垂直に貫通する軸孔を備え、前記凹陥部の底面に溝状の排水路が形成され、前記排水路に一端を開口させて前記周縁部に他端を開口させた接続管とを備えた複数枚の脱水瀘盤と、
隣接する前記脱水瀘盤に挟まれた少なくとも2枚の瀘布と、
前記瀘布を間に挟んだ前記複数の脱水瀘盤を、前記軸孔を連通させた状態で相互に密着させるようにして保持するプレス装置と、
前記脱水瀘盤の軸孔を通じて、前記2枚の瀘布間にスラリーを送り込む液送ポンプと、同様に前記2枚の瀘布間にスラリーを送り込むものであって、前記液送ポンプよりも液送圧力の高い加圧ポンプと、
前記脱水瀘盤の接続管に接続されて、前記2枚の瀘布を介して前記排水路側に前記スラリーに含まれた水を吸引する真空ポンプと、
装置全体の動作を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記プレス装置で、前記瀘布を間に挟んだ前記複数の脱水瀘盤を相互に密着させるように加圧して保持させた状態で、前記液送ポンプを駆動して、この液送ポンプにより送り込まれた前記スラリーが前記2枚の瀘布間を満たして、前記液送ポンプの液送負荷が上昇した後に、前記加圧ポンプを駆動して、前記2枚の瀘布間にさらに前記スラリーを設定された時間だけ加圧しながら供給するとともに、前記液送ポンプを駆動すると同時に、前記真空ポンプにより前記2枚の瀘布を介して前記脱水瀘盤側に前記スラリーに含まれた水の吸引を開始して、前記設定された時間の経過後、前記真空ポンプを停止し、前記加圧ポンプを停止して、前記2枚の瀘布間から前記脱水ケーキを取り出すように制御することを特徴とするフィルタープレス脱水装置。
【請求項5】
請求項4に記載のフィルタープレス脱水装置とその制御方法において、
前記制御装置は、
前記加圧ポンプを駆動して、前記脱水瀘盤の軸孔に負圧を与えて、前記脱水瀘盤の軸孔に滞留した前記スラリーを排出するように制御することを特徴とするフィルタープレス脱水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−170937(P2012−170937A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38051(P2011−38051)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(508296761)株式会社共立 (4)
【Fターム(参考)】