説明

フィルターモジュールの再生方法

少なくとも一つのフィルター部品を有するフィルターモジュールを損失無く再生する方法であって、この再生方法が、それと関連した製造方法に関して、生産物の後排出(後排出工程)と、フィルターの洗浄(洗浄工程)と、生産物の前注入(前注入工程)との工程を有し、後排出工程では、フィルターモジュールから生産物を押し流し、洗浄工程では、少なくとも一つのフィルター部品から堆積物、特に、濾過ケークとフィルター補助剤を取り除いて洗浄し、前注入工程では、少なくとも一つのフィルターモジュールにフィルター補助剤をコーティングするとともに、フィルターモジュールに生産物を充填する方法において、洗浄工程の最初及び/又は最後に、フィルターモジュールにガスを充填して、フィルターモジュール内に有る液体を押し出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つのフィルター部品、例えば、フィルターカートリッジを有するフィルターモジュールを損失無く再生する方法に関し、本再生方法は、それらと関連する製造方法に関して、生産物の後排出(後排出工程)、フィルター洗浄(洗浄工程)及び生産物の前注入(前注入工程)の工程を有し、フィルターモジュールは、洗浄工程の最後にガスを充填され、それによって、フィルターモジュール内に有る液体を押し出すものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、ビールの濾過方法が知られている。そのフィルターユニットの再生、洗浄、開始及び終了方法も同様に周知である。ビールの製造で一般的に用いられているフィルターモジュールは、複数のフィルターカートリッジを有するか、複数のフィルターカートリッジから構成されている。これらのフィルターカートリッジは、規定通りの運用では、必要な分離性能を確保するために、フィルター補助剤から成る濾過ケークをコーティングされている。通常のフィルター補助剤は、場合によっては、例えば、シリカゲルなどの安定剤で最適化された珪藻岩である。濾過ケークの中と上への堆積物のために、未濾過側、即ち、フィルター入口の圧力を連続的に上昇させて、フィルターモジュールを通る体積流量を一定に保たなければならない。
【0003】
そのような圧力の上昇は技術的に限界が有るので、フィルターモジュールを定期的に再生しなければらない。そのために、そこに存在するビールをガス抜きの水で押し流しており、それには、約1.2倍のタンク容量が必要である。そのような所謂後排出物は、麦汁含有量が通常約3%である所定量となるまで、特別なタンク、所謂前注入・後排出タンクに貯蔵されている。それ以上の薄まったビールは廃棄される。その次に、フィルターモジュールの上流に有るタンクに圧縮空気を加えて、それにより液体をフィルターモジュールを通して濾過方向に押し出している。この場合、フィルター補助剤と残留物が、フィルターカートリッジ上の濾過ケークとして残る。
【0004】
それに続いて、濾過側に投入される水と圧縮空気の衝撃によって、堆積した濾過ケークを吹き飛ばしている。フィルターモジュールの底に有る懸濁液を押し流して排水している。
【0005】
その次に、様々な洗浄剤、通常アルカリ液及び/又は酸液をフィルターモジュールに通過させることによって、フィルター部品を洗浄している。その後、これらの洗浄剤を水、有利には、ガス抜きの水を用いて洗い落としている。この洗浄工程の最後に、フィルターモジュールに綺麗な水を充填している。その次に、フィルター部品に対して、事前に貫流させることによって、特に、フィルター補助剤上に好適な層を新たにコーティングする所謂前注入又は前注入工程を行っている。この事前貫流によって、そこに存在する水をフィルターを通して循環させるとともに、フィルター部品への濾過ケークの所望通りのコーティングが実現されるまで、フィルター補助剤、通常は珪藻岩を投入している。それに続く工程では、ビールを導入することによって、系内に存在する水を徐々に押し流している。押し流された液体、即ち、麦汁が増えて行く混合液は、麦汁含有量が通常約3%の所定量となるまで廃棄される。麦汁含有量がそれ以上となったビールは、同じく前述した前注入又は後排出タンクに貯蔵されて、生産物に混合される。この特別なフィルターモジュールを用いた製造は、最大動作圧力に到達するまで繰り返し行われ、フィルターモジュールの上流では、薄い濃度の珪藻岩が持続的に供給される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この周知の再生方法は、前排出工程において、ほぼ完全に廃棄される大量のビールを必要とする。更に、大容量の一時貯蔵及びそれと関連した設備を必要としている。そのことは、環境を保全する観点から、並びに経済的に不利である。そこで、本発明の課題は、そのような欠点を克服して、環境への負荷が小さい技術的に同等の方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フィルターモジュールを損失無く再生する方法であって、このフィルターモジュールは、少なくとも一つのフィルター部品を有し、本再生方法が、それと関連した製造方法に関して、
a)生産物の後排出(後排出工程)と、
b)フィルターの洗浄(洗浄工程)と、
c)生産物の前注入(前注入工程)と、
の工程を有する方法によって、本課題を解決している。
【0008】
工程a)〜c)の主要な特徴は、
a)フィルターモジュールから生産物を押し流す後排出工程と、
b)少なくとも一つのフィルター部品から堆積物、特に、濾過ケークとフィルター補助剤を取り除いて、洗浄する洗浄工程と、
c)少なくとも一つのフィルター部品にフィルター補助剤をコーティングするとともに、フィルターモジュールに生産物を充填する前注入工程と、
である。
【0009】
本発明による方法の顕著な特徴は、洗浄工程の最初と最後にフィルターモジュールにガスを充填して、それによって、フィルターモジュール内に有る液体を押し出すことである。理想的には、フィルターモジュールに二酸化炭素、窒素、圧縮空気又はそれらのガスの混合気を充填し、その際、1バール〜最大8バールの圧力に設定する。理想的には、1.5バール〜2.0バールの圧力とする。改善形態は、洗浄工程の最初と最後の両方において、ガスを用いてフィルターモジュールを空にすることである。洗浄工程の最初にガスを導入することによって押し出すことができなかった、例えば、フィルターモジュールの貯留部内の一定量の液体は、別個の一時貯蔵タンクに送り出して、その後の製造時に、フィルターモジュールの上流で未濾過液の配管区間に投入することができる。
【0010】
従って、大容量の前注入・後排出タンクが、それに付属の接続部、配管、ポンプ、駆動部及び制御部と共に不要となる再生方法を見い出すことができた。この新しい方法を実施することによって、前注入・後排出を取り止めて、活用できない混合液の損失を大幅に防止することが可能となった。
【0011】
本方法の改善形態は、その次に、ガスを充填したフィルターモジュールに濾過したビールを充填して、それによって、系内に有るガスを押し出し、それに続いて、事前貫流を開始することである。そのために、溜めておいたビールをフィルターモジュールを通して循環させるとともに、ビール及び水の中の一つ以上とフィルター補助剤とから成る懸濁液をフィルターモジュール又は循環フローの配管区間に投入する。それに代わって、純粋な形のフィルター補助剤をフィルターを通して循環させる液体のフローに供給する。懸濁液の投入によって押し出された液体は、そこに存在する未濾過液一時貯蔵タンク又は別個の一時貯蔵タンクにポンプで送り出すことができる。そのようにして貯めた液体は、後で新たな製造時にフィルターモジュールの上流に投入される。別個の一時貯蔵タンクに貯めておく利点は、生産物から出て来る未濾過液が混合液と場合によっては存在する珪藻岩成分とを含まなくなることである。通常の大きさのフィルター構造では、そのような一時貯蔵タンクは、それ以外の貯蔵タンクと比べて非常に小さい。一時貯蔵タンク内に有る量の液体は、その後の新たな製造時にフィルターモジュールの供給管に投入される。しかし、そのような量の液体は、その次の事前に貫流させることを目的とする前注入工程で、ポンプを用いて懸濁液に投入することもできる。
【0012】
本発明による方法の変化形態は、ガスを充填して空となったフィルターモジュールにビールとフィルター補助剤から成る懸濁液を直ちに導入して、その懸濁液を暫くの間フィルターモジュールを通して循環させて、事前の貫流を実現することである。このような本方法の変化形態の特別な利点は、別の混合液及びその貯蔵が不要となることである。
【0013】
本発明には、本発明による方法の前述した変化形態の中の一つによる再生方法にもとづき少なくとも一つのフィルターモジュールを再生するビールの醸造方法も含まれる。
【0014】
本発明による方法を具体的な例にもとづき説明する。当然のことながら、当業者は、好適な手法により、各プロセス条件及び設備条件に応じてプロセスパラメータを変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による方法の実施例の構成図
【発明を実施するための形態】
【0016】
一つの実施例の構成において、周知のフィルター方法の通り、2m3 /時の濾過性能に対して設計した、18個のフィルターカートリッジを有するフィルターモジュールを採用した。1.5バール以内の圧力の二酸化炭素をフィルターに導入することによって、そこに存在する綺麗な水を押し出した。次に、フィルターモジュールに濾過したビールを注ぎ込んで、フィルターモジュールの供給管に送り出されることとなるビールと珪藻岩から成る懸濁液を用いた事前貫流を開始した。目標とする事前貫流量は、1.0kg/m2 であった。懸濁液の導入によって、残っていたビールを押し出して、別個の一時貯蔵タンクに送り出した。そのために配備された追加の一時貯蔵タンクは、約0.08m3 の貯蔵能力を有するものであった。その後の製造時に、そのような量のビールをフィルターモジュールの上流に投入した。
【0017】
既に述べた利点の他に、更に観察できたことは、本発明による簡単な再生方法と供給すべき液体量の減量によって、フィルター再生時間を約10%短縮することができたことであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのフィルター部品を有するフィルターモジュールを損失無く再生する方法であって、この再生方法が、それと関連した製造方法に関して、生産物の後排出(後排出工程)と、フィルターの洗浄(洗浄工程)と、生産物の前注入(前注入工程)との工程を有し、後排出工程では、フィルターモジュールから生産物を押し流し、洗浄工程では、少なくとも一つのフィルター部品から堆積物、特に、濾過ケークとフィルター補助剤を取り除いて洗浄し、前注入工程では、少なくとも一つのフィルターモジュールにフィルター補助剤をコーティングするとともに、フィルターモジュールに生産物を充填する方法において、
洗浄工程の最後に、フィルターモジュールにガスを充填して、フィルターモジュール内に有る液体を押し出すことを特徴とする方法。
【請求項2】
洗浄工程の最初と最後に、フィルターモジュールにガスを充填して、フィルターモジュール内に有る液体を押し出すことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フィルターモジュールに二酸化炭素、窒素、圧縮空気又はそれらのガスの混合気を充填することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
1バール〜最大8バールの圧力、理想的には、1.5バール〜2.0バールの圧力のガスをフィルターモジュールに充填することを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
当該の少なくとも一つのフィルターモジュールが、一つのフィルターカートリッジであり、フィルターモジュールが、理想的には、多くのフィルターカートリッジを有することを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
当該のガスを充填したフィルターモジュールに濾過したビールを充填し、次に、当該の少なくとも一つのフィルター部品の事前貫流を行うこととして、ビール及び水の中の一つ以上とフィルター補助剤とから成る懸濁液をフィルターモジュールに導入して、暫くの間フィルターモジュールを通して循環させることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
当該の懸濁液の導入によって押し出された液体を未濾過液の一時貯蔵タンクに送り出すことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
当該の懸濁液の導入によって押し出された液体を別個の一時貯蔵タンクに送り出して、その後の製造時に、フィルターモジュールの上流で未濾過液の配管区間に投入することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
当該の洗浄工程の最初でガスの導入によって押し出すことができなかった液体を別個の一時貯蔵タンクに送り出して、その後の製造時に、フィルターモジュールの上流で未濾過液の配管区間に投入することを特徴とする請求項2から5までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
当該のガスを充填したフィルターモジュール内において、当該の少なくとも一つのフィルター部品の事前貫流を直ちに行うこととして、ビールとフィルター補助剤から成る懸濁液をフィルターモジュールに導入して、暫くの間フィルターモジュールを通して循環させるとともに、フィルターモジュールからガスを少なくとも部分的に押し出すことを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
その次の事前注入工程での事前貫流時に、ポンプを用いて、一時貯蔵タンク内に有る量の液体の少なくとも一部を懸濁液に投入することを特徴とする請求項8又は9に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか一つに記載の再生方法にもとづき、少なくとも一つのフィルターモジュールを再生することを特徴とするビールの醸造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−521280(P2010−521280A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553028(P2009−553028)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【国際出願番号】PCT/EP2008/001034
【国際公開番号】WO2008/113435
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(598125028)カーハーエス・アクチエンゲゼルシヤフト (125)
【Fターム(参考)】