説明

フィルタ浄化装置及びフィルタ浄化方法

【課題】フィルタを短時間で浄化することが可能なフィルタ浄化装置を提供する。
【解決手段】フィルタ浄化装置10のバキューム11は、吸引口25を被浄化フィルタ13の上方に配置し、吸引口25から被浄化フィルタ13の埃塵を空気と共に吸引する。バキューム11で吸引された空気は、エアフィルタ21で埃塵が除去されつつ、ブロア23によって循環され、接続通路34に送られる。空気は、接続通路34でイオン発生器12から発生するマイナスイオンを含み、被浄化フィルタ13の下面13Aに向けて送出される。マイナスイオンを含む空気は、吸引口25から吸引されることにより、被浄化フィルタ13を通過し、これにより、被浄化フィルタ13を除電する。そのため、被浄化フィルタ13に付着した埃塵は剥がれやすくなり、吸引口25から吸引されやすくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みフィルタを浄化して、再利用可能とするフィルタ浄化装置及びフィルタ浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種建物や設備の空調システムには、室内等の空気を清浄化するためにエアフィルタが広く使用されている。このような空調用エアフィルタは、近年、環境保護の観点から、洗浄されて再利用されることが検討されつつある。フィルタの洗浄は、例えば、水などの液体が用いられて超音波振動によって行われ、その後、乾燥されるのが一般的である(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−188322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来の方法では、液体洗浄・乾燥を行うために、装置が比較的大掛かりなものとなり、コスト的なデメリットが大きい。また、洗浄・乾燥装置の持ち運びが難しく、さらには、洗浄・乾燥に時間を要するため、フィルタ設置場所から取り外されたフィルタを直ちに清浄化することができない。したがって、フィルタを再利用する場合であっても、代わりのフィルタを用意する必要があった。
【0005】
そこで、本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構造を有し、かつフィルタを短時間で浄化することが可能なフィルタ浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るフィルタ浄化装置は、イオン発生器と、イオン発生器で発生したイオンを含む空気を被浄化フィルタを通るように吸引し、被浄化フィルタに付着した埃塵を除去するバキュームとを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明では、被浄化フィルタに向けて送られるイオンを含む空気の流量を、バキュームが吸引する空気の流量より少なくして、被浄化フィルタを通らない空気をバキュームにより吸引させることが好ましい。ただし、被浄化フィルタに向けて送られるイオンを含む空気の流量を、バキュームが吸引する空気の流量と同じにしても良い。
【0008】
バキュームで吸引された空気を循環させ、かつイオンを含ませて、被浄化フィルタに向けて再度送る場合、空気が循環される循環経路に、バキュームで吸引した空気から埃塵を除去するエアフィルタが設けられることが好ましい。
【0009】
循環経路には孔が設けられたほうが良く、この場合、上記循環経路を通る空気の一部が、孔から外部に出されることとなり、被浄化フィルタに向けて送られるイオンを含む空気の流量が、バキュームが吸引する空気の流量より少なくなる。
【0010】
バキュームは、負圧により空気を吸引し、かつ空気を循環させる送風機を備えていることが好ましい。この場合、例えば、送風機の上流側にエアフィルタが、送風機の下流側にイオン発生器が配置される。
【0011】
例えば、イオンを含む空気は、被浄化フィルタの一方の面から一方の面の反対側の面である他方の面に通される。この場合、被浄化フィルタは、他方の面側が上流となるように使用されたものであることが好ましい。また、例えば、被浄化フィルタの一方の面に対向する位置からイオンを含む空気が一方の面に向けて送られるとともに、被浄化フィルタの他方の面に対向するように、バキュームの吸引口が配置される。
【0012】
本発明に係るフィルタ浄化方法は、イオン発生器で発生したイオンを含む空気を、被浄化フィルタを通るようにバキュームにより吸引し、被浄化フィルタに付着した埃塵を除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、フィルタに付着した埃塵がイオンによる除電によって剥がれやすくなるので、バキュームによって埃塵が効率的に除去され、フィルタを短時間で浄化させることが可能になる。また、液体洗浄・乾燥が必要とされないので、浄化装置の構造が比較的簡単になり、例えば装置の持ち運びができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に一実施形態に係るフィルタ浄化装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るフィルタ浄化装置10は、バキューム11と、イオン発生器12と、被浄化フィルタ13を保持するためのフィルタ保持部材14とを備える。被浄化フィルタ13は、例えば、枠体内部に、シート状の濾材がひだ状に折られて形成された濾材パックが収納されたエアフィルタである。被浄化フィルタ13は、使用済みフィルタであって、捕集した埃塵が多く付着されたものである。
【0016】
フィルタ保持部材14は、上部が開放される箱状の部材である。フィルタ保持部材14は、その内部に被浄化フィルタ13を支持する支持部材16が設けられる。支持部材16は、フィルタ保持部材14の内部を上下に仕切るように配置された網状の部材である。被浄化フィルタ13は、一方の開口が下面13Aに、他方の開口が上面13Bとなるように、支持部材16の上に載置される。フィルタ保持部材14の底面14Dの中央には、空気送出口14Aがあり、空気送出口14Aは、フィルタ13の下面13Aに対向することになる。
【0017】
被浄化フィルタ13は、上面13Bが、上流側となるように使用されるものである。すなわち、被浄化フィルタ13は、上面13Bの開口から下面13Aの開口に空気が流されて使用されたものであり、フィルタ13によって捕集された埃塵は、上面13B側に付着されている。
【0018】
バキューム11は、吸引ホース20、エアフィルタ21、及びブロア23を備える。吸引ホース20は可撓性を有し、ホース先端の吸引口25を移動自在にする。吸引口25は、被浄化フィルタ13の上面13Bに対向するように配置される。バキューム11は、モータ22によって回転されるブロア(送風機)23によって負圧を発生させ、吸引口25から、被浄化フィルタ13に付着された埃塵を空気ととともに吸引する。吸引された埃塵は、ブロア23の上流に配置されたエアフィルタ21によって取り除かれる。
【0019】
吸引口25の開口面積は、被浄化フィルタ13の上面13Bの面積よりも小さい。そのため、吸引口25は移動させられ、被浄化フィルタ13の一部分の埃塵を除去する作業が繰り返され、これにより、被浄化フィルタ13全体の埃塵が除去される。吸引口25には、ノズルブラシ26が取り付けられ、埃塵が除去されるとき、被浄化フィルタ13の上面13Bは、ノズルブラシ26によって擦られても良い。
【0020】
吸引ホース20の基端は、内部にエアフィルタ21が収納されたフィルタケーシング31に接続される。フィルタケーシング31は、連結通路32を介して、ブロア23が内部に収納されたブロアケーシング33に接続される。連結通路32は、その断面積が、フィルタケーシング31側からブロアケーシング33に向かうに従って徐々に小さくなる。ブロアケーシング33には、ブロア23の下流側に、後述する循環経路に流される空気の流量を低下させるための孔33Hが設けられる。
【0021】
ブロアケーシング33は、接続通路34を介して、フィルタ保持部材14の空気送出口14Aに接続される。接続通路34の内周面には、イオン発生器12が取り付けられ、これにより、ブロア23の下流側にイオン発生器12が配置されることになる。図1においてイオン発生器12は、接続通路34の流路を挟み込むように2つ設けられるが、その数が限定されるものではない。
【0022】
各イオン発生器12は、マイナスイオンを発生させるものであり、不図示の一対の放電電極が1組又は複数組設けられて構成される。イオン発生器12では、各放電電極間に直流電圧が印加されることにより、放電電極付近にマイナス電荷が生じ、そのマイナス電荷が空気中の酸素や水分子に作用し、マイナスイオンが発生する。
【0023】
本実施形態では、ブロア23の負圧により、吸引口25から吸引された空気は、吸引ホース20、フィルタケーシング31、連結通路32、ブロアケーシング33を介して、接続通路34に押し流される。接続通路34に押し流された空気は、イオン発生器12で発生したマイナスイオンを含むこととなり、そのマイナスイオンを含む空気は、空気送出口14Aから被浄化フィルタ13の下面13A側に送られる。
【0024】
下面13A側に送られたマイナスイオンを含む空気は、被浄化フィルタ13の上方に配置された吸引口25によって吸引され、被浄化フィルタ13を通過させられる。このように、マイナスイオンを含む空気が被浄化フィルタ13を通されると、マイナスイオンによって、被浄化フィルタ13に帯電された静電気が除去される。そのため、被浄化フィルタ13の上面13B側に付着されている埃塵は、除電効果により被浄化フィルタ13から剥がれやすくなり、バキューム11によって容易に吸引除去される。なお、ノズルブラシ26が上面13Bを擦ることにより、静電気が発生したとしても、そのような静電気もマイナスイオンによって除去される。さらに、被浄化フィルタ13は、このように埃塵が除去されつつ、マイナスイオンによって除菌もされる。
【0025】
また、吸引口25で吸引された空気は、吸引ホース20、フィルタケーシング31、連結通路32、ブロアケーシング33、接続通路34及びフィルタ保持部材14を循環経路として、フィルタ浄化装置10で循環されて、再度吸引口25に吸引される。この循環経路の一部には、上記したように孔33Hが設けられ、バキューム11で吸引された空気はその一部が、孔33Hから循環経路外に出される。これにより、空気送出口14Aから被浄化フィルタ13の下面13Aに向けて送られる空気の流量は、吸引口25で吸引される空気の流量より少なくなる。
【0026】
そのため、被浄化フィルタ13を通る空気は、吸引口25によって全て吸引可能になる。そして、被浄化フィルタ13の吸引口25に対向する部分以外には、空気送出口14Aから殆ど空気が送られなくなり、被浄化フィルタ13から埃塵が舞い上がりにくくなる。また、空気送出口14Aから送られた空気以外の空気、すなわち、被浄化フィルタ13を通らないフィルタ浄化装置10の外部の空気も、吸引口25から吸引されることになる。
【0027】
また、吸引除去された埃塵は、エアフィルタ21によって除去され、エアフィルタ21の下流側、すなわち、被浄化フィルタ13の下面13A側には浄化された清浄な空気が送られる。したがって、除去された埃塵が循環されて被浄化フィルタ13に再度付着されることはない。
【0028】
以上のように、本実施形態では、被浄化フィルタ13は、イオンによって除電されつつバキューム11によって埃塵が除去されるので、フィルタを短時間で浄化することが可能になる。そして、フィルタ浄化装置10は、構造が簡単で持ち運び可能なものとなるので、被浄化フィルタ13は、フィルタ設置場所で浄化され直ちに再利用可能になる。また、被浄化フィルタ13は、イオンによって除菌もされるので、食品工場や病院等で使用される場合に好適である。さらには、被浄化フィルタ13に付着された埃塵は、上記したように空気流量が調整されたことにより舞い上がりにくく、作業者が埃塵を含む汚染空気に接触するのが防止される。
【0029】
なお、本実施形態におけるイオン発生器12は、例えば放電電極間に交流電圧が作用されることにより、マイナスイオンとプラスイオンの両方を発生させるものであっても良い。
【0030】
また、ブロアケーシング33に設けられた孔33Hは省略されていても良い。孔33Hが省略される場合、空気送出口14Aから被浄化フィルタ13の下面13Aに向けて送られるイオンを含む空気の流量は、バキューム11によって吸引される空気の流量と同じになる。このように空気流量が同じでも、被浄化フィルタ13を通る空気は、吸引口25によって全て吸引可能であるため、埃塵の舞い上がりは比較的適切に防止される。
【符号の説明】
【0031】
10 フィルタ浄化装置
11 バキューム
12 イオン発生器
13 被浄化フィルタ
20 吸引ホース
21 エアフィルタ
23 ブロア(送風機)
25 吸引口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン発生器と、前記イオン発生器で発生したイオンを含む空気を被浄化フィルタを通るように吸引し、前記被浄化フィルタに付着した埃塵を除去するバキュームとを備えることを特徴とするフィルタ浄化装置。
【請求項2】
前記被浄化フィルタに向けて送られる前記イオンを含む空気の流量を、前記バキュームが吸引する空気の流量より少なくして、前記被浄化フィルタを通らない空気を前記バキュームにより吸引させることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ浄化装置。
【請求項3】
前記被浄化フィルタに向けて送られる前記イオンを含む空気の流量を、前記バキュームが吸引する空気の流量と同じにすることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ浄化装置。
【請求項4】
前記バキュームで吸引された空気を循環させ、かつ前記イオンを含ませて、前記被浄化フィルタに向けて再度送るとともに、前記イオンを含む空気が循環される循環経路に、前記バキュームで吸引した空気から埃塵を除去するエアフィルタが設けられることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ浄化装置。
【請求項5】
前記循環経路に孔が設けられ、前記循環経路を通る空気の一部が、前記孔から外部に出されて、前記被浄化フィルタに向けて送られる前記イオンを含む空気の流量が、前記バキュームが吸引する空気の流量より少なくなることを特徴とする請求項4に記載のフィルタ浄化装置。
【請求項6】
前記バキュームは、負圧により前記空気を吸引し、かつ空気を循環させる送風機を備え、
前記送風機の上流側にエアフィルタが、前記送風機の下流側に前記イオン発生器が配置されることを特徴とする請求項4に記載のフィルタ浄化装置。
【請求項7】
前記イオンを含む空気を、前記被浄化フィルタの一方の面から他方の面に通すとともに、前記被浄化フィルタは、前記他方の面側が上流となるように使用されたものであることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ浄化装置。
【請求項8】
前記被浄化フィルタの一方の面に対向する位置から前記イオンを含む空気が前記一方の面に向けて送られるとともに、前記被浄化フィルタの他方の面に対向するように、前記バキュームの吸引口を配置させることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ浄化装置。
【請求項9】
イオン発生器で発生したイオンを含む空気を、被浄化フィルタを通るようにバキュームにより吸引し、前記被浄化フィルタに付着した埃塵を除去することを特徴とするフィルタ浄化方法。

【図1】
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