説明

フィルタ交換制御機構を有した音楽演奏装置

【課題】カラオケ装置のような単体の装置で多数の楽曲を再生するようにした音楽演奏装置に好適に適応できる自動フィルタ交換機構を備え、適切なタイミングでフィルタ交換が行われ、装置筐体内部の冷却機能が低下しないようにする。
【解決手段】検出された温度によって回転数を可変とする可変型冷却ファンと、駆動型フィルタの交換を自動的に行う自動フィルタ交換機構を備えた音楽演奏装置であって、楽曲の演奏毎に記録される演奏ログから演奏時間、又は演奏度数を取得することにより、前回フィルタを交換したタイミングからの累計の演奏時間、又は演奏度数を算出し、算出した累計演奏時間、又は演奏度数が、予め設定された基準値に達した場合には、自動フィルタ交換機構を駆動制御してフィルタ交換が実行されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラオケ装置やジュークボックス等のような音楽演奏装置において、装置筐体内部の温度上昇を防ぎ、電子部品等に熱的影響が及ばないようにするための冷却ファンとともに付設される駆動型フィルタの交換制御機構の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の音楽演奏装置、例えば、商用のカラオケ装置では、楽曲データや映像データを記憶したり再生するための機能、あるいは楽曲の演奏毎に記録される、楽曲ID、曲名、演奏日時、演奏時間などといった各種データからなる演奏ログを生成し、さらに、この演奏ログを収集して統計データを記憶したり更新したりする機能、また、通信機能を内蔵して楽曲データや映像データをカラオケホストセンターからダウンロードする機能等、様々な機能を備えている。このような様々な機能は、半導体集積回路部品のように微弱な電流で作動する数多くの電子部品を実装した複数のプリント配線基板等を単体の装置筐体内に収容して完成するようにしている。
【0003】
このように音楽演奏装置に実装される電子部品において、特に中央制御装置(CPU)を構成する半導体集積回路のような能動素子を安定に動作させるためには、素子自体の温度を一般的な目安の70℃以下に保たなければならないのであるが、素子に対する負荷が極端に大きくなった場合、あるいは放熱対策が不足している場合は90℃を超えるクリティカル温度に達してしまうことがある。さらに、このような装置筐体内部の雰囲気温度上昇の防止は、半導体集積回路だけでなく、ハードディスクドライブの保護からも重要な課題となっている。したがって、このような半導体集積部品自体を熱的影響から保護するため、そして装置筐体内部の雰囲気温度を上昇させないためにも放熱対策は重要な課題となっている。
【0004】
ところで、近年のカラオケ装置では、楽曲データやその他の制御データ等とともに、情報量が格段に大きい映像データも記録するようにしている。したがって、これに伴って、中央制御装置(CPU)は処理速度が高いものが求められ、ハードディスクドライブも記憶容量の大きいものが実装されることになる。
【0005】
ところが、このようなハードディスクドライブでは記憶容量を大きくし、高速の読み書きが可能となるようにするため、きわめて回転速度の速いものとなっており、高速回転しているハードディスクドライブのスピンドルモータが熱源となって発熱を生じることになる。しかも、このモータ自体及びその周辺の電子部品が最も熱的影響を受けて障害を発生してしまうことになる。したがって、カラオケ装置の機能向上のため、上記したような高性能のハードディスクドライブを実装する場合は、放熱に対して格別な配慮を欠かすことができない。
【0006】
ところで、カラオケボックスや複合娯楽施設等の商業施設に設置される音楽演奏装置には、従来からも吸排気用の冷却ファンが設けられ、例えば、吸気用の冷却ファンでは、フィルタを介して装置筐体外部の空気を強制的に装置筐体内部に吸気することで、装置筐体内部に発生した高温の空気を装置筐体外部へ排気することにより、装置筐体内部の冷却が可能となるようにしている。ところが、このような音楽演奏装置が設置される商業施設は当然のことながら、塵や埃あるいはタバコの煙等というフィルタの目詰まりとなる因子が存在しており、営業時間帯は通常電源が継続して投入されているため、一般家庭に設置する機器に較べ、換気部のフィルタは格段に早く目詰まりしてしまうことになる。
【0007】
また、従来の上記したような吸排気による冷却方式では、冷却ファンは一定の回転数で回転することから、その回転時間にほぼ比例してフィルタに目詰まり因子が堆積してゆくため、発熱を伴う電子部品やハードディスクドライブの駆動状況に拘わらず、ほぼ一定の期間を経過するとフィルタが目詰まりして、冷却ファンを駆動させても冷却効果が得られなくなることがある。
【0008】
一方、装置筐体内部の温度変化に対して比例制御を行うように改良された冷却方式では、装置筐体内部の温度に応じて冷却ファンの回転数を変化させることで適正な冷却効率が得られるようにしている。このような冷却方式では、その装置の使用状況、即ち、発熱を伴う電子部品(CPUなど)やハードディスクドライブの稼働率の高低で冷却ファンの回転数が変化する。具体的には、CPUやハードディスクドライブの稼働率が高い状態にあるときは温度が上昇するため冷却ファンの回転数も高くなり、これとは逆に稼働率が低い状態にあるときは温度が上昇しないため、冷却ファンの回転数は低くなることから、一応、合理的な温度管理が可能となるようにしている。
【0009】
したがって、このような冷却方式によれば、冷却ファンを一定の回転数で回転させる冷却方式のように、ほぼ一定の期間が経過するとフィルタが目詰まりしてしまうことはない。これは、目詰まり因子の堆積量が、「回転数×回転時間(=回転累計数)」にほぼ比例するため、この「回転数」が可変であると、CPUやハードディスクドライブの稼働率が高い場合にはフィルタの目詰まりが早く、逆に、稼働率が低い場合には稼働率が高い場合に較べてフィルタの目詰まりが遅くなることによるものである。
【0010】
ところで、上述した従来の冷却方式を採用する場合においても、装置筐体内に冷却ファンの駆動に伴って空気を導入する吸気口と、装置筐体内部の高温の空気を排出する排気口が形成されるが、この吸気口と排気口は、装置筐体のデザイン的配慮から、一般に側面あるいは背面に形成するようにし、通常、吸気口にフィルタを配設するようにしている。したがって、装置がオーディオラック等にセッティングされてしまうと、前記のように配設されたフィルタは外部から視認し難い状態となり、このフィルタの目詰まり状態を確認することが甚だ困難となることから、目詰まり状態が看過され易く、装置の故障あるいは寿命の短縮につながる問題を解決することが課題となっている。
【0011】
そこで、このようなフィルタの目詰まりによる装置筐体内部の温度上昇に関する問題を解決するための従来例として、電子機器内部に温度センサを設け、当該温度センサにより内部温度が所定の温度より高い温度を検知した場合には、フィルタが目詰まりしていると判断し、スクロール状のフィルタを巻き取って、目詰まりしていないフィルタを露出させ、空気の通りを回復させることで、内部の温度上昇を防ぐようにした技術が提案されている。(特許文献1参照)。また、別の従来例として、ファン送風路に配置された巻き取りフィルタに、発光ダイオードや受光素子と光学的目詰まりセンサ機構を用い、目詰まりが検出された場合は、フィルタを自動的に交換する技術が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平08−152242号公報
【特許文献2】特開平06−317950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記特許文献1に開示された技術は、電子機器内部に温度センサを設け、当該温度センサが所定温度より高い温度を検知した場合に、空気が滞留して温度が上がったものとして、フィルタが目詰まりしたと想定し、これを自動交換する。これにより、フィルタの自動交換を好適に制御できるものとしている。しかしながら、電子機器内部の温度上昇は、必ずしも発熱を伴う電子部品やハードディスクドライブの駆動状況に関係があるとは言えず、例えば、フィルタが目詰まりはしていないにも拘らず、外気温の上昇や電子機器筐体の上や周りに放熱を妨げる物が置かれたりすることにも起因することがある。即ち、電子機器内部の温度上昇は、電子部品やハードディスクドライブの駆動に伴う温度上昇に対する冷却ファンの回転に拠るフィルタの目詰まりに必ずしも起因しないため、フィルタ交換が早過ぎてしまうこともあり、フィルタの交換タイミングを適正に保てるものとは言えない。
【0014】
また、上記特許文献2に開示された技術は、高反射型目詰まりセンサでフィルタ面の反射率を取得して、その反射率の変化によりフィルタの目詰まりを直接的に検出するものであり、適正なタイミングでフィルタの交換が可能となるようにしている。しかしながら、目詰まりを直接的に検出するためには、例えば、特殊な小型カメラや光学的な解析手段及びこれらの取り付け器具などを要することから装置内が更に複雑な構成となり、また、装置の構成要素が増えることによる装置の修理時や部品交換時の困難性を高めたり、あるいは、装置重量の増加などが生じるばかりでなく、装置の製作コストが上昇するといった不都合も生じる。
【0015】
また、他の従来の技術では、間接的にフィルタの目詰まりを予測するものもあり、目詰まりの時期を経験則から予測したタイマ設定にて所定間隔で交換するようにしたものがあるが、この方法による場合も装置の使用状況の変化、換言すれば、発熱を伴う電子部品やハードディスクドライブの駆動状況に対応できるものではなく、カラオケ装置のような音楽演奏装置には十分に適応できるものではなかった。
【0016】
そこで、本発明は、カラオケ装置のような音楽演奏装置に好適に適応できる自動フィルタ交換機構を有した音楽演奏装置の提供を課題とし、さらに詳しくは、装置筐体内部の温度に応じて回転数を変更することのできる可変型冷却ファンと、自動フィルタ交換機構を採用した音楽演奏装置において、特に、フィルタの自動交換を好適に制御できる音楽演奏装置の提供を課題とする。かかる課題に鑑み、本発明では音楽演奏装置における楽曲の演奏時間あるいは演奏度数に基づいて、自動フィルタ交換機構を駆動制御するようにし、上記課題を解決するようにした。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を鑑み、本発明者は、冷却用空気の風量を変えることができる可変型冷却ファンと、駆動型フィルタの交換を自動的に行う自動フィルタ交換機構を備えた音楽演奏装置であって、楽曲の演奏毎に記録される演奏ログから演奏時間、又は演奏度数を取得することにより、前回フィルタを交換したタイミングからの累計の演奏時間、又は演奏度数を算出し、算出した累計演奏時間、又は演奏度数が、予め設定された基準値に達した場合には、自動フィルタ交換機構を駆動制御してフィルタ交換を実行する。また、入力操作部にて基準値を入力することにより、フィルタ交換機構を駆動制御するタイミングを設定変更可能とすることにより、上記課題を解決できると想定した。
【0018】
そこで、本発明は以下に述べる各手段により上記課題を解決するようにした。即ち、本発明の請求項1記載の音楽演奏装置では、装置筐体内部の温度に応じて回転数を変更し、装置筐体外部から装置筐体内部への冷却用空気の風量を変えることができる可変型冷却ファンと、駆動型フィルタの交換を自動的に行うようにした自動フィルタ交換機構を備えた音楽演奏装置であって、更に演奏時間取得管理手段と、フィルタ交換制御手段とを有するものであり、前記演奏時間取得管理手段は、楽曲の演奏毎に記録される演奏ログから演奏時間を取得し、前回フィルタ交換のタイミングからの累計の演奏時間を算出して管理し、前記フィルタ交換制御手段は、前記累計演奏時間が予め設定された基準値に達したか否かの判定を行い、基準値に達した場合に、前記自動フィルタ交換機構を駆動制御してフィルタ交換を実行するようにした、ことを特徴とする。
【0019】
また、請求項2に記載の音楽演奏装置では、装置筐体内部の温度に応じて回転数を変更し、装置筐体外部から装置筐体内部への冷却用空気の風量を変えることができる可変型冷却ファンと、駆動型フィルタの交換を自動的に行うようにした自動フィルタ交換機構を備えた音楽演奏装置であって、更に演奏時間取得管理手段と、フィルタ交換制御手段とを有するものであり、前記演奏時間取得管理手段は、楽曲の演奏毎に記録される演奏ログから演奏度数を取得し、前回フィルタ交換のタイミングからの累計の演奏度数を算出して管理し、前記フィルタ交換制御手段は、前記累計演奏度数が予め設定された基準値に達したか否かの判定を行い、基準値に達した場合に、前記自動フィルタ交換機構を駆動制御してフィルタ交換を実行するようにしたことを特徴とする。
【0020】
さらに、請求項3記載の音楽演奏装置では、上記請求項1および請求項2記載の音楽演奏装置において、更に基準値設定手段を有し、該基準値設定手段は、前記基準値を入力操作部にて任意に入力することで、前記自動フィルタ交換機構を駆動制御するタイミングの設定変更が可能となるようにすること特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
したがって、このような仕組みを有する本発明の請求項1記載の音楽演奏装置によれば、可変型冷却ファンと自動フィルタ交換機構を備えた音楽演奏装置において、楽曲の演奏ログから演奏時間を取得し、前回フィルタ交換のタイミングからの累計の演奏時間を算出して管理し、当該累計演奏時間が予め設定された基準値に達した場合に、自動フィルタ交換機構を駆動制御してフィルタ交換を実行するようにしたことにより、音楽演奏装置の演奏時に活性化する発熱を伴う電子部品や、ハードディスクドライブの駆動とこれに伴う装置筺体内の温度上昇に対する冷却ファンの回転数の上昇が、フィルタの目詰まりに関連することから、演奏時間と目詰まり因子の堆積量とに対応関係が生じるため、演奏時間でフィルタの適切な交換時期を判断することができる。これにより、音楽演奏装置特有の演奏活動に起因するフィルタの目詰まりに対して、好適なタイミングで対応することができ、結果、装置筺体内の温度上昇を適切に防止できると共に、装置内部に特殊な解析装置を設けたり、複雑な構成にすることなく、製作コストの削減もできるといった効果を奏するものである。
【0022】
また、このような仕組みを有する本発明の請求項2記載の音楽演奏装置によれば、可変型冷却ファンと自動フィルタ交換機構を備えた音楽演奏装置において、楽曲の演奏ログから演奏度数を取得し、前回フィルタ交換のタイミングからの累計の演奏度数を算出して管理し、当該累計演奏度数が予め設定された基準値に達した場合に、自動フィルタ交換機構を駆動制御してフィルタ交換を実行するようにしたことにより、音楽演奏装置の演奏時に活性化する発熱を伴う電子部品やハードディスクドライブの駆動とこれに伴う装置筺体内の温度上昇に対する冷却ファンの回転数の上昇がフィルタの目詰まりに関連するものであり、よって、演奏度数から概ねの楽曲演奏時間を推測することができることにより、当該演奏度数と目詰まり因子の堆積量とに対応関係が生じるため、演奏度数でフィルタの適切な交換時期を判断することができる。これにより、音楽演奏装置特有の演奏活動に起因するフィルタの目詰まりに対して、好適なタイミングで対応することができ、結果、装置筺体内の温度上昇を適切に防止できると共に、装置内部に特殊な解析装置を設けたり、複雑な構成にすることなく、製作コストの削減もできるといった効果を奏するものである。
【0023】
さらに、このような仕組みを有する本発明の請求項3記載の音楽演奏装置によれば、自動フィルタ交換機構を駆動する基準値を、入力操作により設定変更することが可能となる。よって、音楽演奏装置の設置店の環境(特に、塵や埃あるいは煙草の煙等)によるフィルタ目詰まり因子の堆積速度の差異に対して、設置店毎に適切な対応ができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明をカラオケ装置に実施したハードウエア構成を示すブロック図である。
【図2】本発明のフィルタ自動フィルタ交換機構を説明するための図である。
【図3】本発明のフィルタ自動フィルタ交換機構を説明するための図である。
【図4】装置筐体内部の空気の流れを説明する図である。
【図5】装置筐体内部の空気の流れを説明する図である。
【図6】各楽曲の演奏ログ管理テーブルの概略図である。
【図7】累計演奏時間管理テーブルの概略図である。
【図8】累計演奏度数管理テーブルの概略図である。
【図9】本発明のフィルタ自動フィルタ交換機構による処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は単体の装置で異なる多数の楽曲を再生することのできる音楽演奏装置であれば広範に実施の対象とすることができるが、理解を容易とするため、以下の実施例では、通信タイプのカラオケ装置に実施した具体的な例について説明する。
【実施例】
【0026】
ここで、一般的なカラオケ装置について簡単に説明する。装置に内蔵した音源により生成された楽曲とマイクロホンから入力した歌唱音声信号をミキシングして増幅器により増幅し、スピーカシステムから演奏音および歌唱音声が再生される。また、カラオケ装置は映像信号をモニターテレビに出力し、歌詞テロップおよび背景映像を表示する。なお、カラオケ装置はリモコン送信機から送られてくる赤外線コード信号を受信してリクエストされた楽曲の予約登録を行うなど、カラオケ演奏に必要な様々の機能を処理する。
【0027】
このリモコン送信機はカラオケ装置に対するGUI機能を備え、利用者ID取得手段となる補助端末装置(タッチパネルコマンダー)であり、カラオケ装置との間でデータの送受信が行われる。この補助端末装置には、利用者IDカードによるデータ入力操作が行われるようにした利用者ID取得手段となるデータ入力部(タッチパネルセンサー)を備える。そして、このデータ入力部に利用者IDカードを接触させてデータ入力操作を行うことにより、利用者IDカードに記録されている利用者属性データがカラオケ装置に転送されることになる。
【0028】
図1はカラオケ装置1のハードウエア構成を示すブロック図であり、同図において、中央制御部11は内部にCPU、RAM、ROMを含むマイコンであり、制御/データバス40を介してこれに接続され各構成要素と信号の授受を行い、システム全体の統括および制御を行う。
【0029】
前記中央制御手段11はハードディスクドライブ(HDD)13に格納されている楽曲データ、映像データを読み出す。楽曲データは、例えばMIDI(登録商標)形式により記述されたカラオケ伴奏音楽となる音楽生成データと、そのカラオケ楽曲の演奏に同期して表示する歌詞やその文字の属性(表示位置、表示色、表示/消去のタイミングなど)を記述した歌詞描画データを含んでいる。また、中央制御手段11はリモコン送信機6およびリモコン受信機15や操作パネル16からリクエスト楽曲のID入力を、操作制御部17を介して受け取ると、その入力順とIDとを対応付けてRAM26の予約待ち行列記憶部26aに予約待ち行列が記憶される。なお、HDD13には、カラオケ装置1が任意の楽曲を演奏した際に、その記録を残すための演奏ログ記憶部13aが形成されている。
【0030】
そして、予約順に従って該当するカラオケ楽曲の演奏データなどをハードディスクドライブ13から読み出し、演奏データ中のMIDIデータをシンセサイザ18に転送すると、シンセサイザ18はこのMIDIデータに従って内蔵音源を制御し、カラオケ伴奏音楽を生成する。シンセサイザ18が出力するカラオケ伴奏音楽の演奏信号は、ミキサー19でマイクロホン2からの歌唱音声信号と混合されて出力し、スピーカ4を駆動して音響出力が得られる。
【0031】
一方、カラオケ伴奏音楽の生成処理に同期して映像制御部23は、歌詞画像となるビットマップ画像をビデオRAM22に展開し、このビデオマップ画像をHDD13から出力される背景映像にスーパーインポーズする処理を行ってモニターテレビ5に画像出力する。
【0032】
本実施例のカラオケ装置1は通信機能を備えるもので、中央制御部11は通信制御部12を制御し、情報通信ネットワークNを介してカラオケホストセンター100に接続することによりデータ通信が可能となる。カラオケホストセンター100はカラオケ楽曲を蓄積した楽曲データサーバ100aおよび利用者属性データ、統計データ等を蓄積した管理データサーバ100bを備え、クライアントであるカラオケ装置1との間で各種データの授受が行われる。カラオケホストセンター100から配信された楽曲データなどはハードディスクドライブ13に格納され、中央制御部11の制御に基づいて読み出される。
【0033】
次に、本発明の音楽演奏装置であるカラオケ装置1のHDD13では、後述するフィルタの自動交換が可能となるようにするため、その交換時期の判断要素とするための演奏時間、又は演奏度数を累計管理する演奏時間/度数取得管理手段27を備える。この演奏時間/度数取得管理手段27では、フィルタの交換時期について、演奏時間を基準として設定する場合、楽曲演奏の終了毎に、前記HDD13の演奏ログ記憶部13aに設けられた累計演奏時間管理テーブル(T1)に、演奏された楽曲の演奏時間と共に、その演奏時間を順次積算した累計値を記憶する。一方、フィルタの交換時期について演奏度数を基準として設定する場合は、楽曲の1演奏毎に1度数として取得して積算し、その累計値を累計演奏度数管理テーブル(T2)に記憶する。
【0034】
以上、述べたように、演奏時間を楽曲の演奏毎に取得して累計する場合、実際に演奏した時間を累計することができる。即ち、楽曲の全てを演奏した場合の演奏時間はもとより、歌唱を途中で中止した場合の実際の時間も演奏ログに記録されているため、これを累計に含めることもでき、時間設定に重点が置かれた制御が可能となる。一方、演奏度数を楽曲の演奏毎に取得して累計する場合は、楽曲の演奏時間を概括的に把握するもので、その累計値からフィルタの交換時期を判断するものである。
【0035】
基準値設定手段28は上記のような時間設定、又は度数設定により基準値を設定するものであり、実際にはスイッチ操作部を備え、時間設定の場合の基準値(例えば、60時間)、あるいは度数設定の場合の基準値(例えば、850回)が可能となるようにする。なお、この設定値は、カラオケ装置1が設置される環境の塵や埃、煙草の煙の量などを勘案して設定変更可能となるようにし、設定された基準値は、HDD13の基準値データ設定部(13b)に記録される。
【0036】
このようにして基準値設定手段28により設定された基準値および演奏時間/度数取得管理手段27からの累計値は、制御/データバス40を介してフィルタ交換制御手段29に出力される。このフィルタ交換制御手段29は、前記設定値と累計値を常に比較し、設定値に累計値が一致した時点で駆動電流を自動フィルタ交換機構30に所定時間送出し、駆動型フィルタ31を駆動するようにしている。
【0037】
ここで、前記自動フィルタ交換機構30および駆動型フィルタ31の構成を図2及び図3に基づいて説明する。同各図において、自動フィルタ交換機構30は、可変型冷却ファン32を中央に備え、装置筐体に固定されたカセットホルダー35に内蔵された状態にあり、ステッピングモータ30a、ウォームギヤ30b、ギヤホイール30cにより構成されている。したがって、ステッピングモータ30aの出力軸の回転力がウォームギヤ30bからギヤホイール30cに伝達し、該ギヤホイール30cが回転駆動されることになる。
【0038】
一方、駆動型フィルタ31は、前記カセットホルダー35に着脱可能となるように構成されており、フィルタ31aの巻回された未使用の部分がカセット31bの一方の側部に収容され、該フィルタ31aの始端部は、カセット31bの他方の側部の巻取軸31cに貼着されている。そして、前記巻取軸31cには駆動ギヤ31dが軸着されており、カセット31bをカセットホルダー35に装着したとき、窓孔31eから前記ギヤホイール30cが臨み、駆動ギヤ31dが歯合してギヤホイール30cの回転力が伝達される。
【0039】
なお、前記可変型冷却ファン32は、装置筐体内部の温度を常に検出している温度センサ34からの信号を入力し、この信号に基づいて駆動信号を出力する冷却ファン制御部33により回転数が可変するように制御される。具体的は、例えば、温度センサが検出した温度が摂氏25度未満の場合には、回転数は1000rpmと設定され、摂氏25度を超えると摂氏40度までの回転数は1500rpmと設定され、摂氏40度を超えると摂氏55度までの回転数は2000rpmと設定され、摂氏55度を越えると回転数は3000rpmとる設定される。この他にも、例えば、摂氏25度未満は、回転数は1000rpmと設定され、一方、摂氏55度を越えると、回転数は3000rpmと設定され、摂氏25度から摂氏55度までは、温度上昇(下降)の割合に応じて、リニアに対応した割合で回転数の上昇(下降)を変化させるように構成してもよい。このような構成の可変型冷却ファンを用いることで、比較的安定した温度コントロールができるが、CPUやハードディスクドライブの稼働率が高い状態にあるときは温度が上昇するため冷却ファンの回転数も高くなり、これとは逆に稼働率が低い状態にあるときは温度が上昇しないため、冷却ファンの回転数は低くなることから、目詰まり因子の堆積量が「回転累計数」にほぼ比例するため、CPUやハードディスクドライブの稼働率が高い場合にはフィルタの目詰まりが早く、逆に、稼働率が低い場合には稼働率が高い場合に較べてフィルタの目詰まりが遅くなることになる。
【0040】
上記のように構成されたカセットホルダー35および駆動型フィルタ31は、図4に示すようにカラオケ装置1の装置筐体の側部に配設される。同図に示す構成では、カセットホルダー35の可変型冷却ファン32が駆動されると、装置筐体の外部の空気が内部へ導入される吸引式となり、導入される空気に含まれる塵や埃は駆動型フィルタ31に捕捉され堆積する。そして、塵や埃の除去された空気は装置筐体内部を流れ、冷却機能を果たした後、装置筐体背面の排気口1aから排気される。
【0041】
以上の構成は装置筐体外部の空気を強制的に導入する吸気式によるものであるが、装置筐体内部の空気を強制的に外部へ導出する排気式となるように構成することもできる。図5は、この場合の構成の一例を示すもので、装置筐体の背面に可変型冷却ファン32のみを配設する一方、側部には駆動型フィルタ31を配設する。この場合、駆動型フィルタ31の部分には、図9に示すように可変型冷却ファン32が不要となるが、駆動型フィルタ31のフィルタ31aの巻き取りが可能となるように、カセットホルダー35にはステッピングモータ30a、ウォームギヤ30b、ギヤホイール30cの自動フィルタ交換機構30を備えておくことが必要となる。
【0042】
次に、図6に示す各楽曲の演奏ログ管理テーブルの概略図と、図7に示す累計演奏時間管理テーブルの概略図と、図8に示す累計演奏度数管理テーブルの概略図を用いて、楽曲の演奏毎に記録される演奏ログと、当該演奏ログから演奏時間あるいは演奏度数を取得し、取得した演奏時間あるいは演奏度数より前回フィルタ交換を行ったタイミングからの累計演奏時間を記録し管理することについて説明する。
【0043】
先ず、図6に示す各楽曲の演奏ログ管理テーブルとは、カラオケ装置にて演奏された楽曲の演奏ログを記録したものであり、この演奏ログ管理テーブルの主な構成要件としては、各楽曲の演奏ログの管理番号を示す「管理番号」フィールド(f1)と、楽曲が演奏された日付を示す「日付」フィールド(f2)と、楽曲IDを示す「楽曲ID」フィールド(f3)と、実際に楽曲が演奏された演奏時間を示す「演奏時間」フィールド(f4)から構成されている。
【0044】
そして、図7に示す累計演奏時間管理テーブルとは、本実施例では、予め設定されている累計演奏時間の基準値を「60時間」とすると、演奏ログから取得した楽曲の演奏時間の累計時間が60時間未満である場合には、自動フィルタ交換機構は駆動せず、累計時間が60時間となった場合に限り、自動フィルタ交換機構を駆動するように構成されている。よって、本実施例では、例えば、演奏ログに記録された演奏時間を含めると累計演奏時間が60時間以上となる任意の楽曲が演奏された際に、自動フィルタ交換機構へ駆動制御が行われる。具体的には、例えば、累計演奏時間が60時間4分30秒となる「252曲目」の楽曲の演奏ログが取得されると、フィルタ交換制御手段から自動フィルタ交換機構に所定の駆動コマンド信号が送信され、自動フィルタ交換機構が駆動して新しいフィルタに交換される。また、この駆動コマンド信号は、同時に、演奏時間取得管理手段にも送信され、この演奏時間取得管理手段は、累計演奏時間を「0」にリセットし、再度、楽曲の累計演奏時間が「0」から始まるようになる。そして、演奏の度に順次演奏時間が積算され、その累計演奏時間が基準値以上にならなければ、新たに自動フィルタ交換機構を駆動することはない。
【0045】
なお、本発明は、本実施例の他、楽曲の演奏毎に記録される演奏ログから演奏度数を取得し、前回フィルタ交換のタイミングからの累計の演奏度数を算出して管理するものでもよい。例えば、図8に示す累計演奏度数管理テーブルに示す別の実施例では、予め設定する累計演奏度数の基準値を「850」としており、累計演奏度数が850となった際には、フィルタ交換制御機構を駆動制御して新しいフィルタに交換するもので、上記同様、前回のフィルタ交換直後の曲を起点として850曲目の楽曲の演奏ログが取得されると、フィルタ交換制御手段から自動フィルタ交換機構に所定の駆動コマンド信号が送信され、自動フィルタ交換機構が駆動して新しいフィルタに交換される。そして、上記と同様に、演奏度数取得管理手段は、累計演奏度数を「0」にリセットし、再度、楽曲の演奏度数の累計が「0」から始まるように構成しても構わない。
【0046】
本発明の機構要素は以上のように構成されており、かかる構成におけるフィルタ交換の処理態様を図10に示すフローチャートに基づいて説明する。
先ず、演奏時間による管理の場合には、任意の楽曲が演奏されると、その演奏情報(演奏時間、日時など)に楽曲情報(楽曲名、アーティスト名など)を付加した演奏ログとして、中央制御手段はHDDの所定部に記録する(S1)。そして、演奏時間取得管理手段は、この記録された演奏ログより演奏時間を取得し(S2)、累計演奏時間を算出(S3)した後、算出した累計演奏時間を累計演奏時間管理テーブルに記録する。なお、演奏度数による管理の場合には、演奏度数取得管理手段が、演奏時間と同様に累計演奏度数を算出した後に、算出した累計演奏度数を累計演奏度数管理テーブルに記録することになる。
【0047】
このようにして、楽曲演奏が繰り返される度に算出された累計値は、各々の管理テーブルに記録された後、フィルタ交換制御手段は、その累計値を設定基準値データに設定された基準値と比較し、累計値が基準値以上か否かを判断し(S4)、基準値に達した場合に限り、それまで使用されていたフィルタは交換時期になったものとされる。
【0048】
そして、交換時期になったものとされると、フィルタ交換制御手段は自動フィルタ交換機構に、駆動コマンド信号を送信し(S5)、自動フィルタ交換機構がこの信号を受信するとステッピングモータを駆動(S6)させ、同時に、この駆動コマンド信号が演奏時間取得管理手段(又は演奏度数取得管理手段)に送信されると(S7)、この演奏時間取得管理手段(又は演奏度数取得管理手段)は累計演奏時間管理テーブル(又は累計演奏度数管理テーブル)にて記録されている演奏時間(又は演奏度数)をリセットし(S8)、新たに演奏された楽曲の演奏時間(又は演奏度数)を取得する処理に戻る。
【0049】
以上のようにしてフィルタの交換が完了するが、その交換のタイミングを楽曲演奏毎の演奏時間、又は度数を積算した累計値に基づくようにしたことから、装置の稼働率、即ち、演奏回数の多いカラオケ装置では早い時期にフィルタ交換のタイミングに達し、演奏回数の少ないカラオケ装置では相対的に遅い時期にフィルタ交換のタイミングに達することになる。したがって、フィルタが適切なタイミングで自動的に交換されることから、装置の管理者はメンテナンスの配慮に煩わされることなく、また、常にフィルタ機能を安定に保つことができることから、装置内部の冷却機能が低下することなく、電子部品やハードディスクドライブ等への熱的影響を回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上の説明においては、カラオケ装置を実施例としてあるが、本発明は単体の装置で多数の楽曲を再生するようにした音楽演奏装置であれば装置の用途に拘わらず実施することができ、産業上の利用分野はきわめて広範である。
【符号の説明】
【0051】
1・・・・・音楽演奏装置(カラオケ装置)
2・・・・・マイクロホン
3・・・・・増幅器
4・・・・・スピーカシステム
5・・・・・モニターテレビ
6・・・・・リモコン送信機
7・・・・・補助端末装置
11・・・・中央制御手段
12・・・・通信制御部
13・・・・ハードディスクドライブ
13a・・・演奏ログ記憶部
13b・・・基準値データ設定部
15・・・・リモコン受信機
16・・・・操作パネル
17・・・・操作制御部
18・・・・シンセサイザ
19・・・・ミキサー
22・・・・ビデRAM
23・・・・映像制御部
25・・・・外部データ記憶部
26・・・・RAM
26a・・・予約待ち行列記憶部
27・・・・演奏時間/度数取得管理手段
28・・・・基準値設定手段
29・・・・フィルタ交換制御手段
30・・・・自動フィルタ交換機構
31・・・・駆動型フィルタ
32・・・・可変型冷却ファン
33・・・・冷却ファン制御部
34・・・・温度センサ
35・・・・カセットホルダー
36・・・・インジケータ
T1・・・・累計演奏時間管理テーブル
T2・・・・累計演奏度数管理テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置筐体内部の温度に応じて回転数を変更し、装置筐体外部から装置筐体内部への冷却用空気の風量を変えることができる可変型冷却ファンと、駆動型フィルタの交換を自動的に行うようにした自動フィルタ交換機構を備えた音楽演奏装置であって、更に演奏時間取得管理手段と、フィルタ交換制御手段とを有するものであり、
前記演奏時間取得管理手段は、楽曲の演奏毎に記録される演奏ログから演奏時間を取得し、前回フィルタ交換のタイミングからの累計の演奏時間を算出して管理し、
前記フィルタ交換制御手段は、前記累計演奏時間が予め設定された基準値に達したか否かの判定を行い、基準値に達した場合に、前記自動フィルタ交換機構を駆動制御してフィルタ交換を実行するようにした、
ことを特徴とする音楽演奏装置。
【請求項2】
装置筐体内部の温度に応じて回転数を変更し、装置筐体外部から装置筐体内部への冷却用空気の風量を変えることができる可変型冷却ファンと、駆動型フィルタの交換を自動的に行うようにした自動フィルタ交換機構を備えた音楽演奏装置であって、更に演奏度数取得管理手段と、フィルタ交換制御手段とを有するものであり、
前記演奏度数取得管理手段は、楽曲の演奏毎に記録される演奏ログから演奏度数を取得し、前回フィルタ交換のタイミングからの累計の演奏度数を算出して管理し、
前記フィルタ交換制御手段は、前記累計演奏度数が予め設定された基準値に達したか否かの判定を行い、基準値に達した場合に、前記自動フィルタ交換機構を駆動制御してフィルタ交換を実行するようにした、
ことを特徴とする音楽演奏装置。
【請求項3】
請求項1記載乃至請求項2記載の音楽演奏装置あって、更に基準値設定手段を有し、
該基準値設定手段は、前記基準値を入力操作部にて任意に入力することで、前記自動フィルタ交換機構を駆動制御するタイミングを設定変更可能となるようにした、
ことを特徴とする音楽演奏装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−7951(P2011−7951A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150057(P2009−150057)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(390004710)株式会社第一興商 (537)
【Fターム(参考)】